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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1076374
異議申立番号 異議2002-71514  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-07-06 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-06-11 
確定日 2003-03-03 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3266842号「柑橘系飲料用乳化物」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3266842号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3266842号の請求項1乃至請求項4に係る発明についての出願は、平成9年12月24日に特願平9-366065号として出願され、平成14年1月11日にその特許の設定登録がなされ、その後、森澤昭子及び日本香料工業会より特許異議申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成15年1月15日に訂正請求がなされたものである。
II.訂正請求
1.訂正の内容
(1)特許請求の範囲の請求項1に係る記載を、
「(A)ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、(B)柑橘系香料及び(C)炭素数6〜18の中鎖脂肪酸トリグリセライドの組成比(重量比)が、(A):(B)=86:14乃至60:40、(B):(C)=50:50乃至17:83,(A):(C)=60:40乃至55:45を同時に満足する範囲である組成物をアラビアガム水溶液で乳化した柑橘系飲料用乳化物」と訂正する。
(2)特許請求の範囲の請求項2に係る記載を、
「(A)ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、(B)柑橘系香料及び(C)炭素数6〜18の中鎖脂肪酸トリグリセライドの組成比(重量比)が、(A):(B)=86:14乃至60:40、(B):(C)=50:50乃至17:83,(A):(C)=60:40乃至55:45を同時に満足する範囲である組成物にエレミ、ダンマル及びロジンのうちから選ばれた1種又は2種以上の樹脂を成分(A)〜(C)の合計量に基づいて1〜20重量%含有させ、アラビアガム水溶液で乳化した柑橘系飲料用乳化物」と訂正する。
(3)本件明細書段落【0006】を、
「すなわち、本発明は以下に示すとおりである。
請求項1.(A)ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、(B)柑橘系香料及び(C)炭素数6〜18の中鎖脂肪酸トリグリセライドの組成比(重量比)が、(A):(B)=86:14乃至60:40、(B):(C)=50:50乃至17:83,(A):(C)=60:40乃至55:45を同時に満足する範囲である組成物をアラビアガム水溶液で乳化した柑橘系飲料用乳化物。
請求項2.(A)ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、(B)柑橘系香料及び(C)炭素数6〜18の中鎖脂肪酸トリグリセライドの組成比(重量比)が、(A):(B)=86:14乃至60:40、(B):(C)=50:50乃至17:83,(A):(C)=60:40乃至55:45を同時に満足する範囲である組成物にエレミ、ダンマル及びロジンのうちから選ばれた1種又は2種以上の樹脂を成分(A)〜(C)の合計量に基づいて1〜20重量%含有させ、アラビアガム水溶液で乳化した柑橘系飲料用乳化物。
請求項3.請求項1記載の柑橘系飲料用乳化物を、ブリックス(Brix%)6〜14の飲料に配合した柑橘系飲料。
請求項4.請求項2記載の柑橘系飲料用乳化物を、ブリックス(Brix%)6〜14の飲料に配合した柑橘系飲料。」と訂正する。
(4)本件明細書段落【0012】を、
「次に、本発明の組成物における成分(A)、(B)及び(C)の配合割合は、重量比で(A):(B)が86:14乃至60:40,(B):(C)が50:50乃至17:83,(A):(C)が60:40乃至55:45の範囲を同時に満足するものである。
これらの関係を図示したものが図1であり、図の実線で囲まれた範囲を示している。」と訂正する。
(5)本件明細書段落【0018】の「第1表」の「実施例10,12,14及び15」を削除し、「実施例11及び13」の実施例番号を「実施例10及び11」と訂正する。
(6)本件明細書段落【0020】の「実施例2〜15」を「実施例2〜11」と訂正する。
(7)本件明細書「図面の簡単な説明」の「【図2】実施例1〜15の飲料における成分(A)〜(C)の組成比を示したものである。」を「【図2】実施例1〜11の飲料における成分(A)〜(C)の組成比を示したものである。」と訂正する。
(8)本件の図1乃至図4を、本訂正請求書に添付された図1乃至図4に訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項(1)及び(2)は、「(A):(B)が100:0乃至56:44,(B):(C)が0:100乃至54:46,(A):(C)が60:40乃至46:54の範囲」を、「(A):(B)が86:14乃至60:40,(B):(C)が50:50乃至17:83,(A):(C)が60:40乃至55:45の範囲」に訂正するものであるから特許請求の範囲の減縮に該当し、また、訂正事項(3)乃至(8)は、訂正事項(1)及び(2)に伴う訂正であって明りょうでない記載の釈明に該当する。
そしてこの訂正は新規事項に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。
3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法120条の4,2項及び同条3項で準用する126条2項及び3項の規定に適合するので、請求のとおり当該訂正を認める。

III.特許異議申立
1.森澤昭子よりの特許異議申立
(1)特許異議申立人 森澤昭子は、甲第1号証乃至甲第5号証を提出し、訂正前の本件請求項1乃至請求項4に係る発明は、甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないと主張している。

甲第1号証:特開平7-107927号公報
甲第2号証:特開昭50-75215号公報
甲第3号証:特開昭61-260860号公報
甲第4号証:「果実飲料技術発展史」(1990年3月1日日本果汁協会果汁技術研究部会発行)123〜127頁
甲第5号証:「月刊フードケミカル」1986年9月号Vol.2,No.9、32〜35頁
(2)甲各号証の記載内容
甲第1号証は、「乳化組成物」に係り、その特許請求の範囲の請求項1には、「(1)油性着香料、油溶性色素類、動植物油脂類、中鎖飽和脂肪酸トリグリセライド類、油溶性ビタミン類及び天然樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の可食性油性材料、(2)水溶性大豆多糖類、及び(3)水及び/又は多価アルコール類からなることを特徴とする乳化組成物。」が、発明の詳細な説明中には、「本発明において使用する可食性材料(1)のうち、油性着香料としては、例えば、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツなどの柑橘類精油;・・・(略)・・・天然樹脂としては、例えば、ロジン、コーバル、ダンマル、エレミ、エステルガムなどの植物性樹脂類が挙げられ、そして、中鎖飽和脂肪酸トリグリセライドとしては炭素数6〜12のもので加工食用油として用いるられるものが好ましい。これら可食性油性材料はそれぞれ単独で使用することができ、あるいは2種以上の混合物の形で用いることができる。」(段落【0009】)、並びに、「実施例」として、「実施例1 レモン油10g、SAIB91g、中鎖飽和脂肪酸トリグリセライド48g及び天然ビタミンE1gを混合溶解して均一な油性材料混合物(d20201.048)を得た。この混合物をグリセリン350g、水溶性大豆多糖類75g及び水425gを混合溶解した溶液に加えて予備撹拌して分散させた後、T.K.ホモミキサー(・・)を用い5000rpmにて10分間乳化し、粒子径約0.2〜約0.5ミクロンの均一な乳化組成物を得た(本発明品No.1)。
比較例1 実施例1において水溶性大豆多糖類75gにかえてアラビアガム185g、さらに水425gに代えて水315gを使用するほかは実施例1と同じ条件によって乳化物を得た(比較品No.1)。」(段落【0018】)、「実施例2 β-カロチン5g、SAIB54g、中鎖飽和脂肪酸トリグリセライド40g及び天然ビタミンE1gを混合溶解して均一な油性材料混合物(d20201.048)を得た。この混合物をグリセリン500g、水溶性大豆多糖類50g及び水350gを混合溶解した溶液に加えて予備撹拌して分散させた後、T.K.ホモミキサーにて5000rpmにて5分間予備乳化する。これを二段式の圧力式ホモジナイザーで一段目200kg/cm2,二段目50kg/cm2の条件で乳化し、更にもう一回くりかえして乳化して、粒子径約0.1〜約0.3ミクロンの均一な乳化組成物を得た(本発明品No.2)。
比較例3 実施例2において水溶性大豆多糖類50gにかえてアラビアガム120g、さらに水350gにかえて水280gを使用するほかは実施例2と同じ条件によって乳化物を得た(比較品No.3)。」(段落【0020】)、「実施例3 オレンジ油10g、SAIB98g、精製ヤシ油31g及び天然ビタミンE1gを混合溶解して均一な油性材料混合物(d20201.048)を得た。この混合物をグリセリン400g、水溶性大豆多糖類50g及び水400gを混合溶解した溶液に加えて予備撹拌して分散させた後、T.K.ホモミキサー(・・)にて5000rpmにて10分間乳化し、粒子径約0.2〜約0.5ミクロンの均一な乳化組成物を得た(本発明品No.3)。
比較例5 実施例3において水溶性大豆多糖類50gにかえてアラビアガム120g、さらに水400gにかえて水330gを使用するほかは実施例3と同じ条件によって乳化物を得た(比較品No.5)。」(段落【0022】)、及び「参考例1 グラニュー糖240g、クエン酸8g及びビタミンC0.5gを適量の水に溶解し、クエン酸ナトリウムを用いてpH3.0に調整した後全体を2リットルとして酸性飲料用シロップを調製した。このシロップ各200mlに実施例1,比較例1,比較例2で得られた乳化物をそれぞれ0.2mlを添加し、ビンに充填後打栓し、85℃にて15分間殺菌後冷却し、飲料を得た。これを室温で3ケ月間静置保存し、外観の経時変化を比較した、その結果を表1に示す。」(段落【0024】)が記載され、「表1:外観の経時変化(肉眼による観察)」として、保存日数が90日の場合、本発明品No.1では、「-」(ネックリングの発生は認められない。)であるのに対し、比較品No.1では「±」(ネックリングを僅かに認める。)であることが記載されている。
甲第2号証は、「水分散性カロチノイド製剤製造の方法」に係り、「例-4」として、「β-カロチン15部、オレンジ油0.2部、ヤシ油分溜物39.8部とSAIB45部を160℃・10分間加熱混合し、この混合物15部を30%アラビアガム水溶液85部に混合し均一に乳化する。」(4頁左上欄4〜8行)が記載されている。
甲第3号証は、「酸性飲料の着香、着色又は着濁方法」に係り、特許請求の範囲の項には、「(1)油性着香料、油溶性色素類、動植物油脂類、中鎖飽和脂肪酸トリグリセライド類、油溶性ビタミン類及び植物性天然樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種の可食性油性材料 (2)シュークロース・ジアセテート・ヘキサイソブチレート(SAIB) (3)HLB8以上のポリグリセリン脂肪酸エステル類 (4)含水率50重量%以下の多価アルコール類からなる組成物を酸性飲料に配合することを特徴とする酸性飲料の着香、着色又は着濁方法。」が、発明の詳細な説明の項には、「本発明で用いる油性着香料の例としては、例えば、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツなどの柑橘類精油、・・・(略)・・・ロジン、コーバル、ダンマル、エレミ、エステルガムなどの植物性樹脂類・・・」(2頁左下欄末行〜右下欄18行)、「所望により多価アルコール溶液にポリグリセリンに加えて例えばショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどの親水性界面活性剤、アラビアガム、・・・」(3頁右上欄9〜12行)、及び「参考例2」として「オレンジオイル20g、精製ダンマルガム20g、SAIB47.4g、C6〜C12飽和脂肪酸トリグリセライド混合物12.6gを混合溶解して、d20201.048に比重調整したオレンジ油混合物を得た。別にグリセリン500g、水370gの混合物にヘキサグリセリンモノオレエート10gを溶解し、更に50%乳酸20gを加えて均一な溶液を得、先に調製したオレンジ油混合物の全量を加えて、予備乳化した後、TK-ホモミキサーにて5,000rpm、10分間乳化処理を行い、酸性飲料用オレンジ油乳化物を得た(本発明品No.2)。」がそれぞれ記載されている。
甲第4号証には、「新しいクラウディの製造法」の項に、「今日一般的な製法としては、精油や香料油等の分散質約20%の溶液を、それの使用される飲料水などの比重に合うようSAIBで比重調整した後、アラビアガムの約30%の濃厚溶液でホモジナイザーまたはコロイドミルを使い、粒子径を約1μm程度に乳化して製造される。」(127頁12〜14行)が記載されている。
甲第5号証には、「これらの問題点をかかえながらSAIBを用いない研究開発が進められた。そのうちの主なものをあげてみる。 (1)ロジン、セラック等を用いる方法。・・(略)・・(3)動植物油、フレーバーリングオイル、ダンマルの混合物を乳化剤で乳化する方法。 (4)炭素数6から12の飽和脂肪酸のトリグリセライドとロジンからなる分散剤を天然ガム質で乳化する方法。 ・・(略)・・(7)特定のトリグリセライドとダイマル樹脂、エレミ樹脂を乳化する方法。」(32頁右欄17行〜33頁左欄1行)が記載されている。
(3)判断
(本件発明1について)
訂正された請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)は、「(A)ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、(B)柑橘系香料及び(C)炭素数6〜18の中鎖脂肪酸トリグリセライドの組成比(重量比)が、(A):(B)=86:14乃至60:40、(B):(C)=50:50乃至17:83,(A):(C)=60:40乃至55:45を同時に満足する範囲である組成物をアラビアガム水溶液で乳化した柑橘系飲料用乳化物」であるところ、甲第1号証には、比較例1として、レモン油、SAIB、及び中鎖飽和脂肪酸トリグリセライドからなる混合物を、比較例3として、β-カロチン、SAIB、及び中鎖飽和脂肪酸トリグリセライドからなる混合物を、並びに、比較例5として、オレンジ油、SAIB、及び精製ヤシ油からなる混合物を、それぞれグリセリン、アラビアガム、及び水からなる溶液に分散させた乳化組成物が記載されているものの、これらの比較例に係る各成分の組成比は、本件発明1に係るものとは相違する上、相当量のグリセリンを含んでおり、これが効果に対しどのように影響しているかが不明であること、そして、比較例3に係る「β-カロチン」は、「柑橘系香料」とはいえないことに照らし、甲第1号証には、本件発明1について教示するところはないというべきである。
甲第2号証には、「β-カロチン15部、オレンジ油0.2部、ヤシ油分溜物39.8部とSAIB45部を160℃・10分間加熱混合し、この混合物15部を30%アラビアガム水溶液85部に混合し均一に乳化する」との記載はあるが、ここでのオレンジ油はβ-カロチンに比べ少量であり、しかも、カロチノイドの水分散性の改善を目的とするものであるから、本件発明1とは、全く別異のものであるというべきである。
また、甲第4号証には、香料油等の分散質約20%の溶液を、それの使用される飲料水などの比重に合うようSAIBで比重調整した後、アラビアガムの約30%の濃厚溶液でホモジナイザーまたはコロイドミルを使い、粒子径を約1μm程度に乳化して製造することが記載されているだけで、これ以上本件発明1について触れるところはない。
そして、本件発明1は、柑橘系飲料に長期間安定な香気、混濁などを与え、分離したり、ネックリングが生じたり、或いは沈殿物が生じたりすることのない嗜好性の高い香味、外観を与えるという効果を奏するものであるところ、甲第1号証には、ネックリングに関して言及されているが、本件発明では「-」であるのに対し、比較品No.1ではそうでないこと、また、甲第2号証及び甲第4号証には、これらの効果について具体的に開示するところはないことを併せ考えると、本件発明1は、甲第1号証,甲第2号証及び甲第4号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(本件発明2について)
訂正された請求項2に係る発明(以下、「本件発明2」という。)は、本件発明1に、「エレミ、ダンマル及びロジンのうちから選ばれた1種又は2種以上の樹脂を成分(A)〜(C)の合計量に基づいて1〜20重量%含有させ」という事項が加わったものである。
しかるに、甲第3号証には、(1)可食性油性材料、(2)シュークロース・ジアセテート・ヘキサイソブチレート(SAIB)、(3)HLB8以上のポリグリセリン脂肪酸エステル類、及び(4)含水率50重量%以下の多価アルコール類からなる組成物を酸性飲料に配合することを特徴とする酸性飲料の着香、着色又は着濁方法について記載され、また、アラビアガムを添加することの記載はあるが、HLB8以上のポリグリセリン脂肪酸エステル類及び含水率50重量%以下の多価アルコール類を必須の成分としており、しかも、本件発明1に係る各成分の組成比とは相違するものであるから、甲第3号証に、「ロジン、コーバル、ダンマル、エレミ、・・・などの植物性樹脂類」を添加する旨の記載があっても、甲第3号証には、本件発明2について教示するところはないというべきである。
そして、甲第4号証には、SAIBは濁度効果が低いこと、及び、甲第5号証には、SAIBを用いない方法として、ロジン、ダンマル、エレミ樹脂を使用する方法が検討されていることがそれぞれ記載されているが、これ以上、本件発明2について教えるところはない。
また、甲第1号証には、上述した記載があるだけだから、結局、本件発明2は、甲第1号証,甲第3号証乃至甲第5号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(本件発明3及び4について)
訂正された請求項3及び4に係る発明(以下、「本件発明3及び4」という。)のうち、本件発明3は、本件発明1を、本件発明4は、本件発明2をそれぞれ引用するものであるから、本件発明3及び4は、本件発明1及び本件発明2についての判断と同様の理由により、甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2.日本香料工業会よりの特許異議申立
(1)特許異議申立人 日本香料工業会は、甲第1号証乃至甲第2号証を提出し、訂正前の本件請求項1乃至請求項4に係る発明は、甲第1号証乃至甲第2号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないと主張している。

甲第1号証:特開平7-107927号公報
甲第2号証:特開昭61-260860号公報
(2)判断
上記甲第1号証及び甲第2号証は、「1.森澤昭子よりの特許異議申立」における、甲第1号証及び甲第3号証に相当する。
したがって、本件発明1乃至4については、「1.森澤昭子よりの特許異議申立.」で示した甲第1号証及び甲第3号証に関する判断と同様、すなわち、本件発明1乃至4は、「日本香料工業会よりの特許異議申立」に係る甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
3.まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明1乃至4についての特許を取り消すことはできない。
また他に本件発明1乃至4についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
柑橘系飲料用乳化物
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、(B)柑橘系香料及び(C)炭素数6〜18の中鎖脂肪酸トリグリセライドの組成比(重量比)が、(A):(B)=86:14乃至60:40、(B):(C)=50:50乃至17:83、(A):(C)=60:40乃至55:45を同時に満足する範囲である組成物をアラビアガム水溶液で乳化した柑橘系飲料用乳化物。
【請求項2】 (A)ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、(B)柑橘系香料及び(C)炭素数6〜18の中鎖脂肪酸トリグリセライドの組成比(重量比)が、(A):(B)=86:14乃至60:40、(B):(C)=50:50乃至17:83、(A):(C)=60:40乃至55:45を同時に満足する範囲である組成物にエレミ、ダンマル及びロジンのうちから選ばれた1種又は2種以上の樹脂を成分(A)〜(C)の合計量に基づいて1〜20重量%含有させ、アラビアガム水溶液で乳化した柑橘系飲料用乳化物。
【請求項3】 請求項1記載の柑橘系飲料用乳化物を、ブリックス(Brix%)6〜14の飲料に配合した柑橘系飲料。
【請求項4】 請求項2記載の柑橘系飲料用乳化物を、ブリックス(Brix%)6〜14の飲料に配合した柑橘系飲料。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、柑橘系飲料用乳化物に関し、詳しくは柑橘系飲料に長期間安定な香気、混濁などを与え、分離せず、しかもネックリングや沈澱物が生じない嗜好性の高い香味と外観を与える柑橘系飲料用乳化物に関する。
【0002】
【従来技術】
柑橘系飲料をよりおいしく、かつナチュラル感を高めるために香料が用いられている。ところが、香料は油溶性であり、飲料は水溶性であるため、これら油溶性材料と水溶性材料を混濁するにあたり、油溶性材料をあらかじめ比重調整した後、乳化剤で均一に混濁した乳化物とし、これを飲料に添加する方法が採用されている。
しかし、元々油溶性材料と水溶性材料の混合であるため、長期間放置すると、分離したり、ネックリングが生じてしまう。
また、比重調整剤として、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(Sucrose acetate is obutyrate、以下SAIBと略記する。)を使用すると、SAIBが沈澱することがある。そのため、分離やネックリングを防ぐ手段として、比重調整剤(SAIB)と特定の油脂や香料等を組合せることが知られている。
例えば、フレーバーオイル、炭素数6〜12の中鎖脂肪酸トリグリセライド(Medium chain triglyceride、以下MCT OILと略記する。)の他に、比重調整剤としてSAIBを、乳化剤として炭素数8〜14の脂肪酸のソルビトール、ソルビタンもしくはソルバイドのエステルを用いる飲料用の香料組成物が知られている(特公昭52-35746号公報)。
その他、トリグリセライド脂肪酸と比重調整剤としてのショ糖類を、250:1〜1:2の割合で含む乳化飲料組成物も知られている(米国特許第4705691号公報)。
また、SAIBの沈澱を防止する方法として、乳化香料の比重調整が行われている。通常、乳化香料の比重は飲料の比重より0.015〜0.02程度軽くすることが知られている。(フレーバリングの技術、林敬次郎著、昭和48年8月1日発行)
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、比重調整剤であるSAIBと、乳化剤である炭素数8〜14の脂肪酸のソルビトール、ソルビタンもしくはソルバイドのエステルを用いる乳化物は、使用する油溶性成分のHLB(親水性と親油性のバランス)に合致した界面活性剤を使用しなければならない。
また、トリグリセライド脂肪酸と比重調整剤としてのショ糖類を、250:1〜1:2の割合で含む乳化飲料組成物は、組成によってはリングが生じやすいという問題点がある。ここで、リングとは飲料をビンに充填して静置していると、液面に浮遊物が生じて壁面に輪のように付着することを言う。
さらに、乳化香料の比重を飲料の比重より0.015〜0.02程度軽くするように調整した飲料でも、SAIBの沈澱を完全に防ぐことができず、ときには沈澱が生じることが知られている。
【0004】
上記のような理由から、長期間放置しても、分離やネックリングが生じたり、沈澱物が発生したりすることのない、安定で、外観や嗜好性の高い柑橘系飲料用乳化物が強く望まれていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、おいしく、かつナチュラル感があり、しかも嗜好性の高い柑橘系飲料用乳化物を開発すべく、鋭意検討を重ねた結果、特定の香料組成物が上記の目的を満足させることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下に示すとおりである。
請求項1.(A)ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)、(B)柑橘系香料及び(C)炭素数6〜18の中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT OIL)の組成比(重量比)が、(A):(B)=86:14乃至60:40、(B):(C)=50:50乃至17:83、(A):(C)=60:40乃至55:45を同時に満足する範囲である組成物をアラビアガム水溶液で乳化した柑橘系飲料用乳化物。
請求項2.(A)ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)、(B)柑橘系香料及び(C)炭素数6〜18の中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT OIL)の組成比(重量比)が、(A):(B)=86:14乃至60:40、(B):(C)=50:50乃至17:83、(A):(C)=60:40乃至55:45を同時に満足する範囲である組成物にエレミ、ダンマル及びロジンのうちから選ばれた1種又は2種以上の樹脂を成分(A)〜(C)の合計量に基づいて1〜20重量%含有させ、アラビアガム水溶液で乳化した柑橘系飲料用乳化物。
請求項3.請求項1記載の柑橘系飲料用乳化物を、ブリックス(Brix%)6〜14の飲料に配合した柑橘系飲料。
請求項4.請求項2記載の柑橘系飲料用乳化物を、ブリックス(Brix%)6〜14の飲料に配合した柑橘系飲料。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明で使用されるSAIBは、ショ糖の水酸基2個を酢酸基で、6個をイソ酪酸基でエステル化され、8個の水酸基全部が脂肪酸で置換されている。そのため、精油類によく溶け、比重調整剤として香料を清涼飲料水等に添加する場合に好適に使用することができる。
【0008】
また、MCT OILは、二重結合を持たないために、酸化安定性がよく、低粘度、低凝固点などの優れた物性を有している上に、コレステロール低下作用など生理学的特性も持っている。そのため、これらの特性を生かして食品着香料、着色料の溶解希釈剤などの用途に使用されている。
本発明において用いられるMCT OILは、炭素数6〜18、好ましくは炭素数6〜12の飽和モノカルボン酸の組合せよりなるトリグリセライドであり、ヤシ油やパーム油を原料にした植物性食用油脂である。
【0009】
柑橘系香料は、柑橘油(シトラス類)系の香料であれば、天然香料、調合香料のいずれも用いられる。柑橘油としては、例えばミカン油、オレンジ油、レモン油、グレープフルーツ油、ライム油、ユズ油、夏ミカン油等がある。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。また、これら柑橘油の一部又は全部のテルペンを除去したものも用いられる。
【0010】
本発明では、請求項2に記載したように、上記成分にエレミ、ダンマル及びロジンのうちから選ばれた1種又は2種以上の樹脂を配合することができる。これらは天然樹脂であり、配合量は成分(A)〜(C)の合計量に基づいて1〜20重量%である。上限を超えて添加すると、乳化物を飲料と混合したとき、リングを生じてしまう。
これら樹脂の適量を加えることにより、乳化香料の濁りの度合いを調整することができる。
【0011】
乳化剤のアラビアガムは、夾雑物を除去して水溶液として用いられる。
食品に使用できる乳化剤の中で、本発明が対象とする柑橘系飲料に用いて長期間安定な香気、混濁などを与え、分離せず、しかもネックリングが生じたり、沈殿物が生成することのない嗜好性の高い香味、外観を与える柑橘系飲料乳化物を得るためには、アラビアガム水溶液が最も好ましい。
【0012】
次に、本発明の組成物における成分(A)、(B)及び(C)の配合割合は、重量比で(A):(B)が86:14乃至60:40、(B):(C)が50:50乃至17:83、(A):(C)が60:40乃至55:45の範囲を同時に満足するものである。
これらの関係を図示したものが図1であり、図の実線で囲まれた範囲を示している。
【0013】
上記組成物には、必要に応じて天然色素類(β-カロチン、パプリカ色素、アナトー色素、クロロフィルなど)、脂溶性ビタミン類(肝油、ビタミンA、ビタミンA油、ビタミンB2酪酸エステル、天然ビタミンE混合物など)、多価アルコール類(グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マルチトール、デキストリン、水飴、ショ糖、オリゴ糖、ぶどう糖、果糖、麦芽糖、乳糖、トレハロースなどの糖類)、酸味料(クエン酸、クエン酸ナトリウムなど)、酸化防止剤(ビタミンCなど)を適宜加えても良い。
【0014】
本発明において飲料には制限がなく、例えば炭酸飲料、果実飲料、乳性飲料、嗜好飲料、健康飲料、ミネラルウオーター、スポーツドリンクなど様々な飲料が含まれる。
ブリックス(Brix%)とは、可溶性固形物(糖分、クエン酸などの有機酸、アミノ酸、その他の水に溶け込んでいる物質)の含有率を20℃における糖用屈折計(糖度計)で測定した数値を示度とする糖度で、基本的にはショ糖の重量%であるが、実用的には水溶液中に含まれる可溶性固形物の濃度%として利用されている。
本発明の乳化物を添加する飲料のブリックスは、6〜14が好ましいが、さらに好ましくは8〜14である。
【0015】
本発明の柑橘系乳化物の飲料への添加量は、使用目的などを考慮して決定すればよいが、好ましくは0.01〜0.5%である。さらに好ましくは、濁りや香りの強度を変えるため0.05〜0.2%である。
前述の如く、香料を含む乳化物は油溶性であり、飲料は水溶性であるため、これらを混合するにあたり、適当な混練装置などを使用する。このような装置としては高圧ホモジナイザーが好適である。これは、液体中に他の液体粒子を細かく分散させて均一なエマルジョンを得る装置であり、混合液をバネを利用した弁などを通して、極めて狭い空間を高圧(50〜300kg/cm2)で噴出させて強い剪断作用によって乳化させる。
【0016】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
実施例1
(1)乳化香料の調製
200ミリリットル容ビーカーに成分(A)ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(商品名:SAIB、イーストマンコダック社製)(5.0g)、成分(B)オレンジ油(1.67g)、成分(C)MCT OIL(商品名:パナセート 810、扇ケミカル社製)(3.33g)及びエレミ樹脂(0.2g)を入れ、加熱溶解した。
1リットル容ビーカーにアラビアガム(250g)及び水(648g)を加えた後、加熱溶解し殺菌した。このアラビアガム水溶液に前記200ミリリットル容ビーカー内の溶解物を加えて5000〜12000rpmで30分間撹拌した。さらに、高圧ホモジナイザーを用いて100〜300kg/cm2の条件で処理して乳化物を得た。
【0017】
(2)柑橘系飲料の調製とボトリング安全性テスト
グラニュー糖80g、100g、120g又は140gにクエン酸2gを加えたのち、水を加えてそれぞれ1000gにしてBx.8、10、12又は14のシロップを調製した。
各シロップに上記(1)で得た乳化物を0.1%加え、これを透明ビンに充填し80℃で20分間殺菌した。その後、冷却して柑橘系飲料を得た。この飲料を室温で3ケ月間静置して経時変化を観察した。結果を第1表及び図2に示した。
【0018】
【表1】

注 (1)SAIB、香料、MCTの%はこれら三成分の百分率を表す。
(2)エレミ、ロジンの%はSAIB、香料、MCTの三成分に対する比率を表す。
(3)-:変化なし
+:沈殿を発生
R:リングを発生
(4)アラビアガム水溶液を入れてアラビアガム25gとなるように水の量を調節して、(A)、(B)、(C)、および樹脂の合計数量(g)を加えた時に全量が100.0gになるようにする。
【0019】
図から明らかなように、上記(1)で得た乳化物は成分(A)〜(C)の組成比が図1に示した実線で囲まれた範囲に入っている。また、表に示したように、ブリックス8〜14の各飲料は、いずれもリングや沈澱の発生が認められなかった。
【0020】
実施例2〜11
乳化物を形成する成分(A)〜(C)の量や樹脂の種類及び量を変化させたこと以外は、実施例1と同様の方法で製造した各種の柑橘系飲料を実施例1と同じ条件で静置し、経時変化を観察した。結果を第1表及び図2に示す。
図から明らかなように、これら実施例で用いた乳化物は、いずれも成分(A)〜(C)の組成比が図1に示した実線で囲まれた範囲に入っており、またすべての柑橘系飲料には、リングや沈澱の発生が認められなかった。
【0021】
比較例1〜11
乳化物を形成する成分(A)〜(C)の量や樹脂の種類及び量を変化させたこと以外は、実施例1と同様の方法で製造した各種の柑橘系飲料を実施例1と同じ条件で静置し、経時変化を観察した。結果を第1表及び図3に示す。
図3に示したように、飲料に加えた乳化物は、いずれも成分(A)〜(C)の組成比が図1に示した実線で囲まれた範囲外にある。そのため、第1表に示した如く、各種ブリックス濃度の飲料は、いずれも沈澱又はリングを生成した。
上記結果から明らかなように、成分(A)、(B)及び(C)の組成比が、本発明で特定した範囲を外れると、沈澱やリングが生じてしまう。また、樹脂の添加量が成分(A)、(B)及び(C)の合計の20重量%を超えると、沈澱が生じてしまう。
【0022】
比較例12〜23
成分(A)としてショ糖酢酸イソ酪酸エステル(商品名:SAIB、イーストマンコダック社製)を、成分(C)としてMCT OIL(商品名:パナセート 810、扇ケミカル社製)を用い、成分(B)として実施例1と同じオレンジ油を用い、それぞれ第1表に示した割合(米国特許第4705691号公報に記載の割合、すなわち成分(A):(C)が250:1〜1:2)で使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で製造した柑橘系飲料を実施例1と同じ条件で静置し、経時変化を観察した。結果を第1表及び図4に示す。
図から明らかなように、いずれの場合も成分(A)〜(C)の組成比が図1に示した実線で囲まれた範囲外にあり、すべての飲料は、表に示したように、沈澱又はリングを生成した。
【0023】
試験例1
透過率の測定
実施例1で調製した乳化香料1.0gを水で1000mlに定容し、1cmセルを用いて600nmにおける透過率(T%)と屈折率(D20)を測定した。なお、屈折率については、アラビアガムを加える前の油溶性材料について測定したものである。結果を第2表に示す。
【0024】
試験例2
実施例1のエレミ2%(0.2g)の代わりに、第2表に示した樹脂を所定の量で添加したこと以外は、実施例1と同様にして乳化物を得た。この乳化物について試験例1と同様にして透過率と屈折率を測定した。結果を第2表に示す。
【0025】
【表2】

【0026】
上記結果から明らかなように、乳化物の成分として樹脂を添加することによって透過率が減少する。つまり、乳化物の濁りが強くなる。
【0027】
比較例24
アラビアガム水溶液に変えて、糖アルコール(225g)を用いたこと以外は、実施例1に準じて乳化香料並びに各種の柑橘系飲料(Bx.6〜14)を製造して該飲料のボトリング試験を行ったところ、Bx.6〜14の全域でリングを発生した。
【0028】
比較例25
アラビアガム水溶液に変えて、キサンタンガム(1.5g)を用いたこと以外は、実施例1に準じて乳化香料並びに各種の柑橘系飲料(Bx.6〜14)を製造してボトリング試験を行ったところ、Bx.6〜8で沈殿を生じ、Bx.8〜14でリングを発生した。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、柑橘系飲料に長期間安定な香気、混濁などを与え、分離したり、ネックリングが生じたり、あるいは沈澱物が生じたりすることのない嗜好性の高い香味、外観を与える柑橘系飲料用乳化物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の乳化物における成分(A)〜(C)の組成比を示したものである。
【図2】 実施例1〜11の飲料における成分(A)〜(C)の組成比を示したものである。
【図3】 比較例1〜11の飲料における成分(A)〜(C)の組成比を示したものである。
【図4】 比較例12〜23の飲料における成分(A)〜(C)の組成比を示したものである。
【図面】




 
訂正の要旨 (3-1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を、特許請求の範囲の減縮を目的として「(A)ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、(B)柑橘系香料及び(C)炭素数6〜18の中鎖脂肪酸トリグリセライドの組成比(重量比)が、(A):(B)=86:14乃至60:40、(B):(C)=50:50乃至17:83、(A):(C)=60:40乃至55:45を同時に満足する範囲である組成物をアラビアガム水溶液で乳化した柑橘系飲料用乳化物」に訂正する。
(3-2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を、特許請求の範囲の減縮を目的として「(A)ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、(B)柑橘系香料及び(C)炭素数6〜18の中鎖脂肪酸トリグリセライドの組成比(重量比)が、(A):(B)=86:14乃至60:40、(B):(C)=50:50乃至17:83、(A):(C)=60:40乃至55:45を同時に満足する範囲である組成物にエレミ、ダンマル及びロジンのうちから選ばれた1種又は2種以上の樹脂を成分(A)〜(C)の合計量に基づいて1〜20重量%含有させ、アラビアガム水溶液で乳化した柑橘系飲料用乳化物」に訂正する。
(3-3)訂正事項3
上記訂正事項1及び2に示す訂正に伴い、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との整合を図るために、明瞭でない記載の釈明を目的として、明細書の段落番号0006の記載を次のように訂正する。
「すなわち、本発明は以下に示すとおりである。
請求項1.(A)ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、(B)柑橘系香料及び(C)炭素数6〜18の中鎖脂肪酸トリグリセライドの組成比(重量比)が、(A):(B)=86:14乃至60:40、(B):(C)=50:50乃至17:83、(A):(C)=60:40乃至55:45を同時に満足する範囲である組成物をアラビアガム水溶液で乳化した柑橘系飲料用乳化物。
請求項2.(A)ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、(B)柑橘系香料及び(C)炭素数6〜18の中鎖脂肪酸トリグリセライドの組成比(重量比)が、(A):(B)=86:14乃至60:40、(B):(C)=50:50乃至17:83、(A):(C)=60:40乃至55:45を同時に満足する範囲である組成物にエレミ、ダンマル及びロジンのうちから選ばれた1種又は2種以上の樹脂を成分(A)〜(C)の合計量に基づいて1〜20重量%含有させ、アラビアガム水溶液で乳化した柑橘系飲料用乳化物。
請求項3.請求項1記載の柑橘系飲料用乳化物を、ブリックス(Brix%)6〜14の飲料に配合した柑橘系飲料。
請求項4.請求項2記載の柑橘系飲料用乳化物を、ブリックス(Brix%)6〜14の飲料に配合した柑橘系飲料。」
(3-4)訂正事項4
上記訂正事項1及び2に示す訂正に伴い、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との整合を図るために、明瞭でない記載の釈明を目的として、明細書の段落番号0012の記載を次のように訂正する。
「次に、本発明の組成物における成分(A)、(B)及び(C)の配合割合は、重量比で(A):(B)が86:14乃至60:40、(B):(C)が50:50乃至17:83、(A):(C)が60:40乃至55:45の範囲を同時に満足するものである。
これらの関係を図示したものが図1であり、図の実線で囲まれた範囲を示している。」
(3-5)訂正事項5
上記訂正事項1及び2に示す訂正に伴い、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との整合を図るために、明瞭でない記載の釈明を目的として、明細書の段落番号0018の第1表を次のように訂正する。すなわち、特許請求の範囲の減縮によって発明の範囲外となる実施例10、12、14及び15を削除すると共に、実施例11と13の実施例番号を実施例10と11に改めるものである。

注 (1)SAIB、香料、MCTの%はこれら三成分の百分率を表す。
(2)エレミ、ロジンの%はSAIB、香料、MCTの三成分に対する比率を表す。
(3)-:変化なし
+:沈殿を発生
R:リングを発生
(4)アラビアガム水溶液を入れてアラビアガム25gとなるように水の量を調節して、(A)、(B)、(C)、および樹脂の合計数量(g)を加えた時に全量が100.0gになるようにする。
(3-6)訂正事項6
上記訂正事項1及び2に示す訂正に伴い、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との整合を図るために、明瞭でない記載の釈明を目的として、明細書の段落番号0020の記載を次のように訂正する。すなわち、特許請求の範囲の減縮によって発明の範囲外となる実施例10、12、14及び15を削除すると共に、実施例11と13の実施例番号を実施例10と11に改めるものである。
「実施例2〜11
乳化物を形成する成分(A)〜(C)の量や樹脂の種類及び量を変化させたこと以外は、実施例1と同様の方法で製造した各種の柑橘系飲料を実施例1と同じ条件で静置し、経時変化を観察した。結果を第1表及び図2に示す。
図から明らかなように、これら実施例で用いた乳化物は、いずれも成分(A)〜(C)の組成比が図1に示した実線で囲まれた範囲に入っており、またすべての柑橘系飲料には、リングや沈澱の発生が認められなかった。」
(3-7)訂正事項7
上記訂正事項5及び6に示す訂正に伴い、特許請求の範囲の減縮によって発明の範囲外となる実施例10、12、14及び15を削除したので、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との整合を図るために、明瞭でない記載の釈明を目的として、図面の簡単な説明の欄における図2の実施例番号を次のように改めるものである。
「【図1】 本発明の乳化物における成分(A)〜(C)の組成比を示したものである。
【図2】 実施例1〜11の飲料における成分(A)〜(C)の組成比を示したものである。
【図3】 比較例1〜11の飲料における成分(A)〜(C)の組成比を示したものである。
【図4】 比較例12〜23の飲料における成分(A)〜(C)の組成比を示したものである。」
(3-8)訂正事項8
上記訂正事項5及び6に示す訂正に伴い、特許請求の範囲の減縮によって発明の範囲外となる実施例10、12、14及び15を削除したので、明瞭でない記載の釈明を目的として、特許請求の範囲と図面の整合を図るために、図1〜4を別紙の通りに訂正する。
異議決定日 2003-02-12 
出願番号 特願平9-366065
審決分類 P 1 651・ 121- YA (A23L)
最終処分 維持  
特許庁審判長 徳廣 正道
特許庁審判官 田中 久直
近 東明
登録日 2002-01-11 
登録番号 特許第3266842号(P3266842)
権利者 高砂香料工業株式会社
発明の名称 柑橘系飲料用乳化物  
代理人 久保田 藤郎  
代理人 久保田 藤郎  
代理人 矢野 裕也  
代理人 矢野 裕也  

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