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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E04F
管理番号 1077789
異議申立番号 異議2001-70334  
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-12-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-01-31 
確定日 2003-02-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3070882号「床板の施工法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3070882号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続きの経緯
本件特許第3070882号の請求項1、2に係る発明についての出願は、平成4年5月28日に特許出願され、平成12年5月26日にその特許権の設定の登録がなされ、その後、段谷産業株式会社より特許請求の範囲の請求項1、2に係る発明の特許について特許異議の申立がなされ、平成13年5月21日付けで請求項1、2に係る発明の特許について取消理由通知がなされたところ、その指定期間内に意見書とともに訂正請求書が提出されたものである。

第2 訂正の適否について
1.訂正の内容
上記訂正請求書によって特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。
a.特許請求の範囲の請求項1を削除し、請求項2を請求項1とする。すなわち、特許明細書における【特許請求の範囲】の欄を次のように訂正する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】4周に実を形成した床板をスラブ上に敷設施工する施工法であって、敷設すべき面積の周辺部近傍のスラブ表面のみにあるいは周辺部近傍に位置する床板の裏面のみに接着剤を塗布すると共に、敷設すべき床板の前記実の部分に接着剤を塗布し、相接する床板の実部分を順次接合することによりスラブ上に床板を所定面積敷設することを特徴とする、床板の施工法。
b.(b-1)明細書の段落【0009】を「【課題を解決するための手段】上記の課題を解決しかつ目的を達成するために、本出願は、4周に実を形成した床板をスラブ上に敷設施工する施工法であって、敷設すべき面積の周辺部近傍のスラブ表面のみにあるいは周辺部近傍に位置する床板の裏面のみに接着剤を塗布すると共に、敷設すべき床板の前記実の部分に接着剤を塗布し、相接する床板の実部分を順次接合することによりスラブ上に床板を所定面積敷設することを特徴とする床板の施工法を開示する。」と訂正し、段落【0010】を削除する。
(b-2)明細書の段落【0011】を「【作用】本発明による敷設施工をするに際しては、敷設施工するスラブ面の辺部分近傍に予め接着剤を塗布した状態、あるいは周辺部近傍に位置する床板の裏面のみに接着剤を塗布した状態とすると共に、敷設すべき単位床板の実の部分好ましくは雌実を構成する下辺表面に接着剤を塗布し、敷設施工するスラブ面の辺部分に順次設置する。次いで、別個の単位床板に対して同様にその雌実を構成する下辺表面に接着剤を塗布した後、既に設置した床板に対し、相互の雌実、雄実が接合するように敷設する。以下、同様の作業を繰り返し所定の敷設面積の敷設施工を終了する。それにより、相互に近接する単位床板同志は、一方の雌実に塗布した接着剤によりそこに係合する他方の単位床板の雄実が接着して接合し、一定時間の経過後には全ての単位床板が相互に接着したフローリング床が完成する。床面の周辺部分に敷設される単位床板は、近接する単位床板同志の実部分における接着接合に加えスラブ面とも接着接合する。広い面積にわたり施工する場合にこの施工法は有効である。」と訂正し、段落【0012】を削除する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項a.は、2つあった独立請求項の1つを単に削除する訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的としている。
上記訂正事項b.は、上記訂正事項a.との整合を図るもので、明りょうでない記載の釈明を目的としている。
そして、この訂正は、いずれも、願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前特許法第126条第1項ただし書、及び同条第2項の規定に適合するので、当該訂正は認められるものである。

第3 特許異議申立について
1.本件発明
上記「第2」に記載したように、平成13年7月30日付けの訂正が認められるから、本件発明は、訂正された特許請求の範囲第1項に記載されたとおりのものである。(上記第2 1.訂正事項a.参照。以下、請求項1に係る発明を本件発明という。)

2.取消理由通知の概要
平成13年5月21日付けの取消理由通知において引用した刊行物は次のものである。
刊行物1:特開平4-106264号公報(異議申立人提出の甲第1号証)
刊行物2:特開平3-59262号公報(異議申立人提出の甲第2号証)
そして、上記取消理由通知において、訂正前の請求項1に係る発明は、刊行物1記載の発明に該当し、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであり、さらに、訂正前の請求項2に係る発明は、刊行物1記載の発明に、刊行物2に記載された技術思想を適用して当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、本件請求項2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、訂正前の本件請求項1及び2に係る発明の特許は、取り消されるべきものである旨通知した。

3.刊行物に記載された発明
(1)上記取消理由通知において引用した本件特許出願前に頒布された刊行物1(特開平4-106264号公報)には、木質化粧床材およびその施工 方法に関する発明に関して、
「請求項(2)に記載の床材を用いる床施工方法であって、
床下地面上に上記床材を順次隣接の床材相互の雄ざね部と雌ざね部を嵌合して敷き並べるに際し、下あご部と切欠段部とを接着剤で接着して隣接する床材相互を結合し、床下地面には接着および釘打ち等で床材を固定することなく置き敷き施工することを特徴とする木質化粧床材の施工方法。」(特許請求の範囲の請求項3)と記載され、
「また、該床材は、その接合部構造として、四周側面のうち、相隣れる2辺の側面に雌ざね部が形成され、他の2辺の側面に対応の雄ざね部が形成されると共に、上記雌ざね部を有する2辺の側面下部に外方に大きく突出した接着用下あご部が形成され、他方の雄ざね部を有する2辺の側面下部に上記下あご部に対応する切欠段部が形成されてなる構成を有するものである。
そして、上記接合部構造を有する床材の施工方法として、この発明は、床下地面上に上記床材を順次隣接の床材相互の雄ざね部と雌ざね部を嵌合して敷き並べるに際し、下あご部と切欠段部とを接着剤で接着して隣接する床材相互を結合し、床下地面には接着および釘打ち等で床材を固定することなく置き敷き施工することを特徴とする木質化粧床材の施工方法を提供するものである。」(公報2頁右下欄9行〜3頁左上欄5行)と記載され、
「該接合部は、床材(A)の四周側面のうち、相隣れる2辺の側面に雌ざね部(4)が形成され、他の2辺の側面に対応の雄ざね部(5)が形成され、これらによって実質的に本実接合構造を有するものとなされると共に、加えて更に上記雌ざね部(4)の存する2辺の側面において該雌ざね部(4)の下部が外方に大きく突出され、突出幅(W1)を8〜15mm、好ましくは10mm程度とした接着用の下あご部(6)が形成される一方、他方の雄ざね部(5)を有する2辺の側面には、下面側を広幅に切欠くことによって上記下あご部(6)に対応するそれよりやゝ幅(W2)の大きい切欠段部(7)が形成され、それらによって相じゃくり接合構造に近似の接合構造を併有したものとなされている。
次に、上記の床材(A)の施工方法の好ましい一例を第3図および第4図に基いて説明する。
コンクリートとか合板、あるいはパーティクルボード等で形成される床下地面(B)上に、先ず第3図に示すように所定厚みの発泡合成樹脂シート等よりなる緩衝材シート(9)を敷設する。そして、その上に先ず最初の1枚の床材(A)を固定し、その下あご部(6)上に接着剤(8)を塗布したのち、次の床材(A’)を第4図に示すように周縁に接合部どおしを嵌め合わせる態様に組合わせ、雌雄のさね部(4)(5)を嵌合すると共に、下あご部(6)を隣接の床材(A’)の切欠段部(7)面に重ね合わせ状にして接着する。こゝに、床材(A)(A’)は、ほとんど反りを有しないことにより、上記の接合部の嵌合操作に困難を生じることはない。かつ床材の一部が下地面上から浮き上ることもなく、平坦状態に施工しうる。従って、床材(A)(A)を下地面(B)に接着剤で接着したり、接合部からの釘打ちによって固定するというような作業は全く不要であり、上記手順で順次床材を接合していくだけの置き敷き施工の態様で、所望の床施工を完了しうるものである。」(公報3頁右下欄10行〜4頁右上欄8行)と記載され、
「なお、この発明に係る床材の施工は、上記のような置き敷き施工方法に限定されるものではなく、もちろん、従来の床材の施工方法に準じて糊、釘併用方式で施工するものとしても良い。例えば床材(A)を裏返し状態にしてその裏面の一部またはほぼ全体及び切欠段部(7)面に接着剤を塗布し、下地面に接着して施工するものとしても良い。この場合においても、本発明に係る床材(A)は、それ自体に反りがないことにより、浮きを生じることなく容易に施工することができる。更に、前記のような置き敷き施工による場合あるいは接着施工による場合にあっても、必要に応じて、部分的に下あご部(6)を釘打ちによって床下地側に固定するものとしても良い。」(公報6頁右下欄7行〜7頁左上欄4行)と記載されている。
これら記載を含む刊行物1全体の記載、及び第1〜4図の記載からみて、刊行物1には、 次の発明が記載されているものと認められる。
「4周に実を形成した床材を床下地上に敷設施工する施工法であって、床材の裏面の一部またはほぼ全体に接着剤を塗布するとともに、敷設すべき床材の前記実の部分に接着剤を塗布し、相接する床材の実部分を順次接合することにより床下地上に床材を所定面積敷設する床材の施工法。」

(2)上記取消理由通知において引用した本件特許出願前に頒布された刊行物2(特開平3-59262号公報)には、木質系の床への改装方法に関して、
「釘のような保持ピンが上方に突出されたグリッパーが室内の床下地の周部に取付けられ、床下地にはフェルトのような下地クッション層が敷設され、下地クッション層の上にカーペットが施工されたカーペット床から木質系の床に改装する改装方法であって、カーペットが剥がされ、表面が化粧仕上げされた木質基板の底面側に多数本の切溝が設けられた床材が残在する下地クッション層上に直敷され、床材が残在するグリッパーに保持され、下地クッション層に敷かれた隣接の床材同士が互いに結合されて成ることを特徴とする木質系の床への改装方法。」(特許請求の範囲)と記載され、
「本発明の木質系の床への改装方法は、釘のような保持ピン1aが上方に突出されたグリッパー1が室内の床下地2の周部に取付けられ、床下地2にはフェルトのような下地クッション層3が敷設され、下地クッション層3の上にカーペット4が施工されたカーペット床から木質系の床に介装する改装方法であって、カーペット4が剥がされ、表面が化粧仕上げされた木質基板5の底面側に多数本の切構6が設けられた床材7が下地クッション層3上に直敷され、床材7がグリッパー1に保持され、下地クッション層3に敷かれた隣接の床材7,7同士が互いに結合されて成ることを特徴とするものである。」(公報2頁右上欄10行〜左下欄2行)と記載され、
「そして木質基板5の2辺には嵌合突部10が形成され、そして残りの2辺には嵌合凹部11が形成され、嵌合突部10を嵌合凹部11に凹凸嵌合させることで、床材7,7同士を結合させることができるようにしてある。」(公報3頁左上欄8〜12行)と記載され、
「第1図はカーペット床を示していて、釘のような保持ピン1aが上方に突出されたグリッパー1が室内の床下地2の周部に取付けられている。」(公報3頁左上欄15〜17行)と記載され、
「このようなカーペット床から木質系の床に改装するには、まず、カーペット4を剥がし、下地クッション層3の上に墨出し線Lを描き、床材7をフェルトのような下地クッション層3の上に直敷し、壁際の床材7を墨出し線Lに沿って位置決めして上からたたき込んでグリッパー1の保持ピン1aにて保持させ、そして床材7同士を必要ならば接着剤を充填して凹凸嵌合させて下地クッション層3上に敷設するのである。」(公報3頁右上欄2〜10行)と記載され、
「かつ床材同士は相互に結合されていて、直敷施工でありながら多数の床材の一体化をなし、床材が相互にずれるようなことがなく、使用感を損なうこともなく、そしてカーペット床のグリッパーにて床材が保持されるから、施工時における床材の位置決めがなされるという利点がある。」(公報4頁左上欄14〜20行)と記載されている。
これら記載を含む刊行物2全体の記載、及び第2、4、6図の記載からみて、刊行物2には、 次の発明が記載されているものと認められる。
「4周に実(嵌合突部10と嵌合凹部11)を形成した床材7を、その実部分に接着剤を充填し、相接する床材の実部分を順次接合することにより床下地上に床材を敷設施工する施工法において、敷設すべき面積の周辺部近傍の床下地上のみにグリッパー1を取付け、あるいは敷設すべき面積の周辺部近傍に位置する床材の裏面のみをグリッパー1で保持することによって、床下地上に床材を所定面積敷設するようにした床下地上に床材を敷設施工する施工法。」

4.対比、判断
本件発明と、刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「床材」、「床下地」、及び「床材の施工法」は、それぞれ本件発明の「床
板」、「スラブ」、及び「床板の施工法」に相当するから、両発明は、
「4周に実を形成した床板をスラブ上に敷設施工する施工法であって、敷設すべき床材の裏面に接着剤を塗布すると共に、敷設すべき床板の前記実の部分に接着剤を塗布し、相接する床板の実部分を順次接合することによりスラブ上に床板を所定面積敷設することを特徴とする、床板の施工法。」
の点で構成が一致しており、
本件発明が、「敷設すべき面積の周辺部近傍のスラブ表面のみにあるいは周辺部近傍に位置する床板の裏面のみに接着剤を塗布する」のに対して、刊行物1記載の発明では床材の裏面に接着剤を塗布してはいるが、敷設すべき面積の周辺部近傍の床下地表面のみあるいは周辺部近傍に位置する床材の裏面のみに接着剤を塗布するものではない点で相違するものと認められる。
しかしながら、刊行物2には、床材を敷設すべき面積の周辺部近傍の床下地上のみにグリッパー1を取付け、あるいは敷設すべき面積の周辺部近傍に位置する床材の裏面のみをグリッパー1で保持することによって、床下地上に床材を所定面積敷設するようにした技術的事項が記載されているから、刊行物2には、床材を敷設するに当たり、床材を敷設すべき面積の周辺部近傍のみを固定する技術思想が開示されているといえる。
そして、両者はともに床材の敷設に関する技術分野に属することから、刊行物1記載の発明に刊行物2に記載された上記の技術思想を適用して、本件発明の上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できたことにすぎない。
したがって、本件発明は、刊行物1記載の発明に、刊行物2に記載された技術思想を適用して当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

5.むすび
以上のとおりであるから本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
床板の施工法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 4周に実を形成した床板をスラブ上に敷設施工する施工法であって、敷設すべき面積の周辺部近傍のスラブ表面のみにあるいは周辺部近傍に位置する床板の裏面のみに接着剤を塗布すると共に、敷設すべき床板の前記実の部分に接着剤を塗布し、相接する床板の実部分を順次接合することによりスラブ上に床板を所定面積敷設することを特徴とする、床板の施工法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は床板の施工法に関し、特に、スラブ面に対して複数枚の単位床板を敷設施工する場合の改良された施工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、中高層住宅のみならず普通の家屋においても、木質系床板をコンクリートスラブ上に直接あるいは発泡体からなる断熱材等を介して敷設したいわゆるフローリング床が広く用いられるようになってきている。木質系の床板としては、従来多くのものが知られているが通常、図6に示すように、方形板体10を複数枚一体に組付けた単位床板が用いられる。図7は図6のA-A断面の一部を示すものであり、図示のように、各方形板体10は、ハードボードやパーティクルボードのような木質系薄板を複数枚積層した木質系基材1の4周に雄実2及び雌実3を形成しかつその表面に化粧合板4を貼着したものが多く用いられる。工場において、前記の方形板体10の複数枚をその雄実2と雌実3とが係合した状態に寄せ集めると共にさらに係合した下方部分にホットメルト樹脂5等の適宜の接着剤を注入することにより、図6に示すような階段上の形状に成形する。次いで、下面全体に合成樹脂や天然ゴム等の発泡体あるいは繊維マットのようなクッション材6を貼着して、単位床板Aが構成される。
【0003】
施工に当たっては、必要枚数だけの単位床板Aを既にスラブ施工を終えた施工現場に搬入する。そして、現場ではコンクリートスラブのような敷設施工すべきスラブ面に対してエポキシ樹脂のような樹脂系接着剤を塗布した後、各単位床板Aをその近接する単位床板同志の4周に形成された実部分2,3が互いに係合するようして順次敷設していく。予定敷設面積の4周部においては適宜寸法に切断した単位床板(図示しない)を用いて床板の接着施工を行うことにより、いわゆるフローリング施工は終了する。スラブ面に接着剤を塗布することに代え、単位床板の裏面に接着剤を塗布しスラブ面に接着施工することも行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の施工法はどのような施工環境においても確実に行いうることから広く行われているが幾つかの不都合も有している。広い面積に接着剤を等しく塗布することは困難であるばかりでなく、単位床板のスラブ面への接着もその有るべき位置を確実に把握した上でかつ迅速に行う必要があり、敷設施工に手間と熟練とを必要としている。
【0005】
また、単位床板はその裏面全体がスラブ表面に対して接着剤により貼着されているので張り付けは堅固かつ確実に行われるものの、逆に、単位床板が部分的又は全体的に損傷したような場合あるいは模様替えの目的等で、部分的にあるいは床面全体について床板の張り替えを行うとする場合、床板をスラブ面から剥離し除去することが容易でなく作業的にも困難であると共に、剥離後のスラブ面には残った接着剤及び木質基材の破片により凹凸が形成される。従って、新たに単位床板を接着施工するに際しては、前もってスラブ表面に残った接着剤等の残滓物を何らかの手段により除去し表面を平坦にすることが必要となり、そのために多くの時間の労力を要する。このことにより、フローリングの張り替えは多くの要望があるにもかかわらず実際上必ずしも行われないのが実情である。
【0006】
さらに、スラブ面がコンクリートスラブの場合には格別の問題は生じないが、断熱あるいは防音等の目的でコンクリートスラブ表面に発泡樹脂材等からなる板体を介在させその上に床板を張り付けるような場合には、接着剤の種類によっては発泡樹脂材が接着剤により変質あるいは変形することがあることから接着剤の選定に慎重さが必要であり、万一発泡樹脂材に変形が生じた場合には、床面に歪みが生じる場合があった。
【0007】
本発明は、木質系床板を用いていわゆるフローリング床を施工する場合の上記のような不都合を解消した床板の施工法を得ることを目的としており、より具体的には、スラブ面への敷設も格別の熟練を必要とせずに確実に行うことができ、また一度敷設施工した床板の張り替えも容易に行うことのできる床板の施工法を得ることを目的としている。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、敷設施工するスラブ面がどのような素材の場合であっても、スラブを構成する素材に格別の悪影響を与えることなしに確実にかつ安定した状態で敷設施工をすることができる床板の施工法を得ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決しかつ目的を達成するために、本出願は、4周に実を形成した床板をスラブ上に敷設施工する施工法であって、敷設すべき面積の周辺部近傍のスラブ表面のみにあるいは周辺部近傍に位置する床板の裏面のみに接着剤を塗布すると共に、敷設すべき床板の前記実の部分に接着剤を塗布し、相接する床板の実部分を順次接合することによりスラブ上に床板を所定面積敷設することを特徴とする床板の施工法を開示する。
【0010】
【0011】
【作用】
本発明による敷設施工をするに際しては、敷設施工するスラブ面の辺部分近傍に予め接着剤を塗布した状態、あるいは周辺部近傍に位置する床板の裏面のみに接着剤を塗布した状態とすると共に、敷設すべき単位床板の実の部分好ましくは雌実を構成する下辺表面に接着剤を塗布し、敷設施工するスラブ面の辺部分に順次設置する。次いで、別個の単位床板に対して同様にその雌実を構成する下辺表面に接着剤を塗布した後、既に設置した床板に対し、相互の雌実、雄実が接合するように敷設する。以下、同様の作業を繰り返し所定の敷設面積の敷設施工を終了する。それにより、相互に近接する単位床板同志は、一方の雌実に塗布した接着剤によりそこに係合する他方の単位床板の雄実が接着して接合し、一定時間の経過後には全ての単位床板が相互に接着したフローリング床が完成する。
【0012】
【0013】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明をより詳細に説明する。図1から4は本発明の実施に好適な単位床板Bの破断断面図を示している。この単位床板Bは上記した従来用いられてきた単位床板をそのまま用いることができるが、実部分の形状を図示のように食い込み量が大きくかつ平坦面21,21となった雄実、雌実とすることは、好ましい態様であり、それにより単位床板同志の接着面積を広くすることができ、より安定したフローリング面を形成すること可能となる。
【0014】
22はフローリング床面の表面を構成することとなる化粧板部分であり、通常の化粧合板から構成されるが、MDF(中質繊維板)等を基材とした化粧板であってもよい。23は単位床板の実質的厚み部分を構成する木質板部分であり、上記従来例として示したようにハードボードやパーティクルボードのような、通常のラワン合板に比較し、その比重が比較的大きい材料で構成する。それにより、施工後の安定性が確保される。また、24は下面全体に貼着された合成樹脂や天然ゴム等の発泡体あるいは繊維マットのような材料からなるクッション材であり、スラブ表面の凹凸に適応できるようにされている。木質板23には、単位床板Bの長手方向(図1において左右方向)と直行する方向に形成された切欠き25が設けてあり、単位床板がスラブ表面の凹凸に適応して密着し易くする目的で形成される。
【0015】
図2は、単位床板の変形例を示している。この単位床板は、化粧板部分23と木質板部分24との間に中間シートとして弾性シート26を介在させ、緩衝、制振、遮音等の機能を向上させたものである。図3は、単位床板の他の変形例を示している。この単位床板は、木質板部分24とクッション材24との間に遮音シート27を介在させたものであり、一般に遮音シートは鉛粉末を混入した塩ビシートのように比較的比重の大きい素材であることから、この形態の単位床板は施工後により安定した状態を保つことができる効果がある。
【0016】
図4は、単位床板のさらに他の変形例を示しており、弾性シート26及び遮音シート27の双方を介在させたものである。本発明に用いられる単位床板Bは、図1〜4に示すような断面形状を持つ方形板体10を複数個組み合わせて図6に示すような階段状の形状に構成してもよく、また全体を単一の部材により同様な形状に構成してもよい。また、その全体形状も階段状に限るものではなく、4辺に雄実及び雌実を形成しうる形状であれば方形等任意の形状の単位床板を用いることができる。
【0017】
このような単位床板Bをスラブ面C上に敷設する。スラブ面Cはコンクリートスラブ面そのものであってもよく、コンクリートスラブ面状に断熱材としての発泡体を敷設したものであってもよい。敷設すべきスラブ面の好ましくは辺部に対して先ず単位床板Bを設置する(図5には一枚の単位床板のみを敷設した状態を示している)。その際に、各単位床板の実の部分好ましくはその雌実3を構成する下辺表面30部分に接着剤を塗布する(図5において砂地状に示した部分)。辺に沿った一列の配置を終えたのち、次の列の単位床板を同様にその雌実の下辺表面に接着剤を塗布した後、既に設置した床板に対し、相互の雌実、雄実が接合するように敷設する。以下、同様の作業を繰り返し所定の敷設面積の敷設施工を終了する。
【0018】
他の施工法として、敷設施工するスラブ面の辺部分近傍に接着剤を塗布した区域40(図5において同様に砂地状に示している)を作るようにしてもよい。以降の施工は前記の場合と同様にして行う。また、他の施工法として、敷設施工するスラブ面の辺部分に設置される単位床板の裏面に予め接着剤を塗布しておくようにしてもよい。上記のような工法をとる場合には、施工床面の周辺部分に位置する単位床板はスラブ面と接着剤を介して接着することとなり、広い面積にわたり施工する場合において安定した床面を得ることができる。
【0019】
【発明の効果】
本発明の施工法によれば、相互に近接する単位床板同志が、相互に係合する実部分のみが接着して接合した状態で、すなわちスラブ面とは全く接着接合せずに(あるいはスラブ面の辺近傍部分のみにおいて接着接合した状態で)、フローリング床施工ができるので、スラブ面への各単位床板の設置が迅速、容易となり、格別の技術を必要としないことに加え、本発明により施工されたフローリング床にあっては、何らかの都合により床板を張り替えようとする場合に、既存の単位床板を容易にスラブ面から剥がすことができるばかりでなく、剥離後のスラブ面は、その辺近傍に接着剤を塗布した場合にはその部分を除き、スラブ施工直後の同様の平坦な面を維持することとなり、張り替え時の作業性が大幅に向上することができる。また、発明による床板においては、4周に実を形成しており、さらに比重の比較的大きい材料を床板の中間層及び下層部位に配置しかつ実質的に厚み部分を構成する中間層部材にはその長手方向に直行する方向に表面から裏面にわたる切欠き構成したものであることから、接着剤を用いない上記の施工法においても、スラブ面にもよく追従しかつ敷設された後にも安定した状態を保つことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明を実施するのに好適な単位床板を示す断面図。
【図2】
本発明を実施するのに好適な他の単位床板を示す断面図。
【図3】
本発明を実施するのに好適なさらに他の単位床板を示す断面図。
【図4】
本発明を実施するのに好適なさらに他の単位床板を示す断面図。
【図5】
本発明による床板施工法を説明する図。
【図6】
他の単位床板を示す図。
【図7】
図6のA-A線による断面図。
【符号の説明】
B…単位床板、C…スラブ面、10…方形板体、3…実(雌実)、30,40…接着剤塗布部分。
 
訂正の要旨 a.特許請求の範囲の請求項1を削除し、請求項2を請求項1とする。すなわち、特許明細書における【特許請求の範囲】の欄を次のように訂正する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】4周に実を形成した床板をスラブ上に敷設施工する施工法であって、敷設すべき面積の周辺部近傍のスラブ表面のみにあるいは周辺部近傍に位置する床板の裏面のみに接着剤を塗布すると共に、敷設すべき床板の前記実の部分に接着剤を塗布し、相接する床板の実部分を順次接合することによりスラブ上に床板を所定面積敷設することを特徴とする、床板の施工法。
b.これに伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるために、(b-1)明細書の段落【0009】を「【課題を解決するための手段】上記の課題を解決しかつ目的を達成するために、本出願は、4周に実を形成した床板をスラブ上に敷設施工する施工法であって、敷設すべき面積の周辺部近傍のスラブ表面のみにあるいは周辺部近傍に位置する床板の裏面のみに接着剤を塗布すると共に、敷設すべき床板の前記実の部分に接着剤を塗布し、相接する床板の実部分を順次接合することによりスラブ上に床板を所定面積敷設することを特徴とする床板の施工法を開示する。」と訂正し、段落【0010】を削除する。
また、同じ目的で、(b-2)明細書の段落【0011】を「【作用】本発明による敷設施工をするに際しては、敷設施工するスラブ面の辺部分近傍に予め接着剤を塗布した状態、あるいは周辺部近傍に位置する床板の裏面のみに接着剤を塗布した状態とすると共に、敷設すべき単位床板の実の部分好ましくは雌実を構成する下辺表面に接着剤を塗布し、敷設施工するスラブ面の辺部分に順次設置する。次いで、別個の単位床板に対して同様にその雌実を構成する下辺表面に接着剤を塗布した後、既に設置した床板に対し、相互の雌実、雄実が接合するように敷設する。以下、同様の作業を繰り返し所定の敷設面積の敷設施工を終了する。それにより、相互に近接する単位床板同志は、一方の雌実に塗布した接着剤によりそこに係合する他方の単位床板の雄実が接着して接合し、一定時間の経過後には全ての単位床板が相互に接着したフローリング床が完成する。床面の周辺部分に敷設される単位床板は、近接する単位床板同志の実部分における接着接合に加えスラブ面とも接着接合する。広い面積にわたり施工する場合にこの施工法は有効である。」と訂正し、段落【0012】を削除する。
異議決定日 2003-01-06 
出願番号 特願平4-137282
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (E04F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 七字 ひろみ  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 長島 和子
蔵野 いづみ
登録日 2000-05-26 
登録番号 特許第3070882号(P3070882)
権利者 永大産業株式会社
発明の名称 床板の施工法  
代理人 平木 祐輔  
代理人 早川 康  
代理人 早川 康  
代理人 平木 祐輔  

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