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審決分類 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  H01L
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1076341
異議申立番号 異議2001-73017  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-06-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-11-07 
確定日 2003-02-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3162767号「真空処理方法および真空処理装置」の請求項1〜9に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3162767号の請求項1〜9に係る特許を維持する。 
理由 [1]手続の経緯
特許第3162767号(平成3年12月9日出願、平成13年2月23日設定登録)は、異議申立人関戸美千代及び松原いづみにより特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成14年9月30日に訂正請求がなされたものである。

[2]訂正の適否についての判断
(1)訂正事項
(1-1)訂正事項a
明細書中の特許請求の範囲の請求項1を、特許請求の範囲の減縮を目的として、次のように訂正する。
「【請求項1】 被処理基板を真空処理室内の電極上に静電チャックを用いて保持し、真空中でプラズマを発生させるか、該被処理基板を荷電粒子で処理する工程と、次いで、前記真空処理室内の圧力を7mTorr以上5Torr以下にしてから前記被処理基板をリフトピンを用いて前記静電チャックから離脱させる工程とを有することを特徴とする真空処理方法。」

(1-2)訂正事項b
明細書中の特許請求の範囲の請求項2を、特許請求の範囲の減縮を目的として、次のように訂正する。
「【請求項2】 被処理基板を真空処理室内の静電チャックに静電吸着する工程と、次いで、前記真空処理室内の圧力を7mTorr以上5Torr以下にしてから前記被処理基板をリフトピンを用いて前記静電チャックから離脱させる工程とを有することを特徴とする真空処理方法。」

(1-3)訂正事項c
明細書中の特許請求の範囲の請求項6を、特許請求の範囲の減縮を目的として、次のように訂正する。
「【請求項6】真空中でプラズマを発生させるか、あるいは真空中で被処理基板を静電吸着させて処理するか、若しくは真空中で該被処理基板を荷電粒子で処理する真空処理装置において、電極上に前記被処理基板が静電チャックを用いて保持されている真空容器内の圧力を制御する圧力制御手段を設け、前記圧力制御手段により前記真空処理室内の圧力を7mTorr以上5Torr以下にしてから前記被処理基板をリフトピンを用いて前記静電チャックから離脱させることを特徴とする真空処理装置。」

(1-4)訂正事項d
上記訂正事項a〜cに示す特許請求の範囲の訂正に伴い、明細書中の段落番号【0006】の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、次のように訂正する。
「【課題を解決するための手段】本発明による真空処理方法は上記目的達成のため、被処理基板を真空処理室内の電極上に静電チャックを用いて保持し、真空中でプラズマを発生させるか、該被処理基板を荷電粒子で処理する工程と、次いで、前記真空処理室内の圧力を7mTorr以上5Torr以下にしてから前記被処理基板をリフトピンを用いて前記静電チャックから離脱させることを特徴とするものである。
また、本発明による真空処理方法は上記目的達成のため、被処理基板を真空処理室内の静電チャックに静電吸着する工程と、次いで、前記真空処理室内の圧力を7mTorr以上5Torr以下にしてから前記被処理基板をリフトピンを用いて前記静電チャックから離脱させる工程とを有することを特徴とするものである。
また、本発明による真空処理装置は上記目的達成のため、真空中でプラズマを発生させるか、あるいは真空中で被処理基板を静電吸着させて処理するか、若しくは真空中で該被処理基板を荷電粒子で処理する真空処理装置において、電極上に前記被処理基板が静電チャックを用いて保持されている真空容器内の圧力を制御する圧力制御手段を設け、該圧力制御手段により前記真空容器内の圧力を7mTorr以上5Torr以下にしてから前記被処理基板をリフトピンを用いて前記静電チャックから離脱させることを特徴とするものである。」

(2)訂正の適否
(2-1)訂正事項a、b、cについて
上記訂正事項a、b、cの内、「静電チャックを用いて保持し」の点及び「リフトピンを用いて静電チャックから離脱させる」の点については、明細書の段落【0009】〜【0010】、【0015】、【0018】、【0022】、【0026】、及び【0029】等に記載されており、特許請求の範囲の減縮に該当するものである。

(2-2)訂正事項dについて
上記訂正事項dについては、特許請求の範囲を訂正したことにあわせて発明の詳細な説明を訂正したものであって、明りょうでない記載の釈明に該当するものである。

そして、上記訂正事項a、b、cについては、いずれも願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

[3]異議申立てについて
(1)異議申立ての概要
(1-1)異議申立人関戸美千代は、証拠として、

甲第1号証:特開平2-110927号公報
甲第2号証:特開平2-234426号公報
甲第3号証:特開平3-48421号公報
甲第4号証:特開昭62-235736号公報

を提出して、本件特許の請求項1〜9に係る発明は、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項1〜9に係る発明についての特許は、同法第113条第1項の規定に該当し、取り消すべきものである旨主張している。

(1-2)異議申立人松原いづみは、証拠として、

甲第1号証:特開平3-161927号公報
甲第2号証:特開昭62-163325号公報
甲第3号証:特開昭63-156321号公報
甲第4号証:特開平2-256256号公報
甲第5号証:特開昭60-150632号公報
甲第6号証:特開昭60-79725号公報
甲第7号証:特開昭61-227184号公報
資料1:特開昭62-74082号公報
資料2:特開昭62-216327号公報
資料3:特開昭60-24018号公報

を提出して、本件特許の請求項1〜9に係る発明は、甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1〜9に係る発明についての特許は、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載に不備があり、同法第36条第4、5項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであり、それぞれ同法第113条第1項の規定に該当し、取り消すべきものである旨主張している。

(2)本件発明
訂正が認められた訂正明細書の請求項1〜9に係る発明(以下、「本件発明1〜9」という。)は、訂正明細書の請求項1〜9に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】 被処理基板を真空処理室内の電極上に静電チャックを用いて保持し、真空中でプラズマを発生させるか、該被処理基板を荷電粒子で処理する工程と、次いで,前記真空処理室内の圧力を7mTorr以上5Torr以下にしてから前記被処理基板をリフトピンを用いて前記静電チャックから離脱させる工程とを有することを特徴とする真空処理方法。
【請求項2】 被処理基板を真空処理室内の静電チャックに静電吸着する工程と、次いで、前記真空処理室内の圧力を7mTorr以上5Torr以下にしてから前記被処理基板をリフトピンを用いて前記静電チャックから離脱させる工程とを有することを特徴とする真空処理方法。
【請求項3】 前記圧力は真空容器内にガスを流すことにより調整されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空処理方法。
【請求項4】 前記真空処理室内の圧力を7mTorr乃至0.5Torrにしてから前記被処理基板を前記電極から離脱させることを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれかに記載の真空処理方法。
【請求項5】 前記真空処理室内の圧力を7mTorr乃至0.1Torrにしてから前記被処理基板を前記電極から離脱させる工程とを有することを特徴とする請求項4に記載の真空処理方法。
【請求項6】 真空中でプラズマを発生させるか、あるいは真空中で被処基板を静電吸着させて処理するか、若しくは真空中で該被処理基板を荷電粒で処理する真空処理装置において、電極上に前記被処理基板が静電チャックを用いて保持されている真空容器内圧力を制御する圧力制御手段を設け、前記圧力制御手段により前記真空処理内の圧力を7mTorr以上5Torr以下にしてから前記被処理基板をリフトピン用いて前記静電チャックから脱させることを特徴とする真空処理装置。
【請求項7】 前記真空容器内の圧力制御は、真空容器内にガスを流すことにより行われることを特徴とする請求項6に記載の真空処理装置。
【請求項8】 前記圧力制御手段により前記真空処理室内の圧力を7mTorr乃至0.5Torrにしてから前記被処理基板を前記電極から離脱させることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の真空処理装置。
【請求項9】 前記圧力制御手段により前記真空処理室内の圧力を7mTorr乃至0.1Torrにしてから前記被処理基板を前記電極から離脱させることを特徴とする請求項8に記載の真空処理装置。」

(3)証拠の記載事項
(3-1)異議申立人関戸美千代の提出した甲第1〜4号証
<甲第1号証>
甲第1号証の特開平2-110927号公報には、静電吸着により試料を保持するプラズマ処理装置に関する発明が第1〜3図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。
従来技術について、「一般のドライエッチング装置では、通常0.1Torr程度のプロセスガス圧によって被加工物質をエッチング処理しており」(2頁左上欄16〜18行)
実施例について、「第1図ないし第3図のドライエッチング装置で、・・・下部電極20への基板50の載置完了後、・・・プラズマにより基板50のエッチング処理が開始される。また、これと共に下部電極20には、直流電源103より直流電圧が印加される。基板50のプラズマによるエッチング処理の開始により、このプラズマ処理プロセスによって生じるセルフバイアス電圧と直流電圧103によって下部電極20に印加される直流電圧とにより、基板50は下部電極20に静電吸着されて実質的に密着し、固定される。」(4頁左上欄3行〜右上欄3行)
「エッチングの終了に伴って、放電空間30への処理ガスの供給と、下部電極20への直流電圧および高周波電力の印加が停止される。その後、引続き基板50に生じている静電吸着力は解除、この場合、電気的に電極上板26と同電位に保たれたピン113が基板50に当接することによって静電気の除去が行われる。ピン113の作動により基板50は、公知の搬送装置により真空処理室10外へ搬出される。」(4頁左下欄1〜10行)

<甲第2号証>
甲第2号証の特開平2-234426号公報には、被処理物を固定保持するための静電吸着装置を用いた反応性イオンエッチング装置に関する発明が第1〜8図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。
「本実施例の静電吸着装置1を使用する場合には、まずスイッチ6を開いた状態で被処理物9を静電吸着装置1の表面に載せ、平板電極3に直流電圧を印加し、被処理物9を吸着固定する。
ついで、被処理物9に所定の処理(例えばプラズマエッチング)を施し、処理終了後、平板電極3への直流電圧の印加を止める。そして、スイッチ5を閉じて導電体層4を介して被処理物9に帯電した電荷を放散する。本実施例の静電吸着装置1では導電体層4と被処理物9との接触面積が大きいため、被処理物9の帯電放散が効果的に行われ、短時間で被処理物9を静電吸着装置1の表面から脱離することができる。」(3頁左下欄15行〜右下欄8行)
「第6図に示すように陰極ブロック11の本体中央部には被エッチング材の昇降装置31が設けられており、アルミニウムブロック12を貫通するシャフト32およびシャフト32に取り付けられた静電吸着装置101の開口部15に配設されたウエーハ受けアーム14を上下させて、被エッチング材の昇降を行なう。」(4頁右下欄2〜8行)
「反応容器34内を高真空に排気した後、・・・反応ガス、またはこの反応ガスと共に・・・不活性ガスを、それぞれ流量制御バルブ44および45を介して反応容器34内に導入する。ここで反応ガスの流量および反応容器34内の圧力は、流量制御バルブ44および45ならびにコントロールバルブ45によって制御される。」(5頁左上欄15行〜右上欄3行)
「第8図に示した反応性イオンエッチング装置を用いて被エッチング材27をエッチングする際の条件は、通常、以下に示すとおりである。・・・エッチング時圧力1〜100mTorr、好ましくは2〜80mTorr」(5頁左下欄8行〜右下欄6行)
「第8図に示す構成の反応性イオンエッチング装置の真空反応容器34内に配置し、反応室内を3mTorrに減圧し、上記静電吸着装置101に被エッチング材27・・・を乗せ、・・・電圧を印加してウエーハを吸着固定した。」(6頁右下欄4〜10行)

<甲第3号証>
甲第3号証の特開平3-48421号公報には、反応生成物が被処理体に付着することを確実に防止して、所定の処理を施すことができるプラズマ処理方法に関する発明が開示されている。

<甲第4号証>
甲第4号証の特開昭62-235736号公報には、ゴミの巻き上がりによる製品の汚染を抑えながらベントおよびバキュームの時間を短縮したドライエッチング装置のベントおよびバキューム制御装置に関する発明が開示されている。

(3-2)異議申立人松原いづみの提出した甲第1〜7号証
<甲第1号証>
甲第1号証の特開平3-161927号公報には、プラズマエッチング方法に関する発明が第1〜5図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。
「第1図は本発明のプラズマエッチング装置の構成図である。・・・プラズマエッチング時には、可動自在な上部電極3が下方に降り、処理ガス容器10から切換弁12を介して処理ガスが供給され、上部電極3内に形成された多くの孔からシャワー状にウエハ5上に供給される。一方、上部電極3にはRF電源2が印加され、プラズマエッチングが行われる。その処理が完了すると、排気(真空)ポンプ13を駆動することにより、酸素容器11から切換弁12を介して酸素を供給し、上部電極3内に形成された多くの孔からシャワー状にウエハ5上に供給する。そこで、所定時間後、酸素の供給を停止し、排気(真空)ポンプ13を駆動しながらエッチングチャンバ1内を所定真空度まで排気する。・・・以下、具体的実施例について説明する。酸化膜のエッチングは、例えば、圧力1.7Torr Ar・・・の条件でRF電力750Wを印加して行われる。エッチングが終了したら、RF電力を停止し、Ar・・・の供給を停止するのと平行して酸素を、・・・エッチングチャンバ内に導入する。この酸素を停止してから、真空ポンプにより、エッチングチャンバ内を・・・排気する。ここで、エッチングチャンバ内の真空度が10mTorrになったら、ウエハを搬出する。」(2頁左下欄13行〜3頁左上欄16行)

<甲第2号証>
甲第2号証の特開昭62-163325号公報には、微細加工を行なうドライエッチング方法に関する発明が第1〜3図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。
従来技術の第3図について、「真空容器2内でエッチング物8がエッチング終了した後、・・・ガス供給を停止し、真空容器2の排気口13から排気手段により所定の圧力に達するまで排気する。次にゲートバルブ6を開き、エッチング前の被エッチング物7とエッチング後のエッチング物8を・・・移載手段により移しかえを行なった後、ゲートバルブ6を閉じる。真空予備容器1内に移しかえられたエッチング後のエッチング物8は真空予備容器1をバルブ14を開きN2を流して大気圧にもどしたのち、・・・新しいエッチング前の被エッチング物と移しかえられ、・・・真空容器2に移しかえられたエッチング前の被エッチング物7はエッチングガスボンベ3からガス流量調節器4を通して、エッチング条件である一定流量のエッチングガスを流すと共に真空容器の排気口13から・・・圧力調整バルブと・・・排気手段によって、真空容器1内をエッチング条件の一定圧力に保つ。その後、・・・エッチング前の被エッチング物7のドライエッチングを行なう。」(2頁右上欄2行〜左下欄9行)
実施例の第1図について、「Aは双方共通に取ったエッチング終了時点(高周波電源停止、エッチングガス供給停止、圧力調整バルブ全開)である。この時点でエッチングガスの供給を止めると共に真空容器2を排気によりB点まで減圧し、その状態を保ってエッチング物8と被エッチング物7との移し替えを行う(ここまで従来法と同じ)。この移し替え終了時点Cが、従来同様エッチングガス供給開始時点となる・・・なお、Bはゲートバルブ6が開く時点、Cはゲートバルブ6が閉じられる時点、それらB、C点の間のB1点はエッチング物8と被エッチング物7との移し替え時点である。」(3頁左下欄2行〜右下欄3行)
さらに、第1図には、ゲートバルブが開く時点であるB点のエッチング圧力が100mTorrであることが記載されている。

<甲第3号証>
甲第3号証の特開昭63-156321号公報には、プラズマエッチング
がなされている基板温度を一定にすることが可能なプラズマ処理装置に関する発明が第1図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。
「一般にプラズマエッチング法で用いるプラズマはグロー放電であり、プラズマ中の分子温度は比較的低温(200〜300℃程度)でありまた低圧(0.1torr程度)である。このためウエハをプラズマエッチングする場合、レジストの耐熱温度以下にウエハを冷却する必要があり、又エッチングの温度により大きく変化依存することが知られている。・・・従来、ウエハ温度を一定に保つため、静電吸着による方法、メカニカルクランプによる方法及びメカニカルクランプと熱伝導を併用する方法があった。」(1頁右欄9行〜2頁左上欄4行)
「静電吸着による方法及びメカニカルクランプによる方法は共にウエハと該ウエハと接触する温調された平面又は曲面間に微少なゴミが介在しただけで熱伝導が急速に悪化し、ウエハの温度調整が不安定であった。」(2頁右上欄2〜7行)
「本発明によればプラズマ処理中ウエハを均一な力(静電吸着)でクランプすることが可能であり、しかも静電吸着装置とウエハ間に均一な冷却が供給され、効率のよいウエハ温調が可能となる。」(3頁左欄13〜17行)

<甲第4号証>
甲第4号証の特開平2-256256号公報には、半導体ウエハを静電チャックに吸着保持させてプロセス処理を行う半導体ウエハ処理装置のウエハ保持機構に関する発明が第1図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。
「従来では静電チャックに吸着されているウエハを電圧印加停止後に強制離脱させる手段として、電極への電圧印加停止後にウエハの背面側からウエハの板面に向けて・・・不活性ガスをブローとして吹き付け、静電チャックの残留電荷による吸着力に抗してウエハをチャック面から強制離脱させるガスブロー離脱方式が知られている。」(2頁左上欄18〜右上欄5行)
「なお、前記したガスブローによるウエハ離脱方式の他に、ノックアウトピンなどを用いた機械的な離脱機構でウエハを静電チャックより強制的に離脱させる方式も試みられている」(3頁左上欄14〜17行)

<甲第5号証>
甲第5号証の特開昭60-150632号公報には、静電チャックにより固定された被処理物の離脱方式に関する発明が第2図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。
「被処理物Aのエッチングが終了した後、・・・ガスをガス供給管11から被処理物Aの裏面に直接吹き付けるようになされる。これにより、被処理物Aの裏面部分の誘電体膜4に蓄積された電荷がガス中に放電するので、被処理物Aは誘電体膜4から容易に離脱して支持台18上に載置される。」(3頁左欄1〜10行)

<甲第6号証>
甲第6号証の特開昭60-79725号公報には、静電チャックにより固定された被処理物の離脱装置に関する発明が第1図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。
「エッチング終了後・・・設置電位状態の支持台18をエアシリンダ16により上昇させて被処理物Aに接触させ、被処理物Aに蓄積された電荷を支持台18を通して逃がす。その後、・・・N2ガス・・・を送り、誘電体膜4をわずかに膨出させることにより、被処理物Aを離脱させる。」(2頁左上欄14行〜右上欄2行)

<甲第7号証>
甲第7号証の特開昭61-227184号公報には、連続処理型プラズマエッチング装置に関する発明が第2図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。
「第2図に示すように本発明装置は処理室20と予備室22とを備えそれぞれの室はバルブ24で区切られており、このバルブ24を開閉し、搬送機構23にてウエハースを予備室22よりテーブル21またはテーブル21から予備室22へ運び、処理室20は反応ガス源28より流れたガスをコントロールするガスコントロール機構27と、反応ガスを排気する排気機構30と、・・・反応ガス圧力をコントロールする圧力コントロール機構32とからなり、高周波26を印加し、プラズマを発生させている。」(2頁右上欄13行〜左上欄4行)

(4)対比・判断
(4-1)異議申立人関戸美千代の主張について
<本件発明1>
本件発明1と甲第1、2号証に記載の発明とを対比すると、甲第1号証に記載の「ピン113」、甲第2号証に記載の「シャフト32、ウエーハ受けアーム14」は、それぞれ本件発明1の「リフトピン」に相当するから、本件発明1と甲第1、2号証に記載の発明とは、「被処理基板を真空処理室内の電極上に静電チャックを用いて保持し、真空中でプラズマを発生させる工程と、次いで、前記被処理基板をリフトピンを用いて前記静電チャックから離脱させる工程とを有する真空処理方法」の点で一致するものの、本件発明1が「真空処理室内の圧力を7mTorr以上5Torr以下にしてから被処理基板を静電チャックから離脱させる」(以下、「構成A」という。)のに対し、甲第1、2号証に記載の発明はそのようなものではない点で相違する。
そこで上記相違点について以下検討する。
甲第1号証に記載の発明はピンにより基板を下部電極より除去するようにしたものであって、甲第1号証には0.1Torr程度のプロセスガス圧によってエッチング処理することが記載されているものの、基板の除去前に真空処理室内の圧力を調整するものではないし、また甲第2号証に記載の発明は処理終了後、静電吸着装置の導電体層を介して被処理物に帯電した電荷を放散することにより被処理物を静電吸着装置の表面から脱離するようにしたものであって、甲第2号証にはエッチング時の圧力を1〜100mTorrにすることが記載されているものの、この圧力は被処理基板を離脱させる際の圧力ではないから、甲第1、2号証のいずれにも本件発明1の上記構成Aについては記載も示唆もされていないし、また甲第3、4号証についても、本件発明1の上記構成Aについては記載も示唆もされていない。
そして、本件発明1は上記構成Aを採用することにより、スパーク放電を起こさずに被処理基板を静電チャックから離脱させることができるという作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

<本件発明2>
本件発明2は、本件発明1と同様に上記構成Aを有するものであるから、本件発明2についても、本件発明1と同じ理由により、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

<本件発明3〜5>
本件発明3〜5は、本件発明3が本件発明1、2のいずれかを引用する発明であり、本件発明4が本件発明1〜3のいずれかを引用する発明であり、本件発明5が本件発明4を引用する発明であって、本件発明3は本件発明1と同様に上記構成Aを有するものであり、本件発明4、5は本件発明1の上記構成Aの数値範囲をさらに限定したものであるから、本件発明3〜5についても、本件発明1と同じ理由により、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

<本件発明6>
本件発明6は、本件発明1と同様に上記構成Aを有するものであるから、本件発明6についても、本件発明1と同じ理由により、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

<本件発明7〜9>
本件発明7〜9については、本件発明7は本件発明6を引用する発明であり、本件発明8は本件発明6、7のいずれかを引用する発明であり、本件発明9は本件発明8を引用する発明であって、本件発明7は本件発明1と同様に上記構成Aを有するものであり、本件発明8、9は本件発明1の上記構成Aの数値範囲をさらに限定したものであるから、本件発明7〜9についても、本件発明1と同じ理由により、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4-2)異議申立人松原いづみの主張について
(4-2-1)本件発明1〜9と甲第1〜7号証との対比・判断
<本件発明1>
本件発明1と甲第1号証に記載の発明とを対比すると、甲第1号証に記載の発明は10mTorrにしてから被処理基板を離脱させているから、両者は、「被処理基板を真空処理室内の電極上に保持し、真空中でプラズマを発生させる工程と、次いで、真空処理室内の圧力を10mTorrにしてから被処理基板を離脱させる工程とを有する真空処理方法」の点で一致するものの、本件発明1が、「真空処理室内の圧力を7mTorr以上5Torr以下にしてから被処理基板をリフトピンを用いて静電チャックから離脱させる」(以下、「構成B」という。)工程を有するのに対し、甲第1号証に記載の発明はそのような工程を有しない点で相違する。
そこで上記相違点について検討すると、甲第1号証には、チャンバ内を排気してエッチングガスを10mTorrに減圧してから、ウエハを搬出する工程が記載されているものの、スパーク放電を起こさずにウエハを搬出することについては記載も示唆もされていないから、静電チャックによりウエハを電極に静電吸着させることが甲第3〜6号証に記載されているように周知の技術にすぎないとしても、甲第1号証に記載の真空処理方法に上記周知の技術である静電チャックを適用して、10mTorrに減圧してからウエハを静電チャックから離脱させることを容易に想到することはできない。
また、本件発明1と甲第2号証に記載の発明とを対比すると、甲第2号証に記載の発明は100mTorrにしてから被処理基板を離脱させているから、両者は、「被処理基板を真空処理室内の電極上に保持し、真空中でプラズマを発生させる工程と、次いで、真空処理室内の圧力を100mTorrにしてから被処理基板を離脱させる工程とを有する真空処理方法」の点で一致するものの、本件発明1が、上記構成Bを有するのに対し、甲第2号証に記載の発明はそのような工程を有しない点で相違する。
そこで上記相違点について検討すると、甲第2号証には、エッチングガスの供給を停止して排気し、100mTorrまで減圧し、その状態を保ってエッチング物の移し替えを行う工程が記載されているものの、スパーク放電を起こさずにウエハの移し替えを行うことについては記載も示唆もされていないから、静電チャックによりウエハを電極に静電吸着させることが甲第3〜6号証に記載されているように周知の技術にすぎないとしても、甲第2号証に記載の真空処理方法に上記周知の技術である静電チャックを適用して、100mTorrまで減圧してからウエハを静電チャックから離脱させることを容易に想到することはできない。
そして、本件発明1は、上記構成Bを採用することにより、スパーク放電を起こさずに被処理基板を静電チャックから離脱させることができるという作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

<本件発明2>
本件発明2は、本件発明1と同様に上記構成Bを有するものであって、静電チャックによりウエハを電極に静電吸着させることが甲第3〜6号証に記載されているように周知の技術にすぎないとしても、甲第1、2号証に記載の発明において上記周知の技術を適用する理由はないから、本件発明2についても、本件発明1と同じ理由により、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

<本件発明3〜5>
本件発明3〜5については、本件発明3は本件発明1、2のいずれかを引用する発明であり、本件発明4は本件発明1〜3のいずれかを引用する発明であり、本件発明5は本件発明4を引用する発明であって、本件発明3は本件発明1と同様に上記構成Bを有するものであり、本件発明4、5は本件発明1の上記構成Bの数値範囲をさらに限定したものであるから、本件発明3〜5についても、本件発明1と同じ理由により、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

<本件発明6>
本件発明6は、本件発明1と同様に上記構成Bを有するものであるから、真空容器内の圧力を制御する圧力制御手段が甲第7号証に記載されているように周知の技術にすぎないとしても、本件発明6については、本件発明1と同じ理由により、甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

<本件発明7〜9>
本件発明7〜9については、本件発明7は本件発明6を引用する発明であり、本件発明8は本件発明6、7のいずれかを引用する発明であり、本件発明9は本件発明8を引用する発明であって、本件発明7は本件発明1と同様に上記構成Bを有するものであり、本件発明8、9は本件発明1の上記構成Bの数値範囲をさらに限定したものであるから、本件発明7〜9についても、本件発明1と同じ理由により、甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4-2-2)記載不備
異議申立人松原いづみは、明細書の実施例に記載されているのは、被処理基板をプラズマまたはイオンビームを用いて処理するものだけであり、訂正前の請求項2〜5、6〜9に記載されているように、これらの処理を行わずに、単に被処理基板を真空処理室内の静電チャックに静電吸着し、真空処理室内の圧力を7mTorr以上5Torr以下にしてから前記被処理基板をリフトピンを用いて前記静電チャックから離脱させることは、何も記載されていないから、発明の詳細な説明には当業者が容易に発明を実施することができる程度に記載されていないし、また特許請求の範囲の記載は特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではない旨主張している。
しかしながら、訂正後の請求項2に記載された発明は、被処理基板を真空処理室内の静電チャックに静電吸着する工程と、次いで、真空処理室内の圧力を7mTorr以上5Torr以下にしてから被処理基板をリフトピンを用いて静電チャックから離脱させる工程の2工程を有する真空処理方法の発明であって、明細書の発明の詳細な説明には、荷電粒子等による処理を行わない場合について記載されていないとしても、訂正後の請求項2に記載の上記2工程を有する真空処理方法については少なくとも開示され(段落【0012】参照)、上記2工程を有する真空処理により、スパーク放電を起こさずに被処理基板を静電チャックから離脱させることができるという作用効果を奏するから、異議申立人の主張は採用できない。

[4]むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては本件発明1〜9についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであるとすることはできない。
また、他に本件発明1〜9についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであるとする理由を発見しない。
よって、平成6年法律第116号附則第14条の規定に基づく、平成7年政令第205号第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
真空処理方法および真空処理装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 被処理基板を真空処理室内の電極上に静電チャックを用いて保持し、真空中でプラズマを発生させるか、該被処理基板を荷電粒子で処理する工程と、
次いで、前記真空処理室内の圧力を7mTorr以上5Torr以下にしてから前記被処理基板をリフトピンを用いて前記静電チャックから離脱させる工程とを有することを特徴とする真空処理方法。
【請求項2】 被処理基板を真空処理室内の静電チャックに静電吸着する工程と、
次いで、前記真空処理室内の圧力を7mTorr以上5Torr以下にしてから前記被処理基板をリフトピンを用いて前記静電チャックから離脱させる工程とを有することを特徴とする真空処理方法。
【請求項3】 前記圧力は真空容器内にガスを流すことにより調整されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空処理方法。
【請求項4】 前記真空処理室内の圧力を7mTorr乃至0.5Torrにしてから前記被処理基板を前記電極から離脱させることを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれかに記載の真空処理方法。
【請求項5】 前記真空処理室内の圧力を7mTorr乃至0.1Torrにしてから前記被処理基板を前記電極から離脱させる工程とを有することを特徴とする請求項4に記載の真空処理方法。
【請求項6】 真空中でプラズマを発生させるか、あるいは真空中で被処理基板を静電吸着させて処理するか、若しくは真空中で該被処理基板を荷電粒子で処理する真空処理装置において、
電極上に前記被処理基板が静電チャックを用いて保持されている真空容器内の圧力を制御する圧力制御手段を設け、前記圧力制御手段により前記真空処理室内の圧力を7mTorr以上5Torr以下にしてから前記被処理基板をリフトピンを用いて前記静電チャックから離脱させることを特徴とする真空処理装置。
【請求項7】 前記真空容器内の圧力制御は、真空容器内にガスを流すことにより行われることを特徴とする請求項6に記載の真空処理装置。
【請求項8】 前記圧力制御手段により前記真空処理室内の圧力を7mTorr乃至0.5Torrにしてから前記被処理基板を前記電極から離脱させることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の真空処理装置。
【請求項9】 前記圧力制御手段により前記真空処理室内の圧力を7mTorr乃至0.1Torrにしてから前記被処理基板を前記電極から離脱させることを特徴とする請求項8に記載の真空処理装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、真空処理方法および真空処理装置に係り、詳しくは、半導体集積回路の製造に用いられる真空処理方法および真空処理装置に適用することができ、特に、被処理基板をリフトピンを用いて電極から離脱させる際、スパーク放電を生じ難くして素子領域のゲート絶縁膜等にダメージを与え難くすることができる真空処理方法および真空処理装置に関する。
【0002】
近年、高集積化が進むにつれて、より高精度でダメージのないプラズマ処理技術が求められている。このため、エッチング工程においても、よりダメージのないエッチング装置が要求されている。このため、ダメージのないエッチングを行う必要がある。
【0003】
【従来の技術】
図5は従来のエッチング装置の構成を示す概略図であり、図6は図5に示すカソード電極の詳細を示す図である。図5、6において、31はカソード電極、32は被処理基板、33はカソード電極31と対向するように配置された対向電極であり、34はガス導入口、35は圧力制御装置、36はターボ分子ポンプである。エッチングの手順としては、先ずイン側カセット室46にセットされた被処理基板32をイン側ロードロック37に搬送し、カソード電極31まで搬送する。次いで、カソード電極31まで搬送された被処理基板32を静電チャック39に吸着し、水冷ジャケット40に水を流すことにより被処理基板32を冷却する。この状態で、ターボ分子ポンプ36を用いて10-4Torrまで排気した後、エッチングガスを反応室41に導入し、圧力制御装置35により、所定の圧力に設定する。そこで、高周波電極42により反応室41にプラズマを発生させ、被処理基板32をエッチング処理する。次いで、エッチング終了後、ガスを止めて残留ガスを素早く排気するため、圧力制御装置35を全開にする。次いで、被処理基板32をアウト側ロードロック38に搬送するため、反応室41とアウト側ロードロック38間のゲートバルブ44を開け、静電チャック39の電源を切り、図6に示す如くカソード電極31の4カ所に開けられた穴45からリフトピン43を上昇させる。次いで、アウト側ロードロック38に設置された搬送アームにより被処理基板32を受けとり、アウト側ロードロック38に被処理基板32を輸送し、反応室41とアウト側ロードロック38間のゲートバルブ44を閉じる。そして、処理された被処理基板32をアウト側カセット室46に挿入する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来の真空処理方法および真空処理装置では、エッチング終了後アウト側ロードロック38に設置された搬送アームによりアウト側ロードロック38へ被処理基板32を搬送する際、カソード電極31の4カ所に開けられた穴45からリフトピン43を上昇させてカソード電極31から被処理基板32を離間させていたため、図7に示すように、リフトピン43を上昇させる時に、被処理基板32とカソード電極31との間で局部的にスパーク放電が生じることがあり、このスパーク放電により被処理基板32の素子領域のゲート絶縁膜等が破壊されたりして歩留りを低下させてしまうという問題があった。
【0005】
特に、図7に示すA部の如くリフトピン43に沿ってスパーク放電が発生し、この部分で主に不良が発生し易かった。
そこで本発明は、被処理基板をリフトピンを用いて電極から離脱させる際、スパーク放電を生じ難くすることができ、素子領域のゲート絶縁膜等にダメージを与え難くして歩留りを向上させることができる真空処理方法および真空処理装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明による真空処理方法は上記目的達成のため、被処理基板を真空処理室内の電極上に静電チャックを用いて保持し、真空中でプラズマを発生させるか、該被処理基板を荷電粒子で処理する工程と、次いで、前記真空処理室内の圧力を7mTorr以上5Torr以下にしてから前記被処理基板をリフトピンを用いて前記静電チャックから離脱させることを特徴とするものである。
また、本発明による真空処理方法は上記目的達成のため、被処理基板を真空処理室内の静電チャックに静電吸着する工程と、次いで、前記真空処理室内の圧力を7mTorr以上5Torr以下にしてから前記被処理基板をリフトピンを用いて前記静電チャックから離脱させる工程とを有することを特徴とするものである。
また、本発明による真空処理装置は上記目的達成のため、真空中でプラズマを発生させるか、あるいは真空中で被処理基板を静電吸着させて処理するか、若しくは真空中で該被処理基板を荷電粒子で処理する真空処理装置において、電極上に前記被処理基板が静電チャックを用いて保持されている真空容器内の圧力を制御する圧力制御手段を設け、該圧力制御手段により前記真空容器内の圧力を7mTorr以上5Torr以下にしてから前記被処理基板をリフトピンを用いて前記静電チャックから離脱させることを特徴とするものである。
【0007】
本発明においては、前記真空容器内の圧力制御は、真空容器内にガスを流すことにより行われる場合であってもよい。また、前記被処理基板を電極から離脱させる時の圧力は7mTorr以上5Torr以下であるのが好ましく、この場合、スパーク放電を生じないようにすることができ、従来のスパーク放電を生じさせる場合よりもデバイス不良を減らすことができ好ましい。好ましくは0.5Torr以上5Torr以下の範囲(不均一なグロー放電が生じる範囲)の場合であり、より好ましくは0.1Torr以上0.5Torrより小さい範囲(均一なグロー放電が生じる範囲)であり、最も好ましくは7mTorr以上0.1Torrより小さい範囲(放電が生じない範囲
)である。
【0008】
【作用】
上記したように、従来のエッチング装置では、被処理基板をカソード電極から離脱させる時に被処理基板とカソード電極との間でスパーク放電が生じ、デバイスに不良を生じさせ、歩留りを低下させるという問題を生じていた。そこで、本発明者等は各種実験の結果、リフトピンを上昇させる時の圧力を適宜変化させることによりスパーク放電を生じさせないようにすることができることを見い出した。以下、図面を用いて具体的に説明する。
【0009】
図1は本発明の原理説明のための真空処理装置におけるリフトピンを上昇させた時における圧力を変化させた時に観察されるグロー放電を示す図、図2は本発明の原理説明のためのリフトピンを上昇させた時における圧力を変化させた時の放電状態を説明する図、図3は本発明の原理説明のためのリフトピンを上昇させた時における圧力を変化させた時の不良の割合を説明する図である。図1において、1はカソード電極、2は被処理基板、3は静電チャックであり、4は水冷ジャケット、5はカソード電極1の4カ所に開けられた穴、6はリフトピンである。
【0010】
スパーク現像はチャック電源を切りリフトピン6を上げるときの圧力が、2、3mTorr以下と低い時に発生することが判った。そして、リフトピン6を上げる時の圧力を10-4Torrから5Torrまで変化させ、被処理基板2をカソード電極1から離脱させた時の放電状態を観察した結果、図2に示す比較例1、2の如く、リフトピン6を上昇させる時の圧力を1×10-4Torr、5×10-3Torrにすると、スパーク放電が生じていたが、これに対し図2に示す本発明1〜5の如く、リフトピン6を上昇させる時の圧力を7mTorr以上にすると、従来問題になっていたスパーク放電を生じないようにすることができることを確認した。
【0011】
具体的には、7mTorr以上0.1Torrより小さい範囲では被処理基板2をカソード電極1から離脱させた時、放電は観察されず、0.1Torr以上0.5Torrより小さい範囲では被処理基板2の裏面で全体に広がったグロー放電が観察された(図1)。また、0.5Torr以上5Torr以下の範囲では、被処理基板2をカソード電極1から離脱させた時には不均一なグロー放電が観察された。更に、カソード電極1から被処理基板2を離脱させる時の圧力を変化させて放電の仕方を制御し、デバイスの不良との関係をとった結果、図3に示す如く、比較例1、2の如く5mTorr以下では不良の割合が多いのに対して、本発明1〜5の如く7mTorr以上の圧力では不良の割合が急激に減少していることが判った。更に詳しく見ると、7mTorr以上1Torrより小さい範囲では、不良の割合が著しく減っており、0.1Torr以上0.5Torrより小さい範囲では、7mTorr以上0.1Torrより小さい範囲の場合より不良の割合は増えているものの、従来のスパーク放電が発生している比較例1、2の7mTorrより小さい範囲の場合より不良の割合は極端に減っている。また、1Torr以上5Torr以下の範囲では、0.1Torr以上0.5Torrより小さい範囲の場合より不良の割合は増えているものの、従来のスパーク放電が発生している場合より不良の割合は極端に減っている。この不良の割合と、被処理基板2の離脱時の放電とは対応しており、放電しない場合には、不良が殆ど発生せず、均一にグロー放電する場合には、若干不良は発生するが、放電しない場合と大差はない。しかし、不均一にグロー放電する場合には、不良はさらに発生するが、従来のスパーク放電する場合よりはかなり不良は少なくなる。即ち、不良は、被処理基板2に溜まった電荷の抜け方が集中して抜ける程、不良を発生し、均一に抜けたり、溜まったまま搬送され、ゆっくり電荷が抜けていく場合には不良を発生しないことが判る。
【0012】
このように、上記した課題を本発明では、真空中でプラズマを発生させたり、被処理基板を静電吸着させたり、電子ビームやイオンビームを用いた真空処理装置において、被処理基板が載置されている真空容器の圧力を適宜制御する圧力制御手段を設け、この圧力制御手段で圧力を適宜制御し、被処理基板を電極から離脱させる際の放電の形態を選択して被処理基板を電極から脱離させるように構成したため、スパーク放電を生じないように被処理基板を脱離させることができる。
【0013】
従って、上記したように真空容器の圧力を例えば7mTorr以上に上げて被処理基板を離脱させることにより、スパーク放電を起こさせずに被処理基板を電極から離脱させることができ、素子領域のゲート絶縁膜等にダメージを与え難くして歩留りを向上させることができる。
【0014】
【実施例】
以下に本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
(実施例1)
図5で説明した従来のエッチング装置と同様の装置を用いて、ポリ-Si(ゲート電極)のエッチングを行った。エッチング条件は、下記の通りである。
【0015】
rfパワー 300W
圧力 0.2Torr
ガス HBr 100cc/分
静電チャックは2極式(+と-両方印加するタイプ)を用いた。エッチング終了後、被処理基板を搬送するために、リフトピンを用い被処理基板を静電チャックから離脱させた。この時の圧力を制御するために、ガス導入口からN2ガスを10cc/分から500cc/分流し、圧力制御装置35を用いて、圧力を5mTorrから5Torrまで変化させて放電を観察した。その結果、図2に示した結果と全く同じ放電の形態になった。また、圧力制御装置を用いずに、窒素ガスのみを流し調べた結果、やはり、被処理基板の離脱時の圧力のみに起因し、図2に示した結果と全く同じ結果が得られた。さらに、窒素ガスの代わりに、He、HBr、Ar、O2ガス等で確認した結果、窒素ガスと同様の結果が得られた。従って、被処理基板を電極から離脱させる時の圧力のみで放電は決定されており、被処理基板を離脱させる時の圧力を以下のように変化させ、デバイスの不良数との関係をとったところ、
▲1▼ 3mTorr(スパーク放電)
▲2▼ 50mTorr(放電しない)
▲3▼ 0.1Torr(均一なグロー放電)
▲4▼ 1Torr(不均一なグロー放電)
▲1▼>>▲4▼>▲3▼>▲2▼の順で不良数が違っており、3mTorr以外は、全て大幅に不良数は減少しており、中でも50mTorrの時が最も良好な結果が得られた。
【0016】
また、静電チャックを用いずに、メカニカルに被処理基板を保持しエッチングした結果(エッチング条件は上記と同様)、圧力制御せずに、3mTorr前後で被処理基板を離脱させると、発生頻度は減るものの、スパーク放電が発生する。また、圧力制御し、7mTorr以上とすると、不良を起こすスパーク放電は観察されなくなった。
【0017】
さらに、上記実施例において、2極式の代わりに1極式(一のみを印加しプラズマに曝すことで被処理基板を吸着させる方式)の静電チャックを用いた場合も上記同様の結果が得られ、7mTorr以上の圧力でスパーク放電は観察されなくなった。
次に、エッチングが終了したサンプルを用いて、プラズマに曝さずに搬送のみを行ったところ、圧力制御しない場合(3mTorr)、頻度は少なくなるものの、スパーク放電が観察され、不良数も多くなっていた。圧力制御した場合は、上記同様の結果が得られ、7mTorr以上の圧力でスパーク放電は観察されなくなった。
(実施例2)
図5で説明した従来のエッチング装置と同様な装置を用いて、SiO2(ゲート絶縁膜)のエッチングを行った。エッチング条件は、下記の通りである。
【0018】
rfパワー 800W
圧力 0.2Torr
ガス CF4 100cc/分
CHF3 100cc/分
静電チャックは2極式(+と-両方印加するタイプ)を用いた。実施例1と同様に、エッチング終了後、被処理基板を搬送するために、リフトピンを用い被処理基板を静電チャックから離脱させた。この時の圧力を制御するために、ガス導入口からN2ガスを10cc/分から500cc/分流し、圧力制御装置35を用いて、圧力を5mTorrから5Torrまで変化させて放電を観察した。その結果、図2に示した結果と全く同じ放電の形態になった。また、圧力制御装置を用いずに、窒素ガスのみを流し調べた結果、やはり、被処理基板の離脱時の圧力のみに起因し、図2に示した結果と全く同じ結果が得られた。さらに、窒素ガスの代わりに、He、CF4、Ar、O2ガス等で確認した結果、窒素ガスと同様の結果が得られた。従って、被処理基板を電極から離脱させる時の圧力のみで放電は決定されており、被処理基板を離脱させる時の圧力を以下のように変化させ、デバイスの不良数との関係をとったところ、
▲1▼ 3mTorr(スパーク放電)
▲2▼ 50mTorr(放電しない)
▲3▼ 0.1Torr(均一なグロー放電)
▲4▼ 1Torr(不均一なグロー放電)
▲1▼>>▲4▼>▲3▼>▲2▼の順で不良数が違っており、3mTorr以外は、全て大幅に不良数は減少しており、中でも50mTorrの時が最も良好な結果が得られた。
【0019】
また、静電チャックを用いずに、メカニカルに被処理基板を保持しエッチングした結果(エッチング条件は上記と同様)、圧力制御せずに、3mTorr前後で被処理基板を離脱させると、発生頻度は減るものの、スパーク放電が発生する。また、圧力制御し、7mTorr以上とすると、不良を起こすスパーク放電は観察されなくなった。
【0020】
さらに、上記実施例において、1極式の静電チャックを用いた場合も上記同様の結果が得られ、7mTorr以上の圧力でスパーク放電は観察されなくなった。
次に、エッチングが終了したサンプルを用いて、プラズマに曝さずに搬送のみを行ったところ、圧力制御しない場合(3mTorr)、頻度は少なくなるものの、スパーク放電が観察され、不良数も多くなっていた。圧力制御した場合は、上記同様の結果が得られ、7mTorr以上の圧力でスパーク放電は観察されなくなった。
【0021】
さらに、アノードカップルタイプ(被処理基板に高周波が印加されず、アノード電極側に高周波が印加されるタイプの装置)のエッチング装置を用い、同様にエッチングを行った結果、被処理基板を電極から離脱させる際、圧力制御を行う場合(3mTorr)、頻度としては少なくなるが、スパーク放電が観察された。また、被処理基板を電極から離脱させる際、圧力を制御すると、上記同様変化し、7mTorr以上の圧力領域でスパーク放電しなくなった。
(実施例3)
図5で説明した従来のエッチング装置と同様な装置を用いて、PSG(層間絶縁膜)のエッチングを行った。エッチング条件は、下記の通りである。
【0022】
rfパワー 800W
圧力 0.2Torr
ガス CF4 100cc/分
CHF3 100cc/分
静電チャックは2極式(+と-両方印加するタイプ)を用いた。実施例1と同様に、エッチング終了後、被処理基板を搬送するために、リフトピンを用い被処理基板を静電チャックから離脱させた。この時の圧力を制御するために、ガス導入口からN2ガスを10cc/分から500cc/分流し、圧力制御装置35を用いて、圧力を5mTorrから5Torrまで変化させて放電を観察した。その結果、図2に示した結果と全く同じ放電の形態になった。また、圧力制御装置を用いずに、窒素ガスのみを流し調べた結果、やはり、被処理基板の離脱時の圧力のみに起因し、図2に示した結果と全く同じ結果が得られた。さらに、窒素ガスの代わりに、He、CF4、Ar、O2ガス等で確認した結果、窒素ガスと同様の結果が得られた。従って、被処理基板を電極から離脱させる時の圧力のみで放電は決定されており、被処理基板を離脱させる時の圧力を以下のように変化させ、デバイスの不良数との関係をとったところ、
▲1▼ 3mTorr(スパーク放電)
▲2▼ 50mTorr(放電しない)
▲3▼ 0.1Torr(均一なグロー放電)
▲4▼ 1Torr(不均一なグロー放電)
▲1▼>>▲4▼>▲3▼>▲2▼の順で不良数が違っており、3mTorr以外は、全て大幅に不良数は減少しており、中でも50mTorrの時が最も良好な結果が得られた。
【0023】
また、静電チャックを用いずに、メカニカルに被処理基板を保持しエッチングした結果(エッチング条件は上と同様)、圧力制御せずに、3mTorr前後で被処理基板を離脱させると、発生頻度は減るものの、スパーク放電が発生する。また、圧力制御し、7mTorr以上とすると、不良を起こすスパーク放電は観察されなくなった。
【0024】
さらに、上記実施例において、1極式の静電チャックを用いた場合も上記同様の結果が得られ、7mTorr以上の圧力でスパーク放電は観察されなくなった。
次に、エッチングが終了したサンプルを用いて、プラズマに曝さずに搬送のみを行ったところ、圧力制御しない場合(3mTorr)、頻度は少なくなるものの、スパーク放電が観察され、不良数も多くなっていた。圧力制御した場合は、上記同様の結果が得られ、7mTorr以上の圧力でスパーク放電は観察されなくなった。
【0025】
さらに、アノードカップルタイプ(被処理基板に高周波が印加されず、アノード電極側に高周波が印加されるタイプの装置)のエッチング装置を用い、同様にエッチングを行った結果、被処理基板を電極から離脱させる際、圧力制御を行う場合(3mTorr)、頻度としては少なくなるが、スパーク放電が観察された。また、被処理基板を電極から離脱させる際、圧力を制御すると、上記同様変化し、7mTorr以上の圧力領域でスパーク放電しなくなった。
(実施例4)
図5で説明した従来のエッチング装置と同様な装置を用いて、Al(配線)のエッチングを行った。エッチング条件は、下記の通りである。
【0026】
rfパワー 400W
圧力 0.1Torr
ガス BCl3 80cc/分
SiCl4 300cc/分
Cl2 80cc/分
静電チャックは2極式(+と-両方印加するタイプ)を用いた。実施例1と同様に、エッチング終了後、被処理基板を搬送するために、リフトピンを用い被処理基板を静電チャックから離脱させた。この時の圧力を制御するために、ガス導入口からN2ガスを10cc/分から500cc/分流し、圧力制御装置35を用いて、圧力を5mTorrから5Torrまで変化させて放電を観察した。その結果、図2に示した結果と全く同じ放電の形態になった。また、圧力制御装置を用いずに、窒素ガスのみを流し調べた結果、やはり、被処理基板の離脱時の圧力のみに起因し、図2に示した結果と全く同じ結果が得られた。さらに、窒素ガスの代わりに、He、Cl2、Ar、O2ガス等で確認した結果、窒素ガスと同様の結果が得られた。従って、被処理基板を電極から離脱させる時の圧力のみで放電は決定されており、被処理基板を離脱させる時の圧力を以下のように変化させ、デバイスの不良数との関係をとったところ、
▲1▼ 3mTorr(スパーク放電)
▲2▼ 50mTorr(放電しない)
▲3▼ 0.1Torr(均一なグロー放電)
▲4▼ 1Torr(不均一なグロー放電)
▲1▼>>▲4▼>▲3▼>▲2▼の順で不良数が違っており、3mTorr以外は、全て大幅に不良数は減少しており、中でも50mTorrの時が最も良好な結果が得られた。
【0027】
また、静電チャックを用いずに、メカニカルに被処理基板を保持しエッチングした結果(エッチング条件は上記と同様)、圧力制御せずに、3mTorr前後で被処理基板を離脱させると、発生頻度は減るものの、スパーク放電が発生する。また、圧力制御し、7mTorr以上とすると、不良を起こすスパーク放電は観察されなくなった。
【0028】
さらに、上記実施例において、1極式の静電チャックを用いた場合も上記同様の結果が得られ、7mTorr以上の圧力でスパーク放電は観察されなくなった。
次に、エッチングが終了したサンプルを用いて、プラズマに曝さずに搬送のみを行ったところ、圧力制御しない場合(3mTorr)、頻度は少なくなるものの、スパーク放電が観察され、不良数も多くなっていた。圧力制御した場合は、上記同様の結果が得られ、7mTorr以上の圧力でスパーク放電は観察されなくなった。
(実施例5)
図4は本発明に適用できるイオンビーム装置の構成を示す概略図である。図4において、図5と同一符号は同一または相当部分を示し、11はプラズマ生成室である。
【0029】
図4に示すイオンビーム装置を用いて、ポリSiのエッチングを行った。エッチング条件は、以下の通りである。
マイクロ波パワー 1kW
ガス Cl2 30cc/分
圧力 3×10-4Torr
イオン引き出し電圧 400V
エッチングは、先ずカセットにセットされた被処理基板32をイン側ロードロック37に搬送し、サセプターまで搬送する。サセプターまで搬送された被処理基板32は2極式の静電チャックに吸着され、水冷ジャケット(図5に示した従来と同じ構造)に水を流すことにより被処理基板32を冷却している。この状態で、ターボ分子ポンプ36を用い、10-5Torrまで排気した後、エッチングガスをプラズマ生成室11に導入し、圧力制御装置35を用いて、所定の圧力に合わせる。次いで、2.45GHzのマイクロ波を導入し、プラズマ生成室11にプラズマを発生させる。この時、マイクロ波と共鳴するような磁場強度(この場合は875ガウス)をプラズマ生成室11内に発生させておく。このような状態にすることで、低圧で高密度なプラズマを発生させることができる。さらに、対向電極にイオンを加速し、電子を追い返すような電圧(この場合は、0Vと-400V)を印加することで、イオンのみを被処理基板32に加速しエッチングする。エッチング終了後、被処理基板を搬送するために、リフトピンを用い被処理基板を静電チャックから離脱させた。この時の圧力を制御するために、ガス導入口からN2ガスを10cc/分から500cc/分流し、圧力制御装置35を用いて、圧力を5mTorrから5Torrまで変化させて放電を観察した。その結果、図2に示した結果と全く同じ放電の形態になった。また、圧力制御装置を用いずに、窒素ガスのみを流し調べた結果、やはり、被処理基板の離脱時の圧力のみに起因し、図2に示した結果と全く同じ結果が得られた。さらに、窒素ガスの代わりに、He、Cl2、Ar、O2ガス等で確認した結果、窒素ガスと同様の結果が得られた。従って、被処理基板を電極から離脱させる時の圧力のみで放電は決定されており、被処理基板を離脱させる時の圧力を以下のように変化させ、デバイスの不良数との関係をとったところ、
▲1▼ 3mTorr(スパーク放電)
▲2▼ 50mTorr(放電しない)
▲3▼ 0.1Torr(均一なグロー放電)
▲4▼ 1Torr(不均一なグロー放電)
▲1▼>>▲4▼>▲3▼>▲2▼の順で不良数が違っており、3mTorr以外は、全て大幅に不良数は減少しており、中でも50mTorrの時が最も良好な結果が得られた。
【0030】
また、静電チャックを用いずに、メカニカルに被処理基板を保持しエッチングした結果(エッチング条件は上記と同様)、圧力制御せずに、3mTorr前後で被処理基板を離脱させると、発生頻度は減るものの、スパーク放電が発生する。また、圧力制御し、7mTorr以上とすると、不良を起こすスパーク放電は観察されなくなった。
【0031】
次に、エッチングが終了したサンプルを用いて、プラズマに曝さずに搬送のみを行ったところ、圧力制御しない場合(3mTorr)、頻度は少なくなるものの、スパーク放電が観察され、不良数も多くなっていた。圧力制御した場合は、上記同様の結果が得られ、7mTorr以上の圧力でスパーク放電は観察されなくなった。
また、図4に示すイオンビーム装置において、引き出し電極に上記実施例と逆の電圧(0Vと+400V)を印加し、エッチング後の基板を-に帯電させ、リフトピンを上げたところ、上記実施例と全く同様な現象が観察された。従って、電子ビームを用いた装置でも被処理基板と電極の離脱時の放電は発生し、デバイスの不良を起こしてしまうことが判る。
【0032】
このように、被処理基板を電極から離脱させる際のスパーク放電の有無は、離脱時の圧力のみに決定されており、エッチングする膜が何であるかには依存していない。従って、ガスを流したり、圧力制御装置を用いて離脱時の圧力を制御することで、不良数を大幅に低減することが可能である。また、このスパーク放電の有無は、被処理基板が荷電粒子により処理(プラズマ、イオン、電子による処理)されたり、静電チャックで保持され、被処理基板に電荷が蓄積されて発生することが、上記実施例から判る。
(実施例6)
実施例1〜実施例5においては、被処理基板をリフトピンを用いて電極から離脱させる方法について述べたが、リフトピンを用いずにガスを用いて離脱させる方法においてもN2、He、Ar、O2等変化させ、離脱時の圧力を変化させた結果、リフトピンを用いた場合と同様な放電が観察された。
【0033】
すなわち、7mTorr以上の圧力でスパーク放電は観察されず、不良数も7mTorr以上の圧力で大幅に減少した。
このように、被処理基板を離脱させる方法として、リフトピンを用いたり、ガスを用いた場合でも全く同じ効果が得られ、離脱の方法に依らない事がわかる。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、被処理基板を電極から離脱させる際、スパーク放電を生じ難くすることができ、素子領域のゲート絶縁膜等にダメージを与え難くして歩留りを向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の原理説明のための真空処理装置におけるリフトピンを上昇させた時の圧力を変化させた時に観察されるグロー放電を示す図である。
【図2】
本発明の原理説明のためのリフトピンを上昇させた時における圧力を変化させた時の放電状態を説明する図である。
【図3】
本発明の原理説明のためのリフトピンを上昇させた時における圧力を変化させた時の不良の割合を説明する図である。
【図4】
本発明に適用できるイオンビームを用いた真空処理装置の構成を示す概略図である。
【図5】
従来例のエッチング装置の構成を示す概略図である。
【図6】
図5に示すカソード電極の詳細を示す図である。
【図7】
従来例の課題を説明する図である。
【符号の説明】
1 カソード電極
2 被処理基板
3 静電チャック
4 水冷ジャケット
5 穴
6 リフトピン
11 プラズマ生成室
 
訂正の要旨 ▲1▼ 訂正事項a
明細書中の特許請求の範囲の請求項1を、特許請求の範囲の減縮を目的として、次のように訂正する。
「【請求項1】被処理基板を真空処理室内の電極上に静電チャックを用いて保持し、真空中でプラズマを発生させるか、該被処理基板を荷電粒子で処理する工程と、次いで、前記真空処理室内の圧力を7mTorr以上5Torr以下にしてから前記被処理基板をリフトピンを用いて前記静電チャックから離脱させる工程とを有することを特徴とする真空処理方法。」
▲2▼ 訂正事項b
明細書中の特許請求の範囲の請求項2を、特許請求の範囲の減縮を目的として、次のように訂正する。
「【請求項2】被処理基板を真空処理室内の静電チャックに静電吸着する工程と、次いで、前記真空処理室内の圧力を7mTorr以上5Torr以下にしてから前記被処理基板をリフトピンを用いて前記静電チャックから離脱させる工程とを有することを特徴とする真空処理方法。」
▲3▼ 訂正事項c
明細書中の特許請求の範囲の請求項6を、特許請求の範囲の減縮を目的として、次のように訂正する。
「【請求項6】真空中でプラズマを発生させるか、あるいは真空中で被処理基板を静電吸着させて処理するか、若しくは真空中で該被処理基板を荷電粒子で処理する真空処理装置において、電極上に前記被処理基板が静電チャックを用いて保持されている真空容器内の圧力を制御する圧力制御手段を設け、前記圧力制御手段により前記真空処理室内の圧力を7mTorr以上5Torr以下にしてから前記被処理基板をリフトピンを用いて前記静電チャックから離脱させることを特徴とする真空処理装置。」
▲4▼ 訂正事項d
上記訂正事項a〜cに示す特許請求の範囲の訂正に伴い、明細書中の段落番号【0006】の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、次のように訂正する。
「【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明による真空処理方法は上記目的達成のため、被処理基板を真空処理室内の電極上に静電チャックを用いて保持し、真空中でプラズマを発生させるか、該被処理基板を荷電粒子で処理する工程と、次いで、前記真空処理室内の圧力を7mTorr以上5Torr以下にしてから前記被処理基板をリフトピンを用いて前記静電チャックから離脱させることを特徴とするものである。
また、本発明による真空処理方法は上記目的達成のため、被処理基板を真空処理室内の静電チャックに静電吸着する工程と、次いで、前記真空処理室内の圧力を7mTorr以上5Torr以下にしてから前記被処理基板をリフトピンを用いて前記静電チャックから離脱させる工程とを有することを特徴とするものである。
また、本発明による真空処理装置は上記目的達成のため、真空中でプラズマを発生させるか、あるいは真空中で被処理基板を静電吸着させて処理するか、若しくは真空中で該被処理基板を荷電粒子で処理する真空処理装置において、電極上に前記被処理基板が静電チャックを用いて保持されている真空容器内の圧力を制御する圧力制御手段を設け、該圧力制御手段により前記真空容器内の圧力を7mTorr以上5Torr以下にしてから前記被処理基板をリフトピンを用いて前記静電チャックから離脱させることを特徴とするものである。」
異議決定日 2003-01-17 
出願番号 特願平3-324697
審決分類 P 1 651・ 534- YA (H01L)
P 1 651・ 121- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 今井 淳一  
特許庁審判長 関根 恒也
特許庁審判官 雨宮 弘治
川真田秀男
登録日 2001-02-23 
登録番号 特許第3162767号(P3162767)
権利者 富士通株式会社
発明の名称 真空処理方法および真空処理装置  
代理人 有我 軍一郎  
代理人 有我 軍一郎  

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