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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C02F
審判 全部申し立て 2項進歩性  C02F
管理番号 1078023
異議申立番号 異議2000-74250  
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-01-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-11-22 
確定日 2003-06-04 
異議申立件数
事件の表示 特許第3048889号「活性汚泥処理方法及びそのための活性汚泥処理装置」の請求項1ないし9に係る特許に対する特許異議の申立てについてした平成14年2月4日付けの特許取消決定に対し、東京高等裁判所において決定取消の判決(平成14年(行ケ)第141号、平成15年3月20日判決言渡)があったので、さらに審理の結果、次のとおり決定する。 
結論 特許第3048889号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
(1)本件特許第3048889号は、平成7年6月29日に特許出願され、平成12年3月24日にその特許の設定登録がなされた。
(2)申立人三菱化工機株式会社より請求項1ないし9に係る特許に対する特許異議の申立てがあり、平成14年2月4日付けで「特許第3048889号の請求項1ないし2、5ないし6に係る特許を取り消す。」との特許取消決定がなされた。
(3)特許権者は、同決定の取り消しを求める訴えを東京高等裁判所に提起する一方、平成14年12月2日付けで 願書に添付した明細書について訂正を求める審判の請求(訂正2002-39254号)がなされ、当該審判の請求に対し、平成15年1月30日付けで「訂正することを認める」旨の審決がなされ、同審決は確定した。
(4)東京高等裁判所は、先の取消決定取消訴訟(平成14年(行ケ)第141号)について決定取消の判決(平成15年3月20日判決言渡)を行い、同判決は確定した。
2.本件発明
訂正後の本件請求項1ないし8に係る発明は、上記訂正の審判による訂正後の願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】有機性廃水を処理するための活性汚泥処理装置であって、有機廃水を好気性微生物による生物酸化によって無機物に分解するための曝気処理装置と、該曝気処理装置で処理された処理液を処理水と汚泥に固液分離するための第1の沈殿装置と、前記沈殿装置で分離された汚泥の一部を曝気処理装置に返送するための環流経路と、前記沈殿装置で分離された汚泥のうち余剰汚泥を60℃〜70℃で下水余剰汚泥から分離した好熱菌による可溶化反応で可溶化するための可溶化処理装置と、前記可溶化処理装置で可溶化された処理液を曝気処理装置に返送する返送経路とを設けたことを特徴とする活性汚泥処理装置。
【請求項2】前記沈殿装置で固液分離した汚泥を可溶化槽で可溶化された可溶化処理液で加温するための熱交換器を、前記沈殿装置から可溶化槽に至る経路に設けたことを特徴とする請求項1に記載の活性汚泥処理装置。
【請求項3】有機性廃水を処理するための活性汚泥処理装置であって、有機廃水を好気性生物処理をするための曝気処理装置と、該曝気処理装置で処理された処理液を処理水と汚泥に固液分離するための第1の沈殿装置と、前記沈殿装置で分離された汚泥の一部を曝気処理装置に返送するための環流経路と、前記沈殿装置で分離された汚泥のうち余剰汚泥を55℃より高い温度で好熱菌による微生物処理で可溶化するための可溶化処理装置と、前記可溶化処理装置で可溶化された処理液を曝気処理装置に返送する返送経路と、前記可溶化処理装置で可溶化された処理液を曝気処理装置に返送する返送経路に、処理液を曝気処理装置に返送する処理水と余剰汚泥に固液分離するための第2の沈殿装置を設けたことを特徴とする活性汚泥処理装置。
【請求項4】前記第2の沈殿装置の余剰汚泥の一部を、第1の沈殿装置に返送する余剰汚泥還流経路を設けたことを特徴とする請求項3に記載の活性汚泥処理装置。
【請求項5】有機性廃水を処理するための活性汚泥処理方法であって、有機廃水を曝気処理装置にて好気性微生物による生物酸化によって無機物に分解した後、曝気処理装置にて処理された処理液を第1の沈殿装置にて処理水と汚泥に固液分離し、前記沈殿装置で分離された汚泥の一部を、環流経路を介して曝気処理装置に返送し、前記沈殿装置で分離された汚泥のうち余剰汚泥を、可溶化処理装置にて60℃〜70℃で下水余剰汚泥から分離した好熱菌による可溶化反応で可溶化し、前記可溶化処理装置で可溶化された処理液を、返送経路を介して曝気処理装置に返送することを特徴とする活性汚泥処理方法。
【請求項6】前記沈殿装置で固液分離した汚泥を、沈殿装置から可溶化槽に至る経路に設けた熱交換器を介して、可溶化槽で可溶化された可溶化処理液で加温することを特徴とする請求項5に記載の活性汚泥処理方法。
【請求項7】有機性廃水を処理するための活性汚泥処理方法であって、有機廃水を曝気処理装置にて好気性生物処理をした後、曝気処理装置にて処理された処理液を第1の沈殿装置にて処理水と汚泥に固液分離し、前記沈殿装置で分離された汚泥の一部を、環流経路を介して曝気処理装置に返送し、前記沈殿装置で分離された汚泥のうち余剰汚泥を、可溶化処理装置にて55℃より高い温度で好熱菌による微生物処理で可溶化し、前記可溶化処理装置で可溶化された処理液を、返送経路を介して曝気処理装置に返送する活性汚泥処理方法であって、前記可溶化処理装置で可溶化された処理液を曝気処理装置に返送する返送経路に設けられた第2の沈殿装置にて、処理液を曝気処理装置に返送する処理水と余剰汚泥に固液分離することを特徴とする活性汚泥処
理方法。
【請求項8】前記第2の沈殿装置の余剰汚泥の一部を、余剰汚泥還流経路を介して第1の沈殿装置に返送することを特徴とする請求項7に記載の活性汚泥処理方法。」
3.申立ての理由の概要
特許異議申立人は、甲第1号証(特表平6-509986号公報)を提出し、本件請求項1〜2、5〜6、9に係る発明は甲第1号証に記載された発明であり、本件請求項1〜9に係る発明は甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件請求項1〜9に係る発明の特許は取り消されるべきものである旨主張している。
4.甲第1号証の記載内容
(a)「水性懸濁液および/または水溶液中の有機物に、中温性生物消化および好熱性生物消化を交互にかつ循環して施し、該中温性生物段階において、該有機物および存在している好熱性微生物を少なくとも部分的に消化し、また該好熱性生物段階において、該有機物および存在している中温性微生物を少なくとも部分的に消化し、そして有機物が実質的に完全に気体分解生成物に変化するまで該循環処理を続けることを特徴とする、有機物の分解方法。」(請求項1)
(b)「好気性または嫌気性微生物分解は、有機廃棄物、例えば下水(汚水)または産業廃水を精製するための好ましい手段である。この技術の主な欠点は、「汚泥」の生成にある。この汚泥は固形物の懸濁液であり、恐らく大部分は有機物を分解する微生物のバイオマスであって、その分解過程において量が増える。」(第2頁右下欄第5〜8行)
(c)「本発明の方法において、二つの処理段階を交互にかつ循環式に操作すると、各段階から生じた懸濁固形物が次の段階で消化されやすく、かつ次の段階のための代謝基質を形成しやすく、これによって有機物を完全に気体生成物に分解することができ、従って固形排出物の生成を避けることが可能である。」(第2頁右下欄第16〜20行)
(d)「好熱性生物段階は40〜105℃、好ましくは70〜90℃、より好ましくは80℃の温度で行われる。」(第3頁左上欄第16〜17行)
(e)「中温性生物段階は、好気性または嫌気性のいずれの様式でも操作できる。好気性様式では、有機物は二酸化炭素に分解され、このような過程は「生物燃焼(biocombustion)」と呼ばれる。」(第3頁右上欄第6〜9行)
(f)「好熱性個体群の微生物は、主として小さいグラム陽性桿菌、例えば Bacillus 種である。好熱性生物段階のための接種材料は、例えば堆肥からの生物を培養することにより発育させることができる。」(第3頁右上欄第17〜20行)
(g)「2段階方式において、図1に示す好気性系は、1サイクルで操作される2個の分解容器または2組の容器11および12からなっている。これらの醗酵装置は、プラグ流れ様式で操作されることが好ましいが、完全混合連続的培養(ケモスタット様式)を用いることもできる。下水(汚水)13は第一段階11に供給され、この好気性消化装置には空気または酸素供給管21が備えられており、そこから流出するガスは流れ22に出てくる。これは中温性生物段階であり、このために好ましい温度は23℃であるが、15〜40℃の範囲の温度であってよい。中温性生物段階は、分離された汚泥14の一部を接種材料として作用させ、かつバイオマス濃度を高めるためにフィードバックする活性汚泥法の原理に基づいて操作される。分離装置15は、出てきた汚泥35を濃縮し、透明な流れ16(これは系から出ていく)および汚泥流れ17(これは懸濁固形物の濃縮物である)を生成するのに用いられる。過剰の汚泥18は、好気性好熱性生物段階12に供給される。この段階は好ましくは80℃で操作されるが、可能な範囲は約60〜105℃である。好熱性生物反応器にも、空気または酸素供給管21が備えられており、流出CO2は、流れ22を経て出てくる。好熱性生物段階は、好都合には、自己加熱によってその温度を保つことができる。好熱性生物段階19から出てくる培養物の一部は、接種材料として作用させるために入口にフィードバックされる。残りの好熱性培養物20は、中温性生物段階に返送され、そこでは好熱性生物段階由来のバイオマスが下水と共に消化される。好熱性生物段階培養物20は、中温性生物段階に供給する前に冷却することができる。」(第3頁右下欄第7〜26行)
(h)「好熱性生物消化装置の温度調節の二つの方式を、図3で説明する。熱交換器30は、好熱性培養物流出流れ20からの熱を流入流れ18に伝達する働きをする。」(第4頁右上欄第6〜7行)
5.当審の判断
(1)請求項1に係る発明について
甲第1号証には、有機廃棄物、例えば下水または産業廃水を精製すること{上記摘示事項(b)}、好気性消化装置、分離装置及び好熱性生物反応器からなる汚水の活性汚泥処理装置、その好気性消化装置には空気または酸素供給管が備えられていること、分離装置は好気性消化装置から出てきた汚泥を透明な流れと汚泥流れに固液分離すること、分離装置で分離された汚泥の一部を好気性消化装置にフィードバックすること、分離装置で分離された汚泥のうち過剰の汚泥を好熱性生物反応器で好熱性生物処理すること、好熱性培養物を好気性消化装置に返送すること{上記摘示事項(g)}、好気性様式では生物燃焼によって有機物は二酸化炭素に分解されること{上記摘示事項(e)}、好熱性生物段階は、堆肥から培養された好熱菌により{上記摘示事項(f)}、40〜105℃、好ましくは70〜90℃の温度で行われること{上記摘示事項(d)}が、記載されているから、「有機性廃水を処理するための活性汚泥処理装置であって、有機廃水中の有機物を好気性生物の生物燃焼によって二酸化炭素に分解をするための空気または酸素供給管が備えられた好気性消化装置と、好気性消化装置から出てきた汚泥を透明な流れと汚泥流れに固液分離する分離装置と、分離装置で分離された汚泥の一部を好気性消化装置にフィードバックする経路と、分離装置で分離された汚泥のうち過剰の汚泥を、70〜90℃の温度で、堆肥から培養された好熱菌により好熱性微生物処理する好熱性生物反応器と、好熱性生物反応器からの好熱性培養物を好気性消化装置に返送する経路からなる活性汚泥処理装置」の発明(以下「甲1A発明」という)が記載されていると云える。
そこで、請求項1に係る発明(以下「請1発明」という)と甲1A発明とを対比すると、甲1A発明の「生物燃焼」は請1発明の「生物酸化」に、同じく「空気または酸素供給管が備えられた好気性消化装置」は「曝気処理装置」、「分離装置」は「第1の沈殿装置」、「フィードバックする経路」は「環流経路」、「過剰の汚泥」は「余剰汚泥」にそれぞれ相当し、好気性消化装置から出てきた汚泥は透明な流れと汚泥流れに固液分離されることから、汚泥のみではなく液体を含む処理液であること、好気性生物とは好気性微生物であることは、明らかであるから、両者は、「有機性廃水を処理するための活性汚泥処理装置であって、有機廃水を好気性微生物による生物酸化によって無機物に分解するための曝気処理装置と、該曝気処理装置で処理された処理液を処理水と汚泥に固液分離するための第1の沈殿装置と、前記沈殿装置で分離された汚泥の一部を曝気処理装置に返送するための環流経路と、前記沈殿装置で分離された汚泥のうち余剰汚泥を70℃で好熱菌により処理する微生物処理装置と、前記微生物処理装置の処理液を曝気処理装置に返送する返送経路とを設けたことを特徴とする活性汚泥処理装置」である点で一致し、(イ)微生物処理装置が、請1発明では余剰汚泥を下水余剰汚泥から分離した好熱菌による可溶化反応で可溶化するための可溶化処理装置であるのに対し、甲1A発明では余剰汚泥を堆肥から培養された好熱菌により好熱性生物処理する好熱性生物反応器であり、甲第1号証には好熱性生物反応器が余剰汚泥を可溶化することについては記載されていない点で相違している。
以下、上記相違点(イ)について検討する。
本件請1発明の構成である「下水余剰汚泥から分離した好熱菌」を用いる点は自明の事項ないし周知慣用手段とは認められない。また、本件請1発明は、上記構成により、本件特許に関する訂正審判(訂正2002-39254号)において平成14年11月29日付けで提出された実験成績証明書から、汚泥の可溶化において顕著な作用効果を奏するものと認められる。したがって、本件請1発明が、甲第1号証に記載された発明であるとすることができず、また、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。
(2)請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明は、請1発明を引用し、更に新たな構成を付加したものであるから、前項で述べたように、請1発明が、甲第1号証に記載された発明であるとすることができず、また、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない以上、請求項2に係る発明も、同じ理由により、甲第1号証に記載された発明であるとすることができず、また、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。
(3)請求項3に係る発明について
請求項3に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、請求項3に係る発明の「可溶化処理装置で可溶化された処理液を曝気処理装置に返送する返送経路に、処理液を曝気処理装置に返送する処理水と余剰汚泥に固液分離するための第2の沈殿装置を設けた」という構成が甲第1号証に記載ないし示唆されていない。そして、請求項3に係る発明は、その構成により、不溶性無機物を必要以上に蓄積させずに汚泥の活性を維持する(特許明細書段落【0033】)という甲第1号証の記載から予期し得ない効果を奏するものである。
したがって、請求項3に係る発明は甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができない。
(4)請求項4に係る発明について
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明を引用し、更に新たな構成を付加したものであるから、前項で述べたように、請求項3に係る発明が甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができない以上、請求項4に係る発明も、同じ理由により、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができない。
(5)請求項5に係る発明について
甲第1号証には、有機廃棄物、例えば下水または産業廃水を精製すること{上記摘示事項(b)}、好気性消化装置、分離装置及び好熱性生物反応器を用いて汚水を活性汚泥処理すること、好気性消化装置には空気または酸素供給管が備えられていること、分離装置は好気性消化装置から出てきた汚泥を透明な流れと汚泥流れに固液分離すること、分離装置で分離された汚泥の一部を好気性消化装置にフィードバックすること、分離装置で分離された汚泥のうち過剰の汚泥を好熱性生物反応器で好熱性生物処理すること、好熱性培養物を好気性消化装置に返送すること{上記摘示事項(g)}、好気性様式では生物燃焼によって有機物は二酸化炭素に分解されること{上記摘示事項(e)}、好熱性生物段階は堆肥から培養された好熱菌により{上記摘示事項(f)}、40〜105℃、好ましくは70〜90℃の温度で行われること{上記摘示事項(d)}が、記載されているから、「有機性廃水を処理するための活性汚泥処理方法であって、有機廃水を空気または酸素供給管が備えられた好気性消化装置で好気性生物の生物燃焼によって二酸化炭素に分解した後、好気性消化装置で処理された汚泥を分離装置で透明な流れと汚泥流れに固液分離し、分離装置で分離された汚泥の一部をフィードバック経路を介して好気性消化装置にフィードバックし、分離装置で分離された汚泥のうち過剰の汚泥を、好熱性生物反応器にて、70〜90℃の温度で、堆肥から培養された好熱菌により好熱性微生物処理し、好熱性生物反応器からの好熱性培養物を好気性消化装置に返送する活性汚泥処理方法」の発明(以下「甲1B発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件請求項5に係る発明(以下「請5発明」という)と甲1B発明とを対比すると、甲1B発明の「生物燃焼」は請5発明の「生物酸化」に、同じく「空気または酸素供給管が備えられた好気性消化装置」は「曝気処理装置」、「分離装置」は「第1の沈殿装置」、「フィードバック経路」は「環流経路」、「過剰の汚泥」は「余剰汚泥」にそれぞれ相当し、好気性消化装置で処理された汚泥は透明な流れと汚泥流れに固液分離されることから、汚泥のみではなく液体を含む処理液であること、好気性生物とは好気性微生物であることは、明らかであるから、両者は、「有機性廃水を処理するための活性汚泥処理方法であって、有機廃水を曝気処理装置にて好気性微生物によって無機物に分解した後、曝気処理装置で処理された処理液を第1の沈殿装置にて処理水と汚泥に固液分離し、前記沈殿装置で分離された汚泥の一部を、環流経路を介して曝気処理装置に返送し、前記沈殿装置で分離された汚泥のうち余剰汚泥を微生物処理装置にて70℃で好熱菌により微生物処理し、前記微生物処理装置の処理液を、返送経路を介して曝気処理装置に返送する活性汚泥処理方法」である点で一致し、(ロ)微生物処理が、本件請5発明では余剰汚泥を下水余剰汚泥から分離した好熱菌による可溶化反応で可溶化しているのに対し、甲1B発明では余剰汚泥を堆肥から培養された好熱菌により好熱性生物処理するものであり、甲第1号証には好熱性生物処理で余剰汚泥を可溶化することについては記載されていない点で相違している。
以下、上記相違点(ロ)について検討する。
本件請5発明の構成である「下水余剰汚泥から分離した好熱菌」を用いる点は自明の事項ないし周知慣用手段とは認められない。また、本件請5発明は、上記構成により、本件特許に関する訂正審判(訂正2002-39254号)において平成14年11月29日付けで提出された実験成績証明書から、汚泥の可溶化において顕著な作用効果を奏するものと認められる。したがって、本件請5発明が甲第1号証に記載された発明であるとすることができず、また、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。
(6)請求項6に係る発明について
請求項6に係る発明は、請5発明を引用し、更に新たな構成を付加したものであるから、前項で述べたように、請5発明が、甲第1号証に記載された発明であるとすることができず、また、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない以上、請求項6に係る発明も、同じ理由により、甲第1号証に記載された発明であるとすることができず、また、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。
(7)請求項7に係る発明について
請求項7に係る発明と上記甲1B発明とを対比すると、請求項7に係る発明の「可溶化処理装置で可溶化された処理液を曝気処理装置に返送する返送経路に設けられた第2の沈殿装置にて、処理液を曝気処理装置に返送する処理水と余剰汚泥に固液分離する」という構成が甲第1号証に記載ないし示唆されていない。そして、請求項7に係る発明は、その構成により、不溶性無機物を必要以上に蓄積させずに汚泥の活性を維持する(特許明細書段落【0033】)という甲第1号証の記載から予期し得ない効果を奏するものである。
したがって、請求項7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができない。
(8)請求項8に係る発明について
請求項8に係る発明は、請求項7に係る発明を引用し、更に新たな構成を付加したものであるから、前項で述べたように、請求項7に係る発明が甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができない以上、請求項8に係る発明も、同じ理由により、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができない。
6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1〜8に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜8に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-02-04 
出願番号 特願平7-163355
審決分類 P 1 651・ 113- Y (C02F)
P 1 651・ 121- Y (C02F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 富永 正史増田 亮子  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 西村 和美
大黒 浩之
登録日 2000-03-24 
登録番号 特許第3048889号(P3048889)
権利者 神鋼パンテツク株式会社
発明の名称 活性汚泥処理方法及びそのための活性汚泥処理装置  
代理人 岡 憲吾  
代理人 高石 ▲郷▼  
代理人 古川 安航  
代理人 角田 嘉宏  
代理人 白井 重隆  

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