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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1077348
審判番号 不服2000-3837  
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1987-11-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-03-21 
確定日 2003-05-22 
事件の表示 昭和62年特許願第 96102号「テレビジヨン偏向装置」拒絶査定に対する審判事件[昭和62年11月 6日出願公開、特開昭62-254573]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 本件発明
本願は、昭和62年4月17日の出願(パリ条約による優先権主張1986年4月18日、イギリス国、同じく1986年12月18日、アメリカ合衆国)であって、その発明(以下「本件発明」という。)は、補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次に掲げるとおりのものである。
「垂直同期入力信号の信号源と、
垂直偏向巻線に上記垂直同期入力信号の周波数より高い偏向周波数で垂直偏向電流を発生する垂直偏向回路と、
上記垂直同期入力信号に応答して上記偏向周波数の周波数を有し上記垂直同期入力信号に関して位相変調された垂直制御信号を発生する手段と、
上記位相変調された垂直制御信号に応答して上記位相変調された垂直制御信号に同期した鋸波形を有する第2の信号を発生する鋸波発生器とよりなり、上記第2の信号は所定の偏向サイクルにおいて第1の方向に変化するトレース部分と上記第1の方向と実質的に逆の方向に変化するリトレース部分とを有し、上記垂直偏向回路は上記第2の信号に応答して上記垂直偏向巻線に鋸波形状の上記垂直偏向電流を発生し、
上記垂直偏向電流はトレース期間中に、上記第2の信号の上記トレース部分に対応するものであって上記位相変調された垂直制御信号に従って位相変調されるトレース部分を有し、上記垂直偏向電流は上記位相変調された垂直制御信号の位相が変化する偏向サイクルの各々において上記位相変調された垂直制御信号と同位相に維持される構成のテレビジョン偏向装置」

第2 刊行物発明
1 刊行物1の発明
これに対して、原審の拒絶理由に引用された、本願の出願の日前の昭和61年1月28日に頒布された実願昭59-95586号(実開昭61-14572号公報)のマイクロフィルムには、次に掲げる(1)ないし(7)の事項からなるテレビジョン受像機(以下「刊行物1の発明」という。)が記載されている。
(1) CCIR方式においては、フィールド周波数は50Hzであり、この周波数ではちらつきを完全に除去できるものではなく、特に輝度の高い画面ではちらつきを感じてしまう。(2頁5行ないし8行)
(2) アンテナ(1)からの信号がチューナ(2)、映像中間周波回路(3)を通じて映像検波回路(4)に供給され、映像信号が検波される。(2頁12行ないし14行)
(3) 分離回路(6)からの垂直同期信号が2逓倍回路(14)に供給されて2倍の周波数の信号とされ、この信号が位相補正回路(15)に供給される。さらに分離回路(6)からの水平垂直の同期信号がタイミング発生回路(16)に供給されて後述する所定のタイミングの信号が発生される。この信号が位相補正回路(15)に供給され、補正された信号が垂直出力回路(17)を通じて偏向コイル(13)に供給される。(3頁11行ないし18行)
(4) フィールド周波数が2倍にされているので、例えばCCIR方式においても100Hzとなり面フリッカの発生が全く無くなる。(6頁17行ないし19行)
(5) 垂直出力回路(17)は、例えば第3図に示すように構成されている。同図において、端子(18)には位相補正回路(15)で位相補正された信号(第4図Aに図示)が垂直同期信号として供給され、この信号は鋸歯状波発生器(19)に供給され、これよりそのピークレベル(始点レベル)が一定である鋸歯状波信号S1(第4図Bに図示)が得られる。この信号S1(第4図Bに図示)作動増幅器(20)の非反転入力端子に供給される。また、増幅器(20)の出力は加算器(21)を介して増幅器(22)に供給され、この増幅器(22)の出力側は垂直偏向コイル(13V)、コンデンサ(23)及び抵抗器(24)を介して接地され、偏向コイル(13V)に垂直偏向信号S2が流される。(7頁9行ないし8頁1行)
(6) このように垂直出力回路(17)が構成されているものにおいては、DC変動防止のためDC帰還をかけており、しかも上述したように各垂直周期が異つているので、垂直偏向電流S2は、第4図Cに示すようにピークレベル(始点レベル)が一定でないものとなる。従って、垂直方向に画像の振動(ジッター)が生じる欠点がある。(8頁10行ないし16行)
(7) 垂直偏向信号の直流レベルがフィールド毎に補正されることで、各フィールドの水平走査位置がインターレース関係を保つようにされるものである。(9頁10行ないし13行)
2 刊行物2の発明
同じく原審の拒絶査定に引用された、本願の出願の日前の昭和54年10月23日に頒布された特公昭54-33807号公報には、次に掲げる(1)ないし(4)の事項からなる垂直偏向回路(以下「刊行物2の発明」という。)が記載されている。
(1) 垂直走査は水平走査に対し、1フィールド毎に異つた位相関係にあるため、垂直帰線期間終了時には、鋸歯状波電圧発生回路中の鋸歯状波電圧形成用充放電容量の両端電圧が1フィールド毎に異なる直流レベルをもつことになり、その結果、垂直の飛越走査がうまく行われなくなるという問題が起こる。(1頁2欄4行ないし10行)
(2) 第1図は本発明の垂直偏光回路を示し、1は垂直発振回路、2は鋸歯状波電圧発生用スイッチングトランジスタであり、(中略)9は本発明の容量値制御回路である。(1頁2欄13行ないし30行)
(3) 帰線期間終了時充放電コンデンサC1の端子電圧が1フィールド毎異る値を持つ場合があり、走査時における充放電コンデンサC1の両端子電圧は1フィールド毎に直流レベルが異り、帰還動作により出力電流の直流レベルの変動を生み、飛越走査を劣化させる。即ち充放電コンデンサの端子電圧の変動は第3図の如くなり、飛越走査は不良となる。同図において、Tsは走査期間、Trは帰線期間、Thは水平走査期間を示す。(2頁3欄32行ないし41行)
(4) 第4図における微小期間(△t)にダイオードD1はON状態となり、第1図の回路は等価的に第5図の回路となり、充放電コンデンサは実質的に上述のコンデンサC1、C2の並列容量で構成され、その容量値は(C1+C2)となり、出力回路側から充放電コンデンサに流入する不所望な水平偏向電流により生ずる電圧は大容量コンデンサにより充分小さくなり、第4図の如く第3図と比較して明らかな如く水平偏向回路の影響を著るしく軽減することができる。(2頁4欄17行ないし27行)

第3 刊行物発明と本件発明との対比・検討
1 刊行物発明と本件発明との対比
そこで、刊行物1の発明における事項と本件発明における事項とを対比すると、次に掲げる(1)ないし(10)の事項がそれぞれ相当ないしは対応する。
(1) 刊行物1の発明における「分離回路(6)」は、映像検波回路(4)で検波された入力映像信号から垂直同期信号を分離する、すなわち、入力垂直同期信号の信号源といえるから、本件発明における「垂直同期入力信号の信号源」に相当する。
(2) 刊行物1の発明における「垂直出力回路(17)」は、垂直偏向コイル(13V)に垂直同期信号の周波数より高い2倍の偏向周波数で垂直偏向信号S2を発生するから、本件発明における「垂直偏向巻線に垂直同期入力信号の周波数より高い偏向周波数で垂直偏向電流を発生する垂直偏向回路」に相当する。
(3) 刊行物1の発明における「2逓倍回路(14)」は、垂直同期信号に応答して垂直同期信号の周波数より高い2倍の周波数を有し垂直同期信号に関した信号を発生する、すなわち、本件発明における「垂直制御信号を発生する」といえるから、本件発明における「垂直同期入力信号に応答して偏向周波数の周波数を有し垂直同期入力信号に関した垂直制御信号を発生する手段」に対応する。
(4) 刊行物1の発明における「鋸歯状波発生器(19)」は、垂直同期信号の2倍の周波数の信号に応答して垂直同期信号の2倍の周波数の信号に同期した鋸波形を有する鋸歯状波信号S1を発生するから、本件発明における「垂直制御信号に応答して垂直制御信号に同期した鋸波形を有する第2の信号を発生する鋸波発生器」に対応する。
(5) 刊行物1の発明における「鋸歯状波信号S1」は、所定の偏向サイクルにおいて第1の方向に変化するトレース部分と第1の方向と実質的に逆の方向に変化するリトレース部分とを有しているから、本件発明における「第2の信号」に対応する。
(6) 刊行物1の発明における「垂直出力回路(17)は鋸歯状波信号S1に応答して垂直偏向コイル(13V)に鋸波形状の垂直偏向信号S2を発生する」から、本件発明における「垂直偏向回路は第2の信号に応答して垂直偏向巻線に鋸波形状の垂直偏向電流を発生し」に対応する。
(7) 刊行物1の発明における「垂直偏向信号S2」は、トレース期間中に、鋸歯状波信号S1のトレース部分に対応するものであって垂直同期信号の2倍の周波数の信号に従ったトレース部分を有するから、本件発明における「垂直偏向電流」に対応する。
(8) 刊行物1の発明における「垂直同期信号の2倍の周波数の信号、鋸歯状波信号S1及び垂直偏向信号S2の所定の偏向サイクル」において、垂直同期信号の2倍の周波数の信号によって垂直方向に画像の振動(ジッター)が生じる(上記第2の1の(6)を参照)から、本件発明における「垂直制御信号の位相が変化する偏向サイクル」に対応する。
(9) 刊行物1の発明における「垂直偏向信号S2」は、所定の偏向サイクルの各々において垂直同期信号の2倍の周波数の信号と同位相にされるから、本件発明における「垂直偏向電流」に対応する。
(10) 刊行物1の発明は「テレビジョン受像機」であり、本件発明は「テレビジョン偏向装置」であるが、刊行物1の発明は、画面でのちらつきを防止し、面フリッカの発生が全く無くなり、各フィールドの水平走査位置がインターレース関係を保つようにされる(上記第2の1の(1)(4)(7)を参照)テレビジョンの偏向装置に係るものであるから、刊行物1の発明の「テレビジョン受像機」は、本件発明の「テレビジョン偏向装置」に対応する。

2 刊行物発明と本件発明との一致点・相違点の検討
上記1の対比から刊行物1の発明と本件発明とは、次に掲げる(1)の点で一致し、次に掲げる(2)の点で相違する。
(1) 一致点
「垂直同期入力信号の信号源と、
垂直偏向巻線に上記垂直同期入力信号の周波数より高い偏向周波数で垂直偏向電流を発生する垂直偏向回路と、
上記垂直同期入力信号に応答して上記偏向周波数の周波数を有し上記垂直同期入力信号に関した垂直制御信号を発生する手段と、
上記垂直制御信号に応答して上記垂直制御信号に同期した鋸波形を有する第2の信号を発生する鋸波発生器とよりなり、上記第2の信号は所定の偏向サイクルにおいて第1の方向に変化するトレース部分と上記第1の方向と実質的に逆の方向に変化するリトレース部分とを有し、上記垂直偏向回路は上記第2の信号に応答して上記垂直偏向巻線に鋸波形状の上記垂直偏向電流を発生し、
上記垂直偏向電流はトレース期間中に、上記第2の信号の上記トレース部分に対応するものであって上記垂直制御信号に従ったトレース部分を有し、上記垂直偏向電流は上記垂直制御信号の位相が変化する偏向サイクルの各々において上記垂直制御信号と同位相にされる構成のテレビジョン偏向装置」
(2) 相違点
ア 上記「垂直制御信号」が、本件発明においては「位相変調された」ものであるのに対して、刊行物1の発明においては「位相変調された」について、特に、明記されていない点
イ 上記「トレース部分」が、本件発明においては「位相変調される」ものであるのに対して、刊行物1の発明においては「位相変調される」について、特に、明記されていない点
ウ 上記「垂直偏向電流は垂直制御信号と同位相にされる構成」の「同位相にされる」が、本件発明においては「同位相に維持される」のに対して、刊行物1の発明においては「維持される」について、特に、明記されていない点

3 相違点についての検討
(1) 相違点アについての検討
刊行物1の発明において、垂直同期信号の2倍の周波数の信号は、各垂直周期が異なり(上記第2の1の(6)を参照)、この信号は位相変調された信号といえるから、刊行物1の発明における「垂直同期信号の2倍の周波数の信号」を「位相変調された垂直同期信号の2倍の周波数の信号」と称することは、適宜表現し得ることである。
したがって、「垂直制御信号」を「位相変調された」とすることは、刊行物1の発明に基いて、当業者が適宜なし得ることである。
(2) 相違点イについての検討
刊行物1の発明における「垂直同期信号の2倍の周波数の信号」の垂直周期が異なると、この信号に同期した鋸歯状波信号S1も垂直周期が異なるから、鋸歯状波信号S1のトレース部分も垂直周期が異なるのは自明である。。
したがって、上記3の(1)で検討したように「垂直同期信号の2倍の周波数の信号」は「位相変調された」信号であり、この「位相変調された」信号に同期した鋸歯状波信号S1の「トレース部分」は「位相変調される」から、「トレース部分」が「位相変調される」ことは、自明のことである。
(3) 相違点ウについての検討
刊行物2の発明は、垂直の飛越走査がうまく行われなくなるという問題を解決するために、垂直同期信号に同期した鋸歯状波信号発生する鋸歯状波電圧発生用スイッチングトランジスタ(2)に容量値制御回路(9)を設けて、垂直同期信号に同期して垂直偏向信号のリトレース部分(Tr)とトレース部分(Ts)との間の微小期間(△t)にダイオードD1をON状態とすることにより、微小期間(△t)が所定の電圧に維持される垂直出力回路でもあるから、刊行物1の発明における「垂直出力回路(17)」に代えて、刊行物2の発明を適用することは、当業者が容易になし得ることである。
したがって、「垂直偏向電流は垂直制御信号と同位相にされる構成」の「同位相にされる」を「同位相に維持される」とすることは、刊行物1の発明に基いて、当業者が、適宜なし得ることである。

第4 むすび
以上のとおり、本件発明は、刊行物1の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-11-14 
結審通知日 2000-11-21 
審決日 2000-12-04 
出願番号 特願昭62-96102
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 和男乾 雅浩  
特許庁審判長 谷川 洋
特許庁審判官 橋本 恵一
小林 秀美
発明の名称 テレビジヨン偏向装置  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 片山 修平  

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