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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1077493
審判番号 審判1999-1791  
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-06-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-02-04 
確定日 2003-05-28 
事件の表示 平成 7年特許願第323270号「駅案内情報の供給方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年 6月20日出願公開、特開平 9-160932]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年12月12日の出願であって、平成10年12月3日付けで拒絶の査定がなされ、この査定を不服として平成11年2月4日に審判の請求がなされるとともに、同年3月8日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成11年3月8日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成11年3月8日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)本件補正
平成11年3月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許法第17条の2第1項第3号に規定する期間内になされたものであって、特許請求の範囲の請求項1を以下のとおりとする補正を含んでいる。

【請求項1】 コンピュータネットワークにより駅案内情報の供給を行なう駅案内情報の供給方法において、
操作者に対し、予め記憶された地図情報に基づき、駅および当該駅に係る複数の駅出口を含む地図を表示して、所望する駅出口の選択を促す段階と、
操作者によってマウスカーソルが駅出口の表示領域に位置されることにより所望する駅出口が選択されると、この選択情報をコンピュータネットワークを通じて受信し、駅毎に各駅に係る複数の駅出口についての駅案内情報を予め記憶した駅出口情報ファイルの中から、選択された駅出口に対応する駅案内情報および他の駅出口に対応する駅案内情報を一括して読み出す段階と、
前記操作者に対し、選択された駅出口に対応する駅案内情報および他の駅出口に対応する駅案内情報がそれぞれ所定位置に表示されるように、当該コンピュータネットワークを通じて一括して読み出した駅案内情報を出力する段階と
を備えることを特徴とする駅案内情報の供給方法。
(2)補正の適否
本件補正後の請求項1の「前記操作者に対し、選択された駅出口に対応する駅案内情報および他の駅出口に対応する駅案内情報がそれぞれ所定位置に表示されるように、当該コンピュータネットワークを通じて一括して読み出した駅案内情報を出力する段階」という記載について検討する。
本件補正後の請求項1の記載では、表示されているのは地図であり、地図以外には位置と関係する事項は存在しないのだから、「所定位置」とは地図上の定まった位置を意味している。したがって、「駅案内情報がそれぞれ所定位置に表示される」とは、例えば本願第7図の地図上の駅出口A-1、A-2、A-3各々の駅案内情報が、それぞれ対応する駅出口の近傍のような、地図上の定まった位置に表示されることをも意味している。
次に、「駅案内情報がそれぞれ(地図上の)所定位置に表示される」、ということが本願の願書に最初に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内であるかについて検討する。
本願の願書に最初に添付した明細書の第18段落には以下事項が記載されている。
「例えば、図6においてマウスカーソルMCを「A-1」と表示された領域に位置させてクリックさせると、図7に示すように、当該駅出口ファイルの案内情報が、出口A-1を最上行として、当該区分地図上にウィンドウ表示される。また、例えば、マウスカーソルMCを「A-2」と表示された領域に位置させてクリックさせると、図8に示すように、当該駅出口ファイルの案内情報が、出口A-2を最上行として、当該区分地図上にウィンドウ表示される。このウィンドウ表示の際、そのタイトルバー30に、その出口に係る駅名を表示させれば、表示されている駅出口がどの駅のもであるかが一目でわかるので都合が良い。また、駅出口の案内情報そのものは、リスト形式で記載されているから、ボタン21Uあるいは21Dをマウスクリックにより上下にスクロールさせれば、当該駅出口の周辺出口に関しても案内情報を取得できる。なお、かかるスクロール処理も次回に起動されるステップSb10によるものである。」
上記記載の、出口A-1あるいは出口A-2を最上行として表示することは、地図上に重ねて表示されたウィンドウ表示内での位置であり、ウィンドウ自体の、地図上に重ねられた位置に関するものではない。
また、上記第18段落には、案内情報がウィンドウ表示されることは記載されているが、ウィンドウがそれぞれ地図上のどの位置に重ねて表示されるかは記載されていない。
そして願書に最初に添付した明細書または図面のその余の記載を検討しても、駅案内情報がそれぞれ(地図上の)所定位置に表示されると解される記載はない。
したがって、本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内でした補正ではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件手続補正は、特許法第17条の2第3項の規定の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成11年3月8日付けの手続補正は上記のとおり決定をもって却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成10年8月4日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「コンピュータシステムにより駅案内情報の供給を行なう駅案内情報の供給方法において、
操作者に対し、予め記憶された地図情報に基づき複数の駅出口を含む地図を表示して、所望する駅出口の選択を促す段階と、
操作者によってマウスカーソルが駅出口の表示領域に位置されることにより所望する駅出口が選択されると、選択された駅出口に関連づけられる駅案内情報を読み出す段階と、
読み出された駅案内情報を、前記操作者に対して出力する段階と
を備えることを特徴とする駅案内情報の供給方法。」(以下、「本願発明」という。)

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平7-93346号公報(平成7年4月7日出願公開。以下、「引用例」という。)には以下の事項が記載されている。
1)「【産業上の利用分野】本発明は情報検索表示システムに係り、画面のタッチ操作に応じてコンピュータ装置等により処理した情報を画面に表示するものに関する。」(段落番号【0001】)
2)「【従来の技術】高速自動車道路のサービスエリア等には掲示板が設けられ、道路工事の情報、催物による車両通行規制等を掲示し、利用者の便宜を図るようにしているものがあり、また、鉄道の駅等では、ホテル・旅館、あるいは観光名所の案内等を掲示し、観光客の便宜を図るようにしているものがある。通常、このような掲示板は、例えば、ペンキ等で描いたり、ポスターあるいは写真等を用いるものが多いが、掲示の内容についてさらに詳しい情報を得たい場合には案内窓口に尋ねるか、あるいは電話で問い合わせなければならず、利用者から見て、掲示だけでは充分な情報が得られないという問題がある。」(段落番号【0002】)
3)「【作用】以上のように構成したので、本発明による情報検索表示システムにおいては、所要の通信網等より入力された情報は、所要の表示用の信号に処理されてメモリに記憶され、また、イメージスキャナで読み取った地図等の情報も前記メモリに記憶される。メモリに記憶された信号は所要の操作で読み出され、PDP等で構成された画面に表示される。そして、表示された情報の詳しい内容を知りたい場合、該当する表示に指でタッチ操作を行えば、表示画面は、タッチで指定した表示に関するより詳しい情報の画像に切り換わる。」(段落番号【0005】)
4)「表示部9の画面には、例えば、画面の上下、および左右の各辺に赤外線等の発光部とこれに対向する受光部が設けられ、タッチされた箇所で赤外線等が遮断されたのを検知するタッチパネルが形成されており、画面へのタッチにより指定等を入力するようになっている。タッチによる入力部6よりの信号は、制御部11を介し識別部7に入力し、遮断された赤外線の位置(上下方向および左右方向)からタッチされた位置を識別する。そして、識別部7よりの信号に基づいて、制御部11を介し、メモリ部3に記憶されている表示中の画像に対応するデータにて、タッチ箇所のデータを取り出し、表示メモリ8に転送し、表示部9の表示画面をこの画像に切り換える。」(段落番号【0008】)
5)「図2(ロ)の例は、サービスエリアの次のインターチェンジ周辺にあるホテルの案内図である。この案内図は前記イメージスキャナ5等で入力されメモリ部3に記録されているもので、例えば、「Zホテル」がどのような建物か知りたい場合、画面の「Zホテル」の表示に指等をタッチする。このタッチの位置を前記同様に識別し、制御部11を介し画像再生部4に信号出力し、相応するホテルの静止画像等の信号を光磁気ディスク等より再生し、制御部11を介し表示メモリ8に転送されている画像信号に合成し、表示画面の片隅(図の例では左下)に表示する。」(段落番号【0009】)
上記記載5)の案内図は、図2(ロ)を参照すると地図であることは明らかであり、『「Zホテル」がどのような建物か知りたい場合、画面の「Zホテル」の表示に指等をタッチする』ということは、地図上の知りたい建物にタッチすることを意味している。また、上記記載5)のホテルの静止画像は、上記記載2)及び記載3)の詳しい内容の具体例である。
以上から引用例には、
「コンピュータ装置等により処理した、ホテル・旅館あるいは観光名所の案内の詳しい情報を画面に表示する方法において、
メモリ部に記録されている地図を画面に表示する段階と、
地図上の知りたい建物にタッチすると、相応する建物の静止画像等の信号を光磁気ディスク等より再生する段階と、
該静止画像等を建物の詳しい内容として表示画面に表示する段階と
を備えることを特徴とする案内情報の供給方法」(以下、「引用例に記載された発明」という。)について記載されている。

(2)対比
本願発明と引用例に記載された発明とを対比する。
引用例に記載された発明はコンピュータ装置等により処理した情報を画面に表示するであるから、本願発明と同様コンピュータシステムを用いている。
引用例に記載された発明の「ホテル・旅館あるいは観光名所の案内の詳しい情報」は、本願発明の「駅案内情報」と案内情報である点では一致し、引用例に記載された発明の「メモリ部に記録されている地図」は本願発明の「予め記憶された地図情報」に相当し、引用例に記載された発明の建物と本願発明の駅出口は案内対象である点で一致する。
引用例に記載された発明の「地図上の知りたい建物にタッチする」ことは、本願発明の「操作者によってマウスカーソルが駅出口の表示領域に位置されることにより所望する駅出口が選択される」ことと、知りたい案内情報が位置入力装置により選択される点で一致する。
引用例に記載された発明の「相応する建物の静止画像等の信号を光磁気ディスク等より再生する段階」は、本願発明の「選択された駅出口に関連づけられる駅案内情報を読み出す段階」とは選択した案内情報を読み出す点で一致する。
引用例に記載された発明の表示は操作者に対して表示することは明らかであるから、引用例に記載された発明の「該静止画像等を建物の詳しい内容として表示画面に表示する段階」は、本願発明の「読み出された駅案内情報を、前記操作者に対して出力する段階」と、読み出された案内情報を操作者に対して出力する点で一致する。
したがって本願発明と引用例に記載された発明は、
「コンピュータシステムにより案内情報の供給を行う案内情報の提供方法において、
操作者に対し、予め記憶された地図情報に基づき案内対象を含む地図を表示する段階と、
知りたい案内対象が位置入力装置により選択されると、選択された案内対象に関連付けられる案内情報を読み出す段階と、
読み出された案内情報を前記操作者に対して出力する段階と
を備えることを特徴とする案内情報の供給方法」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明の案内対象は駅出口であり、案内情報は駅出口に関連づけられる駅案内情報であるのに対して、引用例に記載された発明の案内対象は建物であり、案内情報は建物の案内の詳しい情報である点。
(相違点2)
本願発明は、所望する駅出口の選択を促すのに対して、引用例に記載された発明は選択を促すことについては特に記載されていない点。
(相違点3)
本願発明の位置入力装置はマウスであり、マウスカーソルが駅出口の表示領域に位置されることにより所望する駅出口が選択されるのに対し、引用例に記載された発明の位置入力装置はタッチパネルであり、タッチすることにより建物が選択される点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
駅には種々の案内情報があり、出口の多い駅では例えば西口、東口、あるいは一番出口、二番出口のように、出口ごとに案内情報を有すること、そしてその案内情報が有用であることは日常生活から誰もが常識として了解している事項である。
そして、地図上の案内対象を選択し、案内対象に関連付けられる案内情報を読み出して出力することは引用例に示されているのであるから、対象を駅出口とし、案内情報を駅出口に関連付けられる駅案内情報とすることは当業者が容易になし得たことである。
(相違点2について)
コンピュータシステムにおいて、操作者に対して操作を促すことは周知技術である。引用例に記載された発明においても、タッチすることにより詳しい情報が表示されることを何らかの形で操作者に示さなければ、操作方法が直ちに了解できるものではないのだから、前記周知技術を適用して何らの形で選択を促すようにして操作者の利便性を向上する程度のことは、当業者が適宜行うべき事項である。したがって相違点2は格別のものではない。
(相違点3について)
マウスは例示するまでもなく周知である。そして引用例に記載された発明のタッチパネルに替えて、タッチパネルと同様位置入力装置であるマウスを採用することは格別のものではない。

(4)むすび
以上のとおりであるので、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-03-17 
結審通知日 2003-03-28 
審決日 2003-04-09 
出願番号 特願平7-323270
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 561- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高瀬 勤  
特許庁審判長 徳永 民雄
特許庁審判官 村上 友幸
平井 誠
発明の名称 駅案内情報の供給方法  
代理人 川▲崎▼ 研二  

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