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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1077454
審判番号 不服2002-22381  
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-08-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-17 
確定日 2003-05-26 
事件の表示 特願2001-365333「配達料金の表示又は通知方法、配達方法、配達システム及びオークションサイトのコンピュータ」拒絶査定に対する審判事件[平成14年 8月16日出願公開、特開2002-230435]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件審判請求に係る出願は、平成12年3月15日付けの出願である特願2000-118756号を、平成13年10月26日付けで分割したものであって、平成14年9月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成14年10月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について
[補正却下の決定の結論]
平成14年10月17日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)本件補正による発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項2は、
「オークションサイトホームページにて売買成立した物品の配達料金の表示又は通知方法において、該物品に関わる上記オークションサイトホームページの運営者とは異なる出品者と購入者との間の該物品の配達を仲介するコンピュータ又は記憶装置に該出品者と購入者とがそれぞれ該出品者のコンピュータ又は該購入者のコンピュータを介して登録した住所情報を該仲介するコンピュータ又は記憶装置から宅配業者に送信して荷物伝票に印字させるとともに該出品者又は購入者の少なくとも一方に対して該配達料金をホームページに表示又は電子メールにて該配達料金を負担する側に通知する配達料金の表示又は通知方法。」
と補正された。
上記補正は、請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「出品者と購入者」について、該「出品者と購入者」が「オークションサイトホームページの運営者とは異なる」ことを限定し、又、同じく必要な事項である「物品の配達を仲介するコンピュータ又は記憶装置に記憶される住所情報」について、該情報が「出品者のコンピュータ又は購入者のコンピュータを介して」記憶されることを限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、又、この点は、出願当初の明細書の段落番号0007に記載された事項であるから、同法同条第3項の規定に適合するものである。
そこで、本件補正後の前記請求項2に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、即ち、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか否か、について以下に検討する。

(2)引用例に記載された事項及び発明
原査定の拒絶の理由に引用された「INTERNET magazine 1999/12」(株式会社インプレス 1999年12月発行)の第232〜243頁「ECを支える物流ビジネス デジタルロジスティック革命」の項(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
イ.大手オークションサイトのeBayは、世界最大の郵便業務センター網を持つMail Boxes Etc.社(略)やiShipと提携して、オークションで売買するユーザーが事前に送料などを知ることができるようなシステムを構築し、ユーザーに簡便な「物流」サービスを提供する準備を進めている。(同第240頁「運送業者間の価格比較もできる物流業者以外による物流サービスの登場」第2欄第6〜15行)
上記イに記載された「Mail Boxes Etc.社」及び「iShip」は、荷物、手紙等の配送に従事する配送業者であり、又、同記載からみて、オークションサイトeBayは、配送業者と提携して、ユーザが送料を知ることができるようなシステムを構築するものであり、ユーザが送料を知ることができるシステムとは、(知るための形態がどのようなものであれ)ユーザに対する一種の「送料提示システム」であるから、結局、引用例1には、次のような発明が記載されていると認められる(以下、「引用例1に記載された発明」という。)。
オークションサイトが、配送業者と提携して、該サイトで商品を売買するユーザに対して、事前に送料を知らせる、送料提示システム。

同じく引用された特開平11-306249号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が図面と共に記載されている。
A.本発明は、宅配便等における荷物の集荷及び配送に使用する集配伝票作成システムに関する。(段落番号0001)
B.1は…(略)…集配伝票を印刷する端末機で、…(略)…基地局(配送センター等)2との間でデータの交換を行う無線機、モデムで構成される通信装置17(段落番号0016第4〜14行)
C.ステップ16では、…(略)…基地局2に送信した電話番号に基いて検索された…(略)…、送り先の氏名、郵便番号、住所、座標(緯度、経度)、送り主の氏名、郵便番号、住所、座標(緯度、経度)、地域及び重量等を基に算出された配送料金も表示する。(段落番号0023第1〜9行)
D.ステップS19では、集配伝票を印刷し、…(略)…操作した「登録」キーに従って集配伝票(図7参照の所定の様式で)を印刷する。(段落番号0026第1〜6行)
E.本実施例では、集荷人が集荷先で送り主、送り先の電話番号を入力するだけで配送に必要な名称、住所、位置等の情報が記載された集配伝票が作成できる。(段落番号0038第1〜4行)
F.図1には、基地局と端末機とが通信装置を介してデータの送受信を行っていることが記載されている。
以上の点からみて、引用例2には次のような発明が記載されていると認められる(以下「引用例2に記載された発明」という。)
宅配業者が使用する集配伝票に関して、端末機から郵便番号等を入力して基地局に送信し、基地局において該郵便番号から住所情報を検索し、この検索された住所情報及び配送料金等を基地局から端末機に送信して、送り先、送り主の氏名、住所等を記載した集配伝票を印刷するシステム。

(3)対比・判断
引用例1には、送料提示システムについて、どのようにしてユーザに送料を提示するのか、具体的な構成は記載されていないが、送料提示システムについて検討する前に、まず、ネットオークションについて、それがどのようなものか検討する。
ネットオークションに関して、
a.通常、オークションサイトは、出品者からの依頼を受けて、サイトのホームページに商品情報を掲載するものであるから、サイトの運営者は、オークションに参加する出品者或いは購入者とは別の者であること、
b.オークションサイトは、オークション情報を掲載するホームページを記憶・管理するサーバーを有していること、
c.ネットオークションはインターネットを介して取引が行われること、 d.インターネットを介してネットオークションを利用するためには、出品する側、購入する側は、それぞれが端末装置(パソコン)を所有しており、オークションサイトのホームページにアクセスして、該ホームページの画面において、売買情報等を入力すること、
e.オークションサイトで商品を売買する場合は、出品者及び購入者は、サイト(のサーバ)に、住所、インターネットアドレス、ID番号等を登録すること、
等は、当該技術分野における技術常識と言える。
そこで、本件補正発明(以下、「前者」という。)と引用例1に記載された発明(以下、「後者」という。)とを比較する。
上記技術常識に照らして後者をみると、後者において、ネットオークションに参加するユーザはそれぞれコンピュータを有しており、又、ネットオークションの参加者とは異なる者である、オークションサイトの運営者は、オークション情報(商品情報)を掲載するホームページを作成し、該ホームページの記憶・管理を行うサーバを有しており、更にユーザは商品を売買するについて、それぞれの住所等、必要事項をサイトのサーバ(記憶装置でもあるのは明らかである。)に登録するものであると認められる。
そして、後者の「配送業者」、「送料」は、前者の「宅配業者」、「配達料金」に相当し、同じく後者の「送料提示システム」は「送料の提示方法」と言うことができ、又、前者における「配達料金をホームページに表示すること」或いは「料金を負担する側に電子メールで通知すること」は、何れも配達料金をユーザに提示することに他ならない。
なお、前者の「物品の配達を仲介するコンピュータ又は記憶装置」とは、一見、宅配業者のコンピュータ又は記憶装置とも解されるが、請求項2の他の記載を参酌すると、該「仲介するコンピュータ又は記憶装置」には、出品者と購入者とが住所情報を登録すること、その住所情報は「仲介するコンピュータ又は記憶装置」から宅配業者に送信されること、からみて、「サイトのコンピュータ又は記憶装置」のことであると認められる。
以上の点からみて、両者は、次の一致点、相違点を有するものと認められる。
[一致点]
オークションサイトホームページにて売買する物品の配達料金の提示方法において、該物品に関わる上記オークションサイトホームページの運営者とは異なる出品者と購入者との間の該物品の配達を仲介するサイトの記憶装置に該出品者と購入者とがそれぞれ該出品者のコンピュータ又は該購入者のコンピュータを介して住所情報を登録しており、出品者又は購入者の少なくとも一方に対して配達料金を知らせる、配達料金の提示方法。
[相違点1]
前者が、売買成立した物品の配達料金を提示する方法であるのに対して、後者が、事前に配達料金を提示する方法である点。
[相違点2]
配達料金の提示方法が、前者では、サイトのホームページに表示するものであるに対して、後者では、具体的な方法が不明である点。
[相違点3]
サイトに登録した出品者と購入者との住所情報について、前者では、記憶装置から宅配業者に送信して荷物伝票に印字させるのに対して、後者では、どのように扱うか不明である点。

上記相違点について検討する。
[相違点1]について
引用例1に記載された「事前に」なる記載が、どのような「事」(行為)の前であるのか明確ではないが、ネットオークションにおいて、料金を売買成立の後に提示することは、米国特許第5890138号明細書(査定時の備考欄参照)等に記載されるように周知の技術手段であり、又、配達料金を売買成立の前に知らせるか、後に知らせるかは、サイトの運営者が、適宜決定し得る技術事項であるから、配達料金提示を売買成立の後とした点に格別の意義は認められない。
[相違点2]について
ネットオークションのサイトのホームページに配達料金を表示することは、米国特許第5890138号明細書等に記載されるように周知の技術手段であるから、後者において、ユーザに送料を提示するについて、ネットオークションサイトのホームページに表示するようにすることは、当業者が容易に想到し得ることと認められる。
[相違点3]について
後者において、宅配業者とオークションサイトとの提携が具体的にどのようなものであるのか、不明である。
しかしながら、そもそも宅配業者の業務とは物品の配送が主なものであり、物品の配送を主な業務とする宅配業者がオークションサイトと提携する以上、該宅配業者が、オークションサイトにおいて売買が成立した物品の配送を行うことは十分考慮できることであり、又、物品の配送に際して、配送伝票(集配伝票、荷物伝票)が貼付されることは社会常識であって、配送伝票には、配送先の住所等が記入されることが必要不可欠であることは言うまでもない。
他方、提携しているオークションサイトにはユーザの住所情報が登録されているのであるから、物品を配送する際に必要不可欠な住所情報を該オークションサイトから入手することは、当業者が容易に想到し得ると認められる。
そして、引用例2に記載されるように、宅配業者の端末機において、該端末機に送信された住所情報等に基づいて集配伝票を印刷させることは公知の技術手段である。
以上の点からみて、後者におけるオークションサイトと宅配業者との提携内容として、宅配業者が、オークションサイトに登録されている住所情報を入手して集配伝票の記入に利用すること、換言すれば、オークションサイトに登録されているユーザ(出品者、購入者)の住所情報を、宅配業者に送信し、印刷(印字)させるようにすることは、当業者が容易に想到し得ることと認められる。
[作用効果]について
そして、本件補正発明の作用効果も、引用例1、2及び周知の技術手段から当業者が予測できる範囲のものである。

なお、審判請求人は、平成14年10月17日付け審判請求書において、「米国特許第5890138号明細書に記載されたオークションシステムは、仲介システムではなく、出品者そのものである。」旨(審判請求書第3頁第13〜15行参照)主張するが、上記((3)a参照)したとおり、通常、ネットオークションの運営者は、出品者からの依頼を受けて、サイトのホームページに商品情報を掲載して、オークションを受け付けるものであり、サイトの運営者は、出品者、購入者とは別の者と解するのが相当であるから、請求人の主張は採用できない。
又、審判請求人は、平成14年4月15日付け意見書において、引用例1の第241頁右欄第10〜12行の記載を主な根拠として、「(料金は)オークションサイトに表示されるのではなく、提携したサイトで表示される」旨(第2頁第12〜13行参照)主張するが、上記記載に続く第13〜15行の「ショッピングモール上の「送料別」という表示が「お客様の送料は」という表示に変わったと思えばわかりやすい。」との記載をみると、同記載は、「送料別」として、ショッピングモール(のホームページ)上には表示されなかった送料が、「お客様の送料は」として(ショッピングモールのホームページ上で)表示されるようになったことを表すものと解されるから、引用例1の第241頁右欄第10〜15行の記載を併せて解釈すると、オークションサイトeBayのホームページ上に送料が表示されるものと介しても何ら矛盾するものではない。仮に、請求人の主張のとおり、別のサイトのホームページが表示されているとしても、ホームページの表示手段としてよく知られた技術手段である、HTMLのフレーミングセットタグを応用すれば、ユーザが別のサイトにアクセスして、そのサイトのホームページを表示させなくても、現在ブラウジングしているホームページを通じて他のホームページを表示できるものであるから、eBayとiShipとの提携において、ユーザの利便性を配慮すれば、料金表示はeBayのホームページで行われるのが普通であり、この点においても、請求人の主張は採用できない。
さらに、審判請求人は、同意見書において「本発明は双方の情報が登録された仲介コンピュータが料金通知をすることに新規性があり、」(第4頁第27〜28行)と主張するが、前者においては「該出品者又は購入者の少なくとも一方に対して該配達料金をホームページに表示又は電子メールにて該配達料金を負担する側に通知する」(審決注:下線は本審決において付したものである。)と記載されており、「仲介コンピュータが料金通知をする」こと、即ち、「電子メールにて該配達料金を負担する側に通知する」ことは、必ずしも前者の構成とはなっておらず、請求人の主張は失当である。

以上のとおり、本件補正発明は、引用例1、2、及び、周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
上記のとおり、平成13年6月29日付の手続補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成12年11月21日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。
「オークションサイトホームページにて売買成立した物品の配達料金の表示又は通知方法において、該物品に関わる出品者と購入者との間の該物品の配達を仲介するコンピュータ又は記憶装置に該出品者と購入者とがそれぞれ登録した住所情報を該コンピュータ又は記憶装置から宅配業者に送信して荷物伝票に印字させるとともに該出品者又は購入者の少なくとも一方に対して該配達料金をホームページに表示又は電子メールにて該配達料金を負担する側に通知する配達料金の表示又は通知方法。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本件補正発明から、「出品者と購入者」が「オークションサイトホームページの運営者とは異なる」という構成、及び、「物品の配達を仲介するコンピュータ又は記憶装置に記憶される住所情報」が「出品者のコンピュータ又は購入者のコンピュータを介して」記憶されるという構成、を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「2.」に記載したとおり、引用例1、2、及び、周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1、2、及び、周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、2、及び、周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-03-07 
結審通知日 2003-03-18 
審決日 2003-04-01 
出願番号 特願2001-365333(P2001-365333)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 篠原 功一  
特許庁審判長 佐藤 荘助
特許庁審判官 岡 千代子
辻本 泰隆
発明の名称 配達料金の表示又は通知方法、配達方法、配達システム及びオークションサイトのコンピュータ  

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