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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C04B
審判 一部申し立て 2項進歩性  C04B
管理番号 1077953
異議申立番号 異議2001-72058  
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-07-25 
確定日 2003-04-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3131008号「配向した長軸結晶を有するセラミックスの製造方法」の請求項1ないし6、8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3131008号の請求項1ないし6、8に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3131008号の請求項1〜8に係る発明についての出願は、平成4年2月6日になされ、平成12年11月17日に、その発明について特許の設定登録がなされ、その後、その請求項1〜6及び8に係る特許について特許異議の申立てがなされ、平成13年11月2日(平成13年10月18日付け)に取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年1月4日に訂正請求がなされ、さらに、平成15年2月25日(平成15年2月6日付け)に取消理由通知の手交がなされると同時に、訂正請求がなされたものである。(なお、平成14年1月4日付け訂正請求は取り下げられた。)
2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正の内容
a.特許請求の範囲の請求項1の
「【請求項1】長軸結晶ないし長軸結晶核を含むセラミック予焼結体を、その加圧塑性変形可能な温度範囲において、該長軸結晶を配向させるに十分な量一つの軸方向に加圧圧縮して圧縮軸方向に圧縮変形させると同時に圧縮軸と異った方向に膨張変形させる結晶配向工程を含むことを特徴とする実質的に配向された長軸結晶を有するセラミック焼結体の製造方法。」を
「【請求項1】長軸結晶ないしその長軸結晶核を含むセラミック予焼結体を、その加圧塑性変形可能な温度範囲において、該長軸結晶を配向させるに十分な量一つの軸方向に加圧圧縮して圧縮軸方向に圧縮変形させると同時に圧縮軸と異った方向に膨張変形させる結晶配向工程を含み、前記セラミック予焼結体が超高靱性かつ超高強度に達するまで焼結すること、前記長軸結晶は、窒化珪素の柱状ないし針状結晶のうちの少なくとも1種であることを特徴とする実質的に配向された長軸結晶を有する超高靱性かつ超高強度のセラミック焼結体の製造方法。」 と訂正する。
b.特許請求の範囲の請求項7の
「【請求項7】前記配向された長軸結晶を有するセラミック焼結体即ち2次焼結体をさらにHIP処理により所定アスペクト比に達するまで結晶成長させる工程を含む請求項1〜6の一に記載の製造方法。」を
「【請求項7】長軸結晶ないし長軸結晶核を含むセラミック予焼結体を、その加圧塑性変形可能な温度範囲において、該長軸結晶を配向させるに十分な量一つの軸方向に加圧圧縮して圧縮軸方向に圧縮変形させると同時に圧縮軸と異った方向に膨張変形させる結晶配向工程で実質的に配向された長軸結晶を有するセラミック焼結体を得て、前記配向された長軸結晶を有するセラミック焼結体即ち2次焼結体をさらにHIP処理により所定アスペクト比に達するまで結晶成長させる工程を含むことを特徴とする実質的に配向された長軸結晶を有するセラミック焼結体の製造方法。」
と訂正する。
c.特許請求の範囲の請求項8の
「【請求項8】前記長軸結晶は・・・である請求項1〜7の一に記載の製造方法。」を
「【請求項8】前記長軸結晶は・・・である請求項7に記載の製造方法。」
と訂正する。
d.明細書の段落【0001】の
「本発明は、・・・セラミック焼結体及びその製造方法に関し、・・・」を
「本発明は、・・・セラミック焼結体の製造方法に関し、・・・」
と訂正する。
e.明細書の段落【0011】の
「本発明は、第2に、高強度及び高靱性を兼備した・・・」を
「本発明は、第2に、高強度及び高靱性を兼備したセラミック焼結体が得られる・・・」
と訂正する。
f.明細書の段落【0012】の
「【発明による課題の解決手段】本発明第1の目的は、長軸の結晶ないし長軸結晶核を含むセラミック予焼結体を、その加圧塑性変形が可能な温度範囲において、該長軸結晶を配向させるに十分な量一つの軸方向に加圧圧縮して圧縮軸方向に圧縮変形させると同時に圧縮軸と異った方向に膨張変形させることを特徴とする配向された柱状ないし針状結晶を有するセラミック焼結体の製造方法によって達成される。」を
「【発明による課題の解決手段】本発明第1の目的は、長軸結晶ないし長軸結晶核を含むセラミック予焼結体を、その加圧塑性変形可能な温度範囲において、該長軸結晶を配向させるに十分な量一つの軸方向に加圧圧縮して圧縮軸方向に圧縮変形させると同時に圧縮軸と異った方向に膨張変形させる結晶配向工程で実質的に配向された長軸結晶を有するセラミック焼結体を得て、前記配向された長軸結晶を有するセラミック焼結体即ち2次焼結体をさらにHIP処理により所定アスペクト比に達するまで結晶成長させる工程を含むことを特徴とする実質的に配向された長軸結晶を有するセラミック焼結体の製造方法によって達成される。また、本発明第2の目的は、長軸の結晶ないしその長軸結晶核を含むセラミック予焼結体を、その加圧塑性変形が可能な温度範囲において、該長軸結晶を配向させるに十分な量一つの軸方向に加圧圧縮して圧縮軸方向に圧縮変形させると同時に圧縮軸と異った方向に膨張変形させる結晶配向工程を含み、前記セラミック予焼結体が超高靱性かつ超高強度に達するまで焼結すること、前記長軸結晶は、窒化珪素の柱状ないし針状結晶のうちの少なくとも1種であることを特徴とする実質的に配向された長軸結晶を有する超高靱性かつ超高強度のセラミック焼結体の製造方法によって達成される。」
と訂正する。
g明細書の段落【0086】の
「【発明の効果】本発明の1次元ないし・・・容易に改善される。(請求項1)」を
「【発明の効果】本発明の1次元ないし・・・容易に改善される。(請求項1,7)」
と訂正する。
h.明細書の段落【0088】の
「各従属請求項2〜8の特徴に従い、夫々具体的かつ規定された仕方によって目的とする高強度、高靱性のセラミック焼結体がえられる。特に2次焼結体(HP処理結果物)にさらにHIPを施すことにより、強度の低下を招くことなくアスペクト比の増大(長軸結晶成長)を達成でき、かつてない超高靱性かつ超高強度のセラミック焼結体が得られる。(請求項8)」を
「各従属請求項2〜6及び8の特徴に従い、夫々具体的かつ規定された仕方によって目的とする高強度、高靱性のセラミック焼結体がえられる。2次焼結体(HP処理結果物)にさらにHIPを施すことにより、強度の低下を招くことなくアスペクト比の増大(長軸結晶成長)を達成でき、かつてない超高靱性かつ超高強度のセラミック焼結体が得られる。(請求項7)」
と訂正する。
2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
aの訂正は、特許請求の範囲の請求項1の記載において、訂正前の「長軸結晶」を「窒化珪素の柱状ないし針状結晶のうちの少なくとも1種」に限定するとともに、「長軸結晶核」を「その長軸結晶核」と限定し、かつ、「結晶配向工程を含む」を「結晶配向工程を含み、前記セラミック予焼結体が超高靱性かつ超高強度に達するまで焼結すること」に、「セラミック焼結体」を「超高靱性かつ超高強度のセラミック焼結体」に、それぞれ限定するものであり、また、長軸結晶を「窒化珪素の柱状ないし針状結晶のうちの少なくとも1種」とし、「セラミック予焼結体が超高靱性かつ超高強度に達するまで焼結すること」により、「超高靱性かつ超高強度のセラミック焼結体」を製造することは、明細書の段落【0001】、【0024】、【0025】、【0071】〜【0082】、【0092】に記載されているから、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
bの訂正は、訂正前の請求項7を、引用形式の請求項から独立形式の請求項に訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
cの訂正は、択一的に引用されていた請求項の1部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
d〜hの訂正は、前記a、b及びcの訂正に伴い、明細書の対応する記載を整合するように訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
2-3.訂正の適否についての結論
したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議申立についての判断
3-1.本件発明
上記2で示したとおり、上記訂正が認められるから、本件1〜8に係る発明は、上記訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】長軸結晶ないしその長軸結晶核を含むセラミック予焼結体を、その加圧塑性変形可能な温度範囲において、該長軸結晶を配向させるに十分な量一つの軸方向に加圧圧縮して圧縮軸方向に圧縮変形させると同時に圧縮軸と異った方向に膨張変形させる結晶配向工程を含み、前記セラミック予焼結体が超高靱性かつ超高強度に達するまで焼結すること、前記長軸結晶は、窒化珪素の柱状ないし針状結晶のうちの少なくとも1種であることを特徴とする実質的に配向された長軸結晶を有する超高靱性かつ超高強度のセラミック焼結体の製造方法。
【請求項2】前記配向工程に引続き又はそれと同時に配向された状態で長軸結晶を制御下に成長させる結晶成長工程をさらに含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】前記膨張変形の量は、前記予焼結体の未焼成成形体からの焼成収縮量に少くとも相当する量である請求項1〜2の一に記載の製造方法。
【請求項4】前記膨張変形は、前記加圧圧縮軸と直交する一次元方向に実質上行われる請求項1〜3の一に記載の製造方法。
【請求項5】前記膨張変形は、前記加圧圧縮軸と直交する2次元方向に実質上行われる請求項1〜3の一に記載の製造方法。
【請求項6】前記予焼結体を実質的に圧縮的加圧を施すことなく焼結する予焼結工程をさらに含み、焼成収縮した状態の前記予焼結体をホットプレス装置に遊隙をもって装填して前記長軸結晶の実質的配向に十分な圧力下にホットプレス加圧し、配向された状態の長軸結晶を所定アスペクト比に達するまで成長させるに十分な時間ホットプレス加圧を継続することを特徴とする請求項1〜5の一に記載の製造方法。
【請求項7】長軸結晶ないし長軸結晶核を含むセラミック予焼結体を、その加圧塑性変形可能な温度範囲において、該長軸結晶を配向させるに十分な量一つの軸方向に加圧圧縮して圧縮軸方向に圧縮変形させると同時に圧縮軸と異った方向に膨張変形させる結晶配向工程で実質的に配向された長軸結晶を有するセラミック焼結体を得て、前記配向された長軸結晶を有するセラミック焼結体即ち2次焼結体をさらにHIP処理により所定アスペクト比に達するまで結晶成長させる工程を含むことを特徴とする実質的に配向された長軸結晶を有するセラミック焼結体の製造方法。
【請求項8】前記長軸結晶は柱状ないし針状結晶又は長軸を有する板状結晶である請求項7に記載の製造方法。」
3-2.申立て理由及び取消理由の概要
特許異議申立人は、甲第1号証〜甲第3号証を提出して、本件請求項1〜5及び8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、また、本件請求項1〜6及び8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1〜6及び8に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきである、と主張している。
平成13年10月18日付けの取消理由通知は、本件請求項1〜6及び8に係る発明が、甲第2号証に記載された発明であるという理由が加えられた以外は、上記申立て理由と同趣旨である。
3-3.刊行物に記載された発明
平成13年10月18日付けの取消理由に引用された刊行物1(甲第1号証に同じ、「セラミックス」第24巻、第10号、1989年10月、第965〜974頁)には、
「粒子配向セラミックスの作製と特性及びその電子材料への応用」と題し、
「単結晶のもっている異方性をなるべく損なうことなしに、単結晶の性質を極限まで引き出せるようなセラミックスの作製法として、製造過程において微細構造を制御し、結晶粒を配向させる粒子配向技術が近年注目され、強誘電体セラミックスや高温超伝導セラミックスに相次いで応用されている。
本論文では、粒子配向セラミックスの代表的な作製法であるホット・フォージング(HF)法による粒子配向型ビスマス層状構造強誘電体(BLSF)セラミックスの作製とその特性及び電子材料への応用について述べる。」(第965頁左欄17行〜右欄3行)
「ホット・フォージング(以下、「HF」と略す)法は、試料焼成中に一軸性の圧力を加えて圧縮変形させるホット・ワーキング法の一種で、試料の変形度が大きいので、結晶構造異方性の大きな酸化物セラミックスを粒子配向させるのに大変有効的な粒子配向技術である。・・・
図1にHF装置(加圧装置と電気炉)の概略図を、図2にHFプログラム例をそれぞれ示す。図1(a)に示す記号Bが直径15〜20mm、高さ20〜40mmの試料で、アルミナプランジャーとの反応を防止するために2枚の白金板でサンドイッチし、800゜〜1200℃(Tm)での普通焼成(OF)過程が終了した後に、その温度(Tm)を保持しながら、てこと重りを用いた加圧装置により試料に圧力を徐々に加え、圧縮変形させる。試料が適当な厚みになるまでおよそ1〜3時間ぐらいで変形を終了させる。その後、圧力を抜き、アニール過程(ta)を経て降温する。フォージング温度(Tm)は、各試料に対して予備実験を行い、試料にひび割れが生じない温度を設定した。また、圧縮率(高さの減少率)λ(=80〜90%程度)、あるいは圧延率(フォージング前後の面積比)γ(=5〜10程度)の制御は、ダイヤルゲージと差動トランスを併用した変形度モニターにより、圧力印加時間(tp)を変化させることにより行った。」(第965頁右欄20行〜第966頁右欄5行)
と記載され、
図1には、ホット・フォージング(HF)装置が、図2には、ホット・フォージング(HF)プログラムが示されており、また、
「本論文では、BLSF族の中で、次の四つの固溶体系を選んだ。
(A) Bi4-xPbxTi3-xNbxO12(BPTN-100x)
x=0,Bi4Ti3O12(BIT)
(B) Pb1-x(Na1/2Bi1/2)xBi4Ti4O15(PNBT-100x)
x=0,PbBi4Ti4O15(PBT)
x=1,Na0.5Bi4.5Ti4O15(NBT)
・・・
ここで、()の中はそれぞれの略号を示す。」(第966頁右欄下から3行〜第967頁左欄12行)
「今後の課題としては、BLSF以外の低対称酸素八面体族、すなわち、タングステンブロンズ型、パイロクロア型、擬イルメナイト型などの粒子配向試料を作製し、それらの諸特性と結晶対称性との関係を系統的に調べ、低対称圧電・焦電セラミックスの新しい機能性を引き出す工夫が望まれる。」(第973頁左欄18行〜右欄2行)
と記載されている。
同じく引用された刊行物2(甲第2号証に同じ、「窯業協会誌」Vol.82,No.5,昭和49年5月,p.241〜247)には、
「六方晶フェライトの高温変形と粒子配向」と題し、
「六方晶フェライトとして、Ba-フェライト(化学式:BaFe12O19)を選んだ。Ba-フェライト用原料として、試薬特級のBaCO3とFe2O3を用いた。Ba-フェライトは、ふつうにフェライト焼結体を作る時と同様に、原料粉末を水と共にボールミル混合、乾燥後、・・・ホットプレスして作った。・・・
press forgeの装置を図-1に示す。試料への荷重は、梃子によって、静的に加えた。・・・Ba-フェライト焼結体は、1150℃を越えた温度では充分な延性をもち、塑性変形が容易であった。1200℃でのpress forgeの前後における焼結体試料の変形のようすを図-2に示す。」(第242頁右欄2行〜下から9行)
「六方晶Ba-フェライトは、ふつうの焼成においても、c面が発達するような結晶成長を行なうし、・・・press forge中に、forgeの圧力方向に垂直な方向に、c面が配向していくことが考えられる。」(第243頁右欄4〜12行)
「Press forgeの過程の進行とともに、焼結体を構成する結晶粒子が、結晶のc軸に垂直な方向に形をかえ、扁平な形の結晶粒子となっていくが、さらに変形を進めると、この扁平な形の結晶粒子は成長を行ない、外観上扁平性をなくしていくが、X線回折線図の解析は、c面の配向は、この粒子成長によって、扁平性がなくなっていくあたりから急速に進行することを示した。すなわち、c面のよく配向したBa-フェライト焼結体を作るには、1つの方法として、press forgeによって結晶粒子を扁平な形に変形し、さらに、それ以上に変形をすすめたり、熱処理を加えたりすることによってこの扁平に変形した結晶粒子をもとにして、さらに結晶粒子を成長させることが有効であろうと考えられる。」(第247頁右欄2〜14行)
と記載されている。
同じく引用された刊行物3(甲第3号証に同じ、特開平1-230460号公報)には、
「1.粉末での焼成時に、C面を成長させた粒子を含む酸化物超電導粉末を作製し、前記酸化物超電導粉末を、有機溶剤中に混ぜて、前記有機溶媒を飛ばしながらスラリ状にした後、1mm以下の厚みになるように延ばしシート状に作製し、前記シートをある形状に加工し積層して、さらにホットプレスにより焼結することで、焼結体の内部まで配向した組織を得ることを特徴とする酸化物超電導材の製造方法。
・・・・・
4.特許請求の範囲第1項ないし第3項において、C面の成長した前記粒子のアスペクト比が5以上であり、この粒子を体積比で50Vol%以上含み、更に、板状結晶の最大長が10μm以上である粉末を使用することを特徴とする酸化物超電導材の製造方法。」(特許請求の範囲の請求項1,4)
「また、このシートを数枚重ね合わせることで、成形体の内部まで粒子が配向できる。さらに、ホットプレスで、焼成中にある圧力を加えることにより、さらに、配向を促進させる効果がある。同時に酸素を十分補給することで、超電導特性も失うことなく、焼結体を得ることができる。」(第2頁右下欄13〜18行)
「<実施例3>
試薬のY2O3,BaCO3,CuOをモル比で1:2:3になるように秤量し、さらに、PCO3を0.5モル%添加し、以下、実施例2と同様にして超電導粉末を得た。この粉末を有機溶剤中に混ぜて、ドクターブレード法により厚さ約1mmのシートを作製した。このシートを直径60mmに切り抜き、三枚積層し、ZrO2製のダイスにセットし、980℃で七時間保持、加圧力:50MPa酸素雰囲気中でホットプレス焼結を行い焼結体を得た。
この焼結体の密度を測定したところ、6.23g/cm3と緻密化した。また、特性を評価したところ、オンセット:95゜K、オフセット89゜Kの臨界温度を示した。
SEMによる組織観察の結果、表面・焼結体内部とも粒子がアスペクト比:10に成長し、配向していることが確認できた。」(第3頁左下欄11行〜右下欄8行)
と記載されている。
3-4.当審の判断
本件請求項1に係る発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1には、粒子配向型ビスマス層状構造強誘電体(BLSF)の長軸結晶を含むセラミック予焼結体(普通焼成過程が終了した後のもの)を、焼成中に一軸性の圧力を加えて圧縮変形させるホット・フォージング法(HF)により、圧縮率(高さの減少率)λ(=80〜90%程度)、あるいは圧延率(フォージング前後の面積比)γ(=5〜10程度)の制御を行いながら焼成して、長軸結晶を配向(粒子配向)させるセラミック焼結体の製造方法が示されているから、両者は、
「長軸結晶を含むセラミック予焼結体を、その加圧塑性変形可能な温度範囲において、該長軸結晶を配向させるに十分な量一つの軸方向に加圧圧縮して圧縮軸方向に圧縮変形させると同時に圧縮軸と異った方向に膨張変形させる結晶配向工程を含み、前記セラミック予焼結体を焼結する実質的に配向された長軸結晶を有するセラミック焼結体の製造方法。」である点で一致し、
本件請求項1に係る発明が、「前記長軸結晶は、窒化珪素の柱状ないし針状結晶のうちの少なくとも1種」であり、「前記セラミック予焼結体が超高靱性かつ超高強度に達するまで焼結する」ことにより、「超高靱性かつ超高強度のセラミック焼結体」を製造するのに対し、刊行物1に記載された発明は、前記長軸結晶が粒子配向型ビスマス層状構造強誘電体(BLSF)であり、前記セラミック焼結体として、超高靱性かつ超高強度のものを製造することが示されていない点で相違する。
上記相違点について検討する。
本件請求項1に係る発明は、「苛酷な使用環境下にも耐えうる超高靱性かつ超高強度の材料を提供するもの」(段落【0001】)であるが、「セラミックスは金属に比べ高強度を有するものが得られ、又耐熱性に優れた材料であるため、車載用エンジン部品及び部材として、非常に有望」(段落【0002】)であり、「高温下での使用に耐えうる高強度材料の一例として窒化珪素系セラミックスがある」(段落【0005】)ということで、上記相違点に示した構成を採用したものである。
一方、刊行物1に記載された発明は、「粒子配向型ビスマス層状構造強誘電体(BLSF)セラミックスの作製とその特性及び電子材料への応用」に関するものであり、「BLSF以外の低対称酸素八面体族、すなわち、タングステンブロンズ型、パイロクロア型、擬イルメナイト型などの粒子配向試料を作製し、それらの諸特性と結晶対称性との関係を系統的に調べ、低対称圧電・焦電セラミックスの新しい機能性を引き出す工夫が望まれる」ことが示されているが、「苛酷な使用環境下にも耐えうる超高靱性かつ超高強度の材料を提供する」ために、ホット・フォージング(HF)法による粒子配向セラミックスの製造方法を窒化珪素セラミックス焼結体に適用することは何ら示唆されていない。
また、刊行物2には、Ba-フェライト等の六方晶フェライトを対象とする粒子配向型セラミック焼結体の製造方法が記載され、刊行物3には、粒子配向型酸化物超電導材の製造方法が記載されているが、いずれの刊行物にも、「前記長軸結晶は、窒化珪素の柱状ないし針状結晶のうちの少なくとも1種」であり、「前記セラミック予焼結体が超高靱性かつ超高強度に達するまで焼結する」ことにより、「超高靱性かつ超高強度のセラミック焼結体」を製造するという本件請求項1に係る発明の構成は示されていない。
したがって、本件請求項1に係る発明は、刊行物1又は刊行物2に記載された発明とすることはできず、また、刊行物1〜刊行物3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。
本件請求項2〜6、8に係る発明は、請求項1を引用する発明であるから、本件請求項1に係る発明と同様な理由により、刊行物1又は刊行物2に記載された発明とすることはできず、刊行物1〜刊行物3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。
4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1〜6、8に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜6、8に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
配向した長軸結晶を有するセラミックスの製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長軸結晶ないしその長軸結晶核を含むセラミック予焼結体を、その加圧塑性変形可能な温度範囲において、該長軸結晶を配向させるに十分な量一つの軸方向に加圧圧縮して圧縮軸方向に圧縮変形させると同時に圧縮軸と異った方向に膨張変形させる結晶配向工程を含み、前記セラミック予焼結体が超高靱性かつ超高強度に達するまで焼結すること、
前記長軸結晶は、窒化珪素の柱状ないし針状結晶のうちの少なくとも1種であることを特徴とする実質的に配向された長軸結晶を有する超高靭性かつ超高強度のセラミック焼結体の製造方法。
【請求項2】
前記配向工程に引続き又はそれと同時に配向された状態で長軸結晶を制御下に成長させる結晶成長工程をさらに含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記膨張変形の量は、前記予焼結体の未焼成成形体からの焼成収縮量に少くとも相当する量である請求項1〜2の一に記載の製造方法。
【請求項4】
前記膨張変形は、前記加圧圧縮軸と直交する一次元方向に実質上行われる請求項1〜3の一に記載の製造方法。
【請求項5】
前記膨張変形は、前記加圧圧縮軸と直交する2次元方向に実質上行われる請求項1〜3の一に記載の製造方法。
【請求項6】
前記予焼結体を実質的に圧縮的加圧を施すことなく焼結する予焼結工程をさらに含み、焼成収縮した状態の前記予焼結体をホットプレス装置に遊隙をもって装填して前記長軸結晶の実質的配向に十分な圧力下にホットプレス加圧し、配向された状態の長軸結晶を所定アスペクト比に達するまで成長させるに十分な時間ホットプレス加圧を継続することを特徴とする請求項1〜5の一に記載の製造方法。
【請求項7】
長軸結晶ないし長軸結晶核を含むセラミック予焼結体を、その加圧塑性変形可能な温度範囲において、該長軸結晶を配向させるに十分な量一つの軸方向に加圧圧縮して圧縮軸方向に圧縮変形させると同時に圧縮軸と異った方向に膨張変形させる結晶配向工程で実質的に配向された長軸結晶を有するセラミック焼結体を得て、
前記配向された長軸結晶を有するセラミック焼結体即ち2次焼結体をさらにHIP処理により所定アスペクト比に達するまで結晶成長させる工程を含むことを特徴とする実質的に配向された長軸結晶を有するセラミック焼結体の製造方法。
【請求項8】
前記長軸結晶は柱状ないし針状結晶又は長軸を有する板状結晶である請求項7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、配向した(特に2次元配向した)長軸結晶(例えば柱状ないし針状結晶又は長軸を有する板状結晶)を有する新規なセラミック焼結体の製造方法に関し、特に、かかる長軸の2次元配向結晶を焼結過程において(in-situにて)生成されたものに関し、苛酷な使用環境下にも耐えうる超高靱性かつ超高強度の材料を提供するものである。
【0002】
【技術的背景】
近年苛酷な使用環境下にも耐え得る超高強度材料の必要性はますます増大しており、セラミックスの靱性改善ならびに信頼性向上には大きな期待がかけられている。特に、セラミックスは金属に比べ高強度を有するものが得られ、又耐熱性に優れた材料であるため、車載用エンジン部品及び部材として、非常に有望である。
【0003】
しかし、セラミックスは金属に比べ破壊靱性値が非常に低く、破壊が脆性的であるため、なお信頼性に欠けるという問題は依然として完全には克服されていない。
【0004】
即ち、セラミックスは本質的に脆性であるということから、その靱性改善には材料中にエネルギー散逸源としての不均質相を分散または析出させる方法、すなわち複合化が基本的に有効であると考えられて来た。これまでに粒子分散あるいは繊維分散による種々の靱性向上機構が提案されており、またそれぞれの機構を基礎的に追究することによって高強度・高靱性を実現し得る条件を見出そうとする研究が精力的に行われてきた。
【0005】
高温下での使用に耐えうる高強度材料の一例として窒化珪素系セラミックスがあるが、窒化珪素系セラミックスは、その優れた強度特性が注目され、構造材料として検討が進められており、一部で実用化されている。しかし窒化珪素は他のセラミック材料同様、▲1▼強度特性の信頼性に欠ける(バラツキが大きい)▲2▼靭性が低いという構造材料として大きな問題を抱えており、そのために実用化が今一歩拍車にかかっていないのが現状である。
【0006】
【従来の技術】
川島健等の報告、「繊維制御によるSi3N4セラミックスの多様化」窒化珪素セラミックス(2)135〜146頁において、このような窒化珪素セラミックスの欠点が挙げられ、HIP法によるその改善の試みの結果が報告されている。即ち曲げ強度としては、Sinter(ガス圧焼結)で680〜1079MPa、Sinter+HIPで953〜1230MPa、Sinter/HIP(ガス圧焼結〜HIP連続的処理)で1000〜1227MPa、破壊靭性値は夫々5.3,5.2,5.7MPa・m1/2というデータが報告されている(135〜138頁、Table)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、曲げ強度の高いものを求めると、KICは小さくなり、逆にKICの高いものを求めようとすると曲げ強度は低くなるという傾向を示している。即ち、曲げ強度と破壊靭性とは、逆の傾向となりその兼備は極めて困難視されている(第143頁Fig.15〜Fig.17)。
【0008】
従って、上記双方の特性を改善するための方法としては、「ガス圧焼結(Sinter)+HIP」ないし「ガス圧焼結/HIP」(ガス圧焼結からHIPまでの連続的処理)という複雑な工程を必要としており、その実用化上、なお大きな困難が存するものと考えられる。この手法によっては、ある程度の改善は達成されたが曲げ強度1074MPa、KIC6.7MPm1/2の組合せが最高であり、一方の特性値をこれより上げようとすると、他方が低下するので、双方の特性値の妥協点でがまんする外なかった。
【0009】
一方高強度化、高靭性化のための従来の方法としては、セラミックマトリックス中への繊維の添加分散によるいわゆる繊維強化に基づくものが主流であった。この方法の場合、繊維のマトリックス中への均一分散が困難であること、繊維とマトリックス相との間のマッチングないし結合性の確保に困難があること、さらに焼結工程中において繊維の強度劣化が生じないような繊維及び焼結条件を注意深く選択する必要がある等の、様々な問題点がある。
【0010】
そこで本発明は、セラミック焼結体の長軸結晶の配向を行いうる新規な製造方法を提供することを第1の目的とする。
【0011】
本発明は、第2に、高強度及び高靱性を兼備したセラミック焼結体が得られる、新規なセラミック焼結体の製造方法を提供することをも目的とする。
【0012】
【発明による課題の解決手段】
本発明第1の目的は、長軸結晶ないし長軸結晶核を含むセラミック予焼結体を、その加圧塑性変形可能な温度範囲において、該長軸結晶を配向させるに十分な量一つの軸方向に加圧圧縮して圧縮軸方向に圧縮変形させると同時に圧縮軸と異った方向に膨張変形させる結晶配向工程で実質的に配向された長軸結晶を有するセラミック焼結体を得て、前記配向された長軸結晶を有するセラミック焼結体即ち2次焼結体をさらにHIP処理により所定アスペクト比に達するまで結晶成長させる工程を含むことを特徴とする実質的に配向された長軸結晶を有するセラミック焼結体の製造方法によって達成される。また、本発明第2の目的は、長軸の結晶ないしその長軸結晶核を含むセラミック予焼結体を、その加圧塑性変形が可能な温度範囲において、該長軸結晶を配向させるに十分な量一つの軸方向に加圧圧縮して圧縮軸方向に圧縮変形させると同時に圧縮軸と異った方向に膨張変形させる結晶配向工程を含み、前記セラミック予焼結体が超高靱性かつ超高強度に達するまで焼結すること、前記長軸結晶は、窒化珪素の柱状ないし針状結晶のうちの少なくとも1種であることを特徴とする実質的に配向された長軸結晶を有する超高靭性かつ超高強度のセラミック焼結体の製造方法によって達成される。
【0013】
その結果、1次元又は2次元方向に実質的に配向された長軸結晶を含むセラミック焼結体が得られ、高強度と高靱性を兼備するよう、当該結晶を配向制御することが可能となる。
【0014】
請求項2以下の従属請求項に、本発明の製造方法のさらに好ましい具体的展開が示される。
【0015】
即ち、前記配向工程に引続き又はそれと同時に配向された状態で長軸結晶(ないし長軸結晶核)を制御下に成長させる結晶成長工程をさらに含むことにより、強度、靱性双方にとって最適の配向状態かつ結晶長さ(ないし結晶成長度、場合により太さの成長も加味したアスペクト比の調節制御)ができる(請求項2)。
【0016】
前記結晶成長工程において、長軸結晶のアスペクト比を配向状態において、アスペクト比の増加に併い靭性の変化を示す第1の所定曲線と、同じくアスペクト比の増加に併い強度の変化を示す第2の所定曲線に従って、所定アスペクト比に達するまで、制御して成長させることにより、予めテストにより設計されて工業技術的に管理され、歩留りの高い均一品質の製品が得られる(第5図参照)。
【0017】
膨張変形の量は、前記予焼結体の未焼結成形体からの焼成収縮量に少くとも相当する量とする(請求項3)ことが配向のために好ましい。
【0018】
前記膨張変形は、前記加圧圧縮軸と直交する少くとも一次元方向(好ましくは2次元方向)に行われる(請求項4,5)。
【0019】
前記予焼結体を実質的に圧縮的加圧(即ちホットプレス加圧やHIP等の被焼成物を強制的に圧縮させる力)を施すことなく焼結する予焼結工程をさらに含み、焼成収縮した状態の前記予焼結体をホットプレス装置に遊隙をもって装填して前記長軸結晶の実質的配向に十分な圧力下にホットプレス加圧し、配向された状態の長軸結晶を所定アスペクト比に達するまで成長させるに十分な時間ホットプレス加圧を継続すること(請求項6)により、前記予焼結体を例えばホットプレス装置内で又は別途実質的にホットプレス加圧を施すことなく予焼結(例えばガス圧焼結、その他普通焼結等による)することができると共に、配向後の長軸結晶の成長を目的に応じてコントロールできる。予焼結をホットプレス装置を用いて(但しHP処理を施すことなく)行えば、予焼結体の製造(冷間プレス成形から予焼結体ないし予備焼結までの工程)から、圧縮変形による結晶配向工程までが、一つのホットプレス装置によって連続して可能である。なお、ホットプレス装置に代り、圧縮変形による結晶配向は、シート状の予焼結体を熱間加圧(例えばロールによる熱間圧延)することによっても可能であり、熱間加圧による塑性変形手段であれば、その他の手段を用いることも可能である。ホットプレスの場合、配向後引続き加圧下に結晶成長させることにより高密度化が達成される利点がある。
【0020】
前記配向された長軸結晶を有するセラミック焼結体即ち2次焼結体をさらにHIP処理により所定アスペクト比に達するまで結晶成長させる工程を含むこと(請求項7)によりホットプレス加圧により到達した状態から、強度の劣化を併うことなく、さらなる長軸結晶の成長による、強度と靱性の増大が達成される。
【0021】
前記予焼結体は、長軸結晶(ないしはその核、無配向の状態でよい)と共にガラス相を含む状態のものとすることにより、配向処理の容易性がえられると共に、できる限り十分な高強度・高靭性を兼備した予焼結体が得られる。
【0022】
なお「長軸結晶」の語は柱状ないし針状のもの(当然棒状ないし繊維状の結晶も含む)の外、長軸を有する板状の結晶も含む。この結晶としては、予焼結の以降の処理工程でさらに成長可能なものを少くとも含むことが肝要であり、配向可能である限り結晶核であっても差支えない。
【0023】
前記配向した長軸結晶(特に柱状ないし針状結晶)は、繊維ないしウィスカの添加なしでも、偏向強化による靱性増大が達成される。しかし、本発明は、複合化によるさらなる強化(繊維ないしウィスカ強化、粒子分散強化等)を排除するものではない。
【0024】
長軸結晶の一例として柱状結晶たる、窒化珪素を採用することによって、好適な焼結体が得られる(請求項8)。結晶配向可能な長軸結晶セラミック材料としては窒化珪素の外、SbSI,SbSOI,PbBi2Nb2O9,Bi4Ti3O12,(Pb,K)Nb2O6,(Sr,Ba)Nb2O6,(Pb,Ba,La)Nb2O6等(以上柱状ないし針状)、その他コーディエライト(以上長軸平板状)等がある。
【0025】
なお、窒化珪素の場合、柱状晶はβ-Si3N4として成長するが、出発粉末はα-Si3N4又は、予焼結中にβ-Si3N4を生成可能な組成物(又は結晶核)でよい。他の種類のセラミック材料についても同様であり、長軸結晶を予焼結工程の出発粉末として用いることは必ずしも必要でなく、予焼結に適した状態のものを選択できる。
【0026】
本発明の製造方法によれば、熱間加圧変形によって配向された長軸結晶を少くとも2次元方向に実質的に配向して含むセラミック焼結体を製造することができ、また、熱間加圧変形によって配向された長軸結晶を少くとも一次元方向に実質的に配向して含み、前記配向された長軸結晶がアスペクト比4以上の柱状窒化珪素結晶であるセラミック焼結体を製造することができる。
【0027】
前記配向された柱状ないし針状結晶を、主相として含むセラミック焼結体により、必ずしも主相とは別種の別に当初から添加された繊維強化相に頼らなくても、所定の高強度・高靭性を達成できる。
【0028】
前記配向された長軸結晶は、マトリックス構成相に対する分散相として含むこともできる。
【0029】
前記配向された長軸結晶を、2次元方向に実質的に配向して含むことにより、より高強度・高靱性のセラミック焼結体が得られる。
【0030】
前記配向された長軸結晶を窒化珪素結晶(特に、柱状窒化珪素結晶)とすることにより高強度・高靭性の窒化珪素質焼結体が得られる。
【0031】
前記配向された長軸結晶のアスペクト比4以上とすることが好ましい。
【0032】
典型的には、本発明により、強度900MPa以上及び破壊靱性値4MPam1/2以上であり、実質的に2次元配向された柱状の窒化珪素結晶を含むセラミック焼結体(特に、窒化珪素質焼結体)が得られる。さらに強度1100MPa以上、破壊靭性値KIC約7MPam1/2以上のもの、最高では強度1200MPa以上(特に、1200〜1300MPa以上)、破壊靱性値KIC8MPam1/2以上(特に、8〜9MPam1/2以上)というかつてない値の組合せにも達する。実質的に2次元配向した長軸結晶を有し、アスペクト比を8〜12とすることにより、超高強度かつ超高破壊靱性値のセラミック焼結体が得られる。
【0033】
換言すると、実質的に2次元配向され、さらに等方的にも成長制御された長軸結晶を所定アスペクト比で含むことによって、強度、靱性共に、当該物質から理論的に予測される最高水準のものが達成される。
【0034】
【発明の詳細な開示】
以下、典型的な長軸結晶を生成する材料として、窒化珪素を代表例として詳述する。
【0035】
破壊靭性値を向上させる要因は2つに大別することができる。(1)主クラックと分散粒子との直接的な相互作用(2)主クラック先端付近にプロセスゾーンを形成する機構(1)としては、主クラック前縁の湾曲や主クラック面の偏向などがあり、(2)としては、マイクロクラッキング、応力誘起相転移、破面架橋などがある。
【0036】
焼結過程で柱状結晶を生成可能な窒化珪素では高靱性化の機構としてクラックの偏向が大きな要因となるものと考えられる。Faberらの計算によれば、アスペクト比12の柱状結晶の分散体では破壊靱性(の理論値)がマトリックスのそれの約4倍にもなること、しかし、測定値はそれよりも小さなものであることが報告されている(K.T.Faber他、Acta Metall.31,565,577(1983)、「セラミック強化複合セラミックス」、(株)産業技術サービスセンター(1991年)、68〜72頁参照)。
【0037】
しかしながら、そのような焼結体をどのようにして製造するかは、知られていない。そこで本発明では、窒化珪素の長軸(柱状ないし棒状)結晶を2次元あるいは1次元に配向させることにより、或いはさらに、結晶成長を制御することにより、従来以上の破壊靭性値を得ることに成功したものである。長軸結晶の配向の実現のため、長軸結晶を含む予焼結体(ないし1次焼結体)を、所定高温下において一つの軸に関して圧縮変形させると同時にこれと異った(特に直交する)軸に関して一次元又は二次元に膨張変形(即ち熱間塑性変形)させることにより、当該結晶を一次元又は二次元に配向させることができることが明らかとなった。その結果、例えば破壊靱性値が、無配向時の3MPam1/2からアスペクト比4〜12に対応して約4MPam1/2〜約8MPam1/2以上に達するものが得られる。
【0038】
本発明には、次の2つのメカニズムが作用していると考えられる。即ち、
(1)長軸結晶の配向
(2)配向した長軸結晶の成長制御
【0039】
(1)<配向による破壊靱性値増大のメカニズム>
焼結過程で長軸結晶の生成する窒化珪素の高靱化の機構としては、クラックの偏向が最も大きな要因である。そのためには、長軸結晶を制御することが不可欠である。しかも、長軸結晶の配向制御、成長制御の双方が可能であれば窒化珪素の示す最大の破壊靱性値を得ることが可能であると考えられる(なお、これは、他のセラミック材料にも同様に妥当する)。一般に配向制御、成長制御に関して以下に示す場合に最大のクラック偏向が生じ高い破壊靱性値を示す。好ましくは、配向制御及び成長制御の双方を実現することによって、最大の効果が得られる。双方の制御は段階的な基本工程(予焼結による長軸晶生成、その後の熱間加圧塑性変形による結晶配向)を基礎として、さらに後続のHIPを加えることにより、双方の特性の飛躍的な改善をもたらすことは、驚くべきことである。
【0040】
図3に示すように、焼結体内にクラックが進展する場合i)に示す3次元配向材に比べii)に示す2次元配向材の方が明らかにそれと実質的に直交する方向に伝搬するクラックは、クラックが進展しにくい。従って特定方向のクラックに対する高靱化には2次元配向材の方が有利であると考えられる。
【0041】
(2)<長軸結晶の成長制御による破壊靱性値増大のメカニズム>
図4に示す通り、2次元配向材のみを考えた場合でも(i)の長軸結晶が短い場合に比べ(ii)の長軸結晶が長い場合の方がクラックの偏向が大きく長軸結晶と交叉する方向へのクラックが進展しにくい。又は太さに関しても太すぎず細すぎず最適な太さが存在するはずであることがわかる。従って最大のクラック偏向を示すには、それに最適なアスペクト比が存在するはずである。本発明はこの観点から、実験を行い、その有効性を確認したものである。
【0042】
以上(1)と(2)の2つのメカニズムの相乗効果により使用目的に合った強度、靭性値を有する窒化珪素の焼結体が得られる、目的に応じて、強度、靭性値を夫々制御した焼結体を得ることができる。
【0043】
この観点に基づき焼結過程で長軸結晶を生成する窒化珪素の破壊靭性値を向上させるのを目的とし、長軸結晶の配向制御を行った。
【0044】
従来の焼結方法では窒化珪素の長軸結晶は、3次元的に無配向(ランダム状態)に生成し破壊靱性値は3〜5程度であった。そこで本発明考案では破壊靱性値の向上を目的とし、長軸結晶をガラス相と共に含む窒化珪素の予焼結体を加圧塑性変形可能な温度下にホットプレスで一軸方向に加圧圧縮変形すると同時にこれを直交する他の2軸方向には膨張変形させて長軸結晶を2次元的に配向させた(以下「HP処理」と称する)。それにより破壊靭性値を約8MPam1/2まで向上させることができた。それにともない曲げ強度も従来800MPa程度であったものが1200MPa程度まで向上した。
【0045】
本発明において、「実質的に配向」とは、長軸結晶の所定方向への配向によって、その効果が有意に現れる状態をいう。さらに、配向した長軸結晶としては、窒化珪素の場合、アスペクト比4以上から12以上に亘り、好ましくは約6.5〜12(より好ましくは8〜12)である。
【0046】
窒化珪素焼結体の場合、そのHP処理の温度は基本的にその焼結温度範囲において行うをもって足りる。HP処理の条件としては、温度1700〜1800℃の範囲、圧力は100〜500kg/cm2、保持時間は0.5〜3時間とすることが好ましい。圧力は100kg/cm2未満では配向に不十分であり、500kg/cm2をこえると配向状態での結晶成長速度が却って遅くなる傾向がある。
【0047】
HP処理による配向に最適な条件は、本願の実施例の条件下において温度約1750℃、圧力約330±50kg/cm2、保持時間約1〜2時間である。
【0048】
予焼結体の焼結前の状態(冷間プレス成形体積ないし生又は乾燥成形体)からの焼成収縮率は窒化珪素の場合、凡そ10〜20%(体積%)である。配向のためのHP処理の際の非圧縮軸方向への膨張変形の量は、少くともこの焼成収縮率に相当する量とすることが好ましい。
【0049】
予焼結は、かくて十分な高温に達するまで、かつ、配向に十分な程度に長軸晶が生成しかつ成長するまで行う。そのような状態に達する前にホットプレス等の外部加圧により圧縮作用を施すことは好ましくない。
【0050】
なお、ホットプレスによる焼結法自体は知られているが、その場合一般には焼結の開始する温度(窒化珪素では約1500℃)からホットプレス加圧を開始する。しかし、本発明においては、窒化珪素約1700℃以上に達するまで十分に予焼結を行うことが自由な長軸結晶成長のため好ましい。
【0051】
熱間加圧塑性変形による配向のためには、長軸結晶(又はその核)が、予焼結体中に、配向可能な状態で存在するものを用意する。そのため(1)予焼結体の長軸結晶(又は核)のアスペクト比は1.5以上(より好ましくは2〜3)とすることが好ましく、(2)また塑性変形のためには、所定の流動可能な相(一般にはガラス相ないし液相)が存在する必要がある。十分な配向可能性を確保するため、予焼結体は、ホットプレス等の直接的な圧縮作用を被焼成物(成形体)に施すことなく、自然の状態で焼結して結晶生成させることが好ましい。
【0052】
窒化珪素焼結体は、窒化珪素の外に、所定の焼結助剤を含むことが好ましい。まずY2O3は、粒界にガラス相次いで特定結晶相(Y2Si3O3N4)を生成するためには、不可欠であろう。それ以上の焼結助剤としては、Al2O3、の外、La2O3、Nd2O3、CeO2等の希土類酸化物の1種以上をY2O3と併用することが好ましい。
【0053】
窒化珪素:焼結助剤の比は=98:2〜90:10モル%の範囲とし、Y2O3は1モル%以上とすることが好ましい。焼結助剤(或いはさらに焼結時に窒化珪素を構成する成分以外の成分)が10モル5を超えると、長軸晶となるべきβ-Si3N4の生成、成長が阻害される傾向があるので注意を要しよう。
【0054】
このようなHP処理の結果、高強度・高靱性を兼備するものとして、曲げ強さ約1100Pa以上、かつ破壊靭性値KIC約6.7のMPam1/2の組合せのものが得られた。図5は、後述の表1のサンプルNo.1〜4の測定値を示す。
【0055】
特筆すべきことは、HP処理により、配向と共に(ないし配向の後に)長軸晶(柱状晶)が成長し、図5に示すような、ほぼリニアーな(ないしはわずかに湾曲した)互いに交叉する2つの曲線によって強度(曲げ強さ)及び破壊靭性が示されることである。アスペクト比をxとすると靱性yはy=2.8+0.54x(MPam1/2)(式I)、強度y’はy’=1459-52x(MPa)(式II)で表わされる。
【0056】
これらの式I,IIに従って、所定アスペクト比に達するまでHP処理を行い、所望の強度及び靱性値の焼結体を得ることができる。この事実は材料の設計、製作上極めて、有用である。
【0057】
即ち、靱性値KICはアスペクト比4〜10に対応して約5〜約8MPam1/2の曲線を示し、強度は、同様のアスペクト比に対して約1250〜950MPaの値を示している。
【0058】
これはHP処理による(即ち配向成長による)効果であるが、本発明によれば、この長軸結晶の制御された配向成長(その状態及びプロセス)が、後に述べる通り、さらなる成長制御の基礎として極めて有用であることが明らかとなった。
【0059】
(2)<長軸結晶の成長制御>
窒化珪素を焼結する場合、一般に焼結助剤を混合するがその助剤の種類によりHP焼結する際長軸(柱状)結晶の成長度にかなりの差が生じる。本発明では焼結助剤として、La2O3-Y2O3系、Al2O3-Y2O3系、Nd2O3-Y2O3系、CeO2-Y2O3系について試験した結果、長軸結晶の成長度に差が生じ、最も大きな長軸結晶が生成するNd2O3-Y2O3系の窒化珪素ではHP処理により破壊靭性値が8MPam1/2に達することが判明した。なお、窒化珪素の焼結助剤としては、Al2O3,Y2O3を含めての希土類酸化物の外MgO,CaO等の公知のものを用いることができる。
【0060】
また予焼結体を一度HP処理した窒化珪素(2次焼結体)に高温で高圧の等方圧をかける(HIP処理する)ことにより長軸結晶がさらに成長し、温度、圧力を変えることによりその成長度を制御することが可能となるばかりでなく、HP処理の際に見られるようなアスペクト比の増大に併う強度の減少を阻止し、靱性のみでなく逆に強度もさらに増大できることも判明した。
【0061】
(2-1)長軸結晶の成長制御(焼結助剤、焼結条件の変化による成長制御)の具体例
ホットプレス処理に際して焼結助剤、焼結条件の違いにより以下のように長軸(柱状)結晶に差が生じた。
【0062】
【表1】

【0063】
以上より焼結助剤、HIP処理条件を変化させることにより柱状結晶の成長制御(太さ及び長さ、特にアスペクト比制御)が可能となることが判る。なお、予焼結体を得るための予備焼結の条件もアスペクト比に影響するが、予備焼結は、ガス圧焼結等によって達成される適度な長軸結晶成長を含み、可及的高い焼結状態が達成されることである。
【0064】
なお、付言すると、予焼結体の原料に仮に長軸(柱状)結晶の窒化珪素(β型)等を用いて成形し焼結(ガス圧焼結等)を行った場合、密度が極めて低いもの(従って嵩張ったもの)しか得られず、即ち十分な焼結が進行せず、従って、密度、強度、破壊靭性値のいずれも、無定形(一般に丸味を帯びた粒子)に微粉化された出発粒子粉末を用いて成形、焼成したものにはるかに及ばない。
【0065】
この事実は、窒化珪素については長軸結晶(柱状或いは棒状結晶)は、上述の微粉出発粒子から焼結工程中において(in-situにて)生成させて含有せしめる以外に、有効な方法は現時点では見出されていない。
【0066】
予焼結体の焼結は、後段のHP処理(配向処理)を行う同一のHP装置内で行うことが作業能率上よいが、別の炉ないしHP装置で予焼結することも、必要に応じ可能である。
【0067】
(ロ)
(2-2)<HIP処理による成長制御に基づく強度-靱性値制御>
図5に矢印をもって示す曲線A,Bは、HIP処理による効果を示し、夫々アスペクト比の増大に併って変化する靱性値、強度値の曲線(第1,第2)を表わす。曲線A,BはHP処理後の状態(2次焼結体)の双方の値A1B1(表1のサンプルNo.2)を出発点とし、1〜5hrのHIP処理を1800℃×100kg/cm2の圧力下で施した場合の、靭性、強度の値の変化を示す。このHIP処理の温度とほぼ同様な温度以上(好ましくは、さらに10〜50℃高温で例えば1750〜1850℃、好ましくは圧力は100〜300気圧)で、圧力100〜300気圧において行うことができる。
【0068】
全く驚くべきことに、配向後のHP処理の継続により生ずる強度の低下傾向が中断され、両曲線共増大を示すことである。HIP処理の継続により、靭性値KICはアスペクト比の増大と共に一様に増大して、約9.7MPam1/2の最大値に達する。一方強度は、アスペクト比の7〜9の増大に併って1300MPa超にまで増大し、アスペクト比9〜10で頂部を描いた後、やや下降するが約1240MPaをアスペクト比11以上でも示す。
【0069】
このデータの示すものは、基礎としての2次元配向されかつ所定アスペクト比にまで成長された長軸(柱状)結晶が、HIP処理によりさらにアスペクト比増大の方向へ制御して成長されることにより、従来極めて困難であった高強度と高靭性値の兼備が極めて、管理(制御)された仕方で達成されることである。
【0070】
この知見は、今後の実用化のためにも、さらには、単に窒化珪素のみならず長軸結晶を生ずるセラミック一般のための強度-靱性増大のモデルメカニズムとしても極めて重要なものであり、ブレークスルーと言っても過言ではない。
【0071】
【実施例】
以下に、長軸結晶の配向制御(HP処理による2次元配向制御)の実施例を示す。
【0072】
(1)予焼結体の準備
i)原料として、下記のものを用いた。
窒化珪素:宇部興産(株) E-10(平均粒径0.25μm)
(α型) ヘルマン・シー・スタルク LC12-S(平均粒径0.77μm)
電気化学(株) SN-P21B(平均粒径0.80μm),SN-P21C(平均粒径0.69μm),SN-P21C3(平均粒径0.52μm)
焼結助剤:(A):三菱化成(株) Y2O3(平均粒径0.8μm)
(B):日産稀元素化学(株) La2O3(平均粒径0.5μm),Nd2O3(平均粒径7.3μm),CeO2(平均粒径6.8μm)
(B):住友化学(株) Al2O3(平均粒径0.37μm)
溶剤 :東亜合成(株) トリクロルエチレン(トリクレンR)(固形分に対し125wt%)
分散剤 :味の素(株) AL-M(有機系)(固形分に対し2wt%)
【0073】
ii)原料の調合割合
Si3N4:焼結助剤B:Y2O3=92:5:3モル%
焼結助剤Bとしては、La2O3、Al2O3、Nd2O3、CeO2のいずれか1種を用いた。
【0074】
iii)坏土作成を以下の(a)〜(f)の工程で行った。
(a)秤量 Si3N4+焼結助剤B+Y2O3
溶剤、分散剤、玉石(Si3N4)
(b)湿式混合 16時間(ボールミル)
(c)乾燥 オーブン100℃×18時間
(d)乾式粉砕 48時間(ボールミル)
(e)篩分け(150μmメッシュスルー)
(f)坏土
【0075】
iv)予備焼結
内面に離型剤(BN)を塗布したカーボン型を備えたホットプレス装置(内径280mm)に坏土を充填し圧力330kg/cm2にて高さ12mmに冷間圧縮成形した。その後9kg/cm2のN2ガス圧下で加熱して13℃/分の昇温速度で1750℃まで昇温し、1又は2時間保持して予備焼結を行い、予焼結体(柱状β-窒化珪素)を得た。予焼結体は、密度2.5g/cm3(対理論密度比70%)、柱状晶のアスペクト比は平均3(2〜5)のものであった。
【0076】
この過程を図1の(1)〜(2a)に模式的に示し、(2a)は予焼結体がホットプレス装置内で焼結による自然収縮の状態にある(収縮率約20%)。
【0077】
(2)長軸結晶の配向制御(HP処理による2次元配向制御)
予焼結体を次いでホットプレス処理し330kg/cm2の圧力下で所定時間(1時間又は2時間)、N2ガス圧常圧(1kg/cm2)雰囲気中に保持して、長軸(柱状)結晶の配向を行いかつ配向状態で結晶成長を行った。図1の(3),(3a)参照。(3a)にホットプレスの結果(2次焼結体)を示す。なお、図2に図1の予焼結体(2a),2次焼結体(HP処理結果物)(3a)の状態の結晶配向の状態を模式化して示す。
【0078】
窒化珪素予焼結体をHP処理することにより長軸(柱状)結晶を2次元的に配向させることが可能となり以下のように破壊靱性及び強度が大幅に向上した。ここにNo.1〜4は表1に示すサンプルに対応するものであり、No1a〜4aは夫々No.1〜4に対応する無配向比較例であり、ガス圧焼結によってNo.1〜4と同様な条件で(但しホットプレスを施すことなくNo.1〜4のHP時間も含めて)同じ時間焼結して得たものである。
【0079】
【表2】

【0080】
なお表2の強度及び靱性値は、夫々JIS3点曲げ法及びシングルエッジV-ノッチビーム法(SEVNB法)によって測定したものであり、No.1〜4の異方性焼結体の測定値は、二次元配向方向と直交する方向(弱い方向)については約10%低い値を示した。なお、No.1〜4及び比較例No.1a〜4aの密度は夫々3.3〜3.5、2.5〜2.7g/cm3であった。
【0081】
(3)長軸(柱状)結晶の成長制御による効果は表1及び図5に示す通りである。長軸(柱状)結晶の長さ、太さ、アスペクト比とHP処理条件及び焼結助剤の成分の関係を表1に示す。
【0082】
(3-1)即ち、予焼結後のHP処理により、アスペクト比の4から10への増大に伴って破壊靱性値は増大するが、それにほぼ反比例する傾向にしたがって強度が下降することが明らかとなった。しかし、このアスペクト比は、本発明によって長軸結晶の成長の制御が可能であることに留意すると、アスペクト比を好ましい範囲に選択することによって、高強度を維持しつつ高い破壊靱性を達成することが可能となったことを示す。即ち、アスペクト比6〜8において破壊靱性値約6〜7MPam1/2、強度約1100MPa以上という優れた組合せが達成される。本発明によれば、この上記長軸結晶の配向制御と、アスペクト比の制御を組合せて同時に達成することができる点に、極めて優れた利点が存する。もちろん、高強度又は高靭性の一方を特に意図的に得ることも可能である。
【0083】
(3)<配向後のHIP処理>
さらに、かくアスペクト比を制御された2次焼結体(HP処理体)に対しHIP処理を施すことによって、強度の低下を招くことなく、強度、靭性双方のさらなる増大が、2次焼結体を基礎として達成される。また、このようにしてアスペクト比を制御することによって、強度、靱性共に最高レベルのものが確実に得られる。
【0084】
即ち図5に示す通り、2次焼結体のサンプルNo.2(アスペクト比6.8)に1800℃×1〜5時間、N2ガス雰囲気下にて圧力100kg/cm2においてHIP処理を施した結果、2次焼結体の強度はB1点から曲線Bに沿って矢印の方向にアスペクト比の増大に併って増大しアスペクト比9〜10の付近で1300MPaを超えるピークを示した。これはホットプレス処理の継続によるアスペクト比の増大の場合と対照的である。さらに靭性も二次焼結体のA1点から矢印の方向へ曲線Aに沿ってアスペクト比の増大と共にさらに増大しアスペクト比11でピーク(9.7MPam1/2)を示した。
【0085】
即ち二次元配向状態での一定の長軸(柱状)結晶のホットプレス下での成長に、さらにHIP処理による等方的圧力下での結晶成長を組合せることにより、アスペクト比を理論的に予測される最高靱性をもたらす値(12)近くまで増大させ、その結果、強度劣化を併うことなくむしろ強度のさらなる増大を併って、最高靱性値を達成した。
【0086】
【発明の効果】
本発明の1次元ないし2次元配向処理(いわゆるHP処理)により、予焼結体中に含有される長軸結晶が所定の方向に配向されかつ所定アスペクト比に制御される。その結果、破壊靭性値又は強度のいずれか又は双方が容易に改善される。(請求項1,7)
【0087】
さらに本発明の長軸結晶の成長制御(アスペクト比制御も可能)によって、大幅な破壊靭性値、強度の一方の低下を招くことなく、双方の増大を図ることが定量的に可能となった。その結果、所望の強度と破壊靱性値を備えた長軸結晶基焼結体を得ることができる。(請求項1)
【0088】
各従属請求項2〜6及び8の特徴に従い、夫々具体的かつ規定された仕方によって目的とする高強度、高靱性のセラミック焼結体がえられる。2次焼結体(HP処理結果物)にさらにHIPを施すことにより、強度の低下を招くことなくアスペクト比の増大(長軸結晶成長)を達成でき、かつてない超高靱性かつ超高強度のセラミック焼結体がえられる。(請求項7)
【0089】
本発明の具体的実施に際しては、結晶の配向及び成長制御を組み合わせることにより、従来困難視されていた、高強度、高靭性を兼ね備えたセラミック焼結体が得られ、先端技術の開発のためのセラミック材料の飛躍的発展の途を招いたものであり、今後これを基礎にさらに各方向への発展が期待される。
【0090】
特に窒化珪素を例として、実施例を示したが、本発明は同様に長軸結晶を焼結過程で生成可能なセラミック材料及びその複合材料にも当然適用される。
【0091】
実施例では、ウィスカ等の繊維の分散強化は、行っていないが、本発明により、さらにこれらの繊維強化を付加した複合材料にも、同様に本発明は適用できること、また粒子分散等の複合化による強度作用をもさらに付加できることは論をまたない。
【0092】
本発明では、柱状(棒状を含む)の結晶を実施例として述べたが、長軸結晶の一態様として針状のもの、或いは長い板状のものも当然含まれ、配向及びアスペクト比の制御が可能である。
【0093】
耐熱性を具備し長軸(柱状)結晶を生成し、成長が制御可能であるという点で窒化珪素は、本発明を具体化するに最適の材料である。特に粉末出発粒子が粒状(窒化珪素の場合α-Si3N4)又は窒化珪素を焼結過程で生成する出発成分粒子であって、予焼結中に長軸(柱状)結晶が生成することは、本発明において好都合であり、同様なセラミック材料に本発明は適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の製造方法の一実施例を工程を追って示す模式断面図、
【図2】
図1の(2a)及び(3a)の状態における焼結体の長軸(柱状)結晶の配向状態を示す模式図、
【図3】
クラックの進展の際の長軸(柱状)結晶による偏向と配向の関係を示す模式図、
【図4】
配向された長軸(柱状)結晶の短長、太細に対するクラック偏向の状態を示す模式図、
【図5】
アスペクト比と強度、破壊靭性値の関係をHP処理及びHP処理+HIP処理について示すグラフ、を夫々示す。
 
訂正の要旨 a.(a-1)特許請求の範囲の請求項1の「ないし」と「長軸結晶核」の間に「その」を挿入する。
(a-2)請求項1の「結晶配向工程を含む」を「結晶配向工程を含み、前記セラミック予焼結体が超高靭性かつ超高強度に達するまで焼結すること、」に訂正する。
(a-3)請求項1の「ことを特徴とする」を「前記長軸結晶は、窒化珪素の柱状ないし針状結晶のうちの少なくとも1種であることを特徴とする」に訂正する。
(a-4)請求項1の「長軸結晶を有する」と「セラミック焼結体」の間に「超高靱性かつ超高強度の」を挿入する。
b.(b-1)特許請求の範囲の請求項7の「前記配向された長軸結晶」の前に明瞭でない記載の釈明を目的として、「長軸結晶ないし長軸結晶核を含むセラミック予焼結体を、その加圧塑性変形可能な温度範囲において、該長軸結晶を配向させるに十分な量一つの軸方向に加圧圧縮して圧縮軸方向に圧縮変形させると同時に圧縮軸と異った方向に膨張変形させる結晶配向工程で実質的に配向された長軸結晶を有するセラミック焼結体を得て、」を挿入する。
(b-2)請求項7の「請求項1〜6の一に記載の」を明瞭でない記載の釈明を目的として、「ことを特徴とする実質的に配向された長軸結晶を有するセラミック焼結体の」に訂正する。
c.特許請求の範囲の請求項8の「請求項1〜7の一に記載の」を「請求項7に記載の」に訂正する。
d.明細書の段落[0001]の「セラミック焼結体及びその製造方法」とあるのを明瞭でない記載の釈明を目的として、「セラミック焼結体の製造方法」と訂正する。上記a、b及びcの訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため。
e.明細書の段落[0011]の「高強度及び高靱性を兼備した」とあるのを明瞭でない記載の釈明を目的として、「高強度及び高靭性を兼備したセラミック焼結体が得られる」と訂正する。特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため。
f.(f-1)明細書の段落[0012]の「第1の目的は、長軸の結晶」とあるのを明瞭でない記載の釈明を目的として、「第1の目的は、長軸結晶ないし長軸結晶核を含むセラミック予焼結体を、その加圧塑性変形可能な温度範囲において、該長軸結晶を配向させるに十分な量一つの軸方向に加圧圧縮して圧縮軸方向に圧縮変形させると同時に圧縮軸と異った方向に膨張変形させる結晶配向工程で実質的に配向された長軸結晶を有するセラミック焼結体を得て、前記配向された長軸結晶を有するセラミック焼結体即ち2次焼結体をさらにHIP処理により所定アスペクト比に達するまで結晶成長させる工程を含むことを特徴とする実質的に配向された長軸結晶を有するセラミック焼結体の製造方法によって達成される。また、本発明第2の目的は、長軸の結晶」と訂正する。特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため。
(f-2)明細書の段落[0012]の「長軸の結晶ないし長軸結晶核」とあるのを明瞭でない記載の釈明を目的として、「長軸の結晶ないしその長軸結晶核」と訂正する。特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため。
(f-3)明細書の段落[0012]の「膨張変形させることを特徴とする」とあるのを明瞭でない記載の釈明を目的として、「膨張変形させる結晶配向工程を含み、前記セラミック予焼結体が超高靭性かつ超高強度に達するまで焼結すること、前記長軸結晶は、窒化珪素の柱状ないし針状結晶のうちの少なくとも1種であることを特徴とする」と訂正する。特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため。
(f-4)明細書の段落[0012]の「ことを特徴とする配向された」とあるのを明瞭でない記載の釈明を目的として、「ことを特徴とする実質的に配向された」と訂正する。特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため。
(f-5)明細書の段落[0012]の「配向された柱状ないし針状結晶を有する」とあるのを明瞭でない記載の釈明を目的として、「配向された長軸結晶を有する」と訂正する。特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため。
(f-6)明細書の段落[0012]の「セラミック焼結体の製造方法」とあるのを明瞭でない記載の釈明を目的として、「超高靱性かつ超高強度のセラミック焼結体の製造方法」と訂正する。特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため。
g.明細書の段落[0086]の「請求項1」とあるのを明瞭でない記載の釈明を目的として、「請求項1,7」と訂正する。特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため。
h.(h-1)明細書の段落[0088]の「従属請求項2〜8」とあるのを明瞭でない記載の釈明を目的として、「従属請求項2〜6及び8」と訂正する。特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため。
(h-2)明細書の段落[0088]の「特に2次焼結体」とあるのを明瞭でない記載の釈明を目的として、「2次焼結体」と訂正する。特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため。
(h-3)明細書の段落[0088]の「請求項8」とあるのを明瞭でない記載の釈明を目的として、「請求項7」と訂正する。特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため。
異議決定日 2003-03-20 
出願番号 特願平4-54169
審決分類 P 1 652・ 113- YA (C04B)
P 1 652・ 121- YA (C04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 三崎 仁  
特許庁審判長 松本 悟
特許庁審判官 唐戸 光雄
酒井 美知子
登録日 2000-11-17 
登録番号 特許第3131008号(P3131008)
権利者 財団法人石油産業活性化センター 株式会社ノリタケカンパニーリミテド
発明の名称 配向した長軸結晶を有するセラミックスの製造方法  
代理人 加藤 朝道  
代理人 加藤 朝道  
代理人 加藤 朝道  
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