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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C08G 審判 全部申し立て 2項進歩性 C08G |
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管理番号 | 1076383 |
異議申立番号 | 異議2001-73307 |
総通号数 | 42 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-07-19 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-12-11 |
確定日 | 2003-03-10 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3174444号「熱可塑性ポリカーボネートの製造法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3174444号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 |
理由 |
【1】手続の経緯 本件特許第3174444号は、平成5年11月8日に特許出願され(優先権主張 平成4年11月12日 ドイツ)、平成13年3月30日に特許権の設定登録がなされ、その後、日本ジーイープラスチックス株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由を通知したところ、その指定期間内である平成14年8月9日に特許異議意見書が提出されると共に、訂正請求がなされたものである。 【2】訂正の適否についての判断 1.訂正事項 訂正事項は、以下のとおりである。 [訂正事項a] 請求項1中の「該触媒は第4級アンモニウム化合物および第4級フォスフォニウム化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物を」なる記載を、「該触媒として第4級アンモニウム化合物および第4級フォスフォニウム化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物のみを」と訂正する。 [訂正事項b] 段落【0001】中の「使用する触媒は第4級アンモニウム化合物または第4級フォスフォニウム化合物であり、これをジフェノール1モルについて10-1〜10-8モル使用し、」なる記載を、「該触媒として第4級アンモニウム化合物および第4級フォスフォニウム化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物のみをジフェノール1モルについて10-1〜10-8モル使用し、」と訂正する。 [訂正事項c] 段落【0073】中の「該触媒は第4級アンモニウム化合物および第4級フォスフォニウム化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物を」なる記載を、「該触媒として第4級アンモニウム化合物および第4級フォスフォニウム化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物のみを」と訂正する。 2.訂正の目的・範囲の適否、拡張・変更の有無 訂正事項aは、訂正前の請求項1に係る発明において「第4級アンモニウム化合物および第4級フォスフォニウム化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物」(以下「本件触媒」という)以外の触媒(以下「他の触媒」という)の存在が許容されるか否かが明りょうでなかったものを明りょうにするものである。そして、訂正前の明細書に「他の触媒」の存在が許容される旨の記載がなく、また実施例では「他の触媒」が使用されていないのに対して、対照例には「本件触媒」と「他の触媒」を併用したものが記載されていたことからみて、この訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。 訂正事項b、cは、訂正事項aの訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とが整合しなくなったことを解消するためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的としたものであって、訂正事項aと同様に、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。 また、訂正事項a〜cは、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 3.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 【3】特許異議の申立てについての判断 1.本件発明 本件の請求項1〜3に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」〜「本件発明3」という)は、訂正明細書の特許請求の範囲に記載された、次のとおりのものである。 「【請求項1】 (i)温度80〜250℃において、大気圧下で触媒を存在させて最高5時間の間、ジフェノールと炭酸ジアリールエステルとを用いて熔融物としてエステル交換反応を行い、重量平均分子量が8,000〜18,000、OH末端基含量が25〜50%のカーボネート・オリゴマーをつくり、 (ii)該カーボネート・オリゴマーを、温度250〜295℃において、圧力を500ミリバールより低く0.01ミリバールまでの範囲で縮重合させることから成る低分岐度をもつポリカーボネートを製造する溶媒を用いない2段階製造法において、該触媒として第4級アンモニウム化合物および第4級フォスフォニウム化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物のみをジフェノール1モルに関し10-1〜10-8モルの量で使用することを特徴とする方法。 【請求項2】 該触媒は式(3)および(4) 【化1】 R1〜4は同一または相異なるC1〜C18-アルキル、C6〜C10-アリール、またはC5〜C6-シクロアルキルであり、X-は対応する酸-塩基の対 H++X-= HXのpKBが11より小さい陰イオンである、の化合物から成る群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項3】 該カーボネート・オリゴマーを縮重合させる前に、真空中で温度最高260℃において蒸溜によりモノフェノールを除去することを特徴とする請求項1記載の方法。」 2.特許異議の申立て及び取消理由の概要 特許異議申立人は、証拠として甲第1号証(特開平2-175722号公報)、甲第2号証(特開平2-124934号公報)、甲第3号証(下田智明作成の実験報告書)を提出し、次の理由a、bを主張している。 理由a:訂正前の請求項1〜3に係る発明は、甲第3号証の実験報告書を参酌すると、甲第1、2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものである。 理由b:訂正前の請求項1〜3に係る発明は、甲第3号証の実験報告書を参酌すると、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。 取消理由の概要は、上記特許異議申立人の主張と同趣旨である。 3.判断 (1)本件発明1について 甲第1号証の請求項3には「芳香族系有機二水酸基化合物と炭酸ジエステルとを溶融重縮合してポリカーボネートを製造するに際して、上記モノマー中に含まれる合計の、加水分解可能な塩素含有量、ナトリウムイオン含有量および鉄イオン含有量がそれぞれ下記のような範囲にある、芳香族系有機二水酸基化合物および炭酸ジエステルを用いることを特徴とするポリカーボネートの製造方法: 加水分解可能な塩素含有量: 3ppm以下 ナトリウムイオン :1.0ppm以下 鉄イオン :1.0ppm」と記載され、第4頁左下欄第14行〜第4頁右下欄第9行には「本発明では、上記のような芳香族系有機二水酸基化合物と炭酸ジエステルとを溶融重縮合してポリカーボネートを製造するに際して、従来から公知の触媒あるいは本発明者らによって新たに開発された触媒を用いることができる。たとえば、特公昭36-694号公報あるいは特公昭36-13942号公報に記載されて触媒、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属、亜鉛、カドミウム、スズ、アンチモン、鉛、マンガン、コバルト、ニッケルなどの金属の酢酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、酸化物、水酸化物、水素化物あるいはアルコラートなどが用いられ、また含窒素塩基性化合物とホウ酸またはホウ酸エステル、リン化合物などとの組合せ系なども用いられる。」と記載され、さらに、第8頁には、「実施例5 加水分解可能な塩素含量が5.9ppmであるジフェニルカーボネート(Bayer社製)を、80℃のpH7.0である温水で2回洗浄した後、減圧蒸留して90%の回収率で加水分解可能な塩素含量0.1ppm以下のジフェニルカーボネートを得た。反応容器にガラスリアクターを用い、攪拌棒をNiにした系でこのジフェニルカーボネート143.8g(0.672モル)と、加水分解可能塩素含量0.1ppm以下のビスフェノールA(日本ジーイープラスチックス社製)136.8g(0.600モル)とホウ酸H3BO3、3%水溶液3.0mg(H3BO3 0.025×10-4mol/BPA 1mol)とをN2雰囲気下、180℃に昇温した。その後、テトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド(Me4NOH)15%水溶液(東洋合成社製)91.2mg(Me4NOH2.5×10-4mol/BPA 1mol)、水酸化ナトリウム(NaOH)0.1%水溶液24.0mg(0.010×10-4mol/BPA 1mol)を加えて、さらに180℃、N2雰囲気下30分攪拌し、エステル交換反応を行なった。その後、210℃に昇温し、徐々に200mmHgまで減圧し、その条件で1時間、さらに240℃まで昇温し、200mmHgで20分、その後さらに徐々に150mmHgまで減圧後20分、15mmHgまで減圧して0.5時間反応させた後、270℃に昇温し、最終的に0.5mmHgまで減圧して2.5時間反応させた。IVが0.55dl/gのポリカーボネートをほぼ定量的に得た。このポリカーボネートのb値は0.7であった。」と記載されている。 甲第2号証の請求項1には「芳香族系有機二水酸基化合物と炭酸ジエステルとを溶融重縮合してポリカーボネートを製造するに際して、 (a)含窒素塩基性化合物 および (b)芳香族系有機二水酸基化合物1モルに対して、10-8〜10-3モル量のアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物 からなる触媒を用いることを特徴とするポリカーボネートの製造方法。」と記載され、実施例20には、含窒素塩基性化合物としてテトラメチルアンモニウムヒドロオキサイドを、芳香族系有機二水酸基化合物としてNaOHを使用した例が、実施例22には、含窒素塩基性化合物としてテトラメチルアンモニウムヒドロオキサイドを、芳香族系有機二水酸基化合物としてLiOHを使用した例が記載されている。 ところで、本件発明1は、「本件触媒」のみを使用することを要件とする他、カーボネート・オリゴマーの重量平均分子量や、OH末端基含量等の各種要件も特定する発明であって、これら各種要件の特定により、低分岐度をもつポリカーボネートを製造できるという効果を奏するものである。 これに対して、甲第1、2号証には、「本件触媒」のみを使用する等、これら各種要件を採用することについての記載はなく、また、低分岐度をもつポリカーボネートを製造するための技術手段について、何も記載されていない。 したがって、本件発明1は、甲第1、2号証に記載された発明であるとも、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められない。 なお、特許異議申立人は、実験報告書(甲第3号証)を提出し、実験の結果、甲第1号証の実施例5、甲第2号証の実施例20、22が、訂正前の本件発明1〜3と同一であるから、訂正前の本件発明1は、甲第1、2号証に記載された発明であり、また、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している。しかし、甲第1号証の実施例5では、触媒としてホウ酸、テトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド、水酸化ナトリウムの3者を使用しており、甲第2号証の実施例20、22では、テトラメチルアンモニウムヒドロオキサイドとNaOH又はLiOHの2者を使用しているから、これらは、本件発明1とその触媒において相違している。また、これらの実施例からは、低分岐度をもつポリカーボネートを得る為の知見を得ることができない。したがって、この特許異議申立人の主張は採用できない。 (2)本件発明2、3について 本件発明2は本件発明1における「本件触媒」を限定した本件発明1の下位概念発明であり、本件発明3は、本件発明1の構成要件をすべて備えた発明であるから、本件発明2、3も、上記(1)に示した理由と同様の理由により、甲第1、2号証に記載された発明であるとも、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められない。 【4】むすび したがって、特許異議の申立ての理由および取消理由によっては、本件発明1〜3に係る特許を取り消すことができない。 また、他に本件発明1〜3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件発明1〜3に係る特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 熱可塑性ポリカーボネートの製造法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (i)温度80〜250℃において、大気圧下で触媒を存在させて最高5時間の間、ジフェノールと炭酸ジアリールエステルとを用いて熔融物としてエステル交換反応を行い、重量平均分子量が8,000〜18,000、OH末端基含量が25〜50%のカーボネート・オリゴマーをつくり、 (ii)該カーボネート・オリゴマーを、温度250〜295℃において、圧力を500ミリバールより低く0.01ミリバールまでの範囲で縮重合させることから成る低分岐度をもつポリカーボネートを製造する溶媒を用いない2段階製造法において、 該触媒として第4級アンモニウム化合物および第4級フォスフォニウム化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物のみをジフェノール1モルに関し10-1〜10-8モルの量で使用することを特徴とする方法。 【請求項2】 該触媒は式(3)および(4) 【化1】 R1〜4は同一または相異なるC1〜C18-アルキル、C6〜C10-アリール、またはC5〜C6-シクロアルキルであり、X-は対応する酸-塩基の対 H++X-= HXのpKBが11より小さい陰イオンである、 の化合物から成る群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項3】 該カーボネート・オリゴマーを縮重合させる前に、真空中で温度最高260℃において蒸溜によりモノフェノールを除去することを特徴とする請求項1記載の方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 本発明はジフェノール、炭酸ジアリールエステルおよび触媒から温度80〜295℃、圧力1,000〜0.01ミリバールにおいて溶媒を用いないエステル交換反応により分岐度の低いポリカーボネートを製造する方法において、該触媒として第4級アンモニウム化合物および第4級フォスフォニウム化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物のみをジフェノール1モルについて10-1〜10-8モル使用し、工程を2段階において行い、第1段階においては反応原料を温度80〜250℃、好ましくは100〜230℃、特に120〜190℃において大気圧下で最高5時間、好ましくは0.25〜3時間以内で熔融し、次いで触媒を加え真空中で(大気圧ないし1ミリバール)温度を上昇(最高260℃)させて蒸溜することによりモノフェノールを除去してカーボネート・オリゴマーを製造し、第2段階においてはこのカーボネート・オリゴマーを温度250〜290℃で500ミリバールより低く0.01ミリバールまでの圧力において縮重合させ、第1段階で製造されるカーボネート・オリゴマーの重量平均分子量Mwが8,000〜18,000、好ましくは9,000〜15,000になり、OH末端基含量が25%より大で50%より少なくなるように、好ましくは30〜45%になるように工程をコントロールすることを特徴とする方法に関する。 【0002】 本発明方法で得られるポリカーボネートは溶媒を含んでおらず、分岐度が低く、固有の色が薄いポリカーボネートである。 【0003】 溶媒を用いないエステル交換反応により芳香族のカーボネート・オリゴマー/重合体を製造する方法は文献において公知であり、例えばエンサイクロペディア・オヴ・ポリマー・サイエンス(Encyclopedia of Polymer Science)第10巻(1969年発行)、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ社(John Wiley and Sons,Inc.)1964年発行、エイチ・シュネル(H.Schnell)著、ケミストリー・アンド・フィジックス・オヴ・ポリカーボネーツ(Chemistry and Physics of Policarbonates)、ポリマー・レヴィユーズ(Polymer Reviews)、並びにドイツ特許第1 031 512号参照のこと 上記文献およびその参照文献に記載された触媒は塩基性のアルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属の水酸化物、アルコレート、炭酸塩、酢酸塩、硼酸塩、水素燐酸塩および水素化物である。これらの化合物を使用すると、エステル交換反応中に望ましくない副反応が生じ、分岐したポリカーボネートが得られる(対照例1、2、8参照)が、これは直鎖のポリカーボネートに比べ光学的および機械的性質が劣っている。 【0004】 米国特許第3 442 854号においては、第4級アンモニウム/フォスフォニウム化合物は溶媒を用いないエステル交換反応の触媒として記載されている。しかし高分子量のポリカーボネートを得るためには縮重合段階において数時間に亙り反応温度を300℃より高くする必要がある。さらにこれらの生成物は低い分岐度をもっていない(対照例3、4、5、9参照)。 【0005】 ヨーロッパ特許明細書第360 578号および同第351 168号には、アンモニウム塩をアルカリ金属/アルカリ土類金属塩、および硼酸/硝酸エステルと組み合わせることが記載されており、JA 7 214 742号には水酸化テトラメチルアンモニウムをアルカリ金属/アルカリ土類金属塩と組合わせてを温度280℃において縮重合条件で触媒として使用することが記載されている。しかしこの方法で分岐度の低いポリカーボネートをえることはできない(対照例6、7参照)。 【0006】 反応させた場合OH末端基を含まず分岐していない淡色のポリカーボネートを生じる酸触媒(有機酸、これらの酸の塩、および有機酸のエステル)はベルギー特許第677 424号に記載されている。本発明において分岐をしていないとはカルボキシル基含量が500ppmより少ないことを意味する。これは当業界における意味において分岐が存在しないことを意味するには不十分である。またポリカーボネートを製造するには5時間より長い縮合時間が必要であるが、このことは容積/時間収率が低いことを意味する。 【0007】 本発明においては驚くべきことには、縮重合温度が295℃より低く、中間生成物として生じるカーボネート・オリゴマーのOH/炭酸アリール末端基の比が>25%OH:<75%炭酸アリールから<50%OH:>50%炭酸アリールの間、好ましくは>30%OH:<70%炭酸アリールから<45%OH:>55%炭酸アリールの間にある場合、低分岐度をもったポリカーボネートを溶媒を含まない縮重合で製造するための芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの溶媒を含まないエステル交換反応の触媒として、第4級アンモニウムまたはフォスフォニウム化合物が適していることが見出だされてた。 【0008】 ドイツ特許公開明細書第40 39 023号および同第40 38 967号においても中間生成物として得られるカーボネート・オリゴマーに対して同様なOH/炭酸アリール末端基の比が必要とされているが、このカーボネート・オリゴマーの合成は相の境界で行われるから、溶媒を使用しないということは保証できない。 【0009】 本発明において溶媒を含まないという言葉は、ポリカーボネートの製造工程にハロゲン化炭化水素、ケトンおよび炭化水素を全く使用しないことを意味するものとする。 【0010】 本発明において分岐度が低いという言葉は、ポリカーボネートを全部鹸化した後HPLC法で決定して式(1) 【0011】 【化2】 【0012】 に対応する分岐基の割合が75ppmを越えないことを意味する。ここでX=C1〜C6アルキレンまたはC5〜C12シクロアルキリデン、S、SO2、または単結合であり、R=CH3、ClまたはBrであり、nは0、1または2である。 【0013】 本発明に適したジフェノールは式(2) 【0014】 【化3】 【0015】 に対応するものである。ここでX、Rおよびnは式(1)に示した意味を有する。 【0016】 好適なジフェノールは次の通りである。 【0017】 4,4-ジヒドロキシジフェニル、 4,4-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、 1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-シクロヘキサン、 ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-メタン、 2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン、 2,4-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、 2,2-ビス-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロパン、 2,2-ビス-(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパン、 ビス-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-メタン、 2,2-ビス-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロパン、 ビス-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-スルフォン、 2,4-ビス-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、 2,2-ビス-(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパン、 2,2-ビス-(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパン、 1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン。 【0018】 これらの中で2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン、および1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンが特に好適なジフェノールである。 【0019】 本発明において炭酸ジアリールはジ-C6〜C14-アリ-ルエステル、好ましくはフェノールまたはアルキル置換フェノールのジエステル、即ち炭酸ジフェノールまたは炭酸ジクレジルを意味する。ジフェノール1モルに関し、1.01〜1.30モル、好ましくは1.02〜1.15モルの量の炭酸ジアリールエステルを使用する。 【0020】 反応原料、即ちジフェノールおよび炭酸ジアリールエステルがアルカリ金属およびアルカリ土類金属のイオンを含まないように注意しなければならないが、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のイオンは0.1ppm以下なら許容できる。このような純粋なジフェノールおよび炭酸ジアリールエステルは炭酸ジアリールエステルまたはジフェノールを再結晶し、洗滌または蒸溜することにより得られる。 【0021】 アンモニウム触媒またはフォスフォニウム触媒の好適量はジフェノール1モルに関し10-2〜10-7モルである。 【0022】 好適な触媒は式(3)および(4) 【0023】 【化4】 【0024】 に対応するものである。ここでR1〜4は同一または相異なるC1〜C18-アルキル、C6〜C10-アリール、またはC5〜C6-シクロアルキルであり、X-は対応する酸-塩基の対 H++X- = HXのpKBが11より小さい陰イオンである。 【0025】 本発明の触媒の例は次の通りである。 【0026】 水酸化テトラメチルアンモニウム、 酢酸テトラメチルアンモニウム、 フッ化テトラメチルアンモニウム、 硼酸テトラメチルアンモニウムテトラフェニル、 フッ化テトラフェニルフォスフォニウム、 硼酸テトラメチルフォスフォニウムテトラフェニル、 水酸化ジメチルジフェニルアンモニウム、 水酸化テトラエチルアンモニウム。 【0027】 これらの触媒はまたお互い同士の組合わせ(2種以上)として使用することもできる。 【0028】 カーボネート・オリゴマーの重量平均分子量MwはCH2Cl2中かまたはフェノール/o-ジクロロベンゼン当量混合物中の相対粘度を測定し、光散乱を測定して較正することにより決定される。 【0029】 カーボネート・オリゴマーのOH末端基含量は式 【0030】 【数1】 Xモル%=(OH末端基の数)/(末端基の総数) × 100 により決定される。 【0031】 カーボネート・オリゴマーのOH/炭酸アリール末端基の比は、一方ではTiCl4を用いて分光学的にOH末端基を、他方では全体を鹸化した後に生じるモノフェノールにつきHPLC法によって炭酸アリール末端基をそれぞれ別々に決定することにより決定される。 【0032】 カーボネート・オリゴマーのOH末端基および炭酸アリール末端基は合わせると一般に100%に達する。 【0033】 本発明方法は撹拌容器、薄層蒸発器、カスケード式撹拌容器、抽出器、捏和機、簡単な円板反応器または高粘度円板反応器中において連続的または間欠的のいずれかの方法で行うことができる。 【0034】 本発明方法で得られるポリカーボネートの重量平均分子量MwはCH2Cl2中かまたはフェノール/o-ジクロロベンゼン当量混合物中の相対粘度を測定し、光散乱を測定して較正することにより決定して約20,000〜約200,000であることができる。 【0035】 本発明で得られるポリカーボネートは文献から公知の通常のOH末端基含量をもっている。 【0036】 このことはモノフェノールを蒸溜して比較的低粘度のポリカーボネートにし、この比較的低粘度のカーボネート・オリゴマーを縮合させて比較的高粘度のポリカーボネートにすることにより低分子量のカーボネート・オリゴマーを縮合させて達成することができる。 【0037】 ヨーロッパ特許第360 578号に従えば、炭酸ジアリールエステルにより与えられるもの以外の末端基は、比較的高沸点のフェノール、例えばクミルフェノール、t-ブチルフェノールまたはイソオクチルフェノールとのエステル交換反応により導入することができる。 【0038】 本発明で得られるポリカーボネートは例えば取り出し、遠心分離および粒状化のような方法で分離することができる。 【0039】 本発明方法でつくられポリカーボネートに助剤および補強剤を加えて特性を改善することができる。この目的のためには特に次のものが用いられる:安定剤、流動改善剤、型抜き剤、燃焼遅延剤、顔料、微粉末鉱物、繊維材料、例えば亜燐酸および燐酸のアルキルおよびアリールエステル、フォスファン、低分子量のカルボン酸エステル、ハロゲン化合物、塩、白亜、粉末の石英およびガラス、および炭素繊維。 【0040】 本発明のポリカーボネートはまた他の重合体、例えばポリオレフィン、ポリウレタンまたはポリスチレンと混合することができる。 【0041】 これらの物質は好ましくは通常の装置中で仕上げられたポリカーボネートに加えられるが、必要に応じ本発明方法の他の段階で加えることもできる。 【0042】 本発明で得られるポリカーボネートは通常の機械、例えば押出機または射出成形機を使用する通常の方法で加工して任意の成形品、例えばフィルムまたは板にすることができる。 【0043】 これらのポリカーボネート成形品は縮重合の工業分野、例えば光学器械、電子産業および建築業界において使用することができる。 【0044】 【実施例】 対照例 1 114.15g(0.500モル)のビスフェノールAおよび113.54g(0.530モル)の炭酸ジフェニルを秤量して撹拌機、内部温度計、およびブリッジ付きのヴィグロー(Vigreux)蒸溜塔(30cm、銀鍍金)を備えた500mlの三ッ口フラスコの中に入れる。この装置に真空をかけて窒素で洗滌することにより(3回)大気中の酸素を除去し、この混合物を150℃に加熱する。ビスフェノールAに関し0.00029g(5×10-4モル%)のナトリウムフェノレートを1%水溶液として加え、この工程で生成するフェノールを100ミリバールで蒸溜して除去する。同時に温度を250℃に上げる。1時間後、真空度を10ミリバールに上げる。中間生成物として生じたカーボネート・オリゴマーはOH:炭酸アリール末端基の比が32:64であった。縮重合は真空度を0.5ミリバールに上げ、温度を280℃に上昇させて達成される。相対溶液粘度が1.388(ジクロロメタン中、25℃、5g/リットル)の溶媒を含まないポリカーボネートが得られた。生成したポリカーボネート中における式(1)の分岐基 【0045】 【化5】 【0046】 の割合は350ppmであった。 【0047】 対照例 2 中間生成物として生じたカーボネート・オリゴマーのOH:炭酸アリール末端基の比が20:71であること以外対照例1と同様である。縮重合温度は275℃である。相対溶液粘度が1.249(ジクロロメタン中、25℃、5g/リットル)の溶媒を含まないポリカーボネートが得られた。生成したポリカーボネート中における式(1)の分岐基の割合は128ppmであった。 【0048】 対照例 3 0.0039g(2×10-3モル%)の固体物質N(CH3)4B(C6H5)4を用いたこと以外対照例1と同様である。中間生成物として生じたカーボネート・オリゴマーのOH:炭酸アリール末端基の比は32:68であった。縮重合温度は300℃である。相対溶液粘度が1.236(ジクロロメタン中、25℃、5g/リットル)の淡色の溶媒を含まないポリカーボネートが得られた。生成したポリカーボネート中における式(1)の分岐基の割合は110ppmであった。 【0049】 対照例 4 中間生成物として生じたカーボネート・オリゴマーのOH:炭酸アリール末端基の比が38:62であること以外対照例3と同様である。縮重合温度は310℃である。相対溶液粘度が1.249(ジクロロメタン中、25℃、5g/リットル)の溶媒を含まない淡色のポリカーボネートが得られた。生成したポリカーボネート中における式(1)の分岐基の割合は205ppmであった。 【0050】 対照例 5 中間生成物として生じたカーボネート・オリゴマーのOH:炭酸アリール末端基の比が35:65であること以外対照例3と同様である。縮重合温度は320℃である。相対溶液粘度が1.348(ジクロロメタン中、25℃、5g/リットル)の溶媒を含まない淡色のポリカーボネートが得られた。生成したポリカーボネート中における式(1)の分岐基の割合は440ppmであった。 【0051】 対照例 6 0.0045g(1×10-2モル%)のN(CH3)4OHを25%メタノール溶液として、また0.0039gのH3BO3を固体物質として用いたこと以外対照例1と同様である。中間生成物として生じたカーボネート・オリゴマーのOH:炭酸アリール末端基の比は36:64であった。縮重合温度は280℃である。相対溶液粘度が1.357(ジクロロメタン中、25℃、5g/リットル)の淡色の溶媒を含まないポリカーボネートが得られた。生成したポリカーボネート中における式(1)の分岐基の割合は390ppmであった。 【0052】 対照例 7 0045g(1×10-2モル%)のN(CH3)4OHおよび0.0003g(1×10-2モル)のNaHCO3を1%水溶液として用いたこと以外対照例1と同様である。中間生成物として生じたカーボネート・オリゴマーのOH:炭酸アリール末端基の比は38:62であった。縮重合温度は280℃である。相対溶液粘度が1.305(ジクロロメタン中、25℃、5g/リットル)の淡色の溶媒を含まないポリカーボネートが得られた。生成したポリカーボネート中における式(1)の分岐基の割合は730ppmであった。 【0053】 実施例 1 0.0039g(2×10-3モル%)の固体物質N(CH3)4B(C6H5)4を用いたこと以外対照例1と同様である。中間生成物として生じたカーボネート・オリゴマーのOH:炭酸アリール末端基の比は40:60であった。縮重合温度は280℃である。相対溶液粘度が1.287(ジクロロメタン中、25℃、5g/リットル)の淡色の溶媒を含まないポリカーボネートが得られた。生成したポリカーボネート中における式(1)の分岐基の割合は12ppmであった。 実施例 2 0.0009g(2×10-3モル%)のN(CH3)4OHを用いたこと以外対照例1と同様である。中間生成物として生じたカーボネート・オリゴマーのOH:炭酸アリール末端基の比は33:67であった。縮重合温度は280℃である。相対溶液粘度が1.266(ジクロロメタン中、25℃、5g/リットル)の淡色の溶媒を含まないポリカーボネートが得られた。生成したポリカーボネート中における式(1)の分岐基の割合は18ppmであった。 【0054】 実施例 3 0.0065g(2×10-3モル%)のPPh4BPh4を固体物質として用いたこと以外対照例1と同様である。中間生成物として生じたカーボネート・オリゴマーのOH:炭酸アリール末端基の比は37:63であった。縮重合温度は280℃である。相対溶液粘度が1.300(ジクロロメタン中、25℃、5g/リットル)の淡色の溶媒を含まないポリカーボネートが得られた。生成したポリカーボネート中における式(1)の分岐基の割合は3ppmであった。 【0055】 実施例 4 0.0065g(2×10-3モル%)のPPh4BPh4を固体物質として用いたこと以外対照例1と同様である。中間生成物として生じたカーボネート・オリゴマーのOH:炭酸アリール末端基の比は35:65であった。縮重合温度は280℃である。相対溶液粘度が1.265(ジクロロメタン中、25℃、5g/リットル)の淡色の溶媒を含まないポリカーボネートが得られた。生成したポリカーボネート中における式(1)の分岐基の割合は2ppmであった。 【0056】 実施例 5 0.0039g(2×10-3モル%)のN(CH3)4B(C6H5)4を固体物質として用いたこと以外対照例1と同様である。中間生成物として生じたカーボネート・オリゴマーのOH:炭酸アリール末端基の比は31:69であった。縮重合温度は280℃である。相対溶液粘度が1.222(ジクロロメタン中、25℃、5g/リットル)の淡色の溶媒を含まないポリカーボネートが得られた。生成したポリカーボネート中における式(1)の分岐基の割合は17ppmであった。 【0057】 対照例および実施例の結果を表1にまとめる。 【0058】 【表1】 【0059】 実施例 6 117.82g(0.55モル)の炭酸ジフェニル(炭酸ジフェニル10モル%過剰に相当)を固体物質として、また0.0009g(2×10-3モル%)のN(CH3)4OHを1%水溶液として用いたこと以外対照例1と同様である。中間生成物として生じたカーボネート・オリゴマーのOH:炭酸アリール末端基の比は14:86であった。縮重合温度は280℃である。相対溶液粘度が1.135(ジクロロメタン中、25℃、5g/リットル)の淡色の溶媒を含まないポリカーボネートが得られた。生成したポリカーボネート中における式(1)の分岐基の割合は3ppmであった。 【0060】 実施例 7 110.21g(0.515モル)の炭酸ジフェニル(炭酸ジフェニル3モル%過剰に相当)を固体物質として、また0.0009g(2×10-3モル%)のN(CH3)4OHを1%水溶液として用いたこと以外対照例1と同様である。中間生成物として生じたカーボネート・オリゴマーのOH:炭酸アリール末端基の比は55:45であった。縮重合温度は280℃である。相対溶液粘度が1.197(ジクロロメタン中、25℃、5g/リットル)の淡色の溶媒を含まないポリカーボネートが得られた。生成したポリカーボネート中における式(1)の分岐基の割合は15ppmであった。 【0061】 実施例 8 108.18g(0.505モル)の炭酸ジフェニル(炭酸ジフェニル1モル%過剰に相当)を固体物質として、また0.0009g(2×10-3モル%)のN(CH3)4OHを用いたこと以外対照例1と同様である。中間生成物として生じたカーボネート・オリゴマーのOH:炭酸アリール末端基の比は87:13であった。縮重合温度は280℃である。相対溶液粘度が1.105(ジクロロメタン中、25℃、5g/リットル)の淡色の溶媒を含まないポリカーボネートが得られた。生成したポリカーボネート中における式(1)の分岐基の割合は3ppmであった。 【0062】 これらの実施例を表2に示す。 【0063】 【表2】 【0064】 実施例 9 5 130g(22.5モル)のビスフェノールA、5 056g(23.63モル)の炭酸ジフェニルおよび592mg(4×10-3モル%)のPPh4BPh4を秤量して25リットルの撹拌容器に入れる。この容器を窒素で不活性化し、原料を15分以内で180℃に加熱する。反応温度が100℃になったら撹拌機のスイッチを入れ、100ミリバールの真空をかける。温度を1時間180℃に保ち、放出されるフェノールを蒸溜塔を通して蒸溜して除去する。さらに1時間以内に温度を250℃に上げ、30分以内に真空度を10ミリバールに上げる。中間生成物として生じたカーボネート・オリゴマーはOH:炭酸アリール末端基の比が31:69であった。反応温度を290℃に上げた後、反応混合物を高真空中(1ミリバール)で縮重合させる。窒素を通して排気した後、ポリカーボネート容器から取り出し、粒状化する。 【0065】 分離されたポリカーボネートの相対溶液粘度は1.268(ジクロロメタン中、25℃、5g/リットル)であった。生成したポリカーボネート中における式(1)の分岐基の割合は40ppmであった。 【0066】 実施例10 5 130g(22.5モル)のビスフェノールA、4 959g(23.18モル)の炭酸ジフェニルおよび592mg(4×10-3モル%)のPPh4BPh4を秤り込んだこと以外実施例9と同様である。中間生成物として生じたカーボネート・オリゴマーのOH:炭酸アリール末端基の比は35:65あった。温度を290℃に上げた後、縮重合を高真空中(1ミリバール)で行った。分離されたポリカーボネートの相対溶液粘度は1.264(ジクロロメタン中、25℃、5g/リットル)であった。生成したポリカーボネート中における式(1)の分岐基の割合は30ppmであった。 【0067】 実施例11 5 130g(22.5モル)のビスフェノールA、5 151g(24.08モル)の炭酸ジフェニルおよび353mg(4×10-3モル%)のPMe4BPh4を秤り込んだこと以外実施例9と同様である。中間生成物として生じたカーボネート・オリゴマーのOH:炭酸アリール末端基の比は39:61あった。温度を290℃に上げた後、縮重合を高真空中(1ミリバール)で行った。分離されたポリカーボネートの相対溶液粘度は1.287(ジクロロメタン中、25℃、5g/リットル)であった。生成したポリカーボネート中における式(1)の分岐基の割合は54ppmであった。 【0068】 実施例12 5 130g(22.5モル)のビスフェノールA、5 453g(24.53モル)の炭酸ジフェニルおよび353mg(4×10-3モル%)のPMe4BPh4を秤り込んだこと以外実施例9と同様である。中間生成物として生じたカーボネート・オリゴマーのOH:炭酸アリール末端基の比は33:67あった。温度を290℃に上げた後、縮重合を高真空中(1ミリバール)で行った。分離されたポリカーボネートの相対溶液粘度は1.264(ジクロロメタン中、25℃、5g/リットル)であった。生成したポリカーボネート中における式(1)の分岐基の割合は40ppmであった。 【0069】 対照例 8 5 130g(22.5モル)のビスフェノールA、5 152g(24.08モル)の炭酸ジフェニルおよび52.5mg(2×10-3モル%)のNaフェノレートを秤り込んだこと以外実施例9と同様である。中間生成物として生じたカーボネート・オリゴマーのOH:炭酸アリール末端基の比は33:67あった。温度を290℃に上げた後、縮重合を高真空中(1ミリバール)で行った。分離されたポリカーボネートの相対溶液粘度は1.276(ジクロロメタン中、25℃、5g/リットル)であった。生成したポリカーボネート中における式(1)の分岐基の割合は980ppmであった。 【0070】 対照例 9 5 130g(22.5モル)のビスフェノールA、5 152g(24.08モル)の炭酸ジフェニルおよび882mg(1×10-2モル%)のNMe4BPh4を秤り込んだこと以外実施例9と同様である。中間生成物として生じたカーボネート・オリゴマーのOH:炭酸アリール末端基の比は36:64あった。温度を310℃に上げた後、縮重合を高真空中(1ミリバール)で行った。分離されたポリカーボネートの相対溶液粘度は1.319(ジクロロメタン中、25℃、5g/リットル)であった。生成したポリカーボネート中における式(1)の分岐基の割合は690ppmであった。 【0071】 これらの大規模化実験の結果を表3にまとめる。 【0072】 【表3】 【0073】 本発明の主な特徴及び態様は次の通りである。 1.(i)温度80〜250℃において、大気圧下で触媒を存在させて最高5時間の間、ジフェノールと炭酸ジアリールエステルとを用いて熔融物としてエステル交換反応を行い、重量平均分子量が8,000〜18,000、OH末端基含量が25〜50%のカーボネート・オリゴマーをつくり、 (ii)該カーボネート・オリゴマーを、温度250〜295℃において、圧力を500ミリバールより低く0.01ミリバールまでの範囲で縮重合させることから成る低分岐度をもつポリカーボネートを製造する溶媒を用いない2段階製造法において、 該触媒として第4級アンモニウム化合物および第4級フォスフォニウム化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物のみをジフェノール1モルに関し10-1〜10-8モルの量で使用する方法。 【0074】 2.該触媒は式(3)および(4) 【0075】 【化6】 【0076】 R1〜4は同一または相異なるC1〜C18-アルキル、C6〜C10-アリール、またはC5〜C6-シクロアルキルであり、X-は対応する酸-塩基の対 H++X- = HXのpKBが11より小さい陰イオンである、 の化合物から成る群から選ばれる上記第1項記載の方法。 【0077】 3.触媒は 水酸化テトラメチルアンモニウム、 酢酸テトラメチルアンモニウム、 フッ化テトラメチルアンモニウム、 硼酸テトラメチルアンモニウムテトラフェニル、 フッ化テトラフェニルフォスフォニウム、 硼酸テトラメチルフォスフォニウムテトラフェニル、 水酸化ジメチルジフェニルアンモニウム、 水酸化テトラエチルアンモニウム から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物である上記第1項記載の方法。 4.該カーボネート・オリゴマーを縮重合させる前に、真空中で温度最高260℃において蒸溜によりモノフェノールを除去する上記第1項記載の方法。 |
訂正の要旨 |
(1) 請求項1を、 『 【請求項1】 (i)温度80〜250℃において、大気圧下で触媒を存在させて最高5時間の間、ジフェノールと炭酸ジアリールエステルとを用いて熔融物としてエステル交換反応を行い、重量平均分子量が8,000〜18,000、OH末端基含量が25〜50%のカーボネート・オリゴマーをつくり、 (ii)該カーボネート・オリゴマーを、温度250〜295℃において、圧力を500ミリバールより低く0.01ミリバールまでの範囲で縮重合させることから成る低分岐度をもつポリカーボネートを製造する溶媒を用いない2段階製造法において、 該触媒として第4級アンモニウム化合物および第4級フォスフォニウム化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物のみをジフェノール1モルに関し10-1〜10-8モルの量で使用することを特徴とする方法。』 と訂正する。 (2) 段落【0001】を、 『【0001】 本発明はジフェノール、炭酸ジアリールエステルおよび触媒から温度80〜295℃、圧力1,000〜0.01ミリバールにおいて溶媒を用いないエステル交換反応により分岐度の低いポリカーボネートを製造する方法において、該触媒として第4級アンモニウム化合物および第4級フォスフォニウム化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物のみをジフェノール1モルについて10-1〜10-8モル使用し、工程を2段階において行い、第1段階においては反応原料を温度80〜250℃、好ましくは100〜230℃、特に120〜190℃において大気圧下で最高5時間、好ましくは0.25〜3時間以内で熔融し、次いで触媒を加え真空中で(大気圧ないし1ミリバール)温度を上昇(最高260℃)させて蒸溜することによりモノフェノールを除去してカーボネート・オリゴマーを製造し、第2段階においてはこのカーボネート・オリゴマーを温度250〜290℃で500ミリバールより低く0.01ミリバールまでの圧力において縮重合させ、第1段階で製造されるカーボネート・オリゴマーの重量平均分子量Mwが8,000〜18,000、好ましくは9,000〜15,000になり、OH末端基含量が25%より大で50%より少なくなるように、好ましくは30〜45%になるように工程をコントロールすることを特徴とする方法に関する。』 と訂正する。 (3) 段落【0073】を、 『【0073】 本発明の主な特徴及び態様は次の通りである。 1.(i)温度80〜250℃において、大気圧下で触媒を存在させて最高5時間の間、ジフェノールと炭酸ジアリールエステルとを用いて熔融物としてエステル交換反応を行い、重量平均分子量が8,000〜18,000、OH末端基含量が25〜50%のカーボネート・オリゴマーをつくり、 (ii)該カーボネート・オリゴマーを、温度250〜295℃において、圧力を500ミリバールより低く0.01ミリバールまでの範囲で縮重合させることから成る低分岐度をもつポリカーボネートを製造する溶媒を用いない2段階製造法において、 該触媒として第4級アンモニウム化合物および第4級フォスフォニウム化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物のみをジフェノール1モルに関し10-1〜10-8モルの量で使用する方法。』 と訂正する。 |
異議決定日 | 2003-02-20 |
出願番号 | 特願平5-300770 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(C08G)
P 1 651・ 113- YA (C08G) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 森川 聡 |
特許庁審判長 |
三浦 均 |
特許庁審判官 |
佐々木 秀次 石井 あき子 |
登録日 | 2001-03-30 |
登録番号 | 特許第3174444号(P3174444) |
権利者 | バイエル・アクチエンゲゼルシヤフト |
発明の名称 | 熱可塑性ポリカーボネートの製造法 |
代理人 | 鈴木 亨 |
代理人 | 鈴木 俊一郎 |
代理人 | 牧村 浩次 |
代理人 | 高畑 ちより |
代理人 | 小田島 平吉 |
代理人 | 小田島 平吉 |