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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1076135
審判番号 不服2000-20960  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-03-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-12-28 
確定日 2003-05-25 
事件の表示 平成4年特許願第222953号「非観血血圧及び血液酸素飽和度同時連続測定装置」拒絶査定に対する審判事件〔平成6年3月8日出願公開、特開平6-63024、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成4年8月21日の出願であって、その請求項1ないし2に係る発明は、平成12年7月31日付、及び平成13年1月29日付手続補正書により補正された内容を含む明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 互いに波長の異なる光を発生する複数の光源と、これら光源から生体の被測定部位への透過光又は反射光を検出する受光素子を有する光センサ手段と、上記光センサ手段を有するカフと、上記光センサ手段により検出された透過光量信号又は反射光量信号から夫々の上記波長毎に容積信号を分離する容積信号分離手段と、上記カフに加えるカフ圧は制御基準値と上記容積信号との差分信号が予め決められた規定値以下となるように制御するカフ圧制御手段と、上記カフ圧を検出する圧力検出手段と、一方の上記容積信号の脈動成分と上記カフ圧に基づいて血圧値を求めると共に、夫々の上記分離された容積信号より血液酸素飽和度を求めるマイクロコンピュータとを具備し、上記血圧及び血液酸素飽和度を同時に連続して1心拍毎に測定することを特徴とする非観血血圧及び血液酸素飽和度同時連続測定装置。
【請求項2】 前記マイクロコンピュータは容積補償法に基づく1心拍毎の連続血圧測定の際サーボ誤差として検出される容積脈波信号を用いて血液酸素飽和度を求めることを特徴とする請求項1記載の非観血血圧及び血液酸素飽和度同時連続測定装置。」

2.原査定の理由
2.1 原審において、請求項1ないし2について、概略次の旨の拒絶理由が通知された。
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」として、請求項1および2のそれぞれに対して、引用文献:特開平2-305555号公報が提示された。

2.2 これに対して明細書の補正がなされたが、「意見書並びに手続補正書の内容を検討したが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせない。」として、拒絶査定がなされた。

2.3 その後、審判請求がなされ、審判請求時に明細書の補正がなされた。
そして、審判請求時に補正された明細書に対して、前置報告書で概略次の内容の報告がされている。
「血圧測定部と酸素飽和度測定部とは、各々公知の構成であり、これらを一体化する技術思想が引用文献1に開示されていることからみて、引用文献1に記載された非観血血圧及び血液酸素飽和度同時連続測定装置において、血圧測定部として、引用文献2、3に開示された容積補償法式血圧測定手段を採用して、請求項1、2に係る発明のように構成することは、当業者であれば容易に想到しうることである。」として、引用文献として、1.特開平2-305555号公報、2.特開昭59-156325号公報、3.特開昭61-276536号公報が示された。

3.当審の判断
3.1 原査定の拒絶の理由および前置報告で引用された刊行物には、それぞれ以下の技術的事項が記載されている。
(1)特開平2-305555号公報
「互いに波長を異にする第1及び第2の光を発生する光源と、該光源からの上記第1及び第2の光に被検体を透過した第1及び第2の透過光の光量を検出する光検出器と、上記被検体にカフ圧を加える加圧手段とを備える複合検出器と、上記光検出器により検出された上記第1及び第2の透過光量信号から、夫々(a)脈波成分信号を分離する手段、(b)吸光度信号を得る手段及び(c) 吸光度変化分信号を得る手段と、上記カフの圧力を検出する圧力検出手段と、上記脈波成分信号、吸光度信号、吸光度変化分信号及び上記圧力検出手段の圧力信号を入力して所定の演算を行う演算手段とを備え、該演算手段の演算によって、上記吸光度信号及び吸光度変化分信号から、上記波長を異にする第1及び第2の光に対する吸光度を、上記カフ圧に伴う血管の状態変化に基づく動脈及び静脈に分離して算出することにより、動脈・静脈系の血液酸素飽和度を求めると共に、上記脈波成分信号の振幅変化及び上記圧力信号から血圧値を求めることを特徴とする血液酸素飽和度・血圧同時測定装置。」について記載されている。
(2)特開昭59-156325号公報
「被測定部位に装着されるカフと、前記カフ内のカフ圧を増減する加振器と、前記カフ圧を検出する圧力センサと、前記被測定部位と前記カフとの間に介挿され、前記カフ圧の変化および脈動によって変化する血管の単位長当たりの容積を逐次検出し、この容積に対応する容積信号を出力する容積センサとを設け、前記容積信号の容積脈波成分に基づいて前記加振器を励振して前記カフ圧を増減し、これによって前記血管の単位長当たりの容積が一定となるようにコントロールし、そのときのカフ圧から被測定体の血圧を測定する間接的血圧測定方法において、(イ)前記容積脈波成分の振幅が最大となるカフ圧を検出し、このカフ圧を維持する第1の過程と、(ロ)前記容積脈波成分に基づいて前記加振器を励振し、これによって前記容積脈波成分の振幅が最小となるようにフィードバック制御する第2の過程と、(ハ)前記容積脈波成分の振幅が最小となったときの前記カフ圧を血圧として抽出する第3の過程とを全自動的に行うことを特徴とする間接的血圧測定方法。」について記載されている。
(3)特開平昭61-276536号公報
刊行物2と同様のものが記載されている。

3.2 本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と前記各刊行物の記載内容とを対比検討する。
本願発明1は、請求項1に記載の非観血血圧及び血液酸素飽和度同時連続測定装置であって、血圧及び血液酸素飽和度を同時に連続して1心拍毎に測定することを特徴とするものである。
これに対して、刊行物1に記載のものは、血圧と血液酸素飽和度を同時に測定している点では本願発明1と共通するものであるが、その測定方法は異なるものである。すなわち、刊行物1のものでは、血圧測定のためのカフの加圧を始めてから、減圧の終了までの間を1周期として、血圧とカフ圧に応じた血管の状態変化に基づく動脈及び静脈系の血液酸素飽和度の測定を行うものとなっている。それゆえ、血液酸素飽和度の測定は心拍とは無関係なカフの加圧・減圧のサイクル毎に行われている。
刊行物2または3に記載のものは、血圧の測定方法に関するものであって、血圧の測定方法自体は本願発明と共通するものであるが、これは血圧の測定のみを目的とするものであることから、血液酸素飽和度の測定に関しては記載も示唆もされていない。
そこで、刊行物1の血液酸素飽和度・血圧同時測定装置の血圧測定手段として刊行物2の血圧測定方法を適用することについて検討すると、刊行物1の血液酸素飽和度の測定手段は、カフ圧の加圧減圧に応じた血管の状態変化に基づいて血液酸素飽和度の測定を行うようになっている。そのため、血圧測定手段として、刊行物2のものを適用した場合には、カフ圧の制御方法が異なることから、血液酸素飽和度の測定の前提となっている血管の状態変化を検出することができない。それ故、刊行物2の血圧測定方法を、刊行物1の血液酸素飽和度・血圧同時測定装置の血圧測定手段として用いた場合には、血液酸素飽和度と血圧とを同時に測定することができるものとはならず、阻害要因があるものといわざるを得ない。
よって、本願請求項1に記載の本願発明1の特徴とする「上記血圧及び血液酸素飽和度を同時に連続して1心拍毎に測定すること」については、いずれの刊行物にも記載も示唆もされていない。また、前記各刊行物に記載のものおよび周知技術を組み合わせることによっても、容易に想到できたものとも認められない。
そして、本願発明1は、前記構成を有することによって、他の構成と相俟って前記明細書記載の効果を奏するものと認められる。
したがって、本願発明1が前記各刊行物に記載のものとも、前記各刊行物に記載のものおよび周知技術から容易に発明できたものとも認めることはできない。

3.3 請求項2について
請求項2は、請求項1に、さらに「前記マイクロコンピュータは容積補償法に基づく1心拍毎の連続血圧測定の際サーボ誤差として検出される容積脈波信号を用いて血液酸素飽和度を求めること」を、限定事項として付加したものであるから、請求項1に係る発明が前記各刊行物に記載のものとも、前記各刊行物に記載のものおよび周知技術から容易に発明できたものとも認めることはできない以上、請求項2に係る発明についても、前記各刊行物に記載のものとも、前記各刊行物に記載のものおよび周知技術から容易に発明できたものとも認めることはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2003-04-30 
出願番号 特願平4-222953
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 居島 一仁  
特許庁審判長 渡部 利行
特許庁審判官 水垣 親房
河原 正
発明の名称 非観血血圧及び血液酸素飽和度同時連続測定装置  

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