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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B
管理番号 1077253
審判番号 不服2001-9369  
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-02-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-05-01 
確定日 2003-05-20 
事件の表示 平成 5年特許願第226343号「通信システム及び通信方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 2月14日出願公開、特開平 7- 46640]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成5年7月27日の出願であって、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年7月19日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりものである。
「電波を介して文字情報の送受信が可能な携帯通信装置と一般電話回線を介して文字情報の送受信が可能な電話機との間で文字情報による通信を行なうための中継局を含む通信システムであって、前記中継局は、前記電話機から送信されて来た、文字情報である第1のメッセージと呼出先の携帯通信装置の識別コードとを受信して、前記識別コードを持つ携帯通信装置宛に前記電話機から受信した第1のメッセージを送信する第1の中継手段と、前記携帯通信装置から同時に送信されて来た、文字情報である第2のメッセージと送信先の任意の電話機の送信先コードとを受信した後、前記送信先コードを持つ電話機との間の通話回線を通じて前記携帯通信装置から受信した第2のメッセージを転送する第2の中継手段とを有し、前記電話機は、前記中継局から転送されて来た第2のメッセージを受信するメッセージ受信手段を有することを特徴とする通信システム。」

2.刊行物記載の発明
当審の拒絶理由に引用した刊行物1乃至3には、以下の事項が記載されている。
(1)刊行物1(特開平3-268553号公報)
ア.「データの変復調を行う第一の変復調部(1a)を有する可搬型パソコン(1)と、有線電話網交換機(2)と、データの変復調を行う第二の変復調部(3a-1〜3a-n)の中の一つを有する複数のパソコン/ホスト(3-1〜3-n)とを具備したものにおいて、
前記第一の変復調部(1a)からの入力信号にて変調した無線信号を端末アンテナ(5a)を介して空間へ放射し、かつ該移動アンテナ(5a)からの受信信号を復調し前記第一の変復調部(1a)に送出する可搬型無線電話機(5)と、
前記無線信号を受信し復調した信号を前記有線電話網交換機(2)へ送り、かつ前記有線電話網交換機(2)からの入力信号にて変調した無線信号を基地局アンテナ(6a)を介し空間へ放射する固定型無線電話機(6)とを設け、
前記可搬型パソコン(1)と複数のパソコン/ホスト(3-1〜3-n)の間の全二重通信を、前記可搬型無線電話機(5)を介して任意の地点から行うことができるようにしたことを特徴とする無線電話経由の全二重パソコン通信システム。」(第1頁左下欄第5行〜右下欄第5行)

イ.「[発明が解決しようとする課題]
従って、有線電話線の無い場所、即ち任意の地点から通信が出来ないという問題がある。
本発明は、有線電話線の無い所でも任意に対向する全二重通信ができることを目的とする。」(第2頁右下欄第4行〜8行)

ウ.「[課題を解決するための手段]
本発明は、データの変復調を行う第1のモデム1aを有する可搬型パソコン1と、有線電話網交換機2と、データの変復調を行う第二のモデム3a-1〜3a-nの中の一つを有する複数のパソコン/ホスト3-1〜3-nとを具備したものにおいて、前記第一のモデム1aからの入力信号にて変調した無線信号を端末アンテナ5aを介して空間へ放射し、かつ該端末アンテナ5aからの受信信号を復調して前記第1のモデム1aに送出する可搬型無線電話機5と、前記無線信号を受信し復調した信号を前記有線電話網交換機2へ送り、かつ前記有線電話網交換機2からの入力信号にて変調した無線信号を基地局アンテナ6aを介し空間へ放射する固定型無線電話機6とを設け、前記可搬型パソコンと複数のパソコン/ホスト3-1〜3-nの間の全二重通信を、前記可搬型無線電話機5を用いて任意の地点から行うことができるように構成するものである。」(第2頁右下欄第9行〜第3頁左上欄第8行)

エ.「第1図において、可搬型パソコン1から文字等のディジタルデータの上り伝送は、まず、モデム1aにて300〜2400bpsのアナログ信号に変調し、該アナログ信号を可搬型無線周波信号に変調し端末アンテナ5aから空間へ放射する。そして基地局アンテナ6aでは、該800MHz帯の無線周波信号を受信して固定型無線電話機6に送り、固定型無線電話機6において300〜2400bpsのアナログ信号に復調し、該アナログ信号は有線電話線4を介して有線電話網交換機2へ入力される。なお有線電話網交換機2では、所定の対向通信先の第一のパソコン/ホスト3-1〜第nのパソコン/ホスト3-nを選択し、該入力データをそれぞれのモデム3a-1〜3a-nを通して受け取る。」(第3頁左下欄第5行〜19行)

オ.「また逆に、第一のパソコン/ホスト3-1〜第nのパソコン/ホスト3-nから可搬型パソコン1へのディジタルデータの下り伝送は、上記と逆の経路を通って行われる。」(第3頁左下欄第20行〜右下欄第3行)

キ.「第2図にて有線電話通信を行う場合において、可搬型パソコン1からディジタルデータ送信は、該データを全二重制御部11において変調して300〜2400BPSのアナログ信号に変換し、第一増幅器12a(「第二増幅器12b」は「第一増幅器12a」の誤記と認める。)と変圧用のトランス13を介して極性検出部14に送る。着呼検出部16が相手側の有線電話網交換機2(図示せず)を経由して呼び出しされたことを検出すると、スイッチ接点S15aは閉じて有線電話網交換機2と可搬型パソコン1の通路を作り、可搬型パソコン1からのデータはアレスタ17による避雷保護を受けながらライン側を通って有線電話網交換機2へと送信される。」(第4頁右上欄第3行〜第14行)

ク.「反対に、有線電話網交換機2からデータが送られてきたことを着呼検出部16が検出すると、スイッチ接点S15bは閉じて有線電話網交換機2と可搬型パソコン1の通路を作り、有線電話網交換機2からのデータは、スイッチ接点S15b→トランス13→第二増幅器12bの経路で全二重モデム制御部11に至り、全二重モデム制御部11で復調されディジタルデータに変換され、可搬型パソコン1で受信される。」(第4頁右上欄第14行〜左下欄第3行)

ケ.「なおモデム1aで取り扱う情報がデータの場合、ゲート信号は音声増幅器18を殺し拡声器19を停止させ、またモデム1aで取り扱う情報が音声の場合、ゲート信号は音声増幅器18を生かして拡声器19にて音声の傍受を行う。」(第4頁左下欄第3行〜7行)

コ.「無線電話通信を行う場合において、無線接続検出部20がモデム1aと無線電話機5の接続を検出すると、無線接続検出部20は全二重モデム制御部11に検出信号を送って二つのスイッチ接点S15aとS15bを開放する制御を行い、ライン側の送受信を無効にする。従って、可搬型パソコンからディジタルデータは、全二重モデム制御部11にて変調して300〜2400BPSのアナログ信号に変換され、第一増幅器12a(「第二増幅器12b」は「第一増幅器12a」の誤記と認める。)を介して第一のインピーダンスZaに送られ、第一のインピーダンスZaによりインピーダンスマッチングを取られ、イヤホーンジャック21aと51aを介して可搬型無線電話機5に送られて無線周波による変調が行われ、端末アンテナ5aより空間に放射される。また端末アンテナ5aからの無線周波信号は可搬型無線電話機5にて可聴周波数に復調され、第二のインピーダンスZbにてインピーダンスマッチングを取られて第二増幅器12bに至り、全二重モデム制御部11でディジタルデータへの変換が行われて可搬型パソコンへ送られて受信される。」(第4頁左下欄第8行〜右下欄第7行)

上記ア.〜オ.及びコ.の事項を参照すると、刊行物1には、
電波を介して文字等のディジタルデータの送受信が可能な、可搬型パソコン1、第一の変復調部1a及び可搬型無線電話機5と、有線電話網を介して文字等のディジタルデータの送受信が可能な、複数の第2の変復調部3a-1〜3a-n及び複数のパソコン/ホスト3-1〜3-nとの間で文字等のディジタルデータの通信を行うための固定型無線電話機6及び有線電話網交換機2を含む通信システムであって、
複数の第2の変復調部3a-1〜3a-n及び複数のパソコン/ホスト3-1〜3-nから送られてきた、文字等のディジタルデータを受信する有線電話網交換機2、及び、可搬型パソコン1、第一の変復調部1a及び可搬型無線電話機5宛てに、前記複数の第2の変復調部3a-1〜3a-n及び複数のパソコン/ホスト3-1〜3-nから送られてきた文字等のディジタルデータを送信する固定型無線電話機6と、
無線電話通信を行う場合に、可搬型パソコン1からのディジタルデータは、全二重モデム制御部11にて変調してアナログ信号に変換され、インピーダンスマッチングを取られ、イヤホーンジャック21aと51bを介して可搬型無線電話機5に送られて無線周波による変調が行われ、端末アンテナ5aより空間に放射され、
前記可搬型パソコン1、第一の変復調部1a及び可搬型無線電話機5から送信されて来た、文字等のディジタルデータを受信する固定型無線電話機6、及び、固定型無線電話機6が受信した文字等のディジタルデータを、前記複数の第2の変復調部3a-1〜3a-n及び複数のパソコン/ホスト3-1〜3-nの所定の対向通信先との間の有線電話線4を通じて、前記可搬型パソコン1、第一の変復調部1a及び可搬型無線電話機5から送信されて来た文字等のディジタルデータを転送する有線電話網交換機2とを有し、
前記固定型無線電話機6及び有線電話網交換機2から有線電話線4を通じて転送されてきた文字等のディジタルデータは、前記複数の第2の変復調部3a-1〜3a-n及び複数のパソコン/ホスト3-1〜3-nの所定の対向通信先の第2の変復調部及びパソコン/ホストの受信手段により受信される通信システムの発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されている。

また、上記キ.及びク.の事項を参照すると、刊行物1には、
有線電話通信の場合、モデム1aの着呼検出部16が相手側の有線電話網交換機2を経由して呼び出しされたことを検出すると、スイッチ接点S15aが閉じて有線電話網交換機2と可搬型パソコン1の通路を作り、可搬型パソコン1からディジタルデータ送信は、該データを全二重制御部11においてアナログ信号に変換し、第一増幅器12a、変圧用のトランス、極性検出部14からライン側を通って直接、有線電話網交換機2へと送信され、
逆に、有線電話網交換機2からデータが送られてきたことを着呼検出部16が検出すると、スイッチ接点S15bは閉じて有線電話網交換機2と可搬型パソコン1の通路を作り、有線電話網交換機2からのデータは、スイッチ接点S15b→トランス13→第二増幅器12bの経路で全二重モデム制御部11に至り、全二重モデム制御部11で復調されディジタルデータに変換され、可搬型パソコン1で受信されることが記載され、
モデム1aが有線電話網交換機2と有線で接続される場合には、着呼を検出した後、データを送信することが示されている。

また、上記ケ.の事項を参照すると、刊行物1には、
モデム1aは、情報としてデータの場合と音声の場合の両方を扱うことができ、データの場合には、音声増幅器と拡声器を停止し、音声の場合には、音声増幅器と拡声器を作動させて音声を傍受することも示されている。

(2)刊行物2(特開昭62-5742号公報)
ア.「従来,ページング子機は呼出者からの一方向通信であり,ページング子機所有者から呼出者への通信は電話を使用しなければならない。」(第1頁右下欄第12行〜14行)

イ.「本発明はページング子機どうしでの二方向通信が可能で,しかも携帯に便利な小型のメッセージ表示機能付ページング送受信機を提供することを目的とする。」(第2頁左上欄第11行〜14行)

ウ.「第1図は本発明が適用されるページングシステムの一実施例のブロック図である。1a,1bは本発明によるページング子機であり,受信および送信機能を有している。2a,2b,2cはページング親機の送信部,3a,3b,3cはページング親機の受信部,4a,4b,4cはアンテナである。5はページングエンコーダ装置,6はページング呼出受付装置,7は一般交換機,8は電話機である。」(第2頁右上欄第16行〜左下欄第4行)

エ.「従来のページングサービスとしては、電話機8より呼出したい人のページング子機(たとえば1a)のページング番号をダイヤルすると,この信号は交換機7を通してページングエンコーダ装置へ入力される。エンコードされたページング信号はページング親機の送信部2a,2b,2c,アンテナ4a,4b,4cよりチャンネルCH1の電波となって送信され,該当するページング子機1aが呼出される。」(第2頁左下欄第5行〜13行)

オ.「次に,ページング子機からの呼出しサービスは,下記のようにして実現される。たとえば,ページング子機1bからページング子機1aを呼出したい時はページング子機16より自分のページング子機1bのページング番号,ページング子機1aのページング番号および相手に伝えたいメッセージ情報(以下ではこれらをまとめて呼出要求信号と呼ぶ)をチャンネルCH2の電話にのせて送出する。この呼出要求信号は最寄りのページング親機のアンテナ4b,受信部3bによって受信され,ページング呼出受付装置6へ送られる。」(第2頁左下欄第14行〜右下欄第5行)

カ.「第3図はページング子機のブロック図であり,まず,受信機能を説明する。アンテナ11より受信されたチャンネルCH1の無線信号は,受信部12で増幅後復調される。復調された信号はデコーダ13によってROM14に書込まれている自己のページング番号と照合され,一致した時は呼びがあった旨をCPU15に通報する。CPU15は,ページング番号にひき続くメッセージ情報を受信し,LCD表示器16にメッセージ情報を表示させると共に,ドライバ17を通してスピーカ18を鳴らし,呼びがあったことをページング子機の所持者に知らせる。」(第3頁左下欄第15行〜右下欄第6行)

キ.「次に,送信機能を説明する。後述する操作でデータ入力スイッチ部21より呼び出したいページング番号および伝えたいメッセージを入力し,送出操作を行うことにより,CPU15は同期信号SC,ROM14に書込まれている自己のページング番号NXおよび入力されたページング番号,メッセージをページング呼出要求信号にエンコードして送信部22に出力する。送信部22はページング呼出要求信号をチャンネルCH2の無線信号に変調してアンテナ11を通して空中へ送出する。」(第3頁右下欄第9行〜19行)

ク.「最初に、ページング番号入力状態となり,入力ボタン群213のうち“0-9”のボタンを入力したい数字の回数分押すことにより,1→2→3→4→…とLCD表示器16に表示される。入力したい数字がLCD表示器16に表示された時にデータ入力ボタン212を押せばその数字がストアされ次のケタ入力待ち状態になる。このようにして必要ケタ数入力すると,次にメッセージ入力状態となり,入力ボタン群213のうち入力したい文字の行(ア行,カ行,…)のボタンを数回押すことにより,たとえばア→イ→ウ→エ→オ→ア→…と順次LCD表示器16に表示される。このようにして入力したい文字がLCD表示器16に表示された時にデータ入力ボタン212を押せばその文字がストアされ,次の文字入力待ち状態になる。呼出したいページング番号およびメッセージを入力した後,データ入力ボタン212およびリセットボタン20を同時に押すことで送信操作が行われ,入力データがページング呼出要求信号として送出される。」(第4頁右下欄第11行〜第5頁左上欄第4行)

ケ.「ページング子機の送出パワーについては,第1図に示したように,ページング親機(少なくとも受信部であれば良い)を複数局ある程度の間隔(たとえば1km範囲)にて配置することにより,最寄りのページング親機を通してページング呼出要求信号が受けつけられるので送信パワーは小さくできる。」(第5頁左上欄第11行〜第17行)

上記ア.〜ケ.の事項を参照すると、刊行物2には、
ページング子機1aとページング子機1bとの間、或いは、ページング子機1aと電話機8との間で文字情報によるメッセージによる通信を行なうための中継局を含む通信システムであって、
電話機8からメッセージ情報がページング子機1aに送信される際には、電話機でダイヤルされたページング番号が交換機7を通してページングエンコーダ装置5へ入力され、エンコードされたページング信号はページング親機の送信部、アンテナより電波となって送信され、該当するページング子機1aが呼出され、ページング子機1aでは、受信された無線信号が復調され、自己のページング番号と照合され、一致した場合は、ページング番号に引き続くメッセージ情報をLCD表示器16に表示し、
ページング子機1bからページング子機1aを呼出したい時は、自分のページング番号、相手先のページング番号及びメッセージ情報(これらをまとめて呼出要求信号と呼ぶ)を電波にのせて送出し、この呼出要求信号はページング親機のアンテナ、受信部によって受信される通信システムの発明(以下、「刊行物2記載の発明」という。)が記載されている。

(3)刊行物3(特開平3-35656号公報)
ア.「本発明は文字転送電話機、さらに詳しく云えばテンキーの組合せによって文字・記号等を入力でき、この入力した文字・記号等を相手文字転送電話機に送出し、相手電話機の文字表示部に表示できるようにした文字転送電話機に関する。」(第1頁右下欄第10行〜15行)

イ.「第2図は文字転送電話機A,Bが交換機18を介して接続されている状態を示している。今、加入者Aが文字転送電話機を使用して他の加入者Bを呼び出した後、双方がテンキー3による符号化文字の送受信により会話する場合を説明する。」(第2頁右下欄第13行〜18行)

ウ.「加入者Aは文字転送電話機(以降電話機Aと記す)の受話器2をオフフックし、加入者Bが所有する文字転送電話機(以降電話機Bと記す)の電話番号をテンキー3でダイヤル操作する。…
そこで、加入者Aはテンキー3を使用して行なう符号化文字転送による会話を開始するための文字転送開始符号…をキー操作することとなる。…
ここで一例として電話機Aから電話機Bへ「あした」という文字を転送する場合の動作について説明する。第3図にテンキー3の番号の組合わせと符号文字の関係の例を示す。…
MF信号発生器5は符号解読回路4から送られてくる「あした」に相当する文字識別MF信号を発生し電話機Bへ送出する。
電話機Bは電話機Aから送られてくる「あした」の文字識別MF信号を1文字分づつMF信号解読回路8で解読し、解読結果を受信文字変換回路9へ送出する。…
文字受信変換回路9から文字パターン信号を受信した受信文字表示部10はこれにより文字「あした」を表示することになる。
電話機Bから電話機Aへ文字を転送する場合も、前述した電話機Aのテンキー3のキー操作と同じ要領で転送できる。」(第2頁右下欄第19行〜第3頁右下欄第15行)

上記ア.乃至ウ.の事項を参照すると、刊行物3には、
電話機Aから交換機18を介して電話機Bに、電話機Bの電話番号と文字を転送して電話機Bの受信文字表示部10に表示し、また、電話機Bから電話機Aへ文字を転送する場合も同じ要領で転送する文字転送電話システムの発明(以下、「刊行物3記載の発明」という。)が記載されている。

3.対比・判断
(1)対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、
ア.刊行物1記載の発明の「文字等のディジタルデータ」は、本願発明の「文字情報」に相当する。

イ.刊行物1記載の発明の「可搬型パソコン1、第一の変復調部1a及び可搬型無線電話機5」は、全体として可搬型の通信装置であり、無線により通信が行われる装置であるから、本願発明の「電波を介して文字情報の送受信が可能な携帯通信装置」に相当する。

ウ.刊行物1記載の発明の「複数の第2の変復調部3a-1〜3a-n及び複数のパソコン/ホスト3-1〜3-n」は、有線電話網に接続された、文字等のディジタルデータを送受信できる装置であって、パソコン/ホストと電話機とは同じ装置ではないが、一般電話回線を介して文字情報の送受信が可能な通信装置である点では、本願発明の「電話機」と一致する。

また、刊行物1記載の発明の「複数の第2の変復調部及び複数のパソコン/ホストのうちの、所定の対向通信先である第2の変復調部とパソコン/ホストは、有線電話網交換機2に有線電話線4を通じて接続された複数の通信装置のうちの対向通信先であるから、任意の通信装置の送信先である点では、本願発明の「任意の電話機の送信先」と一致する。

エ.刊行物1記載の「第2の変復調部3a-1〜3a-n及びパソコン/ホスト3-1〜3-n」から「可搬型パソコン1、第一の変復調部1a及び可搬型無線電話機5」に送信される「文字等のディジタルデータ」は、本願発明の「文字情報である第1のメッセージ」に相当し、
「可搬型パソコン1、第一の変復調部1a及び可搬型無線電話機5」から「第2の変復調部3a-1〜3a-n及びパソコン/ホスト3-1〜3-n」に送信される「文字等のディジタルデータ」は、本願発明の「文字情報である第2のメッセージ」に相当する。

オ.刊行物1記載の発明の「有線電話網交換機2及び固定型無線電話機6」は、有線電話網に接続された通信装置から文字情報等のディジタルデータを受信して可搬型の通信装置に送信する中継手段であり、
通信装置から送信されて来た、文字情報である第1のメッセージを受信して、前記携帯通信装置宛に前記通信装置から受信した第1のメッセージを送信する中継手段である点では、本願発明の「第1の中継手段」と一致する。

カ.刊行物1記載の発明の「固定型無線電話機6」は、可搬型の通信装置から文字情報等のディジタルデータの無線信号を受信して有線電話網交換機2に送信し、
その後、「有線電話網交換機2」は、固定型無線電話機6が受信した文字等のディジタルデータを、所定の対向通信先である前記第2の変復調部3a-1〜3a-n及びパソコン/ホスト3-1〜3-nとの間の有線電話線4を通じて前記可搬型パソコン1、第一の変復調部1a及び可搬型無線電話機5から送信されて来た文字等のディジタルデータを転送するものであり、

刊行物1記載の発明の「固定型無線電話機6及び有線電話網交換機2」は、文字等のディジタルデータの無線信号を受信した後に有線電話線4に転送するものであるから、前記携帯通信装置から送信されて来た、文字情報である第2のメッセージを受信した後、前記送信先の通信装置との間の通話回線を通じて前記携帯通信装置から受信した第2のメッセージを転送する中継手段である点では、本願発明の「第2の中継手段」と一致する。

キ.刊行物1記載の発明の「有線電話網交換機2」及び「固定型無線電話機6」は、可搬型の通信装置と有線電話網に接続された通信装置との間の文字情報等のディジタルデータの送受信を中継するものであり、
電波を介して文字情報の送受信が可能な携帯通信装置と一般電話回線を介して文字情報の送受信が可能な通信装置との間で文字情報による通信を行なうための中継局である点では、本願発明の「中継局」と一致する。

ク.刊行物1記載の発明の「第2の変復調部3a-1〜3a-n及びパソコン/ホスト3-1〜3-n」は、「有線電話網交換機2及び固定型無線電話機6」を介して送信されて来た「文字等のディジタルデータ」を受信する手段を備えており、本願発明の「メッセージ受信手段」と同じ構成を備えていると認められる。

したがって、本願発明と刊行物1記載の発明とは、以下の点で一致し、以下の各点で相違する。

<一致点>
電波を介して文字情報の送受信が可能な携帯通信装置と一般電話回線を介して文字情報の送受信が可能な通信装置との間で文字情報による通信を行なうための中継局を含む通信システムであって、前記中継局は、前記通信装置から送信されて来た、文字情報である第1のメッセージを受信して、携帯通信装置宛に前記通信装置から受信した第1のメッセージを送信する第1の中継手段と、前記携帯通信装置から送信されて来た文字情報である第2のメッセージを受信した後、送信先の通信装置との間の通話回線を通じて前記携帯通信装置から受信した第2のメッセージを転送する第2の中継手段とを有し、前記通信装置は、前記中継局から転送されて来た第2のメッセージを受信するメッセージ受信手段を有する通信システム。

<相違点>
(ア)一般電話回線を介して文字情報の送受信が可能な通信装置が
本願発明では、電話機であるのに対し、
刊行物1記載の発明では、第2の変復調部及びパソコン/ホストである点。

(イ)第1の中継手段が、
本願発明では、前記電話機から送信されて来た、文字情報である第1のメッセージと呼出先の携帯通信装置の識別コードとを受信して、前記識別コードを持つ携帯通信装置宛に前記電話機から受信した第1のメッセージを送信するのに対し、
刊行物1記載の発明では、携帯通信装置は一つであって、呼出先の携帯通信装置の識別コードを受信し、その識別信号を持つ携帯通信装置宛てに第1のメッセージを送信する構成を備えていない点。

(ウ)第2の中継手段が、
本願発明では、第2のメッセージと同時に送信されて来た送信先の任意の電話機の送信先コードを受信した後、前記送信先コードを持つ電話機との間の通話回線を通じて第2のメッセージを転送するのに対し、
刊行物1記載の発明では、第2のメッセージと送信先コードが同時に送信されていない点。

(2)判断
上記相違点(ア)については、刊行物3には、
電話機Aから交換機18を介して電話機Bに、電話機Bの電話番号と文字を転送して電話機Bの受信文字表示部10に表示し、また、電話機Bから電話機Aへ文字を転送する場合も同じ要領で転送する文字転送電話システムの発明が記載され、一般電話回線を介して文字情報の送受信が可能な電話機は、この出願の時点では、公知技術であると認められ、

また、この出願の時点では、文字情報の表示及び送受信が可能な電話機は、例えば、特開昭61-78298号公報、特開平1-109863号公報等にも記載されていて周知技術であり、

更に、この出願の時点では、文字情報の送受信が可能な携帯通信装置は、例えば、特開昭51-65502号公報、特開平5-56183号公報、特開平5-130255号公報等にも記載されていて周知技術であるから、

刊行物3記載の発明、あるいは、上記周知技術を参照すると、
刊行物1記載の発明の、第2の変復調部及びパソコン/ホストに代えて、一般電話回線を介して文字情報の送受信が可能な電話機に変更し、携帯端末装置と電話機との間で文字情報の送受信をするようにすることは、当業者が容易に想到することができたものである。

上記の相違点(イ)については、
刊行物1記載の発明では、携帯通信装置は一つであって、複数の携帯通信装置を備え、呼出先の携帯通信装置の識別コードを受信し、その識別信号を持つ携帯通信装置宛てに第1のメッセージを送信する構成を備えていないが、
一般に、電話機から複数個の携帯通信装置を呼び出すようにシステムを構成し、呼出先の携帯通信装置を識別コードにより特定することは、周知技術であると認められる。

また、例えば、刊行物2には、
電話機8からメッセージ情報が、複数のページング子機の一つであるページング子機1aに送信される際には、電話機でダイヤルされたページング子機1aのページング番号が交換機7を通してページングエンコーダ装置5へ入力され、エンコードされたページング信号はページング親機の送信部、アンテナより電波となって送信され、該当するページング子機1aが呼出され、ページング子機1aでは、受信された無線信号が復調され、自己のページング番号と照合され、一致した場合は、ページング番号に引き続くメッセージ情報をLCD表示器16に表示する通信システムの発明が開示されており、

刊行物2記載の発明、あるいは、上記周知技術を参照すると、
刊行物1記載の発明において、通信装置から送信されて来た、文字情報である第1のメッセージと呼出先の携帯通信装置の識別コードとを受信して、前記識別コードを持つ携帯通信装置宛に前記通信装置から受信した第1のメッセージを送信することは、当業者が容易に想到することができたものである。

そして、上記の相違点(ア)について述べたように、
刊行物1記載の発明の、第2の変復調部及びパソコン/ホストに代えて、一般電話回線を介して文字情報の送受信が可能な電話機に変更し、携帯端末装置と電話機との間で文字情報の送受信をするようにすることは、当業者が容易に想到することができたものであるから、

刊行物1記載の発明において、有線電話線に接続されたパソコン/ホストを、一般電話回線を介して文字情報の送受信が可能な電話機に変更し、電話機から送信されて来た、文字情報である第1のメッセージと呼出先の携帯通信装置の識別コードとを受信して、前記識別コードを持つ携帯通信装置宛に前記電話機から受信した第1のメッセージを送信することは、当業者が容易に想到することができたものである。

また、上記相違点(ウ)については、
刊行物1の発明においては、
可搬型パソコン1から、文字等のディジタルデータと、この文字等のディジタルデータが送信され、
この情報が、固定型無線装置6及び有線電話網交換機2からなる中継手段によって受信され、
有線電話網交換機2が、対向通信先の第一のパソコン/ホスト3-1〜第nのパソコン/ホスト3-nを選択して、有線電話線4を通じて、所定通信先の通信装置(パソコン/ホスト)に向けて、文字等のディジタルデータを転送する構成を備えており、

有線電話網交換機2が、対向通信先の第一のパソコン/ホスト3-1〜第nのパソコン/ホスト3-nを選択する場合には、対向通信先を特定する電話番号等の情報が必要であるから、

刊行物1記載の発明において、有線電話網交換機2が、対向通信先の第一のパソコン/ホスト3-1〜第nのパソコン/ホスト3-nを選択する場合には、選択よりも前に、対向通信先を特定する電話番号等の相手先コード等の情報を送信しておくこと、
即ち、第一のパソコンから、文字等のディジタルデータと所定通信先の通信装置を特定する電話番号等の情報とを受信した後、有線電話網交換機2により、その所定通信先の通信装置にデータを転送するようにすることは、当業者が容易に想到することができたものである。

また、上記の相違点(ウ)のうち、携帯通信装置から、第2のメッセージと送信先コードとが同時に送信されて、第2の中継手段により受信される点については、
例えば、刊行物2には、
ページング子機1bからページング子機1aを呼出したい時は、自分のページング番号、相手先のページング番号及びメッセージ情報(これらをまとめて呼出要求信号と呼ぶ)を電波にのせて送出し、この呼出要求信号はページング親機のアンテナ、受信部によって受信される通信システムの発明が記載されており、
携帯端末装置から、相手先の番号及びメッセージ情報(まとめて呼出要求信号)を電波にのせて送出し、この呼出要求信号が中継手段により受信される構成が開示されており、

また、原審で通知した拒絶理由において引用した特開平3-140024号公報には、システムID、発呼局ID、被呼局IDで構成されるID番号が各無線送信信号に付加され、呼出先のIDがメッセージ信号に付加されて無線信号として送信されることが開示されており、

また、例えば、特開平2-107027号公報にも、携帯用トランシーバ等の小型の無線装置において、データをパケット化して送信する際に、パケットに、データ領域とともに、発信局を識別するソース領域と着信局を指定するディスティネーション領域を備えることが記載され、着信局とメッセージを同時にパケットとして送信することが開示されており、

これらの記載からみて、本願の出願の時点において、通信システムにおいて、携帯通信装置から、メッセージと送信先コードを同時に無線信号により送信して、中継手段で受信することは周知技術であると認められるから、

刊行物2記載の発明あるいはこれらの周知技術を参照すれば、
刊行物1記載の発明において、文字等のディジタルデータを送信する所定通信先のパソコン/ホストの電話番号等の送信先コードを、文字等のディジタルデータと、同時に、可搬型無線電話機5から、送信するように変更することも、当業者が容易に想到することができたものである。

そして、上記の相違点(ア)について述べたように、
刊行物1記載の発明の、第2の変復調部及びパソコン/ホストに代えて、一般電話回線を介して文字情報の送受信が可能な電話機に変更し、携帯端末装置と電話機との間で文字情報の送受信をするようにすることは、当業者が容易に想到することができたものであるから、

刊行物1記載の発明の第2の変復調部及びパソコン/ホストに代えて、文字情報の送受信が可能な電話機を通信の相手先とし、
携帯通信装置からメッセージと電話機の送信先コードを同時に送信し、これらを中継手段が受信するように変更することは、当業者が容易に想到することができたものである。

以上のように、本願発明は、刊行物1乃至刊行物3記載の発明並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

4.むすび
したがって、本願発明は、上記刊行物記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-03-03 
結審通知日 2003-03-11 
審決日 2003-03-28 
出願番号 特願平5-226343
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊東 和重深沢 正志  
特許庁審判長 西川 正俊
特許庁審判官 吉見 信明
大橋 隆夫
発明の名称 通信システム及び通信方法  

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