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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23B
審判 全部申し立て 発明同一  A23B
管理番号 1077949
異議申立番号 異議2002-71209  
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-12-03 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-05-10 
確定日 2003-04-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3230853号「青果物鮮度保持包装用フィルム」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3230853号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3230853号に係る発明についての出願は、平成4年9月17日に特願平4-248326号として出願され、平成13年9月14日にその特許の設定登録がなされ、その後、田村 清、山本 健、及び小野尚純より特許異議申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年10月7日に訂正請求がなされたものである。
II.訂正請求
1.訂正の内容
(1)特許請求の範囲の「請求項1」に係る記載、「平均径が100〜300μの微孔を有し、且つフィルム材質の水蒸気透過度が40℃、90%RHにおいて30〜300g/m2・24hrsであり、微孔面積と微孔数によりフィルムの酸素、炭酸ガス透過度を規定することを特徴とする青果物鮮度保持包装用フィルム。」を、「平均径が100〜300μの微孔を有し、更に、50〜200個/m2の微孔数を有し、且つフィルム材質の水蒸気透過度が40℃、90%RHにおいて30〜300g/m2・24hrsであり、微孔面積と微孔数によりフィルムの酸素、炭酸ガス透過度を規定することを特徴とする青果物鮮度保持包装用フィルム。」と訂正する。
(2)特許請求の範囲の「請求項5」を削除し、「請求項6」を「請求項5」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項(1)は、「更に、50〜200個/m2の微孔数を有し」という事項を直列的に付加するものであるから特許請求の範囲の減縮に該当し、訂正事項(2)は、請求項を削除するものであるから特許請求の範囲の減縮に該当する。
また、この訂正は新規事項に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。
3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法120条の4,2項及び同条3項で準用する126条2項及び3項の規定に適合するので、請求のとおり当該訂正を認める。

III.特許異議申立
1.田村 清よりの特許異議申立
特許異議申立人は、甲第1号証乃至甲第2号証を提出し、訂正前の発明1乃至6は、甲第1号証乃至甲第2号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法29条2項の規定に違反する、と主張している。
A.甲各号証の記載内容
甲第1号証(特開平4-53445号公報)は、「青果物鮮度保持用包装袋」に係り、その特許請求の範囲の項には、
「(1)フィルム総表面積に対し0.0002〜0.010%の総開孔面積比率を有する1個以上の開孔が設けられたフィルムよりなることを特徴とする青果物鮮度保持用包装袋。
(2)開孔の大きさが、直径0.2mm以上1.0mm以下である請求項1記載の鮮度保持用包装袋。」が、
発明の詳細な説明の項には、「本発明は、例えば野菜、根菜、果実、切花、きのこ類など(・・)の鮮度保持用包装袋に関するものである。」(1頁左欄14〜16行)、「総開孔面積比率が0.0002%未満の場合は青果物の呼吸により消費されて該袋内の酸素量が不足し、活力維持のため最低限必要とされる呼吸が阻害され鮮度低下を招く。また、二酸化炭素量が過剰になるため生理障害を生じることもある。一方総開孔面積比率が0.010%を越えた場合は該袋内の酸素量が呼吸を抑制できるまで下がり切らずに老化が進む。また、二酸化炭素量が低くなりすぎて腐敗防止効果及び呼吸抑制効果が有効に発揮されなくなる。」(2頁左下欄9〜18行)、「また該袋を構成するフィルム中には必要に応じて滑剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、耐電防止剤等を配合することもできる。」(2頁右下欄7〜10行)、「本発明の包装袋で青果物を包装し該袋内のガス組成を鮮度保持に有効な条件へ導くことによって、長期にわたりガス組成を調整し鮮度が保持される。また、特に収穫後も激しい生理作用を営む青果物の包装に好適であり、鮮度保持作用を効果的に発揮することにより包装商品としての商品価値を高めることができる。」(3頁左上欄7〜13行)が、並びに「実施例」として、総表面積0.1m2の低密度ポリエチレン袋に、実施例1には、直径0.5mmの開孔を2個設けた包装袋、実施例2には、直径0.5mmの開孔を3個設けた包装袋、及び実施例3には、直径0.5mmの開孔を12個設けた包装袋が、それぞれ記載されている。
甲第2号証(特開昭63-119647号公報)は、「生理作用の激しい青果物の包装袋」に係り、全文訂正明細書の特許請求の範囲の項には、
「(1)水蒸気透過度が15〜200g/m2・24hr・40℃、酸素透過度が3000〜35000cc/m2・24hr・atm・20℃・90%RH、炭酸ガス透過度が12000〜130000cc/m2・24hr・atm・20℃・90%RH、であり、少なくとも片面側表面層には防曇剤が存在すると共に該表面層が溶断シール性を有するように構成された複層フィルムを用い、該表面層が内側になるように少なくとも3方が閉じられた袋状に形成され、且つ該袋のフィルム面の一部もしくは全面に、該袋のフィルム面総表面積に対し0.02〜3.5%の総開孔面積を有する1個以上の開孔が設けられてなることを特徴とする生理作用の激しい青果物の包装袋。」が記載されている。
B.判断
(本件発明1について)
訂正された本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)は、「平均径が100〜300μの微孔を有し、更に、50〜200個/m2の微孔数を有する」という構成を有することに特徴があるところ、甲第1号証には、この構成について開示されているところはない。
ただ、実施例として、総表面積0.1m2の低密度ポリエチレン袋に、実施例1には、直径0.5mmの開孔を2個、実施例2には、直径0.5mmの開孔を3個、及び実施例3には、直径0.5mmの開孔を12個をそれぞれ設けた包装袋が記載されており、これは、1平方メートル当たり実施例1で、20個、実施例2で、30個、 及び、実施例3で、120個となり、実施例3では、本件発明1に係る微孔数と重複するが、微孔の径が、本件発明1では、100〜300μであるのに対し、甲第1号証では、0.5mmであるから、両者は、微孔に係る構成において相違しているということになる。
そして、甲第2号証には、水蒸気透過度についての記載はあるが、本件発明1に係る「平均径が100〜300μの微孔を有し、更に、50〜200個/m2の微孔数を有する」という構成について言及されているところはないのであるから、甲第1号証と甲第2号証に記載された事項から、本件発明1が導かれることはない。
そして、本件発明1は、上記のような構成を採用したことにより、「微孔面積と微孔数によりフィルムの酸素、炭酸ガス透過度の制御が可能であり、青果物から出る微細なゴミ、及び開孔時の発生する微細な粉塵等により微孔が塞がらない青果物鮮度保持包装用フィルムが作成可能」(段落【0012】)であること及び段落【0042】に記載の効果を奏するものであるから、本件発明1は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(本件発明2乃至5について)
訂正された本件請求項2乃至請求項5に係る発明(以下、「本件発明2乃至5」という。)は、本件発明1を更に限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
2.山本 建よりの特許異議申立
特許異議申立人は、甲第1号証を提出し、訂正前の発明1乃至6は、特願平3-336651号の明細書(特開平5-168398号公報;甲第1号証)に記載された発明と同一であるから特許法29条の2の規定に違反する、と主張している。
A.甲第1号証の記載内容
甲第1号証は、「青果物鮮度保持用包装袋」に係り、特許請求の範囲の項には、
「【請求項1】青果物を貯蔵する際、密閉包装する袋に、包装する青果物重量に対し、総開孔面積が0.4〜4.0mm2/kgで、かつ3<孔径/厚み<20の範囲で開孔を設けたことを特徴とする青果物鮮度保持用包装袋。
【請求項2】孔径が0.1〜0.5mmである請求項1記載の青果物鮮度保持用包装袋。
【請求項3】樹脂中に非イオン系界面活性剤が0.2〜2.0重量%配合された請求項1または2記載の青果物鮮度保持用包装袋。
【請求項4】請求項1,2または3記載の包装袋を用いて青果物を袋に包装する際に、袋内空気体積の青果物体積に対する比率(ヘッドスペース率)が1以上3以下となるように包装する青果物の鮮度保持方法。
【請求項5】包装する青果物がブロッコリーであることを特徴とする請求項4記載の鮮度保持方法。」が、発明の詳細な説明の項には、
「すなわち、総開孔面積が、包装する青果物重量に対し0.4mm2/kg未満の場合は、青果物の盛んな呼吸によって酸素が消費されて、該袋内の酸素濃度が不足し、活力維持のため最低限必要とされる呼吸が阻害されて鮮度低下を招く。また同時に、二酸化炭素濃度が過剰になるため、生理障害が生じ、異臭を発生しやすくなる。一方、総開孔面積が、包装する青果物重量に対し4.0mm2/kgを越えた場合は、該袋内の酸素濃度が呼吸を抑制できるまで下がりきらず、老化が進む。同時に二酸化炭素濃度が低くなりすぎて腐敗防止効果及び呼吸抑制効果が有効に発揮されなくなる。」(段落【0012】)及び
「フィルムの材質としては、価格が安く透明性が優れていることと、適度なガス透過性が必要である。この条件を満たす樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、セルロース系樹脂などが挙げられる、フィルムの厚みは、トータルのガス透過性を考え、また適度な強度と経済性を考えた上で、20〜80μmのものが好ましい。」(段落【0019】)が、そして、「実施例1」には、総表面積0.1m2の低密度ポリエチレン袋(大きさ25×25cm・・・)に針を熱して突き刺し、直径0.3mm(孔径/厚み=5)の開孔を6個設けた包装袋が、「実施例2」には、総表面積0.4m2の低密度ポリエチレン袋(大きさ40×50cm・・・)に針を熱して突き刺し、直径0.3mm(孔径/厚み=5)の開孔を23個設けた包装袋が、それぞれ記載されている。
B.判断
本件発明1は、「フィルム材質の水蒸気透過度が40℃、90%RHにおいて30〜300g/m2・24hrs」であることに特徴があるところ、甲第1号証には、包装袋の水蒸気透過度について開示されているところはないので、本件発明1は、特願平3-336651号の明細書(甲第1号証)に記載された発明であるとはいえない。
これに関し、特許異議申立人は、本件明細書には、「これらの鮮度保持に必要な適度な水蒸気透過度は40℃、90%RHで30〜300g/m2・24hrs、より好ましくは50〜200g/m2・24hrsである。水蒸気透過度が30g以下では余剰水分によるカビ・腐敗の進行が速い。また、300g以上では蒸散による萎れ・重量減少が著しく、商品性が低下する。このような水蒸気透過性は上述の開孔した微孔部分からは期待できないことが本発明等の実験により判明しているため、水蒸気透過性はフィルム材質自身の透過性を用いることが必要である。上述の水蒸気透過性の範囲を満たすフィルムとしては、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニール、ポリメチルペンテン、再生セルロース等を用いることが可能であり、必要に応じてこれらを積層して用いることも可能である。」(段落【0019】〜【0020】)と記載され、「実施例5」には「無延伸ポリスチレンフィルム30μ(東興資材工業(株)製)に孔の平均直径150μ、孔数100個/m2となるように加熱針を用いて連続的に開孔した。」と記載されているところ、甲第1号証の段落【0019】には「フィルムの厚みは、・・・20〜80μmのものが好ましい。」と記載されていることに照らし、本件発明1に係る「フィルム材質の水蒸気透過度が40℃、90%RHにおいて30〜300g/m2・24hrs」という事項は、甲第1号証に実質的に記載されていると主張している。
しかし、本件発明1で使用している「無延伸ポリスチレンフィルム30μ(東興資材工業(株)製)」が、本件発明1に係る所定の水蒸気透過度を示すとしても、甲第1号証に記載のものとは、ただ、厚みが重複するだけであって、甲第1号証には水蒸気透過度について全く言及していないのであるから、厚みが重複することだけを根拠に、同じ水蒸気透過度を示すとはいえないというべきである。
したがって、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
また、本件発明2乃至5は、本件発明1を更に限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。

3.小野尚純よりの特許異議申立
特許異議申立人は、甲第1号証乃至甲第4号証を提出し、訂正前の発明1乃至6は、甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法29条2項の規定に違反する、と主張している。
A.甲各号証の記載内容
甲第1号証(特開昭62-148247号公報)は、「穿孔樹脂フィルム」に係り、その特許請求の範囲の項には、
「1)(a)熱可塑性樹脂フィルムを素材とし、(b)このフィルムに孔径が50〜300ミクロンの孔が1cm2当たり50〜300個の割合でフィルムの表裏面を貫通するように穿孔されており、(c)この孔を形成する壁の樹脂は穿孔時に溶融してヒダを形成し、(d)この穿孔されたフィルムは、25℃.1kg/cm2の条件下で測定した水の1時間での透過量(JIS L-1079)が0ミリリットル/cm2であり、(e)JIS Z-0208に準拠して測定した透湿度が1,000g/m2・24時間・1気圧以上であり、(f)JIS P-8117に準拠して作られた王研式透気度・平滑度試験機を用いて測定した透気度が30秒以下であることを特徴とする通気性は有するが水は透過させない穿孔樹脂フィルム。」が、発明の詳細な説明の項には、
「本発明は、生花や野菜の包装フィルム、生理ナプキンや使い捨ておむつの液防濾材として有用な空気、酸素等の気体は透過させるが水は透過させない穿孔樹脂フィルムに関するものである。」(1頁右下欄8〜12行)、及び「フィルムは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂」(2頁右上欄8〜10行)が記載されており、「実施例1」として、穴径200ミクロンで孔数100個/cm2の穿孔ポリプロピレン樹脂フィルムが開示され、この透湿度は12000g/m2であり、透気度は2秒であることが記載されている。
甲第2号証(特開平2-73831号公報)は、「高分子フイルム」に関し、特許請求の範囲の項には、
「有孔性であり、25℃、相対湿度75%の条件下で測定して800gm-2d-2以下の水蒸気透過率及び200,000cm3m-2d-1atm-1以下の酸素透過率を有する植物資材貯蔵用あるいは包装用高分子フィルム。」が、発明の詳細な説明中には、
「このようにして水蒸気透過率100〜800gm-2d-2が達成でき、また、望む場合にはより低い値、例えば80gm-2d-2、さらにより低い値10gm-2d-2も達成することができる。」(3頁右上欄7〜10行)、「本発明のフィルムの酸素透過率は、25℃、相対湿度75%で測定して200,000cm3m-2d-1atm-1以下のものである。水蒸気透過性の場合と同様に、異なる植物資材は異なる酸素透過率を有するフィルムを要求するものであり、該透過率としては100,000以下、例えば、50,000cm3m-2d-1atm-1が望ましい。より低い酸素透過率、例えば10,000cm3m-2d-1atm-1も得ることができる。しかしながら、酸素透過率はフイルム材料に固有の値よりも大きくすること、典型的には、フィルム材料固有の値よりも少なくとも900cm3m-2d-1atm-1だけ大きくする必要がある。このことは、少なくとも3500cm3m-2d-1atm-1であることを意味する。」(3頁左下欄5〜18行)、「本発明のフィルムの酸素透過率は、フィルムに孔を設けることによって達成される。フィルムに設けた孔の大きさはフィルムの酸素透過率に影響を与えるものであり、好ましくは20〜100μmの範囲、より好ましくは40〜60μmの範囲、さらに望ましくは平均径約50μmが適切である。・・・典型的には、フィルム表面平方メートル当たり1000個までの孔を有することが好ましいが、10個あるいはそれ以下の孔を用いることもできる。・・・しかしながら、フィルム中には十分な孔がなければならないので、植物資材の各包装当り少なくとも1個の孔を必要とする。このことは平方メートル当り少なくとも50個の孔を有することを必要とする。通常は、フィルムは平方メートル当り500個以下、典型的には平方メートル当り100〜300個の孔を有する。」(3頁左下欄19行〜4頁左上欄4行)が、それぞれ記載されている。
甲第3号証は、「1」の甲第2号証と同じ。
甲第4号証は、東京高裁H9(行ケ)38(判決言渡日平成12年2月17日)の判決
B.判断
本件発明1は、「平均径が100〜300μの微孔を有し、更に、50〜200個/m2の微孔数を有する」という構成を有することに特徴があるところ、甲第1号証には、50〜300ミクロンの孔が1cm2当たり50〜300個を有するものであって、本件発明1とその単位当たりの微孔数が全く異なっており、また、甲第2号証には、孔の大きさに関して「好ましくは20〜100μmの範囲、より好ましくは40〜60μmの範囲、さらに望ましくは平均径約50μmが適切である。」との記載があるものの、これは、本件発明1に係る孔径とは相違するものである。
そして、上記「1」に記載したように、本件発明1は、甲第3号証に記載のものと微孔に係る構成において相違するものであり、しかも、本件発明1は、本件明細書に記載の所期の効果を奏するものである。
したがって、甲第1号証及び甲第2号証に、本件発明1に係る構成の一部が記載されているとしても、本件発明1のような構成を採用することは、甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基づき当業者が容易に実施し得る域を超えているというべきである。
また、本件発明2乃至5は、本件発明1を更に限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
4.まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明1乃至5についての特許を取り消すことはできない。
また他に本件発明1乃至5についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
青果物鮮度保持包装用フィルム
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 平均径が100〜300μの微孔を有し、更に、50〜200個/m2の微孔数を有し、且つフィルム材質の水蒸気透過度が40℃、90%RHにおいて30〜300g/m2・24hrsであり、微孔面積と微孔数によりフィルムの酸素、炭酸ガス透過度を規定することを特徴とする青果物鮮度保持包装用フィルム。
【請求項2】 フィルムの材質が、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリメチルペンテン、再生セルロースのいずれかより構成されている請求項1に記載の青果物鮮度保持包装用フィルム。
【請求項3】 微孔を有するフィルム全体の23℃における酸素および炭酸ガス透過度が1000〜100000cc/m2・24hrs・atmである請求項1又は2に記載の青果物鮮度保持包装用フィルム。
【請求項4】 微孔1個あたりの酸素および炭酸ガス透過度が100〜900cc/m2・24hrs・atmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の青果物鮮度保持包装用フィルム。
【請求項5】フィルムの最内面が防曇処理されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の青果物鮮度保持包装用フィルム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は花卉、果実、野菜等の青果物の鮮度低下を抑制するための鮮度保持包装用フィルムに関する。
更に詳しくは青果物を密封包装し、系内のガス組成を適正に維持するための鮮度保持包装用フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
青果物の鮮度低下を抑制する方法の1つとして、青果物の雰囲気環境ガス組成を変更する方法が一般的に行われており、CA(Controlled Atomosphere)貯蔵としてリンゴの長期貯蔵等で実用化されている。
また、フィルム密封包装と青果物の呼吸作用を利用して包装内を低酸素、高炭酸ガス濃度に保つ、いわゆるMA(Modified Atomosphere)貯蔵も広く行われている。
このとき、包装袋内を適切なガス組成に保つためには青果物の呼吸量に合わせて適度な酸素、炭酸ガス透過性を有するフィルムを選択することが不可欠である。
【0003】
従来行われているフィルムの酸素、炭酸ガス透過性のコントロール方法には下記の3種がある。
(1).適度なガス透過性を有するフィルム材質の選択
(2).フィルム厚みの変更によるガス透過性の調節
(3).フィルムヘの開孔によるガス透過性の調節
(1)はフィルム材質により固有な酸素、炭酸ガス透過性を利用し、適度な酸素、炭酸ガス透過性を選択するものであり、例えば、最も代表的な熱可塑性樹脂であるポリエチレンの場合、厚さ30μでの23℃における酸素透過度は5000〜8000cc/m2・24hrs・atmであり、また同じ厚みでの2軸延伸ポリプロピレンフィルムの場合には23℃における酸素透過度は1000〜3000cc/m2・24hrs・atmであるため、フィルムの材質を変更することにより酸素、炭酸ガス透過性を制御することが可能である。
【0004】
(2)はフィルムのガス透過性が厚みに反比例することを利用するものであり、同一素材のフィルムでもフィルム厚みを変更することにより広い範囲のガス透過性を得ることが可能である。
(3)はフィルムに微孔を開けて、その孔の大きさと数によりガス透過性を制御する技術である。
フィルムに20〜100μの平均直径を有する孔を有し、平方メートルあたり10〜1000個の孔を有して、25℃、75%における酸素透過度が200000cc/m2・24hrs・atm以下で制御可能なフィルムが、特開平2-73831および特開平2-85181号公報に提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術(1)および(2)では、使用フィルムの材質および厚さが限定されるという欠点を有しており、フィルム素材が従来持つ、印刷適性、腰、強度、シール性等が非常に限定される為、実用的ではなかったのが現状である。
更に上記(1)および(2)の方法においては積層フィルムの場合には更に酸素透過度の選択の幅がせまくなる。
通常、青果物のMA包装に適するガス透過性は、23℃における酸素透過度で1000〜100000cc/m2・24hrs・atmの範囲であることが殆どである。
これに対して通常の積層フィルムでは基材として延伸ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等の比較的酸素透過度の低い包装材料を用いることが多く、これらから成る積層フィルムの23℃における酸素透過度は1000cc/m2・24hrs・atm以下であり、青果物のMA包装用フィルムには適さない。
【0006】
また、呼吸量が非常に大きい青果物、例えば青ウメ、ブロッコリー、きのこ等のMA包装用フィルムの場合、フィルムの酸素透過度が足りないと包装袋内の酸素濃度が急激に低下し、呼吸障害が発生して異臭・障害等を発生して商品性を失う。
この場合、フィルムの23℃における酸素透過度は通常15000cc/m2・24hrs・atm以上必要な場合があるが、上記(1)および(2)の方法でこの酸素透過度を得ることは困難であり、比較的酸素透過度が高いフィルム材質であるエチレン・酢酸ビニル共重合フィルムやポリブタジエンフィルムでも23℃での酸素透過度は厚さ30μに換算してやはり15000cc/m2・24hrs・atm以下であり、夏期の高温流通時には包装袋内の酸素不足による呼吸障害の恐れがある。
【0007】
これに対して、(3)の技術は基本的にはあらゆる種類の包装材料に適用可能な方法であり、フィルム材質、構成、印刷の有無等を選ばない点で(1)および(2)の技術より遙に優れることは明らかである。
しかしながら、特開平2-73831および特開平2-85181に提案されている方法では、その平均直径が20〜100μである。
この孔径では青果物を入れて密封する際に青果物からでる微小なゴミが孔部分を塞ぎやすく、酸素および炭酸ガス透過度を正確に制御することが困難である。
また、開孔加工時にも粉塵、フィルム片等の種々の微小なゴミが発生するが、これらも孔部分を塞いで酸素および炭酸ガス透過度を正確に制御することを困難にする。
【0008】
また、孔径が100μ以下の場合、開孔後に印刷を施した場合には印刷インキにより微孔が埋まり、その効果を発揮しないという欠点をも有する。
開孔は必ずしも積層・印刷後に施されるとは限らず、開孔後に印刷、防曇加工等を施す場合には、100μ以下の孔では孔が埋まって孔径が変化してしまい、酸素および炭酸ガス透過度を正確に制御することが不可能である。
更に現状の技術では平均直径100μ以下の均一な開孔にはレーザー等の光学的な手段を用いなければならず、加工がコスト高になるという欠点を有する。
物理的な方法、たとえば加熱針による開孔の場合には孔径を100μ以下で制御するのは困難であるがコスト的には有利である。
【0009】
更に、このような呼吸量の大きな青果物は多量の水蒸気も同時に発生する。
この場合、MA包装を行うべくフィルム包装により密封すると、包装袋内が過剰湿度となり、結露・水滴となって包装袋内に付着する。
この余剰水分はカビ・腐敗の温床となり、鮮度低下の要因となる。
上述の微孔開孔を施した場合にも、酸素・炭酸ガスの透過度は制御可能であるが、同時に水蒸気透過度を制御することは困難であり、フィルムの水蒸気透過度はフィルム材質自身にほとんど依存することが本発明者らの実験により明らかになっている。
【0010】
従って、この過剰湿度を防止するためには、適度な水蒸気透過性を有するフィルム材質を用いることが必要であるが、通常の青果物包装に用いられるポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルムでは通常用いられる30μ程度の厚さではその水蒸気透過度は40℃、90%RHで30g/m2・24hrs以下であり、過剰湿度によるカビ・腐敗の進行が避けられない。
また、水蒸気透過度を増加させる為に、0.5mm径以上の穴を多数開孔することにより水蒸気透過度を制御するフィルムもみられるが、このフィルムでは逆に酸素・炭酸ガスの制御ができない為に、MA包装用にフィルムとして用いることができない。
【0011】
本発明は前記従来技術における問題点を解消し、青果物を密封包装して、系内のガス組成を適性に維持するための鮮度保持包装用フィルムを提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記従来技術の問題点を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、平均径が100〜300μの微孔であれば、微孔面積と微孔数によりフィルムの酸素、炭酸ガス透過度の制御が可能であり、青果物から出る微細なゴミ、および開孔時に発生する微細な粉塵等により微孔が塞がらない青果物鮮度保持包装用フィルムが作成可能であり、尚かつ、適度な水蒸気透過性を有するフィルム材質を選択することにより、カビ・腐敗の進行を抑え、更に長期間に渡り鮮度を維持することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
以下に本発明を更に詳細に説明する。
本発明の青果物鮮度保持包装用フィルムは、フィルムに平均径が100〜300μの微孔を有する。
フィルムの酸素および炭酸ガス透過度は孔径とその数、即ち微孔面積に依存し、本発明者らの実験によれば、その微孔あたりの酸素および炭酸ガス透過度は100〜900cc/24hrs・atmである。
これは微孔からの酸素および炭酸ガス透過量は同じであり、透過量は孔面積に比例することを意味する。
例えば、微孔値径が100μの場合には微孔あたりの酸素および炭酸ガス透過度は100cc/24hrs・atm程度であることが本発明者等の実験により明らかになっている。
したがって、平方メートルあたりの孔数をかえることによりフィルムの酸素透過度をコントロールすることが可能となる。
【0014】
本発明においては微孔の平均径が重要であり、平均径が300μ以上では微孔あたりの酸素および炭酸ガス透過度が900cc/24hrs・atm以上となり、青果物のMA貯蔵に適したフィルムの酸素および炭酸ガス透過度の制御が困難である。
また、100μ以下では前述の通り、青果物を入れて密封する際に青果物からでる微小なゴミが孔部分を塞ぎやすく、酸素および炭酸ガス透過度を正確に制御することが困難である。
また、開孔加工時にも粉塵、フィルム片等の種々の微小なゴミが発生するが、これらも孔部分を塞いで酸素および炭酸ガス透過度を正確に制御することを困難にする。
【0015】
また、孔径が100μ以下の場合、開孔後に印刷を施した場合には印刷インキにより微孔が埋まり、その効果を発揮しないという欠点をも有する。
開孔は必ずしも積層・印刷後に施されるとは限らず、開孔後に印刷、防曇加工等を施す場合には、100μ以下の孔では孔が埋まって孔径が変化してしまい、酸素および炭酸ガス透過度を正確に制御することが不可能である。
更に現状の技術では平均直径100μ以下の均一な開孔にはレーザー等の光学的な手段を用いなければならず、加工がコスト高になるという欠点を有する。
物理的な方法、たとえば加熱針による開孔の場合には孔径を100μ以下で制御するのは困難であるがコスト的には有利である。
このため、本発明においてはその微孔の平均直径は100〜300μであることが必要不可欠な要素である。
【0016】
本発明においての孔の形状は、加工方法および加工速度により、円または楕円となる。
特に物理的な方法、例えば加熱針を用いた場合には針とフィルムとの接触時間が長くなるために形状は楕円となりやすい。
このような場合においても孔の平均直径が100〜300μの円と同等の面積を有していれば全く同様の効果が得られる。
即ち、本発明において微孔は必ずしも真円である必要はない。
【0017】
フィルムの材質としては、通常の用いられるすべての高分子フィルムを用いることができ、また積層したフィルムを用いることも可能であり、フィルム材質により本発明が限定されることはない。
最内層に低温でヒートシール可能な層を有していれば、シール密封が容易に可能であるためより望ましいが、密封が完全であれば輪ゴム止め等の方法を用いてもよい。
また、本発明のフィルムは必ずしも透明である必要はなく、必要に応じて印刷、防曇処理等を加えることもできる。
開孔は印刷、防曇処理等の工程の前、後いずれでも可能である。
【0018】
開孔の方法としては、加熱針等の物理的手段および、レーザー等の光学的手段のいずれも用いることができる。
100〜300μの孔径であれば、物理的な手段を用いても十分に開孔可能な範囲であり、コスト的にも有利である。
もちろんレーザー等でも加工可能であり、この場合には更に精密な孔径の制御が可能となる。
また、微孔開孔にレーザーを用いる場合には、対象フイルムが効率良くレーザーを吸収する必要があり、例えば、CO2レーザーにより加工を施す際には発振波長10.6μでの吸収率の高いポリスチレンフィルムは微孔開孔に更に適しており、より低出力のレーザーで効率良く微孔開孔が可能である。
【0019】
本発明において、対象青果物の呼吸量が大きく、密封包装により余剰水分が発生してカビ・腐敗が発生しやすい、例えばブロッコリー・青ウメ・きのこ類等においては更にフィルム材質を限定してその水蒸気透過度を選択する必要がある。
これらの鮮度保持に必要な適度な水蒸気透過度は40℃、90%RHで30〜300g/m2・24hrs、より好ましくは50〜200g/m2・24hrsである。
水蒸気透過度が30g以下では余剰水分によるカビ・腐敗の進行が早い。
また、300g以上では蒸散による萎れ・重量減少が著しく、商品性が低下する。
【0020】
このような水蒸気透過性は上述の開孔した微孔部分からは期待できないことが本発明等の実験により判明しているため、水蒸気透過性はフィルム材質自身の透過性を用いることが必要である。
上述の水蒸気透過性の範囲を満たすフィルムとしては、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリメチルペンテン、再生セルロース等を用いることが可能であり、必要に応じてこれらを積層して用いることも可能である。
【0021】
本発明の青果物鮮度保持包装用フィルムにより、あらゆる材質の単体フィルムおよびそれらの積層フィルムで酸素および炭酸ガス透過度の制御が可能となり、青果物を低酸素、高炭酸ガス状態で保存するMA貯蔵が可能となる。
更にその水蒸気透過度をフィルム材質により選択することにより、フィルムから適度な蒸散を促し、過剰水分によるカビ・腐敗の発生を抑制することが可能である。
また、本発明に用いられるフイルムは、前記のとおり単層或いは多層の何れでもよいが、多層の例としては、ポリアミド/無延伸ポリスチレン、ポリアミド/ポリブタジエン、2軸延伸ポリスチレン、ポリピニールアルコール/無延伸ポリスチレン、ポリピニールアルコール/ポリブタジエン等がある
【0022】
【実施例】
次に実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これにより本発明が限定されるものではない。
(実施例1)
片面ヒートシール可能な2軸延伸ポリプロピレンフィルム30μ(東京セロハン紙(株)製)に孔の平均直径150μ、孔数50個/m2となるように加熱針を用いて連続的に開孔した。
【0023】
(実施例2)
片面ヒートシール可能な2軸延伸ポリプロピレンフィルム30μ(東京セロハン紙(株)製)に孔の平均直径150μ、孔数100個/m2となるように加熱針を用いて連続的に開孔した。
【0024】
(実施例3)
片面ヒートシール可能な2軸延伸ポリプロピレンフィルム30μ(東京セロハン紙(株)製)に孔の平均直径150μ、孔数200個/m2となるように加熱針を用いて連続的に開孔した。
【0025】
(実施例4)
片面ヒートシール可能な2軸延伸ポリプロピレンフィルム30μ(東京セロハン紙(株)製)に孔の平均直径150μ、孔数200個/m2となるように加熱針を用いて連続的に開孔し、その後に開孔部分に印刷加工を施した。
【0026】
(実施例5)
無延伸ポリスチレンフィルム30μ(東興資材工業(株)製)に孔の平均直径150μ、孔数100個/m2となるように加熱針を用いて連続的に開孔した。
【0027】
(比較例1)
片面ヒートシール可能な2軸延伸ポリプロピレンフィルム30μ(東京セロハン紙(株)製)に孔の平均直径500μ、孔数50個/m2となるように加熱針を用いて連続的に開孔した。
【0028】
(比較例2)
片面ヒートシール可能な2軸延伸ポリプロピレンフィルム30μ(東京セロハン紙(株)製)に孔の平均直径50μ、孔数250個/m2となるようにレーザーを用いて連続的に開孔した。
【0029】
(比較例3)
片面ヒートシール可能な2軸延伸ポリプロピレンフィルム30μ(東京セロハン紙(株)製)に孔の平均直径50μ、孔数500個/m2となるようにレーザーを用いて連続的に開孔した。
【0030】
(比較例4)
片面ヒートシール可能な2軸延伸ポリプロピレンフィルム30μ(東京セロハン紙(株)製)に孔の平均直径50μ、孔数1000個/m2となるようにレーザーを用いて連続的に開孔した。
【0031】
(比較例5)
片面ヒートシール可能な2軸延伸ポリプロピレンフィルム30μ(東京セロハン紙(株)製)に孔の平均直径50μ、孔数1000個/m2となるようにレーザーを用いて連続的に開孔し、その後に開孔部分に印刷加工を施した。
【0032】
(比較例6)
片面ヒートシール可能な2軸延伸ポリプロピレンフィルム30μ(東京セロハン紙(株)製)を未開孔のまま用いた。
【0033】
(比較例7)
直鎖低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE)30μ(東京セロハン紙(株)製、トーセロTUX)に孔の平均直径150μ、孔数100個/m2となるように加熱針を用いて連続的に開口した。
【0034】
(試験例1)
上記の本発明の実施例1〜4および比較例1〜6のフィルムについて23℃における酸素および炭酸ガス透過度を測定した結果を表1に示す。
【0035】




【0036】
実施例1〜3より明らかなように、本実施例のフィルムは未開孔の単体フィルムに比べて高い酸素透過度を有しており、粉塵等による目詰まりも皆無であるため、孔数を変更することにより酸素および炭酸ガス透過度を自由に制御することが可能であり、酸素および炭酸ガス透過度は孔数に比例した。
また、開孔後に印刷加工を施した場合でもガス透過度は変化していなかった。
【0037】
これに対して、比較例1では孔径が大きすぎる為に酸素および炭酸ガス透過度が大きくMA包装用フィルムとしては適さない酸素および炭酸ガス透過度であった。
また、比較例2〜5から明らかなように、孔径が50μの場合には開孔加工時の粉塵やゴミ等により孔の一部が塞がれた為、酸素および炭酸ガス透過度が低く、バラツキも大きくなっていた。
また、孔数と酸素および炭酸ガス透過度にも比例関係は認められなかった。
更に印刷加工を施した場合には、印刷インキによって一部の孔が埋まってしまった為、印刷後には更に酸素および炭酸ガス透過度の低下が認められた。
【0038】
(試験例2)
実施例2および比較例1、4、6のフィルムで内寸200×150mmのパウチを作成し(パウチ表面積0.06m2)、しいたけ200gを密封包装して、20℃で5日間保存した後に内部ガス組成およびしいたけの品質変化を調べた。
その結果を表2に示す。
【0039】


【0040】
表2から明らかなように本実施例ではパウチ内を最適な酸素濃度に保つことが可能であり、しいたけの褐変、萎れ防止に効果的であって、尚且つ過度の低酸素による異臭を発生することがなかった。
これに対して比較例1では酸素濃度が高いために褐変が進行した。
また、比較例4のフィルムでは、孔が包装時のゴミや微小なしいたけ片で一部塞がれており、比較例6と同様に酸素濃度が低過ぎるために異臭が発生した。
【0041】
(試験例3)
実施例1および比較例1、4、6のフィルムで内寸300×400mmのパウチを作成し(パウチ表面積0.24m2)、カットレタス1Kgを密封包装して、10℃で三日間保存した後に内部ガス組成およびカットレタスの品質変化を調べた。
その結果を表3に示す。
【0042】

【0043】
表3から明らかなように本実施例ではパウチ内を最適な酸素濃度に保つことが可能であり、カットレタスの褐変、萎れ防止に効果的であって、尚且つ過度の低酸素による異臭を発生することがなかった。
これに対して比較例1では酸素濃度が高いために褐変が進行した。
また、比較例4のフィルムでは、孔が包装時のゴミや微小なカットレタス片で一部塞がれており、比較例6と同様に酸素濃度が低すぎるために異臭が発生した。
【0044】
(試験例4)
本発明の実施例2および5について酸素および水蒸気透過度を測定した結果を表4に示す。
表4から明らかなように、本実施例5のフィルムは蒸散の激しい青果物のMA包装に適する適度な水蒸気透過度を有しており、尚且つ適度な酸素透過度を有している。
【0045】

【0046】
(試験例5)
実施例2、5および比較例7のフィルムで210×300mmのパウチを作成し、ブロッコリ1株を密封包装して20℃で7日間保存して内部ガス組成およびブロッコリーの品質変化を調べた結果を表5に示す。
表5から明らかなように本実施例においては、パウチ内を最適な酸素濃度に保つことが可能であり、尚かつ、適度な蒸散によりカビ・腐敗の発生を防止して鮮度保持期間を延長することが可能である。
【0047】


【0048】
【発明の効果】
本発明は以上説明したように構成されているから、あらゆる材質のフィルムで青果物の密封包装によるMA包装が可能となり、青果物の鮮度低下を長期間にわたり抑制することが可能となり、産業上極めて有用である。更に適度な水蒸気透過性を有するフィルムを用いることにより、蒸散の激しい青果物のMA包装も可能となり、更に繊度保持期間を延長することも可能である。
 
訂正の要旨 (イ).明細書原本(設定登録時の明細書)の特許請求の範囲の【請求項1】を次のとおり訂正すると共に【請求項5】を削除し、かつ、【請求項6】を【請求項5】に訂正することを求める。
『【請求項1】 平均径が100〜300μの微孔を有し、更に、50〜200個/m2の微孔数を有し、且つフィルム材質の水蒸気透過度が40℃、90%RHにおいて30〜300g/m2・24hrsであり、微孔面積と微孔数によりフィルムの酸素、炭酸ガス透過度を規定することを特徴とする青果物鮮度保持包装用フィルム。
【請求項2】 フィルムの材質が、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリメチルペンテン、再生セルロースのいずれかより構成されている請求項1に記載の青果物鮮度保持包装用フィルム。
【請求項3】 微孔を有するフィルム全体の23℃における酸素および炭酸ガス透過度が1000〜100000cc/m2・24hrs・atmである請求項1又は2に記載の青果物鮮度保持包装用フィルム。
【請求項4】 微孔1個あたりの酸素および炭酸ガス透過度が100〜900cc/m2・24hrs・atmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の青果物鮮度保持包装用フィルム。
【請求項5】 フィルムの最内面が防曇処理されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の青果物鮮度保持包装用フィルム。』
異議決定日 2003-03-14 
出願番号 特願平4-248326
審決分類 P 1 651・ 121- YA (A23B)
P 1 651・ 161- YA (A23B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鈴木 恵理子  
特許庁審判長 徳廣 正道
特許庁審判官 種村 慈樹
田中 久直
登録日 2001-09-14 
登録番号 特許第3230853号(P3230853)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 青果物鮮度保持包装用フィルム  
代理人 金山 聡  
代理人 金山 聡  

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