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審決分類 審判 一部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  H01M
審判 一部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  H01M
審判 一部申し立て 発明同一  H01M
管理番号 1077925
異議申立番号 異議2001-71781  
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-02-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-06-22 
確定日 2003-03-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3120984号「非水二次電池」の請求項1ないし4、8ないし11に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3120984号の請求項3、10に係る特許を取り消す。 同請求項1、2、4、8、9、11に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯

本件特許第3120984号の手続の経緯は次のとおりである。

特許出願: 平成 1年 7月12日
設定登録: 平成12年10月20日
特許掲載公報発行: 平成12年12月25日
特許異議申立て: 平成13年 6月22日
(異議申立人三洋電機株式会社)
取消理由通知: 平成14年 4月12日付け
訂正請求: 平成14年 6月20日
特許異議意見書: 平成14年 6月20日
取消理由通知: 平成14年 7月10日付け
審尋(特許異議申立人に対して): 平成14年 7月10日付け
特許異議意見書: 平成14年 9月10日
回答書: 平成14年 9月12日
訂正拒絶理由: 平成14年10月 8日付け
訂正請求意見書: 平成14年12月17日

2.訂正の適否についての判断

2-1.訂正の内容
訂正の内容は、訂正請求書及びそれに添付された訂正明細書の記載からみて、下記(1)、(2)のとおりである。

(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1,2,8,及び9の「リチウム・マンガン酸化物系」を、「アメリカ材料試験協会(ASTM)のカードインデックスに示されたLiMn2O4のd値と一致せず、0.001〜0.002nm程度小さいリチウム・マンガン酸化物系」と訂正する。

(2)訂正事項b
出願当初明細書第8頁第1表(特許掲載公報第5欄第30〜44行)に、枠を書き加える。

2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項aは、請求項1,2,8及び9の「リチウム・マンガン酸化物系」を、「アメリカ材料試験協会(ASTM)のカードインデックスに示されたLiMn2O4のd値と一致せず、0.001〜0.002nm程度小さいリチウム・マンガン酸化物系」と訂正することにより、請求項1,2,8,及び9、並びに請求項1若しくは8を直接又は間接的に引用する請求項4〜7,11〜14に係る発明を限定しようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、発明の詳細な説明には、実施例1に、「・・・これのX線回折を測定したところ第1表に示したように、アメリカ材料試験協会(ASTM)のカードインデツクスに示されたLiMn2O4の公差d値と一致せず、0.001〜0.002nm程度小さいLi・Mn複合酸化物が得られた。」(特許掲載公報第5欄第22〜28行)と記載されているから、この訂正は新規事項を追加するものでも、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。

(2)訂正事項bは、表1に枠を書き加えることによって、明細書に記載の文言及び数値の対応関係を見易くするためのものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、新規事項を追加するものでも、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。

2-3.独立特許要件
上記訂正請求の訂正事項aは、請求項1,8を訂正することにより、請求項1若しくは8を直接又は間接的に引用する、特許異議の申立てがされていない請求項5〜7、12〜14に係る発明についても、訂正しようとするものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正明細書における請求項5〜7,12〜14に係る発明(以下「訂正発明5〜7,12〜14」等という)の独立特許要件について、以下、検討する。
訂正発明5〜7,12〜14は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項5〜7,12〜14に記載されたとおりのものであって(下記3-2.参照)、同請求項1又は8に係る発明の構成要件を全て含むものである。
そして、請求項1及び8に係る発明は、下記3-4.(1)に示すように、特許異議申立人が提出した甲第1号証に係る先願発明と同一ではなく、かつ、下記3-5.に示すように本件特許の明細書の記載に不備はないから、同様の理由により、訂正発明5〜7,12〜14は、甲第1号証と同一ではなく、かつ、本件特許明細書の記載に不備のあるものでもない。
したがって、訂正発明5〜7,12〜14は、出願の際、独立して特許を受けることができるものである。

2-4.むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する同法第126条第2項、第3項及び第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについての判断

3-1.特許異議の申立理由、及び取消理由の概要
特許異議申立人三洋電機株式会社(以下「申立人」という)は、下記の甲第1〜3号証を提出し、下記(1)、(2)の理由により、本件の下記の請求項に係る発明の特許は取り消されるべきである旨、主張している。

(1)本件の請求項1〜4,8〜11に係る発明は、本件出願日前の出願であって、その後出願公開がされた甲第1号証に係る出願(以下「先願」という)の願書に添付した明細書又は図面(以下「先願明細書」という)に記載された発明(以下「先願発明」という)と同一であり、しかも、本件出願に係る発明の発明者と先願発明の発明者とは同一でなく、また、本件出願の時において、本件出願人と先願出願人とは同一でないから、本件の請求項1〜4,8〜11に係る発明の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
(2)本件明細書の記載が不備であるから、請求項1,3,8,10に係る発明の特許は、特許法第36条第3項若しくは第4項に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。

甲第1号証:特願昭63-187563号(特開平2-37665号公報参照)
甲第2号証:玉虫文一 他 編「岩波理化学辞典 第3版」株式会社岩波書店 1979年8月30日 第1169頁
甲第3号証:日本化学会編「化学便覧基礎編II 改訂2版」丸善株式会社 昭和54年3月20日 第1552頁

当審が平成14年7月10日付けで通知した取消理由の概要は、本件明細書の記載が不備であるから、請求項1〜4,8〜11に係る発明の特許は、特許法第36条第3項若しくは第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであり、本件請求項3,10に係る発明の特許は、上記(1)と同様の理由により、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであることを趣旨としている。

3-2.本件発明
本件請求項1〜14に係る発明は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜14に記載された次のとおりのものであり、特許異議申立ては、請求項1〜4,8〜11に係る発明についてされている。

【請求項1】負極と、アメリカ材料試験協会(ASTM)のカードインデックスに示されたLiMn2O4のd値と一致せず、0.001〜0.002nm程度小さいリチウム・マンガン酸化物系を含む正極と、非水電解液とを有し、前記正極におけるLi/Mn原子比が0.5よりも大きいこと(Li/Mn原子比が2.0を除く)を特徴とする非水二次電池。
【請求項2】負極と、アメリカ材料試験協会(ASTM)のカードインデックスに示されたLiMn2O4のd値と一致せず、0.001〜0.002nm程度小さいリチウム・マンガン酸化物系を含む正極と、非水電解液とを有し、前記正極におけるリチウム・マンガン酸化物が、LixMnyO4(x≦1+(2-y)、y<2)の状態を有することを特徴とする非水二次電池。
【請求項3】負極と、リチウム・マンガン酸化物系を含む正極と、非水電解液とを有し、前記正極における酸化物系が、Li/Mn原子比が0.5よりも大きく、LiMn2O4よりも格子収縮した構造であることを特徴とする非水二次電池。
【請求項4】請求項1において、前記正極が、更に、MnO2を含むことを特徴とする非水二次電池。
【請求項5】請求項1において、前記正極が、更に、Li2MnO3を含むことを特徴とする非水二次電池。
【請求項6】請求項1において、前記正極が、更に、LiMn2O4を含むことを特徴とする非水二次電池。
【請求項7】請求項4において、前記MnO2が、ε-MnO2、γ-MnO2、γ-β-MnO2、又はβ-MnO2であることを特徴とする非水二次電池。
【請求項8】アメリカ材料試験協会(ASTM)のカードインデックスに示されたLiMn2O4のd値と一致せず、0.001〜0.002nm程度小さいリチウム・マンガン酸化物系の正極用材料であって、前記正極用材料におけるLi/Mn原子比が0.5よりも大きいこと(Li/Mn原子比が2.0を除く)を特徴とする非水二次電池用Li・Mn複合酸化物。
【請求項9】アメリカ材料試験協会(ASTM)のカードインデックスに示されたLiMn2O4のd値と一致せず、0.001〜0.002nm程度小さいリチウム・マンガン酸化物系の正極用材料であって、前記正極用材料における酸化物が、LixMnyO4(x≦1+(2-y)、y<2)の状態を有することを特徴とする非水二次電池用Li・Mn複合酸化物。
【請求項10】リチウム・マンガン酸化物系の正極用材料であって、前記正極用材料における酸化物が、Li/Mn原子比が0.5よりも大きく、LiMn2O4よりも格子収縮した構造であることを特徴とする非水二次電池用Li・Mn複合酸化物。
【請求項11】請求項8において、前記正極用材料が、更に、MnO2含むことを特徴とする非水二次電池用Li・Mn複合酸化物。
【請求項12】請求項8において、前記正極用材料が、更に、Li2MnO3を含むことを特徴とする非水二次電池用Li・Mn複合酸化物。
【請求項13】請求項8において、前記正極用材料が、更に、LiMn2O4を含むことを特徴とする非水二次電池用Li・Mn複合酸化物。
【請求項14】請求項11において、前記MnO2が、ε-MnO2、γ-MnO2、γ-β-MnO2、又はβ-MnO2であることを特徴とする非水二次電池用Li・Mn複合酸化物。
(以下「本件請求項1に係る発明」等を「本件発明1」等という。)

3-3.甲各号証の記載
(1)甲第1号証に係る先願(平成14年7月10日付け取消理由の引用先願)明細書には、下記の記載がある。

ア.「リチウムを含有する負極材と、LixMnOyなる一般式で表される正極材と、有機電解液とを有する有機電解質二次電池であって、前記LixMnOyにおけるMnの価数分析値mとLi/Mn原子比xとが、0.5≦x≦0.7 3.80≦m≦3.90 4.30≦m+x≦4.55なる関係を満足することを特徴とする有機電解質二次電池。」(特許請求の範囲)

イ.「一方、X線回折によりASTMカードのLiMn2O4と一致したリチウムとマンガンの複合酸化物は、・・・リチウムイオンのデインターカレーションの劣化の少ない材料であり、・・・ところが、本発明者等がさらに検討を加えたところ、前記ASTMカードのLiMn2O4と一致する複合酸化物(以下単にLiMn2O4とする。)を正極材とする電池は、充放電反応の繰り返しによる放電容量の劣化は少ないものの、一回の充電で取り出せる容量はあまり大きくなく、大容量二次電池の実現には難点があることが判明した。
そこで本発明は、かかる欠点を改善すべくなされたものであって、大容量でかつ充放電に伴う容量劣化の少ない有機電解質二次電池を提供することを目的とする。」(第2頁左下欄第14行〜同頁右下欄第12行)

ウ.「本発明者等は、リチウムとマンガンの複合酸化物を、リチウムが若干過剰となるような割合で混合し且つLiMn2O4の合成温度よりも低い温度で合成することで、スピネル型構造と類似した構造を持つLixMnOy(ただし、0.5≦x≦0.7,3.80≦m≦3.90,4.30≦m+x≦4.55)で表されるLiMn2O4とは異なるリチウムマンガン複合酸化物が合成されることを見出した。」(第3頁右上欄第5〜12行)

エ.「ここで、・・・LiMn2O4の理論容量は148mAH/gである。しかしながら、実際の電池反応により得られる容量は75mAH/g程度にすぎず、・・・これに対して、LixMnOy(ただし、0.5≦x≦0.7, 3.80≦m≦3.90, 4,30≦m+x≦4.55)を正極材とする電池では、その詳細な理由は不明であるが放電容量が確保され、またスピネル型構造と類似した構造をとることからサイクル特性も維持される。」(第4頁左下欄第18行〜同頁右下欄第11行)

オ.「〔実施例〕
以下、本発明を具体的な実験結果に基づいて説明する。
〔LixMnOyの合成例1〕
市販の二酸化マンガンをまず420℃で4時間熱処理を施し、これに市販の炭酸リチウムをマンガンとリチウムの原子比1:0.56となるように良く混合した後、400℃で1時間加熱処理してリチウムマンガン複合酸化物を合成した。これを試料1とする。
〔LiMn2O4の合成例〕
市販の二酸化マンガンをまず420℃で4時間熱処理を施し、これに市販の炭酸リチウムをマンガンとリチウムの原子比1:0.50となるように良く混合した後、900℃で2時間熱処理しリチウムマンガン複合酸化物を合成した。これを比較試料とする。
試料1並びに比較試料についてX線回折を行った。試料1のX線回折チャートを第3図に、比較試料のX線回折チャートを第4図にそれぞれ示す。試料1のX線回折パターンは、第2図に示した比較試料(LiMn2O4)のX線回折パターンと比較すると、極めて類似しているものの回折角2θ=46.1゜,56.1゜近傍の回折ピークが高角度側にシフトしていることがわかる。
なお、X線回折分析の測定条件は下記の通りである。
ターゲット : Fe・・・ 」(第4頁右下欄第12行〜第5頁右上欄第3行;なお、「第2図に示した比較試料」は、「第4図に示した比較試料」の明らかな誤記と認める。)

カ.「その結果試料1の・・・この場合LixMnOyでx=0.56であり、・・・ここで合成したLixMnOyはLi0.56MnO2.185と考えられる。したがって、X線回折ではLiMn2O4に類似しているものの、マンガン価数で大きく異なり、Li0.56MnO2.185とLiMn2O4とは異なるリチウムマンガン複合酸化物である。」(第5頁右下欄第2〜12行)

キ.第3図には、実施例で合成された試料1のX線回折パターンが、第4図は比較試料であるLiMn2O4のX線回折パターンが示されており、第3図のX線回折パターンの主なピーク(2θが24°,47°,57°,76°,85°,90°付近;以下、低角度側より順にピーク1〜6という。)は、第4図の対応するX線回折パターンのピーク(23°,46°,56°,75°,83°,88°付近)よりいずれも高角度側にシフトしていることが見て取れる。

(2)甲第2号証には、「ブラッグ条件」の項に、結晶X線回折において、ブラッグ条件2dsinθ=nλ(d:格子間間隔、θ:視射角、λ:波長、n:正の整数)が成立するとき、回折が現われることが記載されている。

(3)甲第3号証には、「固有X線スペクトルとX線吸収スペクトル」について、FeのKα1は0.19360nmであることが記載されている。

3-4.特許法第29条の2違反について
(1)請求項1,2,4,8,9,11について
先願明細書には、上記3-3.(1)の記載事項からみて、「負極材と、LixMnOyなる一般式で表される正極材と、有機電解液とを有し、前記正極材におけるLi/Mn原子比が0.5〜0.7であり、比較試料であるLiMn2O4のX線回折パターンと比較すると、極めて類似しているものの、主な回折ピークが高角度側にシフトしている有機電解質二次電池。」の発明が記載されており、甲第2号証記載のブラッグ条件に照らせば、回折ピークが高角度側にシフトしている構造とは、格子間間隔(d値)がより小さい(格子収縮した)構造と同義であることは明らかである。
また、先願明細書に記載された「比較試料であるLiMn2O4」は、イの記載(・・・「ASTMカードのLiMn2O4と一致する複合酸化物(以下単にLiMn2O4とする。)・・・」)及び、第4図に示されたそのX線回折パターンが、特許権者が提出した乙第1号証に記載されたLiMn2O4のJCPDSカード(ASTMカードにNBSの標準回折値が追加されたもの)のX線回折パターンと良く一致したものであることから、ASTMカードのLiMn2O4にほぼ等しいものといえる。
そこで、本件発明1(前者)と、先願発明(後者)とを対比すると、後者の「負極材」、「LixMnOyなる一般式で表される正極材」、「有機電解液」、及び「有機電解質二次電池」は、前者の「負極」、「リチウム・マンガン酸化物系を含む正極」、「非水電解液」、及び「非水二次電池」に相当し、後者の「比較試料であるLiMn2O4のX線回折パターンと比較すると、極めて類似しているものの主な回折ピークが高角度側にシフトしている構造」は、「アメリカ材料試験協会(ASTM)のカードインデックスに示されたLiMn2O4の主なd値と一致せず、より小さい」ことに相当するから、両者は、「負極と、アメリカ材料試験協会(ASTM)のカードインデックスに示されたLiMn2O4(以下「LiMn2O4(ASTM)」と略称する)の主なd値と一致せず、d値がより小さいリチウム・マンガン酸化物系を含む正極と、非水電解液とを有し、前記正極におけるLi/Mn原子比が0.5〜0.7である非水二次電池。」である点で一致するが、先願明細書には、前者の正極に含まれるリチウム・マンガン酸化物系を規定する構成である「LiMn2O4(ASTM)のd値より0.001〜0.002nm程度小さい」点が記載も示唆もされていない。

この点について、申立人は、平成14年9月12日付け回答書において、先願明細書第3図記載の回折X線強度の主なピーク1〜6を読み取ると、2θ=24.08°,46.96°,57.23°,76.47°,85.48°,及び90.00°であり、甲第2,3号証記載のブラッグ条件、及びFeのKα1の波長を用いてd値を計算すると、d値(nm)=0.464,0.243,0.202,0.156,0.143,及び0.137となるから、LiMn2O4(ASTM)のd値(nm)=0.472,0.247,0.205,0.158,0.145,及び0.139と比較すると、高角度側のピーク4〜6のd値は、いずれも0.002nm小さく、本件発明1のd値と一致しており、ピーク1〜3のd値はLiMn2O4(ASTM)のそれより0.003〜0.008小さいが、低角度側の読取誤差が高角度側の読取誤差よりも大きいことを考慮すると、これらのd値も本件発明1のd値と一致しているということができると主張している。

しかしながら、特許権者が平成14年9月10日付け特許異議意見書に添付した乙第3号証:日本分析化学会X線分析研究懇談会編「粉末X線解析の実際-リートベルト法入門」朝倉書店(2002年2月10日)第29頁の記載によると、Si粉末についてのCuKα特性X線による回折角の系統誤差は、2θに依存し、低角度側でより低角にシフトする、すなわち、よりd値が大きくなるような誤差を生じていること、及び、d値が0.474nmである場合は、甲第2,3号証記載のブラッグの式、及びCuKα1線の波長から、0.003nmの+ の誤差が生じていることが認められる(平成14年12月17日付け訂正請求意見書5.(3)参照)。そして、同乙号証の図2.34から、Si以外のゼオライト-A、シチジンにおいても、2θの低角度側においてはより低角側にシフトする誤差、すなわち、d値に換算すると+の誤差が生じていることが見て取れるから、本件発明1及び先願発明に係るリチウム・マンガン酸化物系においても、同程度の低角度側では同程度の+の誤差が生じているとみなすことができる。
してみると、低角度側の2θ=24.08に対応するd値が0.464nmである先願発明のLixMnOyは、本件発明1におけるリチウム・マンガン酸化物系のd値の下限である0.470(LiMn2O4(ASTM)のd値=0.472より0.001〜0.002小さい)より0.006nm小さい上に、さらに上記+の誤差を考慮すると、実際には0.006nm以上小さいものと認められるから、少なくとも先願発明におけるLixMnOyのピーク1に対応するd値は、本件発明1に規定するd値の条件を満たしていない。
よって、上記申立人の主張は採用できない。

本件発明2,4,8,9,11は、いずれも本件発明1の構成である「LiMn2O4(ASTM)のd値と一致せず、0.001〜0.002nm程度小さいリチウム・マンガン酸化物系」を含む発明であるから、本件発明2,4,8,9,11は、上記と同様の理由により先願発明と同一ではない。

(2)請求項3,10について
本件発明3(前者)と、先願発明(後者)とを対比すると、後者の「負極材」、「LixMnOyなる一般式で表される正極材」、「有機電解液」、及び「有機電解質二次電池」は、前者の「負極」、「リチウム・マンガン酸化物系を含む正極」、「非水電解液」、及び「非水二次電池」に相当し、後者の「比較試料であるLiMn2O4のX線回折パターンと比較すると、極めて類似しているものの主な回折ピークが高角度側にシフトしている構造」は、前者の「LiMn2O4よりも格子収縮した構造」に相当するから(上記3-4.(1)参照)、両者は、ともに、「負極と、リチウム・マンガン酸化物系を含む正極と、非水電解液とを有し、前記正極における酸化物系が、Li/Mn原子比が0.5〜0.7であり、LiMn2O4よりも格子収縮した構造である非水二次電池。」という構成を有するものである。
したがって、本件発明3は、先願発明と同一である。

なお、特許権者は、平成14年6月20日付け及び平成14年9月10日付け特許異議意見書において、先願明細書中の「Li0.56MnO2.185」(一般式LixMnOyの具体例)は、第4図記載のスピネル構造を有する「LiMn2O4」と全く相違し、「回折角2θ=46.1゜,56.1゜近傍の回折ピークが高角度側にシフトしている」は、本件発明3の要件である「LiMn2O4よりも格子収縮した構造である」と同義ではなく、試料1のX線回折パターン(第3図)は、比較試料のX線回折パターン(第4図)と全く類似するところはなく、回折パターンの全体が高角度側にシフトしている事実のみならず、回折角2θ=46.1゜,56.1゜近傍の回折ピークが高角度側にシフトしている事実すら認めることはできない旨主張している。

しかしながら、先願明細書第3図には、「Li0.56MnO2.185」のX線回折パターンとして、同第4図記載の比較試料であるLiMn2O4のX線回折パターンにおいて相対強度がより大きな主たる6個のピーク(46.1゜,56.1゜を含む)に対応する高角度側にシフトした6個のよりブロードな回折ピークが示されており、第4図記載のその他のより相対強度の小さいピークに対応するピークが第3図において明りょうでない、または検出されていないのは、第3図に係るLi0.56MnO2.185が第4図に係るLiMn2O4よりは化学量論比がずれて結晶性が低く、その結晶格子に対応する回折ピークがよりブロードになっているから、バックグラウンドから識別して検出されづらい、または検出不可能であるためとすることが合理的であるから、先願明細書中の「Li0.56MnO2.185」は、第4図記載の「LiMn2O4」と類似であり、「LiMn2O4よりも格子収縮した構造である」ことが、3図から充分に読み取れるものであって、上記特許権者の主張は受け入れることができない。

本件発明10は、本件発明3に係る非水二次電池の構成の一部をなす正極材料に係る発明であるから、上記と同様の理由により先願発明と同一である。

3-5.特許法第36条違反について
実施例2,3に記載されたLi/Mn原子比が0.3〜0.4の原料を秤取して正極を作成しても、Li/Mn原子比が0.5よりも大きいリチウム・マンガン酸化物系とともにMnO2等を含む正極を得られることが想定されるから、実施例2,3は、正極、又は正極材料におけるLi/Mn原子比が0.5よりも大きいとする本件発明1,8の実施例にはなり得なくても、正極における酸化物系、又は正極材料における酸化物が、Li/Mn原子比が0.5よりも大きいとする本件発明3,10の実施例となり得るものである。
よって、実施例と請求項との記載間に矛盾はなく、また、他に本件特許の明細書及び図面に格別の不備があるということもできない。

3-6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1,2,4,8,9,11に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1,2,4,8,9,11に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件請求項3,10に係る発明は、先願明細書に記載された発明と同一であって、しかも、この出願の発明者がその先願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記先願の出願人と同一でもないので、本件請求項3,10に係る発明の特許は同法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法113条第2号に該当し、特許を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
非水二次電池
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 負極と、アメリカ材料試験協会(ASTM)のカードインデックスに示されたLiMn2O4のd値と一致せず、0.001〜0.002nm程度小さいリチウム・マンガン酸化物系を含む正極と、非水電解液とを有し、前記正極におけるLi/Mn原子比が0.5よりも大きいこと(Li/Mn原子比が2.0を除く)を特徴とする非水二次電池。
【請求項2】 負極と、アメリカ材料試験協会(ASTM)のカードインデックスに示されたLiMn2O4のd値と一致せず、0.001〜0.002nm程度小さいリチウム・マンガン酸化物系を含む正極と、非水電解液とを有し、前記正極におけるリチウム・マンガン酸化物が、
LixMnyO4(x≦1+(2-y)、y<2)
の状態を有することを特徴とする非水二次電池。
【請求項3】 負極と、リチウム・マンガン酸化物系を含む正極と、非水電解液とを有し、前記正極における酸化物系が、Li/Mn原子比が0.5よりも大きく、LiMn2O4よりも格子収縮した構造であることを特徴とする非水二次電池。
【請求項4】 請求項1において、
前記正極が、更に、MnO2を含むことを特徴とする非水二次電池。
【請求項5】 請求項1において、
前記正極が、更に、Li2MnO3を含むことを特徴とする非水二次電池。
【請求項6】 請求項1において、
前記正極が、更に、LiMn2O4を含むことを特徴とする非水二次電池。
【請求項7】 請求項4において、
前記MnO2が、ε-MnO2、γ-MnO2、γ-β-MnO2、又はβ-MnO2であることを特徴とする非水二次電池。
【請求項8】 アメリカ材料試験協会(ASTM)のカードインデックスに示されたLiMn2O4のd値と一致せず、0.001〜0.002nm程度小さいリチウム・マンガン酸化物系の正極用材料であって、前記正極用材料におけるLi/Mn原子比が0.5よりも大きいこと(Li/Mn原子比が2.0を除く)を特徴とする非水二次電池用Li・Mn複合酸化物。
【請求項9】 アメリカ材料試験協会(ASTM)のカードインデックスに示されたLiMn2O4のd値と一致せず、0.001〜0.002nm程度小さいリチウム・マンガン酸化物系の正極用材料であって、前記正極用材料における酸化物が、LixMnyO4(x≦1+(2-y)、y<2)の状態を有することを特徴とする非水二次電池用Li・Mn複合酸化物。
【請求項10】 リチウム・マンガン酸化物系の正極用材料であって、前記正極用材料における酸化物が、Li/Mn原子比が0.5よりも大きく、LiMn2O4よりも格子収縮した構造であることを特徴とする非水二次電池用Li・Mn複合酸化物。
【請求項11】 請求項8において、
前記正極用材料が、更に、MnO2含むことを特徴とする非水二次電池用Li・Mn複合酸化物。
【請求項12】 請求項8において、
前記正極用材料が、更に、Li2MnO3を含むことを特徴とする非水二次電池用Li・Mn複合酸化物。
【請求項13】 請求項8において、
前記正極用材料が、更に、LiMn2O4を含むことを特徴とする非水二次電池用Li・Mn複合酸化物。
【請求項14】 請求項11において、
前記MnO2が、ε-MnO2、γ-MnO2、γ-β-MnO2、又はβ-MnO2であることを特徴とする非水二次電池用Li・Mn複合酸化物。
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、非水電解液を用いた二次電池に係りLiを含むマンガン酸化物を正極活物質に用いた高エネルギー密度の二次電池に関する。
〔従来の技術〕
従来よりLiを活物質とし、非水電解液を用いる二次電池は、電圧が高く、軽量で既存の電池に比較して高いエネルギ密度をもつため注目されている。この種の電池の正極活物質は、充放電反応がLi+イオンの正極結晶構造内へのトポケミカルな挿入放出反応で示され、層状、あるいは、トンネル構造をもつ無機化合物が多い。MnO2も、このトポケミカル反応を利用する正極活物質の一つである。しかし、MnO2は、Li+イオンの挿入による結晶の膨張が著しく、充放電を繰返すうちに、構造が崩壊し、容量が低下する欠点をもつている。このため、MnO2結晶構成の強化,改善が検討されている。例えば、MnO2へのLiのドープ(特開昭62-108455号,特開昭62-108457号,特開昭62-160657号公報),LiMn2O4スピネルからMnO2を調整する(特開昭58-34414号公報)、過塩素酸リチウムと過マンガン酸カリウムから得た過マンガン酸リチウムカリウム塩を熱分解して得たリチウム含有二酸化マンガン(LiyMnO2,y=0.3〜0.8)を使用する(特開昭62-20250号公報)等が知られている。しかし、これらは、二次電池の正極として要求される充放電容量,充放電サイクル特性に比べて充分とは言えない。
〔発明が解決しようとする課題〕
二次電池の正極では、充放電におけるLiの出し入れの可逆性が良好であること、充放電容量が大きいこと、電池電圧の平坦性が良いことが必要である。MnO2は、初期の充放電容量は大きいが、可逆性,平坦性に劣る。LiMn2O4に代表されるスピネル構造は、可逆性,平坦性は良好であるが、充放電容量は、MnO2に比べて小さい。本発明の目的は、上記の三つの条件を満たす正極活物質を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明のLi・Mn複合酸化物は、従来公知のLiMn2O4(スピネル構造)とは一致しないX線回折模様をもつ。本発明のLi・Mn複合酸化物のX線回折模様とLiMn2O4のX線回折模様との相違点は、格子収縮を示す僅少なピーク変位が見られることにある。この格子収縮は、LiMn2O4からLi、およびMnが抜けて、空の陽イオンサイトができていることを意味する。この新規なLi・Mn複合酸化物は、放電時に、Li+イオンが、空の陽イオンサイトに挿入することから、LiMn2O4よりも大きな放電容量を得ることができる。又、この時の電圧は、平坦性がよく、さらに、充放電サイクルの可逆性が、良好である。本発明のLi・Mn複合酸化物と、従来公知のLixMn2O4(x≦1)との相違点は、Mnの空格子点を持つ分、放電容量が増大することにある。

の反応が起こる電位が、Li基準で4V付近であるのに対し、

の反応の起こる電位が、Li基準で3V付近であることから、より低い充電電位で、容量が増大する。
以上のように、本発明のLiを含むマンガン酸化物は、LiMn2O4とは異なり、(1)LiMnyO4でy<2が条件として含まれること、(2)Li{1+(2-y)}MnyO4というLiとMnの比が化学量論組成の1:2ではなく、{1+(2-y)}:y(y<2)という非化学量論組成の物質が充放電に関与していること、(3)LiMn2O4においてはLiは1であるが、Li{1+(2-y)}MnyO4においてはLiは(2-y)の分だけ1より大であることが違いとして上げられる。
すなわち、Li/Mnの比が1/2(すなわち0.5)よりも大であることが本発明の特徴である。
X線回折法は結晶構造確定のための公知の確実なテスト法である。代表的X線回折模様中の回折線の位置は、多くの場合、d値で示され、結晶中の面間隔に対応する。本発明の物質のX線回折模様の測定には通常の粉末回折技術を適用した。X線源にはCuKα線を用いた。回折線のd値は、回折免と放射線の波長とから計算した。本発明のLi・Mn複合酸化物によれば、0.471±0.005nm(強),0,245±0.002nm(中),0.203±0.001nm(中),0.157-0.001nm(弱),0.144-0.001nm(弱),0.138-0.001nm(弱),0.118-0.001nm(弱)のd値をもつX線回折模様を示す。
〔作用〕
本発明のLi・Mn複合酸化物は、Li、及び、Mnの空の陽イオンサイトを持つので、この部分にLiが挿入可能であるため高容量が得られる。Li、及び、Mnの空の陽イオンサイトを持つということは、LixMnyO4において、x≦1+(2-y)、y<2の関係を満たすことである。又、Liの出入りに対し、強固な結晶であるため、MnO2のような、Liの挿入による膨張がほとんどなく、充放電サイクルの可逆性が良好である。又、従来公知のLixMnO2(x≦1)と比べて、Li基準で3V付近の電池電圧の容量が二倍近く増加し、平坦性に優れている。
〔実施例〕
〈実施例1〉
LiOHもしくはLi2CO3とMnO2をLi/Mn原子比が0.8となるように秤量し、400〜500℃で五十時間焼成した。これのX線回折を測定したところ第1表に示したように、アメリカ材料試験協会(ASTM)のカードインデツクスに示されたLiMn2O4の公差d値と一致せず、0.001〜0.002nm程度小さいLi・Mn複合酸化物が得られた。

この他に、Li2MnO3と同定できるピークも観察され、これを正極活物質とし、カーボン14wt%,PTFE粉末15wt%を加えて15mmφのデイスク状に成型,260℃で五時間真空乾燥した。この成型品を正極,Li鉛合金を負極とする第1図に示すようなコイン型の電池を組み立てた。本電池は、Li鉛合金よりなる負極1,ポリプロピレン製不織布よりなるセパレータ2,正極3,及びセパレータ2に含浸したLiPF6のプロピレンカーボネート,エチレンカーボネート、及び1,2-ジメトキシエタン溶液よりなり、これらは負極ケース4,ガスケツト5、及び、正極ケース6により密閉されている。この電池で電流2.5mAで2Vまで放電し、同じく電流2.5mAで4Vまで充電する操作を繰り返したところ、電池の放電容量は、第2図Cのように推移し、容量が160Ah/kg活物質量を保つたまま一定であつた。10サイクル目の充放電カーブを第3図Cに示す。3V付近の平坦部分の容量が大きい。
〈実施例2〉
LiOHもしくはLi2CO3とMnO2を、Li/Mn原子比が0.3〜0.4となるよう秤取し、400℃で50h焼成した。これのX線回折を測定したところ、実施例1と同じく、Li・Mn複合酸化物と、LiMn2O3とε-MnO2が認められた。これを活物質とし、実施例1と同様の方法でコイル型電池を作製し、充放電を繰り返したところ、電池の充放電容量は、160Ah/kg活物質量が得られた。容量が50Ah/kg活物質量に低下するまでに220サイクルの充放電が可能であつた。
〈実施例3〉
LiOHもしくはLi2CO3とMnO2を、Li/Mn原子比が0.4となるように秤取し、酸素気流中で500℃で50h焼成した。これのX線回折を測定したところ、実施例1と同じLi・Mn複合酸化物が得られた。これを活物質とし、実施例1と同様の方法でコイン型電池を作製し、充放電を繰り返したところ、第2図Dのように推移し、容量が100Ah/kg活物質量に低下するまでに280サイクルの充放電が可能であつた。10サイクル目の充放電カーブを第3図dに示す。3V付近の平坦部分だけで200Ah/kg活物質量の高い放電容量が得られた。
〈実施例4〉
あらかじめLiMn2O4を調整し、これを酸素分圧25〜50%の空気中で焼成する。これのX線回折を測定とたところ、実施例1と同じLi・Mn複合酸化物と、LiMn2O4が認められた。これを活物質とし、実施例1と同様の方法でコイン型電池を作製し、充放電を繰り返したところ、200Ah/kg活物質量の容量が得られた。容量が100Ah/kg活物質量に低下するまでに、200サイクルの充放電が可能であつた。
〈比較例1〉
LiOHもしくはLi2CO3をLi/Mn原子比0.4となるように秤量し、LiMn2O4を焼成した。この焼成したもののX線回折を測定したところ第1表に示したように、ASTMカードLiMn2O4のd値とほぼ一致した値を得た。これを実施例1と同様の方法で正極とし、コイン型電池を作製,充放電を繰り返したところ、電池の放電容量は、実施例3の本発明Li・Mn複合酸化物と比べて160Ah/kg活物質量と低い。又、第2図Aに示すように容量が100Ah/kg活物質量に低下するまでに、120サイクルの充放電しかできなかつた。10サイクル目の充放電カーブを第3図aに示す。実施例3と比べて、3V付近の平坦部分の容量が小さい。このようにして、本発明のLi・Mn複合酸化物は、LiMn2O4と比べて、放電容量がおよそ1.6倍(3Vの低電位側だけの容量では二倍)も大きい。
〈比較例2〉
MnO2単独を350℃で10時間焼成し、実施例1と同様の方法で正極とし、コイル型電池を作製,充放電を繰り返したところ、電池の放電容量は、第2図Bのように急激に低下した。10サイクル目の充放電カーブを第3図bに示す。平坦な部分が得られないことがわかる。
〔発明の効果〕
本発明のLi・Mn複合酸化物を正極に用いれば、充放電におけるLiの出し入れの可逆性が良好で、かつ、放電容量がLiMn2O4スピネルの二倍近く大きい、長寿命,高容量の二次電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の一実施例の二次電池の断面図、第2図は、比較例1,2及び実施例1,3において作成した二次電池の放電容量の充放電サイクル数に対する変化を示したグラフ、第3図は比較例1,2及び実施例1,3において作成した二次電池の10サイクル目の充放電カーブを示したグラフである。
1……負極、2……セパレ-タ、3……正極、4……負極ケース、5……ガスケツト、6……正極ケース。
 
訂正の要旨 ▲1▼訂正事項1
特許請求の範囲の【請求項1】、【請求項2】、【請求項8】、及び【請求項9】の「リチウム・マンガン酸化物系」を、特許請求の範囲の減縮又は明瞭でない記載の釈明を目的として、「アメリカ材料試験協会(ASTM)のカードインデックスに示されたLiMn2O4のd値と一致せず、0.001〜0.002nm程度小さいリチウム・マンガン酸化物系」と訂正する。
▲2▼訂正事項2
特許請求の範囲の【請求項1】の「非二次電池」を、誤記の訂正を目的として、「非水二次電池」と訂正する。
▲3▼訂正事項3
出願当初明細書の第8頁の第1表に、明瞭でない記載の釈明を目的として、枠を書き加える。
異議決定日 2003-01-31 
出願番号 特願平1-178134
審決分類 P 1 652・ 531- ZD (H01M)
P 1 652・ 534- ZD (H01M)
P 1 652・ 161- ZD (H01M)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 石井 淑久種村 慈樹  
特許庁審判長 松本 悟
特許庁審判官 酒井 美知子
吉水 純子
登録日 2000-10-20 
登録番号 特許第3120984号(P3120984)
権利者 株式会社日立製作所
発明の名称 非水二次電池  
代理人 平木 祐輔  
代理人 高橋 英生  
代理人 武山 吉孝  
代理人 鈴木 隆盛  
代理人 浅見 保男  
代理人 平木 祐輔  

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