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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65H |
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管理番号 | 1076098 |
審判番号 | 不服2000-20216 |
総通号数 | 42 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-03-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-12-21 |
確定日 | 2003-05-27 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第218930号「シート給紙装置及び該装置を備えた画像形成装置」拒絶査定に対する審判事件〔平成 8年 3月26日出願公開、特開平 8- 81073、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成6年9月13日の出願であって、その請求項1-4に係る発明は、平成11年12月20日付けの手続補正書及び平成12年12月21日付けの手続補正書により補正された明細書、及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1-4に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 載置されたシートを給紙するための給紙手段及び、給紙されるシートの重送を阻止する分離手段を備えたシート給紙装置において、 給紙されるシート面の後端に対応して対向配置され、載置されたシートの最上部までの距離を測定する測距センサと、 給紙されるシートの厚さを給紙される前後で上記測距センサを駆動して距離測定を行い、該測定距離の差により給紙されたシートの厚さを計測する厚さ計測手段と、 該厚さ計測手段にて計測したシートの厚さが予め定められた厚さよりも薄い場合には給紙速度を遅くするように上記給紙手段の給紙速度を制御する速度制御手段と、 を備えたことを特徴とするシート給紙装置。」(以下、請求項1に係る発明という。) 「【請求項2】上記厚さ計測手段にて計測した厚さに基づいて給紙されるシートの重送を検出する重送検出手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のシート給紙装置。」(以下、請求項2に係る発明という。) 「【請求項3】載置されるシートの最上部より給紙するためにシートを載置する載置トレイを昇降可能に構成し、上記測距センサによる測定距離に基づいて載置トレイ上の最上部のシート位置を一定の高さに保持させる手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のシート給紙装置。」(以下、請求項3に係る発明という。) 「【請求項4】 載置されたシートを給紙する給紙装置を備え、該給紙装置にて給紙されたシートに画像を形成するために画像形成位置へと搬送して、該シートに画像を形成してなる画像形成装置において、 給紙されるシート面の後端に対応して対向配置され、載置されたシートの最上部までの距離を測定する測距センサと、 給紙されるシートの厚さを給紙される前後で上記測距センサを駆動して距離測定を行い、該測定距離の差により給紙されたシートの厚さを計測する厚さ計測手段と、 該厚さ計測手段にて計測したシートの厚さに応じて少なくとも画像形成にかかる速度を制御する速度制御手段と、を備え、 上記制御手段は、給紙されるシートを画像形成位置へと搬送する速度を、前記厚さ計測手段にて計測したシートの厚さが、予め定められた厚さよりも薄い場合には給紙速度を遅くするように制御することを特徴とするシート給紙装置を備えた画像形成装置。」(以下、請求項4に係る発明という。) 2.引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前の平成4年3月10日に頒布された刊行物である特開平4-75945号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。 (1)「積層された紙葉を一枚ずつ繰出すための分離機構と、該分離機構によって繰出された紙葉を一枚ずつ搬送するための搬送路を有する紙葉分離装置において、繰出される紙葉の重なりを検知する手段と、該検知手段の出力に応じて前記分離機構による紙葉の繰出し速度を制御する手段を設けたことを特徴とする紙葉分離装置。」(特許請求の範囲の請求項1を参照) (2)「本発明に係る紙葉分離装置においては、紙葉が重なって繰出された場合には、紙葉の重なりを検知する手段が重なり寸法を算出し、先行紙葉は搬送路に送出するとともに、後続の紙葉の繰出しを遅らせて、紙葉の間隔を所定量以上にして搬送路に送出する。」(第2ページ右上欄第5行〜第10行を参照) (3)「本実施例に示す紙幣分離機構は、後述するパルスモータ12に連動して回転するフィードローラ1,該フィードローラ1との間における紙幣分離のために設けられたゲートローラ2,上記フィードローラ1と同期して、紙幣を間欠的に上記フィードローラ1とゲートローラ2との間に送り込むピックアップローラ3,図示されていないセンサによって積層された紙幣8の上端位置を検知し、紙幣上端位置が一定になるように制御される押板4,上記フィードローラ1とゲートローラ2とによる分離部出口で、紙幣の通過をチェックする分離センサ5,同じく分離部出口で、紙幣の重なりをチェックする紙幣重なりセンサ14,分離された紙幣を受けとめる搬送路6および該搬送路6を駆動するための後述するACモータ13から構成されている。」(第2ページ右上欄第20行〜左下欄第15行を参照) (4)「本実施例では、分離センサ5が紙幣の後端を検出したときから、続く紙幣の先端を検出するまでの経過時間と、パルスモータ12の速度とから紙幣間隔を求めるとともに、エンコーダ9により搬送路6の速度を求め、前述の如き処理によって紙幣間隔制御時間を算出する。一方、紙幣が重なって繰出された場合には、紙幣重なりセンサ14が紙幣重なり検出時間と、パルスモータ12の速度とから紙幣重なり寸法を求めるとともに、エンコーダ9により搬送路6の速度を求め、前述の如き処理によって、同様に、紙幣間隔制御時間を算出する。 そして、いずれかの算出結果が間隔補正が必要であることを示している場合には、第8図のスルーイングテーブルの1番目の周期(696μs)から順に、2番目(704μs),3番目(712μs),・・・・n番目と減速して行く。そして、減速経過時間が、間隔制御時間の半分に達した時点からは、逆に、n番目,・・・・,3番目,2番目,1番目と加速して、標準速度に戻る。このような動作により、次位の紙幣の分離タイミングを遅延させて、搬送路6上における紙幣間隔を一定値以上に保つ。 上記実施例によれば、パルスモータ12の回転速度を制御することにより、搬送路6の速度変動があった場合を含めて、紙幣間隔が標準値以下である場合、または、紙幣が重なって繰出された場合にも、紙幣間隔を補正して、搬送路6上の紙幣間隔を所定値以上に保つことが可能となる。」(第4ページ左下欄第16行〜第5ページ左上欄第3行を参照) (5)「なお、上記実施例は本発明の一例を示すものであり、本発明はこれに限定されるべきものではないことは言うまでもない。例えば、上記実施例においては、紙幣の重なりを検出するための検知方法として、光学的センサを用いる例を示したが、この他にも、・・・、分離部の直後に配置した計測用ローラの変位等により機械的に紙幣の標準厚さを求め、これを標準値と比較して、標準値より大きい場合を2枚重なり状態と判断する方法等を用いることができる。」(第5ページ左上欄第6行〜第17行を参照) 上記(1)-(5)の記載及び第1図-第10図の記載からすると刊行物1には、「フィードローラと,該フィードローラとの間における紙葉分離のために設けられたゲートローラ,上記フィードローラと同期して、積層された紙葉を間欠的に上記フィードローラとゲートローラとの間に送り込むピックアップローラ,分離部出口で、計測用ローラの変位等により機械的に紙葉の標準厚さを求め、これを標準値と比較して、標準値より大きい場合を2枚重なり状態と判断する紙葉重なりセンサ、紙葉重なりセンサの重なり検出時間の出力に基づいて紙葉間隔制御時間を算出し、紙葉の間隔補正が必要であるとき、フィードローラ及びピックアップローラの繰出し速度を加減速制御する手段を設けた紙葉分離装置。」の発明(以下、「刊行物1記載の発 明」という。)が記載されていると認められる。 同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前の平成4年2月12日に頒布された刊行物である特開平4-41349号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。 (6)「(1)積層文書を単枚ずつ分離しながら順次繰り出して搬送路で搬送され、該搬送される文書の重送を検出する重送検出装置において、 前記搬送路に設けられ、該搬送路を通過する文書厚に対応した出力値を出力する非接触の文書厚検出センサと、 単枚文書厚に対応した文書厚基準値を記憶する記憶手段と、 前記文書厚基準値と前記文書厚検出センサの出力値とを比較する比較回路と、 を備え、前記文書厚基準値よりも前記文書厚検出センサの出力値の方が大なる場合に重送として検出することを特徴とする重送検出装置。 ・・・・・・・・・ (3)請求項(1)に記載の重送検出装置において、 更に、回転駆動される主動ローラと、搬送路上で主動ローラに対接して従動回転する上下動可能に保持された従動ローラと、から成る文書搬送手段を有し、 文書厚検出センサが、前記従動ローラの上下位置を光学的に検出する変位センサで構成されていることを特徴とする重送検出装置。」 (第1ページ左欄及び右欄の特許請求の範囲を参照) (7)「そして、上記従動ローラ114-1,114-2のそれぞれの軸116-1,116-2同士が軸部118で連結され、その軸部118に形成された垂直な貫通孔118a,118bに嵌合するガイド部120-1,120-2がパス112-1上に垂直に固定され、軸部118を上下動可能に保持している。」(第6ページ右上欄第6行〜12行を参照) (8)「前記文書厚検出センサは、ここでは平面状に形成された上記軸部118の上面に光を照射し、反射光を受光して軸部118の上下方向の位置変化を光学的に検出する非接触の変位センサ124で構成されている。」(第6ページ左下欄第1行〜第5行を参照) 上記(6)-(8)の記載及び第3図-第11図の記載からすると刊行物2には、「文書搬送手段の主動ローラに対接して従動回転する上下動可能に保持された従動ローラの平面状に形成された軸部の上面に光を照射し、反射光を受光して軸部の上下方向の位置変化を光学的に検出する非接触の変位センサで構成された文書厚検出センサ」の発明が記載されていると認められ る。 3.対比 請求項1に係る発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「紙葉」、「フィードローラと同期して、積層された紙葉を間欠的にフィードローラとゲートローラとの間に送り込むピックアップローラ」、「フィードローラと、該フィードローラとの間における紙葉分離のために設けられたゲートローラ」、「紙葉分離装置」が、請求項1に係る発明の「シート」、「載置されたシートを給紙するための給紙手段」、「給紙されるシートの重送を阻止する分離手段」、「シート給紙装置」にそれぞれ相当すると認められる。 そうすると、請求項1に係る発明と刊行物1記載の発明とは、「載置されたシートを給紙するための給紙手段及び、給紙されるシートの重送を阻止する分離手段を備えたシート給紙装置において、シートの厚さを計測し、計測したシートの厚さに応じて給紙手段の給紙速度を制御する速度制御手段と、 を備えたことを特徴とするシート給紙装置」である点で一致し、次の点で相違する。 (1)請求項1に係る発明は、給紙されるシート面の後端に対応して対向配置され、載置されたシートの最上部までの距離を測定する測距センサと、給紙されるシートの厚さを給紙される前後で上記測距センサを駆動して距離測定を行い、該測定距離の差により給紙されたシートの厚さを計測する厚さ計測手段を具備しているのに対し、刊行物1記載の発明は、分離出口で、計測用ローラの変位等により機械的にシートの標準厚さを求め、これを標準値と比較して、標準値より大きい場合を2枚重なり状態と判断するシート重なりセンサを具備している点。 (2)請求項1に係る発明は、厚さ計測手段にて計測したシートの厚さが予め定められた厚さよりも薄い場合には給紙速度を遅くするように給紙手段の給紙速度を制御する速度制御手段を具備しているのに対し、刊行物1記載の発明は、シート重なりセンサの重なり検出時間の出力に基づいてシート間隔制御時間を算出し、シートの間隔補正が必要であるとき、フィードローラ及びピックアップローラの繰出し速度を加減速制御する手段を具備している点。 4.相違点の判断 相違点(1)について 上記刊行物2に記載の文書厚検出センサは、従動ローラの上下位置を光学的に検出する変位センサで構成されているもので、測距センサではあるが、それは従動ローラの軸部の上面までの距離測定を行って、文書厚を検知するものである。そして、シート給紙装置の技術分野において、給紙されるシート面の後端に対応してセンサを備えることが、本願出願前に周知の技術であったとしても、この従来周知の技術と刊行物2に記載の文書厚検出センサとから、文書厚検出センサを給紙されるシート面の後端に対応して備えることが教示ないし示唆されているとはいえても、「給紙されるシート面の後端に対応して対向配置され、載置されたシートの最上部までの距離を測定する測距センサ」が教示ないし示唆されているということはできない。 したがって、「給紙されるシート面の後端に対応して対向配置され、載置されたシートの最上部までの距離を測定する測距センサと、給紙されるシートの厚さを給紙される前後で上記測距センサを駆動して距離測定を行い、該測定距離の差により給紙されたシートの厚さを計測する厚さ計測手段」は、刊行物2及び上記従来周知の技術から、当業者であるならば容易に想到し得た、ということはできない。 相違点(2)について 上記刊行物2には、請求項1に係る発明の上記相違点(2)における構成の記載はないとともに、該構成を教示ないしは示唆する記載もない。 なお、上記相違点(2)について、前置報告書で引用した、本願の出願前の平成5年5月28日に頒布された刊行物である特開平5-132194号公報(以下、「刊行物3」という。)には、「前記シート条件入力手段が、前記スタックトレイ上に積載されるシートの紙厚に関するものであり、前記シートの紙厚が薄いことが指定入力されたとき、前記制御手段により前記給紙装置の給紙速度を低速に選択制御することを特徴とする請求項3に記載の給紙装置。」(請求項7を参照)が記載されている。 ところで、上記刊行物1記載の発明における紙葉分離装置は、「紙葉が重なって繰出された場合には、紙葉の重なりを検知する手段が重なり寸法を算出し、先行紙葉は搬送路に送出するとともに、後続の紙葉の繰出しを遅らせて、紙葉の間隔を所定量以上にして搬送路に送出する。」(上記2の(2)を参照)ものであり、紙葉が重なっているか否かは、「分離部出口で、計測用ローラの変位等により機械的に紙葉の標準厚さを求め、これを標準値と比較して、標準値より大きい場合を2枚重なり状態と判断する」のであるか ら、シート(紙葉)が薄いと計測された場合は、シートが重なっていないことを意味するから、その場合に後続の紙葉の繰出しを遅らせる、すなわち給紙手段の給紙速度を遅くする、という考えは生じないといわなければならない。 したがって、例え、上記刊行物3に、シートの紙厚が薄いとき、給紙装置の給紙速度を低速に選択制御する発明が記載されていても、この記載された発明を刊行物1記載の発明に適用することはできないというべきである。 5.むすび したがって、請求項1に係る発明は、上記刊行物1-3に記載された発明及び従来周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができた、ということはできない。 また、請求項2に係る発明及び請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明を引用し、請求項1に係る発明の全ての構成を具備するともに、更に、新たな構成をも具備するものであるから、当業者が容易に発明をすることができた、ということはできない。 また、請求項4に係る発明も、「給紙されるシート面の後端に対応して対向配置され、載置されたシートの最上部までの距離を測定する測距センサと、給紙されるシートの厚さを給紙される前後で上記測距センサを駆動して距離測定を行い、該測定距離の差により給紙されたシートの厚さを計測する厚さ計測手段」の構成を具備するものであるから、請求項1に係る発明と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができた、ということはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2003-05-14 |
出願番号 | 特願平6-218930 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B65H)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 二ッ谷 裕子 |
特許庁審判長 |
鈴木 公子 |
特許庁審判官 |
大町 真義 柳 五三 |
発明の名称 | シート給紙装置及び該装置を備えた画像形成装置 |
代理人 | 小池 隆彌 |
代理人 | 木下 雅晴 |