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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B65D 審判 全部申し立て 特29条の2 B65D |
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管理番号 | 1077836 |
異議申立番号 | 異議2002-71970 |
総通号数 | 43 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1997-12-22 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-08-07 |
確定日 | 2003-04-07 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3256437号「CD等の収納容器」の請求項1〜3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3256437号の請求項1〜3に係る特許を維持する。 |
理由 |
<1>手続の経緯 本件特許第3256437号発明についての出願は、平成8年6月6日に出願され、その発明について平成13年11月30日に設定の登録がなされ、その後、請求項1〜3に係る発明の特許に対して、異議申立人伊藤 謙より特許異議の申立てがなされたものであり、当審において取消理由が通知され、その指定期間内の平成15年2月21日に特許権者から特許異議意見書、訂正請求書が提出されたものである。 <2>訂正の適否についての判断 特許権者は、訂正明細書のとおり訂正することを求めており、その内容は、次の<訂正A〜D>のとおりである。 <2-1>訂正の内容 <訂正A> 特許請求の範囲の 「【請求項1】 CDケースが出し入れ可能な開口部を背面に有した収納容器本体と、該収納容器本体の上端部にCDケースの取り出しを制限する押し込み式のロック機構とを備え、該ロック機構のロック部材が前記CDケースと前記収納容器本体との間に存在する隙間に突出してロックされることを特徴とするCD等の収納容器。」 を、 「【請求項1】CDケースが出し入れ可能な開ロ部を背面に有した収納容器本体と、該収納容器本体の上端部にCDケースの取り出しを制限する押し込み式のロック機構とを備え、 該ロック機構は、係合段部を有し且つ後退する方向に付勢されたロック部材と、該ロック部材をCDケースに向けて垂直に押し込むと前記係合段部に係合してロック状態を保持するロック部材側に付勢された板バネとを有し、 前記ロック機構のロック部材が前記CDケースと前記収納容器本体との間に存在する隙間に突出してロックされることを特徴とするCD等の収納容器。」 と、訂正する。 <訂正B> 本件明細書の 「【0006】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明のCD等の収納容器は、CDケースが出し入れ可能な開口部を背面に有した収納容器本体と、該収納容器本体の上端部にCDケースの取り出しを制限する押し込み式のロック機構とを備え、該ロック機構のロック部材が前記CDケースと前記収納容器本体との間に存在する隙間に突出してロックされることを特徴とするものである。また、前記収納容器本体に形成された開口部には、上端部と下端部に係止突起を有したものであることを特徴とするものである。」 を、 「【0006】【課題を解決するための手段】上記日的を達成するために、本発明のCD等の収納容器は、CDケースが出し入れ可能な開ロ部を背面に有した収納容器本体と、該収納容器本体の上端部にCDケースの取り出しを制限する押し込み式のロック機構とを備え、該ロック機構は、係合段部を有し且つ後退する方向に付勢されたロック部材と、該ロック部材をCDケースに向けて垂直に押し込むと前記係合段部に係合してロック状態を保持するロック部材側に付勢された板バネとを有し、前記ロック機構のロック部材が前記CDケースと前記収納容器本体との間に存在する隙間に突出してロックされることを特徴とするものである。また、前記収納容器本体に形成された開口部には、上端部と下端部に係止突起を有したものであることを特徴とするものである。」 と、訂正する。 <訂正C> 本件明細書の 「【0020】【発明の効果】以上説明したように、本発明のCD等の収納容器では、CDケースが出し入れ可能な開口部を背面に有した収納容器本体と、該収納容器本体の上端部にCDケースの取り出しを制限する押し込み式のロック機構を備え、該ロック機構のロック部材が前記CDケースと前記収納容器本体との間に存在する隙間に突出してロックされるので、CDを背面から挿入した後に、ロック機構を押すだけでロックする事ができる。このため、施錠動作が容易である。」 を、 「【0020】【発明の効果】以上説明したように、本発明のCD等の収納容器では、CDケースが出し入れ可能な開ロ部を背面に有した収納容器本体と、該収納容器本体の上端部にCDケースの取り出しを制限する押し込み式のロック機構とを備え、該ロック機構は、係合段部を有し且つ後退する方向に付勢されたロック部材と、該ロック部材をCDケースに向けて垂直に押し込むと前記係合段部に係合してロック状態を保持するロック部材側に付勢された板バネとを有し、前記ロック機構のロック部材が前記CDケースと前記収納容器本体との間に存在する隙間に突出してロックされるので、CDを背面から挿入した後に、ロック機構を押すだけでロックする事ができる。このため、施錠動作が容易である。」 と、訂正する。 <2-2>訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の有無 上記訂正Aは、訂正前の請求項1に記載された 「押し込み式のロック機構とを備え、該ロック機構のロック部材が」を、 「押し込み式のロック機構とを備え、該ロック機構は、係合段部を有し且つ後退する方向に付勢されたロック部材と、該ロック部材をCDケースに向けて垂直に押し込むと前記係合段部に係合してロック状態を保持するロック部材側に付勢された板バネとを有し、前記ロック機構のロック部材が」 と、限定して訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、上記訂正B及びCは、上記訂正Aに伴う訂正であって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 上記訂正Aの訂正しようとする事項は、訂正前の明細書の詳細な説明の段落【0013】【0015】【0016】【0018】に記載されている事項であり、上記訂正A乃至Cは、願書に添付した明細書又は図面に記載された範囲内のものであって、かつ、これらの訂正により実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 <2-3>むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び第3項で準用する第126条第2,3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 <3>特許異議の申立てについての判断 <3-1>申立ての理由の概要 異議申立人は、証拠として次の甲第1〜3号証を提出し、請求項1〜3に係る発明は、下記の理由により特許を受けることができないから、それらの特許は取り消されるべきものである、と主張する。 甲第1号証:特願平7-192932号(特開平9-41748号公報参照) 甲第2号証:米国特許第5289914号明細書 甲第3号証:特開平8-4393号公報 理由1: 本件請求項1及び2に係る発明は、本件発明の出願前の出願であって、当該出願後の公開された特願平7-192932号(特開平9-41748号)の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。甲第1号証参照)に記載された発明と同一であるから、請求項1及び2に係る発明の特許は、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができない。 理由2: 本件請求項1〜3に係る発明は、甲第2及び3号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <3-2>本件発明 上記「<2>訂正の適否についての判断」において検討したように、上記訂正A〜Cが認められるから、本件請求項1〜3に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載される次のとおりのものである。 「【請求項1】CDケースが出し入れ可能な開ロ部を背面に有した収納容器本体と、該収納容器本体の上端部にCDケースの取り出しを制限する押し込み式のロック機構とを備え、 該ロック機構は、係合段部を有し且つ後退する方向に付勢されたロック部材と、該ロック部材をCDケースに向けて垂直に押し込むと前記係合段部に係合してロック状態を保持するロック部材側に付勢された板バネとを有し、 前記ロック機構のロック部材が前記CDケースと前記収納容器本体との間に存在する隙間に突出してロックされることを特徴とするCD等の収納容器。 【請求項2】前記収納容器本体に形成された開口部には、上端部と下端部とに係止突起を設けたものであることを特徴とする請求項1記載のCD等の収納容器。 【請求項3】前記ロック機構は、板バネと板バネによりロック状態が保持されるロック部材と、ロック状態が解除されたロック部材を後退させるバネ部材とから構成され、磁石による吸着力によりロック部材と板バネとの係合を解錠するよう構成されたことを特徴とする請求項1記載のCD等の収納容器。」 (以下、「訂正後の請求項1〜3に係る発明」という) <3-3>先願明細書(甲第1号証を参照)の記載事項 先願明細書には、図面と共に次の記載がある。 a: 「【0032】以上、ハードケース2とロック機構11Aについて詳述したが、次にCDケース1をハードケース2に挿脱する操作の概略を説明する。先ずCDケース1をハードケース2に挿入しロックするには、図1〜図3により、ロック機構11Aの完全解除状態でCDケース1をハードケース2の上面に形成したCDケース挿脱用開口部8の側面フレーム4側から、CDケース1を斜めにして反対側の側面フレーム3に当接するように挿入して落とし込む。その後ロック機構11Aの反対側の側面フレーム4側に片寄せすることにより、CDケース1は移動してCDケース1と側面フレーム3との間に一定の隙間Gが生ずる。 【0033】次に、図2及び図3に示すように、ロックキー12aが止まるまで押し込むと、前記隙間バー14aは前記隙間Gに介入して隙間バー押圧面でCDケース1の側面を押圧すると同時に、ロックキー本体13aの第1の枝15aはバネ性があるので内側に撓みながら、挿入用斜面16aがガイドになってスムーズにハウジング部41a内に挿入され、1個のキーフック部17aはハウジング部41aのロック用凹部42aに節度よくロックされる。ロック機構11Aは安定位置でロック状態となる。その状態においては、CDケース1は隙間バー14aによりハードケース2の側面フレーム4に押圧されてガタをなくし、また4隅の上面コーナー防止壁7及び下面防止壁9に阻まれて、CDケース挿脱用開口部8より外部に取り出すことはできない。」(段落【0032】【0033】) b: 「【0037】前記解除治具50aは更に押し込まれることによりハウジング部41a内をスライドして前記隙間バー14aをハードケース2の隙間バー挿入口10より押し出すことにより、CDケース1はハードケース2の中でガタを生じ、その位置で完全解除状態になる。従って、キーフック部17aのロック解除と隙間バー14aの押し出しの一連の作用を、解除治具50aを押圧する一つの連続動作で行うことができる。前記ロックキー本体13aは第2の枝18aのストッパー部20aを解除しない限り、第1の枝15aの挿入用斜面16aを押圧のみではロック解除は不可能である。この結果、特殊解除治具が必要となり、安全性が保証される。」(段落【0037】) <3-4>甲第2及び3号証の記載事項 甲第2及び3号証には、図面と共に次の記載がある。 <甲第2号証>米国特許第5289914号明細書 c: 「図に示されるこの安全装置は、コンパクトディスク等のカセットのためのものである。それは、ポリカーボネイトのようなプラスティックのインジエクションモールドで製造される。好ましくは、プラステックは透明である。該安全装置は、偏平矩形状の枠体として構成され、前記枠体の幅狭い側辺は3つの壁部10、11、12によって構成されている。前記枠体の一方の平坦な側面13に開口部14が形成されている。また、枠体の他方の平坦な側面には、壁部10,11及び11,12に連なって三角形の角部15、16とレール17が設けられている。レール17は、壁を持たない狭い側辺に設けられる。」 (第1欄第61行〜第2欄第5行(異議申立人提出の訳文による)) d: 「カセットは、図1の左側の狭い開口部からフレーム内に押す込むことにより安全装置に挿入される。カセットがフレーム内に置かれたとき、3つのエッジに沿い、壁部13の1つ側部と15,16,17からなる他の側部によって囲まれる。」 (2欄10〜16行(異議申立人提出の訳文による)) e: 「コンパクトデイスク用のカセットは、通常、そのハーフ(half)に、装飾またはカセットの中のデイスクについての情報を掲載する、紙又はプラスチック製の印刷挿入物を保持するための2つのラップ(lap)があり、製造上の理由からカセットの狭い側面には各ラップのところに開口(aperture)が形成されている。 このタイプの開口(aperture)は、本発明の安全装置において、1図と8図の位置にある開口に係合する(engaging)ボルトにより、フレームとロータリーボルト間を積極的に係合(engagement)するために用いられる。」 (第2欄第48〜57行、(当審において翻訳)) f: 「ロータリーボルトのこの位置では、スプリングプレード30のフリーの先端が27の肩部29に当接してロータリーボルトが回転しないように固定されている。かくしてフレームはカセットをロックし、カセットが移動できないように固定する。 ロータリボルト22を解錠する場合は、ロックハウジング20の外部から板バネ片30も磁石33を接近させると、板バネ片30は前記磁石33に吸収されて、ロータリボルト22の肩部29から外れるので、ロータリボルト22のフィンガーグリップ26を指で回転操作してケース側面の孔からロータリボルト22を抜き出せば、枠体内から、ケースを抜き出すことができる。」 (2欄57行〜3欄3行(異議申立人提出の訳文による)) g: 「ロータリボルト22は、ねじりバネによって非係合位置側へ付勢しておくことができ」 (第3欄第37〜39行(異議申立書第8頁第23〜24行から) <甲第3号証>特開平8-4393号公報 h: 「【目的】 包袋、箱体に鍵穴の無い薄い錠体を装着し、1個の磁力利用弱体により全部を解錠できようにする。 【構成】 蓋体に係止体を装着し、袋箱体の本体に装着する錠体4は上半部と下半部により構成し、上半部には周縁部に複数の連結突起を突設し、下半部には凸縁に囲まれた凹部を設けて中央部に上半部から貫通する施錠孔5を穿設し、凸縁9の外側に複数の連結孔11を穿設し、施錠孔5の綾部には、1方向に2個の固定磁石8を対向させて設けると共に、他方向に磁力に応動し支軸10に嵌合された環状の1端を支点として回動する2個の鎖錠体7を逆対称に対向させて設け、この両鎖錠体7は、両固定磁石8の磁力により接近方向に回動し挿嵌された係止突起の係合部に嵌入して施錠すると共に、固定磁石8より磁力の強い鍵体の2個の鍵磁石の円移動により離反方向に回動し係合部から脱去して解錠する。」 (第1頁下段【要約】の欄) <3-4>29条の2違反について <3-4-1>訂正後の請求項1に係る発明について 先願明細書記載の発明を、訂正後の請求項1に係る発明と対比すると、先願明細書記載の発明の「ハードケース」、「CDケース挿脱用の開口部」、及び「隙間バー」は、訂正後の請求項1に係る発明の「収納容器本体」、「開口部」、及び「ロック部材」にそれぞれ相当するから、 両者は「CDケースが出し入れ可能な開口部を背面に有した収納容器本体と、収納容器本体の上端部にCDケースの取り出しを制限する押し込み式のロック機構とを備え、ロック機構のロック部材がCDケースと収納容器本体との間に存在する隙間に突出してロックされることを特徴とするCD等の収納容器」である点で、一致する。 しかしながら、訂正後の請求項1に係る発明は、先願明細書に記載がなく、示唆もない、 係合段部を有するロック部材が「後退する方向に付勢され」ており、かつ「ロック部材をCDケースに向けて垂直に押し込むと係合段部に係合してロック状態を保持するロック部材側に付勢された板バネとを有し」ているとの事項を具備するものである。 そして、本件訂正後の請求項1に係る発明は、上記事項を具備することにより、 「CDを背面から挿入した後に、ロック機構を押すだけでロックする事ができる。このため、施錠動作が容易である。」(【0020】)、 「磁石により板バネを引き寄せてロック部材を解除する事により、ロック部材がバネ部材によって自動的に復帰しCDが取り出し可能となる。また、解錠に必要な磁力の強さ等を外部から推定できないので、安全性の向上をはかる事ができる。」(【0022】)、 という顕著な効果を奏するものである。 そうすると、本件訂正後の請求項1に係る発明は、先願明細書に記載された発明と同一であるとすることはできない。 <3-4-2>訂正後の請求項2に係る発明について 訂正後の請求項2に係る発明は、訂正後の請求項1を引用しており、訂正後の請求項1に係る発明については上記<3-4-1>において検討したとおりであるから、同様に先願明細書に記載された発明と同一であるとすることはできない。 <3-4-3> 上記検討したとおりであるから、訂正後の請求項1及び2に係る発明の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたとはいうことはできない。 <3-5>29条2項違反について <3-5-1>訂正後の請求項1に係る発明について (a)甲第2号証記載の発明において、第1図と第8図の位置において板バネ30と係合したロータリーボルト22のフレーム内に突出した先端は、製造上の理由からカセットの狭い側面に形成された「開口」に係合(記載e)してロックされるもので、「CDケースと収納容器本体との間に存在する隙間」が生じないから、本件訂正後の請求項1に係る発明のようにロック部材が「CDケースと収納容器本体との間に存在する隙間に突出してロックされる」というものではない。 上記の「隙間」が生じない点は、甲第2号証記載の発明において、カセットは「左側の狭い開口部」からフレーム内に押し込み、カセットがフレーム内に置かれた状態では、「3つのエッジに沿い」(記載d)、ということからも明らかである。 (b)また、甲第2号証記載の発明には「ロータリボルト22は、ねじりバネによって非係合位置側へ付勢しておくことができ」る旨が例示されている(記載g)から、「後退する方向に付勢されたロック部材」ということができる。 そこで、訂正後の請求項1に係る発明と甲第2号証記載の発明とを対比すると、甲第2号証記載の発明の「安全装置」「(コンパクトデイスク等の)カセット」「フレーム、枠体」「ロータリーボルト22(または、「係合するボルト」)は、本件訂正後の請求項1に係る発明の「収納容器」「CDケース」「収納容器本体」「ロック部材」に相当するから、両者は、 「CDケースが出し入れ可能な開口部を有した収納容器本体と、収納容器本体の上端部にCDケースの取り出しを制限する押し込み式のロック機構とを備え、 ロック機構は、係合段部を有し且つ後退する方向に付勢されたロック部材と、ロック部材をCDケースに向けて垂直に押し込むと係合段部に係合してロック状態を保持するロック部材側に付勢された板バネとを有し、 ロック機構のロック部材が前記CDケースに突出してロックされることを特徴とするCD等の収納容器」、 の点で一致するが、次の点で相違する。 <相違点1> 訂正後の請求項1に係る発明においては、開口部が、収納容器本体の「背面に」有るのに対し、甲第2号証記載の発明は、上記(a)で検討したように収納容器本体の「左側の狭い開口部」である。 <相違点2> 上記(a)において検討したように、本件請訂正後の求項1に係る発明のロック手段は、ロック部材が「CDケースと前記収納容器本体との間に存在する隙間に」突出してロックされる、というものであるのに対し、甲第2号証記載の発明はそのようなものではない。 上記相違点について検討すると、相違点1及び2における訂正後の請求項1に係る発明の事項は、甲第3号証においても記載も示唆もされてなく、また、本件発明についての出願前に当該技術分野において周知であるともいうことはできない。 そして、本件訂正後の請求項1に係る発明は、上記相違点1及び2における事項を具備することにより、 「CDを背面から挿入した後に、ロック機構を押すだけでロックする事ができる。このため、施錠動作が容易である。」(【0020】)、 「磁石により板バネを引き寄せてロック部材を解除する事により、ロック部材がバネ部材によって自動的に復帰しCDが取り出し可能となる。また、解錠に必要な磁力の強さ等を外部から推定できないので、安全性の向上をはかる事ができる。」(【0022】)、 という顕著な効果を奏するものである。 そうすると、本件請求項1に係る発明は、刊行物2および3記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 <3-5-2>訂正後の請求項2及び3に係る発明について 訂正後の請求項2及び3に係る発明は、請求項1を引用するものであるから、同様に刊行物2及び3記載の発明から、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない <3-5-3> 上記検討したとおりであるから、訂正後の請求項1〜3に係る発明の特許は、特許法第29条2項の規定に違反してなされたものとはいうことができない。 <4>むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件訂正後の請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件訂正後の請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 CD等の収納容器 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 CDケースが出し入れ可能な開口部を背面に有した収納容器本体と、該収納容器本体の上端部にCDケースの取り出しを制限する押し込み式のロック機構とを備え、 該ロック機構は、係合段部を有し且つ後退する方向に付勢されたロック部材と、該ロック部材をCDケースに向けて垂直に押し込むと前記係合段部に係合してロック状態を保持するロック部材側に付勢された板バネとを有し、 前記ロック機構のロック部材が前記CDケースと前記収納容器本体との間に存在する隙間に突出してロックされることを特徴とするCD等の収納容器。 【請求項2】 前記収納容器本体に形成された開口部には、上端部と下端部とに係止突起を設けたものであることを特徴とする請求項1記載のCD等の収納容器。 【請求項3】 前記ロック機構は、板バネと該板バネによりロック状態が保持されるロック部材と、ロック状態が解除されたロック部材を後退させるバネ部材とから構成され、磁石による吸着力によりロック部材と板バネとの係合を解錠するよう構成されたことを特徴とする請求項1記載のCD等の収納容器。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、内部にCDと防犯用タグを保持したまま、ロック機構によって施錠する事のできるCD等の収納容器に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 従来CD、ビデオテープ等の商品を不正に店頭から持ち出されないように、商品に磁気的或いは電気的に反応する防犯タグを取り付けていた。しかし、商品に直接取り付けると、防犯タグを引き剥がされたり、切り取られる事があった。そこで、これを解決するために、防犯タグとCD等を施錠できる容器にいれ、販売する際に施錠を解除して製品(CD)のみを取り出してお客に渡していた。 【0003】 ところが、収納容器の錠前は、シリンダー錠やタンブラー錠を使用すると共に、鍵を使って施錠・解錠していた。これらの錠前は、その用途に応じて使用されるものであるが、CDショップやビデオレンタルショップ等の盗難防止機器をロックするためのものでは、一種類のキーを店員が持って、多数の錠前を迅速に解錠できるものが望まれていた。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 しかし、従来のシリンダー錠やタンブラー錠を備えた収納容器では、大量の商品を迅速に解錠するのに不便であった。また、一個の鍵で大量の錠前を操作しなければならない為に、使用回数が多く鍵が破損し易いと云う欠点が存在した。更に、鍵の場合には、容易に複製されたりする虞があり、商品を不正に持ち出されると云う欠点が存在した。 【0005】 本発明の目的は、これら従来のCD等の収納容器の問題点に鑑み、一個の解錠手段で多数のロックを容易に解錠する事ができるCD等の収納容器を提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するために、本発明のCD等の収納容器は、CDケースが出し入れ可能な開口部を背面に有した収納容器本体と、該収納容器本体の上端部にCDケースの取り出しを制限する押し込み式のロック機構とを備え、該ロック機構は、係合段部を有し且つ後退する方向に付勢されたロック部材と、該ロック部材をCDケースに向けて垂直に押し込むと前記係合段部に係合してロック状態を保持するロック部材側に付勢された板バネとを有し、前記ロック機構のロック部材が前記CDケースと前記収納容器本体との間に存在する隙間に突出してロックされることを特徴とするものである。また、前記収納容器本体に形成された開口部には、上端部と下端部に係止突起を有したものであることを特徴とするものである。 【0007】 また、前記ロック機構は、板バネと該板バネによりロック状態が保持されるロック部材と、ロック状態が解除されたロック部材を後退させるバネ部材とから構成され、磁石による吸着力によりロック部材と板バネとの係合を解錠するよう構成されたことを特徴とするものである。 【0008】 本発明に係るCD等の収納容器では、鍵(キー)による事なく施錠できると共に、一種類の鍵で多数の錠前を解錠できる。 【0009】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施例について、図面を参照しつつ説明する。図1は本発明のCD等の収納容器の一実施例を示す正面図、図2は同CD等の収納容器の背面図、図3は同CD等の収納容器の平面図である。 【0010】 CD等の収納容器10は、CDケース11が出し入れ可能な開口部12を背面に有した収納容器本体13と、該収納容器本体13の上端部にCDケース11の取り出しを制限する手段、例えば押し込み式のロック機構14を備えている。収納容器本体13は、合成樹脂から構成されており、適度な剛性と、弾性を有している。また、収納容器本体13には、CDケース11が抜け出ない程度の開口窓15が形成されている。 【0011】 収納容器本体13は、透明或いは半透明の部材から構成されているので、収納したCDケース11のジャケット等を外部から視認する事ができる。また、開口窓15からは、直接ジャケット等を確認する事ができ、店頭に陳列しても、消費者にCDの内容を確認させる上で好都合である。 【0012】 収納容器本体13に形成された開口部12には、係止部材、例えば上端側の係止突起16aと下端側の係止突起16bとが設けられている。本実施例では、収納容器本体13の背面に開口部12が形成されると共に、その四隅に係止部材となる係止突起16a,16a,16b,16bが設けられている。したがって、CDケース11は、収納容器本体13に対して平行状態では出し入れする事ができないが、上端及び下端を交互に抜き差しする事により、出し入れできる。 【0013】 ロック機構14は、収納容器本体13の上端に取り付けられており、板バネ17と該板バネ17によりロック状態が保持されるロック部材18と、ロック状態が解除されたロック部材18を後退させるバネ部材19とから構成されている。また、ロック部材18には、係合段部18aが形成されており、ロック部材18を押し込んだ際に板バネ17が係合して押し込んだ状態、即ちロック状態を保持する。また、ロック部材18の押し込み操作部18bは、ロック機構14の上端から上方へ突出可能に配設されており、操作者はこの部分を指で押す事により操作する。 【0014】 また、係合段部18aと係合した板バネ17は、ロック機構14の外部から強力な磁石による吸着力で板バネ17を引き寄せ、係合を解除する。 【0015】 次に、以上のように構成されたCD等の収納容器10の使用方法について説明する。先ず、施錠する場合には、開口部12からCDケース11を挿入し、ロック機構14の押し込み操作部18bを押し込むことにより、ロック部材18が下降してCDケース11に接触するようになり、CDケース11と収納容器本体13の間に存在する隙間Aが無くなる。このように、ロック部材18が下降してCDケース11に接触する状態になり、その位置でロック部材18がロックされると、CDケース11と収納容器本体13との隙間が無くなり、CDケース11を取り出す事ができない。 【0016】 ロック機構14の施錠は、ロック機構の頂部から上に突出した押し込み操作部18bを指で押すことにより行う。押し込み操作部18bが押し下げられると、バネ部材19の付勢力に抗してロック部材18が下降する。ロック部材18が下降すると、板バネ17は、係合段部18aに係合し、ロック部材18の下降した状態、即ちロック状態を維持する。 【0017】 このようにして、ロック部材18が隙間Aに突出(下降)して施錠される。下降したロック部材18は、板バネ17で係止されているので、ロック状態が外れる虞もない(図6参照)。 【0018】 また、解錠する場合には、ロック機構14の側面に強力な磁石を当て板バネ17の付勢方向に抗して板バネ17が引き寄せられ、係合段部18aとの係合が外される。板バネ17の係合が外されると、ロック部材18はバネ部材19の付勢により上昇する。このようにロック部材18が上昇すると、CDケース11と収納容器本体13との間に再び隙間Aが生じて、CDケース11を自由に取り出す事ができる。 【0019】 以上の実施例は、ロック部材18がバネ部材19で自動的に復帰する場合について説明したが、これに限定される事なくCDケースの取り出し動作と連動させて後退させてもよい。 尚、本発明は以上の実施例に限る事なく、本発明の技術思想に基づいて種々の変形が可能である。 【0020】 【発明の効果】 以上説明したように、本発明のCD等の収納容器では、CDケースが出し入れ可能な開口部を背面に有した収納容器本体と、該収納容器本体の上端部にCDケースの取り出しを制限する押し込み式のロック機構とを備え、該ロック機構は、係合段部を有し且つ後退する方向に付勢されたロック部材と、該ロック部材をCDケースに向けて垂直に押し込むと前記係合段部に係合してロック状態を保持するロック部材側に付勢された板バネとを有し、前記ロック機構のロック部材が前記CDケースと前記収納容器本体との間に存在する隙間に突出してロックされるので、CDを背面から挿入した後に、ロック機構を押すだけでロックする事ができる。このため、施錠動作が容易である。 【0021】 また、前記収納容器本体に形成された開口部には、上端部と下端部に係止突起を有したので、先ずCDケースの上端を係止突起の内側に入れた後、CDケースの下端を係止突起の内側に入れる事により容易にCDケースを収納容器本体に入れる事ができる。 【0022】 前記ロック機構は、板バネと該板バネによりロック状態が保持されるロック部材と、ロック状態が解除されたロック部材を後退させるバネ部材とから構成され、磁石による吸着力によりロック部材と板バネとの係合を解錠するよう構成したので、磁石により板バネを引き寄せてロック部材を解除する事により、ロック部材がバネ部材によって自動的に復帰しCDが取り出し可能となる。また、解錠に必要な磁力の強さ等を外部から推定できないので、安全性の向上をはかる事ができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明のCD等の収納容器の一実施例を示す正面図である。 【図2】 同CD等の収納容器の背面図である。 【図3】 同CD等の収納容器の平面図である。 【図4】 同CD等の収納容器に使用される施錠機構を示す構成図である。 【図5】 同CD等の収納容器に使用される施錠機構を示す底面図である。 【図6】 同施錠機構の要部構成斜視図である。 【符号の説明】 10 収納容器 11 CDケース 12 開口部 13 収納容器本体 14 ロック機構 15 開口窓 16a、16b係止突起 17 板バネ 18 ロック部材 18a 係合段部 18b 押し込み操作部 19 バネ部材 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2003-03-19 |
出願番号 | 特願平8-144006 |
審決分類 |
P
1
651・
16-
YA
(B65D)
P 1 651・ 121- YA (B65D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 前田 幸雄 |
特許庁審判長 |
鈴木 公子 |
特許庁審判官 |
渡邊 真 西村 綾子 |
登録日 | 2001-11-30 |
登録番号 | 特許第3256437号(P3256437) |
権利者 | 株式会社ハゴロモ |
発明の名称 | CD等の収納容器 |
代理人 | 川村 恭子 |
代理人 | 川村 恭子 |
代理人 | 佐々木 功 |
代理人 | 佐々木 功 |