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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1076424
異議申立番号 異議2002-70760  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-11-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-03-22 
確定日 2003-04-02 
異議申立件数
事件の表示 特許第3238643号「ルウ用調味材の製造方法及びルウの製造方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3238643号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3238643号の請求項1乃至請求項3に係る発明についての出願は、平成9年4月30日に特願平9-112735号として出願され、平成13年10月5日にその特許の設定登録がなされ、その後、日本香料工業会より特許異議申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年11月1日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由が通知され、これに対して手続補正書が提出されたものである。
II.訂正の適否についての判断
1.訂正請求に対する補正の適否について
特許権者は、平成15年1月23日付手続補正書により、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載、「油脂100重量部に対して混合スパイス30〜120重量部を添加して120〜140℃で5〜120分間加熱処理を施した後油相を採取するか又は該油相を主体として調味材とすることを特徴とするルウ用調味材の製造方法。」を、「油脂(中鎖脂肪油を除く)100重量部に対して混合スパイス30〜120重量部を添加して120〜140℃で5〜120分間加熱処理を施した後油相を採取してこれを調味材とするか、又は該採取した油相を主体として調味材とすることを特徴とするルウ用調味材の製造方法。」と補正してきた。
しかるに、「油脂」を「油脂(中鎖脂肪油を除く)」とする補正は、訂正事項を変更するものであるから、特許法120条の4,3項において準用する同法131条2項の規定に適合しない。
2.訂正請求について
特許権者は、平成14年11月1日付訂正請求にて、「特許第3238643号の明細書を請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求める。」とし、特許請求の範囲の「請求項1」について、特許登録時に「油脂(中鎖脂肪油を除く)100重量部に対して混合スパイス30〜120重量部を添加して70〜160℃で5〜120分間加熱処理を施した後油相を採取するか、又は該採取した油相を主体として調味材とすることを特徴とするルウ用調味材の製造方法。」であったものを、「油脂100重量部に対して混合スパイス30〜120重量部を添加して120〜140℃で5〜120分間加熱処理を施した後油相を採取するか又は該油相を主体として調味材とすることを特徴とするルウ用調味材の製造方法。」と訂正することを求めている。
しかるに、特許登録時に「油脂(中鎖脂肪油を除く)」であったものを、「油脂」に訂正すること、すなわち「(中鎖脂肪油を除く)」という事項を削除することは、実質上特許請求の範囲を拡張するものである。
そうすると、上記訂正は、特許法120条の4,3項において準用する同126条3項の規定に適合しない。
III.特許異議申立について
1.本件発明
上記訂正請求は認められないので、本件請求項1乃至請求項3に係る発明(以下、「本件発明1乃至3」という。)は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至請求項3に記載された下記のとおりのものと認める。
「【請求項1】油脂(中鎖脂肪油を除く)100重量部に対して混合スパイス30〜120重量部を添加して70〜160℃で5〜120分間加熱処理を施した後油相を採取してこれを調味材とするか、又は該採取した油相を主体として調味材とすることを特徴とするルウ用調味材の製造方法。
【請求項2】油脂100重量部に対して混合スパイス30〜120重量部及び動物、魚介類の骨殻、香辛野菜類から選ばれた1乃至それ以上30〜300重量部を添加して70〜160℃で5〜120分間加熱処理を施した後油相を採取してこれを調味材とするか、又は該採取した油相を主体として調味材とすることを特徴とするルウ用調味材の製造方法。
【請求項3】請求項1又は請求項2記載の方法により得た調味材を1〜50重量%含んで、原料を加熱処理することを特徴とするルウの製造方法。」
2.引用刊行物
当審で通知した取消理由で引用した刊行物1(特開昭55-85356号公報)は、「食用香味油」に係り、
「材料の配合割合を
サラダオイル 720〜100ml
茴 香 10〜30g
花 椒 5〜15g
葱 40〜80g
にんにく 30〜60g
としたものを用意し、強火加熱により油温125℃〜155℃に熱したサラダオイルに茴香、葱、にんにくを投入して30分〜60分間定温加熱して十分エキスを抽出溶融させ、次いで弱火加熱により油温を95℃〜120℃に下げたのち花椒を添加して5分〜15分間定温加熱して花椒エキスを抽出溶融せしめ、これを冷却後漉して香味油を得るものである。」(1頁右下欄末行〜2頁左上欄13行)が記載されている。
同刊行物2は、「スパイス風味油の製造方法」に係り、特許請求の範囲の請求項1には、
「食用油脂100重量部に対して、マスタード0.5〜3重量部、唐辛子1〜5重量部、クミン0.5〜5重量部及びカルダモン3〜9重量部を添加して、160〜220℃で5〜60分間加熱処理を施した後、スパイスの残渣を取り除き、油相を採取することを特徴とするスパイス風味油の製造方法。」が、発明の詳細な説明の項には、
「特に、この風味油は、カレールー、カレーソース、あるいはこれらのカレールー又はカレーソースを利用して作ったカレー食品等とマッチし、優れた風味を付与することができる。」(3頁4欄26〜29行)が、また、「参考例1」として、
「実施例1により得られたスパイス風味油を用いて、焙煎処理を施した小麦粉及び同じスパイス風味油を用いて焙煎処理を施したオニオンを使用して、常法によりカレーソースを製造した。スパイス風味油の使用量は、カレーソース全体に対して、1.5重量%であった。得られたカレーソースは、苦みのない丸い甘味のあるロースト臭と、清涼感のある鋭く甘い香りが渾然一体となった独特の厚みのある香りと、カレー風味がマッチした食欲をそそる優れた風味を有していた。」(4頁5欄32〜41行)がそれぞれ記載されている。
3.判断
(本件発明1について)
本件発明1と刊行物1に記載の発明とを対比するに、刊行物1に係る茴香及びにんにくは、本件発明1に係るスパイスのフェンネル及びガーリックに相当し、また両者の各成分の使用量は重複し、更に、刊行物1では二段階の加熱処理を行っているが、いずれも本件発明1に係る加熱温度及び時間と重複するから、結局、(1)前者では花椒を使用しないのに対して、後者では使用する点、及び、(2)前者では採取した油相をルウ用調味材とするのに対して、後者ではそのような記載がない点で相違するが、その余の点において両者は一致している。
そこで、相違点(1)について検討するに、スパイスは、適用する食品に対し適宜選択して使用されるものであるから、ある食品に対して花椒が不適であるとしてこれを使用しないことは、当業者が適宜実施し得ることである。
次に相違点(2)について、刊行物2には、種々のスパイスを油脂に添加して加熱処理して調製されたスパイス風味油をカレールウに使用すると、これを利用して作ったカレー食品には優れた風味が付与されることが記載されている。
そうすると、同じくスパイスを油脂に添加して調製した刊行物1に係る香味油(調味材)をカレー、シチュー等のルウに使用してみることは、当業者にとって格別困難なことではない。
そして、本件明細書には、本件発明の効果として、「これをカレー等の調理時に添加して混合スパイスのまとまりのある熟成風味と芳香を醸し出すことが可能になる。」(段落【0015】)と記載されているが、この効果は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明から予測されるところを超えて優れているとはいえない。
したがって、本件発明1は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたといえる。
(本件発明2について)
本件発明2は、本件発明1の「油脂(中鎖脂肪油を除く)」を「油脂」とし、更に「動物、魚介類の骨殻、香辛野菜から選ばれた1乃至それ以上30〜300重量部」という事項をくわえたものであるところ、刊行物1には、本件発明2に係る「香辛野菜」であるオニオン及びガーリックについても開示されているから、本件発明2は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたといえる。
(本件発明3について)
本件発明3は、「請求項1又は請求項2記載の方法により得た調味材を1〜50重量%含んで、原料を加熱処理することを特徴とするルウの製造方法。」であるから、本件発明1或いは本件発明2についての判断と同様の理由により、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたといえる。
4.まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1乃至3は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1乃至3についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1乃至3についての特許は、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-02-13 
出願番号 特願平9-112735
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (A23L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 木村 順子  
特許庁審判長 徳廣 正道
特許庁審判官 田中 久直
近 東明
登録日 2001-10-05 
登録番号 特許第3238643号(P3238643)
権利者 ハウス食品株式会社
発明の名称 ルウ用調味材の製造方法及びルウの製造方法  

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