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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 A01N |
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管理番号 | 1077935 |
異議申立番号 | 異議2001-70196 |
総通号数 | 43 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-10-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-01-15 |
確定日 | 2003-03-19 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3066664号「害虫攪乱剤」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3066664号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件特許第3066664号の請求項1〜3に係る発明は、平成3年4月5日に特許出願され、平成12年5月19日に設定登録されたところ、当該請求項1〜3に係る発明の特許について、大日本除蟲菊株式会社および日本香料工業会から、特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、平成14年10月10日付けで再度の取消理由(以下、「再度の取消理由」という。)が通知され、その指定期間内に訂正請求がなされたものである。 II.訂正の適否 (II-1)訂正事項 (あ)特許請求の範囲を次のとおりに訂正する。 「【請求項1】ヒラタコクヌストモドキの行動を撹乱させ害虫防除成分との接触率を高める作用を有し、植物精油及び/又はテルベン類を有効成分として含有することを特徴とする害虫撹乱剤。 【請求項2】ヒラタコクヌストモドキの行動を撹乱させ害虫防除成分との接触率を高める作用を有し、開放された空間で致死活性を有しない植物精油及び/又はテルベン類を有効成分として含有することを特徴とする害虫撹乱剤。 【請求項3】ヒラタコクヌストモドキの行動を撹乱させ害虫防除成分との接触率を高める作用を有し、α-ピネン、リモネン、ベンジルアルコール、バニリン、テルピルン、クマリン、テルピニルアセテート、アセトフェノンより選ばれた少なくとも1種以上を有効成分として含有することを特徴とする害虫撹乱剤。」 (い)段落番号【0004】の記載を以下のように訂正する。 「〔課題を解決するための手段〕そこで本発明はヒラタコクヌストモドキの行動を撹乱させ害虫防除成分との接触率を高める作用を有し、植物精油及び/又はテルベン類を有効成分として含有することを特徴とする害虫撹乱剤に係る。」 (II-2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について: 訂正事項(あ)は、特許明細書中の段落番号【0016】、【0022】〜【0025】及び段落番号【0027】の記載に基づき、特許請求の範囲を減縮するものであり、訂正事項(い)は、発明の詳細な説明の欄の記載を訂正事項(あ)に係る訂正と整合させるべく訂正するもので、明りょうでない記載の釈明に該当するものである。 そして、訂正事項(あ)、(い)は、ともに、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 (II-3)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、および同条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 III.特許異議申立てについて (III-1)本件明細書 本件の願書に添付された明細書は、前記訂正の結果、訂正請求書に添付された訂正明細書に記載されたとおりのものである。 (III-2)再度の取消理由通知の概要 前記した再度の取消理由は、『本件出願は、明細書及び図面の記載が下記(1)〜(3)の点で不備のため、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない。(1)請求項1〜3に記載された「害虫攪乱剤」という表現は不明確である。(「害虫」とは何を示し、「攪乱」とは何を示すのか。) (2)発明の詳細な説明の欄の記載は、「攪乱」および「マヒ」の内容および攪乱効果とマヒの虫の数との関係が不明であり、実施例に記載されたヒラタコクヌストモドキ以外の「害虫」に対する攪乱効果が不明であるから、当業者が容易に実施できるものでない。(3)発明の詳細な説明の欄の表4の記載は、害虫攪乱剤の種類が不明である。』というものである。 (III-3)検討 訂正後の訂正明細書には、前記したように「ヒラタコクヌストモドキの行動を撹乱させ害虫防除成分との接触率を高める作用を有し、」との記載が追加され、請求項1〜3に記載の「害虫」がヒラタコクヌストモドキを含むものであること、および、請求項1〜3に記載の「攪乱」がヒラタコクヌストモドキの行動を撹乱させ害虫防除成分との接触率を高める態様を含むものであることが明示されているものの、実施例に記載されたヒラタコクヌストモドキ以外の「害虫」に対してヒラタコクヌストモドキと同等の攪乱効果が奏されるとする根拠についての記載はなく、また、当該根拠が本件出願前に公知であり当業者に自明であるとされているわけでもないうえに、攪乱効果に対する唯一の実施例に係る訂正明細書中の表4の記載も、害虫攪乱剤として何を用いたものなのか不明である。 してみると、本件出願の明細書は、訂正後においても、請求項1〜3に係る発明を当業者が容易に実施できる程度に、その効果が記載されているとすることはできず、本件出願は、特許法第36条第4項に規定された要件を満たしているとすることができない。 (III-4)むすび 以上のとおりであるから、本件発明1〜2に係る特許は、特許法第49条の規定により拒絶の査定をすべき特許出願に対してなされたものと認める。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 害虫撹乱剤 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ヒラタコクヌストモドキの行動を撹乱させ害虫防除成分との接触率を高める作用を有し、植物精油及び/又はテルペン類を有効成分として含有することを特徴とする害虫撹乱剤。 【請求項2】 ヒラタコクヌストモドキの行動を撹乱させ害虫防除成分との接触率を高める作用を有し、開放された空間で致死活性を有しない植物精油及び/又はテルペン類を有効成分として含有することを特徴とする害虫撹乱剤。 【請求項3】 ヒラタコクヌストモドキの行動を撹乱させ害虫防除成分との接触率を高める作用を有し、α-ピネン、リモネン、ベンジルアルコール、バニリン、テルピルン、クマリン、テルピニルアセテート、アセトフェノンより選ばれた少なくとも1種以上を有効成分として含有することを特徴とする害虫撹乱剤。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は新規の害虫撹乱剤に関する。 【0002】 【従来技術】 従来、効力増強剤としては、N-プロピルイゾーム、MGK-264、サイネピリン222、リーセン384、IBTA、S-421等が知られていた。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 害虫防除成分である有機リン系の化合物は毒性が高いため、使用量を多くできないという問題があり、ピレスロイド系の化合物は効果面で不充分であるため公知の効力増強剤を加えて使用していたが、著しい効果が認められなかった。本発明は上記従来の欠点を除去することを目的としてなされたものである。 【0004】 【課題を解決するための手段】 そこで本発明はヒラタコクヌストモドキの行動を撹乱させ害虫防除成分との接触率を高める作用を有し、植物精油及び/又はテルペン類を有効成分として含有することを特徴とする害虫撹乱剤に係る。 【0005】 本発明において、害虫防除成分としては、ピレスロイド系化合物、カーバメート系化合物、ヒドラゾン系化合物、有機リン系化合物等の殺虫若しくは殺ダニ作用を有する化合物であればこれらの単独若しくは複数を併用したものでもよい。 【0006】 一例を挙げれば、ピリミホスメチル、ジクロルボス、フェニトロチオン、ダイアジノン、フェンチオン、マラチオン、ナレド、クロルフェンビンフォス、テトラクロルビンフォス、プロパホス、シアノホス、ジクロロフェンチオン、ピリダフェンチオン、クロルピリホス、イソキサチオン、サリチオン、フェンソエイト、フォルモチオン、メカルバム、DAEP、チオメトン、イソチオエート、IPSP、ホスメット、ホサロン、メチダチオン、メサゾン、プロチオフォス、バミドチオン、ESP、アセフェート、トリクロルフォン、EPN、シアノフェンフォス、EPBP、レプトホス等の有機リン系化合物。ピレトリン、アレスリン、フラメトリン、レスメトリン、フタルスリン、フェノトリン、ペルメトリン、シペルトリン、スペルトリン、エンパラレート、フルシトリネート、シフェノトリン、エンペンスリン、フェンバレレート、プラレトリン、フェンフルスリン、テラレスリン、ベンフルスリン等のピレスロイド系化合物、プロポクサー、カーバリル、MTMC、イソプロカーブ、プロメカーブ、BPMC、ターバム、MPMC、XMC、メソミル、カルタップ等のカーバメート系化合物、テトラヒドロー5,5-ジメチル-2-(1H)-ピリミジノン-{3-〔4-(トリフルオロメチル)フェニル〕エテニル}-2-プロペニリデン}ヒドラゾンおよびその脂肪酸塩等のヒドラゾン系化合物を挙げることが出来る。 【0007】 本発明においては、上記薬剤以外のものでも、蒸気圧が(3.5×10-5mmHg/20℃以上)のものを用いることができる。 【0008】 本発明においてテルペン類としては、α,β-ピネン、α,β-テレピンオール、シドレン、シドロール、カンフェン、カジネン、カンファー、リモネン、シネオール、メントール、ジュージン、サピネン、ヒノキチオール、リナロール、テルペンアルコール類の化合物、テルペンエーテル類の化合物、テルペンアルデヒド類の化合物、テルペンクロライド類の化合物を挙げることができる。 【0009】 本発明において植物精油としては、ヒノキ科の植物体の精油、ヒノキ油、シーダー油、レッドシーダー油、ビヤクシン油、アスナロ油、イトスギ油、クロベ油、ヒバ油及びマツ科の植物体の精油、アビエス油、テレピン油、米松油、松根油、スギ科の植物体の精油を挙げることができる。 【0010】 本発明の害虫撹乱剤の使用量は、害虫防除成分に対して通常1倍〜500倍、好ましくは、10倍〜400倍が良い。 【0011】 また、上記害虫撹乱剤と害虫防除成分とを適当量混合し、通常は液体担体及び固体担体にその組成物を保持させ、必要に応じ、乳化剤、分散剤、水和剤、噴射剤等を添加して、油剤、乳剤、水和剤、噴霧剤、エアゾール剤、塗布剤、粉剤、粒剤等の形態で使用することができる。 【0012】 液体担体としては、例えば水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルエーテル等のエーテル類、ヘキサン、ケロシン、ノルマルパラフィン、ソルベントナフサ等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類等を挙げることができる。 【0013】 固体担体としては、例えば、ケイ酸、カオリン、活性炭、ベントナイト、ケイソウ土、タルク、クレー、炭酸カルシウム、陶磁器粉等の鉱物性粉末、木粉、大豆粉、小麦粉、澱粉等の植物質粉末、シクロデキストリン等の包接化合物等を挙げることができる。 【0014】 また、乳化剤、分散剤としては、本発明の害虫撹乱剤で代用することもできるが、必要に応じ、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルアリルスルホン酸塩等の界面活性剤を、さらに噴射剤としては、液化石油ガス、ジメチルエーテル、フルオロカーボン、フロン、炭酸ガス、窒素ガス、笑気ガス等を例示できる。 【0015】 本発明の害虫撹乱剤は、香料等に用いられている安全性の高い化合物であり、毒性の高い有機リン系の殺虫剤の使用量が少なくて良い。上記害虫防除組成物には、通常用いられている揮散率向上剤、消臭剤、香料等の各種添加剤を任意に添加することができる。揮散率向上剤としてはフェネチルイソチオシアネート、ハイミックス酸ジメチル、消臭剤としてはラウリルメタアクリレート(LMA)等を、香料としてはシトラール、シトロネラール等を夫々例示できる。 【0016】 【作用】 本発明の害虫撹乱剤は特に有機リン系の化合物と混合したときに極めて高い相乗効果を示し植物体から離れる攪乱効果があるため害虫の行動に活性を与え有効成分との接触する機会が増大し防除効果が上がる。 【0017】 【実施例】 以下に本発明を実施例にもとづき詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。 【0018】 製剤例1〜3下記表1に示す植物精油及び/又はテルペン類を夫々所定の配合割合で混合して、本発明に適用する害虫撹乱剤を得る。 【0019】 【表1】 【0020】 【表2】 【0021】 【表3】 【0022】 本発明の害虫防除剤組成物につき、そのヒラタコクヌストモドキに対する効果を次の方法により試験を行った。 【0023】 試験方法20mlのガラスバイアルビンに、ヒラタコクヌストモドキ成虫5頭を入れ、ペーパーディスク(径7mm)に所定量の薬剤を処理して底部に静置する。22℃条件下で、経時的には供試虫の状態を記録する。試験結果を表4に示す。 【0024】 【表4】 【0025】 考察殺虫剤単独(比較1〜2)では、24時間後の殺虫活性は認められるが、5時間以内では何の変化も見られなかった。害虫撹乱剤剤単独(本案5〜6)では、速効性(マヒ)が認められるが、殺虫活性は低かった。殺虫剤と害虫撹乱剤を混合することにより(本案1〜4)、速効性(マヒ)及び殺虫活性が認められた。 【0027】 【発明の効果】 本発明の害虫撹乱剤は上記のように害虫防除成分と混合して使用することにより優れた殺虫効果を示す。すなわち害虫に攪乱効果を起こさせ、害虫防除成分との接触率を向上し、害虫の防除、殺虫を行なう。 |
訂正の要旨 |
特許請求の範囲を、その減縮を目的として次の通り訂正する。 「(請求項1)ヒラタコクヌストモドキの行動を撹乱させ害虫防除成分との接触率を高める作用を有し、植物精油及び/又はテルペン類を有効成分として含有することを特徴とする害虫撹乱剤。 (請求項2)ヒラタコクヌストモドキの行動を撹乱させ害虫防除成分との接触率を高める作用を有し、開放された空間で致死活性を有しない植物精油及び/又はテルペン類を有効成分として含有することを特徴とする害虫撹乱剤。 (請求項3)ヒラタコクヌストモドキの行動を撹乱させ害虫防除成分との接触率を高める作用を有し、α-ピネン、リモネン、ベンジルアルコール、バニリン、テルピルン、クマリン、テルピニルアセテート、アセトフェノンより選ばれた少なくとも1種以上を有効成分として含有することを特徴とする害虫撹乱剤。」 これに伴い、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために、明瞭でない記載の釈明を目的として、明細書の発明の詳細な説明の〔課題を解決するための手段〕の欄の下第1行目以降を次のように訂正する。 「〔課題を解決するための手段〕 そこで本発明はヒラタコクヌストモドキの行動を撹乱させ害虫防除成分との接触率を高める作用を有し、植物精油及び/又はテルペン類を有効成分として含有することを特徴とする害虫撹乱剤に係る。」 |
異議決定日 | 2003-01-24 |
出願番号 | 特願平3-156288 |
審決分類 |
P
1
651・
531-
ZA
(A01N)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 原 健司 |
特許庁審判長 |
雨宮 弘治 |
特許庁審判官 |
岩瀬 眞紀子 井上 彌一 |
登録日 | 2000-05-19 |
登録番号 | 特許第3066664号(P3066664) |
権利者 | アース製薬株式会社 |
発明の名称 | 害虫攪乱剤 |
代理人 | 萩野 平 |
代理人 | 萩野 平 |
代理人 | 深沢 敏男 |
代理人 | 佐々木 清隆 |
代理人 | 市川 利光 |
代理人 | 添田 全一 |
代理人 | 添田 全一 |
代理人 | 本多 弘徳 |
代理人 | 佐々木 清隆 |
代理人 | 栗宇 百合子 |
代理人 | 本多 弘徳 |
代理人 | 市川 利光 |
代理人 | 深沢 敏男 |
代理人 | 栗宇 百合子 |