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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C01B
管理番号 1078791
審判番号 不服2000-10189  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-02-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-07-06 
確定日 2003-06-12 
事件の表示 平成4年特許願第128587号「水蒸気改質反応器」拒絶査定に対する審判事件[平成6年2月15日出願公開、特開平6-40703]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.本願の手続の経緯および本願発明
本願は、平成4年5月21日に出願した特許出願であって、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成12年4月24日に提出の手続補正書によって補正された本願明細書の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】炭化水素や含酸素炭化水素が原料として供給され、水蒸気改質反応によって水素を製造する反応器であって、水素分離膜を水蒸気改質反応触媒層内に内蔵し、圧力差によって水素を選択的に分離しながら反応を進行させる水素分離型の水蒸気改質反応器において、該水蒸気改質反応に必要な反応熱を供給するために前記反応触媒層の周囲に、複数のガス分散板により構成された複数の燃料分散室によって燃焼ガスの流れ方向に複数段に分割された燃焼触媒層を配設するとともに、各燃料分散室に連続的あるいは段階的に燃料を供給するようにしてなることを特徴とする水蒸気改質反応器。

II .原査定の概要
本願発明は、本願出願前に頒布された刊行物である特開平2-311301号公報(以下、「引用例1」という)、同特開平4-121973号公報、及び、同特開平1-219001号公報に記載された発明に、同特開平2-71834号公報(以下、「引用例2」という)、特開昭60-248230号公報、及び、特開昭61-106402号公報に記載された発明を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

III.引用例の記載
III-1.引用例1(特開平2-311301号公報)
引用例1には、以下の記載があり、また、その発明の方法を実施する装置の要部の概略図である第1図、第1図の装置に使用する分離膜の模式図である第2図およびその発明の一実施例のフローを説明するための概略図である第3図が記載されている。
(イ-1)「(1)炭化水素又はメタノールを原料とし、スチームリフォーミング反応により製造した水素含有ガスを燃料電池用の燃料として使用する方法において、触媒を充填した反応管内に水素分離機能を有する分離膜を、更に前記反応管外側に外筒を設け、触媒を充填した反応管内にスチームリフォーミング反応原料を供給してH2を発生させ、分離膜の内側に不活性ガスを流入させて分離膜を透過したH2を不活性ガスに同伴させて系外に抜出し、該H2含有ガスを燃料電池に供給し、該燃料電池内でH2を消費してH2濃度が低下した不活性ガスを主体とする残留ガスを前記分離膜内に循環使用することを特徴とする燃料電池用水素製造方法。
(2)未反応の原料ガスを前記外筒内で燃焼させることにより、前記触媒層を加熱することを特徴とする請求項(1)記載の燃料電池用水素製造方法。」(特許請求の範囲)
(イ-2)「[従来の技術]燃料電池は、水素と酸素との反応により発生するエネルギーを電気エネルギーとして取り出すものである。
H2+O2⇒H2O (1)
この水素製造方法としては、石油、天然ガス等の炭化水素のスチームリフォーミング法がある。これは、触媒層中で原料ガスとスチームとを反応させる方法である。主要な反応は以下の通りである。
CnHm+nH2O⇔nCO+(n+m/2)H2 (2)
CnHm+2nH2O⇔nCO2+(2n+m/2)H2 (3)
CnHm+nCO2⇔2nCO+m/2H2 (4)
これらの反応は触媒層中で生じ、反応速度及び転化率は触媒層中の各ガス成分の分圧の影響を大きく受ける。従来の方法では、生成ガス全体を触媒層から系外に除去するのみであるから、化学平衡状態までしか反応は進まない。」(第1頁右下欄第7行〜左上欄第4行)
(イ-3)「[発明が解決しようとする課題]前記反応(2)〜(4)において生成系からH2を除去すれば、平衡状態がくずれるために反応がさらに右側に進行することになる。この場合、生成物中のH2を選択的に分離・除去することにより大きい効果が期待できる。」(第2頁左上欄第5〜10行)
(イ-4)「すなわち、本発明は以下の構成を新規とするものである。(1)触媒層中にH2を選択的に分離する膜を設置する。(2)選択的に透過したH2を分離膜内から系外へ移動させるために同伴ガスとして不活性ガスを使用する。(3)分離した不活性ガスを含むH2ガスは、燃料電池用原料ガスとして使用し、H2消費後の不活性ガスを主成分とする残留ガスを分離膜内に循環使用する。(4)必要に応じて、触媒反応で必要な反応熱を、触媒が充填された反応管の外筒に未反応ガスを流入させて燃焼させることにより供給する。[作用](1)生成ガス中のH2を選択的に分離・除去することにより、H2の生成速度が増大する。(2)不活性ガスを選択的に透過されたH2の同伴ガスとして使用することにより、透過H2の系外への除去を促進する。」(第2頁右上欄第11行〜左下欄第10行)
(イ-5)「第1図は本発明方法を実施する装置の要部の概略図で、1は反応管、2は外筒、3は分離膜、4は触媒、5は原料ガス(スチームリフォーミング原料ガス)、6は循環ガス(不活性ガス)、7は循環ガスとH2ガスの混合ガス、8は未反応ガス、9は燃焼排ガスである。反応管1内の分離膜3と区切られた空間には触媒4が充填されており、この触媒4充填部に原料ガス5が供給され、前記反応(2)〜(4)を行わせる。反応の進行に伴い発生したH2は分離膜3を透過し、分離膜3内の空間に至り、こゝに供給される循環ガス6により系外に循環ガス+H2混合ガス7として取出される。この結果、反応(2)〜(4)は右辺に向って進行し、H2ガスの取得量が増加する。触媒4充填部から排出される未反応ガス8は、反応管1と外筒2の間の空間に循環供給され、こゝで燃焼させることによって燃焼熱を発生させ、触媒4充填部の加熱に用いられ、燃焼排ガス9は系外に排出される。」(第2頁左下欄第13行〜右下欄第12行)
(イ-6)「本発明の一実施例を第3図によって説明する。CH4、H2O等の原料ガス5は、触媒4充填部に供給されてスチームリフォーミング反応によりH2を生成する。生成ガス中のH2は分離膜3により選択的に分離・除去されて触媒4充填部から反応系外に抜き出され、循環ガス6に同伴されて循環ガス+H2混合ガス7となって燃料電池12に供給される。燃料電池12内では、H2と空気13中のO2が反応してH2Oを生成する。この時発生する熱を電流として取り出す。H2の大半を燃料電池12で消費した後の不活性ガスを主成分とする循環ガス6は、再度分離膜3内に循環使用される。一方、スチームリフォーミング反応で未反応のCH4等の未反応ガス8は、外筒2に供給され、別途外部から導入される空気13により燃焼して燃焼熱を発生する。この燃焼熱をスチームリフォーミング反応の反応熱として使用する。」(第3頁右上欄第5行〜左下欄第3行)
(イ-7)「[発明の効果](1)不活性ガスとしてN2を循環使用し、生成したH2を触媒層から分離膜を通して選択的に分離することにより、平衡転化率を向上させることができた。(2)未反応原料ガスを触媒層外筒で燃焼させることにより熱回収を行うことができた。」(第3頁右下欄第14〜末行)

III-2.引用例2(特開平2-71834号公報)
引用例2には、以下の記載があり、また、その発明の装置の具体例の一つを説明する概念図である第1図等が記載されている。
(ロ-1)「本発明は炭化水素やメタノールに代表されるアルコール等を水蒸気改質する装置に関する。詳しくは出来るだけ小容積の燃焼ガス生成空間中で発生した燃焼熱が燃焼ガスからの輻射熱を主とはしない伝熱によって反応器(又は改質管又は改質器)の壁を貫通して反応器内に与えられる水蒸気改質用反応器に関する。」(第2頁右下欄第15行〜第3頁左上欄第1行)
(ロ-2)「本発明では気相の燃料又は微細に霧化して供給される液体燃料が空気、酸素富化空気等の含酸素気体と共に、装置に設けられたパラジウム、白金、ニッケル、マンガン、銅等に代表される有効成分の少なくとも1種を含む燃焼触媒床に供給され燃焼させられて、水蒸気改質にとり所要量の燃焼熱が燃焼触媒床即ち燃焼域内での温度分布の精密な制御下に発生させられうる。」(第3頁右上欄第11〜18行)
(ロ-3)「本発明での燃焼触媒床手段は燃焼触媒を担持した例えば球状、ペレット状等の各種形状の粒子が、反応空間に対応する外管に接してその外側の熱供給空間の一部ら又は内壁に接してその内側の熱供給空間の一部らに充填されて構成されるのが通例だが、・・・」(第6頁左上欄第14〜19行)
(ロ-4)「燃焼触媒床手段として球形等の燃焼触媒担持粒子を充填した場合には一般に空気等の流体がこの充填空間を通過する際の圧力損失が大きくなるで、供給される空気等の圧力を充分高める必要があり、・・・」(第6頁右上欄第6〜10行)
(ロ-5)「本発明では燃料を燃焼させる為の含酸素ガスの実質的に全てが含酸素供給手段から供給される一方、小規模な実験的装置以外では、燃料は個々の燃焼触媒床手段に対応して夫々の上流端即ち燃料供給端側端に分割供給される。燃料は反応空間の長手方向にわたり反応空間を流れる流体と通常向流的、必要に応じて並流的に流されて分割的に燃焼させられ、発生する燃焼熱を、同方向にわたり望ましい分布で反応空間内の流体に与える。」(第6頁左下欄第9〜17行)
(ロ-6)「分割供給された個々の燃料は対応する燃焼触媒手段内で燃焼触媒の作用により実質的に無炎で穏やかに燃焼し、発生した所望量の熱は、後述の伝熱手段併用の場合のほかは、燃焼ガスからの輻射によるよりは主として触媒担体からの伝導及び輻射、及び該担体の作用で乱流となって反応器の燃焼熱通過壁面に接する燃焼ガスから対流伝熱により反応器の燃焼熱通過壁を経由して反応空間内にもたらされる。担体同志の間では伝導と輻射で熱が移動し、最終的には受熱面である燃焼熱通過壁面に与えられる。」(第6頁左下欄第18行〜右下欄第8行)
(ロ-7)「第1図は外熱型の本発明の装置の1例を示す。装置の中心軸を含む縦の面による縦断面略図である。原料と水蒸気が混合された原料ガスは水蒸気改質用原料の供給経路手段9がもつ原料供給口10から二重管である改質管12の同軸の外管14(燃焼熱通過壁となる)と内管16(熱回収壁となる)との間の環状空間18内を下方に送られこの間に改質触媒床20で改質され外管の下端即ち反転端19で反転して内管内の熱回収空間11を向流的に上昇する。上記の通り環状空間18内の改質反応がなされる反応空間には水蒸気改質用触媒20が充填される。内管内を上昇するガスは反応空間18内を下降するガスに余熱を与える。改質触媒床20が充填された反応空間では反応熱を与え、それよりも原料供給端側の反応空間では改質前のガスの予熱をしてから改質済ガス取出手段21のもつ取出口22から排出される。」(第10頁左下欄第10行〜右下欄第7行)
(ロ-8)「外管14と本体40との各円筒状壁の間の環状の空間即ち熱供給空間内に改質管12の反応空間を取囲んで燃焼触媒床30が改質管の長手方向にわたり多段に設けられる。燃焼触媒床30及びその下端側の延長上の空間を取囲んで断熱材壁32が設けられる。改質管12の反応空間を取囲んで、図示しない噴出口を持つ環状の管である燃料噴出手段38を内在させる燃料供給室39とその上端に位置する燃焼触媒床30とからなる熱供給手段が二重管の長手方向にわたり多段に配置される。燃料噴出手段38には燃料供給管36が接続されて両者が燃料供給手段34をなす。供給管36は本体外に突き出して燃料供給口35を持つ。燃料供給室39、燃料供給管36、燃料噴出手段38、燃焼触媒床30が熱供給手段300をなす。これらが通常耐圧隔壁をなす本体又は外殻胴即ち隔壁手段40内に納められる。改質器12の上端側は本体40から突き出している。」(第10頁右下欄第12行〜第11頁左上欄第11行)
(ロ-9)「多段の燃焼触媒床手段30は通常各段間に間隔を持つよう配列され、各段間の、及び最下段の手段30の下端に隣接する空間が通常燃料供給室39となる。但し燃料供給手段の一部又は全部が粒状、綿状等の燃焼触媒床担体の中に埋め込まれた構成の場合は必ずしも独立した空間として燃料供給室が設けらなくてもよい。これらのことは本発明の全ての例に共通する。燃料供給手段34は燃料供給管36と噴出手段としての環状管38からなる。環状管38にはその下面に噴出口が多数穿設されている。」(第11頁左上欄第12行〜右上欄第2行)
(ロ-10)「燃焼触媒床手段30がこの例では外管14と断熱材壁32の間の環状空間の形状をした成形体でない場合には、粒状、繊維状、網状等の触媒を担持し又はしない担体がこの空間に充填される。空気、酸素富化空気等の含酸素ガスは酸素入口42から送り込まれ、分散板44、気体分散材料46をへて均一に分散されてから外管14と断熱材壁32の間の環状空間を上昇する。この間含酸素ガスは、最下段の環状管38の有する噴出口から噴出する燃料ガスと互いに混合してから最下段の燃焼触媒床に流入し、燃料を燃焼触媒の助けにより殆ど完全に燃焼させた後再び同様に次段の燃料と混合してからこれを燃焼させ、これを燃焼触媒床の段数分繰り返してから、本体40内上部空間47を経て燃焼済ガス排出口手段49の持つ燃焼ガス排出口48から排出される。」(第11頁右上欄第15行〜左下欄第10行)
(ロ-11)「本発明では、各燃焼触媒床で発生した燃焼熱は反応管内にもたらされて改質反応を進行させる。互いに必ずしも同一の長さや燃焼触媒の分布を有しなくともよい多段の触媒床配置により、改質管内の改質反応の進行に応じ必要とされる量の熱を、過度に高温になる部分を生ずることなく適正に与えることができる。」(第11頁左下欄第11〜17行)
(ロ-12)「[発明の効果]本発明の装置により以下の主要な効果が得られる。1-改質管の長手方向にわたり多段に燃料を分割して燃焼させしかも触媒燃焼させることから局部過熱をなくすことが出来かつ燃焼温度を従来より下げうる為、耐熱温度以上での燃焼が起こるゆえに空気過剰率を適正比以上としなければ従来使用困難だった燃焼触媒担体の利用が、適正な空気対燃料比で可能となる。2-同様の理由でまた、反応管の器壁材料等、本発明装置を構成する材料も高価な耐熱材料を用いる必要を減らすことができる。3-改質管の長手方向にわたり多段に燃料を分割して触媒燃焼させるので、改質管に与える熱の量及び温度分布をこの方向上で所望の値に設定できる。4-低い空気過剰率で運転できるので燃焼排ガスの量を減らすことができ、結果として装置外に廃棄しなければならない熱エネルギを少くし熱効率、炉効率が向上する。5-燃焼触媒床が改質管の周囲にかつ直接接触して設けられるので、燃焼空間を減じながら、ガスからの輻射でなくより密度の高い触媒担体からの伝導及び/又は輻射による伝熱、及び触媒担体が例えば粒状、線条状、綿状、網状、三次元網状等である場合、触媒担体により乱流となった燃焼ガスからの効率の高い対流伝熱がなされて効率よく反応器に燃焼熱を与えうる。」(第15頁右下欄第16行〜第16頁右上欄第4行)

IV.当審の判断
引用例1の前記(イ-1)、(イ-2)、(イ-5)の記載、及び、第1図の記載によれば、引用例1には、
「触媒4を充填した反応管1内に水素分離機能を有する分離膜3を触媒4充填部の内側に設け、更に反応管1外側に外筒2を設けてなる、スチームリフォーミング反応により水素ガスを製造する装置であって、
反応管1内の触媒4充填部に炭化水素又はメタノールからなる原料ガス5を供給してスチームリフォームミング反応を行わせ、反応の進行に伴い発生したH2を触媒4充填部の内側の該分離膜3を透過して該分離膜3内の空間から系外に抜出し、更に、未反応の原料ガス8を外筒2内で燃焼させて触媒4充填部を加熱する、スチームリフォームミング反応により水素ガスを製造する装置」に関する発明が記載されているといえる。
そこで、本願発明(以下、必要に応じ、「前者」という)と引用例1に記載の発明(以下、必要に応じ、「後者」という)とを対比する。
引用例1に記載の発明でいう「炭化水素又はメタノール」、「スチームリフォームミング反応」、「触媒4充填部の触媒4」、「水素分離機能を有する分離膜3」、「水素ガスを製造する装置」は、本願発明でいう「炭化水素や含酸素炭化水素」、「水蒸気改質反応」、「水蒸気改質反応触媒層」、「水素分離膜」、「水蒸気改質反応器」にそれぞれ相当する。また、引用例1に記載の発明のスチームリフォームミング反応では、反応の進行に伴い発生したH2は水素分離機能を有する分離膜3を透過して系外に抜出すことから、その反応は、本願発明のように、水素を選択的に分離しながら反応を進行させる方式のものである。
よって、両者は、「炭化水素や含酸素炭化水素が原料として供給され、水蒸気改質反応によって水素を製造する反応器であって、水素分離膜を水蒸気改質反応触媒層内に内蔵し、水素を選択的に分離しながら反応を進行させる水素分離型の水蒸気改質反応器」である点で一致しており、両者は、次の点で相違している。
(I)前者は、「圧力差によって」水素を選択的に分離するとしているのに対し、後者では、水素を選択的に分離するものの、それが圧力差によることが明示されない点〔相違点(I)〕。
(II)前者は、「該水蒸気改質反応に必要な反応熱を供給するために反応触媒層の周囲に、複数のガス分散板により構成された複数の燃料分散室によって燃焼ガスの流れ方向に複数段に分割された燃焼触媒層を配設する」としているのに対し、後者では、未反応の原料ガス8を外筒2内で燃焼させて触媒4充填部を加熱することが示されるだけであって、そこには燃焼触媒層はなく、また、ガス分散板も燃料分散室も存在しないので、そのようになっていない点〔相違点(II)〕。
(III)前者は、該水蒸気改質反応に必要な反応熱を供給するために「各燃料分散室に連続的あるいは段階的に燃料を供給するようにする」としているのに対し、後者では、未反応の原料ガス8を外筒2内で燃焼させて触媒4充填部を加熱することが示されるだけであって、そこには燃料分散室が存在しなので、そのようにはなっていない点〔相違点(III)〕。
そこで、上記相違点につき検討する。
相違点(I)について
引用例1に記載の発明は、前記(イ-1)及び(イ-5)により、分離膜を透過した水素は、循環ガス(不活性ガス)6により系外に取出されるものであり、このように、分離膜を透過した水素は強制的に排出されるのであるから、分離膜の水素透過前側と水素透過後側との間には水素ガスの分圧につき差が生じ、当該水素透過後側の水素ガスの分圧が当該水素透過前側のものより低くなっていると解される。してみれば、引用例1に記載の発明においても、水素ガスにつき圧力差が生じ、これにより、圧力差によって水素を選択的に分離するという上記構成を備えるものである。
また、仮に、引用例1に記載の発明では圧力差によって水素を選択的に分離するという上記構成が明瞭に示されていないとしても、分離膜による気体分離の分野においては、分離膜の水素透過前側と水素透過後側との間に圧力差を設けることが慣用技術(必要ならば、特開平1-219001号公報第2頁右下欄第6〜13行、特開平1-176422号公報の特許請求の範囲第1項、特開平2-90914号公報第2頁左下欄第5〜9行、等を参照)となっている。してみれば、引用例1に記載の発明に対して、圧力差によって水素を選択的に分離するという当該慣用技術を適用して本願発明のようにすることは当業者が適宜なし得るところに過ぎない。
したがって、「圧力差によって」水素を選択的に分離する構成については、実質的な相違点とはいえず、ないしは、当業者が容易に想到できる程度のものである。
相違点(II)について
引用例2の上記(ロ-1)、(ロ-2)の記載によれば、引用例2には、「炭化水素やメタノール等を水蒸気改質する際、燃焼触媒床に燃料を供給して燃焼させて、水蒸気改質に必要な熱を発生させる装置」に関する発明が記載されており、このうち、引用例2に記載の発明の具体例の1つである第1図に記載のものは、その上記(ロ-7)〜(ロ-11)及び第1図によれば、本体40内に設けられた外管14と内管16の間に改質触媒床20を配置して、外管14の上部に設けられた原料供給口10から水蒸気改質用原料を供給し、改質触媒床20で改質後、外管14の下端即ち反転端19で反転して内管16内の熱回収空間11を経て改質済ガスを内管16の上部に設けられた取出口22から取り出す外熱型の装置において、「外管14とその外側の耐熱材壁32の間に、改質触媒層20の長手方向で含酸素ガスの流れ方向に、燃焼触媒床30を多段に設け、最下段の燃焼触媒床30の下方の空間や各燃焼触媒床30の間の燃料供給室39に燃料噴出手段38を設けた装置」からなるものである。
そして、引用例2の上記(ロ-3)、(ロ-4)、(ロ-10)の記載によれば、引用例2の第1図に記載された装置では、「燃焼触媒床手段30として、触媒を担持した粒状等の担体を外管14と断熱材壁32の間の環状空間に充填した態様」も有るのであり、この態様においては、引用例2の第1図に記載された発明の装置は、触媒を担持した粒状等の担体を保持(隔離)し、かつ、燃料供給室39から燃料含有の含酸素ガスを燃焼触媒床に均一に導入するために、何らかの保持・通気部材を、燃焼触媒床手段30ごとに備えていることはその構成上当然のことである。この場合、引用例2の第1図に記載の「燃料供給室39」、「改質触媒層20」、「燃焼触媒床30」は、本願発明の「燃料分散室」、「反応触媒層」、「燃焼触媒層」にそれぞれ相当する。
以上のことから、引用例2に記載された発明の装置(第1図)では、本願発明でいう「水蒸気改質反応に必要な反応熱を供給するために反応触媒層の周囲に、複数の保持・通気部材により構成された複数の燃料分散室によって燃焼ガスの流れ方向に複数段に分割された燃焼触媒層を配設する」という構成が示されるといえる。
そして、引用例2に記載の発明の装置は、いわゆる水素分離膜を備えたタイプの装置ではないものの、炭化水素やメタノール等から水蒸気改質反応により水素等を製造する装置であることから、引用例1に記載の発明と同じ技術分野に属し、また、引用例2に記載の発明は、その水蒸気改質反応に必要な反応熱を供給するために反応触媒層(改質触媒床30)の周囲に燃料を供給して燃焼させる点で、引用例1に記載の発明と同じ方式により反応熱を付与するものであるといえる。
してみれば、引用例1に記載される発明において、触媒4充填部を未反応の原料ガス8を外筒2内で燃焼させるその加熱方式に替えて、引用例2に記載の発明で示される「水蒸気改質反応に必要な反応熱を供給するために反応触媒層の周囲に、複数の保持・通気部材により構成された複数の燃料分散室によって燃焼ガスの流れ方向に複数段に分割された燃焼触媒層を配設する」ところの加熱方式を用いることは当業者の適宜なし得るところに過ぎず、また、その際、当該保持・通気部材につき、それを、触媒を担持した粒状等の担体を保持(隔離)し、かつ、燃料供給室39から燃料含有の含酸素ガスを燃焼触媒床に均一に導入する観点から、多孔の板状体であるガス分散板とする程度のことは当業者が適宜なし得る設計的事項に過ぎないものである。
仮に、そうでないとしても、引用例2に記載の発明の如く、小片固体集合体(触媒を担持した粒状等の触媒担体)を気体(燃料含有の含酸素ガス)で処理する分野において、小片固体集合体を保持しそして小片固体集合体に気体を均一に導入するための手段として、ガス分散板を採択することは周知・慣用の事項〔必要ならば、実願平1-142753号(実開平3-83796号)のマイクロフィルム第2頁第11〜15行、特開平2-243533号公報の特許請求の範囲第2項、特開平3-177704号公報の第1頁右下欄第18行〜第2頁右上欄第18行、引用例2に記載の第1図の多孔の分散板44、等を参照〕となっている以上、引用例1に記載の発明に引用例2に記載の発明を適用する際に、その保持・通気部材として、周知・慣用の上記ガス分散板を用いることは当業者が適宜なし得るところに過ぎない。
してみれば、この相違点に関する構成は、引用例2の記載に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得るものである。
相違点(III)について
引用例2の上記(ロ-5)の記載によれば、引用例2に記載された装置では、燃料は個々の燃焼触媒床手段に対応して夫々の上流端即ち燃料供給端側端に分割供給され、燃料は反応空間の長手方向にわたり分割的に燃焼させられ、発生する燃焼熱を、同方向にわたり望ましい分布で反応空間内の流体に与えるのであるから、そのために、燃料の供給量は、それぞれの分割供給される燃料ごとに調節されることは当然のことである。
そうすると、上記相違点(III)に関する、水蒸気改質反応に必要な反応熱を供給するために「各燃料分散室に連続的あるいは段階的に燃料を供給するようにしてなる」という事項も、引用例2の記載に基づいて当業者の適宜なし得ることに過ぎない。

そして、上記(ロ-5)、(ロ-6)、(ロ-12)に記載されているように、引用例2に記載された装置では、改質管(改質触媒層)の長手方向にわたり多段に燃料を分割して触媒燃焼させるので、改質管に与える熱の量及び温度分布を改質管の長手方向上で所望の値に設定でき、また、燃焼触媒床が改質管の周囲にかつ直接接触して設けられるので、燃焼空間を減じながら、より密度の高い触媒担体からの伝導並びに輻射による伝熱、及び、触媒担体が例えば粒状等である場合、触媒担体により乱流となった燃焼ガスからの効率の高い対流伝熱がなされて効率よく反応器に燃焼熱を与え得る等の効果を奏するのであるから、請求人が主張する伝熱効率や加熱効率の向上に関する本願発明の効果も、引用例2に記載された発明の効果以上のものではない。

してみると、本願請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された刊行物である引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-04-04 
結審通知日 2003-04-08 
審決日 2003-04-25 
出願番号 特願平4-128587
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安齋 美佐子  
特許庁審判長 多喜 鉄雄
特許庁審判官 岡田 和加子
後谷 陽一
発明の名称 水蒸気改質反応器  
代理人 内田 明  
代理人 安西 篤夫  
代理人 萩原 亮一  
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