• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する C08G
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する C08G
管理番号 1077073
審判番号 訂正2003-39020  
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-01-23 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2003-02-06 
確定日 2003-04-01 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3114869号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3114869号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 [請求の要旨]
本件審判の請求の要旨は、特許3114869号発明(平成11年7月7日特許出願、平成12年9月29日設定登録)の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、該訂正の内容は次のとおりである。
訂正事項a:特許請求の範囲の請求項3の
「【請求項3】 ポリエステルが、その主たる繰り返し単位であるエチレンテレフタレートを95モル%以上含む線状ポリエステルであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル。」を、
「【請求項3】 ポリエステルが、その主たる繰り返し単位であるエチレンテレフタレートを95モル%以上含む線状ポリエステルであって、かつ、ファインを0.1〜63ppm含有することを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル。」と訂正する。
訂正事項b:発明の詳細な説明において、明細書の段落【0017】中の
「ポリエステルが、その主たる繰り返し単位であるエチレンテレフタレートを95モル%以上含む線状ポリエステルである」を、
「ポリエステルが、その主たる繰り返し単位であるエチレンテレフタレートを95モル%以上含む線状ポリエステルであって、かつ、ファインを0.1〜63ppm含有する」と訂正する
[訂正の適否についての判断]
(1)訂正の目的及び訂正の範囲の適否
上記訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項3において、ポリエステルのファインを0.1〜63ppmに限定するものであり、限定の根拠は、明細書の段落【0090】の記載に基づくものであるから、明細書の記載した事項の範囲内において、特許請求の範囲を減縮するものと認められる。
また、上記訂正事項bは、上記訂正事項aに伴い、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との記載を整合するために、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、同様に明細書に記載した事項の範囲内の訂正と認められる。
(2)拡張・変更の存否
上記訂正事項a及びbは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとも認められない。
(3)独立特許要件
訂正明細書の請求項1〜9に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1〜9に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、上記訂正明細書の請求項1〜9に係る発明について、独立して特許を受けることができないとすべき理由を発見しない。
[むすび]
以上のとおりであるから、本件審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、かつ同条第2項〜第4項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ポリエステル、それからなる中空成形体、シ-ト状物及び延伸フイルム
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 290℃の温度で60分間溶融した時の環状3量体の増加量が0.30重量%以下であり、かつファインを0.1〜500ppm含有するポリエステル樹脂であって、該ポリエステル樹脂中のカルシウム元素の含有量をC(ppm)、マグネシウム元素の含有量をM(ppm)、珪素元素の含有量をS(ppm)とした場合、下記(1)〜(3)式の少なくともいずれか1つの式を満足すること特徴とするポリエステル樹脂。
(1)0.001≦C≦5(ppm)
(2)0.001≦M≦5(ppm)
(3)0.001≦S≦5(ppm)
【請求項2】 主としてテレフタル酸またはエステル形成性誘導体もしくはナフタレンジカルボン酸またはエステル形成性誘導体とエチレングリコールを原料として、Ge化合物または/およびTi化合物を触媒に用いて得られたポリエステルを水処理したものであることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル。
【請求項3】 ポリエステルが、その主たる繰り返し単位であるエチレンテレフタレートを95モル%以上含む線状ポリエステルであって、かつ、ファインを0.1〜63m含有することを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル。
【請求項4】 ポリエステルが、その主たる繰り返し単位であるエチレン-2、6-ナフタレートを90モル%以上含む線状ポリエステルであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル。
【請求項5】 ポリエステルが、重縮合後チップ状に形成したものを、処理槽中において下記(a)および(b)の条件を満たす処理水で処理されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル。
(a)温度40〜120℃
(b)処理槽からの排水を含む処理水
【請求項6】 ポリエステルが、重縮合後チップ状に形成したものを、処理槽中において下記(c)の条件を満たす処理水で処理されたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル。
(c)ポリエステルのファインの含有量が1000ppm以下の処理水
【請求項7】 ポリエステルが、重縮合後チップ状に形成したものを、処理槽中においてカルシウム含有量およびマグネシウム含有量がそれぞれ0.001〜0.5ppm、珪素含有量が0.01〜2ppmの処理水で処理されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル。
【請求項8】 請求項1〜7のいずれかに記載のポリエステルからなることを特徴とする中空成形体。
【請求項9】 請求項1〜7のいずれかに記載のポリエステルを押出成形してなることを特徴とするシ-ト状物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、飲料用ボトルをはじめとする中空成形容器、フィルム、シ-トなどの成形体の素材として好適に用いられるポリエステルおよびそれからなる成形体に関するものである。特に本発明のポリエステルから得られた成形品は結晶化コントロ-ル性に優れており、また得られた成形品に残留異味、異臭が発生しにくく、透明性及び耐熱寸法安定性に優れた小型中空成形体や透明性、滑り性および成形後の寸法安定性に優れたシ-ト状物および延伸フイルムを与える。また、本発明は,小型中空成形体を成形する際に熱処理金型からの離型性が良好で、長時間連続成形性に優れたポリエステルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレ-トなどのポリエステルは、機械的性質及び化学的性質が共に優れているため、工業的価値が高く、繊維、フイルム、シ-ト、ボトルなどとして広く使用されている。
【0003】
調味料、油、飲料、化粧品、洗剤などの容器の素材としては、充填内容物の種類およびその使用目的に応じて種々の樹脂が採用されている。
【0004】
これらのうちでポリエステルは機械的強度、耐熱性、透明性およびガスバリヤー性に優れているので、特にジュース、清涼飲料、炭酸飲料などの飲料充填用容器の素材として最適である。
【0005】
このようなポリエステルは射出成形機などの成形機に供給して中空成形体用プリフォームを成形し、このプリフォームを所定形状の金型に挿入し延伸ブロー成形した後ボトルの胴部を熱処理(ヒートセット)して中空成形容器に成形され、さらには必要に応じてボトルの口栓部を熱処理(口栓部結晶化)させるのが一般的である。
【0006】
ところが、従来のポリエステルには、環状三量体などのオリゴマー類が含まれており、このオリゴマー類が金型内面や金型のガスの排気口、排気管に付着することによる金型汚れが発生しやすかった。
【0007】
このような金型汚れは、得られるボトルの表面肌荒れや白化の原因となる。もしボトルが白化してしまうと、そのボトルは廃棄しなければならない。このため金型汚れを頻繁に除去しなければならず、ボトルの生産性が低下してしまうという問題点があった。
【0008】
これらの解決方法として、特開平3-174441号公報にはポリエステルを水処理する方法が開示されている。
【0009】
しかし、この方法を工業的に実施する場合には、処理用の水として蒸留水を用いるとコストの面から不利であるため、河川からの水や地下水、排水等を簡易処理した工業用水を用いることが一般的である。しかしながら、工業用水を用いて水処理をした場合、しばしば成型時での結晶化が早過ぎ、透明性の悪いボトルになってしまうという問題があった。また口栓部結晶化による口栓部の収縮が規格内に納まらずにキャッピング不良となる問題もあった。
【0010】
本発明者らの検討によると、これは水処理の段階において、工業用水に含まれているナトリウムやマグネシウム、カルシウム、二酸化珪素等の金属含有物質の含有量が一定値より多い場合、これらの金属の酸化物や水酸化物等の金属含有物質が処理水中に浮遊、沈殿、さらには処理槽壁や配管壁に付着したりし、これがポリエステルチップに付着、浸透して、成形時での結晶化が促進され、透明性の悪いボトルとなることがわかった。さらには金属含有物質が配管を詰まらせたり、処理槽や配管の洗浄を困難にさせる等の問題が生じていた。
【0011】
従来の水処理による触媒失活されていないボトル用樹脂でも、ストランドをチップ化する場合に硬度の高い水を使用する場合があったが大幅な透明性の低下は認められなかった。しかし、上記の異物による透明性の低下は水処理等により触媒の失活されたボトルにおいて特に著しいものであった。これは定かではないが、触媒の失活により触媒として樹脂に含有されているゲルマニウム化合物が水と反応して樹脂に不溶な粒子となり、これが結晶核になり結晶化を促進する作用との相乗効果ではないかと考えられる。
【0012】
また、水処理の段階において、ポリエステルチップに付着しているファイン(樹脂微粉末)が処理水に浮遊、沈殿し処理槽壁や配管壁に付着して、配管を詰まらせたり、処理槽や配管の洗浄を困難にさせる等の問題が生じていた。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術の問題点を解決することにあり、成形時での金型汚れを発生させにくく、またボトルの透明性や口栓部結晶化が良好となるポリエステルを提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のポリエステルは、290℃の温度で60分間溶融した時の環状3量体の増加量が0.30重量%以下であり、かつファインを0.1〜500ppm含有するポリエステル樹脂であって、該ポリエステル樹脂中のカルシウム元素の含有量をC(ppm)、マグネシウム元素の含有量をM(ppm)、ケイ素元素の含有量をS(ppm)とした場合、下記(1)〜(3)式のいずれかを満足すること特徴とするポリエステル樹脂である。
(1)0.001≦C≦5(ppm)
(2)0.001≦M≦5(ppm)
(3)0.001≦S≦5(ppm)
【0015】
上記の特性を持つポリエステルは、成形時に金型汚れが発生しにくく、口栓部の結晶化コントロ-ル性に優れ、かつ優れた透明性、耐熱性、機械的特性、残留異味、異臭が少なく保香性の優れた中空成形体、シ-ト状物や延伸フイルムおよび包装材料を与える。
【0016】
本発明のポリエステルは、主としてテレフタル酸またはエステル形成性誘導体もしくはナフタレンジカルボン酸またはエステル形成性誘導体とエチレングリコ-ルを原料として、Ge化合物または/およびTi化合物を触媒に用いて得られたポリエステルを水処理したものであることを特徴とするポリエステルであることができる。
【0017】
この場合において、ポリエステルが、その主たる繰り返し単位であるエチレンテレフタレートを95モル%以上含む線状ポリエステルであって、かつ、ファインを0.1〜63ppm含有することができる。
【0018】
この場合において、ポリエステルが、その主たる繰り返し単位であるエチレン-2、6-ナフタレートを90モル%以上含む線状ポリエステルであることができる。
【0019】
この場合において、ポリエステルが、重縮合後チップ状に形成したものを、処理槽中において下記(a)および(b)の条件を満たす処理水で処理されたものであることができる。
(a)温度40〜120℃
(b)処理槽からの排水を含む処理水
【0020】
この場合において、ポリエステルが、重合後チップ状に形成したものを、処理槽中において下記(c)の条件を満たす処理水で処理されたものであることができる。
(c)ポリエステルのファインの含有量が1000ppm以下の処理水
なお、以下処理水中のファインを樹脂に付着したファインと区別するため微粉と表すことがある。
【0021】
この場合において、ポリエステルが、重縮合後チップ状に形成したものを、処理槽中においてカルシウム含有量およびマグネシウム含有量がそれぞれ0.001〜0.5ppm、珪素含有量が0.01〜2ppmの処理水で処理されたものであることができる。
【0022】
上記の水処理によって得られたポリエステルは、成形時に金型汚れが発生しにくく、口栓部の結晶化コントロ-ル性に優れ、かつ優れた透明性、耐熱性、機械的特性、残留異味、異臭が少なく保香性の優れた中空成形体や透明性、滑り性および成形後の寸法安定性に優れたシ-ト状物を与える。
【0023】
この場合において、前記ポリエステルからなる中空成形体、シ-ト状物および少なくとも1方向に延伸された延伸フイルムであることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明のポリエステルは、主として芳香族ジカルボン酸成分とグリコ-ル成分とから得られる結晶性ポリエステルであり、好ましくは芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の85モル%以上含むポリエステルであり、さらに好ましくは芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の90モル%以上含むポリエステルである。
【0025】
本発明のポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、2、6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニ-ル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体等が挙げられる。
【0026】
また本発明のポリエステルを構成するグリコ-ル成分としては、エチレングリコ-ル、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール等の脂肪族グリコ-ル、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール等が挙げられる。
【0027】
前記ポリエステル中に共重合して使用される酸成分としては、テレフタル酸、2、6-ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニ-ル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、p-オキシ安息、香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸及びその機能的誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ダイマ-酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸及びその機能的誘導体などが挙げられる。
【0028】
前記ポリエステル中に共重合して使用されるグリコ-ル成分としては、エチレングリコ-ル、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコール、ポリエチレングリコ-ル、ポリブチレングリコ-ル等のポリアルキレングリコ-ルなどが挙げられる。
【0029】
更にポリエステルが実質的に線状である範囲内で多官能化合物、例えばトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロ-ルプロパン等を共重合してもよく、また単官能化合物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
【0030】
本発明のポリエステルの好ましい一例は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステルであり、さらに好ましくはエチレンテレフタレート単位を85モル%以上含む線状ポリエステルであり、特に好ましくはエチレンテレフタレート単位を95モル%以上含む線状ポリエステル、即ち、ポリエチレンテレフタレ-ト(以下、PETと略称)である。
【0031】
また本発明のポリエステルの好ましい他の一例は、主たる繰り返し単位がエチレン-2、6-ナフタレートから構成されるポリエステルであり、さらに好ましくはエチレン-2、6-ナフタレート単位を85モル%以上含む線状ポリエステルであり、特に好ましいのは、エチレン-2、6-ナフタレート単位を90モル%以上含む線状ポリエステル、即ち、ポリエチレンナフタレ-トホモポリマ-またはエチレンテレフタレ-ト単位を含むポリエチレンナフタレ-トコポリマ-(以下、PENと略称)である。
【0032】
本発明のポリエステル、特に、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステルの極限粘度は、好ましくは0.50〜1.30デシリットル/グラム、より好ましくは0.55〜1.20デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.60〜0.90デシリットル/グラムの範囲である。極限粘度が0.50デシリットル/グラム未満では、得られた成形体等の機械的特性が悪い。また1.30デシリットル/グラムを越える場合は、成型機等による溶融時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、保香性に影響を及ぼす遊離の低分子量化合物が増加したり、成形体が黄色に着色する等の問題が起こる。
【0033】
また本発明のポリエステル、特に、主たる繰り返し単位がエチレン-2、6-フタレートから構成されるポリエステルの極限粘度は、好ましくは0.40〜1.00デシリットル/グラム、より好ましくは0.42〜0.95デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.45〜0.90デシリットル/グラムの範囲である。極限粘度が0.40デシリットル/グラム未満では、得られた成形体等の機械的特性が悪い。また1.00デシリットル/グラムを越える場合は、成型機等による溶融時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、保香性に影響を及ぼす遊離の低分子量化合物が増加したり、成形体が黄色に着色する等の問題が起こる。
【0034】
ポリエステルチップの形状は、シリンダー型、角型、または扁平な板状等の何れでもよく、その大きさは、縦、横、高さがそれぞれ通常1.5〜4mmの範囲である。例えばシリンダー型の場合は、長さは1.5〜4mm、径は1.5〜4mm程度であるのが実用的である。また、チップの重量は15〜30mg/個の範囲が実用的である。
【0035】
本発明のポリエステルは、主として芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とグリコ-ルまたはそのエステル形成性誘導体を原料として得られるものであり、ポリエステル樹脂中のカルシウム元素の含有量をC(ppm)、マグネシウム元素の含有量をM(ppm)、ケイ素元素の含有量をS(ppm)とした場合、下記(1)〜(3)式のいずれかを満足すること特徴とするポリエステル樹脂である。
(1)0.001≦C≦5(ppm)
(2)0.001≦M≦5(ppm)
(3)0.001≦S≦5(ppm)
C、M、Sは、好ましくはそれぞれ0.005〜1ppm、より好ましくはそれぞれ0.01〜0.5ppm、さらに好ましくは0.01〜0.3ppmである。
【0036】
さらに本発明のポリエステルは、主として芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とグリコ-ルまたはそのエステル形成性誘導体を原料としてGe化合物または/およびTi化合物を触媒に用いて得られるものであって、極限粘度が好ましくは0.68dl/g〜0.90dl/g、より好ましくは0.69dl/g〜0.88dl/g、さらに好ましくは0.70dl/g〜0.86dl/gであり、密度が1.37g/cm3以上、好ましくは1.38g/cm3以上、更に好ましくは1.39g/cm3以上である、重縮合後チップ状で水処理したことを特徴とするポリエステルである。
【0037】
C、M、Sの値のいずれもが0.001ppm未満の場合は、結晶化速度が非常におそくなり、中空成形容器の口栓部の結晶化が不十分となり、このため口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらないためキャッピング不良現象が発生したり、また容器成形後の寸法安定性が悪いシ-ト状物を与える。さらには、C、M、Sの値を0.001ppm未満にしようとすると、水処理に蒸留水や逆浸透膜で処理した水、高度にイオン交換処理を行った水、などのカルシウム、マグネシウム、珪素含有量が非常に少ない水を使う必要があり、経済的に好ましくない。
またC、M、Sの値が5ppmを超える場合は、結晶化速度が早くなり、中空成形容器の口栓部の結晶化が過大となり、このため口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらないため口栓部のキャッピング不良となり内容物の漏れが生じたり、また中空成形用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となる。なお、C、M、Sの値はいずれもが5ppm以下であることが好ましい。
【0038】
なお、前記のカルシウムやマグネシウムや珪素は主に処理水から由来するものなので、これらの金属はポリエステルチップの表面やチップ表面から約0.5mm以内の厚みの表面層に存在する。
【0039】
また、本発明のポリエステルのアセトアルデヒド含量は好ましくは8ppm以下、より好ましくは6ppm以下、更に好ましくは4ppm以下、ホルムアルデヒド含量は好ましくは6ppm以下、より好ましくは5ppm以下、更に好ましくは4ppm以下である。アセトアルデヒド含量が8ppm以上、およびホルムアルデヒド含量が6ppm以上の場合は、このポリエステルから成形された容器等の内容物の風味や臭い等が悪くなる。
【0040】
また本発明のポリエステル中に共重合されたジエチレングリコール量は該ポリエステルを構成するグリコール成分の好ましくは1.0〜5.0モル%、より好ましくは1.3〜4.5モル%、更に好ましくは1.5〜4.0モル%である。ジエチレングリコール量が5.0モル%を越える場合は、熱安定性が悪くなり、成型時に分子量低下が大きくなったり、またアセトアルデヒド含量やホルムアルデヒド含量の増加量が大となり好ましくない。。またジエチレングリコ-ル含量が1.0モル%未満の場合は、得られた成形体の透明性が悪くなる。
【0041】
また本発明のポリエステルの環状3量体の含有量は好ましくは0.50重量%以下、より好ましくは0.45重量%以下、さらに好ましくは0.40重量%以下である。本発明のポリエステルから耐熱性の中空成形体等を成形する場合は加熱金型内で熱処理を行うが、環状3量体の含有量が0.50重量%以上含有する場合には、加熱金型表面へのオリゴマー付着が急激に増加し、得られた中空成形体等の透明性が非常に悪化する。
【0042】
また、本発明のポリエステルを290℃の温度で60分間溶融した時の環状3量体の増加量が0.30重量%以下であることが必要である。環状3量体の増加量は好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下であることが好ましい。290℃の温度で60分間溶融した時の環状3量体の増加量が0.30重量%を越えると、成形の樹脂溶融時に環状3量体量が増加し、加熱金型表面へのオリゴマー付着が急激に増加し、得られた中空成形体等の透明性が非常に悪化する。
【0043】
前記の本発明のポリエステルは、例えば下記のようにして製造することができる。すなわち、本発明のポリエステルは、下記のポリエステルチップを処理槽中においてカルシウム含有量、マグネシウム含有量がそれぞれ0.001〜0.5ppm、好ましくは0.005〜0.5ppm、より好ましくは0.01ppm〜0.5ppm珪素含有量が0.01〜2ppm、好ましくは0.01〜1.0ppm、より好ましくは0.02〜0.5ppmの処理水で接触処理することにより製造することが出来る。接触処理の方法としては、水中に浸ける方法が挙げられる。水との接触処理を行う時間としては5分〜2日間、好ましくは10分〜1日間、さらに好ましくは30分〜10時間であり、水の温度としては20〜180℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは50〜120℃である。
【0044】
ポリエステルチップを工業的に水処理する場合、処理に用いる水が大量であることから天然水(工業用水)や排水を再利用して使用することが多い。通常この天然水は、河川水、地下水などから採取したもので、水(液体)の形状を変えないまま、殺菌、異物除去等の処理をしたものを言う。また、一般的に工業用に用いられる天然水には、自然界由来の、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩等の粘土鉱物を代表とする無機化合物や細菌、バクテリア等や、腐敗した植物、動物に起源を有する有機化合物等を多く含有している。これらの天然水を用いて水処理を行うと、Na、マグネシウム、カルシウムや二酸化珪素等の金属含有物質がポリエステルチップに付着、浸透して結晶核となり、このようなポリエステルチップを用いた中空成形容器の透明性が非常に悪くなることが判った。
【0045】
水処理方法が連続式、又はバッチ式のいずれの場合であっても、処理槽から排出した処理水のすべて、あるいは殆どを工業排水としてしまうと、新しい水が多量に入用であるばかりでなく、排水量増大による環境への影響が懸念される。即ち、処理槽から排出した少なくとも一部の処理水を、水処理槽へ戻して再利用することにより、必要な水量を低減し、また排水量増大よる環境への影響を低減することが出来、さらには水処理槽へ返される排水がある程度温度を保持していれば、処理水の加熱量も小さく出来る。
【0046】
経済的な観点および環境上の観点より、バッチ方式の水処理の場合は処理水を繰り返し使用し、また連続式水処理の場合は水処理槽から排出した処理水を再度処理槽へ戻して再利用するが、いずれの場合も処理水中のナトリウム、マグネシウム、カルシウムおよび二酸化珪素等の金属含有物質やポリエステルチップに由来するファイン等が水処理装置の処理槽や配管等に付着し、水処理装置の汚れの原因となる。
【0047】
以下に処理槽内の処理水のマグネシウム含量、カルシウム含量、二酸化珪素含量等を低減させる方法を例示するが、本発明は、これに限定するものではない。
【0048】
処理槽内の処理水のマグネシウム含量、カルシウム含量、二酸化珪素含量等を低減させるために、処理槽に供給するために工業用水が処理槽に送られるまでの工程で少なくとも1ヶ所以上にマグネシウム、カルシウム、二酸化珪素等を除去する装置を設置する。また、更に処理槽から排出した処理水が再び処理槽に返されるまでの工程にも少なくとも1ヶ所以上にマグネシウム、カルシウム、二酸化珪素等を除去する装置を設置してもよい。マグネシウム、カルシウム、二酸化珪素等を除去する装置としては、イオン交換装置、薬剤沈殿装置、電解脱ケイ法装置などが挙げられる。
【0049】
系外から導入する処理水のマグネシウム含量、カルシウム含量をそれぞれ0.001ppm未満にするためには、水を蒸留したり、逆浸透膜による濾過を繰り返す必要があり、これでは水のコストが高くなり、経済的に好ましくない。
【0050】
以下に水処理を工業的に行なう方法を例示するが、これに限定するものではない。また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えないが、工業的に行なうためには連続方式の方が好ましい。
【0051】
ポリエステルチップをバッチ方式で水処理をする場合は、サイロタイプの処理槽が挙げられる。すなわち、バッチ方式でポリエステルチップをサイロへ受け入れ水処理を行なう。あるいは回転筒型の処理槽にポリエステルチップを受け入れ、回転させながら水処理を行ない水との接触をさらに効率的にすることもできる。
この場合、ポリエステルチップは処理槽内に投入、充填すると共に、カルシウム含有量およびマグネシウム含有量がそれぞれ0.001〜0.5ppm、珪素含有量が0.01〜2ppmの処理水を満たし、処理水は必要により継続的又は断続的(総称して連続的ということがある)に循環し、また、継続的又は断続的に一部の処理水を排出してカルシウム含有量およびマグネシウム含有量がそれぞれ0.001〜0.5ppm、珪素含有量が0.01〜2ppmの新しい処理水を追加供給する。そして、水処理の終了時点での水中のカルシウム含有量およびマグネシウム含有量がそれぞれ0.001〜0.5ppm、珪素含有量が0.01〜2ppmに維持して下記の特性を持つポリエステルチップを処理することにより本発明のポリエステルを得ることが出来る。
【0052】
またポリエステルチップを連続的に水処理する場合は、塔型の処理槽に継続、あるいは断続的にポリエステルチップを上部より受け入れ、並流又は向流で水を連続供給して水処理させることができる。
【0053】
また、本発明の耐熱寸法安定性の優れた成形体や成形後の寸法安定性に優れたシ-ト状物を得るためには、水処理したポリエステルのファイン含量を0.1〜500ppmにすることが必須要件である。ファイン含量が0.1ppm未満の場合は、結晶化速度が非常におそくなり、中空成形容器の口栓部の結晶化が不十分となり、このため口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらないためキャッピング不良現象が発生したり、また容器成形後の寸法安定性が悪いシ-ト状物を与える。また500ppmを超える場合は、結晶化速度が早くなり、中空成形容器の口栓部の結晶化が過大となり、このため口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらないため口栓部のキャッピング不良となり内容物の漏れが生じたり、また中空成形用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となる。
【0054】
ここでは、主として水処理工程を含むポリエステル製造工程において発生するチップよりかなり小さな粒状体や粉等をファインと称する。該ファインの共重合成分、および該共重合成分含量が、ポリエステルチップと同一であり、その極限粘度は通常、チップの極限粘度と同一か、またはチップの極限粘度より0.03(dl/g)高い極限粘度の範囲であることが好ましい。
【0055】
前記のファイン含量が0.1〜500ppmのポリエステルは、処理水中の微粉量をコントロ-ルすることによって容易に製造することができる。微粉量が0ppmの水を処理水として用いると、ポリエステルのファイン含量は0.1ppmを下回ることがあり、また微粉量が1000ppmを越える水を用いるとポリエステル中のファイン量が500ppmを越えることがある。ここで、水処理槽内のファインを微粉と称し、処理水中のその含量、すなわち微粉量は下記の測定法によって測定することができる。
【0056】
水処理槽から排出される処理水には、処理槽にポリエステルチップを受け入れる段階で既にポリエステルのチップに付着しているファインや、水処理時にポリエステルのチップ同士あるいは処理槽壁との摩擦で発生するポリエステルのファインが含まれている。従って、処理槽から排出した処理水を再度処理槽へ戻して再利用すると、処理槽内の処理水に含まれる微粉量は次第に増えていく。そのため、処理水中に含まれている微粉が処理槽壁や配管壁に付着して、配管を詰まらせることがある。また処理水中に含まれている微粉が再びポリエステルのチップに付着し、この後、水分を乾燥除去する段階でポリエステルのチップにファインが静電効果により付着するため、乾燥後にファイン除去を行なっても除去が困難となる。
【0057】
水処理したポリエステルチップは振動篩機、シモンカーターなどの水切り装置で水切りし、乾燥工程へ移送する。当然のことながら水切り装置でポリエステルチップと分離された水はフィルタ-式濾過装置、遠心分離器等のファイン除去の装置へ送られ、再度水処理に用いることができる。
【0058】
ポリエステルチップの乾燥は通常用いられるポリエステルチップの乾燥処理を用いることができる。連続的に乾燥する方法としては上部よりポリエステルチップを供給し、下部より乾燥ガスを通気するホッパー型の通気乾燥機が通常使用される。乾燥ガス量を減らし、効率的に乾燥する方法としては回転ディスク型加熱方式の連続乾燥機が選ばれ、少量の乾燥ガスを通気しながら、回転ディスクや外部ジャケットに加熱蒸気、加熱媒体などを供給した粒状ポリエステルチップを間接的に乾燥することができる。
【0059】
バッチ方式で乾燥する乾燥機としてはダブルコーン型回転乾燥機が用いられ、真空下であるいは真空下少量の乾燥ガスを通気しながら乾燥することができる。あるいは大気圧下で乾燥ガスを通気しながら乾燥してもよい。
【0060】
乾燥ガスとしては大気空気でも差し支えないが、ポリエステルの加水分解や熱酸化分解による分子量低下を防止する点からは乾燥窒素、除湿空気が好ましい。
前記の水処理に供せられるポリエステルは、従来公知の製造方法によって製造することが出来る。即ち、PETの場合には、テレフタール酸とエチレングリコール及び必要により他の共重合成分を直接反応させて水を留去しエステル化した後、減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコール及び必要により他の共重合成分を反応させてメチルアルコールを留去しエステル交換させた後、減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。更に極限粘度を増大させ、アセトアルデヒド含量等を低下させる為に固相重合を行ってもよい。
【0061】
前記溶融重縮合反応は、回分式反応装置で行っても良いしまた連続式反応装置で行っても良い。これらいずれの方式においても、溶融重縮合反応は1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。固相重合反応は、溶融重縮合反応と同様、回分式装置や連続式装置で行うことが出来る。溶融重縮合と固相重合は連続で行っても良いし、分割して行ってもよい。
【0062】
直接エステル化法による場合は、重縮合触媒としてGe、Sb、Tiの化合物が用いられるが、特にGe化合物および/またはTi化合物の使用が好都合である。
【0063】
Ge化合物としては、無定形二酸化ゲルマニウム、結晶性二酸化ゲルマニウム粉末またはエチレングリコールのスラリー、結晶性二酸化ゲルマニウムを水に加熱溶解した溶液またはこれにエチレングリコールを添加加熱処理した溶液等が使用されるが、特に本発明で用いるポリエステルを得るには二酸化ゲルマニウムを水に加熱溶解した溶液、コロイド状にした溶液、またはこれらにエチレングリコールを添加加熱した溶液、二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液を使用するのが好ましい。これらの重縮合触媒はエステル化工程中に添加することができる。Ge化合物を使用する場合、その使用量はポリエステル樹脂中のGe残存量として5〜150ppm、好ましくは10〜100ppm、更に好ましくは1=5〜70ppmである。
【0064】
Ti化合物としては、テトラエチルチタネ-ト、テトライソプロピルチタネ-ト、テトラ-n-プロピルチタネ-ト、テトラ-n-ブチルチタネ-ト等のテトラアルキルチタネ-トおよびそれらの部分加水分解物、蓚酸チタニル、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルナトリウム、蓚酸チタニルカリウム、蓚酸チタニルカルシウム、蓚酸チタニルストロンチウム等の蓚酸チタニル化合物、トリメリット酸チタン、硫酸チタン、塩化チタン等が挙げられる。Ti化合物は、生成ポリマ-中のTi残存量として0.1〜10ppmの範囲になるように添加する。
【0065】
また、安定剤として、燐酸、ポリ燐酸やトリメチルフォスフェート等の燐酸エステル類等を使用するのが好ましい。これらの安定剤はテレフタル酸とエチレングリコールのスラリー調合槽からエステル化反応工程中に添加することができる。P化合物は、生成ポリマー中のP残存量として5〜100ppmの範囲になるように添加する。
【0066】
また、ポリエステル中に共重合したDEG含量を制御するためにエステル化工程に塩基性化合物、たとえば、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン等の第3級アミン、水酸化テトラエチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩等を加えることが出来る。
【0067】
水処理に用いられるポリエステルのアセトアルデヒド含量は10ppm以下、ホルムアルデヒド含量は8ppm以下、ジエチレングリコール量はグリコール成分の1.0〜5.0モル%、環状3量体の含有量は0.50重量%以下であることが好ましい。
【0068】
また、水処理に用いられるポリエステルチップの密度は、約1.335(g/cm3)から約1.415(g/cm3)の範囲であることが好ましい。
【0069】
本発明のポリエステルに飽和脂肪酸モノアミド、不飽和脂肪酸モノアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等を同時に併用することも可能である。
【0070】
飽和脂肪酸モノアミドの例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド等が挙げられる。不飽和脂肪酸モノアミドの例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドリシノ-ル酸アミド等が挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド等が挙げられる。また、不飽和脂肪酸ビスアミドの例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド等が挙げられる。好ましいアミド系化合物は、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等である。このようなアミド化合物の配合量は、10ppb〜1×105ppmの範囲である。
【0071】
また炭素数8〜33の脂肪族モノカルボン酸の金属塩化合物、例えばナフテン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、メリシン酸、オレイン酸、リノ-ル酸等の飽和及び不飽和脂肪酸のリチュウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、及びコバルト塩等を同時に併用することも可能である。これらの化合物の配合量は、10ppb〜300ppmの範囲である。
【0072】
本発明のポリエステルは、中空成形容器、トレ-、2軸延伸フイルム等の包装材、金属缶被覆用フイルム等として好ましく用いることが出来る。また、本発明のポリエステルは、多層成形体や多層フイルム等の1構成層としても用いることが出来る。
【0073】
本発明のポリエステルには、必要に応じて公知の紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、核剤、安定剤、帯電防止剤、顔料などの各種の添加剤を配合してもよい。なお、本発明における、主な特性値の測定法を以下に説明する。
【0074】
【実施例】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定させるものではない。なお、本明細書中における主な特性値の測定法を以下に説明する。
【0075】
(1)ポリエステルの極限粘度(IV)
1,1,2,2-テトラクロルエタン/フェノ-ル(2:3重量比)混合溶媒中30℃での溶液粘度から求めた。
【0076】
(2)ポリエステルのジエチレングリコ-ル含量(以下[DEG含量」という)
メタノ-ルにより分解し、ガスクロマトグラフィ-によりDEG量を定量し、全グリコ-ル成分に対する割合(モル%)で表した。
【0077】
(3)密度
四塩化炭素/n-ヘプタン混合溶媒の密度勾配管で25℃で測定した。
【0078】
(4)ポリエステルの環状3量体の含量(以下「CT含量」という)
試料300mgをヘキサフルオロイソプロパノ-ル/クロロフォルム混合液(容量比=2/3)3mlに溶解し、さらにクロロフォルム30mlを加えて希釈する。これにメタノ-ル15mlを加えてポリマ-を沈殿させた後、濾過する。濾液を蒸発乾固し、ジメチルフォルムアミド10mlで定容とし、高速液体クロマトグラフ法により環状3量体を定量した。
【0079】
(5)ポリエステルのアセトアルデヒド含有量(以下「AA含量」という)
試料/蒸留水=1グラム/2ccを窒素置換したガラスアンプルに入れた上部を溶封し、160℃で2時間抽出処理を行い、冷却後抽出液中のアセトアルデヒドを高感度ガスクロマトグラフィ-で測定し、濃度をppmで表示した。
【0080】
(6)ポリエステルのナトリウム含量、カルシウム含量、マグネシウム含量
試料約5〜10gを白金るつぼに入れて約550℃で灰化し、次いで6N塩酸に溶解後蒸発乾固し、残差を1N塩酸に溶解する。この溶液を原子吸光分析法により測定した。
【0081】
(7)ポリエステルの珪素含有量
試料約5〜10gを白金るつぼに入れて約550℃で灰化し、次いで炭酸ナトリウムを加えて加熱溶解し、1N塩酸に溶解する。この溶液を島津製作所製誘導結合プラズマ発光分析装置で測定した。
【0082】
(8)ファインの含量測定
樹脂約0.5kgをJIS-Z8801による呼び寸法1.7mmの金網をはった篩い(直径30cm)の上に乗せ、上から0.1%のカチオン系界面活性剤(アルキルトリメチルアンモニウムクロライド)水溶液水を2リットル/分の流量でシャワー状にかけながら、全振幅幅約7cm、60往復/1分で1分間篩った。この操作を繰り返し、樹脂を合計10〜30kg篩った。
ふるい落とされたファインは界面活性剤水溶液と共に岩城硝子社製1G1ガラスフィルターで濾過して集め、イオン交換水で洗った。これをガラスフィルターごと乾燥器内で100℃で2時間乾燥後、冷却して秤量した。再度、イオン交換水で洗浄、乾燥の同一操作を繰り返し、恒量になったことを確認し、この重量からガラスフィルターの重量を引き、ファイン重量を求めた。ファイン含量は、ファイン量/篩いにかけた全樹脂重量、である。
【0083】
(9)金型汚れの評価
ポリエステルを窒素を用いた乾燥機で乾燥し、名機製作所製M-100射出成型機により樹脂温度290℃でプリフォームを成形した。このプリフォームの口栓部を自家製の口栓部結晶化装置で加熱結晶化させた後、コ-ポプラスト社製LB-01延伸ブロー成型機を用いて二軸延伸ブロー成形し、引き続き約155℃に設定した金型内で10秒間熱固定し、500ccの中空成形容器を得た。同様の条件で連続的に延伸ブロー成形し、目視で判断して容器の透明性が損なわれるまでの成形回数で金型汚れを評価した。また、ヘイズ測定用試料としては、5000回連続成形後の容器の胴部を供した。
【0084】
(10)ヘイズ(霞度%)
上記(9)の中空成形容器の胴部(肉厚約4mm)より試料を切り取り、東洋製作所製ヘイズメ-タ-で測定した。
【0085】
(11)ボトル口栓部の加熱による密度上昇
ボトル口栓部を自家製の赤外線ヒ-タ-によって60秒間熱処理し、天面から試料を採取し密度を測定した。
【0086】
(12)処理槽の処理水中の微粉量(ppm)
処理槽の処理水中の排出口からJIS規格20メッシュのフィルターを通過した処理水を1000cc採取し、岩城硝子社製1G1ガラスフィルターで濾過後、100℃で2時間乾燥し室温下で冷却後、重量を測定して算出する。
【0087】
(13)処理水中のナトリウム含量、カルシウム含量、マグネシウム含量および珪素含量
処理槽の処理水の排出口から処理水を採取し、岩城硝子社製1G1ガラスフィルターで濾過後、濾液を島津製作所製誘導結合プラズマ発光分析装置で測定した。
【0088】
(実施例1)
イオン交換装置(9)を設置し、この装置(9)を経由したイオン交換水の導入口(8)、処理槽上部の原料チップ供給口(1)、処理槽の処理水上限レベルに位置するオーバーフロー排出口(2)、処理槽下部のポリエステルチップと処理水の混合物の排出口(3)、オーバーフロー排出口から排出された処理水と、処理槽下部の排出口から排出されたポリエステルチップの水切り装置(4)を経由した処理水が、濾材が紙製の30μmのベルト式フィルターである濾過装置(5)を経由して再び水処理槽へ送る配管(6)、これらのファイン除去済み処理水の導入口(7)およびファイン除去済み処理水中のアセトアルデヒド等を吸着処理させる吸着塔(10)を備えた内容量320リットルの塔型の、図1に示す処理槽を使用してポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称)チップを水処理した。
【0089】
極限粘度が0.75デシリットル/グラム、密度が1.399g/cm3、環状3量体含量が0.32重量%であるPETチップを、イオン交換装置によりカルシウム含量を約0.2ppm、マグネシウム含量を約0.1ppm、珪素含量を約0.5ppmにし、温度が95℃にコントロールされた処理水を入れた水処理槽へ50kg/時間の速度で処理槽の上部(1)から連続投入を開始した。投入開始から5時間経過後に、PETチップの水処理槽への投入を続けたまま水処理槽の下部の排出口(3)からPETチップを50kg/時間の速度で処理水ごと抜出しを開始すると共に、水切り装置(4)を経由した処理水を濾過装置(5)を経由して再び水処理槽に戻して繰り返し使用し、その後連続運転した。
【0090】
72時間の連続運転後の排出口よりチップと共に排出される処理水のカルシウム含量は約0.1ppm、マグネシウム含量は約0.07ppm、珪素含量は約0.5ppmであり、同時に得られたPETチップのカルシウム含量は0.3ppm、マグネシウム含量は0.05ppm、珪素含量は0.8ppmであった。△CTは0.08重量%であった。アセトアルデヒド量は2.5ppm、ファイン量は63ppmであった。
このPETを用いて上記の(8)で得られた中空容器口栓部の赤外線ヒ-タによる加熱後の天面の密度は1.379g/cm3のと問題なく、胴部ヘイズは0.9%と透明性に優れ、また金型汚れまでの成形回数は15000回と問題なかった。
【0091】
(実施例2)
処理水中の微粉含量を約100ppm、カルシウム含量を約0.05ppm、そしてマグネシウム含量を約0.03ppm、珪素含量を0.2ppmにコントロ-ルする以外は実施例1と同様の方法で実施例1のPETチップを水処理した。
得られたPETチップのカルシウム含量は0.2ppm、マグネシウム含量は0.03ppm、珪素含量は0.5ppm、そしてΔCTは0.10重量%であった。アセトアルデヒド量は2.7ppm、ファイン含量は約30ppmであった。
このPETを用いて上記の(8)で得られた中空容器口栓部の赤外線ヒ-タによる加熱後の天面の密度は1.380g/cm3のと問題なく、胴部ヘイズは1.2%と透明性に優れ、また金型汚れまでの成形回数は13000回と問題なかった。
【0092】
(実施例3)
重縮合触媒として二酸化ゲルマニウムおよびテトライソプロピルチタネ-トを使用して得た、極限粘度が0.75デシリットル/グラム、密度が1.399g/cm3、環状3量体含量が0.31重量%、高周波プラズマ発光分析により測定したTi残存量が0.9ppm、原子吸光分析により測定したGe残存量およびP残存量がそれぞれ16ppm及び21ppmであるPETチップを実施例1と同様の方法で水処理した。
得られたPETチップのカルシウム含量は0.4ppm、マグネシウム含量は0.06ppm、珪素含量は0.7ppm、そしてΔCTは0.08重量%であった。アセトアルデヒド量は2.5ppm、ファイン含量は約40ppmであった。
このPETを用いて上記の(8)で得られた中空容器口栓部の赤外線ヒ-タによる加熱後の天面の密度は1.381g/cm3と問題なく、胴部ヘイズは1.0%と透明性に優れ、また金型汚れまでの成形回数は13000回と問題なかった。
(比較例1)
実施例1で使用したイオン交換装置(9)を使用せずに、カルシウム含量が約7.3ppm、マグネシウム含量が約2.5ppm、珪素含量が6.9ppmの処理水を水処理槽へ供給する以外は実施例1と同様の方法で実施例1のPETチップを水処理した。
得られたPETチップのカルシウム含量は7.8ppm、マグネシウム含量は5.5ppm、珪素含量は21ppm、ΔCTは0.重量%であった。また、ファイン量は40ppmであった。このPETを用いて上記の(8)で得られた中空容器胴部ヘイズは8.9%と非常に高かった。
【0093】
【発明の効果】
本発明のポリエステルを使用することによって、成形時での金型汚れが発生しにくく、口栓部の結晶化コントロ-ル性に優れ、かつ優れた透明性、耐熱性、機械的特性、残留異味、異臭が少なく保香性の優れた中空成形体、シ-ト状物や延伸フイルムおよび包装材料を与える。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明のポリエステルの水処理を行う装置の一例の略図である。
【符号の説明】
1 原料チップ供給口
2 オーバーフロー排出口
3 ポリエステルチップと処理水との排出口
4 水切り装置
5 ファイン除去装置
6 配管
7 処理水導入口
8 イオン交換水導入口
9 イオン交換装置
10 吸着塔
 
訂正の要旨 訂正の要旨
審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2003-03-20 
出願番号 特願平11-193269
審決分類 P 1 41・ 853- Y (C08G)
P 1 41・ 851- Y (C08G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 森川 聡  
特許庁審判長 三浦 均
特許庁審判官 佐野 整博
船岡 嘉彦
登録日 2000-09-29 
登録番号 特許第3114869号(P3114869)
発明の名称 ポリエステル、それからなる中空成形体、シ-ト状物及び延伸フイルム  
代理人 森 治  
代理人 林 清明  
代理人 林 清明  
代理人 森 治  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ