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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21C
管理番号 1077315
審判番号 不服2001-7532  
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-07-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-05-08 
確定日 2003-05-19 
事件の表示 平成4年特許願第166939号「ドラム式牽引機の引き抜き速度を自動的に低下させるための方法」拒絶査定に対する審判事件[平成5年7月20日出願公開、特開平5-177247]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成4年6月2日(パリ条約による優先権主張1991年6月12日、ドイツ)の出願であって、その請求項1ないし2に係る発明は、平成13年6月7日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】ある1つの回の引き抜き加工で引き抜き工具を通って引き抜き加工されると、ドラムの下に回転可能に配置されている収容駕籠の中に収集され、それぞれの収容駕籠は1つの引き抜き加工が終了する毎に巻戻しステーションへ搬送され、この収容駕籠が今度は巻戻し駕籠となって同様の動作で次の回の引き抜き加工が開始される、管のためのドラム式牽引機の引き抜き速度を引き抜き加工の終了前に低下させる方法において、
ドラムの下に配置されている収容駕籠の回転数が引き抜き加工開始から管終端まで計数されて記録され、管の次の回の引き抜き加工の際に、巻戻しテーブルの上のこの駕籠を、記録された回転数からある設定可能な所定の回転数を減算した回転数だけ引き抜き速度から低速度への切換えまで回転させ、上記所定の回転数の回転の間に切換え時の引き抜き速度から低速度まで速度を低下させることを特徴とする管のためのドラム式牽引機の引き抜き速度を引き抜き加工の終了前に低下させる方法。」(以下、「本願発明1」という。)
「【請求項2】第1回の引き抜き加工では、前処理を終えて供給されてくるコイルの巻き数が制御装置に入力されることを特徴とする請求項1に記載の管のためのドラム式牽引機の引き抜き速度を引き抜き加工の終了前に低下させる方法。」(以下、「本願発明2」という。)

2.原査定の概要
原査定の拒絶理由の概要は、本願請求項1ないし2に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された刊行物である特開昭61-52931号公報(以下、「引用例1」という。)及び特開昭63-16811号公報(以下、「引用例2」という。)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.引用例記載の発明
原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願日前に頒布された引用例1には次の事項が記載されている。
(1-a)「巻取抽伸装置において、抽伸中にレシービングテーブルのモータ軸の回転数から抽伸後の被抽伸材の巻数Nを積算、記憶させておき、当該被抽伸材を再抽伸する際、抽伸中に巻取ドラム速度及びペイオフテーブル速度から、減速指令の信号を発すべき、抽伸終端までの巻数nを演算させ、再抽伸中、ペイオフテーブルのモータ軸の回転数から巻数を刻々減算させて行き、カウンター部がN-nを演算すると同時に巻取ドラムの駆動モータへ減速指令信号を発するようにしたことを特徴とする巻取抽伸装置の減速指令方法。」(特許請求の範囲)
(1-b)「一般の巻取抽伸機ではペイオフテーブル上のバスケット内に納められた被抽伸材は、抽伸ダイスを通して巻取ることにより抽伸加工されるが、抽伸終了前に減速しないで巻取られた場合、抽伸終端が抽伸ダイスを通過する際に装置及び抽伸材が強い衝撃を受け、装置の故障及び抽伸材の損傷の原因になる。
これらの対策として、これまでは作業者がペイオフテーブル上のバスケット内の被抽伸材の巻数を目測し、被抽伸材終端が近づいたら減速指令スイッチを入れる方法がとられてきたが、この方法は作業者がペイオフバスケット内の被抽伸材を監視せざるを得ないため、作業者への負担が大きい。最近では自動的に減速指令を出す方法が提案されている(特公昭58-6569号公報)。」(第1頁右欄第1〜15行)
(1-c)「また、第3図に示すように巻取ドラム速度(VB)、ペイオフ速度(VP)によって、減速指令開始(イ)から減速終了(ロ)までの長さ(巻き数:n)が変わるため、巻取速度を変える毎に減速指令開始(イ)から減速終了(ロ)までの長さ(巻数:n)をカウンター部にインプットしなければならない。」(第1頁右欄第20行〜第2頁左上欄第5行)
(1-d)「本願発明の目的は、前記した従来技術の欠点を解消し、第1回の抽伸において被抽伸材の種類(長さ)を切替スイッチで選定するだけで、以後は最終回目の抽伸まで全自動で速度指令を出せる方式を提供することにある。」(第2頁左上欄第7〜11行)
(1-e)「巻取抽伸装置の概要は、第1図及び第2図に示すように、ペイオフテーブル1上のバスケット21内の被抽伸材Aは、抽伸ダイス3を通して巻取ドラム4に巻取られる。巻取られた被抽伸材Aはレシービングテーブル5上のバスケット22に落下し収容される。更に当該バスケット22は再抽伸を行うために、第2図に示すように回送され、再びペイオフテーブル1上に至るように構成されている。」(第2頁右上欄第6〜14行)
(1-f)「巻数nの設定は、第3図に示すように、実測によって求められたドラム速度の減速傾き(b)とドラム速度(VB)との関係から減速時間(T)を求め、減速時間(T)とペイオフ速度(VP)との関係から抽伸終端までの巻数(n)が演算される。」(第2頁左下欄第7〜12行)
(1-g)「本願発明は、・・・第1回目の抽伸に際して被抽伸材の長さ別の種類を切替スイッチで選定すれば、以降は最終回目の抽伸まで減速に関しての操作は全くなくなり、作業者の疲労が軽減され、抽伸サイクルタイムが短縮され、装置の稼働率が向上する等の利点がある。」(第2頁右下欄第19行〜第3頁第8行)
原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願日前に頒布された引用例2には次の事項が記載されている。
(2-a)「この発明は、長尺物、特に金属管を延伸する設備において、延伸された金属管を収納するテーブルの速度調整を自動的に行う、長尺物延伸設備の速度制御装置に関するものである。
〔従来の技術〕
第4図は金属管延伸設備の概要を示す構成図であり、図において、1は延伸される前の長尺物としての材料を入れた供給テーブル、2はテーブル駆動用電動機、3は延伸後の金属管の寸法を決定するダイス、4は金属管を延伸するドラム、5はドラム駆動用電動機、6は延伸された金属管を収納する収納テーブル、7は収納テーブル駆動用電動機、8a〜8cは減速機である。
次に金属管延伸設備の運転動作について説明する。供給テーブル1を回転させて材料を払い出し、この材料ダイス3、ドラム4によって引き抜き延伸し、収納テーブル6を回転させながら延伸された材料を該収納テーブルに収納する。
次にこの収納テーブル6は同一もしくは別の金属管延伸設備において、第1図に示す延伸される前の材料を入れた供給テーブルとして使用され、上記延伸された材料は再び延伸される。この順序にて、数回の延伸作業を繰り返すことによって、材料は所定寸法に延伸される。」(第1頁左欄第16行〜第1頁右欄第19行)

4.当審の判断
本願発明1と引用例1記載の発明とを対比する。
引用例1についての摘記事項(1-b)及び(1-g)における「抽伸」とは、本願発明1における「引き抜き」に他ならないため、該摘記事項によれば、引用例1記載の発明は、本願発明1と同じ「簡単な方法で少なくとも第2回の引き抜き加工からは、管終端を適切な時点で検出するために引き抜き加工を監視する仕事から操作員を解放する」(本願明細書【0012】)という技術課題を解決するための発明である。
摘記事項(1-e)の「巻取抽伸装置の概要は、第1図及び第2図に示すように、ペイオフテーブル1上のバスケット21内の被抽伸材Aは、抽伸ダイス3を通して巻取ドラム4に巻取られる。巻取られた被抽伸材Aはレシービングテーブル5上のバスケット22に落下し収容される。更に当該バスケット22は再抽伸を行うために、第2図に示すように回送され、再びペイオフテーブル1上に至るように構成されている。」ことにおいて、「ペイオフテーブル1上のバスケット21」、「レシービングテーブル5上のバスケット22」及び「抽伸ダイス3」は、各々本願発明1の「巻戻し駕籠」、「収容駕籠」及び「引き抜き工具」に相当しているから、上記摘記事項(1-e)は、本願発明1における「引き抜き工具を通って引き抜き加工されると、ドラムの下に回転可能に配置されている収容駕籠の中に収集され、それぞれの収容駕籠は1つの引き抜き加工が終了する毎に巻戻しステーションへ搬送され、この収容駕籠が今度は巻戻し駕籠となって同様の動作で次の回の引き抜き加工が開始される」と同等の作動を示している。
さらに、引用例1記載の発明における「抽伸中にレシービングテーブルのモータ軸の回転数から抽伸後の被抽伸材の巻数Nを積算、記憶させて」おくことは、本願発明1の「収容駕籠の回転数が引き抜き加工開始から終端まで計数されて記録され」ることに、また、引用例1記載の発明における「ペイオフテーブルのモータ軸の回転数から巻数を刻々減算させて行き、カウンター部がN-nを演算すると同時に巻取ドラムの駆動モータへ減速指令信号を発する」ことにおける巻数nは、減速指令の信号を発すべき抽伸終端までの巻数であることから、本願発明1における、記録された回転数から減算する回転数に、各々対応していることは明らかである。
してみると、本願発明1と引用例1記載の発明とは、「ある1つの回の引き抜き加工で引き抜き工具を通って引き抜き加工されると、ドラムの下に回転可能に配置されている収容駕籠の中に収集され、それぞれの収容駕籠は1つの引き抜き加工が終了する毎に巻戻しステーションへ搬送され、この収容駕籠が今度は巻戻し駕籠となって同様の動作で次の回の引き抜き加工が開始される、ドラム式牽引機の引き抜き速度を引き抜き加工の終了前に低下させる方法において、ドラムの下に配置されている収容駕籠の回転数が引き抜き加工開始から終端まで計数されて記録され、次の回の引き抜き加工の際に、巻戻しテーブルの上のこの駕籠を、記録された回転数からある回転数を減算した回転数だけ引き抜き速度から低速度への切換えまで回転させ、上記ある回転数の回転の間に切換え時の引き抜き速度から低速度まで速度を低下させるドラム式牽引機の引き抜き速度を引き抜き加工の終了前に低下させる方法」で一致し、(1)本願発明1では、記録された回転数から減算する回転数が「設定可能な所定の回転数」であるのに対し、引用例1記載の発明では巻取ドラム速度及びペイオフテーブル速度から、減速指令の信号を発すべき抽伸終端までの巻数(n)を演算したものである点、(2)本願発明1では、引き抜き加工される対象物が「管」であるのに対し、引用例1記載の発明では「抽伸材」と記載されているのみで具体的形状に言及していない点で相違している。

上記相違点(1)及び(2)について検討する。
相違点(1)について
引用例1記載の発明では、巻数n、すなわち、記録された回転数から減算する回転数を、摘記事項(1-f)に記載されているように、実測によって求められたドラム速度の減速傾き(b)とドラム速度(VB)との関係から減速時間(T)を求め、減速時間(T)とペイオフ速度(VP)との関係からの演算で求めているのに対し、本願発明1では、当該回転数を、本願明細書【0016】欄に「ドラム式牽引機の駆動装置を低速に切換えることを実現するために、記録された駕籠回転数から「ある設定可能な所定の回転数」例えば5回転数だけ減算され、これにより管終端の前の5回転のドラム式牽引機の速度を必要な程度切換えることができる。」と記載されているように、当業者が適宜設定した値としている。したがって、引用例1記載の発明における諸条件を考慮して演算で求めた巻数nは、本願発明1において適宜設定した「ある設定可能な所定の回転数」の下位概念に相当し、引用例1記載の発明における巻数n、すなわち、記録された回転数から減算する回転数が、本願発明1における「ある設定可能な所定の回転数」となっていることは明らかである。よって、相違点(1)については実質的な相違点とは認められない。

相違点(2)について
引用例2についての摘記事項(2-a)には長尺物の延伸設備が記載されており、これは本願発明1における「ドラム式牽引機」に相当する。摘記事項(2-a)には、長尺物として特に「管」材であることも記載されている。したがって、ドラム式牽引機の対象物として「管」材は本出願前公知のことであり、引用例1においては「抽伸材」と記載されているのみで、その具体的形状については言及されていないものの、抽伸材として「管」材も適用できることは当業者におて容易に予期し得ることである。
また、本願発明1における「簡単な方法で少なくとも第2回の引き抜き加工からは、管終端を適切な時点で検出するために引き抜き加工を監視する仕事から操作員を解放する」という効果も、他の抽伸材における効果と何ら変わものではなく、「管」材に適用したがための格別顕著な効果は認められない。
したがって、本願発明1は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

本願発明2と引用例1記載の発明とを対比する。
本願発明2は、本願発明1の構成に「第1回の引き抜き加工では、前処理を終えて供給されてくるコイルの巻き数が制御装置に入力される」との構成を追加した発明である。引用例1についての摘記事項(1-d)には「第1回の抽伸において被抽伸材の種類(長さ)を切替スイッチで選定する」と記載されており、第1回の抽伸は第1回の引き抜き加工のことであり、摘記事項(1-c)より、被抽伸材の長さはコイルの巻き数に相当している。してみれば、上記「第1回の抽伸において被抽伸材の種類(長さ)を切替スイッチで選定する」ことは、第1回の引き抜き加工で、コイルの巻き数を制御装置に入力していることと実質的に同等である。また、引用例1においても引き抜き加工される抽伸材が、潤滑性等のため適宜前処理されていることも自明のことである。
したがって、本願発明2についても、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
したがって、請求項1ないし2に係る発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-12-13 
結審通知日 2002-12-17 
審決日 2003-01-07 
出願番号 特願平4-166939
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B21C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 正紀日比野 隆治鈴木 毅富永 泰規  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 伊藤 明
三崎 仁
発明の名称 ドラム式牽引機の引き抜き速度を自動的に低下させるための方法  
代理人 奥山 尚男  

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