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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  C08J
管理番号 1077919
異議申立番号 異議2001-72097  
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-01-06 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-07-31 
確定日 2003-03-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3129907号「ポリエステル系フイルム」の請求項1〜5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3129907号の請求項1〜4に係る特許を取り消す。 
理由 【1】手続きの経緯
本件特許第3129907号の請求項1〜6に係る発明は、平成5年2月22日に日本国にした特願平5-56567号に基づいて優先権を主張して、平成6年2月21日に特願平6-47707号として出願されたものであって、その特許について平成12年11月17日に設定登録がなされ、その後、その請求項1〜5に係る発明の特許について、東洋紡績株式会社より特許異議の申立てがなされ、平成13年11月13日付けで取消理由が通知され、平成14年1月23日付けで特許異議意見書と訂正請求書が提出され、平成14年5月23日付けで取消理由が通知され、平成14年8月2日付けで特許異議意見書が提出されたものである。
【2】訂正の可否についての判断
〈1〉訂正事項
〔1〕訂正事項a
特許請求の範囲の
「【請求項1】少なくとも1種以上の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂を2.5重量%以上30重量%以下含有すると同時に、2種以上の無機粒子を含有することを特徴とする受像用、用紙用延伸ポリエステル系フイルム。
【請求項2】請求項1の延伸ポリエステル系フイルムAの少なくとも片面に、厚さが1μm以上で熱可塑性ポリオレフィン系樹脂を1重量%未満含有する延伸ポリエステル系フイルムBが積層されていることを特徴とする積層ポリエステル系フイルム。
【請求項3】前記フイルムAに含有されている粒子の種類数が、前記フイルムBに含有されている粒子の種類数プラス1以上である請求項2の積層ポリエステル系フイルム。
【請求項4】前記フイルムAが、酸化チタン、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム粒子から選ばれた少なくとも1種の粒子を含有している請求項2又は3の積層ポリエステル系フイルム。
【請求項5】前記フイルムAが、球状シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ジルコニア、凝集シリカ、酸化チタン、クレー、マイカからなる粒子から選ばれた少なくとも2種の粒子を含有している請求項2又は3の積層ポリエステル系フイルム。
【請求項6】前記フイルムAが、熱硬化性有機粒子を含有している請求項2ないし5のいずれかに記載の積層ポリエステル系フイルム。」
を、
「【請求項1】少なくとも1種以上の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂を2.5重量%以上30重量%以下含有すると同時に、2種以上の無機粒子を含有する延伸ポリエステル系フィルムAの少なくとも片面に、厚さが1μm以上で熱可塑性ポリオレフィン系樹脂を1重量%未満含有し、さらに粒子を含有する延伸ポリエステル系フィルムBが積層されていることを特徴とする受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フィルム。
【請求項2】前記延伸ポリエステルフィルムAに含有されている粒子の種類数が、前記延伸ポリエステル系フィルムBに含有されている粒子の種類数プラス1以上である請求項1記載の受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フィルム。
【請求項3】前記延伸ポリエステル系フィルムAが、酸化チタン、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム粒子から選ばれた少なくとも1種の粒子を含有している請求項1又は2の受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フィルム。
【請求項4】前記延伸ポリエステル系フィルムAが、球状シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ジルコニア、凝集シリカ、酸化チタン、クレー、マイカからなる粒子から選ばれた少なくとも2種の粒子を含有している請求項1又は2の受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フィルム。
【請求項5】前記延伸ポリエステル系フイルムAが、熱硬化性有機粒子を含有している請求項1ないし4のいずれかに記載の受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フィルム。」
と訂正する。
〔2〕訂正事項b
本件特許の設定登録時の明細書の
「【0005】
【課題を解決するための手段】
この目的に沿う本発明のポリエステル系フイルムは、少なくとも1種以上の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂を2.5重量%以上30重量%以下含有すると同時に、2種以上の無機粒子を含有する受像用、用紙用延伸ポリエステル系フイルムから成る。」を、
「【0005】
【課題を解決するための手段】
この目的に沿う本発明のポリエステル系フイルムは、少なくとも1種以上の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂を2.5重量%以上30重量%以下含有すると同時に、2種以上の無機粒子を含有する延伸ポリエステル系フイルムAの少なくとも片面に、厚さが1μm以上で熱可塑性ポリオレフィン系樹脂を1重量%未満含有し、さらに粒子を含有する延伸ポリエステル系フイルムBが積層されていることを特徴とする受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フイルムから成る。」と訂正する。
〔3〕訂正事項c
本件特許の設定登録時の明細書の
「【0006】
また、本発明は、上記ポリエステル系フイルムをベースとする積層ポリエステル系フイルムも提供する。すなわち、上記の延伸ポリエステル系フイルムAの少なくとも片面に、厚さが1μm以上で熱可塑性ポリオレフィン系樹脂を1重量%未満含有する延伸ポリエステル系フイルムBが積層されている積層ポリエステル系フイルムである。」を、
「【0006】
すなわち、本発明は、上記延伸ポリエステル系フイルムAをベースとしてその少なくとも片面に延伸ポリエステル系フイルムBが積層されている積層ポリエステル系フイルムを提供する。」と訂正する。
〔4〕訂正事項d
本件特許の設定登録時の明細書の
「【0011】
本発明では、上記のような延伸ポリエステル系フイルムに、少なくとも1種以上の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂が2.5重量%以上30重量%以下含有されると同時に、2種以上の無機粒子が含有される。」を、
「【0011】
本発明では、上記のような延伸ポリエステル系フイルムAに、少なくとも1種以上の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂が2.5重量%以上30重量%以下含有されると同時に、2種以上の無機粒子が含有される。」と訂正する。
〔5〕訂正事項e
本件特許の設定登録時の明細書の
「【0017】
また、本発明の延伸ポリエステル系フイルムに含有される粒子として、上記無機粒子の他に、有機粒子、とくに熱硬化性有機粒子を含有していてもよい。さらに、重合時析出粒子を含有していてもよい。含有される有機粒子としては、例えば、ポリスチレン、アクリル、ポリイミド、ポリアミド、エポキシ、フッ素樹脂、シリコーンからなる架橋又は無架橋粒子が挙げられる。」を、
「【0017】
また、本発明の延伸ポリエステル系フイルムAに含有される粒子として、上記無機粒子の他に、有機粒子、とくに熱硬化性有機粒子を含有していてもよい。さらに、重合時析出粒子を含有していてもよい。含有される有機粒子としては、例えば、ポリスチレン、アクリル、ポリイミド、ポリアミド、エポキシ、フッ素樹脂、シリコーンからなる架橋又は無架橋粒子が挙げられる。」と訂正する。
〔6〕訂正事項f
本件特許の設定登録時の明細書の
「【0018】
本発明の延伸ポリエステル系フイルムは、そのフイルムAの少なくとも片面に、厚さが1μm以上で熱可塑性ポリオレフィン系樹脂を1重量%未満含有する延伸ポリエステル系フイルムBを積層した積層ポリエステル系フイルムとしても好適に使用できる。積層される延伸ポリエステル系フイルムBは、主として、白色化、低密度化された上述の延伸ポリエステル系フイルムAの表面をカバーし、保護する役目を果たす。このフイルムB層自身も白色化、低密度化してもよいが、白色化、低密度化の主な役割はベースフイルム、すなわちフイルムA層が担うので、フイルムB層としては、熱可塑性ポリオレフィン系樹脂を含有しないか、含有しても僅かでよく、1重量%未満でよい。」を、
「【0018】
本発明の延伸ポリエステル系フイルムは、そのフイルムAの少なくとも片面に、厚さが1μm以上で熱可塑性ポリオレフィン系樹脂を1重量%未満含有する延伸ポリエステル系フイルムBを積層した積層ポリエステル系フイルムとするものである。積層される延伸ポリエステル系フイルムBは、主として、白色化、低密度化された上述の延伸ポリエステル系フイルムAの表面をカバーし、保護する役目を果たす。このフイルムB層自身も白色化、低密度化してもよいが、白色化、低密度化の主な役割はベースフイルム、すなわちフイルムA層が担うので、フイルムB層としては、熱可塑性ポリオレフィン系樹脂を含有しないか、含有しても僅かでよく、1重量%未満でよい。」と訂正する。
〔7〕訂正事項g
本件特許の設定登録時の明細書の
「【0020】
このような積層ポリエステル系フイルムにおいては、フイルムB層に粒子が含有されてもよい。ただしこの時、ベースフイルム(フイルムA層)で生成されるボイドの形状に、フイルムB層におけるそれよりも多様性をもたせるために、フイルムAに含有されている粒子の種類数が、フイルムBに含有されている粒子の種類数プラス1以上であることが好ましい。」を、
「【0020】
このような積層ポリエステル系フイルムにおいては、フイルムB層にも粒子が含有されている。ただしこの時、ベースフイルム(フイルムA層)で生成されるボイドの形状に、フイルムB層におけるそれよりも多様性をもたせるために、フイルムAに含有されている粒子の種類数が、フイルムBに含有されている粒子の種類数プラス1以上であることが好ましい。」と訂正する。
〔8〕訂正事項h
本件特許の設定登録時の明細書の
「【0021】
上記のような本発明の延伸ポリエステル系フイルムおよび積層ポリエステル系フイルムでは、フイルムAが熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂を2.5重量%以上30重量%以下含有すると同時に、2種以上の無機粒子を含有し、多様な形状のボイドが形成されるとともに、表面近傍の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂微粒子が脱落しにくくなる。その結果、延伸ポリエステル系フイルムあるいは積層ポリエステル系フイルムは、均一なクッション性、良好な折れ性を有するようになる。均一なクッション性により、印字精度、とくに感熱塗料による印字精度が向上し、良好な折れ性により、きれいな折れ目が得られ、折ることを要求される各種用紙の見栄え、および、使用、操作時の取扱性が向上する。」を、
「【0021】
上記のような本発明の積層ポリエステル系フイルムでは、フイルムAが熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂を2.5重量%以上30重量%以下含有すると同時に、2種以上の無機粒子を含有し、多様な形状のボイドが形成されるとともに、表面近傍の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂微粒子が脱落しにくくなる。その結果、延伸ポリエステル系フイルムあるいは積層ポリエステル系フイルムは、均一なクッション性、良好な折れ性を有するようになる。均一なクッション性により、印字精度、とくに感熱塗料による印字精度が向上し、良好な折れ性により、きれいな折れ目が得られ、折ることを要求される各種用紙の見栄え、および、使用、操作時の取扱性が向上する。」と訂正する。
〔9〕訂正事項i
本件特許の設定登録時の明細書の
「【0022】
次に、本発明のポリエステル系フイルムの代表的製法を説明するが、これに限定されるものではない。所定の粘度(通常は極限粘度にて0.45〜1.50)を有するポリエステル系樹脂に適宜滑剤処方を施した後、400ppm以下、好ましくは80ppm以下に乾燥する。該乾燥原料を押出機を用いて、熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂および2種以上の無機粒子を所定量混合する。脱気孔を有する押出機を用いる場合は乾燥を省略してもよいし、又押出機途中で各種添加剤を添加してもよい。該樹脂を溶融状態で口金からシート状に吐出後、冷却ロール上で冷却固化してキャストフイルムを得る。積層フイルムとする場合には、共押出、あるいは一軸延伸後に一軸延伸フイルム上に別の押出機から吐出されたポリマーをラミネートする方法のいずれでもよい。しかる後、キャストフイルムを60〜120℃の範囲で2.5〜8.0倍縦方向に延伸した後、60〜150℃の範囲で2.5〜6.0倍横方向に延伸し、160〜240℃の範囲で必要に応じ0〜15%弛緩しつつ熱処理を行う。」を、
「【0022】
次に、本発明のポリエステル系フイルムの代表的製法を説明するが、これに限定されるものではない。所定の粘度(通常は極限粘度にて0.45〜1.50)を有するポリエステル系樹脂に適宜滑剤処方を施した後、400pppm以下、好ましくは80ppm以下に乾燥する。該乾燥原料を押出機を用いて、熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂および2種以上の無機粒子を所定量混合する。脱気孔を有する押出機を用いる場合は乾燥を省略してもよいし、又押出機途中で各種添加剤を添加してもよい。該樹脂を溶融状態で口金からシート状に吐出後、冷却ロール上で冷却固化してキャストフイルムを得る。積層フイルムとするためには、共押出、あるいは一軸延伸後に一軸延伸フイルム上に別の押出機から吐出されたポリマーをラミネートする方法のいずれでもよい。しかる後、キャストフイルムを60〜120℃の範囲で2.5〜8.0倍縦方向に延伸した後、60〜150℃の範囲で2.5〜6.0倍横方向に延伸し、160〜240℃の範囲で必要に応じ0〜155弛緩しつつ熱処理を行う。」と訂正する。
〔10〕訂正事項j
本件特許の設定登録時の明細書の
「【0025】
【実施例】
実施例1〜5(表1)
実施例1〜3では、単層の延伸ポリエステル系フイルムを作製し、実施例4、5では、フイルムB/フイルムA/フイルムBの積層構成を有する積層ポリエステル系フイルムを作製した。用いたポリエステルは、固有粘度IV=0.62のポリエチレンテレフタレートで、含有させた熱可塑性ポリオレフィンは、260℃のMFR(Melt Flow Rate)(dg/min)=150のポリプロピレン、または4-メチルペンテン-1である。また、含有させる無機粒子は、沈降法による平均粒径2.0μmのCaCO3粒子、平均粒径0.6μmのSiO2-1粒子(凝集粒子)、平均粒径0.25μmのSiO2-2粒子(球状粒子)、平均粒径0.2μmのδ-Al2O3粒子(凝集粒子)、平均粒径0.25μmの酸化チタン粒子(凝集粒子)、平均粒径0.2μmのタルク粒子(板状粒子)の中から2種以上選択した。さらに、実施例3においては、架橋ポリスチレンからなる有機粒子も含有させた。」を、
「【0025】
【実施例】
実施例1、2(表1)
実施例1、2では、フイルムB/フイルムA/フイルムBの積層構成を有する積層ポリエステル系フイルムを作製した。用いたポリエステルは、固有粘度IV=0.62のポリエチレンテレフタレートで、含有させた熱可塑性ポリオレフィンは、260℃のMFR(Melt Flow Rate)(dg/min)=150のポリプロピレン、または4-メチルペンテン-1である。また、含有させる無機粒子は、沈降法による平均粒径2.0μmのCaCO3粒子、平均粒径0.6μmのSiO2-1粒子(凝集粒子)、平均粒径0.25μmのSiO2-2粒子(球状粒子)、平均粒径0.25μmの酸化チタン粒子(凝集粒子)、平均粒径0.2μmのタルク粒子(板状粒子)の中から2種以上選択した。」と訂正する。
〔11〕訂正事項k
本件特許の設定登録時の明細書の
「【0026】
上記樹脂を、押出機に供給し、260℃で溶融押出して、口金からシート状に吐出し、冷却ドラム上にキヤストした。積層フイルムの場合には共押出によった。この未延伸シートを、延伸温度80℃、延伸倍率3.2倍にて縦延伸した。得られた一軸延伸フイルムを、テンターに導き、延伸温度120℃、延伸倍率3.2倍にて横延伸した。二軸に延伸されたフイルムを、一旦冷却後、220℃、横方向にリラックス率5%で弛緩処理を施しつつ熱固定した。」を、
「【0026】
上記樹脂を、押出機に供給し、260℃で溶融押出して、口金からシート状に吐出し、冷却ドラム上にキヤストした。共押出により積層フイルムとした。この未延伸シートを、延伸温度80℃、延伸倍率3.2倍にて縦延伸した。得られた一軸延伸フイルムを、テンターに導き、延伸温度120℃、延伸倍率3.2倍にて横延伸した。二軸に延伸されたフイルムを、一旦冷却後、220℃、横方向にリラックス率5%で弛緩処理を施しつつ熱固定した。」と訂正する。
〔12〕訂正事項l
本件特許の設定登録時の明細書の
「【0028】
比較例1、2(表1)
比較例1においては、単層フイルムとし、含有無機粒子を1種類のみとする他は実施例1と同様に、比較例2においては、積層フイルムとし、フイルムAの含有無機粒子を1種類のみとする他は実施例4と同様に、それぞれ製膜し、印字精度、折れ性の評価を行った。結果、比較例1では印字精度が×、比較例2では印字精度、折れ性ともに△であり、目標とする特性のフイルムが得られなかった。」を、
「【0028】
比較例1、2(表1)
比較例1においては、単層フイルムとし、含有無機粒子を1種類のみとした。比較例2においては、積層フイルムとし、フイルムAの含有無機粒子を1種類のみとする他は実施例1と同様に、それぞれ製膜し、印字精度、折れ性の評価を行った。結果、比較例1では印字精度が×、比較例2では印字精度、折れ性ともに△であり、目標とする特性のフイルムが得られなかった。」と訂正する。
〔13〕訂正事項m
本件特許の設定登録時の明細書の段落番号【0029】欄に記載の表1において、
(1)実施例1〜3の欄を削除する。
(2)実施例4を実施例1とすると共に実施例5を実施例2とする。
〔14〕訂正事項n
本件特許の設定登録時の明細書の
「【0030】
比較例3、実施例6(表2)
用いたポリエステルは、固有粘度IV=0.66のポリエチレンテレフタレートに、230℃でのMFR=20のポリスチレン、沈降法による平均粒径0.35のTiO2粒子を(比較例3)、さらに平均粒径0.8μmのSiO2粒子を含有させた。」を、
「【0030】
比較例3(表2)
用いたポリエステルは、固有粘度IV=0.66のポリエチレンテレフタレートに、230℃でのMFR=20のポリスチレン、沈降法による平均粒径0.35のTiO2粒子を含有させた。」と訂正する。
〔15〕訂正事項o
本件特許の設定登録時の明細書の
「【0031】
上記樹脂を、押出機に供給し、260℃で溶融押出して、口金からシート状に吐出し、冷却ドラム上にキヤストした。この未延伸シートを、延伸温度80℃、延伸倍率3.2倍にて縦延伸した。得られた一軸延伸フイルムを、テンターに導き、延伸温度120℃、延伸倍率3.2倍にて横延伸した。二軸に延伸されたフイルムを、一旦冷却後、220℃、横方向にリラックス率5%で弛緩処理を施しつつ熱固定した。比較例3、実施例6ともに単層フイルムに形成した。得られたフイルムを、前述の測定方法で評価したところ、実施例6のみ印字精度、折れ性ともに全て○であり、目標とする優れた特性のフイルムが得られた(表2)。」を、
「【0031】
上記樹脂を、押出機に供給し、260℃で溶融押出して、口金からシート状に吐出し、冷却ドラム上にキヤストした。この未延伸シートを、延伸温度80℃、延伸倍率3.2倍にて縦延伸した。得られた一軸延伸フイルムを、テンターに導き、延伸温度120℃、延伸倍率3.2倍にて横延伸した。二軸に延伸されたフイルムを、一旦冷却後、220℃、横方向にリラックス率5%で弛緩処理を施しつつ熱固定し、単層フイルムに形成した。得られたフイルムを、前述の測定方法で評価したところ、印字精度が×となり、目標とする優れた特性のフイルムが得られなかった(表2)。」と訂正する。
〔16〕訂正事項p
本件特許の設定登録時の明細書の【0032】欄に記載の表2において、実施例6の欄を削除する。
〔17〕訂正事項q
本件特許の設定登録時の明細書の
「【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の受像用、用紙用延伸ポリエステル系フイルムによるときは、1種以上の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂を所定量含有させると同時に、2種以上の無機粒子を含有させ、内部に形成されるボイドの形状を多様化するとともに表層近傍の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂からなる粒子を脱落しにくいようにしたので、優れた印字精度、折れ性を有するフイルムを得ることができる。」を、
「【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フイルムによるときは、延伸ポリエステル系フィルムAに1種以上の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂を所定量含有させると同時に、2種以上の無機粒子を含有させ、内部に形成されるボイドの形状を多様化するとともに表層近傍の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂からなる粒子を脱落しにくいようにしたので、優れた印字精度、折れ性を有するフイルムを得ることができる。」と訂正する。
〔18〕訂正事項r
本件特許の設定登録時の明細書の
「【0034】
このように優れた印字精度、折れ性を有する本発明の延伸ポリエステル系フイルムおよび積層ポリエステル系フイルムは、各種受像ベース(印画紙、各種プリンタ(PPC、熱転写、昇華型プリンタ、バブルジェットプリンタ)用受像紙、タッグ、ラベル、各種スペーサ、反射板、伝票等の記録紙、地図や各種書籍、投票用紙、カタログ等の印刷用ベース、離型用ベース、各種リテナーなどに好適に使用できる。」を、
「【0034】
このように優れた印字精度、折れ性を有する本発明の積層延伸ポリエステル系フイルムは、各種受像ベース(印画紙、各種プリンタ(PPC、熱転写、昇華型プリンタ、バブルジェットプリンタ)用受像紙、タッグ、ラベル、各種スペーサ、反射板、伝票等の記録紙、地図や各種書籍、投票用紙、カタログ等の印刷用ベース、離型用ベース、各種リテナーなどに好適に使用できる。」と訂正する。
〈2〉訂正の目的の適否、訂正の範囲の適否及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
〔1〕訂正事項a
訂正事項aは、実質的には本件請求項1に係る発明を削除し、請求項番号2を請求項番号1とするとともにB層が「さらに粒子を含有する」ことを新たに加えるものであるところ、このB層が「さらに粒子を含有する」ことは本件願書に添付した明細書の段落番号【0020】や表1の実施例5(段落番号【0029】)に記載されていたことである。
そして、請求項の削除は特許請求の範囲の減縮を目的とするものとしてもとより許されることであり、B層が「さらに粒子を含有する」ことという要件を加えることも特許請求の範囲の減縮を目的とするものに他ならない。
これに伴い、請求項2以下の請求項番号及びそこで引用する請求項の番号を対応する請求項の番号に整合するように訂正することは明りょうでない記載の釈明を目的とするものに相当する。そして、これらの請求項において更に用途についてもともと請求項1に記載されていた「受像用、用紙用」なる限定を加えることは、特許請求の範囲の減縮を目的とすることに他ならない。
さらに、これらの訂正によって実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
〔2〕訂正事項b
訂正事項bは、訂正事項aによって本件請求項1に係る発明が訂正されたことに伴い、対応する発明の詳細な説明の記載である段落番号【0005】の記載を訂正後の本件請求項1に係る発明に整合するように訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、本件願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
〔3〕訂正事項c
訂正事項cは、A層のみを要件とする訂正前の請求項1が削除された結果、本件請求項1に係る発明が積層フィルムに係るものとなったところ、それに整合するように発明の詳細な説明の段落番号【0006】の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、本件願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
〔4〕訂正事項d
訂正事項dは、熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/またはポリスチレン系樹脂が2.5重量%以上30重量%以下添加される対象となる延伸ポリエステル系フィルムがA層であることを発明の詳細な説明の段落番号【0011】で明確にしたものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、本件願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
〔5〕訂正事項e
訂正事項eは、任意成分として添加される熱硬化性有機粒子が添加される対象となる延伸ポリエステル系フィルムがA層であることを発明の詳細な説明の段落番号【0017】で明確にしたものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、本件願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
〔6〕訂正事項f
訂正事項fは、A層のみを要件とする訂正前の本件請求項1に係る発明が削除された結果、本件請求項1に係る発明が積層フィルムに係るものとなったところ、それに整合するように、発明の詳細な説明の段落番号【0018】の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、本件願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
〔7〕訂正事項g
訂正事項gは、訂正事項aによりB層にさらに粒子が含有されることが必須構成要件となった結果、それに対応する発明の詳細な説明の記載である段落番号【0020】の記載を訂正後の本件請求項1に係る発明に整合するように訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、本件願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
〔8〕訂正事項h
訂正事項hは、A層のみを要件とする訂正前の本件請求項1に係る発明が削除された結果、本件請求項1に係る発明が積層フィルムに係るものとなったところ、それに整合するように、発明の詳細な説明の段落番号【0021】の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、本件願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
〔9〕訂正事項i
訂正事項iは、A層のみを要件とする訂正前の本件請求項1に係る発明が削除された結果、本件請求項1に係る発明が積層フィルムに係るものとなったところ、それに整合するように、発明の詳細な説明の段落番号【0022】の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、本件願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
〔10〕訂正事項j
訂正事項jは、訂正事項aによって特許請求の範囲の記載が訂正されたことに伴い、本件発明に含まれなくなった実施例を削除し残余の実施例の番号を繰り上げ変更するとともに、この削除された実施例で使用される無機粒子や有機粒子についての記載も削除するものであるから、訂正後の特許請求の範囲の記載に整合するように発明の詳細な説明の段落番号【0025】の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、本件願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
〔11〕訂正事項k
訂正事項kは、「積層フィルムの場合は共押出によった。」という記載を特許請求の範囲の訂正に整合させて「共押出により積層フィルムとした。」という記載にしたものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、本件願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
〔12〕訂正事項l
訂正事項lは、訂正事項aによって特許請求の範囲の記載が訂正されたことに伴い、本件発明に含まれなくなった実施例を削除し残余の実施例の番号を繰り上げ変更するものであって、訂正後の特許請求の範囲の記載に整合するように発明の詳細な説明の段落番号【0028】の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、本件願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
〔13〕訂正事項m
訂正事項mは、訂正事項aによって特許請求の範囲の記載が訂正されたことに伴い、本件発明に含まれなくなった実施例を削除し残余の実施例の番号を繰り上げ変更するものであって、訂正後の特許請求の範囲の記載に整合するように発明の詳細な説明の段落番号【0029】の表1の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、本件願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
〔14〕訂正事項n
訂正事項nは、訂正事項aによって特許請求の範囲の記載が訂正されたことに伴い、本件発明に含まれなくなった実施例6を削除するとともにそこで使用するSiO2粒子に関する記載を削除するものであって、訂正後の特許請求の範囲の記載に整合するように発明の詳細な説明の段落番号【0030】の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、本件願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
〔15〕訂正事項o
訂正事項oは、訂正事項aによって特許請求の範囲の記載が訂正されたことに伴い、本件発明に含まれなくなった実施例6を削除するとともにその記載を比較例3にのみに関するように訂正するものであって、訂正後の特許請求の範囲の記載に整合するように発明の詳細な説明の段落番号【0031】の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、本件願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
〔16〕訂正事項p
訂正事項pは、訂正事項aによって特許請求の範囲の記載が訂正されたことに伴い、本件発明に含まれなくなった実施例を削除するものであるから、訂正後の特許請求の範囲の記載に整合するように発明の詳細な説明の段落番号【0032】の表2の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、本件願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
〔17〕訂正事項q
訂正事項qは、本件発明が積層フィルムに係るものであることを明確にすると共に、熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/またはポリスチレン系樹脂が2.5重量%以上30重量%以下添加される対象となる延伸ポリエステル系フィルムがA層であることを発明の詳細な説明の段落番号【0033】で明確にしたものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、本件願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
〔18〕訂正事項r
訂正事項rは、A層のみを要件とする本件請求項1に係る発明が削除された結果、本件請求項1に係る発明が積層フィルムに係るものとなったところ、それに整合するように、発明の詳細な説明の段落番号【0034】を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、本件願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
〔19〕むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
【3】本件発明
本件特許第3129907号の請求項1〜5に係る発明は、訂正請求書に添付された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により構成されるものであるが、このうち特許異議申立ての対象となる本件請求項1〜4に係る発明(訂正後の本件請求項5に係る発明は特許異議の申立てがなかった訂正前の本件請求項6に係る発明を実質的に承継しているので、訂正後の本件請求項5は特許異議申立ての対象としない。)については次のとおりのものである。
「【請求項1】少なくとも1種以上の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂を2.5重量%以上30重量%以下含有すると同時に、2種以上の無機粒子を含有する延伸ポリエステル系フィルムAの少なくとも片面に、厚さが1μm以上で熱可塑性ポリオレフィン系樹脂を1重量%未満含有し、さらに粒子を含有する延伸ポリエステル系フィルムBが積層されていることを特徴とする受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フィルム。(以下、「本件第1発明」という。)
【請求項2】前記延伸ポリエステルフィルムAに含有されている粒子の種類数が、前記延伸ポリエステル系フィルムBに含有されている粒子の種類数プラス1以上である請求項1記載の受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フィルム。(以下、「本件第2発明」という。)
【請求項3】前記延伸ポリエステル系フィルムAが、酸化チタン、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム粒子から選ばれた少なくとも1種の粒子を含有している請求項1又は2の受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フィルム。(以下、「本件第3発明」という。)
【請求項4】前記延伸ポリエステル系フィルムAが、球状シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ジルコニア、凝集シリカ、酸化チタン、クレー、マイカからなる粒子から選ばれた少なくとも2種の粒子を含有している請求項1又は2の受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フィルム。(以下、「本件第4発明」という。)」
【4】当審で通知した取消理由に引用された刊行物の記載事項
〔1〕刊行物1:特開平4-153232号公報(特許異議申立人東洋紡績株式会社が特許異議申立証拠として提出した甲第1号証に対応する。)
該刊行物には次の事項が記載されている。
「少なくとも二酸化チタンおよび炭酸カルシウムを含む複合微粒子を含有してなる空洞含有ポリエステルフイルム。」(特許請求の範囲)、
「(従来の技術)…… これらの中に、炭酸カルシウムと二酸化チタンとを併用する方法が提案(特開平1-229041号公報)されている。」(第1頁左下欄第14行〜第2頁右上欄第11行)、
「該複合粒子のポリエステルの配合量は1〜30重量%が好ましい。3〜20重量%が特に好ましい。1重量%未満では隠ぺい性、空洞含有率の両方が低下するので好ましくない。逆に30重量%を越えると、延伸性が低下し、二軸延伸時にフイルムが破れやすく製膜が難しくなるので好ましくない。この課題は、通常のポリエステル樹脂と共押出しをすることにより解決できるが、もちろん該複合粒子が1〜30重量%の場合にも用いることができる。ここで通常のポリエステルとは前記ポリエステルのことであり、粒子などの添加剤を含んでいてもよい。層構造は2層又は3層以上も含まれる。」(第3頁右上欄第14行〜同頁左下欄第6行)、
「本発明においては、ポリエステルに不溶性の熱可塑性樹脂よりなる有機性の空洞発現剤を併用してもよい。該併用法は複合粒子の配合量を低減させることができるので好ましい実施態様である。該有機性の空洞発現剤としては、……、ポリオレフィン系樹脂、……、ポリスチレン、……等を挙げることができる。」(第3頁左下欄第13行〜同頁右下欄第5行)、
「本発明においては、必要に応じて顔料、着色剤、耐光剤、蛍光剤、帯電防止剤などを添加することも可能である。」(第3頁右下欄第6行〜第8行)、
「本発明においては、本発明の該空洞含有ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布量(該刊行物では「塗布量」と記載されているが、「塗布層」の誤記であると認められる。)を設けることによってインキやコーティング剤などの濡れ性や接着性を改良する方法が推奨される。該塗布層を構成する化合物としては、ポリエステル系樹脂が好ましいが、この他にも、……適用可能である。」(第4頁左上欄第20行〜同頁右上欄第9行)、
「 表1
無機微粒子 有機空洞発現剤
種類 配合量 種類 配合量
(wt%) (wt%)
……
実施例2CaCO3 /TiO2 6 ポリスチレン 14
(0.5/0.5)
……
比較例6CaCO3 3 ポリスチレン 14
TiO2 3
……
比較例8CaCO3 2.4 ポリプロピレン 14
TiO2 5.6
……」()内は重量比(第6頁に記載の表1)、
「(発明の効果)
本発明の空洞含有ポリエステルフィルムは、空洞含有率が高く、かつ、光線透過率が低く隠ぺい性に優れており、紙と類似した特性である軽量性、柔軟性、隠ぺい性、艶消し性、描画性などを有している。従って本発明の空洞含有ポリエステルフィルムは、ラベル、ポスター、記録紙、包装材料などの極めて広い分野で極めて有用である。」(第6頁左下欄第1行〜第8行)。
〔2〕刊行物2:特開平2-225086号公報(特許異議申立人東洋紡績株式会社が特許異議申立証拠として提出した甲第2号証に対応する。)
該刊行物には、次の事項が記載されている。
「紙製基材の上方にポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂のミクロボイド層が形成され、該紙製基材の反対側には裏面層が形成されており、該ミクロボイド層に染着剤が塗布されている感熱転写用受像紙であって、該ミクロボイド層の厚さが10μm以上であることを特徴とする感熱転写用受像紙。」(特許請求の範囲)、
「本発明の目的は、高画質、高感度、白度良好で、腰があり、かつカールバランスの良好な受像紙を提供することにある。」(第2頁右上欄第18行〜末行)、
「ポリエチレンテレフタレートの延伸によるミクロボイド層は、微細な空隙が出来ており、表面平滑にしてかつクッション性がある。したがって、受像紙に転写シートを重ねサーマルヘッドで加熱したとき、受像紙のミクロボイド層がクッションの役を果たし、サーマルヘッド、転写シート及び受像紙間の密着性を著しく向上させる。このため画像の色ムラ、白抜けのない高画質が得られる。」(第2頁左下欄第11行〜第19行)、
「延伸可能なポリエチレンテレフタレートをベースにして該ベース樹脂に、該ベース樹脂と実質的に非相溶性の樹脂、特に、ポリプロピレン樹脂を微細均一分散させた後成膜してフィルムを得、該フィルムを延伸し、ベース樹脂と非相溶樹脂との界面ではく離を起こさせ、ミクロボイドを発生させる方法が好ましい。この分散時に後記する添加剤を添加しても良い。」(第3頁左上欄第1行〜第8行)、
「非相溶性樹脂は前記ベース樹脂と溶融混合したとき微細かつ均一に分散できるが本質的に相溶しないものである。特に以下に示すようなポリプロピレン樹脂は、前記の通りに形成されたミクロボイド層を有する感熱転写用受像紙の性能が良好であるため、非常に好ましい。」(第3頁右上欄第6行〜第11行)、
「非相溶性樹脂とは以下に示すものである。エチレン、ブテン等のモノオレフィン重合体及び共重合体を主成分とするオレフィン系樹脂、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリブテン、ポリ-3-メチルブテン-1、ポリ-4-メチルペンテン-1、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン三元共重合体等のスチレン系樹脂。」(第3頁左下欄第7行〜第17行)、
「組成はベースポリマー100重量部に対して非相溶性樹脂が少ないとミクロボイドの発生が少ない、多すぎると延伸時破断が起るので5〜150重量部、好ましくは10〜80重量部がよい。」(第3頁右下欄第3行〜第7行)、
「また、ベースポリマーと非相溶性樹脂の混合時に、適量の無機充てん剤を添加しても良い。適量の無機充てん剤の添加はミクロボイドの発生を助ける。」(第3頁右下欄第13行〜第16行)、
「無機充てん剤としては例えば次のものが挙げられる。無機充てん剤とは、粉末状の無機物であり、例えば、炭酸カルシウム、……、シリカ、アルミナ、酸化チタン、クレー、……等のポリオレフィンに分散可能な無機物質の粉末であり、これらは単独若しくは2種以上の混合物であっても良い。」(第4頁左上欄第4行〜第15行)、
「ミクロボイド層の厚さはクッション性の点より10μm以上必要であり、好ましくは20μm以上が良い。」(第4頁左下欄第11行〜第13行)、
「支持体(又はアンダーコート層)とミクロボイド層の接着は公知の方法で出来る。通常、溶剤タイプのドライラミネート法、又は押出ラミネート法で接着出来るが熱によりミクロボイド層が収縮し、カール現象が起るため接着は出来るだけ低温が好ましい。」(第5頁左上欄第3行〜第8行)、
「また、従来の特許に見られるような紙製基材の片側のみに合成樹脂層を形成する場合では、紙製基材の吸湿で生じるカールを抑制できない。更に、合成樹脂層と紙製基材(又はアンダーコート層)との接着時及びこの構成による受像紙の転写時に良好なカールバランスが得られない。そこで、良好なカールバランスを得るために、裏面層が必要となる。この裏面層は、通常熱可塑性合成樹脂層、例えば、シート、ミクロボイド層又はフィルムでよく、そして、裏面層/ミクロボイド層の厚み比は、通常0.2〜5で、0.5〜3が好ましい。該熱可塑性樹脂としては以下のようなものが使用できる。
……
c)エステル系樹脂
エステル系樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
……。
また、以上の樹脂は、ミクロボイド層を形成する時のベースポリマーとなる。このミクロボイド層の形成方法は、前述した通りであり、非相溶性樹脂としては下記のものを1種又は2種以上混合使用しても良い。そして、この混合時に前記の無機充てん剤を添加しても良い。
……。
d)エステル系樹脂をベースとした場合
オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン樹脂及びその共重合体、熱可塑性エラストマー等。
……。
これらの裏面層の形成は、下記の公知の方法で出来る。合成樹脂、好ましくは熱可塑性樹脂からなるシート、ミクロボイド層又はフィルム等の接着には、溶剤タイプのドライラミネート法又は押出ラミネート法等の積層型形成方法を使用し、熱可塑性樹脂の被覆には、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター等の通常の塗工機、又はスプレー塗工機を用いる塗布被膜型形成方法を使用する。」(第5頁左上欄第9行〜第6頁左上欄第16行)、
「実施例1
……
このミクロボイド層と厚さ100μmでヘック平滑度150秒のキャストコート紙からなる支持体とをウレタン系接着剤を使用してドライラミネートで接着し……」(第7頁左上欄第7行〜同頁右上欄第1行)、
「〔発明の効果〕本発明の受像紙は、基材として紙を用いているので、腰、剛性等に優れ、基材の表面に設けられたポリエチレンテレフタレートをベースとしたミクロボイド層により受像紙としての画質、感度、白度に優れ、基材の裏面に設けられた裏面層によりカールバランスに優れる等、実用上大変優れた受像紙である。」(第8頁左下欄第6行〜第13行)。
〔3〕刊行物3:特開平2-26739号公報(特許異議申立人東洋紡績株式会社が特許異議申立証拠として提出した甲第3号証に対応する。)
該刊行物には、次の事項が記載されている。
「(1)基本層(A)及び該基本層(A)の少なくとも片面に設けられた表面層(B)からなる複合フィルムであって、該基本層(A)はポリエステル100重量部に対し、該ポリエステルと異種の熱可塑性樹脂及び/又は無機粒子5〜100重量部を含有せしめた組成物からなり、該表面層(B)の表面粗さが1.0μm以下であり、かつ積層体全体のクッション率が10〜50%であることを特徴とする複合フィルム。
(2)熱可塑性樹脂が基本層(A)におけるポリエステルに対し非相溶な樹脂であることを特徴とする請求項1記載の複合フィルム。
(3)熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂であることを特徴とする請求項1記載の複合フィルム。
(4)請求項1〜3のいずれかに記載の複合フィルムの表面層(B)にインク受容層が設けられたことを特徴とするプリンター用印字基材。」(特許請求の範囲)、
「本発明は、複合フィルムに関する。更に詳しくはプリンター印字基材や像形成用材料に適した複合フィルムに関する。」(第1頁右下欄第4行〜第6行)、
「又、従来技術では、複合フィルムではなかったため、無機粒子及び/又は熱可塑性樹脂が高充填された場合、製膜時の破れや表面の荒れが大きくなるといった問題があった。」(第2頁左上欄第19行〜同頁右上欄第2行)、
「本発明でいう無機粒子とは、酸化チタン、炭酸カルシウム、……、シリカ、アルミナ、……、クレー等が挙げられる。この中でも、プリント時の印字適性点から粒子形状が粒状の酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ等の粒状が好ましい。」(第3頁左上欄第7行〜第12行)、
「本発明の表面層(B)の基本となる樹脂組成物としては、溶融押出可能な熱可塑性樹脂であれば特に限定されないか、好ましくは前述の如きポリエステルである。この表面層(B)のポリエステルにも、前述の如き熱可塑性樹脂及び/又は無機粒子を含有せしめてもよいが、本発明範囲の表面粗さに容易にコントロールするためには、無機粒子のみが好ましく、また該無機粒子の平均粒径は0.3〜3μmが好ましい。」(第3頁右上欄第6行〜第14行)、
「上述の如き基本層(A)と表面層(B)とを積層することによって、積層体全体のクッション率と表面粗さが適切なフィルムを製造することが可能となった。」(第3頁右上欄末行〜同頁左下欄第3行)、
「本発明でいうクッション率とは、フィルムに一定荷重をかけた時の厚さ変化量を定量化したものである。」(第3頁左下欄第18行〜末行)、
「予め真空乾燥された層(A)用及び層(B)用のポリマーチップを、それぞれ250〜310℃に加熱された2つの押出機に別々供給し、溶融する。次にスリット状口金内で、層(A)用ポリエステルの片面、又は両面に層(B)用ポリエステルを積層して押出し、2層又は3層のシート状物に成形する。更にこのシートを表面温度30〜60℃の冷却ドラムで冷却固化せしめ、無定形シートとした後、80〜110℃に加熱した予熱ロール群に導き、縦延伸し、20〜30℃のロール群で冷却する。続いて縦延伸したフィルムの両端をクリップでつかみながら、テンターに導き、80〜120℃に加熱された雰囲気中で横延伸する。延伸倍率は、縦・横それぞれ2〜5倍に延伸するが、面積倍率は6〜15倍である。」(第4頁左上欄第12行〜同頁右上欄第6行)、
「(1)クッション率
三豊製ダイヤルゲージのスピンドル上部に10gの台座を取りつけ、スピンドルをもち上げて測定台にセットしたサンプルの上に下す。台座の上に50gの分銅を載せ、5秒後の厚みを読みとり、この時の値をaμmとする。台座の分銅を500gのものと取り替え、5秒後の厚みを読みとり、この時の値をbμmとし、次式によりクッション率cを算出した。
c=100×(a-b)/a(%)
注)ダイアルゲージのタイプ:No.2109-10
測定子:3mmφ硬球」(第4頁右上欄末行〜同頁左下欄第11行)、
「(4)プリント時の印字適性
フィルム上にインク受容層を3μmコーティングした後、シャープ製ビデオプリンター-GZ-P10B/Wにてプリントし、プリント状態を観察して判定した。
〇:印字、画像が良好(本発明の目的の(該刊行物では「は」と記載されているが「の」の誤記であると認められる。)範囲内で好ましい)
×:印字、画像が不鮮明であり(該刊行物では「てあ」と記載されているが「であり」の誤記であると認められる。)、一部欠落しているもの(本発明の目的に達しない)」(第4頁右下欄第2行〜第10行)、
「実施例1 平均粒子径1μmの炭酸カルシウム15重量部、ポリプロピレン(極限粘度[η]=2.0、アイソタクティック・インデックス(I.I)=97)10重量部、慣用のフィルム形成性ポリエチレンテレフタレート(極限粘度(I.V)=0.60)からなる組成物を基本層(A)とし、平均粒子径0.6μmの炭酸カルシウム15重量部、慣用のフィルム形成性ポリエチレンテレフタレート(I.V=0.60)85重量部からなる組成物を表層(B)として、両者をスリット状口金で積層して押出し、無定形シートを得た。この無定形シートにおいて、積層構造をB/A/Bの3層とし、それぞれの厚みを50μm/500μm/50μmとした。その後90℃に加熱した予熱ロール群で予熱し、延伸区間は非接触にして3.3倍に縦延伸して25℃のロール群で冷却し、引続き延伸されたフィルムの両端部をクリップでつかみ、テンター内に導き、100℃の雰囲気中で3.0倍に横延伸した後、200℃の雰囲気中で熱固定し、3層積層フィルムを得た。この積層フィルムの表面粗さRaは0.02μm、クッション率は30%であった。得られたフィルム上にインクの受容層として、下記組成物を3μm(固形分)の厚みにバーコートし、プリンター用印字のフィルムを得た。
・ポリエステル樹脂(東洋紡バイロン200) 10重量部
・アミノ変性シリコーン(信越化学工業製KF-393) 0.5重量部
・エポキシ変性シリコーン(信越化学工業製X-22-343)
0.5重量部
・トルエン/メチルエチルケトン=1/1 90重量部
得られた印字フィルムは、プリント時の印字適性が良好あった。」(第5頁左上欄第14行〜同頁左下欄第9行)、
「実施例2、比較例3〜4
平均粒子径1μmの二酸化チタン20重量部、低密度ポリエチレン(メルト・インデックス(M.I.=7、密度=0.919)10重量部、慣用のフィルム形成性ポリエチレンテレフタレート(極限粘度0.60)70重量部からなる組成物を基本層(A)とし、平均粒径0.60μmの炭酸カルシウム15重量部、慣用のフィルム形成性ポリエチレンテレフタレート(極限粘度0.60)82重量部、ポリプロピレン([η]=2.0、I.I=97)3重量部からなる組成物を表面層(B)とした以外は、実施例1と同様の手法でフィルムを作成し、評価を行なった。その結果を第1表に示した。実施例1と同様の手法で延伸条件のみ変化させた例を比較例3〜4まで示した。」(第5頁右下欄第5行〜末行)、
「[発明の効果]
本発明の複合フィルムは、延伸により空所を形成する物質を高充填した層を基本層(A)とし、表面が平滑な表面層(B)を積層してなるため、表面粗さが小さく、かつクッション率が良い積層フィルムが得られ、ひいては印字性の良いプリンター用印字基材が得られる。」(第8頁右上欄第1行〜第7行)。
【5】本件第1発明〜第4発明についての対比・判断
〔1〕本件第1発明について
本件第1発明と上記刊行物3に記載された発明を対比すると、上記刊行物3に記載された発明における「基本層(A)」及び「表面層(B)」が、それぞれ、本件第1発明における「延伸ポリエステル系フィルム(A)」及び「延伸ポリエステル系フィルム(B)」に相当し、該「基本層(A)」が熱可塑性のポリオレフィン(その含有量も含め)及び無機粒子を含有している点でも本件第1発明と同じであり、該「表面層(B)」が無機粒子を含有し厚さが1μ以上である点で本件第1発明と同じであり、しかも、上記刊行物3に記載された発明が「プリンター用印字基材や像形成用材料に適した複合フィルム」に関するものであることからみてそれは本件第1発明の「受像用、用紙用フィルム」に相当するものであるといえる。そして、本件第1発明のB層が「熱可塑性ポリオレフィン樹脂を1重量%未満含有する」点については、本件明細書の実施例1及び2ではポリオレフィン樹脂は使用されておらず、また、刊行物3では「表面層(B)のポリエステルにも、熱可塑性樹脂を含有させてもよい」のであり、実施例でも無添加のものも多いので、この点で、両者が相違するものではない。
してみると、両者は、「少なくとも1種以上の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂を2.5重量%以上30重量%以下の範囲内で含有すると同時に、無機粒子を含有する延伸ポリエステル系フィルムAの少なくとも片面に、厚さが1μm以上で熱可塑性ポリオレフィン系樹脂を1重量%未満含有し、さらに粒子を含有する延伸ポリエステル系フィルムBが積層されていることを特徴とする受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フィルム。」である点で一致し、(i)延伸ポリエステル系フィルム(A)に含有する無機粒子が、前者(本件発明)では2種以上であるのに対して、後者(刊行物3)では1種である点で相違する。
そこで、上記相違点(i)について検討する。
刊行物2に記載された発明は「紙製基材の上方にポリエステルの1種であるポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂のミクロボイド層が形成されている感熱転写用受像紙」に係るものであり、該感熱転写用受像紙は本件第1発明における「受像用、用紙用延伸ポリエステル系フィルム」に相当するものであり、該ミクロボイド層と該基材とは積層されており、該ミクロボイド層はポリオレフィン系樹脂やスチレン系樹脂を含有するとともに無機充填剤を2種類以上の含有する延伸ポリエステルフィルムである点で本件第1発明における「延伸ポリエステル系A(層)」に相当するものである。してみると、上記刊行物2に「少なくとも1種以上の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂を2.5重量%以上30重量%以下の範囲内で含有すると同時に、2種の無機粒子を含有する延伸ポリエステル系フィルムA(上記刊行物2に記載された発明におけるミクロボイド層)の片面に、厚さが1μm以上の層(上記刊行物2に記載された発明における「紙製基材」)が積層されている受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フィルム」が記載されていると言える。
そして、上記刊行物3に記載された発明と上記刊行物2に記載された発明は技術分野が共通するものであるから、上記刊行物3に記載されている発明に対して、延伸ポリエステル系フィルム(A)に含有する無機粒子を2種類とすることは当業者であれば容易に為し得ることである。
また、「少なくとも二酸化チタンおよび炭酸カルシウムを含む複合微粒子を含有してなる空洞含有ポリエステルフィルム」及びそれが「ラベル、ポスター、記録紙」等に使用されることが上記刊行物1に記載されており、さらに、刊行物1で先行技術として引用している特開平1-229041号公報には「ポリエステル樹脂70〜90重量%に、酸化チタン及び炭酸カルシウムを均一に分散させ、……少なくとも一軸方向に延伸されていることを特徴とする不透明シート材料」及びそれが「耐熱ラベル、ステッカー、複写用紙」等に使用されることが記載されており、これ等の記載と上記刊行物2の記載を併せると、この種の受像用、用紙用延伸ポリエステルフィルムにおいて、2種類の無機粒子を使用することはよく知られていた事項であったと言える。
してみると、上記相違点(i)については、刊行物2のみならず、上述のようなよく知られていた事項であったことからも当業者であれば容易に為し得ることであると言える。
そして、本件第1発明の目的や効果について検討してみると、刊行物3に「印字適性が良好であること」が記載され(実施例)、それは画像が不鮮明ないし一部欠落していることをもって判定している(×○で判定)のであるのに対して、本件第1発明の目的、効果とする印字精度も印字むらや局部抜けの有無を×○で判定しているから、両者の効果の確認が本質的に異なるとは言い難いので(100倍に拡大して観察したか肉眼で観察したかは測定精度の差に過ぎない。)、本件第1発明において上記のような効果を奏することが当業者が容易に予測し得ないこととはいえない。
また、本件第1発明の目的、効果の1つである折れ性についても、刊行物3のプリンター用印字基材や像形成用材料のような紙と同様な取り扱いをされるようなものでは適当な折れ性があることは当然要請される事項であり、本件第1発明においてそれが一応満足すべきものであったからと言ってそれが予想外のことであると言えないし、また、無機粒子を1種だけ使用したものに較べて多少優れていたからと言って(実施例1,2……○、比較例2……△)それが格別顕著のものであると言うことはできない。
してみると、本件第1発明は、上記刊行物3及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると言えるし、また、上記刊行物3及び(刊行物2、刊行物1及び刊行物1で引用されている特開平1-229041号公報などに記載されているような)上述のよく知られた事項からも当業者が容易に発明をすることができたものであると言える。
〔2〕本件第2発明について
本件第2発明は、本件第1発明に対して「延伸ポリエステルフィルムAに含有されている粒子の種類数が、延伸ポリエステル系フィルムBに含有されている粒子の種類数プラス1以上であるもの」としたものであるが、2種以上の無機粒子を含有することを必須構成要件とする延伸ポリエステルフィルムAと単に粒子を含有することを必須構成要件とする延伸ポリエステル系フィルムBが積層されてなる受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フィルムに係る本件第1発明が上述のとおり当業者が容易に発明をすることができたものであるのであれば、延伸ポリエステルフィルムAに含有されている粒子の種類数が、延伸ポリエステル系フィルムBに含有されている粒子の種類数プラス1以上であるものにすることは当業者であれば適宜為し得ることであると言える。
それ故、本件第2発明は、上記刊行物3及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると言えるし、また、上記刊行物3及び(刊行物2、刊行物1及び刊行物1で引用されている特開平1-229041号公報などに記載されているような)上述のよく知られた事項からも当業者が容易に発明をすることができたものであると言える。
3.本件第3発明について
本件第3発明は、本件第1発明又は本件第2発明に対して「延伸ポリエステル系フィルムAが、酸化チタン、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム粒子から選ばれた少なくとも1種の粒子を含有しているもの」としたものであるが、上記刊行物3における基本層(A)(本件第1発明における「延伸ポリエステル系フィルムA」に相当する。)に含有する無機粒子の具体例として「酸化チタン、炭酸カルシウム」が記載されていることからみて、本件第1発明又は本件第2発明に対して「延伸ポリエステル系フィルムAが、酸化チタン、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム粒子のうちの酸化チタン、炭酸カルシウム粒子から選ばれた少なくとも1種の粒子を含有しているもの」とすることは当業者であれば容易に為し得ることである。
してみると、本件第3発明は、上記刊行物3及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると言えるし、また、上記刊行物3及び(刊行物2、刊行物1及び刊行物1で引用されている特開平1-229041号公報などに記載されているような)上述のよく知られた事項からも当業者が容易に発明をすることができたものであると言える。
〔4〕本件第4発明について
本件第4発明は、本件第1発明又は本件第2発明に対して「延伸ポリエステル系フィルムAが、球状シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ジルコニア、凝集シリカ、酸化チタン、クレー、マイカからなる粒子から選ばれた少なくとも2種の粒子を含有しているもの」としたものであるが、上記〔1〕で述べたとおり「少なくとも1種以上の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂を2.5重量%以上30重量%以下の範囲内で含有すると同時に、2種の無機粒子を含有する延伸ポリエステル系フィルムA(上記刊行物2に記載された発明におけるミクロボイド層)の片面に、厚さが1μm以上の層(上記刊行物2に記載された発明における紙製基材)が積層されている受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フィルム」が上記刊行物2に記載されており、また、上記刊行物3における基本層(A)(本件第1発明における「延伸ポリエステル系フィルムA」に相当する。)に含有する無機粒子の具体例として「酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、クレー」が記載されていることからみて、本件第1発明又は本件第2発明に対して「延伸ポリエステル系フィルムAが、球状シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ジルコニア、凝集シリカ、酸化チタン、クレー、マイカからなる粒子のうちの球状シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、凝集シリカ、酸化チタン、クレーからなる粒子から選ばれた少なくとも2種の粒子を含有しているもの」としたものにすることは当業者であれば容易に為し得ることである。
また、刊行物1や刊行物1で引用する特開平1-229041号公報にも炭酸カルシウムと酸化チタンの2種の併用することが記載されているので、このような刊行物からも当業者であれば容易に考えつくものでもある。
してみると、本件第3発明は、上記刊行物3及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると言えるし、また、上記刊行物3及び(刊行物2、刊行物1及び刊行物1で引用されている特開平1-229041号公報などに記載されているような)上述のよく知られた事項からも当業者が容易に発明をすることができたものであると言える。
【6】むすび
以上のとおりであるから、本件第1発明〜第4発明は、上記刊行物2及び3に記載された発明乃至は刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件第1発明〜第4発明の特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ポリエステル系フイルム
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも1種以上の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂を2.5重量%以上30重量%以下含有すると同時に、2種以上の無機粒子を含有する延伸ポリエステル系フイルムAの少なくとも片面に、厚さが1μm以上で熱可塑性ポリオレフィン系樹脂を1重量%未満含有し、さらに粒子を含有する延伸ポリエステル系フイルムBが積層されていることを特徴とする受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フイルム。
【請求項2】 前記延伸ポリエステル系フイルムAに含有されている粒子の種類数が、前記延伸ポリエステル系フイルムBに含有されている粒子の種類数プラス1以上である請求項1記載の受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フイルム。
【請求項3】 前記延伸ポリエステル系フイルムAが、酸化チタン、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム粒子から選ばれた少なくとも1種の粒子を含有している請求項1又は2の受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フイルム。
【請求項4】 前記延伸ポリエステル系フイルムAが、球状シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ジルコニア、凝集シリカ、酸化チタン、クレー、マイカからなる粒子から選ばれた少なくとも2種の粒子を含有している請求項1又は2の受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フイルム。
【請求項5】 前記延伸ポリエステル系フイルムAが、熱硬化性有機粒子を含有している請求項1ないし4のいずれかに記載の受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フイルム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ポリエステルと非相溶の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂を微分散させることにより内部にボイドを形成し白色、低密度化した、各種受像用ベースフイルム、各種用紙として用いて好適なポリエステル系フイルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルと非相溶の樹脂、例えば、熱可塑性ポリオレフィン系樹脂を含有させることにより内部にボイドを形成し、白色化、低密度化したポリエステル系フイルムが知られている(たとえば、特開平2-26739号、2-80247号、2-81678号公報)。
【0003】
しかし、これらの従来技術では、主として、単に、ポリエステルフイルム中に熱可塑性ポリオレフィン系樹脂のみを含有させるだけであり、ボイド形成のメカニズムが単一であり、形成されるボイドの形状が比較的揃っている。また、ポリエステルフイルム中に、基本的にはポリエステルと非相溶の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂のみが微分散されているので、得られるポリエステル系フイルムの表面近傍では熱可塑性ポリオレフィン系樹脂からなる微粒子が脱落しやすくなり、その結果、微妙なクッション性のむらや、折れ状態のむらが生じやすくなる。クッション性等のむらが生じると、例えば、プリンタでの印字精度が悪化し、折れ状態等のむらが生じると、例えば、折ることを要求される各種用紙の使用、操作時の取扱性が悪化する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、上記のような問題点に着目し、形成されるボイドの形状を多様化するとともに、白色化、低密度化のために含有させる熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂からなる微粒子を脱落しにくくし、熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂含有ポリエステル系フイルムの特性、とくに、印字性、折れ性を改良することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この目的に沿う本発明のポリエステル系フイルムは、少なくとも1種以上の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂を2.5重量%以上30重量%以下含有すると同時に、2種以上の無機粒子を含有する延伸ポリエステル系フイルムAの少なくとも片面に、厚さが1μm以上で熱可塑性ポリオレフィン系樹脂を1重量%未満含有し、さらに粒子を含有する延伸ポリエステル系フイルムBが積層されていることを特徴とする受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フイルムから成る。
【0006】
すなわち、本発明は、上記延伸ポリエステル系フイルムAをベースとしてその少なくとも片面に延伸ポリエステル系フイルムBが積層されている積層ポリエステル系フイルムを提供する。
【0007】
本発明のフイルムはポリエステル系フイルムからなる。ここでいうポリエステルとは、ジカルボン酸とジオールとの縮合重合によって得られるエステル基を含むポリマーである。ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ビス-α,β(2-クロルフェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボン酸、コハク酸、蓚酸などの脂肪族および芳香族のジカルボン酸を挙げることができる。ジオールとしては、例えばエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。前記ジカルボン酸およびジオールは、それぞれ2種類以上が用いられてもよい。なお、このようなポリエステル樹脂の固有粘度は、25℃のo-クロルフェノール中で測定した値が0.4〜2.0が好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.0である。
【0008】
上記樹脂のうち、本発明に用いられるポリエステル樹脂として特に好ましいものは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリエチレン-α,βビス(2-クロルフェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボキシレートである。
【0009】
なお、このような本発明に用いられるポリエステル系樹脂には、本発明の目的を阻害しない範囲で、多種のポリマー、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、酸化防止剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0010】
上記のようなポリエステル系樹脂を用いて本発明の延伸ポリエステル系フイルムが作製される。延伸は一軸延伸でもよいが、好ましくは二軸延伸である。二軸延伸方法としては、特に限定されず、公知の同時二軸延伸、逐次二軸延伸法を適用でき、好ましくは、フイルムを長手方向に延伸した後幅方向に延伸する逐次二軸延伸法を適用できる。
【0011】
本発明では、上記のような延伸ポリエステル系フイルムAに、少なくとも1種以上の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂が2.5重量%以上30重量%以下含有されると同時に、2種以上の無機粒子が含有される。
【0012】
含有される熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂は、ポリエステルに対し非相溶であるから、フイルムを形成する母材であるポリエステル樹脂中に微分散した状態で存在し、延伸によってその周りにボイドを形成する。このボイド形成により、フイルムは白色化される。また、ボイド形成により、および、ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂自身ポリエステル樹脂よりも低密度(低比重)であるから、この熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂含有により、フイルムが低密度化される。
【0013】
含有される熱可塑性ポリオレフィン系樹脂としては、低密度、リニア、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、4-メチルペンテン1、カルボキシル基あるいはエポキシ基を付加した各種変性ポリオレフィン、アイオノマー等が挙げられる。ポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン、スチレンブダジエン樹脂等のスチレン系共重合体をその代表例として挙げることができる。また、熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂の他に、アクリル、ポリアミド等の他の熱可塑性樹脂を、10重量%を越えない範囲で含有していてもよい。
【0014】
上記のような熱可塑性ポリオレフィン系樹脂が、2.5重量%以上30重量%以下の範囲で含有される。2.5重量%未満では、白色化、低密度化の効果が十分でなく、また、30重量%を越えると、母材であるポリエステルの割合が少なくなりすぎ、フイルム自身の強度に問題の出るおそれがある。
【0015】
本発明フイルムにおいては、この熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂と同時に2種以上の無機粒子が含有される。含有される無機粒子は、それ自身ボイド形成に寄与するとともに、特にフイルム表面近傍の地肌補強の役目を果たす。ボイド形成への寄与により、形成されるボイドの形状を多様化でき、よりむらの生じにくい白色化、低密度化フイルムが得られ、フイルム表面近傍の地肌補強により、熱可塑性ポリオレフィン系樹脂からなる微粒子が脱落しにくくなり、この面からもより均一な特性のフイルムが得られる。
【0016】
そして、2種以上の無機粒子を含有させることにより、ボイド形状の多様化を促進でき、本発明で目標とする均一な特性のフイルムが得られる。無機粒子の種類としては、とくに限定されないが、酸化チタン、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム粒子から選ばれた少なくとも1種の粒子を含有していることが好ましい。さらに、球状シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム(重質、軽質、合成炭酸カルシウム)、ジルコニア、凝集シリカ、酸化チタン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、クレー、マイカからなる粒子から選ばれた少なくとも2種の粒子を含有していることが、より好ましい。
【0017】
また、本発明の延伸ポリエステル系フイルムAに含有される粒子として、上記無機粒子の他に、有機粒子、とくに熱硬化性有機粒子を含有していてもよい。さらに、重合時析出粒子を含有していてもよい。含有される有機粒子としては、例えば、ポリスチレン、アクリル、ポリイミド、ポリアミド、エポキシ、フッ素樹脂、シリコーンからなる架橋又は無架橋粒子が挙げられる。
【0018】
本発明の延伸ポリエステル系フイルムは、そのフイルムAの少なくとも片面に、厚さが1μm以上で熱可塑性ポリオレフィン系樹脂を1重量%未満含有する延伸ポリエステル系フイルムBを積層した積層ポリエステル系フイルムとするものである。積層される延伸ポリエステル系フイルムBは、主として、白色化、低密度化された上述の延伸ポリエステル系フイルムAの表面をカバーし、保護する役目を果たす。このフイルムB層自身も白色化、低密度化してもよいが、白色化、低密度化の主な役割はベースフイルム、すなわちフイルムA層が担うので、フイルムB層としては、熱可塑性ポリオレフィン系樹脂を含有しないか、含有しても僅かでよく、1重量%未満でよい。
【0019】
また、フイルムB層の厚さとしては、上記表面保護の目的から、1μm以上が必要であるが、積層フイルムとしてベースフイルムの特色を損なわないために、あまり厚くする必要はない。また、1μm以上の厚さとしておくことにより、積層フイルムの表面には、ポリエステル自身の良好な機械特性等を持たせることができる。
【0020】
このような積層ポリエステル系フイルムにおいては、フイルムB層にも粒子が含有されている。ただしこの時、ベースフイルム(フイルムA層)で生成されるボイドの形状に、フイルムB層におけるそれよりも多様性をもたせるために、フイルムAに含有されている粒子の種類数が、フイルムBに含有されている粒子の種類数プラス1以上であることが好ましい。
【0021】
上記のような本発明の積層ポリエステル系フイルムでは、フイルムAが熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂を2.5重量%以上30重量%以下含有すると同時に、2種以上の無機粒子を含有し、多様な形状のボイドが形成されるとともに、表面近傍の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂微粒子が脱落しにくくなる。その結果、延伸ポリエステル系フイルムあるいは積層ポリエステル系フイルムは、均一なクッション性、良好な折れ性を有するようになる。均一なクッション性により、印字精度、とくに感熱塗料による印字精度が向上し、良好な折れ性により、きれいな折れ目が得られ、折ることを要求される各種用紙の見栄え、および、使用、操作時の取扱性が向上する。
【0022】
次に、本発明のポリエステル系フイルムの代表的製法を説明するが、これに限定されるものではない。
所定の粘度(通常は極限粘度にて0.45〜1.50)を有するポリエステル系樹脂に適宜滑剤処方を施した後、400ppm以下、好ましくは80ppm以下に乾燥する。該乾燥原料を押出機を用いて、熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂および2種以上の無機粒子を所定量混合する。脱気孔を有する押出機を用いる場合は乾燥を省略してもよいし、又押出機途中で各種添加剤を添加してもよい。該樹脂を溶融状態で口金からシート状に吐出後、冷却ロール上で冷却固化してキャストフイルムを得る。積層フイルムとするためには、共押出、あるいは一軸延伸後に一軸延伸フイルム上に別の押出機から吐出されたポリマーをラミネートする方法のいずれでもよい。しかる後、キャストフイルムを60〜120℃の範囲で2.5〜8.0倍縦方向に延伸した後、60〜150℃の範囲で2.5〜6.0倍横方向に延伸し、160〜240℃の範囲で必要に応じ0〜15%弛緩しつつ熱処理を行う。
【0023】
本発明における特性、効果の測定、評価方法について説明する。
(1)印字精度
市販の感熱塗料をフイルムに塗布した後、G-IIIモードのファクシミリ試験機(ドット密度:8ドット/mm、ヘッド抵抗:185Ω、ヘッド電圧:11V、通電時間:0.3〜0.9msec)を用いて印字し、印字状態を100倍に拡大して、目視で次のように判定した。
○:印字むら、印字の局部抜けがなく、全体に高精度に印字されている。
△:印字むら、印字の局部抜けが若干有り、精度の要求されない用途には使用可能であるが、精度が要求される用途には使用できない。
×:印字むら、印字の局部抜けが多発しており、使用不可。
【0024】
(2)折れ性
幅10mmのフイルム(長手、幅方向共)をループ形状に丸め、ループの径を5mmから実質的に0mmとし、その状態について観察する。しわが多数且つうすくはいるものを×、きつく少なくはいるものを○、その中間を△として表示した。
【0025】
【実施例】
実施例1、2(表1)
実施例1、2では、フイルムB/フイルムA/フイルムBの積層構成を有する積層ポリエステル系フイルムを作製した。用いたポリエステルは、固有粘度IV=0.62のポリエチレンテレフタレートで、含有させた熱可塑性ポリオレフィンは、260℃のMFR(Melt Flow Rate)(dg/min)=150のポリプロピレン、または4-メチルペンテン-1である。また、含有させる無機粒子は、沈降法による平均粒径2.0μmのCaCO3粒子、平均粒径0.6μmのSiO2-1粒子(凝集粒子)、平均粒径0.25μmのSiO2-2粒子(球状粒子)、平均粒径0.25μmの酸化チタン粒子(凝集粒子)、平均粒径0.2μmのタルク粒子(板状粒子)の中から2種以上選択した。
【0026】
上記樹脂を、押出機に供給し、260℃で溶融押出して、口金からシート状に吐出し、冷却ドラム上にキヤストした。共押出により積層フイルムとした。この未延伸シートを、延伸温度80℃、延伸倍率3.2倍にて縦延伸した。得られた一軸延伸フイルムを、テンターに導き、延伸温度120℃、延伸倍率3.2倍にて横延伸した。二軸に延伸されたフイルムを、一旦冷却後、220℃、横方向にリラックス率5%で弛緩処理を施しつつ熱固定した。
【0027】
得られたフイルムを、前述の測定方法で評価したところ、印字精度、折れ性ともに全て○であり、目標とする優れた特性のフイルムが得られた。
【0028】
比較例1、2(表1)
比較例1においては、単層フイルムとし、含有無機粒子を1種類のみとした。比較例2においては、積層フイルムとし、フイルムAの含有無機粒子を1種類のみとする他は実施例1と同様に、それぞれ製膜し、印字精度、折れ性の評価を行った。結果、比較例1では印字精度が×、比較例2では印字精度、折れ性ともに△であり、目標とする特性のフイルムが得られなかった。
【0029】
【表1】

【0030】
比較例3(表2)
用いたポリエステルは、固有粘度IV=0.66のポリエチレンテレフタレートに、230℃でのMFR=20のポリスチレン、沈降法による平均粒径0.35μmのTiO2粒子を含有させた。
【0031】
上記樹脂を、押出機に供給し、260℃で溶融押出して、口金からシート状に吐出し、冷却ドラム上にキヤストした。この未延伸シートを、延伸温度80℃、延伸倍率3.2倍にて縦延伸した。得られた一軸延伸フイルムを、テンターに導き、延伸温度120℃、延伸倍率3.2倍にて横延伸した。二軸に延伸されたフイルムを、一旦冷却後、220℃、横方向にリラックス率5%で弛緩処理を施しつつ熱固定し、単層フイルムに形成した。得られたフイルムを、前述の測定方法で評価したところ、印字精度が×となり、目標とする優れた特性のフイルムが得られなかった(表2)。
【0032】
【表2】

【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フイルムによるときは、延伸ポリエステル系フイルムAに1種以上の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂を所定量含有させると同時に、2種以上の無機粒子を含有させ、内部に形成されるボイドの形状を多様化するとともに表層近傍の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂からなる粒子を脱落しにくいようにしたので、優れた印字精度、折れ性を有するフイルムを得ることができる。
【0034】
このように優れた印字精度、折れ性を有する本発明の積層延伸ポリエステル系フイルムは、各種受像ベース(印画紙、各種プリンタ(PPC、熱転写、昇華型プリンタ、バブルジェットプリンタ)用受像紙、タッグ、ラベル、各種スペーサ、反射板、伝票等の記録紙、地図や各種書籍、投票用紙、カタログ等の印刷用ベース、離型用ベース、各種リテナーなどに好適に使用できる。
 
訂正の要旨 ▲1▼訂正事項a
特許請求の範囲の
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも1種以上の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂を2.5重量%以上30重量%以下含有すると同時に、2種以上の無機粒子を含有することを特徴とする受像用、用紙用延伸ポリエステル系フイルム。
【請求項2】 請求項1の延伸ポリエステル系フイルムAの少なくとも片面に、厚さが1μm以上で熱可塑性ポリオレフィン系樹脂を1重量%未満含有する延伸ポリエステル系フイルムBが積層されていることを特徴とする積層ポリエステル系フイルム。
【請求項3】 前記フイルムAに含有されている粒子の種類数が、前記フイルムBに含有されている粒子の種類数プラス1以上である請求項2の積層ポリエステル系フイルム。
【請求項4】 前記フイルムAが、酸化チタン、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム粒子から選ばれた少なくとも1種の粒子を含有している請求項2又は3の積層ポリエステル系フイルム。
【請求項5】 前記フイルムAが、球状シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ジルコニア、凝集シリカ、酸化チタン、クレー、マイカからなる粒子から選ばれた少なくとも2種の粒子を含有している請求項2又は3の積層ポリエステル系フイルム。
【請求項6】 前記フイルムAが、熱硬化性有機粒子を含有している請求項2ないし5のいずれかに記載の積層ポリエステル系フイルム。」を、
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも1種以上の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂を2.5重量%以上30重量%以下含有すると同時に、2種以上の無機粒子を含有する延伸ポリエステル系フイルムAの少なくとも片面に、厚さが1μm以上で熱可塑性ポリオレフィン系樹脂を1重量%未満含有し、さらに粒子を含有する延伸ポリエステル系フイルムBが積層されていることを特徴とする受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フイルム。
【請求項2】 前記延伸ポリエステル系フイルムAに含有されている粒子の種類数が、前記延伸ポリエステル系フイルムBに含有されている粒子の種類数プラス1以上である請求項1記載の受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フイルム。
【請求項3】 前記延伸ポリエステル系フイルムAが、酸化チタン、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム粒子から選ばれた少なくとも1種の粒子を含有している請求項1又は2の受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フイルム。
【請求項4】 前記延伸ポリエステル系フイルムAが、球状シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ジルコニア、凝集シリカ、酸化チタン、クレー、マイカからなる粒子から選ばれた少なくとも2種の粒子を含有している請求項1又は2の受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フイルム。
【請求項5】 前記延伸ポリエステル系フイルムAが、熱硬化性有機粒子を含有している請求項1ないし4のいずれかに記載の受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フイルム。1と訂正する。
▲2▼訂正事項b
特許登録時の明細書(以下、単に「明細書」という。)〔0005〕欄の
「 【0005】
【課題を解決するための手段】
この目的に沿う本発明のポリエステル系フイルムは、少なくとも1種以上の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂を2.5重量%以上30重量%以下含有すると同時に、2種以上の無機粒子を含有する受像用、用紙用延伸ポリエステル系フイルムから成る。」を、
「 【0005】
【課題を解決するための手段】
この目的に沿う本発明のポリエステル系フイルムは、少なくとも1種以上の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂を2.5重量%以上30重量%以下含有すると同時に、2種以上の無機粒子を含有する延伸ポリエステル系フイルムAの少なくとも片面に、厚さが1μm以上で熱可塑性ポリオレフィン系樹脂を1重量%未満含有し、さらに粒子を含有する延伸ポリエステル系フイルムBが積層されていることを特徴とする受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フイルムから成る。」と訂正する。
▲3▼訂正事項c
明細書〔0006〕欄の
「 【0006】
また、本発明は、上記ポリエステル系フイルムをベースとする積層ポリエステル系フイルムも提供する。すなわち、上記の延伸ポリエステル系フイルムAの少なくとも片面に、厚さが1μm以上で熱可塑性ポリオレフィン系樹脂を1重量%未満含有する延伸ポリエステル系フイルムBが積層されている積層ポリエステル系フイルムである。」を、
「 【0006】
すなわち、本発明は、上記延伸ポリエステル系フイルムAをベースとしてその少なくとも片面に延伸ポリエステル系フイルムBが積層されている積層ポリエステル系フイルムを提供する。」と訂正する。
▲4▼訂正事項d
明細書〔0011〕欄の
「 【0011】
本発明では、上記のような延伸ポリエステル系フイルムに、少なくとも1種以上の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂が2.5重量%以上30重量%以下含有されると同時に、2種以上の無機粒子が含有される。」を、
「 【0011】
本発明では、上記のような延伸ポリエステル系フイルムAに、少なくとも1種以上の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂が2.5重量%以上30重量%以下含有されると同時に、2種以上の無機粒子が含有される。」と訂正する。
▲5▼訂正事項e
明細書〔0017〕欄の
「 【0017】
また、本発明の延伸ポリエステル系フイルムに含有される粒子として、上記無機粒子の他に、有機粒子、とくに熱硬化性有機粒子を含有していてもよい。さらに、重合時析出粒子を含有していてもよい。含有される有機粒子としては、例えば、ポリスチレン、アクリル、ポリイミド、ポリアミド、エポキシ、フッ素樹脂、シリコーンからなる架橋又は無架橋粒子が挙げられる。」を、
「 【0017】
また、本発明の延伸ポリエステル系フイルムAに含有される粒子として、上記無機粒子の他に、有機粒子、とくに熱硬化性有機粒子を含有していてもよい。さらに、重合時析出粒子を含有していてもよい。含有される有機粒子としては、例えば、ポリスチレン、アクリル、ポリイミド、ポリアミド、エポキシ、フッ素樹脂、シリコーンからなる架橋又は無架橋粒子が挙げられる。」と訂正する。
▲6▼訂正事項f
明細書〔0018〕欄の
「 【0018】
本発明の延伸ポリエステル系フイルムは、そのフイルムAの少なくとも片面に、厚さが1μm以上で熱可塑性ポリオレフィン系樹脂を1重量%未満含有する延伸ポリエステル系フイルムBを積層した積層ポリエステル系フイルムとしても好適に使用できる。積層される延伸ポリエステル系フイルムBは、主として、白色化、低密度化された上述の延伸ポリエステル系フイルムAの表面をカバーし、保護する役目を果たす。このフイルムB層自身も白色化、低密度化してもよいが、白色化、低密度化の主な役割はベースフイルム、すなわちフイルムA層が担うので、フイルムB層としては、熱可塑性ポリオレフィン系樹脂を含有しないか、含有しても僅かでよく、1重量%未満でよい。」を、
「 【0018】
本発明の延伸ポリエステル系フイルムは、そのフイルムAの少なくとも片面に、厚さが1μm以上で熱可塑性ポリオレフィン系樹脂を1重量%未満含有する延伸ポリエステル系フイルムBを積層した積層ポリエステル系フイルムとするものである。積層される延伸ポリエステル系フイルムBは、主として、白色化、低密度化された上述の延伸ポリエステル系フイルムAの表面をカバーし、保護する役目を果たす。このフイルムB層自身も白色化、低密度化してもよいが、白色化、低密度化の主な役割はベースフイルム、すなわちフイルムA層が担うので、フイルムB層としては、熱可塑性ポリオレフィン系樹脂を含有しないか、含有しても僅かでよく、1重量%未満でよい。」と訂正する。
▲7▼訂正事項g
明細書〔0020〕欄の
「 【0020】
このような積層ポリエステル系フイルムにおいては、フイルムB層に粒子が含有されてもよい。ただしこの時、ベースフイルム(フイルムA層)で生成されるボイドの形状に、フイルムB層におけるそれよりも多様性をもたせるために、フイルムAに含有されている粒子の種類数が、フイルムBに含有されている粒子の種類数プラス1以上であることが好ましい。」を、
「 【0020】
このような積層ポリエステル系フイルムにおいては、フイルムB層にも粒子が含有されている。ただしこの時、ベースフイルム(フイルムA層)で生成されるボイドの形状に、フイルムB層におけるそれよりも多様性をもたせるために、フイルムAに含有されている粒子の種類数が、フイルムBに含有されている粒子の種類数プラス1以上であることが好ましい。」と訂正する。
▲8▼訂正事項h
明細書〔0021〕欄の
「 【0021】
上記のような本発明の延伸ポリエステル系フイルムおよび積層ポリエステル系フイルムでは、フイルムAが熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂を2.5重量%以上30重量%以下含有すると同時に、2種以上の無機粒子を含有し、多様な形状のボイドが形成されるとともに、表面近傍の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂微粒子が脱落しにくくなる。その結果、延伸ポリエステル系フイルムあるいは積層ポリエステル系フイルムは、均一なクッション性、良好な折れ性を有するようになる。均一なクッション性により、印字精度、とくに感熱塗料による印字精度が向上し、良好な折れ性により、きれいな折れ目が得られ、折ることを要求される各種用紙の見栄え、および、使用、操作時の取扱性が向上する。」を、
「 【0021】
上記のような本発明の積層ポリエステル系フイルムでは、フイルムAが熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂を2.5重量%以上30重量%以下含有すると同時に、2種以上の無機粒子を含有し、多様な形状のボイドが形成されるとともに、表面近傍の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂微粒子が脱落しにくくなる。その結果、延伸ポリエステル系フイルムあるいは積層ポリエステル系フイルムは、均一なクッション性、良好な折れ性を有するようになる。均一なクッション性により、印字精度、とくに感熱塗料による印字精度が向上し、良好な折れ性により、きれいな折れ目が得られ、折ることを要求される各種用紙の見栄え、および、使用、操作時の取扱性が向上する。」と訂正する。
▲9▼訂正事項i
明細書〔0022〕欄の
「 【0022】
次に、本発明のポリエステル系フイルムの代表的製法を説明するが、これに限定されるものではない。
所定の粘度(通常は極限粘度にて0.45〜1.50)を有するポリエステル系樹脂に適宜滑剤処方を施した後、400ppm以下、好ましくは80ppm以下に乾燥する。該乾燥原料を押出機を用いて、熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂および2種以上の無機粒子を所定量混合する。脱気孔を有する押出機を用いる場合は乾燥を省略してもよいし、又押出機途中で各種添加剤を添加してもよい。該樹脂を溶融状態で口金からシート状に吐出後、冷却ロール上で冷却固化してキャストフイルムを得る。積層フイルムとする場合には、共押出、あるいは一軸延伸後に一軸延伸フイルム上に別の押出機から吐出されたポリマーをラミネートする方法のいずれでもよい。しかる後、キャストフイルムを60〜120℃の範囲で2.5〜8.0倍縦方向に延伸した後、60〜150℃の範囲で2.5〜6.0倍横方向に延伸し、160〜240℃の範囲で必要に応じ0〜15%弛緩しつつ熱処理を行う。」を、
「 【0022】
次に、本発明のポリエステル系フイルムの代表的製法を説明するが、これに限定されるものではない。
所定の粘度(通常は極限粘度にて0.45〜1.50)を有するポリエステル系樹脂に適宜滑剤処方を施した後、400ppm以下、好ましくは80ppm以下に乾燥する。該乾燥原料を押出機を用いて、熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂および2種以上の無機粒子を所定量混合する。脱気孔を有する押出機を用いる場合は乾燥を省略してもよいし、又押出機途中で各種添加剤を添加してもよい。該樹脂を溶融状態で口金からシート状に吐出後、冷却ロール上で冷却固化してキャストフイルムを得る。積層フイルムとするためには、共押出、あるいは一軸延伸後に一軸延伸フイルム上に別の押出機から吐出されたポリマーをラミネートする方法のいずれでもよい。しかる後、キャストフイルムを60〜120℃の範囲で2.5〜8.0倍縦方向に延伸した後、60〜150℃の範囲で2.5〜6.0倍横方向に延伸し、160〜240℃の範囲で必要に応じ0〜15%弛緩しつつ熱処理を行う。」と訂正する。
▲10▼訂正事項j
明細書〔0025〕欄の
「 【0025】
【実施例】
実施例1〜5(表1)
実施例1〜3では、単層の延伸ポリエステル系フイルムを作製し、実施例4、5では、フイルムB/フイルムA/フイルムBの積層構成を有する積層ポリエステル系フイルムを作製した。用いたポリエステルは、固有粘度IV=0.62のポリエチレンテレフタレートで、含有させた熱可塑性ポリオレフィンは、260℃のMFR(Melt Flow Rate)(dg/min)=150のポリプロピレン、または4-メチルペンテン-1である。また、含有させる無機粒子は、沈降法による平均粒径2.0μmのCaCO3粒子、平均粒径0.6μmのSiO2-1粒子(凝集粒子)、平均粒径0.25μmのSiO2-2粒子(球状粒子)、平均粒径0.2μmのδ-Al2O3粒子(凝集粒子)、平均粒径0.25μmの酸化チタン粒子(凝集粒子)、平均粒径0.2μmのタルク粒子(板状粒子)の中から2種以上選択した。さらに、実施例3においては、架橋ポリスチレンからなる有機粒子も含有させた。」を、
「 【0025】
【実施例】
実施例1、2(表1)
実施例1、2では、フイルムB/フイルムA/フイルムBの積層構成を有する積層ポリエステル系フイルムを作製した。用いたポリエステルは、固有粘度IV=0.62のポリエチレンテレフタレートで、含有させた熱可塑性ポリオレフィンは、260℃のMFR(Melt Flow Rate)(dg/min)=150のポリプロピレン、または4-メチルペンテン-1である。また、含有させる無機粒子は、沈降法による平均粒径2.0μmのCaCO3粒子、平均粒径0.6μmのSiO2-1粒子(凝集粒子)、平均粒径0.25μmのSiO2-2粒子(球状粒子)、平均粒径0.25μmの酸化チタン粒子(凝集粒子)、平均粒径0.2μmのタルク粒子(板状粒子)の中から2種以上選択した。」と訂正する。
▲11▼訂正事項k
明細書〔0026〕欄の
「 【0026】
上記樹脂を、押出機に供給し、260℃で溶融押出して、口金からシート状に吐出し、冷却ドラム上にキヤストした。積層フイルムの場合には共押出によった。この未延伸シートを、延伸温度80℃、延伸倍率3.2倍にて縦延伸した。得られた一軸延伸フイルムを、テンターに導き、延伸温度120℃、延伸倍率3.2倍にて横延伸した。二軸に延伸されたフイルムを、一旦冷却後、220℃、横方向にリラックス率5%で弛緩処理を施しつつ熱固定した。」を、
「 【0026】
上記樹脂を、押出機に供給し、260℃で溶融押出して、口金からシート状に吐出し、冷却ドラム上にキヤストした。共押出により積層フイルムとした。この未延伸シートを、延伸温度80℃、延伸倍率3.2倍にて縦延伸した。得られた一軸延伸フイルムを、テンターに導き、延伸温度120℃、延伸倍率3.2倍にて横延伸した。二軸に延伸されたフイルムを、一旦冷却後、220℃、横方向にリラックス率5%で弛緩処理を施しつつ熱固定した。」と訂正する。
▲12▼訂正事項l
明細書〔0028〕欄の
「 【0028】
比較例1、2(表1)
比較例1においては、単層フイルムとし、含有無機粒子を1種類のみとする他は実施例1と同様に、比較例2においては、積層フイルムとし、フイルムAの含有無機粒子を1種類のみとする他は実施例4と同様に、それぞれ製膜し、印字精度、折れ性の評価を行った。結果、比較例1では印字精度が×、比較例2では印字精度、折れ性ともに△であり、目標とする特性のフイルムが得られなかった。」を、
「 【0028】
比較例1、2(表1)
比較例1においては、単層フイルムとし、含有無機粒子を1種類のみとした。比較例2においては、積層フイルムとし、フイルムAの含有無機粒子を1種類のみとする他は実施例1と同様に、それぞれ製膜し、印字精度、折れ性の評価を行った。結果、比較例1では印字精度が×、比較例2では印字精度、折れ性ともに△であり、目標とする特性のフイルムが得られなかった。」と訂正する。
▲13▼訂正事項m
明細書〔0029〕欄の表1を次の表1に訂正する。
【表1】

▲14▼訂正事項n
明細書〔0030〕欄の
「 【0030】
比較例3、実施例6(表2)
用いたポリエステルは、固有粘度IV=0.66のポリエチレンテレフタレートに、230℃でのMFR=20のポリスチレン、沈降法による平均粒径0.35μmのTiO2粒子を(比較例3)、さらに平均粒径0.8μmのSiO2粒子を含有させた。」を、
「 【0030】
比較例3(表2)
用いたポリエステルは、固有粘度IV=0.66のポリエチレンテレフタレートに、230℃でのMFR=20のポリスチレン、沈降法による平均粒径0.35μmのTiO2粒子を含有させた。」と訂正する。
▲15▼訂正事項o
明細書〔0031〕欄の
「 【0031】
上記樹脂を、押出機に供給し、260℃で溶融押出して、口金からシート状に吐出し、冷却ドラム上にキヤストした。この未延伸シートを、延伸温度80℃、延伸倍率3.2倍にて縦延伸した。得られた一軸延伸フイルムを、テンターに導き、延伸温度120℃、延伸倍率3.2倍にて横延伸した。二軸に延伸されたフイルムを、一旦冷却後、220℃、横方向にリラックス率5%で弛緩処理を施しつつ熱固定した。比較例3、実施例6ともに単層フイルムに形成した。得られたフイルムを、前述の測定方法で評価したところ、実施例6のみ印字精度、折れ性ともに全て○であり、目標とする優れた特性のフイルムが得られた(表2)。」を、
「 【0031】
上記樹脂を、押出機に供給し、260℃で溶融押出して、口金からシート状に吐出し、冷却ドラム上にキヤストした。この未延伸シートを、延伸温度80℃、延伸倍率3.2倍にて縦延伸した。得られた一軸延伸フイルムを、テンターに導き、延伸温度120℃、延伸倍率3.2倍にて横延伸した。二軸に延伸されたフイルムを、一旦冷却後、220℃、横方向にリラックス率5%で弛緩処理を施しつつ熱固定し、単層フイルムに形成した。得られたフイルムを、前述の測定方法で評価したところ、印字精度が×となり、目標とする優れた特性のフイルムが得られなかった(表2)。」と訂正する。
▲16▼訂正事項p
明細書〔0032〕欄の表2を次の表2に訂正する。
【表2】

▲17▼訂正事項q
明細書〔0033〕欄の
「 【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の受像用、用紙用延伸ポリエステル系フイルムによるときは、1種以上の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂を所定量含有させると同時に、2種以上の無機粒子を含有させ、内部に形成されるボイドの形状を多様化するとともに表層近傍の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂からなる粒子を脱落しにくいようにしたので、優れた印字精度、折れ性を有するフイルムを得ることができる。」を、
「 【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の受像用、用紙用積層延伸ポリエステル系フイルムによるときは、延伸ポリエステル系フイルムAに1種以上の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂を所定量含有させると同時に、2種以上の無機粒子を含有させ、内部に形成されるボイドの形状を多様化するとともに表層近傍の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂および/又はポリスチレン系樹脂からなる粒子を脱落しにくいようにしたので、優れた印字精度、折れ性を有するフイルムを得ることができる。」と訂正する。
▲18▼訂正事項r
明細書〔0034〕欄の
「 【0034】
このように優れた印字精度、折れ性を有する本発明の延伸ポリエステル系フイルムおよび積層ポリエステル系フイルムは、各種受像ベース(印画紙、各種プリンタ(PPC、熱転写、昇華型プリンタ、バブルジェットプリンタ)用受像紙、タッグ、ラベル、各種スペーサ、反射板、伝票等の記録紙、地図や各種書籍、投票用紙、カタログ等の印刷用ベース、離型用ベース、各種リテナーなどに好適に使用できる。」を、
「 【0034】
このように優れた印字精度、折れ性を有する本発明の積層延伸ポリエステル系フイルムは、各種受像ベース(印画紙、各種プリンタ(PPC、熱転写、昇華型プリンタ、バブルジェットプリンタ)用受像紙、タッグ、ラベル、各種スペーサ、反射板、伝票等の記録紙、地図や各種書籍、投票用紙、カタログ等の印刷用ベース、離型用ベース、各種リテナーなどに好適に使用できる。」と訂正する。
異議決定日 2003-01-30 
出願番号 特願平6-47707
審決分類 P 1 652・ 121- ZA (C08J)
最終処分 取消  
前審関与審査官 三谷 祥子  
特許庁審判長 三浦 均
特許庁審判官 中島 次一
船岡 嘉彦
登録日 2000-11-17 
登録番号 特許第3129907号(P3129907)
権利者 東レ株式会社
発明の名称 ポリエステル系フイルム  
代理人 伴 俊光  
代理人 伴 俊光  

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