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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
管理番号 1077894
異議申立番号 異議2001-73479  
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2002-08-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-12-28 
確定日 2003-03-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3181048号「速硬化接着剤、速硬化接着剤の製造方法、及び接着方法」の請求項1ないし9に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3181048号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯

本件特許第3181048号の発明は、平成13年1月24日に出願され、平成13年4月20日にその特許権の設定登録がなされ、その後、異議申立人クラリアント インターナショナル リミテッドより特許異議の申立てがあり、平成14年9月9日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年11月19日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否について

(1)訂正の内容

a.特許請求の範囲の請求項1〜9において、請求項2、5、6を削除し、番号をつめて請求項1〜6となし、かつ、次のとおりに訂正する。
「【請求項1】 樹脂エマルジョン、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、及びイソシアネート化合物を含有する第1剤と、ヒドラジン誘導体を含有する第2剤と、から成る速硬化接着剤であって、前記第1剤における前記樹脂エマルジョンの重量比率と、前記アセトアセチル化ポリビニルアルコールの重量比率との合計が、45〜65重量%の範囲にあると共に、前記アセトアセチル化ポリビニルアルコールの重合度が1000〜2500の範囲にあることを特徴とする速硬化接着剤。
【請求項2】 樹脂エマルジョン及びアセトアセチル化ポリビニルアルコールを含有する第1剤と、ヒドラジン誘導体を含有する第2剤と、から成る速硬化接着剤の製造方法であって、前記第1剤の製造工程として、前記樹脂エマルジョンに前記アセトアセチル化ポリビニルアルコールの粉体を攪拌混合し、外部からの加熱を行わずに前記混合に伴い発生する混合熱により前記混合物中のアセトアセチル化ポリビニルアルコールを溶解する工程を含むことを特徴とする速硬化接着剤の製造方法。
【請求項3】 前記速硬化接着剤が、前記請求項1に記載の速硬化接着剤であることを特徴とする前記請求項2に記載の速硬化接着剤の製造方法。
【請求項4】 前記混合物に、イソシアネートを配合することを特徴とする前記請求項2又は3に記載の速硬化接着剤の製造方法。
【請求項5】 前記請求項1に記載の速硬化接着剤を用いる接着方法であって、前記第1剤を1の部材の表面に塗布するとともに、前記第2剤を他の1の部材の表面に塗布する塗布工程と、前記1の部材の前記第1剤を塗布した面と、前記他の1の部材の前記第2剤を塗布した面とが重なるように、前記1の部材と前記他の1の部材とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、を含むことを特徴とする接着方法。
【請求項6】 前記請求項1に記載の速硬化接着剤を用いる接着方法であって、前記第1剤と前記第2剤とを、1の部材の表面に順番に堆積塗布する堆積塗布工程と、前記1の部材の前記堆積塗布を行った面が他の1の部材との貼り合わせ面となるように、前記1の部材と前記他の1の部材とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、を含むことを特徴とする接着方法。」
b.特許明細書の段落[0015]における「(1)請求項1の発明は、樹脂エマルジョン及びアセトアセチル化ポリビニルアルコール、を含有する第1剤と、」を「(1)請求項1の発明は、樹脂エマルジョン、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、及びイソシアネート化合物を含有する第1剤と、」と訂正する。
c.特許明細書の段落[0017]において、末行に下記の記載を挿入する。
「また、本発明の速硬化接着剤は、第1剤にイソシアネート化合物を含有しているため、例えば、硬化後における耐水性に優れている。
・前記イソシアネート化合物としては、例えば、フェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)などのイソシアネート化合物などが挙げられる。
イソシアネート化合物の配合量は、例えば、第1剤の他の成分(例えば、前記樹脂エマルジョンとアセトアセチル化ポリビニルアルコールとの水溶液)100部に対して5〜40部とすることができ、好ましくは、10〜25部である。5部未満では耐水性が得られ難く、40部以上ではイソシアネートと溶液中の水と反応し、保存安定性に欠ける。」
d.特許明細書の段落[0025]、[0026]、[0027]、[0030]の記載を削除する。
e.特許明細書の段落[0028]において「(3)請求項3の発明は、・・・・・・、前記樹脂エマルジョンに前記アセトアセチル化ポリビニルアルコールの粉体を攪拌混合し、前記混合物中のアセトアセチル化ポリビニルアルコールを溶解する工程を含むことを特徴とする速硬化接着剤の製造方法を要旨とする。」とあるのを「(2)請求項2の発明は、・・・・・・、前記樹脂エマルジョンに前記アセトアセチル化ポリビニルアルコールの粉体を攪拌混合し、外部からの加熱を行わずに前記混合に伴い発生する混合熱により前記混合物中のアセトアセチル化ポリビニルアルコールを溶解する工程を含むことを特徴とする速硬化接着剤の製造方法を要旨とする。」と訂正する。
f.特許明細書の段落[0029]、[0034]を以下のように訂正する。
「[0029]本発明の速硬化接着剤の製造方法において、第1剤は、例えば、樹脂エマルジョンに粉体のアセトアセチル化ポリビニルアルコールを、撹拌しながら混合することにより製造される。この時、樹脂エマルジョンとアセトアセチル化ポリビニルアルコールとの混合による混合熱が生じ、この混合熱によりアセトアセチル化ポリビニルアルコールは溶解される。そのため、混合物中のアセトアセチル化ポリビニルアルコールを溶解するための外部からの加熱は、不要である。その結果、製造プロセスにおいて、混合物の加熱にともなって発生しやすい皮張り(空気層と接触しているエマルジョン表面が成膜する状態)や、釜(混合物を収容する容器)内壁に樹脂がこびり付く等の問題が解消でき、製造に要するエネルギーが節減することができる。」
「[0034]尚、第2剤は、例えば、ヒドラジン誘導体を水に溶解することにより製造することができる。」
g.特許明細書の段落[0037]において、「(4)請求項4」、「請求項1又は2」、「請求項3」とあるのを、それぞれ「(3)請求項3」、「請求項1」、「請求項2」に訂正する。
h.特許明細書の段落[0043]において、「(7)請求項7」、「前記請求項3〜6のいずれか」とあるのを、それぞれ「(4)請求項4」、「前記請求項2又は3」に訂正する。
i.特許明細書の段落[0045]において、「(8)請求項8」、「請求項1又は2」とあるのを、それぞれ「(5)請求項5」、「請求項1」に訂正する。
j.特許明細書の段落[0048]において、「(9)請求項9」、「請求項1又は2」とあるのを、それぞれ「(6)請求項6」、「請求項1」に訂正する。
k.特許明細書の段落[0053]、[0054]、[0070]において、「実施例1〜4」とあるのを「実施例1〜3、実験例1、」と訂正する。
l.特許明細書の段落[0056]、[0058]において、「請求項1、3〜6」とあるのを、それぞれ「請求項2」に訂正する。
m.特許明細書の段落[0059]において、「請求項1〜7」とあるのを、「請求項1〜4」に、「(実施例4)」とあるのを、「実験例1」に訂正する。
n.特許明細書の段落[0061]において、「尚、本実施例4・・・範囲外である例である。」の記載を削除する。
o.特許明細書の段落[0069]の[表1]、[0094]において、「実施例4」とあるのを「実験例1」に訂正する。
p.特許明細書の段落[0071]において、「請求項7」とあるのを、「(実施例1、実施例2、及び比較例1〜7の速硬化接着剤を用いる場合を除き)請求項5」と訂正する。
q.特許明細書の段落[0072]において、「請求項8」とあるのを「請求項6」と訂正する。
r.特許明細書の段落[0090]において、「及び4」とあるのを「及び実験例1」と訂正する。
s.特許明細書の段落[0092]の[表4]において、「実施例3」とあるのを「実験例1」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正事項aは、訂正前の請求項2を請求項1とし、訂正前の請求項6を実質的には変更することなく、単に[0042]の記載に基づき、より明瞭な表現にして請求項2とし、他の請求項は、削除するか、あるいは、請求項の番号又は引用する請求項の番号を整理したものであるから、特許請求の範囲の減縮、又は明りょうでない記載の釈明を目的としたものであり、訂正事項b〜sは、特許請求の範囲の訂正に伴い、明細書の発明の詳細な説明の記載を、特許請求の範囲の記載と整合させるための訂正、あるいは説明の順番を入れ替えたものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的としたものであり、明細書に記載した事項の範囲内のものであり、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

(3)むすび

したがって、上記訂正は、特許法120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについての判断

(1)本件発明

本件請求項1〜6に係る発明は、上記訂正が認められるので、訂正明細書の特許請求の範囲に記載された上記2.(1)a.に記載のとおりである。

(2)異議申立ての理由の概要、及び当審における取消理由の概要

異議申立人は、下記の甲第1号証〜甲第7号証を提示し、訂正前の本件請求項1〜9に係る発明は、甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、取り消されるべきものであると主張している。
当審における取消理由も異義申立ての理由と同じである。

甲第1号証:特開平6-172727号公報
甲第2号証:「接着ハンドブック(第3版)」(日本接着学会編、1996年6月28日、日刊工業新聞社発行)475〜477頁
甲第3号証:「酢酸ビニル樹脂エマルジョン」(本山卓彦著、1980年7月25日、高分子刊行会発行)156〜160頁
甲第4号証:特開平8-319395号公報
甲第5号証:特開平6-256748号公報
甲第6号証:特開平4-331279号公報
甲第7号証:特開平4-359977号公報

(3)甲号各証に記載の発明

甲第1号証には、(イ)平均重合度1500〜2000、ケンカ度85〜90モル%、アセトアセチル基含有量5〜15モル%のアセトアセチル化ポリビニルアルコールの水性溶液および/または水性エマルジョンA液と(ロ)ヒドラジン化合物の水性溶液からなるB液を主成分とする2液分別塗布型の速硬化型水系接着剤が記載されている。
甲第2号証には、エマルジョン系接着剤について、「不揮発分が高いと固化する時間が短くなり、接着剤を被着体に塗布して他の被着体を貼り合わせられる時間が短くなる。・・・・したがって、接着剤の不揮発分は高ければ高いほど良いことになるが、粘度や作業性、価格などで制約されているのである。」(447頁)と記載されている。
甲第3号証には、「酢酸ビニル樹脂エマルジョンの木材接着では、エマルジョンの種類によって初期接着性が違う。同一組成のエマルジョンでは濃度が高い方が初期接着性が大きい」(159頁)と記載されている。
甲第4号証には、アセト酢酸エステル基含有ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「AA化PVA」と略記する。)をエマルジョンに添加することを特徴とするエマルジョンの増粘方法が記載され、「かかるエマルジョンを接着剤として使用する場合には更に種々の架橋剤を併用することも可能である」として架橋剤の一例としてジヒドラジド化合物が挙げられ、実施例1には、樹脂分50%のエチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョンにPVA-I(重合度1200のAA化PVA)を2.5部添加した例が示されている。また、「エマルジョンにAA化PVAを添加して増粘を行う場合、該AA化PVAを水溶液として添加する方法と粉末等の固形状で添加する方法が考えられるが、・・・後者の方法においては、エマルジョンを撹拌しながら該粉末を添加した後50〜80℃に加温することにより短時間で均一な混合が終了するので好ましい。」(6欄16〜24行)と記載されている。
甲第5号証には、「A液として分子内にアセトアセチル基を有する高分子化合物の水性溶液および/または水性エマルジョンとイソシアネート化合物を配し、B液としてヒドラジン化合物、アルデヒド化合物、ポリエチレンイミンのうち1種類を含む水溶液あるいは水性分散液を使用する2液分別塗布型接着剤において、B液としてグリシジルアミン型エポキシ樹脂を混合することを特徴とする耐水性に優れる速硬化接着剤」(請求項1)に係る発明が記載され、実施例1には具体的組成が示されている。
甲第6号証には、「アセトアセチル化ポリビニルアルコール系樹脂及びエポキシ樹脂を含有する水性液からなるA液と分子内にアミノ基を少なくとも2個以上有するポリアミン化合物からなるB液とからなる速硬化水性接着剤」(請求項1)に係る発明が記載され、「エマルジョンにAA化PVAを添加する場合、・・・該PVAの粉末を添加する時には、エマルジョンを撹拌しながら該粉末を添加し、50〜80℃に加温すれば短時間で均一な混合が終了するので好ましい。」(3頁右下欄9〜14行)と記載されている。
甲第7号証には、「アセトアセチル基を有するエマルジョン型水性接着剤を主成分とする主剤と、ヒドラジン化合物の水性溶液を主成分とするゲル化剤とからなる2液水分散型接着剤を用いて被着体を接着するにあたり、一方の被着体に主体剤とゲル化剤を分別重ね塗布した面に、他方の被着体を貼付ることを特徴とする接着方法」が記載されている。

(4)当審の判断

本件の請求項1に係る発明と甲号各証に記載された発明を比較すると、いずれにも、本件の請求項1に係る発明の構成である「樹脂エマルジョン、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、及びイソシアネート化合物を含有する第1剤と、ヒドラジン誘導体を含有する第2剤と、から成る速硬化接着剤であって、前記第1剤における前記樹脂エマルジョンの重量比率と、前記アセトアセチル化ポリビニルアルコールの重量比率との合計が、45〜65重量%の範囲にあると共に、前記アセトアセチル化ポリビニルアルコールの重合度が1000〜2500の範囲にあることを特徴とする速硬化接着剤」についての記載はない。そして、本件の請求項1に係る発明は、この構成により明細書記載の顕著な硬化を奏し得たものと認められる。たしかに、請求項1に係る発明の個々の構成については、甲号各証により知られているが、組成物に特徴がある発明は、組成物を構成する個々の構成が一体となって一つの物を構成するものであるから、夫々の発明の一部である構成を、その発明の他の構成と切り離して、別の発明に転用することは論外のことである。
したがって、請求項1に係る発明は、甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

請求項2に係る発明と甲号各証に記載された発明を比較すると、甲第4号証及び甲第6号証には、エマルジョンにアセトアセチル化ポリビニルアルコールを添加する場合に粉末で添加できることが記載されているが、いずれも該粉末を添加した後50〜85℃に加熱することが記載されているのみで、請求項2に係る発明の構成要件である「外部からの加熱を行わずに混合に伴い発生する混合熱により混合物中のアセトアセチル化ポリビニルアルコールを溶解すること」は記載されていないし、他の甲号各証には、粉末で添加できることすら記載されていない。そして、請求項2に係る発明は、該構成により、製造した接着剤中に凝集物が生じることがなく、また、製造釜の内壁に乾燥樹脂の付着が付かず、洗浄が容易であるという顕著な効果を奏したものと認められるから、請求項2に係る発明は、甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
請求項3、4に係る発明は請求項2に係る発明をさらに特定した発明であり、請求項5、6に係る発明は請求項1の接着剤を用いる接着方法であるから、上記と同様な理由により、いずれの発明も甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

したがって、本件請求項1〜6に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。

(4)むすび

以上のとおり、特許異議申立ての理由および証拠をもっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
速硬化接着剤、速効硬化接着剤の製造方法、及び接着方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂エマルジョン、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、及びイソシアネート化合物を含有する第1剤と、
ヒドラジン誘導体を含有する第2剤と、から成る速硬化接着剤であって、
前記第1剤における前記樹脂エマルジョンの重量比率と、前記アセトアセチル化ポリビニルアルコールの重量比率との合計が、45〜65重量%の範囲にあると共に、
前記アセトアセチル化ポリビニルアルコールの重合度が1000〜2500の範囲にあることを特徴とする速硬化接着剤。
【請求項2】
樹脂エマルジョン及びアセトアセチル化ポリビニルアルコールを含有する第1剤と、
ヒドラジン誘導体を含有する第2剤と、から成る速硬化接着剤の製造方法であって、
前記第1剤の製造工程として、前記樹脂エマルジョンに前記アセトアセチル化ポリビニルアルコールの粉体を攪拌混合し、外部からの加熱を行わずに前記混合に伴い発生する混合熱により前記混合物中のアセトアセチル化ポリビニルアルコールを溶解する工程を含むことを特徴とする速硬化接着剤の製造方法。
【請求項3】
前記速硬化接着剤が、前記請求項1に記載の速硬化接着剤であることを特徴とする前記請求項2に記載の速硬化接着剤の製造方法。
【請求項4】
前記混合物に、イソシアネートを配合することを特徴とする前記請求項2又は3に記載の速硬化接着剤の製造方法。
【請求項5】
前記請求項1に記載の速硬化接着剤を用いる接着方法であって、
前記第1剤を1の部材の表面に塗布するとともに、前記第2剤を他の1の部材の表面に塗布する塗布工程と、
前記1の部材の前記第1剤を塗布した面と、前記他の1の部材の前記第2剤を塗布した面とが重なるように、前記1の部材と前記他の1の部材とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、を含むことを特徴とする接着方法。
【請求項6】
前記請求項1に記載の速硬化接着剤を用いる接着方法であって、
前記第1剤と前記第2剤とを、1の部材の表面に順番に堆積塗布する堆積塗布工程と、
前記1の部材の前記堆積塗布を行った面が他の1の部材との貼り合わせ面となるように、前記1の部材と前記他の1の部材とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、を含むことを特徴とする接着方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、2液塗布型の速硬化接着剤に関し、詳しくは、例えば、芯材と表面材とをフッラシュ接着やVカット接着して製造する扉やパネル、あるいは複数枚のラミナを接着して製造する集成材等の木材加工産業等に使用される2液塗布型の速硬化接着剤とその製造方法及びその接着方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
木材加工産業では、生産工程をコンベアシステムで連続的にすることによって木材製品を量産する試みがあり、そのために、初期接着力が高く、しかも接着速度の速い接着剤が要望されている。
【0003】
その用途に使用される接着剤として、シアノアクリレート系瞬間接着剤やユリア樹脂系接着剤を第1剤とし、ポリビニルアルコ-ルなどの高分子化合物の水溶液に燐酸などの強酸を混合して第2剤とした二液分別塗布型の速硬化接着剤等がある。
【0004】
また、特公昭63-17871号公報には、分子内にアミド結合を有する可溶性蛋白質の水溶液、あるいはイミド基を有する合成高分子化合物の水溶液と水性エマルジョンからなる第1剤と、水溶性ジアルデヒド化合物の水溶液の第2剤とからなる速硬化接着剤組成物が開示されている。
【0005】
更に、特公平1-60190号公報には、分子内にアセトアセチル基を有する高分子化合物の水性溶液および/または水性エマルジョンからなる第1剤と、アルデヒド化合物の水性溶液からなる第2剤とからなる急硬化水性接着剤、及びその接着方法が開示されている。
【0006】
また、特公平1-60192号公報には、分子内にアセトアセチル基を有する高分子化合物の水性溶液および/または水性エマルジョンからなる第1剤と、ヒドラジン化合物の水性溶液とからなる第2剤とからなる瞬硬化水性接着剤、及び2液分別による接着方法が開示されている。
【0007】
具体的には、第1剤として、アセトアセチル基を有する高分子化合物を予め水溶液として溶解しておき、そこへ高分子化合物の水性溶液および/または水性エマルジョンを混合することにより製造したものや、アセトアセチル基を有する高分子化合物を保護コロイドあるいは乳化剤として使用し、酢ビ等のエマルジョン重合を行うことにより製造したものが開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の如き2液分別塗布型接着剤には次の様な欠点があった。
シアノアクリレート系瞬間接着剤は高価格であるため、広い面積に塗布するには製品の価格アップが避けられず、実用的ではない。
【0009】
ユリア樹脂系接着剤を第1剤とし、高分子化合物の水溶液に燐酸などの強酸を混合して第2剤とした接着剤は、強酸がユリア樹脂系の老化性を助長する他、木材自身の強度を劣化させる欠点がある。
分子内にイミド基を有した高分子とジアルデヒドとの架橋硬化を利用した2液分別塗布型の接着剤組成物は、その架橋硬化が熱による可逆硬化のため耐久性に問題がある。また、ジアルデヒド化合物の代表であるグリオキサールはPRTR法等の指定物質になっており安全衛生上の問題がある。
【0010】
分子内にアセトアセチル基を有する高分子化合物の水性溶液および/または水性エマルジョンからなる第1剤と、アルデヒド化合物の水性溶液からなる第2剤からなる水性接着剤組成物は、硬化速度が遅くユーザーの要望するような30秒前後での硬化速度が得られない。
【0011】
分子内にアセトアセチル基を有する高分子化合物の水性溶液および/または水性エマルジョンからなる第1剤と、ヒドラジン化合物の水性溶液からなる第2剤とからなる瞬硬化水性接着剤組成物は、その種類に応じて、以下のような欠点がある。
【0012】
第1剤を、アセトアセチル基を有する高分子化合物を予め水溶液として溶解しておき、そこへ高分子化合物の水性溶液および/または水性エマルジョンを混合することにより製造したものについては、短時間接着に適する高樹脂濃度の接着剤組成物が得られ難く、特に重合度1000以上のアセトアセチル化ポリビニルアルコールを高比率で混合して樹脂濃度を高めることは困難であった。そのため、得られた接着剤は有効樹脂濃度が低く、使用に耐え得る初期接着力を得ることが困難であった。
【0013】
また、第1剤を、アセトアセチル基を有する高分子化合物を保護コロイドあるいは乳化剤として使用し酢ビ等のエマルジョン重合を行うことにより製造したものでは、高樹脂濃度化は可能であるが、アセトアセチル基がエマルジョン粒子内にも入り込むため、ヒドラジン化合物との反応性が乏しくなり、得られた接着剤は硬化スピードが遅く、使用に耐え得る初期接着力を得ることが困難であった。
【0014】
そのため、の接着剤組成物を用いてフラッシュ接着、Vカット接着、練り合わせ接着等を30秒間の短時間プレス圧締で行った場合には、十分な初期接着力が得られず、プレス解圧直後に剥がれ等の接着不具合が発生していた。本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、硬化速度が速く、安全衛生上の問題がなく、製造が容易であり、製造に要するエネルギーが少なくて済む速硬化接着剤、その製造方法、及び接着方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
(1)請求項1の発明は、樹脂エマルジョン、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、及びイソシアネート化合物を含有する第1剤と、ヒドラジン誘導体を含有する第2剤と、から成る速硬化接着剤であって、前記第1剤における前記樹脂エマルジョンの重量比率と、前記アセトアセチル化ポリビニルアルコールの重量比率との合計が、45〜65重量%の範囲にあると共に、前記アセトアセチル化ポリビニルアルコールの重合度が1000〜2500の範囲にあることを特徴とする速硬化接着剤を要旨とする。
【0016】
本発明の速硬化接着剤は、第1剤における樹脂エマルジョンの重量比率と、前記アセトアセチル化ポリビニルアルコールの重量比率との合計(樹脂濃度)が、45〜65重量%と高く、尚かつ、アセトアセチル化ポリビニルアルコールの重合度が1000〜2500と高いため、接着反応に有効なアセトアセチル基を十分に備えており、速硬化性と高い初期接着力を得ることが可能である。
【0017】
そのため、本発明の速硬化接着剤は、硬化速度が速く、高い初期接着強度を得ることができ、例えば、短時間でのフラッシュパネルの製造やVカット接着品の製造において、ユーザーの満足できる性能を発揮する。また、本発明の速硬化接着剤は、PRTR法(Pollutant Release and Transfer Register)における指定物質を含んでいないため、安全衛生上において問題なく使用することができる。
また、本発明の速硬化接着剤は、第1剤にイソシアネート化合物を含有しているため、例えば、硬化後における耐水性に優れている。
・前記イソシアネート化合物としては、例えば、例えば、フェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)キシリレンジイソシアネート(XDI)などのイソシアネート化合物などが挙げられる。
イソシアネート化合物の配合量は、例えば、第1剤の他の成分(例えば、前記樹脂エマルジョンとアセトアセチル化ポリビニルアルコールとの水溶液)100部に対して5〜40部とすることができ、好ましくは、10〜25部である。5部未満では耐水性が得られ難く、40部以上ではイソシアネートと溶液中の水とが反応し、保存安定性に欠ける。
【0018】
・前記樹脂エマルジョンとしては、例えば、アセトアセチル基を含まない樹脂エマルジョンがあり、具体的には、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどのビニル系単量体を主体とする単独乳化重合物や、エチレン-酢酸ビニルまたはアクリル酸エステル類などの乳化重合した共重合物などの合成樹脂エマルジョン及び天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、プチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴムなどの合成ゴム乳化重合物であるゴムラテックスやこれらにカルボキシル基などの官能基を導入した変性ゴムラテックスなどがあり、これら合成樹脂エマルジョンやゴムラテックスを単独ないしは2種類以上を混合して用いることもできる。中でも耐水性や耐光性に優れるアクリルエマルジョンが好ましい。
【0019】
また、前記樹脂エマルジョンは、例えば、アセトアセチル基を有する樹脂エマルジョンであってもよい。ただし、この場合には、少なくとも一部に、アセトアセチル化ポリビニルアルコール以外の樹脂を含むことが好ましい。
・前記アセトアセチル化ポリビニルアルコールは、例えば、ポリビニルアルコールとジケテンを反応させて得られる。
【0020】
アセトアセチル化ポリビニルアルコールの重合度は、1000〜2500である。重合度が1000未満ではヒドラジン誘導体と反応した後の接着剤層が柔らかく、しかも強度が低い。重合度が2500以上では溶解し難くなり接着剤組成物の製造が難しい。
【0021】
アセトアセチル化ポリビニルアルコールのケン化度は、80〜100モル%が好ましい。ケン化度が80モル%未満の場合は溶解し難くなり接着剤組成物の製造が難しく、100モル%を越えるものは製造不可能である。アセトアセチル化ポリビニルアルコールのアセトアセチル化変性度は、3〜20モル%のものが好ましく、特に、4〜10モル%のものが好ましい。アセトアセチル化変性度が3モル%未満の場合はヒドラジン誘導体との反応速度が遅くなり十分な初期強度が得られず、アセトアセチル化変性度が20モル%を越えるものは溶解し難くなり接着剤組成物の製造が難しい。
【0022】
・前記ヒドラジン誘導体としては、例えば、ヒドラジン、ヒドラジンヒドラート、ヒドラジンの塩酸、硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、チオシアン酸、炭酸などの無機塩類およびギ酸、シュウ酸などの有機酸類、ヒドラジンのメチル、エチル、プロピル、ブチル、アリルなどの一置換体、1,1-ジメチル、1,1-ジエチル、4-n-ブチルメチルなどの非対称二置換体、並びに1,2-ジメチル、1,2-ジエチル、1,2-ジイソプロピルなどの対称二置換体などが挙げられる。
【0023】
使用できるヒドラジン誘導体としては、例えば、アセトアセチル基との反応性の高いアジピン酸ジヒドラジド、カルボジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、グリコリック酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
【0024】
・前記第2剤は、例えば、水溶液または水分散液であり、第2剤におけるヒドラジン化合物の重量%濃度は、例えば、0.1〜50重量%が適当であり、硬化速度と接着強度との兼ね合いから適宜選択される。
・前記第1剤及び/または第2剤は、必要に応じて、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、クレーなどの充填剤、可塑剤、防腐剤、防錆剤、着色剤、界面活性剤、粘度調整剤、触媒、金属塩、などを適宜添加することができる。
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
(2)請求項2の発明は、樹脂エマルジョン及びアセトアセチル化ポリビニルアルコールを含有する第1剤と、ヒドラジン誘導体を含有する第2剤と、から成る速硬化接着剤の製造方法であって、前記第1剤の製造工程として、前記樹脂エマルジョンに前記アセトアセチル化ポリビニルアルコールの粉体を攪拌混合し、外部からの加熱を行わずに前記混合に伴い発生する混合熱により前記混合物中のアセトアセチル化ポリビニルアルコールを溶解する工程を含むことを特徴とする速硬化接着剤の製造方法を要旨とする。
【0029】
本発明の速硬化接着剤の製造方法において、第1剤は、例えば、樹脂エマルジョンに粉体のアセトアセチル化ポリビニルアルコールを、攪拌しながら混合することにより製造される。この時、樹脂エマルジョンとアセトアセチル化ポリビニルアルコールとの混合による混合熱が生じ、この混合熱によりアセトアセチル化ポリビニールアルコールは溶解される。
そのため、混合物中のアセトアセチル化ポリビニルアルコールを溶解するための外部からの加熱は、不要である。その結果、製造プロセスにおいて、混合物の加熱にともなって発生しやすい皮張り(空気層と接触しているエマルジョン表面が成膜する状態)や、釜(混合物を収容する容器)内壁に樹脂がこびり付く等の問題が解消でき、製造に要するエネルギーを節減することができる。
【0030】
【0031】
更に、本発明の製造方法では、第1剤の製造において、粉体のアセトアセチル化ポリビニルアルコールを原料としているため、第1剤に含まれるアセトアセチル化ポリビニルアルコールの重合度を高くし、尚かつ、第1剤を高樹脂濃度化することが可能である。ここで、樹脂濃度とは接着剤組成物中の水を含めた総量に対する樹脂の比率のことをいう。
【0032】
つまり、従来の、アセトアセチル化ポリビニルアルコール水溶液を用いる製造方法のように、アセトアセチル化ポリビニルアルコールの水に対する溶解度の限界によって、第1剤に含まれるアセトアセチル化ポリビニルアルコールの重合度や、樹脂濃度が低く制限されることがない。
【0033】
従って、本発明の製造方法では、第1剤に含まれるアセトアセチル化ポリビニルアルコールの重合度を高くし(例えば、重合度1000以上のポリビニルアルコール)、尚かつ、第1剤の樹脂濃度を十分高く(例えば、45重量%以上)することにより、高い初期接着力の速硬化接着剤を製造することができる。
【0034】
尚、第2剤は、例えば、ヒドラジン誘導体を水に溶解することにより製造することができる。
【0035】
・前記樹脂エマルジョンは、重合反応により生成してもよく、また、既製品(例えば、アイカアイボンRAX-81L/アイカ工業(株)製)を使用してもよい。
・前記アセトアセチル化ポリビニルアルコールの、第1剤全体に対する重量比率は、硬化反応を速やかに進め速硬化性とするために、5重量%以上が好ましい。
【0036】
・前記樹脂エマルジョンと前記アセトアセチル化ポリビニルアルコールとの混合では、アセトアセチル化ポリビニルアルコールが塊状にならないように、撹拌しながら徐々に混合することが好ましい。また、前記樹脂エマルジョンと前記アセトアセチル化ポリビニルアルコールの混合、攪拌には、撹拌羽根の付いた高速回転可能な攪拌混合機を用いることにより、混合物の粘度を高くすると共に、十分な混合熱を生じさせることができる。
【0037】
(3)請求項3の発明は、前記速硬化接着剤が、前記請求項1に記載の速硬化接着剤であることを特徴とする前記請求項2に記載の速硬化接着剤の製造方法を要旨とする。本発明の製造方法では、第1剤の樹脂濃度及びアセトアセチル化ポリビニルアルコールの重合度が高く、速硬化性と初期接着力において優れた速硬化接着剤を製造することができる。
【0038】
また、本発明で製造する速硬化接着剤は、PRTR法における指定物質を含んでいないため、安全衛生上において問題なく使用することができる。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
(4)請求項4発明は、前記混合物に、イソシアネートを配合することを特徴とする前記請求項2又は3に記載の速硬化接着剤の製造方法を要旨とする。本発明で製造される速硬化接着剤は、イソシアネートを含有しているため、例えば、硬化後における耐水性に優れている。
【0044】
・前記イソシアネートは、例えば、樹脂エマルジョンとアセトアセチル化ポリビニルアルコールとの混合前に、樹脂エマルジョンに加えることができる。
また、前記混合後に、樹脂エマルジョンとアセトアセチル化ポリビニルアルコールとの混合物に加えることができる。
【0045】
・前記イソシアネート化合物の配合量は、例えば、第1剤の他の成分(例えば、前記樹脂エマルジョンとアセトアセチル化ポリビニルアルコールとの水溶液)100部に対して5〜40部とすることができ、好ましくは、10〜25部である。5部未満では耐水性が得られ難く、40部以上ではイソシアネートと溶液中の水とが反応し、保存安定性に欠ける。
(5)請求項5の発明は、前記請求項1に記載の速硬化接着剤を用いる接着方法であって、前記第1剤を1の部材の表面に塗布するとともに、前記第2剤を他の1の部材の表面に塗布する塗布工程と、前記1の部材の前記第1剤を塗布した面と、前記他の1の部材の前記第2剤を塗布した面とが重なるように、前記1の部材と前記他の1の部材とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、を含むことを特徴とする接着方法を要旨とする。
【0046】
本発明の接着方法は、例えば、部材を貼り合わせた後、短時間圧締するだけで、十分な最終接着強度を得ることができる。また、本発明の接着方法は、第1剤と第2剤との混合が不要であるので、工程を簡略化できるという特長を有する。
【0047】
・前記1の部材としては、例えば、パーチクルボードなどが挙げられ、前記他の1の部材としては、例えば、合板などが挙げられる。
・前記塗布工程において塗布する方法としては、例えば、刷毛や自動糊付け機などの塗布機器を用いる方法の他、第1剤と第2剤とを各々同時に噴霧域が重なる様にして被着体(1の部材、他の1の部材)へ噴霧して塗布する方法、例えばエアスプレーあるいはエアレススプレー方式による2丁のスプレーガンや双頭スプレーガンで塗布する方法もある。
【0048】
・前記塗布工程における第1剤の塗布量は、例えば、固形分として10〜300g/m2とすることができ、第2剤の塗布量は、ヒドラジン誘導体として1〜50g/m2とすることができる。
・前記貼り合わせ工程では、例えば、貼り合わせ後に部材を圧締することにより接着力を高めることができる。
(6)請求項6の発明は、前記請求項1に記載の速硬化接着剤を用いる接着方法であって、前記第1剤と前記第2剤とを、1の部材の表面に順番に堆積塗布する堆積塗布工程と、前記1の部材の前記堆積塗布を行った面が他の1の部材との貼り合わせ面となるように、前記1の部材と前記他の1の部材とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、を含むことを特徴とする接着方法を要旨とする。
【0049】
本発明の接着方法は、第1剤と第2剤の両方を1の部材のみに堆積塗布すればよいので、例えば、他方の部材が接着剤を塗布しにくい形状であっても接着を行うことができる。また、本発明の接着方法は、例えば、部材を貼り合わせた後、短時間圧締するだけで、十分な最終接着強度を得ることができる。
【0050】
更に、本発明の接着方法は、第1剤と第2剤との混合が不要であるので、工程を簡略化することができる。
・前記1の部材としては、例えば、木材、合板、バーチクルボード、スレート板などの多孔質板体があり、前記他の1の部材としては、例えば、発泡体や紙、突板などの多孔質被着体がある。
【0051】
・前記堆積塗布工程では、例えば、スプレーまたは刷毛、自動糊付け機などの塗布機器を用いて第1剤及び第2剤を塗布することができる。また、第1剤と第2剤の塗布の順番としては、例えば、先に第1剤を塗布し、その上に第2剤を塗布してもよく、又は、先に第2剤を塗布し、その上に第1剤を塗布してもよい。
【0052】
・前記堆積塗布工程における第1剤の塗布量は、例えば、固形分として10〜300g/m2とすることができ、第2剤の塗布量は、ヒドラジン誘導体として1〜50g/m2とすることができる。
【0053】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の速硬化接着剤、速硬化接着剤の製造方法、及び接着方法の実施の形態の例(実施例)を説明する。
a)実施例1〜3、実験例1、及び比較例1〜7の速硬化接着剤について説明する。
【0054】
尚、実施例1〜3、実験例1、及び比較例1〜6で製造する速硬化接着剤は、第1剤と第2剤から構成される2剤式の接着剤であり、比較例7で調製する速硬化接着剤は、1剤のみから成るものである。
(実施例1)アクリルエマルジョン(アイカアイボンRAX-81L/アイカ工業(株)製)100部に水を30部添加し撹拌しながらアセトアセチル化ポリビニルアルコール20部(ゴーセファイマーZ-200、重合度:約1000/日本合成化学工業(株)製)を粉体のまま徐々に添加した。
【0055】
攪拌と共に粘度と温度とが上昇し、混合液温が60℃に達してからさらに3時間継続撹拌した。アセトアセチル化ポリビニルアルコールの溶解を確認した後室温まで冷却し、樹脂濃度50重量%の接着剤組成物を得た。これを第1剤とした。
【0056】
次いで、10重量%アジピン酸ジヒドラジド水溶液100部、20重量%塩化リチウム水溶液20部を混合して第2剤とした。尚、本実施例1は、請求項2に記載の発明の範囲内の例である。
(実施例2)エチレン酢酸ビニルエマルジョン(アイカアイボンAE-21/アイカ工業(株)製)100部に水を40部添加し撹拌しながらアセトアセチル化ポリビニルアルコール30部(ゴーセファイマーZ-200/日本合成化学工業(株)製)を粉体のまま徐々に添加した。
【0057】
攪拌と共に粘度と温度とが上昇し、混合液温が60℃に達してから3時間継続撹拌した。アセトアセチル化ポリビニルアルコールの溶解を確認した後室温まで冷却し、樹脂濃度48重量%の接着剤組成物を得た。これを第1剤とした。次いで、10重量%カルボジヒドラジド水溶液100部、20重量%塩化マグネシウム水溶液20部を混合して第2剤とした。
【0058】
尚、本実施例2は、請求項2に記載の発明の範囲内の例である。
(実施例3)実施例1の第1剤100部にイソシアネート(AUH-1/アイカ工業(株)製)20部を添加し、樹脂濃度58重量%の接着剤組成物を得た。これを第1剤とした。
【0059】
また、第2剤は実施例1の第2剤と同様とした。尚、本実施例3は、請求項1〜4に記載の発明の範囲内の例である。
(実験例1)第1剤として、アクリルエマルジョン(アイカアイボンRAX-81L/アイカ工業(株)製)100部に水を30部添加し、外部より過熱蒸気による強制加熱を加えて撹拌しながらアセトアセチル化ポリビニルアルコール20部(ゴーセファイマーZ-200/日本合成化学工業(株)製)を粉体のまま徐々に添加した。
【0060】
混合液温が60℃に達してからさらに3時間継続撹拌した。その後、アセトアセチル化ポリビニルアルコールの溶解を確認した後室温まで冷却し、樹脂濃度50重量%の接着剤組成物を得た。これを第1剤とした。また、第2剤は、実施例1の第1剤と同様とした。
【0061】
(比較例1)アセトアセチル化ポリビニールアルコール(ゴーセファイマーZ-200/日本合成化学工業(株)製)を予め20重量%水溶液として溶解した。アクリルエマルジョン(アイカアイボンRAX-81L/アイカ工業(株)製)100部に対し、20重量%アセトアセチル化ポリビニールアルコール水溶液を100部混合し、樹脂濃度38重量%の接着剤組成物を得た。これを第1剤とした。
【0062】
次いで、10重量%アジピン酸ジヒドラジド水溶液100部、20重量%塩化リチウム水溶液20を混合して第2剤とした。尚、本比較例1は、第1剤の樹脂濃度が38重量%であるので請求項1の発明の範囲外であり、製造方法においてアセトアセチル化ポリビニールアルコールの粉体を用いないので、請求項3の発明の範囲外である。
(比較例2)アセトアセチル化ポリビニールアルコール(ゴーセファイマーZ-200/日本合成化学工業(株)製)を予め20重量%水溶液として溶解した。酢酸ビニルエマルジョン(アイカアイボンA-370/アイカ工業(株)製)100部に対し、20重量%アセトアセチル化ポリビニールアルコール水溶液を100部混合し、樹脂濃度38重量%の接着剤組成物を得た。これを第1剤とした。
【0063】
次いで、10重量%アジピン酸ジヒドラジド水溶液100部、20重量%塩化リチウム水溶液20部を混合して第2剤とした。尚、本比較例2は、第1剤の樹脂濃度が38重量%であるので請求項1の発明の範囲外であり、製造方法においてアセトアセチル化ポリビニールアルコールの粉体を用いないので、請求項3の発明の範囲外である。
(比較例3)アセトアセチル化ポリビニールアルコール(ゴーセファイマーZ-100、重合度:約500/日本合成化学工業(株)製)を予め35重量%水溶液として溶解た。酢酸ビニルエマルジョン(アイカアイボンA-344K/アイカ工業(株)製)100部に対し、35重量%アセトアセチル化ポリビニールアルコール水溶液を100部混合し樹脂濃度43重量%の接着剤組成物を得た。これを第1剤とした。
【0064】
次いで、10重量%アジピン酸ジヒドラジド水溶液100部、20重量%塩化リチウム水溶液20部を混合して第2剤とした。尚、本比較例3は、第1剤が含有するアセトアセチル化ポリビニールアルコールの重合度が500であるので請求項1の発明の範囲外であり、製造方法においてアセトアセチル化ポリビニールアルコールの粉体を用いないので、請求項3の発明の範囲外である。
(比較例4)アセトアセチル化ポリビニールアルコール(ゴーセファイマーZ-200/日本合成化学工業(株)製)を乳化剤として使用し乳化重合して得られた樹脂濃度48重量%のエマルジョンを第1剤とした。次いで、10重量%アジピン酸ジヒドラジド水溶液100部、20重量%塩化リチウム水溶液20部を混合して第2剤とした。
【0065】
尚、本比較例4は、第1剤に、(アセトアセチル化ポリビニールアルコールとともに加えられる)樹脂エマルジョンを用いないので請求項1の発明の範囲外であり、製造方法においてアセトアセチル化ポリビニールアルコールの粉体を用いないので、請求項3の発明の範囲外である。
(比較例5)アセトアセチル化ポリビニールアルコール(ゴーセファイマーZ-200/日本合成化学工業(株)製)を予め20重量%水溶液として溶解した。アクリルエマルジョン(アイカアイボンRAX-81L/アイカエ業(株)製)100部に対し、20重量%アセトアセチル化ポリビニールアルコール水溶液を100部混合し、樹脂濃度38重量%の接着剤組成物を得た。これを第1剤とした。
【0066】
次いで、40重量%のグリオキサール水溶液を第2剤とした。尚、本比較例5は、第1剤の樹脂濃度が38重量%であり、第2剤がヒドラジン誘導体を含有しないので、請求項1の発明の範囲外であり、製造方法においてアセトアセチル化ポリビニールアルコールの粉体を用いないので、請求項3の発明の範囲外である。
(比較例6)イミド基を分子内に含むイミド変成イソバン(IM-304/クラレ(株)製)を予め20重量%水溶液として溶解した。アクリルエマルジョン(アイカアイボンRAX-81L/アイカ工業(株)製)100部に対し、20重量%イミド変成イソバン水溶液を100部混合し樹脂濃度38重量%の接着剤組成物を得た。
これを第1剤とした。
【0067】
次いで、40重量%のグリオキサール水溶液を第2剤とした。尚、本比較例6は、本発明の範囲外の例である。
(比較例7)酢酸ビニルエマルジョン(アイカアイボンA-344K、樹脂濃度:53重量%/アイカ工業(株)製)から成る水性接着剤を調製した。
【0068】
本比較例7は、本発明の範囲外の例である。尚、実施例1〜4及び比較例1〜7の速硬化接着剤の製造方法、アセトアセチル化ポリビニルアルコールの重合度、第1剤の樹脂濃度、PRTR法の指定物質を1重量%以上含むか否かを表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
b)次に、実施例1〜3、実験例1、及び比較例1〜7で製造した速硬化接着剤の効果を確認するために行った試験について説明する。
割裂接着強さ試験i)試験方法試験は、実施例1〜3、比較例1〜7の速硬化接着剤について、JIS K 6853の「接着剤の割裂接着強さ試験方法」に示された方法に準じ、以下のように行った。
【0071】
合板(32mm×25mm)の2片を被着材とし、片方の合板に第1剤を塗布量約150g/m2で塗布し、もう一方の合板に第2剤を塗布量約30g/m2で塗布した後、両面を貼り合わせて、直ちに約0.5MPaで30秒間プレス圧締し、試験体を作成した。尚、この接着方法(両面塗布の接着方法)は、(実施例1、実施例2、及び比較例1〜7の速硬化接着剤を用いる場合を除き)請求項5の範囲内の方法である。
【0072】
また、実施例3の速硬化接着剤については、片方の合板に、先に第2剤を塗布量約30g/m2にて塗布した後、その上に第1剤を塗布量約150g/m2にて塗布し、もう一方の合板は無塗布の状態で、2片を上と同様に貼り合わせ、プレス圧締した試験片も作成した。尚、この接着方法(片面塗布の接着方法)は請求項6の範囲内の方法である。
【0073】
次に、それぞれの試験片について、試験体の作成後(つまりプレス圧締の解圧後)、次の3種類の条件で放置した後に割裂試験を実施し、接着強度と材破率(被接着面積に対し、合板が材破した面積比率)を測定した。
・プレス圧締の解圧直後(初期条件)・24時間室温にて養生した後(24時間室温放置条件)・24時間室温にて養生した後、更に、60℃水に3時間浸せき後、濡れたまま直ちに測定(24時間室温放置+温水浸積条件)。
【0074】
尚、試験における雰囲気温度は20℃であった。
ii)結果を表2に示す。
【0075】
【表2】

【0076】
表2に示す様に、実施例1〜3の速硬化接着剤は、初期条件、24時間室温放置条件、24時間室温放置+温水浸積条件のいずれの条件においても、高い接着強度を示した。また、24時間室温放置条件では、材破率はいずれも100%であった。
【0077】
特に、イソシアネートを含有する実施例3の速硬化接着剤は、24時間室温放置+温水浸積条件での接着強度が高かった。つまり、実施例3の速硬化接着剤は、耐水性が高かった。また、実施例3の速硬化接着剤は、接着方法(両面塗布の接着方法か片面塗布の接着方法か)のそれぞれについて、高い接着強度を示した。
【0078】
一方、比較例1〜5の速硬化接着剤は、24時間室温放置条件では高い接着強度と材破率を示したものの、初期条件、24時間室温放置+温水浸積条件では、非常に接着強度が低かった。また、比較例6及び7の速硬化接着剤は、初期条件、24時間室温放置条件、24時間室温放置+温水浸積条件のいずれの条件でも接着強度及び材破率が低かった。
【0079】
硬化速度の測定i)試験方法試験は、実施例1〜3、比較例1〜6の速硬化接着剤について、以下のように行った。
【0080】
200mlのビーカーに第1剤を100g入れておき、そこに第2剤を20g加える。第2剤を加えると同時に、第1剤と第2剤とをガラス棒でかき混ぜ始め、かき混ぜ始めてからゲル化するまでの時間を測定し、この時間を硬化速度とする。
【0081】
尚、試験における雰囲気温度は20℃であった。
ii)結果を表3に示す。
【0082】
【表3】

【0083】
表3に示す様に、実施例1〜3の速硬化接着剤の硬化速度は20〜22秒であり、非常に短かった。一方、比較例1〜6の速硬化接着剤の硬化速度は、いずれも35秒以上であった。
【0084】
フラッシュパネルの接着試験i)試験方法試験は、実施例1〜3、比較例1〜7の速硬化接着剤を用いてフラッシュ接着を行い、接着部を観察する方法により行った。
【0085】
具体的には、巾5cmのパーチクルボードをフラッシュ構成とした芯材と、合板となる面材(50cm×100cm)とからなるパネルにおいて、面材の合板側に第2剤を塗布量約30g/m2にて塗布し、芯材のパーチクルボードに第1剤を塗布量約150g/m2にて塗布した後、芯材と面材とを貼り合わせて、直ちに約0.5MPaの圧力で30秒間プレス圧締し接着を行った。
【0086】
プレス圧締解圧後、接着部分の剥がれ等を観察して良好であれば○、剥がれが発生すれば×と評価した。
ii)結果を表3に示す。
表3に示す様に、実施例1〜3の速硬化接着剤を用いてフラッシュ接着を行った場合には、剥がれ等は発生しなかった。
【0087】
一方、比較例1〜7の速硬化接着剤を用いてフラッシュ接着を行った場合には、剥がれ等が発生した。
Vカット接着試験試験は、実施例1〜3、比較例1〜7の速硬化接着剤を用いてVカット接着を行い、接着部を観察する方法により行った。
【0088】
具体的には、V溝の入ったMDF(中密度繊維板)に、まず、第2剤を塗布量約30g/m2にて塗布し、その上から第1剤を塗布量約150g/m2にて塗布した後、貼り合わせて、直ちに約0.5MPaの圧力で30秒間圧締し接着を行った。接着後、接着部分の剥がれ等を観察し、良好であれば○、剥がれが発生すれば×と評価した。
【0089】
ii)結果を表3に示す。
表3に示す様に、実施例1〜3の速硬化接着剤を用いてVカット接着を行った場合には、剥がれ等は発生しなかった。一方、比較例1〜7の速硬化接着剤を用いてVカット接着を行った場合には、剥がれ等が発生した。
【0090】
製造に使用した釜内壁の水洗浄試験
i)試験方法実施例1、2、及び実験例1について、第1剤の製造に使用する釜の内壁の状態を、製造終了後に観察し、釜内壁の付着物が水洗浄により除去できるかを試験した。
【0091】
ii)結果を表4に示す。
【0092】
【表4】

【0093】
表4に示す様に、実施例1及び2については、釜の内壁に付着しているものは、エマルジョン状の物質(第1剤の樹脂成分)であり、水洗浄で容易に除去することができた。また、釜内壁には樹脂の乾燥皮膜が付着しないため、樹脂の乾燥皮膜が接着剤中に混入して凝集物となり、製品としての不具合が発生するといった問題は生じなかった。
【0094】
実験例1については、アセトアセチル化ポリビニルアルコールを混合溶解する際に、混合初期より強制的な外部加熱を行ったために、釜の内壁に樹脂の乾燥皮膜が付着しており、水洗浄では除去できなかった。
尚、本発明は上記の形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない 範囲で種々の形態で実施することができる。
 
訂正の要旨 a.特許請求の範囲の請求項1-9において、もとの請求項2、5、6を削除し、以下項数を繰り上げ、1-6と訂正する(クレーム対応表参照)。

b.特許請求の範囲の請求項1に係る記載を、特許請求の範囲の限縮を目的として、次の通りに訂正する。尚、下線は訂正個所を明示するために施したものである。
「【請求項1】
樹脂エマルジョン、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、及びイソシアネート化合物を含有する第1剤と、
ヒドラジン誘導体を含有する第2剤と、から成る速硬化接着剤であって、
前記第1剤における前記樹脂エマルジョンの重量比率と、前記アセトアセチル化ポリビニルアルコールの重量比率との合計が、45〜65重量%の範囲にあると共に、
前記アセトアセチル化ポリビニルアルコールの重合度が1000〜2500の範囲にあることを特徴とする速硬化接着剤。」
これに伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明瞭でない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落番号【0015】、【0017】を、それぞれ以下の通り訂正する。
「【0015】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
(1)請求項1の発明は、樹脂エマルジョン、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、及びイソシアネート化合物を含有する第1剤と、ヒドラジン誘導体を含有する第2剤と、から成る速硬化接着剤であって、前記第1剤における前記樹脂エマルジョンの重量比率と、前記アセトアセチル化ポリビニルアルコールの重量比率との合計が、45〜65重量%の範囲にあると共に、前記アセトアセチル化ポリビニルアルコールの重合度が1000〜2500の範囲にあることを特徴とする速硬化接着剤を要旨とする。」
「【0017】
そのため、本発明の速硬化接着剤は、硬化速度が速く、高い初期接着強度を得ることができ、例えば、短時間でのフラッシュパネルの製造やVカット接着品の製造において、ユーザーの満足できる性能を発揮する。また、本発明の速硬化接着剤は、PRTR法(Pollutant Release and Transfer Register)における指定物質を含んでいないため、安全衛生上において問題なく使用することができる。
また、本発明の速硬化接着剤は、第1剤にイソシアネート化合物を含有しているため、例えば、硬化後における耐水性に優れている。
・前記イソシアネート化合物としては、例えば、例えば、フェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)キシリレンジイソシアネート(XDI)などのイソシアネート化合物などが挙げられる。
イソシアネート化合物の配合量は、例えば、第1剤の他の成分(例えば、前記樹脂エマルジョンとアセトアセチル化ポリビニルアルコールとの水溶液)100部に対して5〜40部とすることができ、好ましくは、10〜25部である。5部未満では耐水性が得られ難く、40部以上ではイソシアネートと溶液中の水とが反応し、保存安定性に欠ける。」
c.特許請求の範囲の請求項2の削除に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明瞭でない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落番号【0025】、【0026】、【0027】の内容を、それぞれ削除する訂正を行う。
d.特許請求の範囲の請求項2(訂正後の請求項2)に係る記載を、特許請求の範囲の限縮を目的として、次の通りに訂正する。尚、下線は訂正個所を明示するために施したものである。
「【請求項2】
樹脂エマルジョン及びアセトアセチル化ポリビニルアルコールを含有する第1剤と、
ヒドラジン誘導体を含有する第2剤と、から成る速硬化接着剤の製造方法であって、
前記第1剤の製造工程として、前記樹脂エマルジョンに前記アセトアセチル化ポリビニルアルコールの粉体を攪拌混合し、外部からの加熱を行わずに前記混合に伴い発生する混合熱により前記混合物中のアセトアセチル化ポリビニルアルコールを溶解する工程を含むことを特徴とする速硬化接着剤の製造方法。」
これに伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明瞭でない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落番号【0028】、【0029】、【0034】を、それぞれ以下のように訂正する。
「 【0028】
(2)請求項2の発明は、樹脂エマルジョン及びアセトアセチル化ポリビニルアルコールを含有する第1剤と、ヒドラジン誘導体を含有する第2剤と、から成る速硬化接着剤の製造方法であって、前記第1剤の製造工程として、前記樹脂エマルジョンに前記アセトアセチル化ポリビニルアルコールの粉体を攪拌混合し、外部からの加熱を行わずに前記混合に伴い発生する混合熱により前記混合物中のアセトアセチル化ポリビニルアルコールを溶解する工程を含むことを特徴とする速硬化接着剤の製造方法を要旨とする。」
「【0029】
本発明の速硬化接着剤の製造方法において、第1剤は、例えば、樹脂エマルジョンに粉体のアセトアセチル化ポリビニルアルコールを、攪拌しながら混合することにより製造される。この時、樹脂エマルジョンとアセトアセチル化ポリビニルアルコールとの混合による混合熱が生じ、この混合熱によりアセトアセチル化ポリビニールアルコールは溶解される。
そのため、混合物中のアセトアセチル化ポリビニルアルコールを溶解するための外部からの加熱は、不要である。その結果、製造プロセスにおいて、混合物の加熱にともなって発生しやすい皮張り(空気層と接触しているエマルジョン表面が成膜する状態)や、釜(混合物を収容する容器)内壁に樹脂がこびり付く等の問題が解消でき、製造に要するエネルギーを節減することができる。」
「【0034】
尚、第2剤は、例えば、ヒドラジン誘導体を水に溶解することにより製造することができる。」
また、請求項2の記載の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明瞭でない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落番号【0030】の内容を削除する訂正を行う。
e.上記aの請求項の削除に伴い、特許請求の範囲の請求項3(訂正後の請求項3)に係る記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、以下のように訂正する。尚、下線は訂正個所を明示するために施したものである。
「【請求項3】
前記速硬化接着剤が、前記請求項1に記載の速硬化接着剤であることを特徴とする前記請求項2に記載の速硬化接着剤の製造方法。」
これに伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明瞭でない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落番号【0037】を以下のように訂正する。
「【0037】
(3)請求項3の発明は、前記速硬化接着剤が、前記請求項1に記載の速硬化接着剤であることを特徴とする前記請求項2に記載の速硬化接着剤の製造方法を要旨とする。本発明の製造方法では、第1剤の樹脂濃度及びアセトアセチル化ポリビニルアルコールの重合度が高く、速硬化性と初期接着力において優れた速硬化接着剤を製造することができる。」
f.上記aの請求項の削除に伴い、特許請求の範囲の請求項4(訂正後の請求項4)に係る記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、以下のように訂正する。尚、下線は訂正個所を明示するために施したものである。
「【請求項4】
前記混合物に、イソシアネートを配合することを特徴とする前記請求項2又は3に記載の速硬化接着剤の製造方法。」
これに伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明瞭でない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落番号【0043】を以下のように訂正する。
「【0043】
(4)請求項4発明は、前記混合物に、イソシアネートを配合することを特徴とする前記請求項2又は3に記載の速硬化接着剤の製造方法を要旨とする。本発明で製造される速硬化接着剤は、イソシアネートを含有しているため、例えば、硬化後における耐水性に優れている。」
g.上記aの請求項の削除に伴い、特許請求の範囲の請求項5(訂正後の請求項5)に係る記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、以下のように訂正する。尚、下線は訂正個所を明示するために施したものである。
「【請求項5】
前記請求項1に記載の速硬化接着剤を用いる接着方法であって、
前記第1剤を1の部材の表面に塗布するとともに、前記第2剤を他の1の部材の表面に塗布する塗布工程と、
前記1の部材の前記第1剤を塗布した面と、前記他の1の部材の前記第2剤を塗布した面とが重なるように、前記1の部材と前記他の1の部材とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、を含むことを特徴とする接着方法。」
これに伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明瞭でない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落番号【0045】を以下のように訂正する。
「【0045】
・前記イソシアネート化合物の配合量は、例えば、第1剤の他の成分(例えば、前記樹脂エマルジョンとアセトアセチル化ポリビニルアルコールとの水溶液)100部に対して5〜40部とすることができ、好ましくは、10〜25部である。5部未満では耐水性が得られ難く、40部以上ではイソシアネートと溶液中の水とが反応し、保存安定性に欠ける。
(5)請求項5の発明は、前記請求項1に記載の速硬化接着剤を用いる接着方法であって、前記第1剤を1の部材の表面に塗布するとともに、前記第2剤を他の1の部材の表面に塗布する塗布工程と、前記1の部材の前記第1剤を塗布した面と、前記他の1の部材の前記第2剤を塗布した面とが重なるように、前記1の部材と前記他の1の部材とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、を含むことを特徴とする接着方法を要旨とする。」
h.上記aの請求項の削除に伴い、特許請求の範囲の請求項6(訂正後の請求項6)に係る記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、以下のように訂正する。尚、下線は訂正個所を明示するために施したものである。
「【請求項6】
前記請求項1に記載の速硬化接着剤を用いる接着方法であって、
前記第1剤と前記第2剤とを、1の部材の表面に順番に堆積塗布する堆積塗布工程と、
前記1の部材の前記堆積塗布を行った面が他の1の部材との貼り合わせ面となるように、前記1の部材と前記他の1の部材とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、を含むことを特徴とする接着方法。」
これに伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明瞭でない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落番号【0048】を以下のように訂正する。
「【0048】
・前記塗布工程における第1剤の塗布量は、例えば、固形分として10〜300g/m2とすることができ、第2剤の塗布量は、ヒドラジン誘導体として1〜50g/m2とすることができる。
・前記貼り合わせ工程では、例えば、貼り合わせ後に部材を圧締することにより接着力を高めることができる。
(6)請求項6の発明は、前記請求項1に記載の速硬化接着剤を用いる接着方法であって、前記第1剤と前記第2剤とを、1の部材の表面に順番に堆積塗布する堆積塗布工程と、前記1の部材の前記堆積塗布を行った面が他の1の部材との貼り合わせ面となるように、前記1の部材と前記他の1の部材とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、を含むことを特徴とする接着方法を要旨とする。」
i.上記a〜hの訂正に伴い、明瞭でない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落番号【0053】、【0054】、【0056】、【0058】、【0059】、【0061】、【0069】、【0070】、【0071】、【0072】、【0090】、【0094】を、それぞれ以下のように訂正する。
「【0053】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の速硬化接着剤、速硬化接着剤の製造方法、及び接着方法の実施の形態の例(実施例)を説明する。
a)実施例1〜3、実験例1、及び比較例1〜7の速硬化接着剤について説明する。」
「【0054】
尚、実施例1〜3、実験例1、及び比較例1〜6で製造する速硬化接着剤は、第1剤と第2剤から構成される2剤式の接着剤であり、比較例7で調製する速硬化接着剤は、1剤のみから成るものである。
(実施例1)アクリルエマルジョン(アイカアイボンRAX-81L/アイカ工業(株)製)100部に水を30部添加し撹拌しながらアセトアセチル化ポリビニルアルコール20部(ゴーセファイマーZ-200、重合度:約1000/日本合成化学工業(株)製)を粉体のまま徐々に添加した。」
「【0056】
次いで、10重量%アジピン酸ジヒドラジド水溶液100部、20重量%塩化リチウム水溶液20部を混合して第2剤とした。尚、本実施例1は、請求項2に記載の発明の範囲内の例である。
(実施例2)エチレン酢酸ビニルエマルジョン(アイカアイボンAE-21/アイカ工業(株)製)100部に水を40部添加し撹拌しながらアセトアセチル化ポリビニルアルコール30部(ゴーセファイマーZ-200/日本合成化学工業(株)製)を粉体のまま徐々に添加した。」
「【0058】
尚、本実施例2は、請求項2に記載の発明の範囲内の例である。
(実施例3)実施例1の第1剤100部にイソシアネート(AUH-1/アイカ工業(株)製)20部を添加し、樹脂濃度58重量%の接着剤組成物を得た。これを第1剤とした。」
「【0059】
また、第2剤は実施例1の第2剤と同様とした。尚、本実施例3は、請求項1〜4に記載の発明の範囲内の例である。
(実験例1)第1剤として、アクリルエマルジョン(アイカアイボンRAX-81L/アイカ工業(株)製)100部に水を30部添加し、外部より過熱蒸気による強制加熱を加えて撹拌しながらアセトアセチル化ポリビニルアルコール20部(ゴーセファイマーZ-200/日本合成化学工業(株)製)を粉体のまま徐々に添加した。」
「【0061】
(比較例1)アセトアセチル化ポリビニールアルコール(ゴーセファイマーZ-200/日本合成化学工業(株)製)を予め20重量%水溶液として溶解した。アクリルエマルジョン(アイカアイボンRAX-81L/アイカ工業(株)製)100部に対し、20重量%アセトアセチル化ポリビニールアルコール水溶液を100部混合し、樹脂濃度38重量%の接着剤組成物を得た。これを第1剤とした。」
「【0069】
【表1】


「【0070】
b)次に、実施例1〜3、実験例1、及び比較例1〜7で製造した速硬化接着剤の効果を確認するために行った試験について説明する。
割裂接着強さ試験i)試験方法試験は、実施例1〜3、比較例1〜7の速硬化接着剤について、JIS K 6853の「接着剤の割裂接着強さ試験方法」に示された方法に準じ、以下のように行った。」
「【0071】
合板(32mm×25mm)の2片を被着材とし、片方の合板に第1剤を塗布量約150g/m2で塗布し、もう一方の合板に第2剤を塗布量約30g/m2で塗布した後、両面を貼り合わせて、直ちに約0.5MPaで30秒間プレス圧締し、試験体を作成した。尚、この接着方法(両面塗布の接着方法)は、(実施例1、実施例2、及び比較例1〜7の速硬化接着剤を用いる場合を除き)請求項5の範囲内の方法である。」
「【0072】
また、実施例3の速硬化接着剤については、片方の合板に、先に第2剤を塗布量約30g/m2にて塗布した後、その上に第1剤を塗布量約150g/m2にて塗布し、もう一方の合板は無塗布の状態で、2片を上と同様に貼り合わせ、プレス圧締した試験片も作成した。尚、この接着方法(片面塗布の接着方法)は請求項6の範囲内の方法である。」
「【0090】
製造に使用した釜内壁の水洗浄試験
i)試験方法実施例1、2、及び実験例1ついて、第1剤の製造に使用する釜の内壁の状態を、製造終了後に観察し、釜内壁の付着物が水洗浄により除去できるかを試験した。」
「【0094】
実施例1については、アセトアセチル化ポリビニルアルコールを混合溶解する際に、混合初期より強制的な外部加熱を行ったために、釜の内壁に樹脂の乾燥皮膜が付着しており、水洗浄では除去できなかった。
尚、本発明は上記の形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。」
j.誤記の訂正を目的として、段落番号【0092】を以下のように訂正する。
「【0092】
【表4】


異議決定日 2003-02-25 
出願番号 特願2001-15983(P2001-15983)
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 近藤 政克  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 井上 彌一
佐藤 修
登録日 2001-04-20 
登録番号 特許第3181048号(P3181048)
権利者 アイカ工業株式会社
発明の名称 速硬化接着剤、速硬化接着剤の製造方法、及び接着方法  
代理人 吉武 賢次  
代理人 足立 勉  
代理人 紺野 昭男  
代理人 横田 修孝  
代理人 中村 行孝  
代理人 足立 勉  
代理人 伊藤 武泰  

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