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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01J
管理番号 1077445
審判番号 不服2000-4660  
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-03-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-04-03 
確定日 2003-05-26 
事件の表示 平成 6年特許願第206529号「偏向ヨーク及びこの偏向ヨークを装着したカラー陰極線管」拒絶査定に対する審判事件[平成 8年 3月12日出願公開、特開平 8- 69764]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年8月31日の出願であって、その特許を受けようとする発明は、平成12年2月8日付け手続補正書、平成12年4月28日付け手続補正書、及び平成12年12月25日付け手続補正書で補正された明細書及び図面の記載によれば、その特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1には以下のとおり記載されている。
「【請求項1】 サドル型水平偏向コイルと、前記サドル型水平偏向コイルの外側に設けられたサドル型垂直偏向コイルと、前記サドル型垂直偏向コイルの外側に設けられたコアとを備えた偏向ヨークであって、前記サドル型水平偏向コイル及び前記サドル型垂直偏向コイルからなる群から選ばれる一つのスクリーン側フランジ部は、前記サドル型水平偏向コイルでは面対称に配置される当該サドル型水平偏向コイルの対称配置の基準面であるX-Z平面への投影において、前記サドル型垂直偏向コイルでは面対称に配置される当該サドル型垂直偏向コイルの対称配置の基準面であるY-Z平面への投影において、その中央部が管軸(Z軸)を横切る位置でスクリーン側に最も突き出した凸状形状に成形されており、かつカラー陰極線管に装着されたときに前記スクリーン側フランジ部の前記カラー陰極線管のガラスファンネル部と相対する面は、前記ガラスファンネル部の面に沿う形状に成形されていることを特徴とする偏向ヨーク。」(以下、「本願発明」という。)


2.引用刊行物記載の発明
これに対して、平成12年10月30日付け拒絶理由通知書において引用された、本願の出願の日前である平成3年5月13日に頒布された特開平3-112038号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、

(イ)「垂直偏向コイルと、相対向する一対の鞍型の水平偏向コイルと、上記水平偏向コイルおよび上記垂直偏向コイルを覆うように装着された環状の磁性コアと、上記水平偏向コイルの双方の大口径側ベンドアップ部をともに蛍光面側へ倒すように傾けた事を特徴とする偏向ヨーク。」(特許請求の範囲)
(ロ)「第1図は本実施例における偏向ヨークの斜視図である。第1図において、1は絶縁枠、2は絶縁枠1の外側に装着された磁性コア、3および4は絶縁枠1の内側に装着された鞍型の水平偏向コイルである。5は鞍型の垂直偏向コイルである。垂直偏向コイルは絶縁枠1とその外側に装着された磁性コアとの間に挟まれるような状態になっている。」(第2頁左上欄第15行〜同右上欄第2行)
が記載されており、
また、大口径側ベンドアップ部を蛍光面側へ倒した具体的な形状が第1,2,5,6図に示されており、例えば第1図に記載の偏向ヨークにおいては、水平偏向コイルは面対称に配置されており、その対称配置の基準面であるX-Z平面への投影において、その中央部が管軸(Z軸)を横切る位置でスクリーン側に最も突き出した凸状形状に成形されていることが読みとれる。
これらの記載からみて、引用刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「鞍型水平偏向コイルと、前記鞍型水平偏向コイルの外側に設けられた鞍型垂直偏向コイルと、前記鞍型垂直偏向コイルの外側に設けられた磁性コアとを備えた偏向ヨークであって、前記鞍型水平偏向コイルの大口径側ベンドアップ部は、面対称に配置される当該鞍型水平偏向コイルの対称配置の基準面であるX-Z平面への投影において、その中央部が管軸(Z軸)を横切る位置でスクリーン側に最も突き出した凸状形状に成形されていることを特徴とする偏向ヨーク。」(以下、「引用刊行物1記載の発明」という。)

また、同拒絶理由通知書において引用された、本願の出願の日前である平成4年2月24日に頒布された特公平4-10174号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、
(ハ)「フィールド偏向コイルを構成する2個のコイル部分とライン偏向コイルを構成する2個のコイル部分の形状を、偏向ユニットを装着すべき予定の表示管のフレアー部の形状に合わせている。」(第2頁左側欄第19行〜第23行)カラーテレビジョン表示装置が記載されている。この「フィールド偏向コイル」「ライン偏向コイル」及び「偏向ユニット」が本願発明の「垂直偏向コイル」「水平偏向コイル」及び「偏向ヨーク」に相当し、またカラーテレビジョン表示装置において「偏向ユニットを装着すべき予定の表示管のフレアー部の形状」に「コイル部分の形状を」合わせるとは、すなわち「カラー陰極線管に装着されたときにスクリーン側フランジ部の前記カラー陰極線管のガラスファンネル部と相対する面は、前記ガラスファンネル部の面に沿う形状に成形され」ていることに他ならないから、引用刊行物2には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「カラー陰極線管に装着されたときに前記スクリーン側フランジ部の前記カラー陰極線管のガラスファンネル部と相対する面は、前記ガラスファンネル部の面に沿う形状に成形されていることを特徴とする偏向ヨーク」


3.対比
本願発明と引用刊行物1記載の発明とを対比すると、引用刊行物1記載の発明における「鞍型」「磁性コア」及び「大口径側ベンドアップ部」は、それぞれ本願発明の「サドル型」「コア」及び「スクリーン側フランジ部」に相当する。
よって、両者は
「サドル型水平偏向コイルと、前記サドル型水平偏向コイルの外側に設けられたサドル型垂直偏向コイルと、前記サドル型垂直偏向コイルの外側に設けられたコアとを備えた偏向ヨークであって、前記サドル型水平偏向コイルのスクリーン側フランジ部は、前記サドル型水平偏向コイルでは面対称に配置される当該サドル型水平偏向コイルの対称配置の基準面であるX-Z平面への投影において、その中央部が管軸(Z軸)を横切る位置でスクリーン側に最も突き出した凸状形状に成形されていることを特徴とする偏向ヨーク。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1
本願発明においては「カラー陰極線管に装着されたときに前記スクリーン側フランジ部の前記カラー陰極線管のガラスファンネル部と相対する面は、前記ガラスファンネル部の面に沿う形状に成形されている」のに対し、引用刊行物1記載の発明ではスクリーン側フランジ部のガラスファンネル部と相対する面の形状について明記されていない点。


4.当審の判断
上記相違点について検討する。

相違点1について
上記2.で述べたように、「カラー陰極線管に装着されたときに前記スクリーン側フランジ部の前記カラー陰極線管のガラスファンネル部と相対する面は、前記ガラスファンネル部の面に沿う形状に成形されていることを特徴とする偏向ヨーク」は引用刊行物2に記載されており、引用刊行物1記載の発明においてもこのような形状をとるようにすることに困難性は認められない。

なお、請求人は平成12年12月25日提出の意見書第3頁下から第7行〜第4頁第8行において「引用例2には、その第3欄第30〜32行に『偏向コイルのコイル部分の前端部(フランジ部)を弧形にしてこれら前端部が表示管のフレアー部(ガラスファンネル部)の外形に精密に追従するようにしてある』と記載されております。
しかし、引用例2の第3欄第32行〜第38行に、『この(表示管のフレアー部の)外形は多くの場合回転対称であり、斯る場合には前端部は円形状に形成される。矩形外形のフレアー部を有する表示管も既知であり、斯る場合にもライン偏向コイルのコイル部分の前端部を対応する形状としてこれら前端部が表示管の外形と最適に一致するようにしている』と記載されておりますように、引用例2の第3欄部分は極めて当たり前のことを言っているに過ぎず、フランジ部をスクリーン側に倒す場合に『当該フランジ部の設計を変更してガラスファンネル部に沿う形状に成形する』という思想は全く見あたりません。また、引用例1も『通常のフランジ部をただ単にスクリーン側に倒す』という域を出ておらず、『フランジ部の設計を変更してガラスファンネル部に沿う形状に成形する』という思想については何ら示唆されておりません。」との主張を行っているが、引用刊行物2(引用例2)には「フィールド偏向コイルを構成する2個のコイル部分とライン偏向コイルを構成する2個のコイル部分の形状を、偏向ユニットを装着すべき予定の表示管のフレアー部の形状に合わせ」る目的として「偏向ユニットを予定の表示管上に装着したときコイルの個々の導線が表示管のガラス面とできるだけ密接に掛合するようにするためである。・・・その理由は、ライン偏向系の感度が偏向装置の品質の重要なパラメータであるからである。」(第2頁左側欄第23行〜第29行)と記載されており、偏向コイルの形状は感度の向上を目的として表示管のフレアー部形状に合わせられている。感度の向上という目的が、引用刊行物1記載の発明のようにフランジ部をスクリーン側に倒す場合にも共通であることは明らかであるから、「この(表示管のフレアー部の)外形は多くの場合回転対称であり、斯る場合には前端部は円形状に形成される。矩形外形のフレアー部を有する表示管も既知であり、斯る場合にもライン偏向コイルのコイル部分の前端部を対応する形状としてこれら前端部が表示管の外形と最適に一致するようにしている」かどうかによらず、引用刊行物2に記載のものを引用刊行物1記載の発明に採用することに困難性を認めることはできない。したがって、上記主張を採用することはできない。


5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は引用刊行物1,2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願発明が特許を受けることができないものであるから、本願特許請求の範囲の請求項2乃至5に記載された発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-04-03 
結審通知日 2003-04-04 
審決日 2003-04-15 
出願番号 特願平6-206529
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 波多江 進  
特許庁審判長 江藤 保子
特許庁審判官 三輪 学
中塚 直樹
発明の名称 偏向ヨーク及びこの偏向ヨークを装着したカラー陰極線管  
代理人 池内 寛幸  
代理人 佐藤 公博  

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