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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B41F
管理番号 1076291
異議申立番号 異議2000-74633  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-04-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-12-28 
確定日 2003-02-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3059081号「オフセット印刷機」の請求項1、3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3059081号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3059081号は、平成7年8月30日(パリ条約による優先権主張日1994年8月30日、ドイツ国)に特許出願され、平成12年4月21日にその特許の設定登録がなされ、その後、ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフトより特許異議の申立(請求項1及び3)がなされ、取消理由通知(請求項1に対し)がなされ、その指定期間内である平成13年8月24日に訂正請求がなされ、その後、二度目の取消理由通知がなされたものである。

II.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
(1).訂正事項
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
(A).特許請求の範囲の、請求項1及び2を削除する。
(B).特許請求の範囲の、請求項3及び4の、
「【請求項3】 折り装置および版胴およびゴム胴(1.1,2.1)を備えた印刷装置(3)を有するオフセット印刷機であって、前記印刷装置(3)は該印刷装置(3)と同様の構成である他の印刷装置(4,1.2,2.2)とゴム対ゴムの原理で共働するとともに衛星胴(16)と共働し、前記ゴム胴(2.1)および前記版胴(1.1)は歯車(10,8)を介して駆動結合され、前記印刷装置(3)の各胴(2.1,1.1,16)のうちの一つが電気モータ(7)によって駆動され、前記他の印刷機(4)の各胴(1.2,2.2)は歯車(19,20)を介して駆動結合され、かつ前記電気モータ(7)とは異なる別のモータ(7)によって駆動可能であり、さらに前記二つの印刷装置(3,4)と共働する衛星胴(16)がさらに他の電気モータ(7)によって駆動可能であることを特徴とするオフセット印刷機。
【請求項4】 前記各歯車(8, 10, 19, 20)がそれぞれ平歯車として前記版胴(1.1;1.2)および前記ゴム胴(2.1;2.2)の駆動側のジャーナルに設けられ、二つ一組で互いに噛合することを特徴とする請求項3に記載のオフセット印刷機。」を、
「【請求項1】 折り装置および版胴およびゴム胴(1.1,2.1)を備えた印刷機構(3)を有するオフセット印刷機であって、前記印刷機構(3)は該印刷機構(3)と同様の構成である他の印刷機構(4,1.2,2.2)とゴム対ゴムの原理で共働するとともに衛星胴(16)と共働し、前記ゴム胴(2.1)および前記版胴(1.1)は歯車(10,8)を介して駆動結合され、前記印刷機構(3)の各胴(2.1,1.1,16)のうちの一つが電気モータ(7)によって駆動され、前記他の印刷機構(4)の各胴(1.2,2.2)は歯車(19,20)を介して駆動結合され、かつ前記電気モータ(7)とは異なる別のモータ(7)によって駆動可能であり、さらに前記二つの印刷機構(3,4)と共働する衛星胴(16)がさらに他の電気モータ(7)によって駆動可能であることを特徴とするオフセット印刷機。
【請求項2】 前記各歯車(8, 10, 19, 20)がそれぞれ平歯車として前記版胴(1.1;1.2)および前記ゴム胴(2.1;2.2)の駆動側のジャーナルに設けられ、二つ一組で互いに噛合することを特徴とする請求項1に記載のオフセット印刷機。」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否について
訂正事項(A)は、請求項の削除であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
訂正事項(B)には、特許請求の範囲の請求項3及び4の項番号をそれぞれ2繰り上げて、請求項1及び2とし、これに伴ない請求項2で引用する請求項も2繰り上げて請求項1とする訂正事項を含むものであるが、これは、訂正事項(A)の、請求項の削除に伴う項番号の繰り上げであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項(B)には、訂正前の請求項3中の、「印刷装置(3)」、「他の印刷装置(4,1.2,2.2)」、「印刷機(4)」、「印刷装置(3,4)」の記載を、それぞれ、「印刷機構(3)」、「他の印刷機構(4,1.2,2.2)」、「印刷機構(4)」、印刷機構(3,4)と訂正する事項を含むものであるが、明細書の発明の詳細な説明中では、例えば、【0007】には、「図1のユニットは、版胴1.1,1.2およびゴム胴2.1,2.2から成る二つの印刷機構3,4を備えている。」と、また、【図面の簡単な説明】中の【符号の説明】には、「3,4・・・印刷機構」と記載されるように、全て「印刷機構」が用いられていて、これに訂正するものであるから、誤記の訂正を目的とするものである。
よって、訂正事項Bは、明りょうでない記載の釈明ないし誤記の訂正を目的とするもに該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であって、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、平成11年改正前の特許法第120条の4第2項及び第3項において準用する特許法第126条第2項ないし第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議の申立てについての判断
1.本件発明
上記II.で示したように上記訂正が認められるから、本件特許第3059081号の請求項1に係る発明は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 折り装置および版胴およびゴム胴(1.1,2.1)を備えた印刷機構(3)を有するオフセット印刷機であって、前記印刷機構(3)は該印刷機構(3)と同様の構成である他の印刷機構(4,1.2,2.2)とゴム対ゴムの原理で共働するとともに衛星胴(16)と共働し、前記ゴム胴(2.1)および前記版胴(1.1)は歯車(10,8)を介して駆動結合され、前記印刷機構(3)の各胴(2.1,1.1,16)のうちの一つが電気モータ(7)によって駆動され、前記他の印刷機構(4)の各胴(1.2,2.2)は歯車(19,20)を介して駆動結合され、かつ前記電気モータ(7)とは異なる別のモータ(7)によって駆動可能であり、さらに前記二つの印刷機構(3,4)と共働する衛星胴(16)がさらに他の電気モータ(7)によって駆動可能であることを特徴とするオフセット印刷機。」

2.異議申立の趣旨
特許異議申立人 ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフトは、証拠として、甲第1号証(特開昭63-236651号公報、以下、「刊行物1」という。)を提示し、次の理由1、2により、本件特許は取り消されるべき旨主張している。
理由1:本件特許は、明細書及び図面の記載が不備のため、特許法第36条第5項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされている。。
理由2:本件請求項1(訂正前の請求項1及び3)に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3.理由1について
申立人が明細書及び図面の記載が不備であるとする具体的な理由は、(1)訂正前の請求項1の記載に矛盾がある。(2)請求項1(訂正前の請求項1及び3)中の、「前記他の印刷機」は「前記他の印刷装置」の間違いである。
というものであるが、上記訂正の結果、訂正前の請求項1は削除され、また、請求項1(訂正前の請求項3)において、「前記他の印刷機」は「前記他の印刷機構」に訂正された。
よって、本件明細書び図面の記載が不備である点は解消した。

4.理由2について
4-1.刊行物に記載された発明
刊行物1(特開昭63-236651号公報)には、以下の事項が記載されている。
ア.「1.多色オフセット印刷機の各色の印刷ユニットにそれぞれの原動用と紙の流れ方向の絵柄合せ用を兼ねた電動機を個別に設け、上記各電動機の制御回路に速度設定部からの共通の速度基準信号と個別の絵柄合せ信号をそれぞれ入力し、絵柄合せ時には入力された絵柄合せ信号を共通の速度基準信号に加算または減算した信号に基づいて上記各電動機の速度制御を行ない、絵柄合せ時以外は共通の速度基準信号に基づいて上記各電動機の速度制御を行なうようにした印刷機の駆動装置。」(特許請求の範囲第1項)
イ.「従来は、上記のように原動機構と縦見当機構が別で、原動機構のドライブシャフトから各色の印刷ユニットへの動力伝達系の途中にあるヘリカルギヤのかみ合い点を変えることにより、見当合せ時の位相調製を行なっていたため、メカ駆動部が複雑で、かつ高精度が要求され、コスト的に高いものとなっていた。本発明の目的は、このような複雑で高精度が要求されるメカ駆動部を廃し、安価で、かつ短時間に精度良く見当合せができる印刷機の駆動装置を提供することにある。」(第1頁右下欄下から第5行〜第2頁左上欄第5行)
ウ.「第2図は印刷ユニットの駆動系統図である。・・・・・電動機11を原動モータとして各色の印刷ユニット1〜4を個別駆動し、第2図に示すように各印刷ユニットの版胴7と転写ローラ8をギヤ12により連動回転させる(第1図,第2図には両側刷りの例を示す)。」(第2頁右上欄第13行〜左下欄第1行)
エ.また、第2図には、上方の転写ローラ8と下方の転写ローラ8とが共働すると共に、上方の版胴7、転写ローラ8、下方の転写ローラ8、版胴7が、ギヤ12により連動回転(歯車を介して駆動結合)し、さらに、上方の版胴7と下方の版胴7との両方に、電動機11を個別に設けたものが示されている。

上記記載ア〜エを含む明細書及び図面によると、刊行物1には次の発明が記載されている。
「版胴7及び転写ローラ8を備えた印刷ユニットを有する多色オフセット印刷機であって、前記印刷ユニットは、該印刷ユニットと同様の構成である他の印刷ユニットと、転写ローラ8対転写ローラ8の原理で共働すると共に、前記転写ローラ8及び前記版胴7はギヤ12を介して連動回転され、かつ前記印刷ユニットの版胴7が電動機11によって駆動され、また、前記他の印刷ユニットの転写ローラ8及び版胴7はギヤ12を介して連動回転され、かつ、前記電動機11とは異なる別の電動機11によって駆動可能であることを特徴とする多色オフセット印刷機。」(以下、「刊行物1発明」という。)

4-2.対比・判断
本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「多色オフセット印刷機」、「版胴7」、「転写ローラ8」、「印刷ユニット」、「電動機11」、「異なる別の電動機11」、「ギヤ12」、「連動回転」は、それぞれ本件発明の「オフセット印刷機」、「版胴」、「ゴム胴」、「印刷機構」、「電気モータ」、「異なる別の電気モータ」、「歯車」、「駆動結合」に相当するから、両者は、「版胴及びゴム胴(転写ローラ)を備えた印刷機構(印刷ユニット)を有するオフセット印刷機であって、印刷機構は、同様の構成である他の印刷機構(他の印刷ユニット)とゴム対ゴムの原理で共働し、ゴム胴及び版胴は、歯車を介して駆動結合され、印刷機構の各胴のうちの一つ(版胴)が電気モータによって駆動され、他の印刷機構の各胴も歯車を介して駆動結合され、かつ異なる別の電気モータによって駆動可能であるオフセット印刷機」の点で一致し、以下の点で相違する。
A.本件発明が、「折り装置」を有するとしているのに対し、刊行物1には、折り装置についての記載がない点。
B.本件発明が、「印刷機構(3)が衛星胴(16)と共働し、また、衛星胴(16)が、他の電気モータによって駆動可能である」としているのに対し、刊行物1には、衛星胴についての記載がない点。
以下、相違点について検討する。
(相違点Aについて)
印刷機に、必要に応じて折り装置を設けることは、従来より行われている周知の慣用手段である(例えば、二度目の取消理由通知で引用した刊行物2である、特開昭53-140106号公報参照)から、刊行物1に記載の印刷機において、「折り装置」を有するものとすることは当業者が容易になし得る程度のことである。
(相違点Bについて)
衛星胴(圧胴)を有し、衛星胴(圧胴)と複数の印刷機構とを共働させる、サテライト型のオフセット印刷機は、他の型のものと共に、従来より知られている(例えば、二度目の取消理由通知で引用した刊行物2及び3である、特開昭53-140106号公報及び特開昭48-12108号公報等参照)。
しかしながら、サテライト型のオフセット印刷機において、印刷機構にそれぞれの原動用電動機(電動モータ)を個別に設けたものとすることが周知の慣用手段であるとすることはできないし、とくに衛星胴にも個別の原動用電動機(電動モータ)を設けることが周知の慣用手段であるとすることはできない(刊行物2及び3には、衛星胴に個別の原動用電動機を設けることを示唆する記載もない。)。
一方、刊行物1の印刷機は、安価で、精度良く見当合わせができる駆動装置を提供することを主たる目的として、各印刷ユニット(印刷装置)に電動機を個別に設けるものであり、また、衛星胴は有さないものである。
そうすると、刊行物1に記載された発明と、これら周知のサテライト型のオフセット印刷機を組み合わせることで、サテライト型のオフセット印刷機において、衛星胴(圧胴)に、個別の原動用電動機(電動モータ)を設ける構成とすることが、当業者にとって容易であるとすることはできない。
したがって、本件発明は、刊行物1(ないし刊行物3)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

IV.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものとは認めない。
よって、特許等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
オフセット印刷機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 折り装置および版胴およびゴム胴(1.1,2.1)を備えた印刷機構(3)を有するオフセット印刷機であって、前記印刷機構(3)は該印刷機構(3)と同様の構成である他の印刷機構(4,1.2,2.2)とゴム対ゴムの原理で共働するとともに衛星胴(16)と共働し、前記ゴム胴(2.1)および前記版胴(1.1)は歯車(10,8)を介して駆動結合され、前記印刷機構(3)の各胴(2.1,1.1,16)のうちの一つが電気モータ(7)によって駆動され、前記他の印刷機構(4)の各胴(1.2,2.2)は歯車(19,20)を介して駆動結合され、かつ前記電気モータ(7)とは異なる別のモータ(7)によって駆動可能であり、さらに前記二つの印刷機構(3,4)と共働する衛星胴(16)がさらに他の電気モータ(7)によって駆動可能であることを特徴とするオフセット印刷機。
【請求項2】 前記各歯車(8,10,19,20)がそれぞれ平歯車として前記版胴(1.1;1.2)および前記ゴム胴(2.1;2.2)の駆動側のジャーナルに設けられ、二つ一組で互いに噛合することを特徴とする請求項1に記載のオフセット印刷機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はオフセット印刷機の胴および各機能グループのための駆動装置および駆動方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
オフセット印刷機は通常、単一または複数の電気モータによって駆動される縦軸を有している(DE 42 19 969 A 1)。この縦軸からギア装置や連結器を経て駆動軸が分岐し、これらの駆動軸で、印刷ユニット,ほどき機構,折畳み機構、および引張りおよび移送ローラ,曲げローラ,裁断ローラ,冷却装置、といった各機能グループが駆動される。ギア装置は通常さらに多くの連結器や歯車を備えているので、駆動装置は技術的に非常に手間がかかり、費用も嵩むものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の基本的課題は、オフセット印刷機において、胴および各機能グループを技術的に手間をかけずに駆動するための方法および装置を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本課題は独立クレームに記載された特徴により解決される。単一モータによる駆動を行なうことで、軸,ギア装置,連結器,歯車を用いないで済む。さらに上記の構造部分に関して、電気的監視装置も不要となる。
【0005】
その他の利点および特徴は当明細書の従属クレームに記載してある。
【0006】
【発明の実施の形態】
次に、本発明をいくつかの実施の形態を例に詳しく説明する。当明細書に添付の図は以下のものを示している。
図1ないし図4は、駆動装置を備えた様々な印刷ユニットの側面図;
図5は、図1に示した印刷ユニットの平面図;
図6ないし図9は、駆動装置を備えた種々の印刷機構のブリッジ;
図10は、図6に示した印刷機構のブリッジの平面図;
図11ないし図14は、その他の駆動装置例;
図15は、図11に示した印刷ユニットの平面図;
図16ないし図19は、その他の駆動装置例;
図20は、図16に示した印刷ユニットの平面図;
図21及び図22は、各機能グループを備えた印刷機;
図23及び図24は、各機能グループを備えた折畳み機構;
図25は、版胴の印刷版の色見当調節のための装置;
図26は、印刷箇所から印刷箇所への色見当調節のための装置;
図27は、裁断見当調整のための装置;
図28は、版交換位置調整のための装置;
図29は、インキ付け装置および湿し装置の駆動装置の側面図;
図30は、インキ付け装置および湿し装置のもう一つの駆動装置例;
図31は、インキ付け装置および湿し装置のさらに別の駆動装置例;
図32は、図31の着けローラの図;
図33は、版胴における電気モータの配置;
図34は、電気モータのもう一つの配置例;
図35は、電気モータの第三の配置例;
図36は、図35をY方向から見た図;である。
【0007】
図1ないし図4はそれぞれ、回転角制御された別個の電気モータによって駆動される印刷ユニットを示している。図1の印刷ユニットは、版胴1.1,1.2およびゴム胴2.1,2.2から成る二つの印刷機構3,4を備えている。前記版胴およびゴム胴1.1,1.2,2.1,2.2はそれぞれジャーナルで側壁5,6内に軸受けされている(図5)。操作側の側壁5には回転角制御された電気モータ7が設置され、このモータが版胴1.1を駆動する。この駆動連結の構成については後述する。側壁6に軸受けされたジャーナルには、それぞれ歯車8ないし11が取り付けられており、これらの歯車によって前記胴1.1,1.2,2.1,2.2はそれぞれ隣接する胴と連結駆動される。こうして、前記電気モータ7(図1では斜線によって象徴的に表わしている)によって四つの胴が全て駆動される。
【0008】
図2は図1に示した印刷ユニットの印刷機構12に、版胴1.3およびゴム胴2.3を補ったものである。印刷機構12は前記印刷機構4に結合しており、その際、図示はしていないが操作側のジャーナルには同様に歯車が設けられており、ゴム胴2.3の歯車はゴム胴2.2の歯車11と噛合している。
【0009】
つまり歯車8〜11を介して、全ての胴が版胴1.1と駆動連結され、電気モータ7によって駆動される。
【0010】
図3は、図1の印刷機構3,4に、版胴1.4,1.5およびゴム胴2.4,2.5を付加したものである。図示は略すが、これら胴1.4,1.5,2.4,2.5の操作側のジャーナルにはそれぞれ歯車が設けられており、それらの歯車によって各胴は互いに噛合している。さらに、ゴム胴2.2の歯車11は連鎖歯車15を介してゴム胴2.5の歯車と結合しており、全ての胴が電気モータ7によって駆動される。
【0011】
図4による印刷ユニットは、図3の印刷ユニットに対しさらに一つの衛星胴16を補ったものである。この衛星胴には、図示はしていないが、操作側に歯車が設けられている。その歯車と版胴1.4の歯車と、版胴1.1の歯車8から出ている連鎖歯車17とが噛合しているため、印刷ユニットの全ての胴が電気モータ7によって駆動される。
【0012】
図6ないし図20は、既に述べた図1ないし図5に示した胴と印刷機構の空間的な配置を繰り返して示したものであるが、説明の簡潔化のため構成上の多少の違いは考慮せず、図1ないし図5までの符号を再度用いている。図6,図7,図10に示しているものはブリッジ、すなわち図1,図2,図5に表わした印刷ユニットと一致する印刷ユニットの部分なので、再度詳しく説明することはしない。
【0013】
図8は、図3から前記連鎖歯車15を削除したものである。その結果生じた版胴1.1及び1.2とゴム胴2.1及び2.2を備えた印刷機構の下方のブリッジ(二重印刷機構)は、図6および図7の場合と同様に駆動される。版胴1.4,1.5、ゴム胴2.4,2.5を備えた印刷機構の上方のブリッジは、版胴1.4に取り付けられた回転角制御された電気モータ7によって駆動される。この電気モータは、胴1.4,2.4,2.5,1.5のジャーナル上にある図示しない歯車を介して、これらの胴を駆動する。
【0014】
図9の内容は図8と同様である。ただし、版胴1.1により衛星胴16が連鎖歯車18によって駆動されている。図6ないし図9までに見られる同種あるいは異種の印刷機構のブリッジは、種々の印刷ユニットと組み合わせることができる。その場合、以下に記載する駆動方法を適用することもできる。
【0015】
今までに記載した図1から図10までの参考例においては、1つの印刷装置の胴のみを駆動したが、図11以降の実施の形態においては、2つの印刷装置のそれぞれの胴をそれぞれの電気モータにより駆動するものについて説明する。
【0016】
図11に示した二重印刷機構は、それぞれ版胴1.1,1.2、およびゴム胴2.1,2.2を備えた印刷機構3,4を有している。これらの胴は図1および6の場合と同様に側壁5,6に軸受けされている(図15)。しかしながら、各印刷機構3,4はそれぞれ独自の回転角制御された電気モータ7によって駆動され、しかもそれぞれ版胴1.1または1.2が駆動される。版胴1.1,1.2の駆動側のジャーナルにはそれぞれ歯車8,19が設けられており、駆動側のジャーナルはこれらの歯車によって、ゴム胴2.1,2.2のジャーナル上の歯車10,20とそれぞれ噛み合っている。歯車8,10と歯車19,20とは異なった二つの平面内にあるが、それはゴム胴2.1,2.2が互いに連結駆動してはならないためである。このように、版胴1.1,1.2の操作側のジャーナルにはそれぞれ回転角制御された電気モータ7が取り付けられ印刷機構3,4を駆動している。
【0017】
上述の、および以下に述べる実施の形態においては、電気モータがそれぞれ版胴を駆動しているが、その代わりにゴム胴を駆動することもできる。そのような例として、図12の印刷ユニットでは電気モータ7が、それぞれ印刷機構3,4,12のゴム胴2.1,2.2,2.3を駆動している。これらのゴム胴から歯車によってそれぞれに対応する版胴1.1,1.2,1.3も駆動されることになる。図15と同様に印刷機構4および印刷機構3の歯車は一つの平面内にあってはならず、印刷機構4および12の歯車についても同様である。
【0018】
図13の印刷ユニットにおいては、印刷機構3,4,13,14の各版胴1.1,1.2,1.4,1.5がそれぞれ回転角制御された電気モータによって駆動されている。これらの版胴から、それぞれ対応するゴム胴2.1,2.2,2.4,2.5が歯車によって駆動される。共働する印刷機構のギア装置はそれぞれ二つの異なった平面内にある。
【0019】
図14においては印刷機構3,4,13,14の駆動は図13のものと同様に行なわれるが、新たに衛星胴16が別個の回転角制御された電気モータ7によって駆動される。
【0020】
図16ないし図19までの印刷ユニットにおいては、1.1〜1.5までの版胴と2.1〜2.5までのゴム胴、さらに衛星胴16が存在する場合は、それらの胴がそれぞれ、別個の回転角制御された電気モータ7によって駆動される。各胴は上述の実施の形態の場合と同様に、側壁5,6に軸受けされる。しかし上述の実施の形態と異なり、電気モータ7はそれぞれいわゆる駆動側S2の各ジャーナル上にある(図20)。これらの電気モータは操作側のジャーナル上に同様に取り付けることも可能である。上述の実施の形態の場合においても、電気モータ7を駆動側のジャーナルに取り付けることができる。個々の印刷機構に対して独自の駆動モータを取り付ける場合(図11ないし図14)には、印刷の進行に合わせて個々の印刷機構を互いにうまく調整して駆動することができる。各胴を別々に駆動する場合(図16ないし図19)には、印刷機構の版胴1とゴム胴2との間においても印刷の進行に合わせた駆動を行なうことができる。また、こうした駆動を行なわなければ、ギア装置全体およびギア装置に必要な潤滑油の注油、ギア装置の金属保護処理などもいらなくなるので、多大なコスト節約になる。また、印刷機構を要望どおりに制御できるため、機械的(および電気的)な装置も不要となる。駆動モータの回転方向を逆転することによって、印刷機構を望み通りに制御することができるからである。
【0021】
実施の形態では、印刷機構は常に版胴とゴム胴を備え、同様の印刷機構とゴム対ゴムの原理で共働し、あるいは衛星胴と共働する。このような印刷機構に圧胴を補足して三つの胴を持つ印刷機構とすることもできる。その場合、個々の胴を別個の電気モータで駆動するか、あるいは一つの胴のみを電気モータで駆動し、三つの胴を歯車を介して連結駆動するという方法がある。
【0022】
電気モータの回転角度の制御は機械制御の枠組みで、コンピュータによるモータ調節によって行なわれる。従ってモータもこのシステムに結び付いている。しかし制御は本発明の対象ではないので、この点に関する図示および説明は省略する。
【0023】
別個の電気モータを使うと、印刷機のその他の各機能グループも都合よく駆動することができる。図21は印刷機の側面図で、図23はこのような各機能グループを備えた折畳み機構である。図21の印刷機は4つの印刷ユニット21〜24、および、一つの折畳み機構25を備えている。印刷ユニット23および24は、駆動の点では、図17に示した印刷ユニットに類似し、印刷ユニット21および23は図18に示した印刷ユニットに類似するものである。胴および以下に説明する各機能グループの駆動モータは、”M”あるいは斜線で象徴的に示してある。図23に示した折畳み機構は折畳み装置26および27を備えている。図21では引き込み装置28,冷却ローラ29,裁断ローラ30,曲げローラ31が、それぞれ別個の回転角制御された電気モータ33.1〜33.5によって駆動されている。電気モータはこの際ベルトを介して間接的にこれらの各機能グループの胴を駆動する。図22に示されているのは上記同様の印刷機であるが、これらの各機能グループの個々のシリンダーは直接モータによって駆動されている。
【0024】
図23では曲げローラ31、引張りおよび移送ローラ32がそれぞれ別個の、回転角制御された電気モータで直接駆動されている。二つの折畳み装置26,27もそれぞれ別個の、回転角制御されたモータを有し、そのモータがそれぞれ折畳みローラ、この場合はカッティングローラ143,144を直接駆動する。他の折畳みローラがそれらのジャーナル上にある歯車を介して、これらのカッティングローラと噛み合っている。
【0025】
図24の折畳み機構では、曲げローラ31、引張りおよび移送ローラ32がそれぞれ歯付きベルト(同期ベルト)を介して共通のモータによって間接的に駆動される。唯一の折畳み装置27.1も別個の、回転角制御された電気モータによって駆動される。駆動はベルト駆動装置によって間接的に例えばボドキン-折畳み-カッティングローラ145上にも伝達される。このローラと他の折畳みローラは、ローラに設けられた歯車によって駆動連結されている。これらの電気モータを用いると、駆動されるローラの回転数を細かく調整することができる。先行制御を備えたグループではそれに応じてウェブの張りも細かく調整できる。こういった駆動の場合、従来通常用いられていたPIV(位置表示器)ギア装置が不要となることによって、コストの点でも非常に有利になる。
【0026】
直接、版胴上で駆動する別個の電気モータは、色見当の調整のためのサーボ部材としても都合がよい。図25は、二重印刷機構における色見当の調整のための装置を示したものであり、この二重印刷機構は、版胴36,38およびゴム胴37,39をそれぞれ有した印刷機構34,35を備えている。この色見当の調整のための装置の説明は、周囲に二つの印刷版を取り付けた版胴38をもとにして行なわれる。版胴38を駆動する電気モータ40は、コンピュータ式モータ制御器41によって回転角制御されている。さらに、印刷機構35の位置表示器42、および、印刷機構35から出たウェブ上にある見当(レジスタ)マークを検出する測定値表示器44が比較装置45に接続されるが、この比較装置45の出力は前記コンピュータ式モータ制御器41の入力に接続されている。前記測定値表示器44は、印刷機構35によってウェブ43上に印刷された見当マークを検出し、版胴の回転毎に印刷される二つの画線部の位置を伝達する。位置表示器42の信号を受けると、比較装置45の中では版胴の回転に対する関係が生じる。印刷画線部が回転方向に沿って版胴の半周分移動する(すなわち印刷画線部の配置が半周ずれる)と、版胴38はこの領域における印刷の前に先行したり後行したりして調整しながら駆動される。このような動きはコンピュータ式モータ制御器41により、比較装置45の出力信号に対応してなされる。この動きによって、例えば印刷版のコピーやモンタージュの誤りを調整することができる。印刷開始時の見当の質がやや落ちることを覚悟の上でならば、加速および減速の段階をこの領域まで拡大することができ、よってより低出力の電気モータを規格とすることが可能になる。
【0027】
図26に示した装置は、二つの印刷位置、すなわちこの場合印刷機構46および47、の間の外周見当の調整のためのものである。これらの印刷機構46,47からウェブ上に印刷された見当のマークは測定値表示器49,50によって検出される。測定値表示器49,50の信号は比較装置51内に送られる。比較装置は比較結果をコンピュータ式モータ制御器52に受け渡す。コンピュータ式モータ制御器は印刷機構47の版胴53を駆動する電気モータ54の回転数を調節する。印刷機構46の印刷画線部に対して必要とされる見当の変更に応じて、電気モータ54は先行したり後行したりしながら駆動される。ゴム胴55も別個の電気モータによって駆動される場合には、その電気モータも、見当を訂正する際、回転数にを都合よく直すことができる。この装置は調整すべき見当の数に応じて、何倍にもあるいは最大限に拡大して適用することができる。この装置を使えば、版胴の外周見当の調整のために、伝統的な経費のかさむ機械的なギア装置、例えばスプリング式のつめ車などを使用しなくても済むのである。
【0028】
印刷機構を個々に駆動することによって、様々な印刷ユニット間の異なったウェブも、長さの調整のための新たな装置を必要とせずに通すことができる。例えば図21に示した印刷機では、ウェブ55は印刷ユニット23から印刷ユニット21へ、または破線で示した経路を通って印刷ユニット22へ進む。異なった経路に応じて、印刷ユニット21および22の印刷機構はそれらの駆動モータによって、必要な位置に導かれる。さらに、電気モータのコンピュータ式モータ制御器56の入力側には、演算・記憶装置57が接続されており、この演算・記憶装置に、必要な胴の位置が記憶されている。これらの位置がウェブの流れに応じて、コンピュータ式モータ制御器56に予め伝えられ、このコンピュータ式モータ制御器が、その電気モータによる位置に応じた制御を通じて、版胴およびゴム胴を必要な位置に導く。
【0029】
演算・記憶装置57にはさらに、ウェブの様々な流れのために裁断見当のための印刷機構の胴の位置が記憶されている。裁断見当の調整のためには、コンピュータ式モータ制御器56によって、選ばれた製品の構成に応じて、必要な胴の位置が設定される。この設定値に応じて、コンピュータ式モータ制御器56が、ウェブ55に印刷する全ての印刷機構の駆動モータを調整する。つまり、折畳み装置における裁断のための裁断見当は印刷に関わる全ての印刷機構の胴の位置に関して調節されることになる。これによって、従来行なわれていた、コストの嵩むリニア式の見当装置を使用しないで済む。ターンロープのためにのみ、このような長さの調節をする必要がある。裁断見当のための胴の位置を内蔵している演算・記憶装置は、図27に示した、後述する装置のコンピュータ式モータ制御器66にも接続することができるが、その際、この装置は裁断見当の制御にも裁断見当の調整にも使われることになる。
【0030】
印刷機構を別個に駆動することによって、従来通常用いられていた、同期軸,連結器,ギア装置などの連結部材および位置決め装置が不要となり、印刷機の集合体を可変的に組み合わせられるようになった。相応の制御プログラムを経れば、例えば図21のような、折畳み機構25に接続された印刷ユニット21、22,23、あるいはこれらの印刷ユニットのうちのいくつかは、図示しない別の折畳み機構に組み込むことができる。
【0031】
図27は裁断見当の制御のための装置である。ここでは例として、印刷機構58〜61がウェブ62に印刷している。測定値表示器63が同時に印刷された見当のマークを検出する。通過する印刷ユニット(便宜上、最初に通過する印刷ユニット59がよいのだが)の電気モータの測定値表示器63および位置表示器64が、比較装置65の入力に接続されている。比較装置の出力は印刷機構58〜61の電気モータのコンピュータ式モータ制御器の入力側に接続されている。比較装置65内に伝達された見当の間違いは、ウェブ62を印刷する印刷機構58〜61が、コンピュータ式モータ制御器66を用いたそれらの印刷機構の電気モータの相応の制御によって、先行したり後行したりして調整される。
【0032】
図28は、版胴を版の交換に適した位置に動かす際の補助装置を示している。本実施の形態における印刷ユニットは、版胴69,70およびゴム胴71,72をそれぞれ備えた印刷機構67,68を有している。印刷機構67,68の駆動モータはこの図ではゴム胴71,72を駆動し、コンピュータ式モータ制御器73と結合され、コンピュータ式モータ制御器は演算・記憶装置によって給電されている。演算・記憶装置74には版の交換のための版胴69,70の位置が記憶されている。これらの位置はコンピュータ式モータ制御器73に送られ、コンピュータ式モータ制御器は、印刷機構69,70の電気モータを、版胴69,70の張り溝75,76が最短経路で版交換位置に動かされるように制御する。その際、前述の実施の形態の場合と同様に、一つの印刷機構において駆動されるのはゴム胴でも版胴でも、あるいはその両方でも構わない。この装置を用いると、従来一般に行なわれているように時間をかけて印刷機構を一つづつ外し、その後印刷機構を必要な位置に動かし、版を交換した後取り付ける、といった作業を行なわないで済む。
【0033】
都合のよいことに、インキ付け及び湿し装置の着けローラも別個の駆動装置によって駆動される。図29は、ゴム胴77.1および版胴78.1を備えた印刷機構であり、版胴にはインキ付け装置79.1および湿し装置80.1が取り付けられている。インキ付け装置79.1は 特にインキ着けローラ81.1および82.1を有し、湿し装置80.1は水着けローラ83.1を有する。個々の着けローラ81.1,82.1,83.1には歯車84.1,85.1,86.1が取り付けられており、それら歯車は全て中央歯車87と噛合している。中央歯車87は回転角制御された電気モータ88によって駆動されている。実施の形態では、図には示されていないが、中央歯車87は電気モータ88のロータジャーナル上にある。しかし電気モータを中央歯車87と並ぶように配置し、ピニオンで中央歯車に噛合させることもできる。つまり電気モータ88が、二つのインキ着けローラ81.1,82.1および水着けローラ83.1を駆動するのである。
【0034】
図30ではインキ着けローラ81.2および82.2が回転角制御された電気モータ89によって駆動される。湿し装置80.2の水着けローラ83.2は電気モータ90によって駆動される。電気モータ89は直接インキ着けローラ82.2上で駆動する。インキ着けローラには歯車85.2が取り付けられており、その歯車でインキ着けローラは、中間歯車91を介して、インキ着けローラ81.2の歯車84.2を駆動する。
【0035】
図31は異なる駆動装置を示したもので、インキ付け装置79.3の個々のインキ着けローラ81.3,82.3と、湿し装置80.3の水着けローラ83.3は、別個の回転角制御された電気モータ92,93,94によって駆動される。インキ付け装置と湿し装置をこのように駆動すると、従来駆動に通常必要とされていた歯車が全て不要となる。
【0036】
別個の回転角制御されたモータを使った駆動の場合には、インキ着けローラの回転数を調節できるという長所の他に、水やインキを側面からうまく付けることができるという利点がある。図32は、インキ着けローラおよび水着けローラ81.3,82.3,83.3の側面図で、ローラは側壁95,96に軸受けされている。これらのローラ81.3〜83.3のジャーナル97〜99は、都合のよいことに駆動する電気モータ92〜94のロータとして形成されており、それぞれのジャーナル上に、例えばリニアモータ100〜102が取り付けられている。回転角制御された電気モータ92〜94はコンピュータ式モータ制御器103によって制御される。都合のよいことに、コンピュータ式モータ制御器103はリニアモータ100〜102が同じ動きを取るように制御する。この点に関して都合がよいのは、変換運動が正弦状の経過をたどり、変換運動の際に着けローラの作動距離が互いに120度の位相をとることである。この運動の目的は、マスバランスで、マスバランスによって、振動の励起が機械の軸に対して横方向に遮断される。軸方向の作動距離の設定値が選択できるようになっているのも好都合である。インキ着けローラ81.3,82.3,83.3の瞬間的な位置は感知器140〜142によってモータ制御器に返送される。変換速度の設計が印刷機械の速度にリニアに比例することも都合がよい。
【0037】
胴を正確に駆動させるためには、胴と電気モータをできるだけ動かないように連結することが重要である。以下に述べるのは、そのための構成上の実施の形態である。図33の版胴105は、ジャーナル106,107で印刷機の側壁108,109に軸受けされている。ジャーナル106,107にはフランジ110,111が設けられており、これらのフランジによってジャーナルは胴本体の表側にボルト留めされている。ジャーナル106は版胴を駆動する電気モータ113のロータ112として形成されている。つまり、ジャーナルの延長上の先端にロータの部材が付いているのである。ステータ114は側壁108に固定されている。さらにジャーナル106には、側方の見当調整のために、版胴105を横方向に移動させる装置が取り付けられている。この装置には、例えばリニアモータ115が用いられる。モータを、モータの回転運動を直線運動に変形するギア装置と組み合わせて用いることも可能であろう。この場合、側方の見当の移動値Zは、ジャーナル106,107の両側方でのずれにおいて、それぞれZ/2づつ版胴本体から場所をあけ、版胴本体が印刷機から取り出せるように設定される。その後、版胴105のスリーブ状の印刷版を交換することができる。同様のやり方で着けローラの構造も考えることができるが、その場合、着けローラの作動距離は着けローラのローラ本体を露出するために用いられる。
【0038】
図34は版胴116の駆動側の部分断面図である。版胴のジャーナル117には、電気モータ119のロータ118が表側にボルト留めしてある。電気モータ119のステータ120は、該ステータに固定され版胴116のベアリング122を有するブシュ121とともにエンドプレート123,124に収まっている。エンドプレート123,124は互いに離間することが可能で、離間した状態で印刷機の側壁126に開口部125を露出させる。そして露出された開口部125を通して、スリーブ状の印刷版139を版胴116に被せ、または版胴から取り外すことが可能である。開口部から内部に送られた印刷版139は破線で示してある。エンドプレート123,124の構造と操作のための解決法、および、開口部125が露出した際に版胴116がもう一方の端部で釣り合いを保つ技術については既に示されているので、この点については詳しく述べない。ゴム胴も同様に露出させることができ、ゴム胴および印刷機のその他の胴の場合でも同じようなモータの構成が応用できる。図示した実施の形態においてさらに都合のよいことは、電気モータのロータやステータを独立して、前もって組み立てられるということである。
【0039】
図35は、電気モータ128のステータ127を、側壁131に軸受けされた胴の三環ベアリング130の偏心リング129に固定したところを示したものである。この図では、例えばゴム胴を例にしているが、そのゴム胴はジャーナル132の部分のみを示している。偏心ベアリングリング129を回転させると、例えば圧力を掛け、かつ外すことができる。ステータ127をこのように固定すると都合がよいのは、ジャーナルが接触したり離れたりする際に、ステータに固定されたロータ133と共にステータが動くことである。個々のステータ127はフランジ134に固定され、フランジはベアリングリング129にボルトで留められている。フランジは、据付クランプ135で側壁131に軸方向に固定され、ステータの重力から生ずる傾斜モーメントを受ける。ベアリングリング129の操作は図36に示してある。ベアリングリングにはハブ136が設けられており、そのハブに圧力を付加しかつ解除する機構、例えば把手137が設けられている。圧力を付加すると、ベアリングリング129は堅固な構造の、都合よく調整できるストッパ138に当接し、胴が相応の回転方向を持つことを前提とすれば、このようにしてステータ127の負荷モーメントを受ける。胴がもう一方の方向に回転する場合は、強固な圧力付加・解除機構が負荷モーメントを受ける。胴の軸受けは、遊びがないように望ましく構成されている。
【0040】
実施の形態では、回転角制御された電気モータが胴あるいは各機能グループを駆動するために用いられている。本発明に従った上で、例えばウェブを引く部材や着けローラの駆動のような、同期に対する要求が高すぎないような駆動を行なう場合には、回転数やモーメントも調節した電気モータを用いることができる。本発明で用いられたコンピュータ式モータ制御器も場合によっては他のモータ制御器に変えることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 駆動装置を備えた様々な印刷ユニットの側面図である。
【図2】 駆動装置を備えた様々な印刷ユニットの側面図である。
【図3】 駆動装置を備えた様々な印刷ユニットの側面図である。
【図4】 駆動装置を備えた様々な印刷ユニットの側面図である。
【図5】 図1に示した印刷ユニットの平面図である。
【図6】 駆動装置を備えた種々の印刷機構のブリッジである。
【図7】 駆動装置を備えた種々の印刷機構のブリッジである。
【図8】 駆動装置を備えた種々の印刷機構のブリッジである。
【図9】 駆動装置を備えた種々の印刷機構のブリッジである。
【図10】 図6に示した印刷機構のブリッジの平面図である。
【図11】 その他の駆動装置例である。
【図12】 その他の駆動装置例である。
【図13】 その他の駆動装置例である。
【図14】 その他の駆動装置例である。
【図15】 図11に示した印刷ユニットの平面図である。
【図16】 その他の駆動装置例である。
【図17】 その他の駆動装置例である。
【図18】 その他の駆動装置例である。
【図19】 その他の駆動装置例である。
【図20】 図16に示した印刷ユニットの平面図である。
【図21】 各機能グループを備えた印刷機である。
【図22】 各機能グループを備えた印刷機である。
【図23】 各機能グループを備えた折畳み機構である。
【図24】 各機能グループを備えた折畳み機構である。
【図25】 版胴の印刷版の色見当調節のための装置である。
【図26】 印刷箇所から印刷箇所への色見当調節のための装置である。
【図27】 裁断見当調整のための装置である。
【図28】 版交換位置調整のための装置である。
【図29】 インキ付け装置および湿し装置の駆動装置の側面図である。
【図30】 インキ付け装置および湿し装置のもう一つの駆動装置例である。
【図31】 インキ付け装置および湿し装置のさらに別の駆動装置例である。
【図32】 図31の着けローラの図である。
【図33】 版胴における電気モータの配置である。
【図34】 電気モータのもう一つの配置例である。
【図35】 電気モータの第三の配置例である。
【図36】 図35をY方向から見た図である。
【符号の説明】
1.1〜1.5,38,75,76,105 版胴
2.1〜2.5,139 ゴム版
3,4,12,13,14, 35,46,47,58〜61 印刷機構
7,40,54,88,89,90,113,119,128 電気モータ
8〜11,15,17,19,20 歯車
16 衛星胴
21〜24 印刷ユニット
26,27 折畳み装置
28 引込装置
29 冷却ローラ
30 裁断ローラ
31 曲げローラ
32 引張りおよび移送ローラ
41,52,56,66,73,103 モータ制御器
42,64 位置表示器
44,49,50,63 測定値表示器
45,65,51 比較装置
48,55,62 ウェブ
57,74 演算・記憶装置
79.1,79.2 インキ付け装置
80.1 湿し装置
81.2,82.2 インキ着けローラ
83.2 水着けローラ
100,101,102,115 モータ
105,116 胴
108,126,131 側壁
106,107,116,117 ジャーナル
112,118 ロータ
114,127 ステータ
123,124 エンドプレート
125 開口部
129 ベアリングリング
134 フランジ
135 据付クランプ
138 ストッパ
 
訂正の要旨 訂正事項
▲1▼平成11年 6月10日付けの本件請求人により補正された特許請求の範囲
「【請求項1】 版胴およびゴム胴(1.1,2.1)を備えた印刷装置(3)を有するオフセット印刷機であって、前記印刷装置(3)は該印刷装置(3)と同様の構成である他の印刷装置(4,1.2,2.2;13,1.4,2.4)とゴム対ゴムの原理で共働するか、または衛星胴(16)を介して共働し、前記ゴム胴(2.1)および前記版胴(1.1)および前記衛星胴(16)は歯車(10,8)を介して駆動結合され、前記印刷装置(3)の各胴(2.1,1.1,16)のうちの一つが電気モータ(7)によって駆動され、前記他の印刷機(4;13)の各胴(1.2,2.2;1.4,2.4)は歯車(19,20)を介して駆動結合され、かつ前記電気モータ(7)とは異なる別の電気モータ(7)によって駆動可能であることを特徴とするオフセット印刷機。
【請求項2】 前記各歯車(8,10,19,20)がそれぞれ平歯車として前記版胴(1.1;1.2)および前記ゴム胴(2.1;2.2)の駆動側のジャーナルに設けられ、二つ一組で互いに噛合することを特徴とする請求項1に記載のオフセット印刷機。
【請求項3】 折り装置および版胴およびゴム胴(1.1,2.1)を備えた印刷装置(3)を有するオフセット印刷機であって、前記印刷装置(3)は該印刷装置(3)と同様の構成である他の印刷装置(4,1.2,2.2)とゴム対ゴムの原理で共働するとともに衛星胴(16)と共働し、前記ゴム胴(2.1)および前記版胴(1.1)は歯車(10,8)を介して駆動結合され、前記印刷装置(3)の各胴(2.1,1.1,16)のうちの一つが電気モータ(7)によって駆動され、前記他の印刷機(4)の各胴(1.2,2.2)は歯車(19,20)を介して駆動結合され、かつ前記電気モータ(7)とは異なる別のモータ(7)によって駆動可能であり、さらに前記二つの印刷装置(3,4)と共働する衛星胴(16)がさらに他の電気モータ(7)によって駆動可能であることを特徴とするオフセット印刷機。
【請求項4】 前記各歯車(8,10,19,20)がそれぞれ平歯車として前記版胴(1.1;1.2)および前記ゴム胴(2.1;2.2)の駆動側のジャーナルに設けられ、二つ一組で互いに噛合することを特徴とする請求項3に記載のオフセット印刷機。」
を、
「【請求項1】 折り装置および版胴およびゴム胴(1.1,2.1)を備えた印刷機構(3)を有するオフセット印刷機であって、前記印刷機構(3)は該印刷機構(3)と同様の構成である他の印刷機構(4,1.2,2.2)とゴム対ゴムの原理で共働するとともに衛星胴(16)と共働し、前記ゴム胴(2.1)および前記版胴(1.1)は歯車(10,8)を介して駆動結合され、前記印刷機構(3)の各胴(2.1,1.1,16)のうちの一つが電気モータ(7)によって駆動され、前記他の印刷機構(4)の各胴(1.2,2.2)は歯車(19,20)を介して駆動結合され、かつ前記電気モータ(7)とは異なる別のモータ(7)によって駆動可能であり、さらに前記二つの印刷機構(3,4)と共働する衛星胴(16)がさらに他の電気モータ(7)によって駆動可能であることを特徴とするオフセット印刷機。
【請求項2】 前記各歯車(8,10,19,20)がそれぞれ平歯車として前記版胴(1.1;1.2)および前記ゴム胴(2.1;2.2)の駆動側のジャーナルに設けられ、二つ一組で互いに噛合することを特徴とする請求項2に記載のオフセット印刷機。」
と訂正する。
異議決定日 2003-02-06 
出願番号 特願平7-222284
審決分類 P 1 652・ 121- YA (B41F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中村 圭伸  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 六車 江一
番場 得造
登録日 2000-04-21 
登録番号 特許第3059081号(P3059081)
権利者 マン・ローラント・ドルックマシーネン・アーゲー
発明の名称 オフセット印刷機  
代理人 藤田 考晴  
代理人 渡邊 隆  
代理人 志賀 正武  
代理人 西 和哉  
代理人 青山 正和  
代理人 成瀬 重雄  
代理人 金田 暢之  
代理人 藤田 考晴  
代理人 渡邊 隆  
代理人 青山 正和  
代理人 村山 靖彦  
代理人 鈴木 三義  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
代理人 成瀬 重雄  
代理人 実広 信哉  
代理人 志賀 正武  
代理人 西 和哉  
代理人 伊藤 克博  
代理人 石橋 政幸  
代理人 高柴 忠夫  
代理人 高橋 詔男  
代理人 高橋 詔男  
代理人 高柴 忠夫  
代理人 鈴木 三義  

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