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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
管理番号 1076483
異議申立番号 異議2001-70132  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-05-21 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-01-12 
確定日 2003-05-12 
異議申立件数
事件の表示 特許第3064998号「半導体装置及びその製造方法」の請求項1、2、4、5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3064998号の請求項1、2、4、5に係る特許を維持する。 
理由 (1)手続の経緯
特許第3064998号(平成9年10月28日出願、平成12年5月12日設定登録)は、異議申立人セイコーエプソン株式会社により特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成14年8月28日に特許異議意見書が提出されたものである。

(2)本件発明
本件特許の請求項1、2、4、及び5に係る発明(以下、「本件発明1、2、4、及び5」という。)は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、2、4、及び5にそれぞれ記載された事項により特定される、以下に示すとおりのものである。
「【請求項1】 配線基板の導体配線と半導体素子の突起電極とを合致させ、それら配線基板(「配線基盤」は誤記と認める。)と半導体素子との間を硬化によって収縮する接着用絶縁性樹脂で固着する構造の半導体装置において、前記接着用絶縁性樹脂の硬化の際に発生する残留応力の領域が前記突起電極付近で最大となる構成とし、
前記配線基板部分のうち、その配線基板上の半導体素子の突起電極と相対して配置された導体配線より内側の領域部分を外側の領域部分よりも薄く形成したことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】 前記接着用絶縁性樹脂の硬化の際に発生する残留応力が、その最大応力の発生する領域を前記突起電極付近とし、さらに半導体素子中央付近を最小またはゼロとし、前記突起電極付近の残留応力による引っ張り力により接続を保つ構成としたことを特徴とする、請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】 前記配線基板が有機配線基板であることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の半導体装置。
【請求項5】 前記接着用絶縁性樹脂が熱硬化型樹脂であることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の半導体装置。」

(3)申立ての理由の概要
異議申立人セイコーエプソン株式会社は、甲第1号証(特開平2-285650号公報)を提出して、本件発明1、2、4、及び5は甲第1号証に記載の発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するから、本件発明1、2、4、及び5の特許を取り消すべきものと主張している。

(4)甲第1号証記載の発明
甲第1号証には、多端子、狭ピッチのIC、LSIのパッケージングの製造方法に関する発明が第1〜5図とともに開示され、さらに、
「絶縁性基板の導体配線と半導体素子の電極が合致され、前記半導体素子が前記絶縁性樹脂により前記絶縁性基板に固着され、前記導体配線と前記電極が電気的に接続された半導体装置において、前記絶縁性基板と前記半導体素子との間隔が前記半導体素子の電極部の領域で最大となる様に前記絶縁性基板が変形したことを特徴とする半導体装置。」(特許請求の範囲の請求項1)、
「半導体素子の電極が突起電極であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の半導体装置。」(特許請求の範囲の請求項2)、
「本発明は、配線を有する基板の電極接続部が電極に対し凹方向に変形する様に、又は基板が半導体素子に対し凸方向に変形する様に加圧ステージに凸凹を付け、半導体素子を加圧し基板を変形させ接着剤を硬化させることにより、配線基板の変形の復元力や復元力の抗力が働くようにする。したがって、本発明によれば、配線基板の変形が元の状態にもどろうとする復元力又は復元力の抗力が樹脂の収縮力と同じ方向に作用することにより、高温時であれ、収縮力Pと復元力Fの合力は膨張力Wより大きくなる。よって、基板と半導体素子の固着は確実になされるとともに素子の電極と導体配線の電気的接続も確実なものとなる。」(第2頁右下欄12行〜第3頁左上欄第4行)が記載されている。
また、第1図の説明として、「次に第1図bに示す様に、配線基板1の、後に半導体素子3が固着される領域に、導体配線2を含んで接着剤7を塗布する。接着剤7は熱硬化型又は紫外線硬化型のエポキシ、シリコーン、アクリル等の樹脂である。」(第3頁左上欄第15行〜第19行)、
「配線基板1の加圧ステージ5の凹部6に配置された領域では、配線基板1が半導体素子3の電極4に加圧されるので、配線基板1は凹部6方向に変形する。つまり、電極が合致される部分の厚さl1と、半導体素子の中央領域の厚さl2の関係が、l1>l2となる。」(第3頁右上欄第6行〜第10行)が記載されている。
さらに、第2図の説明として、「加圧ステージ5の、後に半導体素子3の中央領域に凸部10を設置し、配線基板5を凸部10の形状に沿った形状を保った状態とし、この状態で接着剤7により配線基板1と半導体素子3が固着され、接着剤7の収縮力と変形した配線基板1の復元力に対する抗力が電極4と導体配線1に働くため、半導体素子3の電極4と導体配線2の接触を保持し、電気的な接続を得るものである。」(第3頁左下欄第5行〜第13行)が記載されている。

(5)本件発明1、2、4、及び5と甲第1号証に記載の発明との対比・判断
(5-1)本件発明1について
本件発明1と甲第1号証に記載の発明とを対比すると、甲第1号証に記載の発明における収縮力を備える接着剤として使用される絶縁性樹脂である、「熱硬化型又は紫外線硬化型のエポキシ、シリコーン、アクリル等の樹脂」は、本件発明1における「硬化によって収縮する接着用絶縁樹脂」に相当する。
また、甲第1号証の第2図の記載からみて、導体配線は図示されない外部回路と接続され、かつ、同図の左右の方向は当該外部回路と接続される方向であると認められ、当該第2図を横方向から見た場合の当該導体配線の断面形状は、当該外部回路と接続される方向に対して垂直な面であることから、半導体素子の電極と接触する箇所において所定の幅を有する形状になっているものと認められる。そうすると、甲第1号証に記載の発明は、配線基板部分のうち、導体配線の上記断面形状における外側の領域部分に、配線基板と半導体素子とが接着用絶縁性樹脂により固着される領域部分を備えているものと認められる。
してみると、両者は、「配線基板の導体配線と半導体素子の突起電極とを合致させ、それら配線基板と半導体素子との間を硬化によって収縮する接着用絶縁性樹脂で固着する構造の半導体装置」の点で一致するものの、
(a)残留応力について、本件発明1は、「接着用絶縁性樹脂の硬化の際に発生する残留応力の領域が突起電極付近で最大となる構成」を備えるのに対し、甲第1号証に記載の発明はこのような構成を備えているのか否か不明である点
(b)配線基板について、本件発明1は、「配線基板部分のうち、その配線基板上の半導体素子の突起電極と相対して配置された導体配線より内側の領域部分を外側の領域部分よりも薄く形成した」のに対し、甲第1号証に記載の発明の配線基板はそのようには形成されていない点
でそれぞれ相違する。
そこで、上記相違点(b)について検討すると、甲第1号証には、半導体素子の電極が導体配線と合致する部分よりも半導体素子の中央領域における接着剤の厚さを薄くする旨の記載はあるものの、本件発明1のように、配線基板の厚さについて、半導体素子の電極と相対して配置された導体配線より内側の領域部分が導体配線の外側の領域部分よりも薄く形成する旨の記載はないし示唆もされていない。
そして、本件発明1は、上記相違点(b)の発明を特定するために必要と認める事項を備えることにより、導体配線の位置より内側の配線基板の薄肉部分は、屈曲性があるため樹脂の収縮力によって減少する方向に引っ張られ、半導体素子の中心領域の樹脂が十分に収縮でき、収縮後に残留応力は発生しない一方で、半導体素子の突起電極と導体配線の回りの樹脂は突起電極と導体配線の両方の収縮差が大きいため残留応力が発生し、突起電極と導体配線の圧接のみの接続を、突起電極と導体配線を取り囲む十分に収縮できない樹脂に発生する残留応力で保つことができる、との明細書に記載の顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、上記相違点(a)については検討するまでもなく、甲第1号証に記載の発明であるとすることはできない。さらに本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(5-2)本件発明2、4、及び5について
本件発明2、4、及び5は、いずれも本件発明1を引用する発明であって、本件発明1を特定するために必要と認める事項を全て備えるものであるから、上記(5-1)に摘示した事項以外の本件発明2、4、及び5に係る事項を検討するまでもなく、甲第1号証に記載の発明であるとすることはできない。さらに本件発明2、4、及び5は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(6)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件発明1、2、4、及び5の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、2、4、及び5の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-04-17 
出願番号 特願平9-311116
審決分類 P 1 652・ 121- Y (H01L)
P 1 652・ 113- Y (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 川真田 秀男  
特許庁審判長 関根 恒也
特許庁審判官 中西 一友
市川 裕司
登録日 2000-05-12 
登録番号 特許第3064998号(P3064998)
権利者 NECエレクトロニクス株式会社
発明の名称 半導体装置及びその製造方法  
代理人 福田 修一  
代理人 京本 直樹  
代理人 上柳 雅誉  
代理人 河合 信明  
代理人 須澤 修  
代理人 藤綱 英吉  

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