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審決分類 |
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない B32B |
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管理番号 | 1077308 |
審判番号 | 訂正2002-39112 |
総通号数 | 43 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1987-06-02 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2002-05-02 |
確定日 | 2003-05-19 |
事件の表示 | 特許第2926403号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 特許第2926403号(昭和61年11月17日〔パリ条約による優先権主張1985年11月18日 米国〕特許出願、平成11年5月14日設定登録)に関する本件審判請求の要旨は、明細書を、請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。 訂正明細書の請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載される次の事項により特定されるとおりのものである。 「(i)実質的にレンズの単層をキャリヤーウェブへ部分的に埋め、 (ii)前記キャリヤーウェブのレンズを有する表面の上に鏡面状反射性材料を付着させて、前記レンズ上及びレンズ間のキャリヤーウェブの表面上に鏡面状反射性材料を設け、 (iii)熱と圧力をかけて、HMW熱可塑性結合剤フィルムを、レンズ間の前記キャリヤーウェブの表面上にある鏡面状反射性付着物のどの部分とも接触させないようにしながら、レンズ上にある鏡面状反射性付着物の部分に接触させ、 (iv)キャリヤーウェブを剥がし、 (v)露出したレンズ上に覆いフィルムを置き、そして (vi)網目状結合部線に沿って熱と圧力をかけ、結合剤材料を軟化して変形し、覆いフィルムと接触させ、このようにして気密に密封したセルを形成し、それらのセル中にレンズが包まれ、且つ空気と接するようにする諸工程を含む包まれたレンズ型逆行反射性シートの製造方法。(以下、「訂正発明1」という。)」 2 これに対して、訂正拒絶の理由に引用された特開昭57-189839号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載がある。 イ、「高輝度反射シート用オープンタイプ再帰反射シートは、」(第1頁右欄第5〜6行) ロ、「第1図に製造されたオープンタイプ反射シート(0)の断面を示す。このシートはポリエチレンテレフタレートフィルム(4)上の基体樹脂(3)にアルミニウム(2)を蒸着された半球面で転写定植されたガラスビーズ(1)を備えて成つている。このガラスビーズは屈折率1.90〜1.93直径30〜120μである。まず第2図の例えば120μのクラフト紙(6)に30μのポリエチレン(5)を積層したポリエチレンラミネートクラフト紙(56)を、温度むらを生じない様に100℃の完全保温室中でクラフト紙側からロールに巻き付ける。このロール温度を140℃前後になるように加熱して100℃前後に加熱されているガラスビーズを撒布する。この時ビーズ分布が最密充填になるようにする。140℃の保温炉中でこのビーズ(1)をポリエチレンラミネートクラフト紙のポリエチレン層に付着させる。そして第3図に示すようにこのガラスビーズ表面側から真空蒸着によりアルミニウム(2)を被着させておく。」(第2頁左下欄第7行〜右下欄第4行) ハ、「この一方で熱安定性の良いフィルムに乾燥膜厚100μとなる様にガラスビーズとの密着性のよい基体樹脂を塗工する。例えば、フィルムは厚さ50μのポリエチレンテレフタレートで良く、基体樹脂は東亜合成のアロンS-1006加熱残分50部、ルチル型酸化チタン50部、DOP7部、エチルセロソルブ20部、粘度調整にはトルエンを使用して混合したもので良い。塗工後50℃に5分間半乾燥し、第4図に示すように前記ガラスビーズ付着ポリエチレンラミネートクラフト紙(56)のガラスビーズ(1)の表面にポリエチレンテレフタレートフィルム(4)を背方におき、この基体樹脂(3)を対向配置させる。両者は100℃、ニップ圧2kg/cm2の加熱ロールにより第5図に示すように一体に貼り合される。」(第2頁右下欄第5〜19行) ニ、「このあとポリエチレンラミネートクラフトを剥離すればガラスビーズ(1)はポリエチレンテレフタレートフィルム(4)上の基体樹脂(3)に転写されて第1図製品となるのである。この発明はこの剥離工程を確実にさせることに係るものであって、ポリエチレンラミネートクラフト紙の紙質が湿潤になると膨張する点に着目してなされている。ポリエチレンにガラスビーズが良く埋没されている場合でも紙質が膨張するとポリエチレンのビーズ界面が押し広げられ、ガラスビーズ転写を容易にする。この効果は紙質を高湿潤状態におくことにより高められる。・・・剥離終了後ガラスビーズを転写定植させた基体樹脂を80℃10分間でキュアさせる。」(第2頁右下欄末行〜第3頁左下欄第2行) ホ、「このオープンタイプ再帰反射シートを全天候型にする場合には表面フィルムのアクリルフィルムとエンボスロールを用い、空気層が得られる様に加熱して部分接着させると良い。このようにすると第1図(4)のポリエチレンテレフタレートフィルムは容易にとり除かれ、接着剤を適用して使用に供することが出来る。」(第3頁左下欄第2〜9行) ヘ、「このようなこの発明の方法によると、安価に得られるポリエチレンラミネート紙を利用し、ガラスビーズの仮植を良好にし、シート用基体樹脂にビーズの100%転写定植させ、基体樹脂での埋没度を任意に制御出来る。又基体樹脂は、ポリエチレンテレフタレートフィルムに直接塗工され、半乾燥された後に、ガラスビーズ付着ポリエチレンラミネート紙に加熱貼着されるため、この貼着に際して感圧型接着剤を用いる必要がなく安定に貼着される。」(第3頁左下欄第10〜19行) 3 そこで、訂正発明1と、引用例1に記載された発明とを対比する。 上記ロ、の「ビーズ(1)(訂正発明1の「レンズ」に相当する。)をポリエチレンラミネートクラフト紙(訂正発明1の「キャリヤーウェブ」に相当する。)のポリエチレン層に付着させる。」との記載及び図面第2図のビーズ(1)がポリエチレン層(5)に部分的に埋まっている様子からみて、訂正発明1の「(i)実質的にレンズの単層をキャリヤーウェブへ部分的に埋め、」が開示されている。 上記ロ、の「このガラスビーズ表面側から真空蒸着によりアルミニウム(2)(訂正発明1の「鏡面状反射性材料ないし鏡面状反射性付着物」に相当する。)を被着させておく。」との記載からみて、ガラスビーズは通常球状であり、第3図乃至第4図(断面図)を上から見た場合(平面図)を想定すると、ポリエチレン層に付着したガラスビーズ間には空隙が出来る。 例えば、テーブルの上に、多数の同型のボールを密に置いた場合、各ボール間に空隙ができることを想像すれば、その状況が容易に理解できる。 その状況で、アルミニウムが落下するのであるから、アルミニウムの一部は、ガラスビーズの上に蒸着し、残りは、上記の空隙を通ってポリエチレン層に蒸着するのは、技術的にみて自明のことであるから、訂正発明1の「(ii)前記キャリヤーウェブのレンズを有する表面の上に鏡面状反射性材料を付着させて、前記レンズ上及びレンズ間のキャリヤーウェブの表面上に鏡面状反射性材料を設け」が開示されている。 上記ハ、の「フィルムは厚さ50μのポリエチレンテレフタレートで良く、基体樹脂は東亜合成のアロンS-1006加熱残分50部、ルチル型酸化チタン50部、DOP7部、エチルセロソルブ20部、粘度調整にはトルエンを使用して混合したもので良い。」及び「ガラスビーズ(1)の表面にポリエチレンテレフタレートフィルム(4)を背方におき、この基体樹脂(3)を対向配置させる。両者は100℃、ニップ圧2kg/cm2の加熱ロールにより第5図に示すように一体に貼り合される。」との記載、さらには、図面第4図において、基体樹脂(3)とアルミニウム(2)とが接触しておらず、図面第5図において、基体樹脂(3)とアルミニウム(2)とが接触し、基体樹脂(3)とポリエチレン(5)とが接触していない様子からみて、訂正発明1の「(iii)熱と圧力をかけて、フィルムを、レンズ間の前記キャリヤーウェブの表面上にある鏡面状反射性付着物のどの部分とも接触させないようにしながら、レンズ上にある鏡面状反射性付着物の部分に接触させ、」が開示されている。 上記ニ、の「このあとポリエチレンラミネートクラフトを剥離すれば」との記載からみて、訂正発明1の「(iv)キャリヤーウェブを剥がし、」が開示されている。 上記ホ、の「このオープンタイプ再帰反射シートを全天候型にする場合には表面フィルムのアクリルフィルム(訂正発明1の「覆いフィルム」に相当する。)とエンボスロールを用い、空気層が得られる様に加熱して部分接着させると良い。」との記載からみて、訂正発明1の「(v)露出したレンズ上に覆いフィルムを置き、」及び「(vi)結合部線に沿って熱と圧力をかけ、結合剤材料を軟化して変形し、覆いフィルムと接触させ、このようにして気密に密封したセルを形成し、それらのセル中にレンズが包まれ、且つ空気と接するようにする」が開示されている。 してみると、引用例1には、 (i)実質的にビーズ(1)の単層をポリエチレンラミネートクラフト紙へ部分的に埋め、 (ii)前記ポリエチレンラミネートクラフト紙のビーズ(1)を有する表面の上にアルミニウム(2)を付着させて、前記ビーズ(1)上及びビーズ(1)間のポリエチレンラミネートクラフト紙の表面上にアルミニウム(2)を設け、 (iii)熱と圧力をかけて、フィルムを、ビーズ(1)間の前記ポリエチレンラミネートクラフト紙の表面上にあるアルミニウム(2)のどの部分とも接触させないようにしながら、ビーズ(1)上にあるアルミニウム(2)の部分に接触させ、 (iv)ポリエチレンラミネートクラフト紙を剥がし、 (v)露出したビーズ(1)上に表面フィルムのアクリルフィルムを置き、そして (vi)結合部線に沿って熱と圧力をかけ、結合剤材料を軟化して変形し、表面フィルムのアクリルフィルムと接触させ、このようにして気密に密封したセルを形成し、それらのセル中にビーズ(1)が包まれ、且つ空気と接するようにする諸工程を含む包まれたビーズ(1)型逆行反射性シートの製造方法が開示されている。 訂正発明1の「レンズ」、「キャリヤーウェブ」、「鏡面状反射性材料ないし鏡面状反射性付着物」、「覆いフィルム」は、それぞれ引用例1に記載された発明の「ビーズ(1)」、「ポリエチレンラミネートクラフト紙」、「アルミニウム(2)」、「表面フィルムのアクリルフィルム」に相当するから、両者は、 (i)実質的にレンズの単層をキャリヤーウェブへ部分的に埋め、 (ii)前記キャリヤーウェブのレンズを有する表面の上に鏡面状反射性材料を付着させて、前記レンズ上及びレンズ間のキャリヤーウェブの表面上に鏡面状反射性材料を設け、 (iii)熱と圧力をかけて、フィルムを、レンズ間の前記キャリヤーウェブの表面上にある鏡面状反射性付着物のどの部分とも接触させないようにしながら、レンズ上にある鏡面状反射性付着物の部分に接触させ、 (iv)キャリヤーウェブを剥がし、 (v)露出したレンズ上に覆いフィルムを置き、そして (vi)結合部線に沿って熱と圧力をかけ、結合剤材料を軟化して変形し、覆いフィルムと接触させ、このようにして気密に密封したセルを形成し、それらのセル中にレンズが包まれ、且つ空気と接するようにする諸工程を含む包まれたレンズ型逆行反射性シートの製造方法で一致し、 A訂正発明1は、HMW熱可塑性結合剤フィルムであるのに対して、引用例1に記載の発明は、フィルムは厚さ50μのポリエチレンテレフタレートで良く、基体樹脂は東亜合成のアロンS-1006加熱残分50部、ルチル型酸化チタン50部、DOP7部、エチルセロソルプ20部、粘度調整にはトルエンを使用して混合したものである点、B訂正発明1は、網目状結合部であるのに対して、引用例1に記載の発明は、エンボスロールを用い、部分接着させる点で一応相違する。 そこで、先ず、上記相違点Aについて検討すると、引用例1の「アロンS-1006」は、特開昭60-67902号公報に「ポリメチルメタクリレート(東亜合成社製商品名:アロンSー1006)」との記載があり、一般成型用のポリメチルメタクリレートの平均分子量が6万以上であることは、従来周知(必要なら、中部経営開発センター出版部企画編集『アクリル樹脂の合成・設計と新用途開発』、昭和60年7月1日発行、259〜266頁>を参照。)であり、一般成型用のポリメチルメタクリレートの溶融指数が750未満であることも従来周知(必要なら、『plastics age10』昭和54年10月1日、株式会社プラスチックエージ発行、77〜80頁を参照。)である。 また、異議2000-70322事件で提出された、ニッカポリマ 株式会社研究開発部部長 田中 修の平成12年1月24日付測定実施報告書及びニッカポリマ 株式会社技術部部長 越智 桂の平成6年2月8日付測定報告書の記載からみて、「アロンSー1006」の重量平均分子量が6万以上で、メルトインデックスが750未満であることが認められる。 それゆえ、引用例1の「アロンS-1006基体樹脂」は、訂正発明1の、「HMW熱可塑性結合剤フィルム」に相当する。 次に、上記相違点Bについて検討すると、引用例1に記載の発明において、エンボスロールを用い、部分接着させると、その部分接着部が網目状結合部となることは、技術常識(必要なら、特開昭60-67902号公報のハニカム状の凹凸部を付与したエンボスロールにより形成される線接触部26、特公昭40-7870号公報(米国特許第3190178号明細書および図面)のダイス要素19によって形成される格子線10、特開昭60-194405号公報の平面網目状に連続する連結壁6を参照されたい。)であり、実質的な差異は見いだせない。 4 以上のとおりであるから、訂正明細書の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 5 したがって、本件審判請求は、平成六年法改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-12-13 |
結審通知日 | 2002-12-18 |
審決日 | 2003-01-07 |
出願番号 | 特願昭61-273816 |
審決分類 |
P
1
41・
856-
Z
(B32B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小林 正巳、山村 浩 |
特許庁審判長 |
高橋 美実 |
特許庁審判官 |
末政 清滋 辻 徹二 森 正幸 北川 清伸 |
登録日 | 1999-05-14 |
登録番号 | 特許第2926403号(P2926403) |
発明の名称 | 包まれたレンズ型逆行反射性シ-ト |
代理人 | 小林 純子 |
代理人 | 片山 英二 |