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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B02C
管理番号 1076357
異議申立番号 異議2002-71426  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-05-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-06-07 
確定日 2003-02-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3236590号「紙葉細断装置」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3236590号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許3236590号の請求項1ないし5に係る発明についての出願は、平成11年11月17日に特許出願され、平成13年9月28日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その全請求項に係る発明の特許に対して、申立人ナカバヤシ株式会社より特許異議の申立てがなされ、平成14年8月22日付けで取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成14年11月1日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1中の「斜め方向に形成された投入口から投入された紙葉類を縦方向に細断する前記斜め方向の上下に各々配設された一対のカッタローラと、回転軸の回りに螺旋状に形成されたスパイラルカッタと、前記スパイラルカッタと対向して配設され、前記カッタローラで細断された紙葉類を前記スパイラルカッタとともに横方向に細断するフラットカッタと、を備え、
前記フラットカッタは、前記斜め方向に対し上側に配設されていることを特徴とする紙葉細断装置。」を「斜め方向に形成された投入口から投入された紙葉類を縦方向に細断する前記斜め方向の上下に各々配設された一対のカッタローラと、回転軸の回りに螺旋状に形成されたスパイラルカッタと、前記スパイラルカッタと対向して配設され、前記カッタローラで細断された紙葉類を前記スパイラルカッタとともに横方向に細断するフラットカッタと、を備え、
前記フラットカッタは、前記斜め方向に対し上側に配設され、前記スパイラルカッタは、前記フラットカッタとともに紙用類を裁断するように前記斜め方向に対し下側から上側に向かって回転し、前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラにより切断された紙葉類が前記スパイラルカッタの刃と刃の間に形成される凹状のポケット部によって受けられるように配設されており、前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラと連動して、正転方向に回転可能であるが逆転方向には回転不能に配設されていることを特徴とする紙葉細断装置。」と訂正する。
イ.訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2中の「斜め方向に形成された投入口から投入された紙葉類を縦方向に細断する一対のカッタローラと、回転軸の回りに螺旋状に形成されたスパイラルカッタと、前記スパイラルカッタと対向して配設され、前記カッタローラで細断された紙葉類を前記スパイラルカッタとともに横方向に細断するフラットカッタと、を備え、
前記フラットカッタは、前記一対のカッタローラにより切断された紙葉類が排出される切断排出口の上側に配設されていることを特徴とする紙葉細断装置。」を「斜め方向に形成された投入口から投入された紙葉類を縦方向に細断する一対のカッタローラと、回転軸の回りに螺旋状に形成されたスパイラルカッタと、前記スパイラルカッタと対向して配設され、前記カッタローラで細断された紙葉類を前記スパイラルカッタとともに横方向に細断するフラットカッタと、を備え、
前記フラットカッタは、前記一対のカッタローラにより切断された紙葉類が排出される切断排出口の上側に配設され、前記スパイラルカッタは、前記フラットカッタとともに紙用類を裁断するように前記斜め方向に対し下側から上側に向かって回転し、前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラにより切断された紙葉類が前記スパイラルカッタの刃と刃の間に形成される凹状のポケット部によって受けられるように配設されており、前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラと連動して、正転方向に回転可能であるが逆転方向には回転不能に配設されていることを特徴とする紙葉細断装置。」と訂正する。
ウ.訂正事項c
特許請求の範囲の請求項4及び請求項5を削除する。
エ.訂正事項d
明細書の段落【0012】中の「前記フラットカッタは、前記斜め方向に対し上側に配設されていることを特徴とする。」を「前記フラットカッタは、前記斜め方向に対し上側に配設され、前記スパイラルカッタは、前記フラットカッタとともに紙用類を裁断するように前記斜め方向に対し下側から上側に向かって回転し、前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラにより切断された紙葉類が前記スパイラルカッタの刃と刃の間に形成される凹状のポケット部によって受けられるように配設されており、前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラと連動して、正転方向に回転可能であるが逆転方向には回転不能に配設されていることを特徴とすることを特徴とする。」と訂正する。
オ.訂正事項e
明細書の段落【0013】中の「前記フラットカッタは、前記一対のカッタローラにより切断された紙葉類が排出される切断排出口の上側に配設されていることを特徴とする。」を「前記フラットカッタは、前記一対のカッタローラにより切断された紙葉類が排出される切断排出口の上側に配設され、前記スパイラルカッタは、前記フラットカッタとともに紙用類を裁断するように前記斜め方向に対し下側から上側に向かって回転し、前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラにより切断された紙葉類が前記スパイラルカッタの刃と刃の間に形成される凹状のポケット部によって受けられるように配設されており、前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラと連動して、正転方向に回転可能であるが逆転方向には回転不能に配設されていることを特徴とすることを特徴とする。」と訂正する。
カ.訂正事項f
明細書の段落【0015】及び【0016】の記載を削除する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項a、bは、特許請求の範囲の請求項1、2に対して、「スパイラルカッタは、フラットカッタとともに紙用類を裁断するように斜め方向に対し下側から上側に向かって回転(する)」発明特定事項、請求項4及び5の発明特定事項である「スパイラルカッタは、一対のカッタローラにより切断された紙葉類がスパイラルカッタの刃と刃の間に形成される凹状のポケット部によって受けられるように配設(した)」発明特定事項、及び「スパイラルカッタは、一対のカッタローラと連動して、正転方向に回転可能であるが逆転方向には回転不能に配設されている」発明特定事項を新たに追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする明細書の訂正に該当する。さらに、「スパイラルカッタは、フラットカッタとともに紙用類を裁断するように斜め方向に対し下側から上側に向かって回転(する)」点は、例えば図2の記載から当業者にとって、直接的かつ一義的に導き出せる事項である。よって、訂正事項a、bは、新規事項の追加に該当せず、さらに、本件発明の課題に影響を及ぼすものではないから、実質上、特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
上記訂正事項cは、請求項4、5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする明細書の訂正に該当するものであり、新規事項の追加に該当せず、さらに、本件発明の課題に影響を及ぼすものではないから、実質上、特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
上記訂正事項d、e、fは、上記訂正事項a、b、cにおける特許請求の範囲の請求項の訂正と整合させて、明確化を図るためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする明細書の訂正に該当する。
そして、訂正事項d、e、fは、いずれも新規事項の追加に該当せず、本件発明の課題に影響を及ぼすものではないから、実質上、特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項および同条第3項において準用する同法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについての判断
(1)本件発明
上記2.で示したように、訂正が認められるから、本件の請求項1、2及び3に係る発明(以下、「本件発明1、2及び3」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載した事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】斜め方向に形成された投入口から投入された紙葉類を縦方向に細断する前記斜め方向の上下に各々配設された一対のカッタローラと、回転軸の回りに螺旋状に形成されたスパイラルカッタと、前記スパイラルカッタと対向して配設され、前記カッタローラで細断された紙葉類を前記スパイラルカッタとともに横方向に細断するフラットカッタと、を備え、
前記フラットカッタは、前記斜め方向に対し上側に配設され、前記スパイラルカッタは、前記フラットカッタとともに紙用類を裁断するように前記斜め方向に対し下側から上側に向かって回転し、前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラにより切断された紙葉類が前記スパイラルカッタの刃と刃の間に形成される凹状のポケット部によって受けられるように配設されており、
前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラと連動して、正転方向に回転可能であるが逆転方向には回転不能に配設されていることを特徴とする紙葉細断装置。
【請求項2】斜め方向に形成された投入口から投入された紙葉類を縦方向に細断する一対のカッタローラと、回転軸の回りに螺旋状に形成されたスパイラルカッタと、前記スパイラルカッタと対向して配設され、前記カッタローラで細断された紙葉類を前記スパイラルカッタとともに横方向に細断するフラットカッタと、を備え、
前記フラットカッタは、前記一対のカッタローラにより切断された紙葉類が排出される切断排出口の上側に配設され、前記スパイラルカッタは、前記フラットカッタとともに紙用類を裁断するように前記斜め方向に対し下側から上側に向かって回転し、前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラにより切断された紙葉類が前記スパイラルカッタの刃と刃の間に形成される凹状のポケット部によって受けられるように配設されており、前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラと連動して、正転方向に回転可能であるが逆転方向には回転不能に配設されていることを特徴とする紙葉細断装置。
【請求項3】前記スパイラルカッタは、前記スパイラルカッタから前記フラットカッタに向かう方向に回転するように配設されていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の紙葉細断装置。」

(2)当審が通知した取消しの理由で引用した刊行物
刊行物1:特開平11-169737号公報
刊行物2:特開平2-52052号公報

(3)各刊行物記載の発明
ア.刊行物1には、以下の事項が記載されている。
a.「【発明の属する技術分野】本発明は、廃棄用紙などを細断するシュレッダーの改良に関し、更に詳細には横切り細断部の寿命が延びるようにしたシュレッダーに関する。」(段落【0001】)
b.「図5において、12は廃棄用紙Pなどを細断するためのシュレッダーである。・・・該上部空間部13には、複数の縦切り用ディスク状カッターAからなる一対のカッターブロック16,16を組み合わせてなる縦切り細断部が設けられている。該カッターブロック16,16の下方には横切り用回転カッター18及び横切り用固定カッター17からなる横切り細断部が設けられている。該縦切り細断部及び横切り細断部によって細断部20が構成されている。」(段落【0015】、【0016】)
c.「横切り用回転カッター18としてはスパイラル状の切断刃を備えた回転カッターを用い、横切り用固定カッター17としてはフラットカッターを用いた場合が図示されている。」(段落【0019】)
d.「図2に示されるように、前記した複数の縦切り用ディスク状カッターAからなるカッターブロック16は駆動軸19に回転可能に取りつけられ、該駆動軸19の一端部には駆動ギヤ21が固着されている。また、スパイラル状回転カッター18は駆動軸23に回転可能に設けられ、該駆動軸23の一端部には小ギヤ25が取りつけられ、かつ該小ギヤの外側の駆動軸23の端部の駆動部には逆転防止手段、例えば、カムクラッチ27が取りつけられている。該カムクラッチ27は正回転しかしないように作動する。・・・該逆転防止手段は該横切り用回転カッター18の逆転を防止すればよいもので、上記した正方向にしか回転しないように作動するカムクラッチ27の他に、その他の公知の手段として、ワンウェイクラッチ等を適用して同様の機能を達成することもできる。」(段落【0020】、【0021】)
そして、図1及び図5から、「斜め方向に形成された投入口」が設けられ、「一対のカッターブロック16,16が、投入口の斜め方向の上下に各々配設されている」こと、「横切り用固定カッター17が、投入口の斜め方向に対し下側、又は、一対のカッターブロック16,16により切断された廃棄用紙Pが排出される切断排出口の下側に配設されている」こと、及び、「横切り用回転カッター18の刃と刃の間に、切断された廃棄用紙Pを受けることが可能である凹状をなす部分が形成されている」こと、および「横切り用回転カッター18が投入口の斜め方向に対して上側から下側に向かって回転する」ことが看取できる。
してみると、刊行物1には、「斜め方向に形成された投入口から投入された廃棄用紙Pを縦方向に細断する前記斜め方向の上下に各々配設された一対のカッターブロック16,16と、スパイラル状の切断刃を備えた回転カッターからなる横切り用回転カッター18と、前記横切り用回転カッター18と対向して配設され、前記カッターブロック16,16で細断された廃棄用紙Pを前記横切り用回転カッター18とともに横方向に細断するフラットカッターからなる横切り用固定カッター17と、を備え、前記横切り用固定カッター17は、前記斜め方向に対し下側に配設されており、前記横切り用回転カッター18は、横切り用固定カッタ17とともに廃棄用紙Pを裁断するように、前記横切り用回転カッター18から前記横切り用固定カッター17に向かう方向、かつ横切り用回転カッター18が投入口の斜め方向に対して上側から下側に向かって回転するように配設されており、前記横切り用回転カッター18は、前記一対のカッターブロック16,16により切断された廃棄用紙Pが前記横切り用回転カッター18の刃と刃の間に形成される凹状をなす部分によって受けられるように配設されており、前記横切り用回転カッター18は、前記一対のカッターブロック16,16と連動して、 正転方向に回転可能であるが逆転方向には回転不能に配設されている廃棄用紙Pを細断するシュレッダー。」という発明(以下、「刊行物1記載の発明A」という。)

および、「斜め方向に形成された投入口から投入された廃棄用紙Pを縦方向に細断する一対のカッターブロック16,16と、スパイラル状の切断刃を備えた回転カッターからなる横切り用回転カッター18と、前記横切り用回転カッター18と対向して配設され、前記カッターブロック16,16で細断された廃棄用紙Pを前記横切り用回転カッター18とともに横方向に細断するフラットカッターからなる横切り用固定カッター17と、を備え、前記横切り用固定カッター17は、前記一対のカッターブロック16,16により切断された廃棄用紙Pが排出される切断排出口の下側に配設されており、前記横切り用回転カッター18は、横切り用固定カッター17とともに廃棄用紙Pを裁断するように、前記横切り用回転カッター18から前記横切り用固定カッター17に向かう方向、かつ横切り用回転カッター18が投入口の斜め方向に対して上側から下側に向かって回転するように配設されており、前記横切り用回転カッター18は、前記一対のカッターブロック16,16により切断された廃棄用紙Pが前記横切り用回転カッター18の刃と刃の間に形成される凹状をなす部分によって受けられるように配設されており、前記横切り用回転カッター18は、前記一対のカッターブロック16,16と連動して、 正転方向に回転可能であるが逆転方向には回転不能に配設されている廃棄用紙Pを細断するシュレッダー。」という発明(以下、「刊行物1記載の発明B」という。)
が記載されているものと認められる。

イ.刊行物2には、以下の事項が記載されている。
e.「産業上の利用分野 本発明は、書類を解読不可能に細かく細断するための書類細断機に関する。」(第1頁左下欄第13〜15行)
f.「回転カッター1が矢印A方向に回転するときは、螺旋状の刃10と固定カッター17とにより細断され、矢印B方向に回転するときは、螺旋状に刃11と固定カッター16により細断される。」(第2頁右下欄末行〜第3頁左上欄第4行)

(4)対比・判断
ア.本件発明1について
本件発明1と刊行物1記載の発明Aとを対比すると、後者の「廃棄用紙P」は前者の「紙葉類」に相当し、以下同様に、「一対のカッターブロック16,16」は「一対のカッタローラ」に、「スパイラル状の切断刃を備えた回転カッターからなる横切り用回転カッター18」は「回転軸の回りに螺旋状に形成されたスパイラルカッタ」に、「フラットカッターからなる横切り用固定カッター17」は「フラットカッタ」に、「凹状をなす部分」は、「凹状のポケット部」に、「廃棄用紙Pを細断するシュレッダー」は「紙葉細断装置」に、それぞれ相当すると認められる。
してみると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。
【一致点】
斜め方向に形成された投入口から投入された紙葉類を縦方向に細断する前記斜め方向の上下に各々配設された一対のカッタローラと、回転軸の回りに螺旋状に形成されたスパイラルカッタと、前記スパイラルカッタと対向して配設され、前記カッタローラで細断された紙葉類を前記スパイラルカッタとともに横方向に細断するフラットカッタと、を備え、
前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラにより切断された紙葉類が前記スパイラルカッタの刃と刃の間に形成される凹状のポケット部によって受けられるように配設されており、
前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラと連動して、正転方向に回転可能であるが逆転方向には回転不能に配設されていることを特徴とする紙葉細断装置。
【相違点】
フラットカッタの配設構成について、本件発明1は、「フラットカッタは、斜め方向に対し上側に配設され、スパイラルカッタは、フラットカッタとともに紙葉類を裁断するように前記斜め方向に対し下側から上側に向かって回転」するのに対し、刊行物1記載の発明は、「フラットカッタは、前記斜め方向に対し下側に配設され、スパイラルカッタは、フラットカッタとともに紙葉類を裁断するように前記斜め方向に対し上側から下側に向かって回転」する点。(以下、「相違点A」という。)

そこで、上記相違点Aについて検討すると、
刊行物2には、スパイラルカッタとフラットカッタとを用いて紙葉類を細断するに際し、スパイラルカッタを矢印A方向(以下、「正回転」という。)に回転させて紙葉類を細断する技術的事項、及びスパイラルカッタを矢印B方向(以下、「逆回転」という。)の適宜いずれの回転方向にも回転させて紙葉類を細断する技術的事項が記載されている(刊行物2の摘記事項f参照)。また、フラットカッタの配設位置が、スパイラルカッタとともに紙葉類を裁断し得るように、紙葉類の送り方向とスパイラルカッタの回転方向に基づいて設定され得るものであることも、刊行物2の上記摘記事項fの記載内容及び技術常識に照らして明らかである。
そして、上記刊行物2に記載された技術的事項は、上記刊行物1記載の発明と共通する「スパイラルカッタとフラットカッタとを有する紙葉細断装置」の技術分野に属するものであるから、刊行物1記載の発明において、上記刊行物2に記載された技術的事項を考慮して、スパイラルカッタを「正回転」で回転するものに代えて、「逆回転」で回転するものを採用し、その際、紙葉類の送り方向とスパイラルカッタの回転方向を考慮して、フラットカッタを投入口の斜め方向に対して下側に配設するのに代えて上側に配設する点には、格別の困難性は認められず、また、そのような構成を採用し得ないとする特段の事情も見当たらない。その際、スパイラルカッタが、斜め方向に対し上側から下側に向かって回転していたものが、下側から上側に向かって回転するようになる点は、そもそも、スパイラルカッタの回転方向が刊行物1記載の発明Aのものと逆となるのであるから、当業者にとって自明な事項である。
そして、本件発明1の奏する作用効果は、刊行物1記載の発明A、及び刊行物2に記載された技術的事項から、当業者であれば予測することができる程度のものであって格別なものとはいえない。
したがって、本件発明1は、刊行物1及び2に記載の発明に基づいて、当業者が容易になし得たものと認める。
イ.本件発明2について
本件発明2と刊行物1記載の発明Bとを対比すると、後者の「廃棄用紙P」は前者の「紙葉類」に相当し、以下同様に、「一対のカッターブロック16,16」は「一対のカッタローラ」に、「スパイラル状の切断刃を備えた回転カッターからなる横切り用回転カッター18」は「回転軸の回りに螺旋状に形成されたスパイラルカッタ」に、「フラットカッターからなる横切り用固定カッター17」は「フラットカッタ」に、「凹状をなす部分」は「凹状のポケット部」に、「廃棄用紙Pを細断するシュレッダー」は「紙葉細断装置」に、それぞれ相当すると認められる。
してみると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。
【一致点】
斜め方向に形成された投入口から投入された紙葉類を縦方向に細断する一対のカッタローラと、回転軸の回りに螺旋状に形成されたスパイラルカッタと、前記スパイラルカッタと対向して配設され、前記カッタローラで細断された紙葉類を前記スパイラルカッタとともに横方向に細断するフラットカッタと、を備え、
前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラにより切断された紙葉類が前記スパイラルカッタの刃と刃の間に形成される凹状のポケット部によって受けられるように配設されており、
前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラと連動して、正転方向に回転可能であるが逆転方向には回転不能に配設されていることを特徴とする紙葉細断装置。
【相違点】
フラットカッタの配設構成について、本件発明1は、「フラットカッタは、一対のカッタローラにより切断された紙葉類が排出される切断排出口の上側に配設され、スパイラルカッタは、フラットカッタとともに紙葉類を裁断するように前記斜め方向に対し下側から上側に向かって回転」するのに対し、刊行物1記載の発明は、「フラットカッタは、一対のカッタローラにより切断された紙葉類が排出される切断排出口の下側に配設され、スパイラルカッタは、フラットカッタとともに紙葉類を裁断するように前記斜め方向に対し上側から下側に向かって回転」する点。(以下、「相違点B」という。)

そこで、上記相違点Bについて検討すると、
刊行物2には、スパイラルカッタとフラットカッタとを用いて紙葉類を細断するに際し、スパイラルカッタを矢印A方向(以下、「正回転」という。)に回転させて紙葉類を細断する技術的事項、及びスパイラルカッタを矢印B方向(以下、「逆回転」という。)の適宜いずれの回転方向にも回転させて紙葉類を細断する技術的事項が記載されている(刊行物2の摘記事項f参照)。また、フラットカッタの配設位置が、スパイラルカッタとともに紙葉類を裁断し得るように、紙葉類の送り方向とスパイラルカッタの回転方向に基づいて設定され得るものであることも、刊行物2の上記摘記事項fの記載内容及び技術常識に照らして明らかである。
そして、上記刊行物2に記載された技術的事項は、上記刊行物1記載の発明と共通する「スパイラルカッタとフラットカッタとを有する紙葉細断装置」の技術分野に属するものであるから、刊行物1記載の発明において、上記刊行物2に記載された技術的事項を考慮して、スパイラルカッタを「正回転」で回転するものに代えて、「逆回転」で回転するものを採用し、その際、紙葉類の送り方向とスパイラルカッタの回転方向を考慮して、フラットカッタを一対のカッタローラにより切断された紙葉類が排出される切断排出口の下側に配設するのに代えて上側に配設する点には、格別の困難性は認められず、また、そのような構成を採用し得ないとする特段の事情も見当たらない。その際、スパイラルカッタが、斜め方向に対し上側から下側に向かって回転していたものが、下側から上側に向かって回転するようになる点は、そもそも、スパイラルカッタの回転方向が刊行物1のものと逆となるのであるから、当業者にとって自明な事項である。
そして、本件発明1の奏する作用効果は、刊行物1記載の発明B、及び刊行物2に記載された技術的事項から、当業者であれば予測することができる程度のものであって格別なものとはいえない。
したがって、本件発明2は、刊行物1及び2に記載の発明に基づいて、当業者が容易になし得たものと認める。
ウ.本件発明3について
本件発明3は、本件発明1又は2を特定する事項に、「スパイラルカッタは、前記スパイラルカッタから、前記フラットカッタに向かう方向に回転するように配設されている」事項(以下、「事項A」という。)をさらに加えて発明を特定するものであるが、この事項Aは、刊行物1に記載された発明が既に具備するところの事項である。すると、結局、本件発明3と、刊行物1に記載の発明との相違点は、本件発明1と刊行物1記載の発明との相違点である相違点Aまたは、本件発明2と刊行物1記載の発明との相違点である相違点Bとなるが、相違点A、相違点Bについては既に検討済みである。
したがって、本件発明3は、刊行物1及び2に記載の発明に基づいて、当業者が容易になし得たものと認める。

(5)むすび
したがって、本件発明1ないし3は、刊行物1及び2に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものであるから、本件発明1ないし3についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
紙葉細断装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜め方向に形成された投入口から投入された紙葉類を縦方向に細断する前記斜め方向の上下に各々配設された一対のカッタローラと、
回転軸の回りに螺旋状に形成されたスパイラルカッタと、
前記スパイラルカッタと対向して配設され、前記カッタローラで細断された紙葉類を前記スパイラルカッタとともに横方向に細断するフラットカッタと、
を備え、
前記フラットカッタは、前記斜め方向に対し上側に配設され、前記スパイラルカッタは、前記フラットカッタとともに紙用類を裁断するように前記斜め方向に対し下側から上側に向かって回転し、
前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラにより切断された紙葉類が前記スパイラルカッタの刃と刃の間に形成される凹状のポケット部によって受けられるように配設されており、
前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラと連動して、正転方向に回転可能であるが逆転方向には回転不能に配設されている
ことを特徴とする紙葉細断装置。
【請求項2】
斜め方向に形成された投入口から投入された紙葉類を縦方向に細断する一対のカッタローラと、
回転軸の回りに螺旋状に形成されたスパイラルカッタと、
前記スパイラルカッタと対向して配設され、前記カッタローラで細断された紙葉類を前記スパイラルカッタとともに横方向に細断するフラットカッタと、
を備え、
前記フラットカッタは、前記一対のカッタローラにより切断された紙葉類が排出される切断排出口の上側に配設され、前記スパイラルカッタは、前記フラットカッタとともに紙用類を裁断するように前記斜め方向に対し下側から上側に向かって回転し、
前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラにより切断された紙葉類が前記スパイラルカッタの刃と刃の間に形成される凹状のポケット部によって受けられるように配設されており、
前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラと連動して、正転方向に回転可能であるが逆転方向には回転不能に配設されている
ことを特徴とする紙葉細断装置。
【請求項3】
前記スパイラルカッタは、前記スパイラルカッタから前記フラットカッタに向かう方向に回転するように配設されていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の紙葉細断装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃棄書類等を細断する紙葉細断装置(シュレッダ)に係り、特にその切断刃に関する。
【0002】
【従来の技術】
紙葉細断装置は、廃棄する書類等の機密性を保持するため、この書類等を細断する装置である。
【0003】
図5に示すように、一般的な紙葉細断装置は、互いに噛合する2個のカッタローラ3,4の刃の間に紙葉類を通過させてこの紙葉類を数ミリメートル幅の線状に縦方向に細断する。縦方向に細断されたものは、回転するスパイラルカッタ8と固定されたフラットカッタ9とによって、さらに横方向に細断される。
【0004】
従来は、フラットカッタ9は、図5に示すように、スパイラルカッタ8の下側に配設されていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
フラットカッタ9がスパイラルカッタ8の下側に配設されていたので、従来は以下の問題があった。
【0006】
2個のカッタローラ3,4で細長く切られた紙30は、フラットカッタ9上を通過して、図6に示すように回転するスパイラルカッタ8の凹部状のポケット31に差込まれ、スパイラルカッタ8とフラットカッタ9との間で切断され細断片32となり、下方に排出される。
【0007】
従来は、スパイラルカッタ9で切られた細片32を直ぐに排出できるようにスパイラルカッタ9を回転させるために、フラットカッタ9をスパイラルカッタ8の下側に配置していた。フラットカッタ9の下方の利用可能な空間は種々の部品を設置する必要がある等のために小さい。このため、フラットカッタ9を固定するベ一ス部分33やフレーム全体の肉厚を薄くせざるを得ず十分な強度剛性が得られず、この結果、スパイラルカッタ8とフラットカッタ9との間のギャツプを一定の間隔に維持することが難しくなっている。このために、スパイラルカッタ8とフラットカッタ9とによる切味の耐久性に問題があった。
【0008】
また、従来は、図7に示すように、カッタローラ3,4とフラットカッタ9との間にカッタローラ3,4によって細断された細断片32が詰まり、カッタローラ3,4の回転にブレーキを掛けるなどの問題もあった。
【0009】
また、カッタローラ3,4で紙30を細断してる間は、カッタローラ3,4によって紙30をスパイラルカッタ8に送り込むカもあるが、紙30の終わり部分がカッタローラ3,4から離れると紙30はフラットカッタ9上に残ってしまい、装置の機械的振動等でフラットカッタ9上を縦横に移動する紙30の紙片は、幾重にも重なってスパイラルカッタ8に切られたり、あるいは次に投入される紙30と重なって一度に細断する枚数が部分的に増え、これを切断することから大きな振動を伴ってカッタ8、9の摩耗を早め、寿命を短くするなど装置全体に悪い影響を及ぼし、細断枚数を低下させる原因にもつながっていた。
【0010】
また、カッタローラ3,4とスパイラルカッタ8は、機械的に連結され正転と逆転の両方ともに同期して回転するようになっていた。このため、スパイラルカッタ8のポケット31に細断片32が入っている状態で細断過負荷になると、細断片32を引き抜くため逆転させる必要があるが、この場合、細断片32がスパイラルカッタ8とフラットカッタ9の刃先に狭まり、カッターギヤツプを広げてしまい、切れ味を落とすという問題があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の有する問題を解消し、スパイラルカッタとフラットカッタとによる細断性能を高い耐久性で保持可能な紙葉細断装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本願発明の紙葉細断装置は、斜め方向に形成された投入口から投入された紙葉類を縦方向に細断する前記斜め方向の上下に各々配設された一対のカッタローラと、回転軸の回りに螺旋状に形成されたスパイラルカッタと、前記スパイラルカッタと対向して配設され、前記カッタローラで細断された紙葉類を前記スパイラルカッタとともに横方向に細断するフラットカッタと、を備え、前記フラットカッタは、前記斜め方向に対し上側に配設され、前記スパイラルカッタは、前記フラットカッタとともに紙用類を裁断するように前記斜め方向に対し下側から上側に向かって回転し、前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラにより切断された紙葉類が前記スパイラルカッタの刃と刃の間に形成される凹状のポケット部によって受けられるように配設されており、前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラと連動して、正転方向に回転可能であるが逆転方向には回転不能に配設されていることを特徴とすることを特徴とする。
【0013】
また、斜め方向に形成された投入口から投入された紙葉類を縦方向に細断する一対のカッタローラと、回転軸の回りに螺旋状に形成されたスパイラルカッタと、前記スパイラルカッタと対向して配設され、前記カッタローラで細断された紙葉類を前記スパイラルカッタとともに横方向に細断するフラットカッタと、を備え、前記フラットカッタは、前記一対のカッタローラにより切断された紙葉類が排出される切断排出口の上側に配設され、前記スパイラルカッタは、前記フラットカッタとともに紙用類を裁断するように前記斜め方向に対し下側から上側に向かって回転し、前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラにより切断された紙葉類が前記スパイラルカッタの刃と刃の間に形成される凹状のポケット部によって受けられるように配設されており、前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラと連動して、正転方向に回転可能であるが逆転方向には回転不能に配設されていることを特徴とすることを特徴とする。
【0014】
また、前記スパイラルカッタは、前記スパイラルカッタから前記フラットカッタに向かう方向に回転するように配設されていることを特徴とする。
【0015】
【0016】
【0017】
上述の発明において、フラットカッタは、スパイラルカッタの上側に配設されているので、あるいはフラットカッタは、一対のカッタローラにより切断された紙葉類が排出される切断排出口の上側に配設されているので、種々の部品等を設置する必要のない空間にフラットカッタを固定するベ一ス部分等を設けることが可能になり、フラットカッタを固定するベ一ス部分等を十分な強度剛性を有するようにすることができる。
【0018】
また、スパイラルカッタは、スパイラルカッタからフラットカッタに向かう方向に回転するように配設されているので、カッタローラによって細断された細断片は、カッタローラとフラットカッタとの間に紙片が詰まることをなくなり、細断中にブレーキが掛かるようなことを解消することができる。
【0019】
スパイラルカッタは、一対のカッタローラにより切断された紙葉類がスパイラルカッタの刃と刃の間に形成される凹状のポケット部によって受けられるように配設されているとともにポケット部がスパイラルカッタからフラットカッタに向かう方向に回転するように配設されているので、スパイラルカッタとフラットカッタとによって切断された細断片は、紙葉類の終わり部分をフラットカッタ上に不自然に溜めることを無くすることができ、自然落下させてスパイラルカッタのポケットブ部に収納して排出することができ、この結果、無理に過負担な細断をすることがなくなりスパイラルカッタとフラットカッタへの負担を軽減することができる。
【0020】
また、フラットカッタはカッタローラにより切断された紙葉類が排出される切断排出口の上方に配設されているので、フラットカッタ上に細断片が重なることを防止でき、フラットカッタ上に細断片が重なったままスパイラルカッタとフラットカッタとによって細断されることがなく、一度に細断する紙葉類枚数が部分的に増えたりして大きな振動を伴って細断することがなくなる。
【0021】
また、スパイラルカッタは、一対のカッタローラと連動して、正転方向に回転可能であるが逆転方向には回転不能に配設されているので、スパイラルカッタが逆転することによって、スパイラルカッタのポケットに収納された細断片がスパイラルカッタとフラットカッタの刃先の間に挟まれてしまうことを防止でき、スパイラルカッタとフラットカッタのギャップを常に最適な状態に維持することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して、本発明に係る紙葉細断装置の実施の形態について説明する。
【0023】
図1に示すように、紙葉細断装置本体1の上面には細断する紙葉類を投入する投入口2が斜めに設けられており、投入口2下方部には2個のカッタローラ3,4が噛合するように設けられており、投入口2の後端部が丁度その噛合部に対向するようにされている。図8に示すように、カッタローラ3,4は回転軸5,6に等間隔に円盤状のカッタ刃が取り付けられたものである。
【0024】
またこれらカッタローラ3,4の噛合部の下方位置には横方向カッタ装置7が設けられている。この横方向カッタ装置7は螺旋状の刃を有するスパイラルカッタ8とフラットカッタ9とから構成されている。図9に示すように、スパイラルカッタ8は軸10に螺旋状のカッタ刃11を設けたものである。また、フラットカッタ9は先端部に例えば断面三角形状等の形状のフラットカッタ刃を有している。
【0025】
カッタローラ3,4とスパイラルカッタ8はモータ13によって駆動回転される。モータ13は数百ワット程度の出力を有する。モータ13による駆動力はギア12によってカッタローラ4と同軸に配設されたギア14へ伝達されカッタローラ3,4が駆動される。また、ギア14の回転はギア14aに伝達され、ギア14aと同軸に配設されたカッタローラ3が駆動される。
【0026】
また、ギア14aの回転はギア15に伝達され、ギア15と同軸に配設されたスパイラルカッタ8の回転軸10が回転駆動され、スパイラルカッタ8が駆動される。ここで、モータ13が逆転した場合にスパイラルカッタ8は自動的には逆転されないようにモータ13に連結されている。スパイラルカッタ8をこのように連結するために、例えば、回転軸10には、ギア15との間でワンウェイクラッチ27が装着されている。回転軸10にワンウェイクラッチ27が装着されているために、モータ13が正転するときには、カッタローラ3,4の回転と同期してスパイラルカッタ8も回転駆動されるが、モータ13が逆転するときには、カッタローラ3,4のみが逆回転しスパイラルカッタ8が回転しないようにすることができる。
【0027】
投入口2から紙葉類を投入すると入紙センサがこれを検出してモータ13が自動的に起動される。これによりカッタローラ3,4およびスパイラルカッタ8が回転する。投入された紙葉類はカッタローラ3,4によって、例えば幅約3mm〜6mmの線状に縦方向に細断される。線状に細断された紙葉類は横方向カッタ装置7内部に導かれ、さらに横方向に短く断裁される。断裁長さはスパイラルカッタ8の回転数によって規定されるが約10mm〜35mm程度である。このように細かく断裁された紙葉類(細断屑)は、装置下部に設けられた屑容器16に落下する。
【0028】
上述の紙葉細断装置において、本発明では、従来の場合と異なり、図2乃至図4に示すように、フラットカッタ9は、スパイラルカッタ8の上側に配設されている。また、フラットカッタ9は、カッタローラ3,4により切断された紙30が排出される切断排出口20の上方に配設されている。
【0029】
フラットカッタ9は、スパイラルカッタ8の上方空間に設置された上側ベース21にボルト22によって固着されている。スパイラルカッタ8の上方空間には種々の部品を設置する必要がないため、上側ベース21は必要な強度剛性が得られるように厚さと大きさを確保することが可能であり、この結果、フラットカッタ9を上側ベース21に強固に固着することにより、スパイラルカッタ8とフラットカッタ9との間のギャツプを一定の間隔に維持することが可能になり、スパイラルカッタ8とフラットカッタ9とによる切味の耐久性に維持することができる。
【0030】
スパイラルカッタ8は、図5乃至図7に示す従来の場合とは逆方向であって上方に刃を向けて回転させられる。スパイラルカッタ8は、図2乃至図4において紙面内で時計方向24に回転し、スパイラルカッタ8の刃と刃の間に形成されるポケット23は時計方向に移動する。
【0031】
スパイラルカッタ8が図2乃至図4に示すように配設され回転するため、スパイラルカッタ8とフラットカッタ9とによって切断された細断片32は、従来の場合と異なり、図4に示すように、紙30の終わり部分をフラットカッタ9上に不自然に溜めることを無くすることができ、自然落下させてスパイラルカッタ9のポケット23に収納して排出することができ、この結果、無理に過負担な細断をすることがなくなりスパイラルカッタ8とフラットカッタ9への負担を軽減することができる。
【0032】
また、フラットカッタ8はカッタローラ3,4により切断された紙30が排出される切断排出口20の上方に配設されているので、カッタローラ3,4によって細断された細断片32は、図7に示す従来の場合と異なり、カッタローラ3,4とフラットカッタ8との間に紙片が詰まることをなくなり、細断中にブレーキが掛かるようなことを解消することができる。
【0033】
また、細断片32を屑容器16へ排出することについても、スパイラルカッタのポケット23に入った屑はスパイラルカッタ8のポケット23内に収納されスパイラルカッタ8の回転力によって回転案内されて機体中央部に向かうよう排出されるため、屑容器16の中央に細断屑が溜まるようにでき、従来のように機械後部に偏って細断屑が溜ることによって屑容器16の箱後部へ屑が飛散するようなことを解消することができる。
【0034】
また、投入口2に投入した紙30が厚過ぎたりしたために細断に無理があるときにモータ13を逆転して一部細断しかけた紙30を戻す必要がある。この場合、回転軸10にはギア15との間でワンウェイクラッチ27が装着されているので、モータ13を逆転させたときにカッタローラ3,4のみを逆回転させスパイラルカッタ8を回転しないようにすることができる。これによって、スパイラルカッタ8が逆転することによってスパイラルカッタ8とフラットカッタ9の刃先の間に細断片32が挟まれてしまうことを防止でき、スパイラルカッタ8とフラットカッタ9のギャップを常に最適な状態に維持することができ、切れ味の耐久性を格段に高めることができる。
【0035】
【発明の効果】
以上のように、本発明の構成によれば、フラットカッタは、スパイラルカッタの上側に配設されているので、あるいはフラットカッタは、一対のカッタローラにより切断された紙葉類が排出される切断排出口の上側に配設されているので、フラットカッタを固定するベ一ス部分やフレーム全体を十分な強度剛性を有するように設けることが可能になり、スパイラルカッタとフラットカッタとの間のギャツプを安定して一定の間隔に維持することが可能になり、スパイラルカッタとフラットカッタとによる切断性能の耐久性を得ることができる。
【0036】
また、スパイラルカッタは、スパイラルカッタからフラットカッタに向かう方向に回転するように配設されているので、カッタローラによって細断された細断片は、カッタローラとフラットカッタとの間に紙片が詰まることをなくなり、細断中にブレーキが掛かるようなことを解消することができる。
【0037】
スパイラルカッタは、一対のカッタローラにより切断された紙葉類がスパイラルカッタの刃と刃の間に形成される凹状のポケット部によって受けられるように配設されているとともにポケット部がスパイラルカッタからフラットカッタに向かう方向に回転するように配設されているので、スパイラルカッタとフラットカッタとによって切断された細断片は、紙葉類の終わり部分をフラットカッタ上に不自然に溜めることを無くすることができ、自然落下させてスパイラルカッタのポケットブ部に収納して排出することができ、この結果、無理に過負担な細断をすることがなくなりスパイラルカッタとフラットカッタへの負担を軽減することができる。
【0038】
また、フラットカッタはカッタローラにより切断された紙葉類が排出される切断排出口の上方に配設されているので、フラットカッタ上に細断片が重なることを防止でき、フラットカッタ上に細断片が重なったままスパイラルカッタとフラットカッタとによって細断されることがなく、一度に細断する紙葉類枚数が部分的に増えたりして大きな振動を伴って細断することがなくなり、スパイラルカッタとフラットカッタカッタの摩耗を早めて寿命を短くなることを防止できる。
【0039】
また、スパイラルカッタは、一対のカッタローラと連動して、正転方向に回転可能であるが逆転方向には回転不能に配設されているので、スパイラルカッタが逆転することによってスパイラルカッタのポケットに収納された細断片がスパイラルカッタとフラットカッタの刃先の間に挟まれてしまうことを防止でき、スパイラルカッタとフラットカッタのギャップを常に最適な状態に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係る紙葉細断装置の一対のカッタローラとスパイラルカッタとフラットカッタの配置関係を示す図。
【図2】
本発明に係る紙葉細断装置のスパイラルカッタとフラットカッタの位置関係を示す図。
【図3】
本発明に係る紙葉細断装置における細断片の移動状況を示す図。
【図4】
本発明に係る紙葉細断装置において一対のカッタローラから排出された最後の細断片の移動方向を示す図。
【図5】
従来の紙葉細断装置におけるスパイラルカッタとフラットカッタの配置関係を示す図。
【図6】
従来の紙葉細断装置におけるスパイラルカッタとフラットカッタの細断片の移動状況を示す図。
【図7】
従来の紙葉細断装置において細断片がフラットカッタとカッタローラの間に挟まれることを示す図。
【図8】
一対のカッタローラを示す図。
【図9】
スパイラルカッタを示す図。
【符号の説明】
2 投入口
3、4 カッタローラ
8 スパイラルカッタ
9 フラットカッタ
12,14、14a、15 ギア
13 モータ
20 切断排出口
21 上側ベース
23 ポケット
27 ワンウェイクラッチ
 
訂正の要旨 ▲1▼ 訂正事項A
特許第3236590号の明細書における「特許請求の範囲」の請求項1及び2を下記の通り訂正し、請求項4及び請求項5を削除する。
請求項1:『斜め方向に形成された投入口から投入された紙葉類を縦方向に細断する前記斜め方向の上下に各々配設された一対のカッタローラと、
回転軸の回りに螺旋状に形成されたスパイラルカッタと、
前記スパイラルカッタと対向して配設され、前記カッタローラで細断された紙葉類を前記スパイラルカッタとともに横方向に細断するフラットカッタと、
を備え、
前記フラットカッタは、前記斜め方向に対し上側に配設され、前記スパイラルカッタは、前記フラットカッタとともに紙用類を裁断するように前記斜め方向に対し下側から上側に向かって回転し、
前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラにより切断された紙葉類が前記スパイラルカッタの刃と刃の間に形成される凹状のポケット部によって受けられるように配設されており、
前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラと連動して、正転方向に回転可能であるが逆転方向には回転不能に配設されていることを特徴とする紙葉細断装置。』
請求項2:『斜め方向に形成された投入口から投入された紙葉類を縦方向に細断する一対のカッタローラと、
回転軸の回りに螺旋状に形成されたスパイラルカッタと、
前記スパイラルカッタと対向して配設され、前記カッタローラで細断された紙葉類を前記スパイラルカッタとともに横方向に細断するフラットカッタと、
を備え、
前記フラットカッタは、前記一対のカッタローラにより切断された紙葉類が排出される切断排出口の上側に配設され、前記スパイラルカッタは、前記フラットカッタとともに紙用類を裁断するように前記斜め方向に対し下側から上側に向かって回転し、
前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラにより切断された紙葉類が前記スパイラルカッタの刃と刃の間に形成される凹状のポケット部によって受けられるように配設されており、
前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラと連動して、正転方向に回転可能であるが逆転方向には回転不能に配設されている
ことを特徴とする紙葉細断装置。』
▲2▼ 訂正事項B
特許第3236590号の明細書における「発明の詳細な説明」の段落番号「0012」及び「0013」を下記のように訂正し、「0015」及び「0016」を削除する。
「0012」:
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本願発明の紙葉細断装置は、斜め方向に形成された投入口から投入された紙葉類を縦方向に細断する前記斜め方向の上下に各々配設された一対のカッタローラと、回転軸の回りに螺旋状に形成されたスパイラルカッタと、前記スパイラルカッタと対向して配設され、前記カッタローラで細断された紙葉類を前記スパイラルカッタとともに横方向に細断するフラットカッタと、を備え、前記フラットカッタは、前記斜め方向に対し上側に配設され、前記スパイラルカッタは、前記フラットカッタとともに紙用類を裁断するように前記斜め方向に対し下側から上側に向かって回転し、前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラにより切断された紙葉類が前記スパイラルカッタの刃と刃の間に形成される凹状のポケット部によって受けられるように配設されており、前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラと連動して、正転方向に回転可能であるが逆転方向には回転不能に配設されていることを特徴とする。
「0013」:
また、斜め方向に形成された投入口から投入された紙葉類を縦方向に細断する一対のカッタローラと、回転軸の回りに螺旋状に形成されたスパイラルカッタと、前記スパイラルカッタと対向して配設され、前記カッタローラで細断された紙葉類を前記スパイラルカッタとともに横方向に細断するフラットカッタと、を備え、前記フラットカッタは、前記一対のカッタローラにより切断された紙葉類が排出される切断排出口の上側に配設され、前記スパイラルカッタは、前記フラットカッタとともに紙用類を裁断するように前記斜め方向に対し下側から上側に向かって回転し、前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラにより切断された紙葉類が前記スパイラルカッタの刃と刃の間に形成される凹状のポケット部によって受けられるように配設されており、前記スパイラルカッタは、前記一対のカッタローラと連動して、正転方向に回転可能であるが逆転方向には回転不能に配設されていることを特徴とする。
「0015」:
削除
「0016」:
削除
異議決定日 2002-12-11 
出願番号 特願平11-327281
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (B02C)
最終処分 取消  
前審関与審査官 黒石 孝志  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 清田 栄章
松下 聡
登録日 2001-09-28 
登録番号 特許第3236590号(P3236590)
権利者 株式会社明光商会 合資会社オリエンタル
発明の名称 紙葉細断装置  
代理人 永井 浩之  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 吉武 賢次  
代理人 森 秀行  
代理人 濱田 俊明  
代理人 永井 浩之  
代理人 岡田 淳平  
代理人 名塚 聡  
代理人 吉武 賢次  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 森 秀行  
代理人 森 秀行  
代理人 岡田 淳平  
代理人 吉武 賢次  
代理人 岡田 淳平  
代理人 名塚 聡  
代理人 名塚 聡  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 永井 浩之  

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