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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B22D |
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管理番号 | 1077907 |
異議申立番号 | 異議2001-71942 |
総通号数 | 43 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-11-05 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-07-16 |
確定日 | 2003-04-07 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3124466号「鋼の連続鋳造装置および連続鋳造方法」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3124466号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許は、平成7年4月20日に出願されたものであって、平成12年10月27日に請求項1ないし4に係る発明につき特許権の設定登録がなされた後、平成13年7月16日に特許異議申立人である株式会社神戸製鋼所より、請求項1ないし4に係る特許について特許異議の申立がなされ、取消の理由が通知され、その指定期間内である平成15年1月7日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 訂正事項a. 明細書の【発明の名称】の「鋼の連続鋳造装置および連続鋳造方法」を「鋼の連続鋳造装置」に訂正する。 訂正事項b. 明細書の特許請求の範囲【請求項1】の「鋼の連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有するサポートロールであって、」を「鋼の連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有するサポートロールが240mmの上下にまたがって異なるロールピッチで設けられている鋼の連続鋳造装置において、」に訂正する。 訂正事項c. 明細書の特許請求の範囲【請求項2】の「鋼の連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有するサポートロールであって、」を「鋼の連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有するサポートロールが240mmの上下にまたがって異なるロールピッチで設けられている鋼の連続鋳造装置において、」に訂正する。 訂正事項d. 明細書の特許請求の範囲【請求項3】及び【請求項4】を削除する。 訂正事項e. 明細書の段落番号【0001】の「鋼の連続鋳造装置および連続鋳造方法に関するものである。」を「鋼の連続鋳造装置に関するものである。」に訂正する。 訂正事項f. 明細書の段落番号【0012】の「高速鋳造が可能な連続鋳造方法を提供することにある。」を「高速鋳造が可能な連続鋳造装置を提供することにある。」に訂正する。 訂正事項g. 明細書の段落番号【0013】の全文を次のように訂正する。 「【課題を解決するための手段】 本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その要旨とすることろは、 [1]鋼の連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有するサポートロールが240mmの上下にまたがって異なるロールピッチで設けられている鋼の連続鋳造装置において、分割ロールエッジと隣接する分割ロールエッジとの間隔について、分割ロールのロールピッチが240mmを境にして異なる規定による上限値を定めたこと。」(審判PLシステム上、[1]とする。) 訂正事項h. 明細書の段落番号【0014】の全文を次のように訂正する。 「[2]鋼の連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有するサポートロールが240mmの上下にまたがって異なるロールピッチで設けられている鋼の連続鋳造装置において、分割ロールの中間軸受け部の分割ロールエッジと隣接する分割ロールエッジとの間隔Aと、分割ロールのロールピッチ間隔Bとが下記式の関係を満足すること。 A<0.7×B (ロールピッチ>240mm)・・・(1) A<170mm (ロールピッチ≦240mm)・・・(2)」(審判PLシステム上、[2]とする。) (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の適否 訂正事項b及びcについて検討する。 訂正事項b及びcは、請求項1及び2の「鋼の連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有するサポートロールであって、」を「鋼の連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有するサポートロールが240mmの上下にまたがって異なるロールピッチで設けられている鋼の連続鋳造装置において、」と、サポートロールの構成を限定するものである。 請求項1の「ロールピッチが240mmを境にして異なる規定による上限値を定めた・・・鋼の連続鋳造装置」及び請求項2の「分割ロールの中間軸受け部の分割ロールエッジと隣接する分割ロールエッジとの間隔Aと、分割ロールのロールピッチ間隔Bとが下記式の関係を 満足することを特徴とする鋼の連続鋳造装置。 A<0.7×B (ロールピッチ>240mm)・・・(1) A<170mm (ロールピッチ≦240mm)・・・(2)」との記載では、一つの連続鋳造装置においてロールピッチが240mmを超えるものと240mm以下のものと併存することを要件としているのか、一つの連続鋳造装置においてすべてのロールピッチが240mmを境にしてこれより大きいか小さいかの一方のみを要件としているのか明りょうでないものであった。 そこで、請求項1の「・・・、割ロールのロールピッチが240mmを境にして異なる規定による上限値を定めたこと」の記載、請求項2の「・・・、分割ロールのロールピッチ間隔Bとが下記式の関係を満足すること。 A<0.7×B (ロールピッチ>240mm)・・・(1) A<170mm (ロールピッチ≦240mm)・・・(2)」の記載、及び実施例の【表1】及び【表2】に示されている、鋼の連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有するサポートロールのロールピッチが順次190mm、215-230mm、300mm、330mm、350mm及び360mmとなっている一つの連続鋳造装置に基づいて、「鋼の連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有するサポートロールが240mmの上下にまたがって異なるロールピッチで設けられている鋼の連続鋳造装置において、」であると、明りょうにするとともに、サポートロールの構成を限定するものである。 よって、訂正事項b及びcは、明細書の記載に基づいた特許請求の範囲の減縮を目的とした、及び明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正である。 訂正事項dは、請求項3及び4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮である。 また、上記訂正事項a及びe〜hは、訂正事項b〜dと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。 よって、訂正事項a〜hは、特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立についての判断 (1)申立の理由の概要 特許異議申立人である株式会社神戸製鋼所は、甲第1〜10号証を提出して、請求項1〜4に係る発明は、甲第1号証(特開平6-198303号公報)、甲第2号証(特開平5-111745号公報)、甲第3号証(特開昭50-15737号公報)、甲第4号証(特開平3-110049号公報)、甲第5号証(特開昭54-21176号公報)、甲第6号証(特開昭60-141356号公報)、甲第7号証(「75th STEELMAKING CONFERENCE PROCEEDINGS」Vol.75、1992年、第463〜468頁)、甲第8号証(「鉄と鋼」Vol.73、1987年、第177頁)、甲第9号証(特開平5-57414号公報)及び甲第10号証(特開平1-166873号公報)記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に規定された要件を充足しないものであり、上記各発明に係る特許は同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきと主張している。 (2)本件の請求項1及び2に係る発明 上記「2.訂正の適否についての判断」で示したように上記訂正が認められるから、訂正後の本件の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものである。 (3)甲号各証の記載事項 甲第1号証には、以下の事項が記載されている。 (1-a)「ロールピッチが100〜200mmを有する小径の分割ロールで構成された薄スラブ連続鋳造機のスプリットロールにおいて、 分割ロールチョック幅Aがロールピッチの0.6以下であって、 ロール幅方向におけるロールチョック間距離Bが分割ロールチョック幅Aの2倍以上であり、 且つ、 鋳造方向での分割ロールチョックが同一配列をロールピッチ3本以上離して配列されている薄スラブ連鋳機におけるスプリットロール。」(【請求項1】) (1-b)「・・・高速で連続鋳造された薄スラブを、薄スラブ鋳片内部が凝固完了する前に圧下行うスプリットロールに関する。・・・高速鋳造されたスラブを内部が未凝固の状態における、案内、・・・に際して、その中間軸受部を・・・配置した分割筒状ロールからなるスプリットロールが使用されている。」(【0001】及び【0002】) 甲第2号証には、以下の事項が記載されている。 (2-a)「複数個のロールを直列配置しその各々の両側部を軸受支持してなる分割ロールにおいて、隣接ロール同士の各軸受部にあるベアーリングのアウターレースの対向端面間にドーナツ型のフランジ部をして介在せしめ、該フランジ部の内径部に短筒状リングの外周中央部をして接合せしめ、この短筒状リングの前記フランジ部で仕切られた外周の両半面各々をして該各アウターレースの対向側内周面に当接せしめたことを特徴とする分割ロール。」(【請求項1】) (2-b)「本発明は、従来の分割ロールの各ロール間の軸受部が占める鋳片無支持領域を短くしてバルジング量を極小に抑制し、バルジングに起因する鋳片内部割れ、外面割れ、成分偏析等を有効に防止するものである。」(【0006】) 甲第3号証には、以下の事項が記載されている。 (3-a)「連続鋳造用ガイドロール装置において、ロール軸方向にロールバレルを分割したロール又はロール表面に所定の凹凸を設けたロールを用いて、相互に隣接するロールを千鳥足状に配列したことを特徴とするガイドロール装置。」(特許請求の範囲(I)) (3-b)「つまりバルジングは鉄静圧により凝固殻に発生する応力と、非接触時間によって決定されるので、この内発生する応力σについて次の如く表示すると、・・・バルジングとピッチは幅方向支持間隔(x)(又は鋳片の幅)に影響されることを知り、広幅の鋳片に対しては、特に本発明のガイドロール装置がバルジング防止に有効であることがわかる。」(第2頁右下欄第13行〜第3頁左上欄第4行) 甲第4号証には、以下の事項が記載されている。 (4-a)「本発明は、連続鋳造設備に使用する分割ロールの軸受装置に関するものである。」((イ)産業上の利用分野) (4-b)「第2図に示すように、鋼片7の幅方向に関して、本発明の軸受装置9の設置位置を各ロール31a、31bごとにずらせて配置することが好ましい。これにより、軸受装置9を設けたことによるバルジング等の悪影響がより一層低減される。」(第2頁右下欄第3〜8行) 甲第5号証には、以下の事項が記載されている。 (5-a)「本発明は巾広鋳片又は高い内圧を有する鋳片を円滑に引抜くことを目的とした連続鋳造鋳片案内装置である。」(第1頁左欄第23〜25行) (5-b)「このため本発明は第1図に示す如く駆動ロール1を中央部2で左右に分割し、該分割点で左右各ロール軸を別々に軸支3し、かつ各左右分割ロール1、1’を各々駆動装置4で駆動するものである。」(第1頁右欄第33〜37行) 甲第6号証には、以下の事項が記載されている。 (6-a)「本発明は高速鋳造機における駆動用ロール、さらに詳しくは高負荷に耐え、高トルク伝達可能な駆動用分割ロールに関する。」(「産業上の利用分野」) (6-b)「第2図において3aは駆動用分割ロール、3bは無駆動分割ロールであり、3aは駆動装置8より伝達軸7を介して回転せしめられる。4aは端部の自由側軸受、4bは同左固定軸受、6aは中央の固定側軸受、6bは同左自由側軸受で、個々のロール5a、5b、5cを支承すると共に、ロール5の軸方向の熱膨張伸びを自由側軸受で緩和する。」(第2頁右上欄第12〜18行) 甲第7号証には、以下の事項が記載されている。 (7-a)「欠陥のないスラブ製造の原理の基に設計されたNo.3スラブ連続鋳造機(以下、3CCMと略す)は、1981年始動開始以来、11年間操業している。」(1.はじめに) (7-b)「分割ロールに焦点を当てて、長寿命技術と品質保証技術に関して以下の通りレポートする。 4.1-1分割ロールアセンブリー精度制御 1)ロール位置合わせ 位置合わせパッドの上に、上ロールフレームと下ロールフレームをセットした後、位置合わせゲージとロールの頂部との間の距離を間隙測定ゲージを使用して測定する。」(第466頁4-1欄(第13図参照)) 甲第8号証には、以下の事項が記載されている。 (8-a)「京浜#1CCMにおいて〔C〕=0.09〜0.15%の中炭材で、非定常バルジングに起因した湯面変動が発生する。今回この対策として、小径分割ロール化によるロールピッチ変更を実施したところ、有効であったので以下に報告する。」(1.緒言) 甲第9号証には、以下の事項が記載されている。 (9-a)「本発明は、連続鋳造鋳片のバルジング防止方法に係り、特に熱間強度の低い極低炭素鋼の高速鋳造時に非定常バルジングが発生するのを防止する方法に関するものである。」(【産業上の利用分野】) (9-b)「他のバルジング防止方法として、ガイドローラ107間のローラピッチを例えば、200〜300mm程度に狭くして初期バルジングの発生を機械的に防ぐとか、ガイドローラ107とそれを支持するフレーム(図示省略)にそれぞれ剛性をもたせ、バルジングを強引に矯正できるようにするとかしていた。」【0007】 甲第10号証には、以下の事項が記載されている。 (10-a)「この発明はスラブの連続鋳造方法に関する。」([産業上の利用分野]) (10-b)「ガイドロール間のバルジング量を常時測定し、この測定値により鋳造速度を制御してモールド湯面変動量を調整することを特徴とする連続鋳造方法。」(特許請求の範囲) (4)対比判断 本件発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比する。甲第1号証記載の発明における「分割ロールで構成された薄スラブ連続鋳造機のスプリットロール」は、摘記事項(1-b)の技術事項から、本件発明1における「連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有するサポートロール」に相当している。また、甲第1号証記載の発明における「分割ロールチョック幅A」とは、本件発明1における「分割ロールエッジと隣接する分割ロールエッジとの間隔」のことである。甲第1号証には、連続鋳造する具体的材料について記載されていないが、連続鋳造する材料として鋼は本件特許出願前通常のものであり、甲第1号証記載の発明における薄スラブの材料として鋼も適用し得ることは明らかである。してみると、両者は「鋼の連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有するサポートロールが、あるロールピッチで設けられている鋼の連続鋳造装置において、分割ロールエッジと隣接する分割ロールエッジとの間隔について、ロールピッチとのある関係のもとで規定する鋼の連続鋳造装置」である点で一致しているが、本件発明1では「サポートロールが240mmの上下にまたがって異なるロールピッチで設けられている」のに対し、甲第1号証記載の発明では100〜200mmのロールピッチで設けられている点(相違点1)、及び本件発明1では「分割ロールエッジと隣接する分割ロールエッジとの間隔について、分割ロールのロールピッチが240mmを境にして異なる規定による上限値を定めた」ことであるのに対し、甲第1号証の発明では、分割ロールエッジと隣接する分割ロールエッジとの間隔がロールピッチの0.6以下としている点(相違点2)で相違している。 上記相違点について検討する。上記甲第2〜10号証の摘記事項を参照するに、甲第2〜8号証記載の発明は、連続鋳造装置に関するものであり、いずれも分割ロールについての記載はあるが、甲第2〜8号証には、その連続鋳造装置が「分割ロールを有するサポートロールが240mmの上下にまたがって異なるロールピッチで設けられている連続鋳造装置」であること、分割ロールについて「分割ロールエッジと隣接する分割ロールエッジとの間隔について、分割ロールのロールピッチが240mmを境にして異なる規定による上限値を定めた」ことの記載はなく、またそれらを示唆する記載もない。甲第9、10号証記載の発明は、鋼の連続鋳造装置に関するものであるが、分割ロールについての記載すらない。したがって、甲第2〜10号証のいずれにも、分割ロールを有するサポートロールが240mmの上下にまたがって異なるロールピッチで設けられている連続鋳造装置、そして、そのような連続鋳造装置において、分割ロールエッジと隣接する分割ロールエッジとの間隔について、分割ロールのロールピッチが240mmを境にして異なる規定による上限値を定めることについて何ら記載されていない以上、甲第1号証と甲第2〜10号証をいかに組み合わせても、相違点1及び2が導き出せるものではない。 本件発明1は、それにより、鋼の連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有するサポートロールが240mmの上下にまたがって異なるロールピッチで設けられている鋼の連続鋳造装置において、訂正明細書記載の「モールド部直下部分以下のサポートロールを分割ロール化し、且つその条件を適正化して鋳造することにより、鋳片のシェルのサポートロール間、特に、局部的な分割ロール中間軸受部でのバルジング量を限界値以下に保持し、バルジングの残留を防止し、湯面変動の発生を防止することができ、安定した鋳造が実現できる。また、鋳片にバルジングの残留がなくなるので、その鋳片の厚さおよび平坦度の精度を向上することができる。さらにまた、高速鋳造時に問題となる鋳片表面の冷却むらによる温度むらもなくなり、内、外質とも良好な鋳片を得ることができる。」という顕著な効果を奏するものである。 また、上記相違点1及び2については甲第2〜10号証のいずれにも記載されていないのだから、甲第1号証を除いて、甲第2〜10号証をいかに組み合わせたとしても、本件発明1が、甲第2〜10号証記載の発明に基づいて、当業者が容易になし得たこととすることはできない。 本件発明2は、本件発明1を引用する形式とはなっていないが、本件発明1の「鋼の連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有するサポートロールが240mmの上下にまたがって異なるロールピッチで設けられている鋼の連続鋳造装置において、分割ロールエッジと隣接する分割ロールエッジとの間隔について、分割ロールのロールピッチが240mmを境にして異なる規定による上限値を定めたことを特徴とする鋼の連続鋳造装置」における「分割ロールのロールピッチが240mmを境にして異なる規定による上限値」について、さらに具体的に「分割ロールの中間軸受け部の分割ロールエッジと隣接する分割ロールエッジとの間隔Aと、分割ロールのロールピッチ間隔Bとが下記式の関係を満足することを特徴とする鋼の連続鋳造装置。 A<0.7×B (ロールピッチ>240mm)・・・(1) A<170mm (ロールピッチ≦240mm)・・・(2)」と規定した発明であるから、本件発明1についての上記判断と同様、甲第1〜10号証をいかに組み合わせても当業者が容易になし得たこととすることはできず、また上記本件発明1と同様な顕著な効果を奏するものである。 よって、本件発明1及び2は、甲第1〜10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことができない。 また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 鋼の連続鋳造装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 鋼の連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有するサポートロールが240mmの上下にまたがって異なるロールピッチで設けられている鋼の連続鋳造装置において、分割ロールエッジと隣接する分割ロールエッジとの間隔について、分割ロールのロールピッチが240mmを境にして異なる規定による上限値を定めたことを特徴とする鋼の連続鋳造装置。 【請求項2】 鋼の連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有するサポートロールが240mmの上下にまたがって異なるロールピッチで設けられている鋼の連続鋳造装置において、分割ロールの中間軸受け部の分割ロールエッジと隣接する分割ロールエッジとの間隔Aと、分割ロールのロールピッチ間隔Bとが下記式の関係を満足することを特徴とする鋼の連続鋳造装置。 A<0.7×B (ロールピッチ>240mm) ・・・(1) A<170mm (ロールピッチ≦240mm) ・・・(2) 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、分割ロールで鋳片を支持するサポートロールを有する鋼の連続鋳造装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 従来から、分割ロールを用いて鋳片を鋳造する連続鋳造機において、鋳造速度を早めたり、緩冷却化を図ったりすると、鋳片に冷却むらやモールド内溶鋼の湯面レベルに、周期的な湯面変動や鋳片内部に割れが発生することがしばしば起こっていた。この現象は中間軸受部を有する分割ロール型サポートロールで、鋳片を支持する形式の連続鋳造において顕著にみられ、サポートロール間のバルジングが原因とされている。 【0003】 この分割ロールの中間軸受け部の影響を少なくする方法としては、公知技術として実公昭52-5134号公報に、ストリップロールの中間軸受け部をスラブの移動方向に対して、順次交互に入れ換え、且つ、上下関係においても同様になすことが開示されている。 また、実公昭54-23650号公報には、中間軸受けに狭い範囲でのジャーナルを装着することが開示されており、さらには、薄スラブキャスターを対象とした、チョック間のバルジング割れ防止と均一冷却方法も検討されている。一方、最近バルジングによる湯面変動の防止方法としても、ロールピッチと湯面変動との関係が解明され、その対策がとられつつある。 【0004】 上記したバルジングの発生について以下判り易く図面で説明する。 まず、鋼の連続鋳造は、通常図1に示すような鋳造機で操業される。図1において、1は所定の断面を保持されている固定振動式または可動式のモールドであり、モールド1の下方には、鋳片3の下降に従って回転して未凝固の鋳片3を支持する、複数対のサポートロール2および5が第1セグメント部4および第2セグメント部6によって所定の配列ピッチDを形成して配設されている。 【0005】 溶鋼3aは、モールド1の上方のタンディッシュおよび注湯ノズル(図示せず)から、モールド1内に連続して注湯されてモールド1内で冷却され、凝固シェル3bを形成し、凝固した鋳片3は下方から所定の鋳造速度で引き抜かれる。このとき鋳片3の内部はまだ未凝固状態にあるため、溶鋼静圧Pによる凝固シェル3bの変形(バルジング)を生じる。この量を一定量以下にするために両面からサポートロール2,5によって支持し、鋳片厚さtを保持しながら鋳片をモールド下方に送出する。図中UBPは鋳片3を湾曲から水平に矯正する矯正ロール、Cは連鋳機出側端に配置した鋳片引き抜き用駆動ピンチロールを示す。 【0006】 ここで、上記バルジング量δは同一鋳造長でサポートロールの配列ピッチ(ロール間距離)が大きい程、また、鋳造速度が大きい程、大になる。 また、図5に鋳片3のバルジングを模式的に示すと、この鋳片3は各サポートロール2間(無支持ゾーン)で、モールド1内の溶鋼の静圧Pによって凝固シェル3bが膨らむが、通常は鋳造速度が遅いと凝固シェル3bが厚くなってバルジング量δが小さくなるために、凝固シェルの変形が弾性変形内での変形となり、バルジングによる変形の残留はなく、バルジング量δの時間的変化は生じない。 【0007】 一方分割ロールで鋳片を支持する連続鋳造機においては、サポートロールの支持部で鋳片を支持できない中間軸受部を有するため、この部分がサポートロールで鋳片を支持しているにも拘らず、上記理由によって凝固シェル3bが膨らむ結果となる。 この様子を図5と同様に図4で示すとサポートロール2の分割ロール中間軸受部2bでバルジング量δが増大するため、分割ロール2aを使用しない連続鋳造機に比し、バルジングによる鋳片表面形状の悪化の影響は大きくなっている。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】 ところで、鋳造速度が高速になると凝固シェル3bが薄くなってバルジング量δが大きくなり、ある限界のバルジング量を越えると凝固シェル3bが塑性変形を起こす。そのためバルジング変形が鋳片表面に残留し、鋳片の変形状況は時間の経過に対応して変化する。 従って、図5に2点鎖線で示すようにバルジング部が次のサポートロール2の箇所まで引抜かれると、厚さtはt1と薄くなり、この部分の容積が減少するので、モールド1内の溶鋼湯面はその分上昇する。 【0009】 このようにバルジングの残留した鋳片が、各々のサポートロール2を通過する毎に、該溶鋼湯面3cが上下に脈動し、湯面3cのレベル制御を困難にする。このような溶鋼湯面の脈動が発生すると、湯面レベル制御が不能になるため、ひいては鋳片の鋳造を続行することができなくなる。 また、上記のようなバルジングが鋳片3の表面に残留すると、鋳片表面の平坦度が悪化し、鋳片厚さが不揃いになって鋳造品質を著しく低下させる。このような現象は、上述のように分割ロールで支持する鋳片においても同様であり、かつ増長される。 【0010】 本発明で対象としているのは、20〜40秒程度を周期として発生する長周期の湯面変動で、この周期は、分割ロールで支持しているロールピッチの2倍程度の距離を鋳片が移動する時間に相当している。 上記のような現象を防止すべく新たな発想に基づき、前述された開示特許を含めて従来の公知文献でのバルジングの抑制、モールド内溶鋼湯面変動の制御等について調査検討を行ったが、本発明が意図する解決法については、その記載をみることはできなかった。 【0011】 そこで、本発明者らは、鋳造速度を高速化させたり、緩冷却化を図ったりする時に発生する周期的な溶鋼湯面変動に着目し、従来言われている鋳造速度や冷却条件やロールピッチ短縮の他に、湯面変動と分割ロールの中間軸受けピッチに着目した結果、これ等の間に何らかの定量的な関係が有るのではないかという疑問を持つに至った。 【0012】 本発明の目的は、前記課題を解決するために提案されたものであり、周期的な湯面変動とロールチョック間距離とに定量的な関係に基づく対策を見いだし、鋳片のバルジング残留を防止して湯面のレベルの変動を抑制し、湯面制御を容易にし、鋳片の品質を向上させると共に、高速鋳造が可能な連続鋳造装置を提供することにある。 【0013】 【課題を解決するための手段】 本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その要旨とするところは、 ▲1▼鋼の連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有するサポートロールが240mmの上下にまたがって異なるロールピッチで設けられている鋼の連続鋳造装置において、分割ロールエッジと隣接する分割ロールエッジとの間隔について、分割ロールのロールピッチが240mmを境にして異なる規定による上限値を定めたこと。 【0014】 ▲2▼鋼の連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有するサポートロールが240mmの上下にまたがって異なるロールピッチで設けられている鋼の連続鋳造装置において、分割ロールの中間軸受け部の分割ロールエッジと隣接する分割ロールエッジとの間隔Aと、分割ロールのロールピッチ間隔Bとが下記式の関係を満足すること。 A<0.7×B (ロールピッチ>240mm) ・・・(1) A<170mm (ロールピッチ≦240mm) ・・・(2) 【0015】 【作用】 本発明者らの実験によれば、図3に示したようにサポートロール2としての分割ロール2aの中間軸受部分2b(すなわち分割ロール2aの片端部と、その隣り合った分割ロール2aの対面する片端部)の間隔(距離)Aと、分割ロール2aのロールピッチ(ロール間隔)B間との関係で、モールド内溶鋼湯面に変動が発生し、その防止対策として前記関係式を満足させなければ湯面3cでの上下脈動を抑制することができないことが判った。 すなわち鋳片シェル3bの厚みが薄く、溶鋼静圧が大きいと鋳片表面に凹凸形状が残留するバルジングが発生し、その結果溶鋼湯面も変動し湯面制御性を阻害するものである。 【0016】 さらに、この現象を複雑化しているのは、分割ロール使用の連続鋳造機においては、中間軸受部において、3次元の変形を起こし、単なるロール間バルジングだけでなく、3次元変形による形状係数が発生し、通常のバルジングよりその量が大きいことであり、このことは先に示した図4により明らかである。 【0017】 そこで本発明者らは通常ロールでは発生しなかった湯面変動が、サポートロールを分割ロール化することによって発生するのを認めたので、分割ロール中間軸受部での3次元変形に着目し、湯面変動防止のために中間軸受部間のピッチ間隔について種々の変更を試み実験研究を重ねた。 その結果、分割ロールのロールピッチが240mmを境にして、鋳片に与える影響が急激に変化することの知見を得るに至った。 【0018】 またさらには、分割ロールの間隔についても最適条件を選択しなければバルジングを防止することはできないとの結論に達し、以下の関係式を見出したものである。 A<0.7×B (ロールピッチ>240mm) ・・・(1) A<170mm (ロールピッチ≦240mm) ・・・(2) 但し A:分割ロール中間軸受部の幅 B:分割ロール間隔 【0019】 この両式を満足するように鋳片の連続鋳造を実施することにより、バルジングの発生量を少なくし、同時にモールドにおける溶鋼湯面の変動をみることなく、安定した操業が可能となり、従って鋳片の表面形状、内部割れ等の発生をも防止することができる。さらには現在の連続鋳造において、鋳造速度の高速化が指向されているが、それにも充分対応できる連続鋳造装置および連続鋳造方法を提供できるものである。 なお、本発明における鋳造条件については、鋳片の鋳造厚さ、幅の大小によっては余り大きな影響は受けない。また製造される鋼種(溶鋼組成)についても同様である。 【0020】 【実施例】 成分C:0.001〜0.500%、Si:≦1.50%、Mn:0.2〜1.7%、P:≦0.03%、S:≦0.09%の溶鋼を所定のモールドに注湯し鋳片サイズ厚さ:100〜400mm、幅:600〜2300mmの鋳片を得た。その時の鋳造速度は0.6〜2.5m/minであり、サポートロールの分割ロール条件は表1〜3に示す通りその値を変えて実施した。 【0021】 表1は本発明範囲内にある実施例で鋳片におけるバルジングの発生は皆無であり、モールドにおける溶鋼湯面変動もなかった。 表2での結果も表1同様本発明範囲内に在ったが、その値が限定値に近かったため多少の湯面変動が生じた。しかし鋳片においてはその影響は少なく鋳片表面形状は精度上は無害であり、実用上何等差支えなかった。 【0022】 表3は本発明範囲から外れる比較例であり、モールド湯面での上下脈動が発生し、鋳片ではバルジングが発生したため、その影響がそのまま残り、鋳片表面形状不良でそのまま使用できず鋳片の表面手入れを必要とした。 上記例での代表的な値を図2にプロットして示した、◎印は表1に、○印は表2に、×印は表3に夫々対応するものである。 【0023】 【表1】 【0024】 【表2】 【0025】 【表3】 【0026】 【発明の効果】 本発明によれば、モールド部直下部分以下のサポートロールを分割ロール化し、且つその条件を適正化して鋳造することにより、鋳片のシェルのサポートロール間、特に、局部的な分割ロール中間軸受部でのバルジング量を限界値以下に保持し、バルジングの残留を防止し、湯面変動の発生を防止することができ、安定した鋳造が実現できる。また、鋳片にバルジングの残留がなくなるので、その鋳片の厚さおよび平坦度の精度を向上することができる。 さらにまた、高速鋳造時に問題となる鋳片表面の冷却むらによる温度むらもなくなり、内、外質とも良好な鋳片を得ることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明を実施するための連続鋳造設備列の概略構成を示す側面図 【図2】 ロール間隔と中間軸受け間隔との関係でモールド内湯面変動の発生状況を示すグラフ 【図3】 本発明に係わる分割ロールの配列を示す平面図 【図4】 チョック間部分での鋳片のバルジングを示す説明図 【図5】 鋳片のバルジングを示す説明図 【符号の説明】 1 モールド 2 サポートロール 2a 分割ロール 2b 中間軸受部 3 鋳片 3a 溶鋼 3b 凝固シェル 3c 湯面 4 第1セグメント部 5 サポートロール 6 第2セグメント部 A 中間軸受部間隔 B ロール間距離(ロールピッチ) C ピンチロール D ロール配列ピッチ UBP 矯正ロール δ バルジング量 t 鋳片の厚さ |
訂正の要旨 |
▲1▼ 訂正事項a 明細書の発明の名称の欄に「鋼の連続鋳造装置および連続鋳造方法」とあるを、「鋼の連続鋳造装置」と訂正する。 ▲2▼ 訂正事項b 明細書の特許請求の範囲の欄の請求項1に「鋼の連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有するサポートロールであって、」とあるを、「鋼の連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有するサポートロールが240mmの上下にまたがって異なるロールピッチで設けられている鋼の連続鋳造装置において、」と訂正する。 ▲3▼ 訂正事項c 明細書の特許請求の範囲の欄の請求項2に「鋼の連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有するサポートロールであって、」とあるを、「鋼の連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有するサポートロールが240mmの上下にまたがって異なるロールピッチで設けられている鋼の連続鋳造装置において、」と訂正する。 ▲4▼ 訂正事項d 明細書の特許請求の範囲の欄の請求項3を削除する。 ▲5▼ 訂正事項e 明細書の特許請求の範囲の欄の請求項4を削除する。 ▲6▼ 訂正事項f 明細書の段落番号0001に、「鋼の連続鋳造装置および連続鋳造方法に関するものである。」とあるを、「鋼の連続鋳造装置に関するものである。」と訂正する。 ▲7▼ 訂正事項g 明細書の段落番号0012に、「高速鋳造が可能な連続鋳造方法を提供することにある。」とあるを、「高速鋳造が可能な連続鋳造装置を提供することにある。」と訂正する。 ▲8▼ 訂正事項h 明細書の段落番号0013に、「▲1▼鋼の連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有するサポートロールであって、」とあるを、「▲1▼鋼の連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有するサポートロールが240mmの上下にまたがって異なるロールピッチで設けられている鋼の連続鋳造装置において、」と訂正する。 ▲9▼ 訂正事項i 明細書の段落番号0013に、「▲2▼鋼の連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有するサポートロールであって、」とあるを、「▲2▼鋼の連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有するサポートロールが240mmの上下にまたがって異なるロールピッチで設けられている鋼の連続鋳造装置において、」と訂正する。 さらに上記の「▲2▼鋼の連続鋳造鋳片を案内する分割ロールを有する・・・」以下の記載を段落番号0014に移す。 ▲10▼ 訂正事項j 明細書の段落番号0014に、「▲3▼鋼の連続鋳造鋳片を案内するサポートロールのうち、・・・・・連続鋳造装置で案内することにある。」(段落番号0014の全文)とあるを削除する。 |
異議決定日 | 2003-03-10 |
出願番号 | 特願平7-117663 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(B22D)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 金 公彦 |
特許庁審判長 |
城所 宏 |
特許庁審判官 |
池田 正人 三崎 仁 |
登録日 | 2000-10-27 |
登録番号 | 特許第3124466号(P3124466) |
権利者 | 新日本製鐵株式会社 |
発明の名称 | 鋼の連続鋳造装置 |
代理人 | 小谷 悦司 |
代理人 | 植木 久一 |
代理人 | 萩原 康弘 |
代理人 | 萩原 康弘 |