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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B26D 審判 全部申し立て 2項進歩性 B26D |
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管理番号 | 1077821 |
異議申立番号 | 異議2002-71579 |
総通号数 | 43 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-04-19 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-06-25 |
確定日 | 2003-03-19 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3241119号「シート材の裁断方法および裁断装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3241119号の請求項1、2に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第3241119号の請求項1及び2に係る発明についての出願は、平成4年9月28日に出願され、同13年10月19日にその発明について特許権の設定の登録がされ、その後、同14年6月25日に、特許異議申立人ガーバー・テクノロジー・インコーポレイテッドより請求項1及び2に係る特許について特許異議の申立てがされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である同15年1月6日に明細書の訂正の請求がされたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正事項 上記訂正の請求による訂正事項は、次のとおりである。 (1) 訂正事項a 設定登録時の願書に添付した明細書又は図面(以下「特許明細書等」という。)の特許請求の範囲の請求項1に記載された 「裁断すべき輪郭線に沿って裁断が行われるように裁断刃の角度を変化させるシート材の裁断方法において、 裁断すべき輪郭線上の各点で、裁断刃の角度を算出し」を、 「裁断すべき部品の輪郭線を構成する連続した点に沿って裁断が行われるように裁断刃の角度を変化させるシート材の裁断方法において、 裁断すべき輪郭線上の各点で、次の点と結ぶ直線の角度として裁断刃の角度を算出し」と訂正する。 (2) 訂正事項b 特許明細書等の特許請求の範囲の請求項2に記載された 「シート材から裁断すべき部品の輪郭線形状が入力されて記憶される輪郭線入力手段と、 輪郭線入力手段の記憶内容を読出し、裁断すべき輪郭線上の各点で、裁断刃の方向を表す角度を算出し、裁断刃の角度が変化している方向に対応して、予め定める角度だけ変化方向と逆方向に補正する制御手段」を、 「シート材から裁断すべき部品の輪郭線形状が連続する点の座標データとして入力されて記憶される輪郭線入力手段と、 輪郭線入力手段の記憶内容を読出し、裁断すべき輪郭線上の各点で、次の点と結ぶ直線の角度として裁断刃の方向を表す角度を算出し、裁断刃の角度が変化している方向に対応して、予め定める角度だけ変化方向と逆方向に補正する制御手段」と訂正する。 (3) 訂正事項c 特許明細書等の段落【0006】に記載された 「裁断すべき輪郭線に沿って裁断が行われるように裁断刃の角度を変化させるシート材の裁断方法において、裁断すべき輪郭線上の各点で、裁断刃の角度を算出し」を、 「裁断すべき部品の輪郭線を構成する連続した点に沿って裁断が行われるように裁断刃の角度を変化させるシート材の裁断方法において、裁断すべき輪郭線上の各点で、次の点と結ぶ直線の角度として裁断刃の角度を算出し」と訂正する。 (4) 訂正事項d 特許明細書等の段落【0007】に記載された 「シート材から裁断すべき部品の輪郭線形状が入力されて記憶される輪郭線入力手段と、輪郭線入力手段の記憶内容を読出し、裁断すべき輪郭線上の各点で、裁断刃の方向を表す角度を算出し、裁断刃の角度が変化している方向に対応して、予め定める角度だけ変化方向と逆方向に補正する制御手段」を、 「シート材から裁断すべき部品の輪郭線形状が連続する点の座標データとして入力されて記憶される輪郭線入力手段と、輪郭線入力手段の記憶内容を読出し、裁断すべき輪郭線上の各点で、次の点と結ぶ直線の角度として裁断刃の方向を表す角度を算出し、裁断刃の角度が変化している方向に対応して、予め定める角度だけ変化方向と逆方向に補正する制御手段」と訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 (1) 訂正事項aは、請求項1における「裁断すべき輪郭線に沿って裁断が行われる」及び「裁断刃の角度を算出し」を「裁断すべき部品の輪郭線を構成する連続した点に沿って裁断が行われる」及び「次の点と結ぶ直線の角度として裁断刃の角度を算出し」と限定しようとするものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。 また、訂正事項aの「裁断すべき部品の輪郭線を構成する連続した点に沿って裁断が行われる」は、特許明細書等の段落【0010】に記載された「パターン入力手段11には、シート材から裁断すべき部品の輪郭線形状が入力されて記憶される。・・・パターン入力手段11の記憶内容は、部品の輪郭線を構成する連続した点の座標データであり」の事項より、また、「次の点と結ぶ直線の角度として裁断刃の角度を算出し」は、特許明細書等の段落【0011】に記載された「ステップa2では、次回の点と今回の点とを結ぶ直線がX軸となす角度として、裁断刃の角度を算出する。」の事項より、特許明細書等に記載された事項の範囲内のものである。 また、訂正事項aの訂正によって発明の目的が変更されるものではないので、訂正事項aは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2) 訂正事項bは、請求項2における「部品の輪郭線形状が入力されて」及び「裁断刃の方向を表す角度」を「部品の輪郭線形状が連続する点の座標データとして入力されて」及び「次の点と結ぶ直線の角度として裁断刃の方向を表す角度」と限定しようとするものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。 また、訂正事項bの「部品の輪郭線形状が連続する点の座標データとして入力されて」は、特許明細書等の段落【0010】に記載された「パターン入力手段11の記憶内容は、部品の輪郭線を構成する連続した点の座標データであり」の事項より、また、「次の点と結ぶ直線の角度として裁断刃の方向を表す角度」は、特許明細書等の段落【0011】に記載された「ステップa2では、次回の点と今回の点とを結ぶ直線がX軸となす角度として、裁断刃の角度を算出する。」の事項より、特許明細書等に記載された事項の範囲内のものである。 また、訂正事項bの訂正によって発明の目的が変更されるものではないので、訂正事項bは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3) 訂正事項c及びdは、訂正事項a及びbで訂正された特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるためのものであるので、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。 また、訂正事項c及びdは、上記(1)及び(2)のとおり、いずれも特許明細書等に記載された事項の範囲内のものであり、また、訂正事項c及びdの訂正によって発明の目的が変更されるもでのはないので、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3 むすび 以上のとおりであるので、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2項及び3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについての判断 1 特許異議の申立ての理由の概要及び取消しの理由の概要 特許異議申立人の申立ての理由の概要は、請求項1及び2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物である米国特許第4140037号明細書(特許異議申立人が提出した甲第1号証の1。以下「引用例1」という。)、特開昭53-132877号公報(同甲第1号証の2。以下「引用例2」という。)、米国特許第4133234号明細書(同甲第2号証の1。以下「引用例3」という。)、特開昭53-132878号公報(同甲第2号証の2。以下「引用例4」という。)、米国特許第4178820号明細書(同甲第3号証。以下「引用例5」という。)、米国特許第4133235号明細書及び米国再発行特許第30757号明細書(同甲第4号証の1。以下「引用例6」という。)、特開昭53-132879号公報(同甲第4号証の2。以下「引用例7」という。)、米国特許第4200015号明細書(同甲第5号証。以下「引用例8」という。)、米国特許第4331051号明細書(同甲第6号証の1。以下「引用例9」という。)、特開昭56-39892号公報(同甲第6号証の2。以下「引用例10」という。)及び米国特許第4380944号明細書(同甲第7号証。以下「引用例11」という。)に記載された発明であるかあるいは引用例1乃至11に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであって、取り消されるべきものというものである。 また、当審で通知した取消しの理由の概要は、上記特許異議の申立ての理由と同様のものである。 2 本件発明 上記第2の3のとおり、上記訂正が認められたので、本件請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1及び2」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】長手方向に沿って刃先が形成される裁断刃をシート材表面に対して垂直方向に突き刺した状態で往復変位させ、刃先との接触部でシート材を裁断し、裁断すべき部品の輪郭線を構成する連続した点に沿って裁断が行われるように裁断刃の角度を変化させるシート材の裁断方法において、 裁断すべき輪郭線上の各点で、次の点と結ぶ直線の角度として裁断刃の角度を算出し、 裁断刃の角度の変化方向に対応して、算出された角度を変化方向と逆方向に、予め定める角度だけ補正することを特徴とするシート材の裁断方法。 【請求項2】長手方向に沿って刃先が形成される裁断刃をシート材表面に対して垂直方向に突き刺した状態で往復変位させ、刃先との接触部でシート材を裁断し、裁断すべき輪郭線に沿って裁断が行われるように裁断刃を角変位させるシート材の裁断装置において、 シート材から裁断すべき部品の輪郭線形状が連続する点の座標データとして入力されて記憶される輪郭線入力手段と、 輪郭線入力手段の記憶内容を読出し、裁断すべき輪郭線上の各点で、次の点と結ぶ直線の角度として裁断刃の方向を表す角度を算出し、裁断刃の角度が変化している方向に対応して、予め定める角度だけ変化方向と逆方向に補正する制御手段と、 制御手段からの出力に応答し、補正された角度に裁断刃を角変位させる角変位手段とを含むことを特徴とするシート材の裁断装置。」 3 引用例記載事項 引用例1乃至11には、次の事項が記載されていると認める。 なお、米国特許明細書と、これとパテントファミリーの関係にある国内特許公報とが提出されているものについては、これらをまとめて、国内特許公報に基づいて引用例に記載された事項を認定した。 (1) 引用例1及び2 ア 引用例1第2欄第33行-第3欄第6行、引用例2第3頁左下欄第3-右下欄17行 「本発明は、自動的に制御される切断機によってシート材を切断する方法に関するものであり、先ず、切断刃とシート材とを切断掛合させた状態で互いに相対的に動かすことによって切断機によるシート材の切断テストを行なう。切断刃は例えば往復運動切断刃とするのが良い。一般に精度の低い切断を生ずる選択した切断条件下で切断テストを行ない、次いで、切断刃を助けるとともに切断機による全切断作業を改善する切断刃およびシート材の特別または補足運動を決定する。 複数の切断テストを行ない、正確な特別の運動を決定した後、選択した切断条件に相関する特別な運動のスケジュールを立てる。このスケジュールを自動制御切断機その他の記憶装置に記録して後に用い得るようにする。後の切断作業中に、切断刃およびシート材を所望の切断通路に沿って互に相対的に動かし、特別な運動のスケジュールを対応する切断条件が生ずる際に利用する。これがため、例えば、切断作業を制御するコンピュータ記憶装置にスケジュールを記憶させた場合、コンピュータが1個以上の選択切断条件を認識する際または特別な切断条件を認識した切断機運転者によって特別な運動を用いることを切断機に指令する場合に、コンピュータによって計算されまたは発生された基本的運動と特別な運動とを組合せることができる。 選択した切断条件下での切断テストを行なうことによって特別な運動の正確な値または大きさを経験的にまたは他の方法によって決定して従来既知の切断方法に対する制限なしに切断を行なうことができる。スケジュールを立てた後、特別な運動および対応する切断条件のスケジュールによって以後の切断作業を極めて高精度で容易に行なうことができ、これにより自動制御切断機の全切断作業を改善することができる。」 イ 引用例1第3欄第54-59行、引用例2第4頁左上欄第11-16行 「コンピュータ12は切断すべき切断通路またはパターン片の形状を限定するプログラムテープ16からのデジタルデータをデジタルの形で読み取り、指令信号を発生して往復運動する切断刃20をテーブル上に案内して切断作業を行なう。」 ウ 引用例1第4欄第36-40行、引用例2第4頁右下欄第1-5行 「プラットフォーム上の他のモータ(図示せず)によって切断刃をシート材に対して垂直なθ軸線の回りに回転して切断刃の向きを切断通路の各点において切断通路の方向にほぼ一致させ得るようにする。」 エ 引用例1第4欄第62行-第5欄第44行、引用例2第5頁左上欄第3行-左下欄第4行 「第2図は剛毛のベット24上に拡げたシート材の積重体Lを切断して前進する切断刃20を後側から図示したものである。図面に示すように、前進する切断刃とシート材との間に発生する力Fは切断刃の左側に作用して不釣衡な横方向荷重または力を生じ、切断刃を破線で示す位置に曲げる傾向がある。したがって、かようにして曲げられた切断刃によって切断されたシート材積重体の下部は切断刃の曲りのために上部とは僅かに異なる形状となる。これから明らかなように、パターン片その他の製品を高精度で切断しなければならない場合に、かかる曲がりおよびその結果は望ましくないものである。 切断刃が前進する際に、切断刃に生ずる力Fは積重ねの状態、布繊維の強さ、繊維と切断通路とがなす角度、切断刃の研ぎ角度、切断刃の鋭利度その他のような多くの因子によって決定される。例えば、第3図は一方向に延びる繊維Fと、これと直角に横切る方向に延びる繊維Tとを有する織布を切断して前進する切断刃を平面図で示す。切断刃が繊維を図示の角度で切断する際、切断刃のテーパ付左前側は繊維Fに対してほとんど平行しており、この平行のため、繊維を切断する前に、切断刃は繊維を僅かに押す傾向がある。これに対応して、繊維は第2図に示すように反力Fを生じ、この力が切断刃に曲がりを生ぜしめる。したがって、切断刃の不釣衡横方向荷重が切断通路または切断刃と切断されるシート材の繊維とのなす角度とともに変化する。不釣衡力の強さはまた切断刃の鋭利度、切断刃の鋭利角度、繊維Tの強さと必ずしも等しくない繊維Fの強さ、および切断刃によって切断する積重体の厚み等によっても変化する。 切断刃に作用する不均衡横方向力は切断刃を切断通路に対して僅かな角度で傾けて前進させることによって反作用させることができ、これがため、シート材に対してほぼ垂直をなす軸線の周りに切断刃を回転して不均衡力が作用する切断通路側に対して切断刃の向きを僅かに傾ける。切断刃の向きを切断通路に対して予定量で傾けることによって、所望の切断通路を追跡する精度を改善することができる。理想的切断を行うため、傾斜量を正確に決定する必要がある。」 オ 引用例1第6欄第35-61行、引用例2第6頁左上欄第17行-右上欄第16行 「補足の傾き値のスケジュールを決定した後、対応する切断条件に合してスケジュールを用いて切断した。スケジュールを切断装置運転者によって選定してコンピュータ12に記憶させることにより利用することができる。その方法を簡単に説明すると、コンピュータ12が発生する基本的指令は切断刃に外部の影響がない場合に切断刃を所望の切断通路に沿って切線方向に案内する基本的運動を生ずる。切断テーブル上に拡げたシート材の積重体が織地その他の特性を有し、これらの特性に対する補足の傾き移動スケジュールが既に決定されている場合、切断装置の運転者はスケジュールを定義する理想的プログラムを選択する。次で、組合せた基本および補足指令に応答して切断刃を下してシート材に切断掛合させる。指令は基本的および特別な切断刃運動の組合せを生じ、これにより切断刃は前の切断テストによって決定された傾きで切断通路を横切る。シート材に切断されて得られるパターンは極めて高精度で形成され、切断装置全体としての機能を向上することができる。」 カ 引用例1第7欄第4-9行、引用例2第6頁左下欄第5-10行 「第2および第3図につき前述したように、切断刃に作用する不釣合横方向力が切断誤差を生ずる。したがって、かかる力に反作用させて無効にする場合には、切断刃は曲がりを生ずることなく切断通路に沿って移動し、更に正確な切断を行なうことができる。」 キ 引用例1第8欄第10-16行、引用例2第7頁右上欄第12-17行 「第8図は彎曲切断通路Cを示し、図面において切断刃20の位置を切断通路Cに沿う順次の場合で示す。切断通路がほぼ直線である場合、切断刃を切断通路に整列一致させて維持するが、しかし、通路が彎曲している場合には、切断刃の向きを彎曲通路の内側に向け僅かに傾ける。」 (2) 引用例3及び4 ア 引用例3第6欄第14-20行、引用例4第6頁左下欄第3-9行 「メモリー54に記憶されたパターンデータをコンピュータ内の計算回路60によって指令データとし、これらの指令を切断テーブル上のサーボモータ駆動装置に明瞭な形で実際時間に出力する。パターンデータはバッフアー62を経てコンピュータに入り、その計算回路はデータを必要に応じ読取る。」 イ 引用例3第7欄第17-23行、引用例4第7頁右上欄第13-19行 「精度を高めるために切断刃を切断通路との整列位置から外して回転することは矛盾すると考えられるが、かかる方法は精度を向上させる目的にとって有効であり、この理由は、切断刃に横方向の力が作用し、この力が切断刃を所定の進路とは異なる通路に進ませるからである。」 ウ 引用例3第14欄第24-31行、引用例4第12頁右下欄第12-18行 「さらにまた、切断刃252を切断テーブル254に対して垂直をなすθ軸線の周りに担体266上のθ駆動モータ286(第17図参照)によって回転し、他のモータ(図示せず)によって積重体Lとの切断掛合の内外に上下動させる。切断刃を往復運動させるためのモータ(図示せず)をもまたY担体266上に取付ける。」 (3) 引用例5 第7欄第20-26行 「精度を高めるために切断刃を切断路との整列位置から回転することは矛盾すると考えられるが、かかる方法は精度を向上させる目的にとって有効であり、この理由は、切断刃に横方向の力が作用し、この力が切断刃の所定の(切断刃が向かっている)進路とは異なる通路に進ませるからである。」 (4) 引用例6乃至8 ア 引用例6の米国特許第4133235号明細書第5欄第54-64行、引用例7第6頁右下欄第9-18行、 引用例8第5欄第58-68行 「例えば、切断刃とシート材との相互作用によって発生される切断刃の横方向荷重を用いてθ指令信号に偏揺信号を加え、これにより切断刃を切断通路に整列する位置から僅かに回転してはずす。ロジック回路70によって生ずる偏揺信号は切断刃を回転させ、切断刃に横方向の力が加わる切断通路側に向けて切断縁の向きを僅かに変化させ、切断刃が切断通路に沿って前進する際に加わる横方向力を減少し、完全に零にする。」 イ 引用例6の米国特許第4133235号明細書第6欄第12-19行、引用例7第7頁左上欄第13-20行、引用例8第6欄第16-23行 「切断刃を偏揺信号によって横方向力が加わる切断通路側に向けて回転することによって切断刃が前進する際に切断刃とシートとの間のアンバランス力を減少させ、好ましくは零にする。横方向力を減少させる際、切断刃の曲り及びシート材の位置ずれもまた減少し、切断刃はプログラムされた通りの切断通路に沿ってシート材を遥かに正確に切断する。」 ウ 引用例8第6欄第55-63行 「この繊維が押されると、繊維は反作用の力を切断刃上に及ぼし、シート材のレイアップでは力の合計は相当大きいものになり、図5に示した湾曲させる力を発生する。同様の作用はニット地または他の材料において観察される。図6に示した現象に影響を及ぼす要素には、切断刃と繊維との角度関係、角度の鋭さ、切断刃の切れ味、大きさ及び鋭さ、及び繊維の強度が含まれる。」 エ 引用例8第7欄第8-14行 「図2に示すように閉ループ制御システム内に接続された側方負荷センサを用いて、図7の切断刃は最接近する地点に向けて移動し、切断刃の左側では支持力がより弱くかつ右側ではより荷重力が高いために、切断経路PIとのアライメントからわずかに離れかつ先の切断部から離れて回転される。」 オ 引用例8第7欄第58-61行 「上記のように、変位及びθ命令信号は、センサ76によって検出された切断パラメータによって、個別にまたは組み合わせて修正することができる。さらに、この検出された切断パラメータは、切断刃速度またはストローク速度等の他の制御変数を補正または修正するために使用されてよい。」 (5) 引用例9乃至11 ア 引用例9第4欄第10-14行、引用例10第5頁左上欄第3-7行、引用例11第4欄第14-18行 「往復動する切断刃20を切断経路Pに沿って移動させるためコンピュータによりプログラム・テープ16から取出されるデジタル化したデータに応答して移送台26及び28の整合した動きが生ずる。」 イ 引用例9第4欄第22-24行、引用例10第5頁左上欄第15-17行、引用例11第4欄第26-28行 「モータ44及び回動可能なプラットフォームは切断経路P上の各点において切断用刃を指向させる作用をなす。」 ウ 引用例9第6欄第1-17行、引用例10第6頁左下欄第1-17行、引用例11第6欄第5-21行 「前述の米国特許第4,133,235号明細書の教示するところによれば、非平衡荷重のかかる方の切断経路の側に切込み刃をわずかに向け、あるいはぶれさせるため柔軟性シート材料により刃20にかかる非平衡の横荷重が検出され、第2図の閉ループ制御において用いられる。刃をこのように指向させることにより、非平衡力に抗力が生じて非平衡が刃の進むに従って好ましくは0にまで減少する。この力が減少すると刃の曲げ及び材料の変位も減少し、刃はより正確に、プログラムされたようにシート材料を通る切断経路を進む。 第2図において非平衡の横荷重を検出するため横荷重検出器76が切込み用刃20と結合されている。この検出器は検出された荷重と反対側に刃をぶれさせるためQ方向指令チャンネルにおけるぶれ修正回路にフィードバックされる荷重信号を与える。」 4 本件発明と引用例に記載された発明との対比・判断 (1) 本件発明1について 本件発明1は、上記2のとおりのものであって、「裁断すべき輪郭線上の各点で、次の点と結ぶ直線の角度として裁断刃の角度を算出し、裁断刃の角度の変化方向に対応して、算出された角度を変化方向と逆方向に、予め定める角度だけ補正する」という事項を構成要件とするものであるのに対し、引用例1乃至11には、例えば、引用例2第6頁右上欄第2-5行に、「コンピュータ12が発生する基本的指令は切断刃に外部の影響がない場合に切断刃を所望の切断通路に沿って切線方向に案内する基本的運動を生ずる。」と記載され、引用例2第7頁右上欄第12-17行に、「第8図は彎曲切断通路Cを示し、図面において切断刃20の位置を切断通路Cに沿う順次の場合で示す。切断通路がほぼ直線である場合、切断刃を切断通路に整列一致させて維持するが、しかし、通路が彎曲している場合には、切断刃の向きを彎曲通路の内側に向け僅かに傾ける。」と記載され、引用例10第6頁左下欄第1-17行に、「前述の米国特許第4,133,235号明細書の教示するところによれば、非平衡荷重のかかる方の切断経路の側に切込み刃をわずかに向け、あるいはぶれさせるため柔軟性シート材料により刃20にかかる非平衡の横荷重が検出され、第2図の閉ループ制御において用いられる。刃をこのように指向させることにより、非平衡力に抗力が生じて非平衡が刃の進むに従って好ましくは0にまで減少する。この力が減少すると刃の曲げ及び材料の変異も減少し、刃はより正確に、プログラムされたようにシート材料を通る切断経路を進む。第2図において非平衡の横荷重を検出するため横荷重検出器76が切込み用刃20と結合されている。この検出器は検出された荷重と反対側に刃をぶれさせるためQ方向指令チャンネルにおけるぶれ修正回路にフィードバックされる荷重信号を与える。」と記載されているように、上記構成要件と類似する事項が記載されているものの、上記構成要件については記載されていない。 そして、本件発明1は、上記構成要件を具備することにより、曲線状に輪郭線を切断する際に、算出された角度の変化方向と逆方向である曲線状の輪郭線の外側に予め定める角度だけ補正されるのに対し、引用例1乃至11に記載された発明では、例えば、引用例2第8図に示されているように曲線状の輪郭線の内側に傾けられており、両者は、補正の方向が逆方向となるものである。 また、引用例1乃至11には、上記構成要件の「算出された角度を変化方向と逆方向に、予め定める角度だけ補正する」点について、示唆もされていない。 以上のとおりであるので、本件発明1は、引用例1乃至11のいずれかに記載された発明であるとすることはできず、また、引用例1乃至11に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。 (2) 本件発明2について 本件発明2と引用例1乃至11に記載された発明とを対比すると、引用例1乃至11には、上記「(1) 本件発明1について」で述べたような事項が記載されているが、本件発明2の構成要件である「輪郭線入力手段の記憶内容を読出し、裁断すべき輪郭線上の各点で、次の点と結ぶ直線の角度として裁断刃の方向を表す角度を算出し、裁断刃の角度が変化している方向に対応して、予め定める角度だけ変化方向と逆方向に補正する制御手段」が記載されておらず、示唆もされていない。 そして、本件発明2は、上記構成要件を具備することにより、上記「(1) 本件発明1について」で述べたように、曲線状に輪郭線を切断する際の角度補正の方向が引用例1乃至11に記載された発明の方向と逆方向になるものである。 以上のとおりであるので、本件発明2は、引用例1乃至11のいずれかに記載された発明であるとすることはできず、また、引用例1乃至11に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。 5 むすび 以上のとおりであるから、請求項1及び2に係る特許は、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては取り消すことができない。 また、他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 シート材の裁断方法および裁断装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 長手方向に沿って刃先が形成される裁断刃をシート材表面に対して垂直方向に突き刺した状態で往復変位させ、刃先との接触部でシート材を裁断し、裁断すべき部品の輪郭線を構成する連続した点に沿って裁断が行われるように裁断刃の角度を変化させるシート材の裁断方法において、 裁断すべき輪郭線上の各点で、次の点と結ぶ直線の角度として裁断刃の角度を算出し、 裁断刃の角度の変化方向に対応して、算出された角度を変化方向と逆方向に、予め定める角度だけ補正することを特徴とするシート材の裁断方法。 【請求項2】 長手方向に沿って刃先が形成される裁断刃をシート材表面に対して垂直方向に突き刺した状態で往復変位させ、刃先との接触部でシート材を裁断し、裁断すべき輪郭線に沿って裁断が行われるように裁断刃を角変位させるシート材の裁断装置において、 シート材から裁断すべき部品の輪郭線形状が連続する点の座標データとして入力されて記憶される輪郭線入力手段と、 輪郭線入力手段の記憶内容を読出し、裁断すべき輪郭線上の各点で、次の点と結ぶ直線の角度として裁断刃の方向を表す角度を算出し、裁断刃の角度が変化している方向に対応して、予め定める角度だけ変化方向と逆方向に補正する制御手段と、 制御手段からの出力に応答し、補正された角度に裁断刃を角変位させる角変位手段とを含むことを特徴とするシート材の裁断装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、布帛などのシート材を、特に積層した状態で所望のパターンに裁断するためのシート材の裁断方法および裁断装置に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来から衣服などを縫製するためには、生地を延反し、マーキングされた輪郭線に沿って裁断する必要がある。たとえば図12に示すように、所望の部品パターンの輪郭線に沿って部品パターン1を切抜く。裁断には長方形の長手方向に沿って刃が形成され、上下動させて裁断を行う直刃が一般に多用されている。急角度の裁断が可能で、生地を多く積層することもできるからである。 【0003】 裁断機には、電気を動力源として裁断刃の上下動を行わせて移動は人手によって行う電気裁断機と、裁断刃が取付けられる裁断ヘッドが自動的に移動して裁断を行う自動裁断機とがある。自動裁断機では、裁断ヘッドがXYテーブル上で2次元的に移動する。裁断ヘッドでは裁断刃が上下動するとともに切断方向を変化するための角変位を行う。図12図示のような曲線状の輪郭線2を裁断するときには、裁断ヘッドが輪郭線2に沿って移動するとともに、裁断刃の角変位も行われる。このようなシート材の裁断についての先行技術は、たとえば特公昭57-61557号公報に開示されている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 従来から、図12図示のような部品パターン1は、その輪郭線2に沿って裁断刃を案内して裁断している。しかしながら、シート材である生地を積層して裁断するときには、その裁断枚数が多くなるに従って、曲線部での実際の裁断線3に対してdの誤差が大きくなる。たとえば、綿100%の生地を60枚、18mmの厚さとなるように積層した状態で裁断すると、誤差dは約1mmとなる。同じく綿100%の生地を3枚だけ積層した状態で裁断するときには、誤差dはほとんど零であり、輪郭線2と裁断線3とはほとんど一致する。図12図示の誤差dが発生する原因としては、図13図示のように、裁断線3に沿って移動中の裁断刃4に対して、Fの力が加わって裁断刃4の刃先が撓んだり、捻れたり、あるいは裁断刃4の角変位機構のいわゆるクリアランスなどの「バックラッシュ」によって、裁断刃の変位角度がさらに大きくなるからであると予想される。裁断刃4は高速で上下動し、その状態で角変位される。裁断刃4は裁断ヘッド内でローラなどによって支持されている。裁断ヘッド外では、裁断刃4は片持ち梁として自由端側に荷重を受ける。シート材の積層枚数が多くなれば裁断刃4が裁断ヘッドから突出する部分に受ける力も大きくなり、撓みや捻れも大きくなる。さらに裁断刃4は、上下動可能に支持されるので、角変位方向には多少の「バックラッシュ」が生じる。 【0005】 本発明の目的は、裁断刃の撓みや「バックラッシュ」による裁断時の誤差を少なくすることができるシート材の裁断方法および裁断装置を提供することである。 【0006】 【課題を解決するための手段】 本発明は、長手方向に沿って刃先が形成される裁断刃をシート材表面に対して垂直方向に突き刺した状態で往復変位させ、刃先との接触部でシート材を裁断し、裁断すべき部品の輪郭線を構成する連続した点に沿って裁断が行われるように裁断刃の角度を変化させるシート材の裁断方法において、 裁断すべき輪郭線上の各点で、次の点と結ぶ直線の角度として裁断刃の角度を算出し、 裁断刃の角度の変化方向に対応して、算出された角度を変化方向と逆方向に、予め定める角度だけ補正することを特徴とするシート材の裁断方法である。 【0007】 また本発明は、長手方向に沿って刃先が形成される裁断刃をシート材表面に対して垂直方向に突き刺した状態で往復変位させ、刃先との接触部でシート材を裁断し、裁断すべき輪郭線に沿って裁断が行われるように裁断刃を角変位させるシート材の裁断装置において、 シート材から裁断すべき部品の輪郭線形状が連続する点の座標データとして入力されて記憶される輪郭線入力手段と、 輪郭線入力手段の記憶内容を読出し、裁断すべき輪郭線上の各点で、次の点と結ぶ直線の角度として裁断刃の方向を表す角度を算出し、裁断刃の角度が変化している方向に対応して、予め定める角度だけ変化方向と逆方向に補正する制御手段と、 制御手段からの出力に応答し、補正された角度に裁断刃を角変位させる角変位手段とを含むことを特徴とするシート材の裁断装置である。 【0008】 【作用】 本発明に従えば、裁断刃の角度は、変化方向と逆方向に予め定める角度だけ補正される。裁断刃の角度の変化方向が一方向から他方向に変化するとき、裁断刃の方向の変化角の絶対値は減少する。裁断刃の方向の変化方向が一方向に変化しているときには、裁断刃の撓みや捻れや「バックラッシュ」の影響は同じように表れる。変化方向が一方向から他方向に移行するときには、撓みや捻れや「バックラッシュ」の影響で、変化角が大きくなる。このため、変化角の絶対値を、たとえば大きくなる変化角を相殺するように小さくすることによって、輪郭線を裁断するときの誤差を小さくすることができる。 【0009】 また本発明に従えば、制御手段は、輪郭線入力手段の記憶内容から、輪郭線上の各点で、裁断刃の方向を表す角度を算出する。裁断刃の角度が一方向に変化している状態から他方向に変化する状態に移行するときには、裁断刃の角度の絶対値は小さく補正される。角変位手段は、補正された角度に裁断刃を角変位させるので、裁断刃の撓みや捻れや「バックラッシュ」によって変化角が大きくなっても、裁断すべき輪郭線からのずれを小さくすることができる。 【0010】 【実施例】 図1は、本発明の一実施例による裁断装置の概略的な電気的構成を示す。パターン入力手段11には、シート材から裁断すべき部品の輪郭線形状が入力されて記憶される。このようなパターン入力手段11は、たとえば衣服をデザインするCAD装置やCAD装置で作成されたデータを記憶するフロッピィディスク装置などで構成される。パターン入力手段11の記憶内容は、部品の輪郭線を構成する連続した点の座標データであり、コンピュータを含む制御装置12によって読取られる。制御装置12は、部品の輪郭線に沿って裁断刃を2次元的に移動させるため、X軸モータ13およびY軸モータ14を制御する。シート材を裁断するときには裁断刃をシート材中に突刺し、シート材を裁断しないときにはシート材表面から裁断刃を引き上げるためのZ軸エアシリンダ15も、制御手段12によって制御される。制御手段12は、さらに、輪郭線に沿って裁断するために、裁断刃を角変位させるための角変位手段であるR軸モータ16も制御する。 【0011】 図2は、図1図示の制御手段12が、パターン入力手段11の記憶内容に従って、輪郭線に沿って裁断を行うときR軸モータ16に関する制御動作を示す。輪郭線を構成する各点毎に、ステップa1から動作を開始する。ステップa2では、次回の点と今回の点とを結ぶ直線がX軸となす角度として、裁断刃の角度を算出する。裁断刃の角度は、反時計回りを正方向とする。今回の点での裁断刃の角度に対する前回の点での裁断刃の角度の差として、反時計回りを正方向とする変化角を算出する。ステップa3では、前回の点と今回の点との間の距離と変化角とに基づいて、直線と曲線とを区別する。曲線のときは、ステップa4で、変化角の符号を判断する。負のときはステップa5、正のときはステップa6にそれぞれ移る。ステップa5では、裁断刃の角度に右回り時の補正量を加える。ステップa6では、裁断刃の角度から左回り時の補正量を減らす。すなわち、変化角の符号と逆の方向に裁断刃の角度を補正する。ステップa3、ステップa5およびステップa6の動作が終了すると、ステップa7に移り、今回の処理を終了する。 【0012】 図3は、裁断刃に生じる裁断方向の誤差を示す。裁断刃の撓みや捻れ、角変位方向に関するバックラッシュなどのために、参照符17で示す裁断刃の基準状態から、参照符18または19で示す、左または右へ角変位する状態では、それぞれβまたはαの角度だけ角変位量が大きくなる。ここで、α>0,β>0とする。 【0013】 図3図示のような角変位量の誤差を有する裁断刃を用いて、接線方向の角度が変化するときの刃の角度変更状態を図4および図5に示す。図4では、AからBまでと、BからCまでとは一直線状に裁断されるけれども、B点でγ度だけ切断方向が変化する。したがって、実際の切断刃の角度変化は、βだけ絶対値の小さいγ-βとなる。図5では、変化角の符号が変化する点をM,N,O,Pで示す。各点M,N,O,Pで算出される裁断刃の角度をそれぞれm,n,o,pとすると、補正後の角度はそれぞれm-β,n+α,o-β,p+αとなる。機械によって、αおよびβの誤差は異なるけれども、これらを零にすることは不可能に近い。 【0014】 図5図示の点Kが点Nの直前の点であるとする。点Kにおける裁断刃の角度は、算出値をkとすると、補正値はk-βとなる。したがって、裁断刃の角度の変化方向が同一である点Mと点Kとの間の補正値の差は、(k-β)-(m-β)=k-mとなり、補正の影響は現れない。裁断刃の角度の変化方向が異なる点Kと点Nとの間の補正値の差は、(n+α)-(k-β)=-{(k-n)-(α+β)}となる。図5図示のように、k>nであり、この差j=k-n>0であるとき、α,βの実際の値はjに比して小さいので、補正後の変化角の絶対値はj-(α+β)となり、補正の影響で小さくなる。 【0015】 図6は、図1図示の実施例に用いる自動裁断機20の外観を示す。多数の剛毛が植付けられたブラシテーブル21は、下方から真空吸引されて、その表面に生地などのシート材を積層した状態で保持することができる。裁断ヘッド22はYビーム23上を往復移動することができる。Yビーム23は、ブラシテーブル21の長手方向に沿って、Yビーム23の長手方向と垂直に往復移動することができる。ブラシテーブル21の長手方向はX軸であり、Yビーム23の長手方向がY方向となる。裁断ヘッド22は、Yビーム23の移動によってX方向に移動可能であり、裁断ヘッド22自体のYビーム23上の移動によってY方向に移動可能である。Yビーム23の一方端には操作部24が設けられる。裁断ヘッド22の移動は、フロッピーディスク装置25に挿入されるフロッピーディスク上の裁断データによって制御される。フロッピーディスク装置25には、デザイン用のCAD装置などによって作成した裁断すべき部品のデータが記憶されている。シート材である生地は、生地搬入側からエアーテーブル26上を経て供給される。エアーテーブル26は生地の供給時には空気を噴出させて生地を浮遊させる。ブラシテーブル21は、コンベアループ上部の水平面で構成され、真空吸引しながら供給された生地を生地搬出側に搬送する。 【0016】 生地がブラシテーブル21上に広げられると、ブラシテーブル21は静止し、裁断ヘッド22が移動して裁断が行われる。裁断が終了すると、ブラシテーブル21は再び搬送を開始し、生地搬出側のエアーテーブル27から噴出される空気によって浮遊させられた状態で、裁断された部品は搬出される。裁断時に真空吸引を確実に行うために、積層された生地の表面にはビニールシート28が被せられる。裁断ヘッド22は、ビニールシート28で覆われた状態の生地を裁断する。裁断されると、裁断線に沿って空気が漏れるので、さらに真空吸引による生地の保持を確実にするため、密閉ビニールシート29が裁断後の部品を覆う。安全のため、自動裁断機20の4隅には非常停止スイッチ30が設けられる。 【0017】 図7は、図6図示の裁断ヘッド22の内部構造を示す。裁断ヘッド22の下方には、生地押えのためのプレッサーフット31が設けられる。プレッサーフット31の上方にはカバー32が設けられ、その内部には裁断刃を支持する機構が収納される。目打ちドリル33は、ドリルモータ34によって駆動され、目打ちを行うために使用される。裁断ヘッド22内には、裁断刃を角変位させるためのR軸モータ16も設けられる。 【0018】 図8は、図7図示のカバー32を取外した状態のプレッサーフット31付近の構造を示す。プレッサーフット31の下部には、生地押え35が形成される。プレッサーフット31の上部には位置決め用のピン36が立設される。ナイフガイド37は、溝38に沿って裁断刃を案内する。砥石ホルダ39に取付けられる砥石40は、裁断刃を研磨する。 【0019】 図9は、裁断刃41による裁断状態を示す。裁断刃41は、上下動によって、41aの状態まで変位する。角変位用のR軸モータは、取付部材42に取付けられる。R軸駆動プーリ43は、R軸モータ軸44に固定される。R軸駆動プーリ43からは、タイミングベルト45が、R軸従動プーリ46に掛け渡される。R軸従動プーリ46は、軸受47によって軸支される裁断刃41の角変位機構に固定される。裁断刃41は、継手48によって、上方の上下駆動機構に接続される。裁断刃41は、ナイフガイドローラ49,50によって上下動可能に支持される。プレッサーフット31下方の生地押え35は、表面がビニールシート28で覆われている積層された複数の生地51〜59を上方から押える。生地51〜59は、ブラシテーブル21の表面に積層される。ブラシテーブル21は多数の剛毛を有し、裁断刃41が進入した部分では、剛毛が逃げて裁断刃が参照符41aの状態となるように進入することを許容する。 【0020】 図10は図9図示の切断面線X-Xから見た裁断刃41を角変位させる機構を示し、図11は図9図示の切断面線XI-XIから見たプレッサーフット31上で裁断刃41を保持する機構を示す。裁断刃41は、ナイフガイド31およびガイドホルダ60によって支持され、プレッサーフット31の中央に設けられるナイフ孔61に挿通される。裁断刃41は、上下動可能にナイフガイドローラ49,50によって支持されている。しかしながら、ガイドローラ49,50などが回転可能であるためには、回転軸に多少の「バックラッシュ」が必要である。またタイミングベルト45などにも伸び縮みは発生する。これらの集積は裁断刃41の回転に対する「バックラッシュ」となる。 【0021】 本実施例によれば、裁断刃の撓みや捻れ、あるいは角変位方向による「バックラッシュ」などの影響を、曲線を裁断するときに補正して輪郭線からの裁断線のずれを小さくすることができる。 【0022】 【発明の効果】 以上のように本発明によれば、裁断刃の角度の変化が一方向から他方向に移行するときには、裁断刃の変化角の絶対値を予め定める量だけ小さくする。この小さくする角度を、裁断刃の受ける撓みや捻れや角変位軸に関する「バックラッシュ」に相当させることによって、裁断すべき輪郭線からのずれを小さくすることができる。 【0023】 また本発明によれば、輪郭線入力手段に入力されて記憶される部品の輪郭線形状を制御手段が読出し、輪郭線の接線方向に対応して裁断刃の角度を算出する。裁断刃の角度が一方向に変化している状態から他方向に変化する状態に移行するときには、変化角の絶対値を小さく補正するので、裁断刃が角変位されるとき、裁断刃の撓みや捻れや角変位軸の「バックラッシュ」によって裁断時の変化角が大きくなっても、裁断すべき輪郭線からのずれを小さくすることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の一実施例による裁断装置の概略的な電気的構成を示すブロック図である。 【図2】 図1図示の制御手段の動作を示すフローチャートである。 【図3】 裁断刃のずれを示す概略的な平面図である。 【図4】 図1図示の実施例による裁断を行う裁断線を示す概略的な平面図である。 【図5】 図1図示の実施例による裁断を行う裁断線を示す概略的な平面図である。 【図6】 図1図示の実施例による自動裁断機の外観を示す斜視図である。 【図7】 図6図示の裁断ヘッド22の内部構成を示す斜視図である。 【図8】 図7図示のカバー32を外した状態を示す斜視図である。 【図9】 図6図示の裁断ヘッド22による裁断状態を示す断面図である。 【図10】 図9図示の切断面線X-Xから見た裁断刃41を角変位させる機構を示す平面図である。 【図11】 図9図示の切断面線XI-XIから見た断面図である。 【図12】 従来からの裁断方法による裁断線を示す平面図である。 【図13】 裁断状態のときに裁断に働く力を示す概略的な平面図である。 【符号の説明】 11 パターン入力手段 12 制御手段 13 X軸モータ 14 Y軸モータ 15 Z軸エアシリンダ 16 R軸モータ 20 自動裁断機 21 ブラシテーブル 22 裁断ヘッド 25 フロッピーディスク装置 28 ビニールシート 31 プレッサーフット 32 カバー 35 生地押え 37 ナイフガイド 38 溝 40 砥石 41 裁断刃 45 タイミングベルト 49,50 ナイフガイドローラ 51〜59 生地 60 ガイドホルダ |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2003-03-03 |
出願番号 | 特願平4-258569 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YA
(B26D)
P 1 651・ 121- YA (B26D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 丸山 英行 |
特許庁審判長 |
小林 武 |
特許庁審判官 |
高山 芳之 宮崎 侑久 |
登録日 | 2001-10-19 |
登録番号 | 特許第3241119号(P3241119) |
権利者 | 株式会社島精機製作所 |
発明の名称 | シート材の裁断方法および裁断装置 |
代理人 | 杉山 毅至 |
代理人 | 筒井 大和 |
代理人 | 小塚 善高 |
代理人 | 西教 圭一郎 |
代理人 | 廣瀬 峰太郎 |
代理人 | 廣瀬 峰太郎 |
代理人 | 西教 圭一郎 |
代理人 | 杉山 毅至 |