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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
審判 一部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1077930
異議申立番号 異議2002-70768  
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-05-13 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-03-25 
確定日 2003-03-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3211246号「投影露光装置及び素子製造方法」の請求項3ないし5、9ないし11に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3211246号の請求項3に係る特許を取り消す。 同請求項4、5、9ないし11に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3211246号に係る発明は、平成2年9月29日に特許出願され、平成13年7月19日にその特許の設定登録がされ、その後、異議申立人株式会社ニコンより特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年7月30日に訂正請求がなされ、その後、再度の取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年11月11日に意見書が提出されたものである。
1.1 異議申立ての概要
異議申立人株式会社ニコンは、甲第1号証(特開昭59-94032号公報)、甲第2号証(実願昭56-186350号(実開昭58-91746号公報)のマイクロフィルム)及び甲第3号証(特開昭62-42422号公報)を提出し、本件請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件請求項3〜5及び9〜11に係る発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基いて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、本件請求項3〜5及び9〜11に係る特許を取り消すべき旨主張している。
1.1.1 異議申立人株式会社ニコンが提出した甲第1号証の内容
甲第1号証の第1頁左欄第17行から右欄第9行には、「本発明は、結像光学系の光学的な特性を測定する装置に関し、特に集積回路のマスクパターンを半導体基板上に投影露光する装置の投影光学系に適した測定装置に関するものである。
大規模集積回路(LSI)パターンの微細化は年々進行しているが、微細化に対する要求を満たし、かつ生産性の高い、回路パターン焼付け装置として縮小投影型露光装置が普及してきている。従来より用いられてきたこれらの装置においては、シリコンウェハ等(以下ウェハと称する)に焼付けされるべき…パターンが投影レンズによって縮小投影され、1回の露光で焼付けされる」と記載されている。
また甲第1号証の第2頁左下欄第1行から右下欄第7行には、「第1図は本発明の実施例が適用される投影型露光装置の概略図である。露光用の照明光源1からの照明光は第1のコンデンサーレンズ2によって一度収束された後、第2のコンデンサーレンズ3に達する。その光路中、光が収束される位置には照明光を遮断、通過するためのシャッター4が設けられている。そして、第2のコンデンサーレンズ3を通った光束は、マスクとしてのテスト・レチクル5(以下単にレチクル5とする)を照明する。レチクル5の下面には予め定められた複数の位置に、光透過性のマークM11〜M16が描かれている。このレチクル5のマークM11〜M16を透過した光束l1は、光学的な特性を測定すべき結像光学系としての投影レンズ6に入射する。この投影レンズ6はレチクル5側、すなわち物体側が非テレセントリックで、像側がテレセントリックな光学系である。光束l1は投影レンズ6によって集束されて、光束l2となって射出する。尚、レチクル5の下面と投影レンズ6の主平面6aとの間隔はLとする。そして、光束l2は2次元移動可能なステージ7に設けられた微小開口8上に結像される。さらに微小開口8を通った光はステージ7に設けられた光電検出器9によって光電変換される。また、ステージ7は普段は半導体ウヱハ10を載置して2次元移動するものであり、ウェハ10は、ステージ7と一体に2次元移動するウェハホルダ11上に載置される。」と記載されている。
また甲第1号証の第6頁右下欄第6行から第16行には「そこで、本発明の他の実施例として、光電検出器9を用いて投影されたマーク像のコントラストから焦点検出する場合について説明する。この場合には、ウェハの上下動機構Z-ACT38により同時に微小開口8と光電検出器9が上下されることを利用し、投影レンズ6の焦点深さの長さを数等分するような距離だけ微小開口8を上下方向に移動しては、ステージ7を走査して像の強度分布を計測する動作を繰り返す。そして、像の強度分布における立上り又は立下りの幅が最小になる焦点状態を求めるようにする。」と記載されている。
また甲第1号証の第7頁左下欄第10行から第17行には「また、第2図に示したレチクル5の複数の十字マークを用いて、投影レンズ6の有効露光領域内における種々の位置で、合焦位置を調べることによって、露光領域中の結像面の微小な凹凸分布や、焦点深度分布等がただちに測定できる。従って、その測定データによって、投影レンズ6のステージ7の移動平面(xy座標系)に対する光軸の倒れを確認することもできる。」と記載されている。
さらに甲第1号証の第3頁右上欄第1行から右下欄第1行には「さて、第2図は第1図に示したレチクル5の平面図である。レチクル5はガラス基板の下面に図中斜線部のようにクロム層又は低反射クロム層を全体に蒸着することにより構成されている。そして、そのクロム層には光が通るようなマークMとしての十字マークが6×6の正方のマトリックス状に形成されている。これら十字マークの中心位置は、レチクル5上の座標系0-XYにおいて約0.1μm以下の誤差で予め他の測定機器によって測定されているものとする。また十字マークの各中心位置は、座標軸X、Yに対して夫々線対称となり、かつレチクル5の中心である原点0に対して点対称となるように定められている。尚、これら十字マークを識別するために、レチクル5の最上列のマークをM11、M12、…M16とし、その下の列のマークをM21、M22、…M26とするように順次定める。従ってレチクル5上の十字マークは一般にMij(ただしi,jは1〜6)で特定するものとし、その十字マークの中心位置はMijに対応してPij(ただしi,jは1〜6)とする。
また第3図はステージ7に設けられた微小開口8を形成する遮光部材の平面図と、そのA-A矢視断面図である。微小開口8は、ガラス板20上にクロム層21を厚さ0.1μm程度に蒸着し、その一部に2つのスリット開口8a,8bを形成したものである。このクロム層21の厚さは投影レンズ6の焦点深度(数μm)より十分薄い。さてスリット開口8aと8bの延長方向は互いに直交するように定められ、かつ、各々ステージ7の移動方向xyと一致するように定められている。尚、y軸方向に沿って細長く延びたスリット開口8aは投影された十字マークMijの投影像のx方向の位置を検出するのに使用され、x軸方向に沿って細長く延びたスリット開口8bは、十字マークMijの投影像のy方向の位置を検出するのに使用される。」と記載されている。
1.1.2 異議申立人株式会社ニコンが提出した甲第2号証の内容
甲第2号証の第3頁第17行から第5頁第2行には、「第1図は通常の縮小投影露光装置に本考案を適用した具体例を示す。図において、レテイクル載置台16上に、既知であるマーク群を有するレテイクル1を設置し、該レテイクル1と縮小投影レンズ3との間に特定の基準マークの投影光10のみを縮小投影レンズ3に導くための遮光板2を設置している。被露光物を保持する載置台8において、上記の基準アークの縮小投影像と位置比較するための遮光材より成る評価用パターン14と、これを支持する光透過可能な光学材料4とにより構成される評価用マスクを該載置台8上に設置し、かつ、上述の評価用パターン像と基準マーク縮小投影像を拡大するためのレンズ5と像検出のためのテレビカメラ6とを載物台上に設置している。縮小投影用光源(図示せず)を点燈し、光9によってレテイクル1を露光照明すると、テレビカメラ6には、第2図に示すごとく、レテイクル1上の基準マーク像12と評価用パターン像13が拡大投影され、出力映像信号15が、処理回路に転送される。処理回路において、該検出像より、各像の中心位置が測定される。…」と記載されている。
また甲第2号証の第5頁第3行から第6頁第2行には、「上述のように、特定の基準マークの縮小投影像の中心位置測定後、レテイクル1は移動せず、遮光板2を移動し、別の基準マークを縮小投影レンズに導くように遮光板2を設定する。これに伴ない、載物台8を支持しているXY移動台により、上記の基準マークの縮小投影像の中心位置が検出できるように、載物台8上の評価用パターン14を移動する。これにより、上述の説明と同様に、基準マークの縮小投影像の中心位置が測定できる。第3図は、上述の測定方式を説明するための概略図である。上述の説明と第3図とにより、本考案の測定方式を要約すると、本考案は、各基準マークの中心位置が既知であるレテイクル1と縮小投影レンズ3とを固定し、遮光板2により基準マークを1つづつ選択し、縮小投影レンズ3に導くとともに、載物台8を移動させ、基準マークの縮小投影像の中心位置を評価用パターン14と、拡大光学系、像検出系および載物台8位置測定用レーザ干渉測長器により算出し、縮小投影像の2次元分布を測定するものである。」と記載されている。
また甲第2号証の第6頁第18行から第7頁第9行には「なお、遮光板の形状や移動方法は4枚の遮光板により部分的に窓を形成するものあるいは一部穴開けを施した板状のものを移動する方法などが考えられる。また、基準マークや評価用パターンは、上記説明以外の形状も考えられるが、基準マークの中心位置あるいは端面が測定可能なものであれば、本考案の範囲を逸脱しない。また、本考案の具体例ではレテイクルと縮小投影レンズとの間に遮光板を設けたが、レテイクルの基準マークと反対側に遮光板を設定すること、あるいは遮光板を設けずして像歪を測定しても本考案と何ら変りはない。」と記載されている。
1.1.3 異議申立人株式会社ニコンが提出した甲第3号証の内容
甲第3号証の第3頁左上欄第9行から右下欄第5行には、「第1図は本発明の実施例による縮小投影型露光装置の概略的な構成を示す図である。光源としての水銀ランプ1からの光は楕円鏡2で集光され、ダイクロイックミラー3で反射された後、4枚の羽根を有するロータリーシャッターに至る。シャッター4を通過した光束はフライアイ・レンズ等を含むオプチカル・インテグレータ5に入射し、多数の2次光源像を形成する。オプチカル・インテグレータ5から射出した光は、ダイクロイックミラ-6で反射され、メイン・コンデンサレンズ7に入射する。コンデンサレンズ7の下方には4枚の独立可動のブレードを有する照明視野絞りとしてのレチクルブラインド8が設けられている。コンデンサレンズ7からの光は、マスクとしてのレチクル12を均一な光強度で一様に照明する。コンデンサレンズ7とレチクルブラインド8との間には、レチクル12を装置本体に対して位置合わせするための検出光学系としてのレチクルアライメント顕微鏡(以下R-Micと呼ぶ)9が設けられている。第1図ではR-Mic9しか示していないが、実際にはレチクル12のx方向とそれに直交するy方向との2次元的な位置ずれを、レチクル12の十字状マークを検出して求めるための顕微鏡Rxy-Mic9aと、十字状マークとは異なる位置に設けられた線状のマークを検出して、レチクル12の回転方向の位置ずれを求めるための顕微鏡Rθ-Mic9bとの2本が用意されている。さて、レチクル12に描かれた回路パターン等の像は、縮小投影レンズ21によって所定の結像面内に形成される。結像面内に位置するウェハ16はx、y方向に2次元移動するステージ17上に保持され、ステージ17はモータ19によって駆動される。そしてステージ17の座標位置は、レーザ干渉計18によって常に計測されている。このステージ17上には各種アライメント顕微鏡間のベースラインを計測するときに使われる基準マークFMを備えたマーク板15が固定されている。マーク板15はガラス基板の表面にクロム等の光反射性の層を形成し、その層の一部分をエッチングして基準マークFMを設けたものである。このマーク板15の表面はベースライン測定時には、投影レンズ21の結像面と一致するように高さ方向の調整が行なわれる。さらに本実施例の装置には、レチクル12上に設けられたダイ・バイ・ダイ・アライメント用のマークと、ウェハ16上に設けられたダイ・バイ・ダイ・アライメント用のマークの投影レンズ21による逆投影像(拡大像)とを重ね合わせて観察するためのステップ・アライメント顕微鏡(以下S-Micと呼ぶ)11が、レチクル12の直上の露光光路内に進退可能に配置されている。S-Micllは第1図では1つしか示していないが、レチクル12上の異なる2ケ所に設けられたx方向用のステップ・マークとy方向用のステップ・マークの夫々を別々に検出するように、顕微鏡Sx-Micllaと顕微鏡Sy-Micllbとの2本が設けられている。」と記載されている。
また甲第3号証の第7頁左下第6行から右下欄第2行には「次に本発明の第2の実施例を第8図を用いて説明する。本実施例ではレチクルアライメント顕微鏡を使用する際の照明光の減光手段として、レチクルブラインド8を用いる。ブラインド8は第8図に示すように4枚の矩形状のブレード8a、8b、8c、8dから成り、ブレード8a、8bはy方向に直線移動可能であり、ブレード8c、8dはx方向に直線移動可能である。第8図に示すように、レチクルアライメント顕微鏡Rxy-Mic9a、Rθ-Mic9bを使用する際は、Rθ-Mic9b側に位置するブレード8aはほぼ全開にされ、Rθ-Mic9bの反対側に位置するブレード8bはRxy-Mic9aの視野を遮断しない位置まで繰り出され、Rxy-Mic9a側に位置するブレード8dはほぼ全開にされ、そしてRxy-Mic9aの反対側に位置するブレード8cはRθ-Mic9bの視野を遮断しない位置まで繰り出される。」と記載されている。
また甲第3号証の第2頁左下第18行から右上欄第5行には、「この種の投影レンズは、露光用の照明光が入射することによって、その光の一部を熱として吸収し、焦点位置や結像倍率などの結像特性が変化する。このためベースライン測定時又はレチクルアライメント時に、投影レンズに露光用の照明光を多量に入射させた状態では、計測したベースライン測定値の精度又はレチクルアライメント精度が悪化してしまうといった欠点があった。」と記載されている。
また甲第3号証の第2頁右下第18行から第3頁左上欄第7行には、「投影光学系を介して結像面に位置する物体のアライメント用のパターンを光学的に検出する検出光学系(本発明の実施例におけるレチクル・アライメント顕微鏡)とを備えた装置において、その検出光学系の検出動作(パターンの観察、又は光電検出)に影響を与えない程度に投影光学系に入射する照明光の量を低下(光強度の一様な低下、又は入射面積の低下)させる減光手段(シャッター、又は照明視野絞り)を設けることを技術的要点としている。」と記載されている。
2.訂正の適否について
本件訂正請求は、本件特許第3211246号の明細書(以下、「特許明細書」という。)を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに、訂正しようとするものである。
2.1 訂正事項
訂正事項a
特許明細書の請求項4における「前記任意の測定用パターンからの光を前記投影光学系を介して前記可動ステージの検出手段に入射させる照明手段と、前記各測定用パターンに関する前記各検出手段の受光素子の出力に基づいて、」を、「該測定用パターンからの光を前記投影光学系を介して前記可動ステージの検出手段に入射させる照明手段と、前記各測定用パターンに関する前記検出手段の受光素子の出力に基づいて、」と訂正する。
訂正事項b
特許明細書の請求項5における「請求項1〜4の投影露光装置。」を、「請求項1、2又は4の投影露光装置」と訂正する。
訂正事項c
特許明細書の請求項10における「ピント位置検出用のラインアンドスペースパターンと有する」を、「ピント位置検出用のラインアンドスペースパターンとを有する」と訂正する。
訂正事項d
特許明細書の請求項11における「請求項1から10のいずれか1項記載の」を、「請求項1、2、4〜10のいずれか1項記載の」と訂正する。
訂正事項e
特許明細書における平成13年4月23日付け手続補正書第4頁第23行の「ラインアンドスペースパターンと有する」を、「ラインアンドスペースパターンを有する」と訂正する。
訂正事項f
特許明細書第24頁第19行目、第25頁第7行〜第8行目及び第25頁第13行目における「入/4板」を「λ/4板」と訂正する。
訂正事項g
特許明細書における平成13年4月23日付け手続補正書の第3頁第20行目〜第23行目の「前記任意の測定用パターンからの光を前記投影光学系を介して前記可動ステージの検出手段に入射させる照明手段と、前記各測定用パターンに関する前記各検出手段の受光素子の出力に基づいて、」を、「該測定用パターンからの光を前記投影光学系を介して前記可動ステージの検出手段に入射させる照明手段と、前記各測定用パターンに関する前記検出手段の受光素子の出力に基づいて、」と訂正する。
2.2 訂正請求後の請求項4、5、10及び11
請求項4
「被露光基板を保持する可動ステージと、照明系により照明されたレチクルのパターンを前記基板上に投影する投影光学系とを有する投影露光装置において、
前記レチクルまたは像面湾曲測定用のレチクルの複数の測定用パターンを露光波長と同じ波長の光で順次照明することで、各測定用パターン毎に、該測定用パターンからの光を前記投影光学系を介して前記可動ステージの検出手段に入射させる照明手段と、
前記各測定用パターンに関する前記検出手段の受光素子の出力に基づいて、前記投影光学系の有効画面内の前記各測定用パターンに対応する位置での前記投影光学系の像面位置を検出することを特徴とする投影露光装置。」
請求項5
「前記照明系と前記照明手段とは前記レチクル上の照明領域を変え得る照明領域可変機構を備える光学系を兼用しており、該照明領域可変機構を用いて前記複数の測定用パターンのそれぞれの位置を照明することを特徴とする請求項1、2又は4の投影露光装置。」
請求項10
「前記複数の測定用パターンはそれぞれ、サジタル方向のピント位置検出用のラインアンドスペースパターンとメリジオナル方向のピント位置検出用のラインアンドスペースパターンとを有することを特徴とする請求項9の投影露光装置。」
請求項11
「請求項1、2、4〜10のいずれか1項記載の投影露光装置を用いてレチクルの回路パターンでウエハを露光し、その後、該ウエハを現像処理する工程を有することを特徴とする素子製造方法。」
2.3 訂正の適否
2.3.1 訂正事項a
上記訂正事項aについては、特許明細書の請求項1の「前記任意の計測用パターン」及び「前記各検出手段」を、それぞれ、「該測定用パターン」及び「前記検出手段」と訂正するものであり、明りょうでない記載の釈明に当たる。
また、上記訂正事項aは、特許明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。
2.3.2 訂正事項b
上記訂正事項bについては、特許明細書の請求項5の「請求項1〜4」を、「請求項1、2又は4」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮に相当する。
また、上記訂正事項bは、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。
2.3.3 訂正事項c
訂正事項cは、特許明細書の請求項10における「ピント位置検出用のラインアンドスペースパターンと有する」を、「ピント位置検出用のラインアンドスペースパターンとを有する」と訂正するものであり、明らかな誤記の訂正に当たる。
また、上記訂正事項cは、特許明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。
2.3.4 訂正事項d
上記訂正事項dについては、特許明細書の請求項11の「請求項1から10のいずれか1項記載の」を、「請求項1、2、4〜10のいずれか1項記載の」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮に相当する。
また、上記訂正事項dは、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。
2.3.5 訂正事項e及びg
訂正事項e及びgは、上記訂正事項c及びaの特許請求の範囲の訂正による明細書の発明の詳細な説明と特許請求の範囲との不一致を解消するものである。
従って、訂正事項e及びgについては、明りょうでない記載の釈明に相当する。
また、上記訂正事項e及びgは、特許明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。
2.3.6 訂正事項f
訂正事項fは、特許明細書の「入/4板」を、「λ/4板」と訂正するものであり、明らかな誤記の訂正に当たる。
また、上記訂正事項fは、特許明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。
2.4 訂正の適否の判断
上記訂正事項a〜gは、上記2.3.1〜2.3.6のとおりであるから、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、改正前の特許法第126条第1項ただし書、同条第2項の規定に適合する。
従って、当該請求を認める。
3.特許異議申立てについての判断
3.1 異議申立に係る、本件請求項3〜5及び9〜11に係る発明
請求項3
「被露光基板を保持する可動ステージと、照明系により照明されたレチクルのパターンを前記基板上に投影する投影光学系とを有する投影露光装置において、
前記レチクルまたは像面湾曲測定用のレチクルの複数の測定用パターンのうちの任意の測定用パターンを露光波長と同じ波長の光で照明することで、前記任意の測定用パターンからの光を前記投影光学系を介して前記可動ステージの検出手段に入射させる照明手段と、
前記検出手段の受光素子の出力に基づいて、前記投影光学系の有効画面内の前記任意の測定用パターン位置に対応する位置での前記投影光学系の像面位置を検出することを特徴とする投影露光装置。」
請求項4
「被露光基板を保持する可動ステージと、照明系により照明されたレチクルのパターンを前記基板上に投影する投影光学系とを有する投影露光装置において、
前記レチクルまたは像面湾曲測定用のレチクルの複数の測定用パターンを露光波長と同じ波長の光で順次照明することで、各測定用パターン毎に、該測定用パターンからの光を前記投影光学系を介して前記可動ステージの検出手段に入射させる照明手段と、
前記各測定用パターンに関する前記検出手段の受光素子の出力に基づいて、前記投影光学系の有効画面内の前記各測定用パターンに対応する位置での前記投影光学系の像面位置を検出することを特徴とする投影露光装置。」
請求項5
「前記照明系と前記照明手段とは前記レチクル上の照明領域を変え得る照明領域可変機構を備える光学系を兼用しており、該照明領域可変機構を用いて前記複数の測定用パターンのそれぞれの位置を照明することを特徴とする請求項1、2又は4の投影露光装置。」
請求項9
「前記投影光学系の有効画面内の複数位置での前記投影光学系の像面位置から前記投影光学系の像面湾曲を検出することを特徴とする請求項2又は4の投影露光装置。」
請求項10
「前記複数の測定用パターンはそれぞれ、サジタル方向のピント位置検出用のラインアンドスペースパターンとメリジオナル方向のピント位置検出用のラインアンドスペースパターンとを有することを特徴とする請求項9の投影露光装置。」
請求項11
「請求項1、2、4〜10のいずれか1項記載の投影露光装置を用いてレチクルの回路パターンでウエハを露光し、その後、該ウエハを現像処理する工程を有することを特徴とする素子製造方法。」
3.2 取消理由通知の概容
3.2.1 平成14年8月28日付け取消理由通知の概容
「(1).本件特許第3211246号の請求項3〜5、9〜11に係る発明は、その請求項3〜5、9〜11に記載されたとおりのものである。
(2).第29条第2項違反について
(2).1 請求項3に係る発明は、下記甲第1号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明できたものである。
よって、本件請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
(2).2
請求項4、5、9〜11に係る発明は、下記甲第1及び3号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明できたものである。
よって、本件請求項4、5、9〜11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

甲第1号証:特開昭59-94032号公報
甲第3号証:特開昭62-42422号公報
備考
甲第3号証の第2頁左下欄18行〜第2頁右下欄1行には、「この種の投影レンズは、露光用の照明光が入射することによって、その光の一部を熱として吸収し、焦点位置…などの決像特性が変化する。」と記載され、そのために、甲第3号証の請求項記載の構成をとるものと認められる。
従って、「レチクルの複数の測定用パターンを露光波長と同じ波長の光で順次照明する」(請求項4)ことは当業者が容易になし得たことである。
また、「複数の測定用パターンはそれぞれ、サジタル方向のピント位置検出用のラインアンドスペースパターンとメリジオナル方向のピント位置検出用のラインアンドスペースパターンと有すること」(請求項10)ことについては、サジタル方向とメリジオナル方向のピント位置が異なることは周知(例えば特開平1-120019号公報及び特開昭54-123876号公報等参照)であり、ピント位置検出にラインアンドスペースを用いることも周知であるから、当業者が容易になし得たことである。
さらに、他の請求項についても特段の意義は認められない。」
3.2.2 平成14年5月22日付け取消理由通知の概容
「(1).本件特許第3211246号の請求項3〜5、9〜11に係る発明は、その請求項3〜5、9〜11に記載されたとおりのものである。
(2).第29条第1項第3号該当性について
請求項3に係る発明は、異議申立人株式会社ニコンが提出した異議申立書記載の理由により、下記甲第1号証記載の発明と同一である。
よって、本件請求項3に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当する発明に対してなされたものである。
(3).第29条第2項違反について
(3).1 請求項3に係る発明は、異議申立人株式会社ニコンが提出した異議申立書記載の理由により、下記甲第1号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明できたものである。
よって、本件請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
(3).2
請求項4、5、9〜11に係る発明は、異議申立人株式会社ニコンが提出した異議申立書記載の理由により、下記甲第1〜3号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明できたものである。
よって、本件請求項4、5、9〜11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

甲第1号証:特開昭59-94032号公報
甲第2号証:実願昭56-186350号(実開昭58-91746号公報)のマイクロフィルム
甲第3号証:特開昭62-42422号公報」
3.3 甲第1号証〜甲第3号証の内容
1.1.1〜1.1.3に記載のとおり。
3.4 本件請求項3〜5及び9〜11に係る発明と取消理由に引用した引用例との対比
3.4.1 本件請求項3に係る発明と取消理由に引用した引用例との対比
本件請求項3に係る発明と甲第1号証記載の発明とを対比すると、甲第1号証記載の「半導体ウエハ」、「2次元移動ステージ」、「光電検出器」、「マークM」及び「合焦位置」は、本件請求項3に係る発明の、「被露光基板」、「可動ステージ」、「レチクル可動ステージの検出手段」、「測定用パターン」及び「像面位置」に相当し、甲第1号証記載の発明においても露光光でレチクルを照明するから、両者は、構成において実質的に一致する。
3.4.2 本件請求項4に係る発明と取消理由に引用した引用例との対比
本件請求項4に係る発明は、「レチクルまたは像面湾曲測定用のレチクルの複数の測定用パターンを露光波長と同じ波長の光で順次照明することで、各測定用パターン毎に、該測定用パターンからの光を前記投影光学系を介して前記可動ステージの検出手段に入射させる照明手段と、
前記各測定用パターンに関する前記検出手段の受光素子の出力に基づいて、前記投影光学系の有効画面内の前記各測定用パターンに対応する位置での前記投影光学系の像面位置を検出する」(以下、「本件請求項4に係る発明の特徴的構成」という。)構成を有し、当該本件請求項4に係る発明の特徴的構成により、「特に請求項4の発明は、像面位置検出時に(A11)レチクルまたは像面湾曲測定用のレチクルの複数の測定用パターンを露光波長と同じ波長の光で順次照明すること、を特徴としており、これによって、(all)像面湾曲検出時における投影光学系の露光光吸収によるピント位置変化に伴う検出誤差を、各パターンを同時照明する場合に比べて小さくでき、投影光学系の像面湾曲を高精度に検出することができる、という効果を得ている。
(2-1-3)一般に、投影光学系を構成する光学部材が露光光を吸収すると光学部材の温度が上がり、投影光学系の焦点距離が変化して投影光学系のピント位置即ち像面位置が変化してくるので、投影光学系の有効画面内の複数箇所の像面位置を測定する時には投影光学系に入射させる光はなるべく少ない方が良い。
そこで請求項4の発明では複数の測定用パターンを全て同時に照明しないで、各測定用パターンを順次照明することとしている。
これによって前述した効果(all)を得ている。」(平成14年11月11日付け意見書第3頁第6行〜第20行)という効果(以下、「本件請求項4に係る発明の特徴的効果」という。)を有する。
甲第1号証記載の発明は、レチクルのマークを順次照明する構成ではない。
甲第2号証記載の発明は、レチクルのマークを遮光板を介して縮小投影する旨記載されているが、「本考案の具体例ではレテイクルと縮小投影レンズとの間に遮光板を設けたが、…遮光板を設けずして像歪みを測定しても本考案と何ら変りはない」(第7頁第4行〜第9行)と記載されていることから、遮光板を介して縮小投影することは、上記本件請求項4に係る発明の特徴的効果を示唆しない。
また、甲第2号証記載の発明は、像面位置の検出をするものではない。
甲第3号証記載の発明は、レチクル12の光入射側に設けたレチクルブラインド8を用いてレチクル12を照明する範囲を可変とし、同時に照明した2つのマークRMを2つのレチクルアライメント顕微鏡9a,9bで、検出し、2つのマークRMを全て同時に照明しており、2つのマークを順次照明していない。
また、甲第3号証記載の発明は、2つのマークRMを2つのレチクルアライメント顕微鏡9a,9bにより検出する際に、単にアライメントに必要ない領域をレチクルブラインド8で覆っているにすぎず、2つのマークRMを順次照明することにより投影光学系の露光光吸収によるピント位置変化に伴う検出誤差を同時照明する場合に比べて小さくして検出誤差を小さくする点を示唆しない。
そうすると、レチクルのパターンを順次照明しない甲第1号証及び甲第3号証記載の発明に対して、像面位置を検出するものではなく、かつ、レチクル遮光板を用いる目的が、本件請求項4に係る発明の特徴的効果を意図しない甲第3号証記載の発明を組み合わせることに何ら動機付けがなく、むしろ甲第2号証には、「本考案の具体例ではレテイクルと縮小投影レンズとの間に遮光板を設けたが、…遮光板を設けずして像歪みを測定しても本考案と何ら変りはない」(第7頁第4行〜第9行)との記載を考慮すると、甲第2号証記載の発明を、甲第1号証及び甲第3号証記載の発明に適用することには阻害理由があるとしなければならない。
従って、本件請求項4に係る発明は、甲第1〜3号証記載の発明から容易に発明できたものとすることができない。
3.4.3 本件請求項5、9〜11に係る発明と取消理由に引用した引用例との対比
本件請求項4に係る発明を引用する本件請求項5、9〜11に係る発明は、本件請求項4に係る発明と同様に、甲第1〜3号証記載の発明から容易に発明できたものとすることができない。
異議申立てのない本件請求項1又は2に係る発明を引用する本件請求項5、9〜11に係る発明は、甲第1〜3号証記載の発明から容易に発明できたものとすることができない。
4.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項3に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
したがって、本件請求項3に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
また、本件請求項4、5及び9〜11に係る発明に係る特許については、特許異議の申立ての理由によって取り消すことができない。
また、他に本件請求項4、5及び9〜11に係る発明についての特許は取消理由を発見しない。
したがって、本件請求項4、5及び9〜11に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第1及び2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
投影露光装置及び素子製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 被露光基板を保持する可動ステージと、照明系により照明されたレチクルのパターンを前記基板上に投影する投影光学系とを有する投影露光装置において、
前記レクチルまたは像面湾曲測定用のレチクルの複数の測定用パターンのうちの任意の測定用パターンを露光波長と同じ波長の光で照明することで、前記任意の測定用パターンからの光を前記投影光学系を介して前記可動ステージの反射面に入射させ、該反射面で反射した光を前記投影光学系を介して前記レチクルに入射させる照明手段と、
前記投影光学系と前記レチクルを通過した前記反射面で反射した光を受光素子上に入射させる検出光学系と
を有し、
前記受光素子の出力に基づいて、前記投影光学系の有効画面内の前記任意の測定用パターンに対応する位置における前記投影光学系の像面位置を検出することを特徴とする投影露光装置。
【請求項2】 被露光基板を保持する可動ステージと、照明系により照明されたレチクルのパターンを前記基板上に投影する投影光学系とを有する投影露光装置において、
前記レチクルまたは像面湾曲測定用のレチクルの複数の測定用パターンを露光波長と同じ波長の光で順次照明することで、各測定用パターン毎に、前記測定用パターンからの光を前記投影光学系を介して前記可動ステージの反射面に入射させ、該反射面で反射した光を前記投影光学系を介して前記レチクルに入射させる照明手段と、
前記投影光学系と前記レチクルを通過した前記反射面で反射した光を受光素子上に入射させる検出光学系と
を有し、
前記各測定用パターンに関する前記受光素子の出力に基づいて、前記投影光学系の有効画面内の各測定用パターンに対応する位置での前記投影光学系の像面位置を検出することを特徴とする投影露光装置。
【請求項3】 被露光基板を保持する可動ステージと、照明系により照明されたレチクルのパターンを前記基板上に投影する投影光学系とを有する投影露光装置において、
前記レチクルまたは像面湾曲測定用のレチクルの複数の測定用パターンのうちの任意の測定用パターンを露光波長と同じ波長の光で照明することで、前記任意の測定用パターンからの光を前記投影光学系を介して前記可動ステージの検出手段に入射させる照明手段と、
前記検出手段の受光素子の出力に基づいて、前記投影光学系の有効画面内の前記任意の測定用パターン位置に対応する位置での前記投影光学系の像面位置を検出することを特徴とする投影露光装置。
【請求項4】 被露光基板を保持する可動ステージと、照明系により照明されたレチクルのパターンを前記基板上に投影する投影光学系とを有する投影露光装置において、
前記レチクルまたは像面湾曲測定用のレチクルの複数の測定用パターンを露光波長と同じ波長の光で順次照明することで、各測定用パターン毎に、該測定用パターンからの光を前記投影光学系を介して前記可動ステージの検出手段に入射させる照明手段と、
前記各測定用パターンに関する前記検出手段の受光素子の出力に基づいて、前記投影光学系の有効画面内の前記各測定用パターンに対応する位置での前記投影光学系の像面位置を検出することを特徴とする投影露光装置。
【請求項5】 前記照明系と前記照明手段とは前記レチクル上の照明領域を変え得る照明領域可変機構を備える光学系を兼用しており、該照明領域可変機構を用いて前記複数の測定用パターンのそれぞれの位置を照明することを特徴とする請求項1、2又は4の投影露光装置。
【請求項6】 前記照明手段は対物レンズと折り曲げミラーを含む光学系を有し、該対物レンズと折り曲げミラーとは前記レチクルのパターン面に沿って前記複数の測定用パターンのそれぞれの位置まで移動可能であることを特徴とする請求項1〜4の投影露光装置。
【請求項7】 前記照明手段と検出光学系は対物レンズと折り曲げミラーを含む光学系を兼用しており、該対物レンズと折り曲げミラーとは前記レチクルのパターン面に沿って前記複数の測定用パターンのそれぞれの位置まで移動可能であることを特徴とする請求項1、2の投影露光装置。
【請求項8】 前記反射面又は前記検出手段の前記投影光学系の光軸方向の位置を測定する測定手段を有し、該測定手段と前記可動ステージを用いて前記反射面または前記検出手段を前記投影光学系の光軸方向の複数位置に設定し、該複数位置での前記受光素子の出力の大きさやコントラストに基づいて前記像面位置を検出することを特徴とする請求項1又は2の投影露光装置。
【請求項9】 前記投影光学系の有効画面内の複数位置での前記投影光学系の像面位置から前記投影光学系の像面湾曲を検出することを特徴とする請求項2又は4の投影露光装置。
【請求項10】 前記複数の測定用パターンはそれぞれ、サジタル方向のピント位置検出用のラインアンドスペースパターンとメリジオナル方向のピント位置検出用のラインアンドスペースパターンとを有することを特徴とする請求項9の投影露光装置。
【請求項11】 請求項1、2、4〜10のいずれか1項記載の投影露光装置を用いてレチクルの回路パターンでウエハを露光し、その後、該ウエハを現像処理する工程を有することを特徴とする素子製造方法。
【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は半導体素子製造用の投影露光装置及び素子製造方法に関し、特にレチクル面上に形成されている電子回路パターンを投影光学系によりウエハ面上に縮小投影する際の該投影光学系の有効画面内における像面位置(以下「ピント位置」とも言う。)即ち像面湾曲を測定する像面湾曲測定機構を有した、所謂ステッパーと称される投影露光装置及び素子製造方法に関するものである。
(従来の技術)
近年、半導体素子製造用の投影露光装置には電子回路パターンの微細化、例えばサブミクロンからハーフミクロン程度の微細化及び高集積化の要求に伴い投影光学系に対しては従来以上に高い解像力を有したものが要求されている。この為例えば投影光学系においては高N.A化そして露光波長に対しては短波長化が図られている。
一般に投影光学系の高解像力化を図ろうとすると焦点深度が浅くなってくる。この為多くの投影露光装置では投影光学系の合焦精度の向上を図ると共に投影光学系の像面湾曲の平坦性をよくすることにより高解像力化に対応している。特に投影光学系の像面湾曲の平坦性は画面全体の高解像力化を図る為の投影露光装置に対する各種の課題のうちで最も重要なものとなっている。この為投影露光装置には投影光学系の像面湾曲を高精度に測定することができる機構を有することが要望されている。
従来の像面湾曲の測定方法としては、例えばレチクル面上の1ショット内の少なくとも5か所に縦パターンと横パターンの少なくとも2種類以上のランドアンドスペース状の測定パターンを設け、該測定パターンを投影光学系によりウエハ面上に、該ウエサの光軸方向の位置を種々に変えながら投影露光し、その後ウエハを現像する。そして現像後の該ウエハ面上に形成された測定パターン像の解像性能を光学顕微鏡又は電子顕微鏡等を用いて読み取り有効画面内の各点での最良像面位置をウエハの光軸方向の位置を変数として検出し、像面湾曲を求めていた。
(発明が解決しようとする問題点)
前述したように従来、像面湾曲を測定するにはウエハの露光、現像そして測定といった一連の作業を経て行う必要があった。この為多くの時間がかかるという問題点があった。
又、測定結果の信頼性を向上させる為には多数回の測定を行う必要があり、更に多くの測定時間を要する等の問題点があった。
この他、従来の測定方法は測定結果に例えばウエハの平面度の影響が入ってくる為に測定誤差が多くなり、又半導体素子製造の為の各種のプロセスにおける変動によって測定誤差が多く発生してくるという問題点があった。
本発明は従来のような露光、現像そして測定といった一連の手順を用いずに投影光学系の有効画面内の複数の位置での像面位置をウエハの平面度の影響がなく、又半導体素子製造の為の各種のプロセスの影響も受けずに高精度に測定することができる像面湾曲測定機構を有した半導体素子製造用に好適な投影露光装置及び素子製造方法の提供を目的とする。
(問題点を解決するための手段)
本発明の投影露光装置は、
(1-1)被露光基板を保持する可動ステージと、照明系により照明されたレチクルのパターンを前記基板上に投影する投影光学系とを有する投影露光装置において、
前記レクチルまたは像面湾曲測定用のレチクルの複数の測定用パターンのうちの任意の測定用パターンを露光波長と同じ波長の光で照明することで、前記任意の測定用パターンからの光を前記投影光学系を介して前記可動ステージの反射面に入射させ、該反射面で反射した光を前記投影光学系を介して前記レチクルに入射させる照明手段と、
前記投影光学系と前記レチクルを通過した前記反射面で反射した光を受光素子上に入射させる検出光学系とを有し、
前記受光素子の出力に基づいて、前記投影光学系の有効画面内の前記任意の測定用パターンに対応する位置における前記投影光学系の像面位置を検出することを特徴としている。
(1-2)被露光基板を保持する可動ステージと、照明系により照明されたレチクルのパターンを前記基板上に投影する投影光学系とを有する投影露光装置において、
前記レチクルまたは像面湾曲測定用のレチクルの複数の測定用パターンを露光波長と同じ波長の光で順次照明することで、各測定用パターン毎に、前記測定用パターンからの光を前記投影光学系を介して前記可動ステージの反射面に入射させ、該反射面で反射した光を前記投影光学系を介して前記レチクルに入射させる照明手段と、
前記投影光学系と前記レチクルを通過した前記反射面で反射した光を受光素子上に入射させる検出光学系とを有し、
前記各測定用パターンに関する前記受光素子の出力に基づいて、前記投影光学系の有効画面内の各測定用パターンに対応する位置での前記投影光学系の像面位置を検出することを特徴としている。
(1-3)被露光基板を保持する可動ステージと、照明系により照明されたレチクルのパターンを前記基板上に投影する投影光学系とを有する投影露光装置において、
前記レチクルまたは像面湾曲測定用のレチクルの複数の測定用パターンのうちの任意の測定用パターンを露光波長と同じ波長の光で照明することで、前記任意の測定用パターンからの光を前記投影光学系を介して前記可動ステージの検出手段に入射させる照明手段と、
前記検出手段の受光素子の出力に基づいて、前記投影光学系の有効画面内の前記任意の測定用パターン位置に対応する位置での前記投影光学系の像面位置を検出することを特徴としている。
(1-4)被露光基板を保持する可動ステージと、照明系により照明されたレチクルのパターンを前記基板上に投影する投影光学系とを有する投影露光装置において、
前記レチクルまたは像面湾曲測定用のレチクルの複数の測定用パターンを露光波長と同じ波長の光で順次照明することで、各測定用パターン毎に、該測定用パターンからの光を前記投影光学系を介して前記可動ステージの検出手段に入射させる照明手段と、
前記各測定用パターンに関する前記検出手段の受光素子の出力に基づいて、前記投影光学系の有効画面内の前記各測定用パターンに対応する位置での前記投影光学系の像面位置を検出することを特徴としている。
この他構成(1-1)〜(1-4)のいずれか1項において、
(1-5)前記照明系と前記照明手段とは前記レチクル上の照明領域を変え得る照明領域可変機構を備える光学系を兼用しており、該照明領域可変機構を用いて前記複数の測定用パターンのそれぞれの位置を照明することを特徴としている。
(1-6)前記照明手段は対物レンズと折り曲げミラーを含む光学系を有し、該対物レンズと折り曲げミラーとは前記レチクルのパターン面に沿って前記複数の測定用パターンのそれぞれの位置まで移動可能であることを特徴としている。
この他構成(1-1)又は(1-2)において、
(1-7)前記照明手段と検出光学系は対物レンズと折り曲げミラーを含む光学系を兼用しており、該対物レンズと折り曲げミラーとは前記レチクルのパターン面に沿って前記複数の測定用パターンのそれぞれの位置まで移動可能であることを特徴としている。
(1-8)前記反射面又は前記検出手段の前記投影光学系の光軸方向の位置を測定する測定手段を有し、該測定手段と前記可動ステージを用いて前記反射面または前記検出手段を前記投影光学系の光軸方向の複数位置に設定し、該複数位置での前記受光素子の出力の大きさやコントラストに基づいて前記像面位置を検出することを特徴としている。
この他構成(1-2)又は(1-4)において、
(1-9)前記投影光学系の有効画面内の複数位置での前記投影光学系の像面位置から前記投影光学系の像面湾曲を検出することを特徴としている。
この他構成(1-9)において、
(1-10)前記複数の測定用パターンはそれぞれ、サジタル方向のピント位置検出用のラインアンドスペースパターンとメリジオナル方向のピント位置検出用のラインアンドスペースパターンとを有することを特徴としている。
本発明の素子製造方法は、
(2-1)構成(1-1)〜(1-10)のいずれか1項の投影露光装置を用いて、レチクルの回路パターンでウエハを露光し、その後、該ウエハを現像処理する工程を有することを特徴としている。
(実施例)
第1図は本発明の第1実施例の要部概略図である。
同図において7は第1物体としてのレチクルでその面上には電子回路パターンが形成されており、レチクルステージ70に保持されている。8は投影光学系であり、レチクル7面上のパターンをXYZステージ10上に載置した第2物体としてのウエハ9面上に縮小投影(投影倍率1/5)している。
又、本発明の投影露光装置は、投影光学系の非点収差を検出する手段を有していることを特徴としている。
又、本発明の投影露光装置は、投影光学系の像面湾曲を検出する手段を有していることを特徴としている。
本実施例では、このように投影露光装置を用いてレクチル面上のパターンを投影光学系でウエハ面上に投影露光し、その後ウエハを現像処理工程を介して半導体素子を製造している。
17は基準平面ミラーであり、ウエハ9の隣接するXYZステージ10面上に設けられており、その反射面はウエハ10の上面と略一致している。反射面はCrやAl等の金属膜より形成されている。XYZステージ10は投影光学系8の光軸方向(Z方向)及びこの方向に直交する面内に移動可能となっており、更に光軸のまわりに回転可能となっている。101は照明系であり、レチクル7面上の回路パターンの転写が行なわれる画面領域内を照明している。
次に照明系101の各要素について説明する。1は露光用の光源で、水銀ランプより成り、その発光部1aは楕円ミラー2の第1焦点近傍に位置している。光源1から放射した光束は楕円ミラー2で反射し、第2焦点近傍に集光している。3はオプティカルインテグレータであり、その光入射面3aは楕円ミラー2の第2焦点近傍に配置され、その光出射面3bは2次光源面を形成している。55はフィルターであり、露光波長の光束を選択的に通過させオプティカルインテグレータ3の光入射面3aに入射させている。56はシャッタであり、露光量を制御する為のものである。
2次光源面3bより出射した光束はハーフミラー15、コンデンサーレンズ4を通過し、マーク選択手段を構成する照明領域可変機構14の存在する面を照射している。照明領域可変機構14は複数枚、例えば4枚の互いに相向い合う2組の遮光板を有し、この4枚の遮光板が各々独立に光軸と直交する面内に駆動制御可能となっており、これにより開口径及び開口位置が可変の絞りを構成している。該照明領域可変機構14は絞り開口径と絞り開口位置を制御してこの面を照明している光束のうち任意の大きさの領域のみを通過させるようにして絞り開口面と共役位置に配置されているレチクル7面上の照明位置及び照明領域を制御している。
即ち、第1図に示すようにこの照明領域可変機構14の絞り開口部を通った露光光は結像レンズ5aを通った後、ミラー6によって光軸が90°折り曲げられる方向に反射されフィールドレンズ5bを通った後、レチクル7面上に入射する。このとき結像レンズ5a、フィールドレンズ5bを介して照明領域可変機構14の存在する面(絞り開口面)とレチクル7の回路パターンが形成されている面とは光学的に略共役になるように配置されている。
本実施例では照明領域可変機構14により絞り開口の大きさと位置を制御し、レチクル7の回路パターンの露光範囲を決定している。
又、本実施例においては照明領域可変機構14は投影光学系8の像面湾曲を測定するために有効画面内の各測定点に対応するレチクル7上の任意の点の回りの限られた範囲のみを照明するように4枚の遮光板を駆動させている。
15はビームスプリッターであり、2次光源面5bからの露光光のうち90〜95%程度を透過させる性能を持っている。ビームスプリッター15で反射されたオプチィカルインテグレータ3の2次光源面5bからの露光光は露光波長のみを透過し光電検出に余分な光が入射するのをカットするフィルター51を介して光源1の発光量のゆらぎ等をモニターする光検出器50に入射している。
同図において11,12は公知のオフアクシスのオートフォーカス検出系を形成している投光光学系と検出光学系である。投光光学系11より発っせられた非露光光である光束は投影光学系8の光軸と交わる基準平面ミラー17の反射面上の点(あるいはウエハ9の上面)に集光し反射される。この基準平面ミラー17の反射面で反射された光束は検出光学系12に入射する。
検出光学系12内には位置検出用受光素子(不図示)が配されており、該位置検出用受光素子と基準平面ミラー17の反射面上の光束の反射点は共役となる様配置されている。基準平面ミラー17の投影光学系8の光軸方向の位置ズレは検出光学系12内の位置検出様受光素子上での入射光束の位置ズレとして計測される。
この検出光学系12により計測された基準平面ミラー17の反射面の所定の基準面よりの光軸方向の位置ズレはオートフォーカス制御系19に伝達される。オートフォーカス制御系19は基準平面ミラー17が固設されたXYZステージ10を駆動する処の駆動系20に指令を与える。
又、後述するようにTTLで投影光学系8のフォーカス位置を検知する時、オートフォーカス制御系19は基準平面ミラー17を所定の基準位置の近傍で投影光学系8の光軸方向(Z方向)に上下駆動を行う。また、露光の際のウエハ9の位置制御(第1図の基準平面ミラー17の位置にウエハ9が配置される)もオートフォーカス制御系19により行われる。
次に本実施例における投影光学系8の像面湾曲を測定するための結像位置(ピント位置)の検出方法について説明する。
第2図,第3図において21はレチクル7上に形成されたパターン部で遮光性をもっている。22はパターン部21に挟まれた透光部(透過部)である。ここで、投影光学系8のピント位置(像面位置)の検出を行う時は、XYZステージ10は投影光学系8の光軸方向に移動する。基準平面ミラー17は投影光学系8の光軸上に位置しており、レチクル7は照明系101により照明されている。
第2図は基準平面ミラー17の反射面が投影光学系8のピント面にある場合を示している。同図においてレチクル7上の透過部22を通った露光光は投影光学系8を介して基準平面ミラー17の反射面上に集光し反射される。反射された露光光は往路と同一の光路をたどり投影光学系8を介しレチクル7に集光し、レチクル7上のパターン部21間の透過部22を通過する。この時、露光光はレチクル7上のパターン部21にケラレることなく全部の光束がパターン部21の透過部22を通過する。
第3図は基準平面ミラー17の反射面が投影光学系8のピント面よりズレた位置にある場合を示している。
同図においてレチクル7上のパターン部の透過部22を通った露光光は投影光学系8を介し基準平面ミラー17の反射面上に達するが、基準平面ミラー17の反射面は投影光学系8のピント面にないので露光光は広がった光束として基準平面ミラー17の反射面で反射される。
即ち、反射された露光光は往路と異なる光路をたどり投影光学系8を通りレチクル7上に集光することなく基準平面ミラー17の反射面の投影光学系8のピント面からのズレ量に対応した広がりをもった光束となってレチクル7上に達する。この時、露光光はレチクル7上のパターン部21によって一部の光束がケラレを生じ残りの光束が透過部22を通過する。即ちピント面に合致した時とそうでない時にはレチクル7を通しての透過光量に差が生じる。
次に第2図,第3図において説明した基準平面ミラー17の反射面で反射された露光光の光束がレチクル7又は透過部22を透過した後の光路を第1図を用いて説明する。
レクチル7を透過した露光光はフィールドレンズ5Bを通りミラー6で90°折り曲げられて反射されて結像レンズ5aによって照明領域可変機構14の絞り開口部に集光される。そして絞り開口部を通過した光束はコンデンサーレンズ4を通過しビームスプリッター15によって入射光束のうち5〜10%程度の一部の光束が反射されて受光手段としての受光素子16に入射する。
本実施例ではこのときの投影光学系8の有効画面内の複数点における結像位置(ピント位置)をXYZステージ10を駆動させると共に照明領域可変機構14により、絞り開口部の位置を調整し、前述した方法で順次測定する。これにより像面湾曲を求めている。即ち照明領域可変機構14により測定点に対応する位置に開口絞りを移動させる。このとき照明領域可変機構14の絞り開口部はレチクル7面と共役であるため基準平面ミラー17の反射面で反射された光束はレチクル7の透過部22を通り必ず照明領域可変機構14の絞り開口部を通過する。
受光素子16はオプティカルインテグレータ3の射出面3bと光学的に等しい位置に配置されているためピント位置の測定点によらず照明照明領域可変機構14の絞り開口部を通過した光束は必ず受光素子16上に入射される。従って本実施例では測定点によって受光素子16を移動させる必要もなく又複数の受光素子を設ける必要もない。
次にこの受光素子16からの信号出力を用いて投影光学系8の像面湾曲を測定する方法を説明する。
まず照明領域可変機構14の絞り開口径と絞り開口位置を調整してピント位置を測定する複数点のうち第1の点(第1の点近傍)のみを照明する。駆動系20により基準平面ミラー17の載ったXYZステージ10を投影光学系8の光軸方向に、オフアクシスのオートフォーカス検出系で予め設定される計測の零点を中心に駆動させる。この時、各位置でのオートフォーカス検出系の検出光学系12が計測する基準平面ミラー17の光軸方向の位置信号(オートフォーカス計測値z)と、基準平面ミラー17の反射面で反射された露光光を受光素子16で受光し、電気信号に変換することにより焦点面(像面)検出系18から得られる出力の関係は第4図に示す様になる。この時、焦点面検出系18の信号は光源1のゆらぎからの測定誤差の影響を除く為、例えば焦点面検出系18の信号を基準光量検出系52からの信号で規格化している。
基準平面ミラー17の反射面が投影光学系8の有効画面内の像面湾曲の第1の測定点のベストピント位置にきた場合に焦点面検出系18からの出力はピーク値を示す、この時のオートフォーカス計測値Z1をもってして投影光学系8の第1の測定点のピント位置(像面位置)とする。
このピント位置Z1の検出は焦点面検出系18の出力のピークをもって決定してもよいが、その他にも色々な手法が考えられる。例えばより検出精度の敏感度を上げるために、第4図に示すようにピーク出力に対してある割合のスライスレベル220を設定し、このスライスレベル220の出力を示す時のオートフォーカス計測値Z1A,Z1Bを知ることにより、ピント位置をZ1=(Z1A+Z1B)/2として決定しても良いし、又ピーク位置を微分法を使って求める等の手法も適用可能である。
オフアクシスのオートフォーカス検出系の測定範囲は通常投影光学系8の軸上近くである、従って像面湾曲の測定点が軸上でない場合には受光素子16で測定する像面湾曲の測定点とオフアクシスのオートフォーカス検出系の測定点が一致しない。この場合には基準平面ミラー17の反射面の平面度をあらかじめ測定しておいてオフアクシスのオートフォーカス検出系の測定点と像面湾曲の測定点の投影光学系8の光軸方向における位置誤差を求める。この位置誤差を像面湾曲を測定する点に対応する基準平面ミラー17の反射面上で求めこの位置補佐を補正値として記憶しておく。このときピント位置の計測値をZ1、補正値をΔZ1とすると真のピント位置はZ1+ΔZ1として決定することができる。
又、現在の投影露光装置では透光光学系11と検出光学系12によって投影光学系8の有効画面内の複数点の位置を計測しウエハー9の傾きを検出するチルト検出系(不図示)も開発されている。従ってこれを用いれば基準平面ミラー17の反射面の光軸に垂直な平面に対する傾き量を検出できるので、この傾き量によってより精度良く補正値ΔZ1を求めることができるため、より精度の高い像面湾曲の測定ができる。
このようにして第1の測定点でのピント位置の測定が終了した後、第2の測定点のピント位置を計測するため照明領域可変機構14の遮光板を駆動させ第2の測定点のみを照明する。この後第1の測定点で行った同じ方向によって第2の測定点のピント位置Z2を決定する。
以下、順次第3の測定点からn番目の測定点のピント位置を計測しそれぞれのピント位置をZ3〜Znとして投影光学系8の像面湾曲を検出している。通常像面の平坦性を現わす有効画面内の像面幅というものはピント位置Z1〜Znの中で最大値と最少値をそれぞれZmaxとZminとすると像面幅はΔZ=Zmax-Zminと決定される。
第5図は像面湾曲を測定するために用いるレチクル7面上の説明図である。同図では通常の回路パターンの入ったレチクル7に測定点に測定パターン21を入れているが像面湾曲の測定用の専用のレチクルを使用しても良い。
第5図は投影光学系8の焼付範囲内(有効画面内)に全体として等間隔に9点の測定点に測定パターン21a〜21iを配置している。このように焼付範囲内の全体に等間隔で測定パターンを配置することが精度上望ましい。
第6図はレチクル7面上に配置された1つの測定パターンの平面図である。同図では縦線のラインアンドスペースパターン22aと横線のラインアンドスペースパターン22bを近接して配置して構成している。投影光学系8をはじめレンズ一般として縦線と横線、即ちサジタル方向とメリディオナル方向のピント位置は非点収差等の影響により必ずしも一致しない。
従ってピント位置を測定する場合、縦線パターンと横線パターンの両方について計測する必要性が生じる。又縦線パターンと横線パターンの間隔は照明領域可変機構14によって十分照明範囲が分離できる距離にはなす必要があるが、この縦と横のパターン(22aと22b)の間隔は一般に第5図の測定点の間隔に比べて充分小さい距離である。又ラインアンドスペースパターン22a,22bの線幅は投影光学系の限界解像力から実用解像力程度の線幅が望ましい。
本実施例ではこのような測定パターン21を用いて投影光学系8の非点収差を測定し、ウエハ面を最適な位置(高さ)に設定している。
第7図は本発明の第2実施例の要部概略図である。本実施例では第1図の第1実施例に比べて照明領域可変機構14をレチクル7面近傍に配置し、それに伴って結像レンズ5aを削除して構成した点が異なり、その他の構成は第1実施例と同じである。
即ち、第7図において露光用の光源である水銀ランプ1から楕円ミラー2、オプティカルインテグレータ3、フィルター55、ハーフミラー15そしてコンデンサーレンズ4aに至る構成は第1図の第1実施例と同じである。オプティカルインテグレータ3の2次光源面3bから射出した光束はフィルター55とコンデンサーレンズ4aを通過しミラー6によって90°光軸が折り曲げられるように反射されコンデンサーレンズ4bを通過しレチクル7に入射する。照明領域可変機構14は第1実施例と同様の構成をしておりレチクル7の極近傍に配置されている。そして複数の遮光板を光軸と垂直方向に駆動させてレチクル7面上の照明位置と照明範囲を自由に変えている。
レチクル7を透過し基準平面ミラー17の反射面で反射された光束は第1図で説明したと同様な経路で受光素子16に入射する。本実施例においても第1実施例と同様に受光素子16は2次光源面と光学的に等しい位置にあるため、像面湾曲の測定点によらず各測定点からの光束は必ず受光素子16に全光束が入射する。
尚、本実施例においてミラー6を露光光に対する透過率が5〜10%であるようなハーフミラーにして構成しレチクル7を透過し基準平面ミラー17の反射面によって反射され、再びレチクル7の測定パターンの透過部22を通過した光束の一部を該ハーフミラーで5〜10%の割合で透過させて不図示の付加光学系を用いて2次光源面と共役となる面を形成しここに受光素子16を配置するように構成しても前述と同様の効果が得られる。
第8図は本発明の第3実施例の要部概略図である。
本実施例は第1図の第1実施例に比べて像面湾曲測定機構81の一部を構成する照明光学系(27,28)と受光手段(26,16)を光源1、楕円ミラー2、フィルター55、オプティカルインテグレータ3等を有する露光用の照明系(不図示)とは別に構成し、又照明領域可変機構を一部の光学部材を可動にして構成した点が異っており、その他の構成は同じである。
本実施例において光源(不図示)から発せられた像面位置検出用の照明光は導光用のファイバー27によって導かれその出射面2bから出射する。この照明光の波長は露光光の波長で略同一である。ファイバー27の出射面27bより発した光はレンズ28によってほぼ平行光束に集光され偏向ビームスプリッター25でS偏光成分の光だけ反射してλ/4板29、対物レンズ24そして折り曲げミラー23を通りレチクル7面上に設けた測定パターン(不図示)近傍を照明する。
レチクル7の測定パターンの透過部を通過した光束は投影光学系8を介して基準平面ミラー17の反射面で反射し再び投影光学系8とレチクル7の測定パターンの透過部を通過する。この光束は折り曲げミラー23によって90°折り曲げられ対物レンズ24によってほぼ平行光にされλ/4板29を通過することによってP偏光の光束に変換され、偏光ビームスプリッター25を通過しコンデンサーレンズ26により受光素子16面上に集光される。これにより入射光量が検出される。
尚、λ/4板29は同図に示す位置に限定する必要はなく投影光学計8の光路中に配置することも可能である。有効画面内の各点の像面位置(ピント位置)の検出方法は第1図の第1実施例と同じである。
又、導光用のファイバー27の出射面27bから射出した光束の内P偏光の光は偏光ビームスプリッター25を透過し受光素子50に入射する。この受光素子50によって光源から出射する光量変動をモニターしている。第1の測定点のピント位置の計測が行なわれた後、レチクル7面上のピント位置検出用の測定パターンの配置してある第2〜第n番目の測定点におけるピント位置を計測するために移動機構(不図示)によって同図に示してある矢印83方向にマーク選択手段の一部を構成するミラー23と対物レンズ24とから成る光学ユニット82又は紙面と垂直な方向に同図に示す像面位置検出手段81全体を移動させている。そしてレチクル7面上の測定パターンの配置している各点でピント位置を測定し、これらの測定結果を用いて投影光学系8の像面湾曲を求めている。
本実施例では対物レンズ24と集光レンズ26の間の光束が平行になるように配置してあるため、対物レンズ24と集光レンズ26の間隔が変化しても受光素子16に光束を集光することができる為光学ユニット82のみを同図の矢印83方向に移動させている。又紙面と垂直な方向に移動させる場合には像面位置検出手段81全体を移動させている。
尚、本実施例では像面位置検出手段81をレチクル面上方に1つ設けた場合を示したが、像面位置検出手段81を例えば装置の左右に各々設けても良く、又任意の位置に3つ以上設けても良く、これによれば像面湾曲測定の際の移動部材の移動範囲を少なくすることができる。
第9図は本発明の第4実施例の一部分の要部概略図である。
本実施例では像面位置検出手段を独立に設けずにレチクルとウエハの位置を合せ(アライメント)の為のアライメントマーク検出手段の一部の要素と共用させて構成し、装置全体の小型化を図っている。
本実施例の像面位置検出手段は第8図に示す像面位置検出手段81と同様の構成より成っている。同図では像面位置検出手段を構成する各要素のうち第8図で示す要素と同一要素には同符番を付している。
レチクルとウエハとのアライメントは例えばレチクル面上とウエハ面上に各々設けたアライメントマークをアライメントマーク検出手段で検出することにより合致状態を検出している。
第9図において34,35は切り換えミラーであり、ピント位置検出時とアライメントマーク検出時とで光路中に挿入されたり退避できるように構成されている。31はファイバーであり、アライメントマーク照明用の光源より導びかれた光を出射面31bより発する。この光束はレンズ30を通り切り換えミラー34によって折り曲げられハーフミラー35、対物レンズ24そしてミラー23を通りレチクル7上のアライメントマーク(不図示)を照明する。この照明光は投影光学系8を介しウエハ上のアライメントマーク(不図示)も同時に照明する。
レチクル及びウエハー面上のアライメントマークからの光がミラー23、対物レンズ24を介してハーフミラー25を通過し切り換えミラー35によってレンズ32を通りCCD33上に結像される。このCCD33上に結像したアライメントマーク像の位置をアライメント検出系で検知することによりレチクルとウエハとの位置合わせを行っている。
一方、像面位置検出時には切換えミラー34,35を光路中から退避させる。このときの像面位置検出方法は第8図で示した第3実施例と同様である。
これまでの実施例は主にレチクル上のピント位置検出用の測定パターンを通過し、ステージ上の基準面で反射し、再びレチクル上のパターンを透過した光量を計測して、各測定点のピント位置を検出していたが以下これ以外の構成による本発明の実施例について説明する。
第10図は本発明の第5実施例の要部概略図である。本実施例は第1〜4の実施例と比べてXYZステージ上に反射基準面の代りに測定用パターン60と受光素子16を配置する構造になっている。測定用パターン60はレチクル7上の測定パターンを投影レンズ8の倍率分だけ縮小した相似形なパターンである。
XYZステージ10を投影レンズ8の光軸上に沿って移動させると合焦した面で測定パターン用パターンのパターン透過部を透過する光量が最大となる。これは第2図〜第4図を用いて説明したのと同じ原理である。
ピント位置の測定点はXYZステージ10を水平方向に移動させてレチクル7上の測定パターンとXYZステージ10上の測定用パターン60の位置合せを行なう座標はレチクル7上のパターン位置があらかじめわかっており不図示のレーザ干渉計によってXYZステージ10を所定の位置に送り位置合せが行なわれる。
次にZ方向にXYZステージ10を移動させ光量変化を測定しピント計測を行なう。測定後、次の測定点(像高)に対応する位置にXYZステージ10を順次移動させ画面内の像面湾曲を計測する。
第11図は本発明の第6の実施例の要部概略図である。
本実施例ではファイバー62が測定用パターン61の下方に配置され不図示の光源から焼付波長と同じ波長の光がファイバー62に導びかれ測定用パターン61を照明する。測定用パターン61のパターン透過部を通過した光束は投影レンズ8によって拡大されレチクル7の面に集光される。この光束のうちレチクル7上の測定パターンを透過した光はレンズ26によって集光され受光素子16に入射し電気信号となる。XYZステージ10を光軸上に移動させ合焦した状態が光量最大となる。測定用パターン61は第5実施例と同様レチクル7上のパターンを投影レンズ8の倍率分だけ縮小したものである。像面湾曲の測定を行なう為XYZステージ10をXY面内のレチクル7の各測定点に対応する位置に移動させ順次ピント位置計測を行なう。受光系の構成は第11図においては不図示の移動機構によって測定点に対応する位置に移動させる。
又、受光計を第1図、第7図の様に照明系内のオプティカルインテグレータの射出面と光学的に等価な位置に受光素子を配置する様にしても良い。この場合には測定位置ごとに受光素子を移動させる必要はない。
これまでの実施例はパターンを通過する光量を計測してピント位置を求めていたが、投影レンズを介してレチクル面又はXYZステージ上の基準面上のパターンのコントラストを計測する方法もある。
第12図はコントラスト計測をXYZステージ上のコントラスト検出系で行なう場合の検出系の実施例の一部分を示したものである。全体の構成は10図と同じであり検出部のみ異なる。基準面62はXYZステージ上に設置されている。基準面62は中心に計測用のピンホールが置かれレチクル上のパターンを投影レンズを介してこのピンホール内に結像させる。対物レンズ63は基準面をCCD64上に結像させる役目を持っている。この検出系全体をXYZステージで投影レンズ光軸に沿ってZ方向に移動させることで基準面62上に形成されるレチクルの計測パターンのコントラストを検出しピント位置を計測する。この時、第4図に示す検出系の出力はCCD64上で検出される空中像のコントラストの値である。XYZステージをXY平面内で順次測定点に対応する位置に基準面62のピンホールを移動させコントラスト計測を行なうことによってピント面を求める。
本実施例はXYZステージ上の基準面でレチクルの計測パターンの空中像コントラストを検出したが同様な手段としてXYZステージ上の基準面上に計測用パターンを設置して、第9図に示す系(23,24,25,27,28,32,33)のようなレチクル面を観察するアライメント系(コントラスト検出系)でステージ上の基準面のパターンが投影レンズを介してレチクル面上に形成される空中像のコントラストをXYZステージを光軸上に移動させながら検出することによってもピント位置測定は達成される。
(発明の効果)
本発明によれば投影光学系の有効画面内の複数点の像面湾曲量を従来のように露光、現像そして測定といった一連の手順を経ることなく、又ウエハの平面度の影響や半導体素子製造の為の各種のプロセスの影響を受けずに高精度でしかも短時間で測定することができる像面湾曲測定機構を有した投影露光装置を達成することができる。
又、本発明によれば投影光学系の相異なる像高位置の各々に関するピント位置を検出する検出手段を設けることにより、投影光学系の像面の湾曲や凹凸が検出でき、ウエハ面を最適位置(高さ)に設定することができる半導体素子製造に好適な投影露光装置及び素子製造方法を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の第1実施例の要部概略図、第2,第3図は各々第1図の一部分の説明図、第4図は本発明においてピント位置検出の際の受光手段からの出力信号の説明図、第5図は第1図の一部分の説明図、第6図は第5図の一部分の拡大説明図、第7,第8,第9,第10,第11,第12図は各々本発明の第2,第3,第4,第5,第6,第7実施例の要部概略図である。
図中、1は光源、2は楕円ミラー、3はオプティカルインテグレータ、4,4a,4bはコンデンサーレンズ、5は結像レンズ、5bはフィールドレンズ、6はミラー、7はレチクル、8は投影光学系、9はウエハ、10はXYZステージ、11は投光光学系、12は検出光学系、14はマーク選択手段、17は基準マーク、101は照明系、である。
 
訂正の要旨 ▲1▼訂正事項a
特許請求の範囲の請求項4における
「前記任意の測定用パターンからの光を前記投影光学系を介して前記可動ステージの検出手段に入射させる照明手段と、前記各測定用パターンに関する前記各検出手段の受光素子の出力に基づいて、」を明りょうでない記載の釈明を目的として「該測定用パターンからの光を前記投影光学系を介して前記可動ステージの検出手段に入射させる照明手段と、前記各測定用パターンに関する前記検出手段の受光素子の出力に基づいて、」と訂正する。
▲2▼訂正事項b
特許請求の範囲の請求項5における
「請求項1〜4の投影露光装置。」を特許請求の範囲の減縮を目的として「請求項1、2又は4の投影露光装置」と訂正する。
▲3▼訂正事項c
特許請求の範囲の請求項10における「ピント位置検出用のラインアンドスペースパターンと有する」を「ピント位置検出用のラインアンドスペースパターンとを有する」と訂正する。
▲4▼訂正事項d
特許請求の範囲の請求項11における「請求項1から10のいずれか1項記載の」を特許請求の範囲の減縮を目的として、「請求項1、2、4から10のいずれか1項記載の」と訂正する。
▲5▼訂正事項e
特許請求の範囲の記載との整合を図るため、明りょうでない記載の釈明を目的として平成13年4月23日付の手続補正書の第4頁第23行目(特許公報第4頁左欄第18行目)の「ラインアンドスペースパターンと有する」を「ラインアンドスペースパターンを有する」と訂正する。
▲6▼訂正事項f
誤記の訂正を目的として、明細書第24頁第19行目、第25頁第7行から第8行目にかけて、第25頁第13行目(特許公報第7頁左欄第18、第26、第30行目)における「入/4板29」を「λ/4板29」と訂正する。
▲7▼訂正事項g
特許請求の範囲の記載との整合を図るため、明りょうでない記載の釈明を目的として、平成13年4月23日付の手続補正書の第3頁第20行目〜第23行目(特許公報第3頁右欄第28行目〜第32行目)にかけての
「前記任意の測定用パターンからの光を前記投影光学系を介して前記可動ステージの検出手段に入射させる照明手段と、前記各測定用パターンに関する前記各検出手段の受光素子の出力に基づいて、」を「該測定用パターンからの光を前記投影光学系を介して前記可動ステージの検出手段に入射させる照明手段と、前記各測定用パターンに関する前記検出手段の受光素子の出力に基づいて、」と訂正する。
異議決定日 2003-02-06 
出願番号 特願平2-260842
審決分類 P 1 652・ 113- ZD (H01L)
P 1 652・ 121- ZD (H01L)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 大熊 靖夫  
特許庁審判長 高橋 美実
特許庁審判官 辻 徹二
柏崎 正男
登録日 2001-07-19 
登録番号 特許第3211246号(P3211246)
権利者 キヤノン株式会社
発明の名称 投影露光装置及び素子製造方法  
代理人 高梨 幸雄  
代理人 渡辺 隆男  
代理人 高梨 幸雄  

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