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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1078858 |
審判番号 | 審判1997-8162 |
総通号数 | 44 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-01-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1997-05-19 |
確定日 | 2003-06-16 |
事件の表示 | 平成 3年特許願第195580号「演算回路および演算方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 1月31日出願公開、特開平 7- 28782]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成3年8月5日8日(パリ条約による優先権主張1991年3月20日、大韓民国)の出願であって、その請求項1乃至24に係る発明は、補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至24に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1の記載は次のとおりである。(以下、前記請求項1に記載された発明を、本願発明、という。) 「【請求項1】 GF(2m)上の基底で表現された元素から部分体GF(2m/2)上の基底で表現された元素に変換する変換手段と、 前記部分体GF(2m/2)上の基底で表現された元素をGF(2m/2)上で演算を行う演算手段と、 前記演算されたGF(2m/2)上の基底で表現された元素をGF(2m)上の基底で表現された元素に逆変換する逆変換手段とにより構成されていることを特徴とする部分体GF(2m/2)を用いたGF(2m)上の演算回路。 」 2.引用例 これに対して、当審において、平成13年5月15日付で通知した拒絶の理由に引用した、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平1-293442号公報(以下、引用例1、という。)には、部分体を用いたGF(2m)上の除算器の発明について、次の事項が記載されている。 (A)「・・・回路構成の簡単な除算器を提供することを目的とする。」(第2頁左上欄20行〜右上欄1行) (B)「GF(2m)上でベクトル表現された被除数と除数をGF(2m)の部分体上の基底を用いた積和表現に変換する要素変換手段と、部分体上で除算演算を行なう除算手段と、部分体の積和表現されている除算結果をGF(2m)上のベクトル表現にする要素逆変換手段とを備えた除算器である。」(課題を解決するための手段の段落) (C)「本発明は、GF(2m)上のベクトル表現とGF(2m)の部分体上の基底を用いた積和表現との変換および逆変換が容易であること、また前記除算手段の回路規模が小さいことにより、従来のROMを必要とする除算器と比べて回路規模の小さい除算器を構成する。また、本発明は、逆数演算と乗算を並列に行なうことにより、除算全体としての実行時間の短い除算器を構成する。」(作用の段落) (D)「第1図は本発明の実施例におけるX6+X+1によって導かれる体GF(26)上の除算器の構成を示すものである。8、9はGF(26)の要素変換器、10〜14、19、20はGF(23)上の乗算器、15は演算器(1)(ローマ数字は使用できないため(1),(2),(3)を代用する。)、16は演算器(2)、17は演算器(3)、18はGF(23)上の逆数器、21はGF(26)の要素逆変換器である。(2頁右上欄下2行〜左下欄下5行) (E)2頁左下欄6行〜4頁左上欄下5行には、第1図の除算器の動作が具体的に説明されており、2頁左下欄7行〜右下欄下17行には「X6+X+1によって導かれる体GF(26)の任意の要素Xは、原始元α=(000010)をこのGF(26)の部分体の一つであるX3+X2+1によって導かれる体GF(23 )上の基底とすることによりこのGF(23 )の要素であるX0,X1を用いてX=X0+X1αと表すことができる。ここで+は法2加算(排他的論理和)を示している。・・・そこで、要素変換器8では・・・に基づいてXからX0およびX1を決定し、要素逆変換器21(9は21の誤記と認めた。)では・・・に基づいてX0およびX1からXを決定している。要素変換器8と要素逆変換器21をそれぞれ法2加算器22のみを用いて構成した回路構成図が第2図,第3図である。」と記載されている。 昭和62年「電子情報通信学会情報・システム部門全国大会講演論文 集」(分冊1)頁10,森井昌克,笠原正雄[GF(28)上の逆元を求めるゲート回路の一構成法](以下、引用例3、という。)には、引用例1と同様に、部分体上で演算を行うもので、m=8の例が記載されている。 3.対比 本願発明と引用例1に記載された、第1図のGF(26)の要素変換器8、9と、GF(23)上の乗算器、演算器、及びGF(23)上の逆数器と、GF(26)の要素逆変換器とからなる除算器の発明(以下、引用例1の発明という。)とを対比する。 引用例1の発明は、(B)(D)(E)の記載をみると、GF(26)の要素変換器8、9を備える。そして、この要素変換器8、9は、GF(2m )上でベクトル表現された被除数と除数をGF(2m )の部分体上の基底を用いた積和表現に変換する要素変換手段である。そして、体GF(26)の任意の要素Xは、原始元α=(000010)をこのGF(26)の部分体の一つであるX3+X2+1によって導かれる体GF(23 )上の基底とすることにより、このGF(23 )の要素であるX0,X1を用いてX=X0+X1αと表すことができると記載されていて、GF(2m )におけるm=6の場合である、GF(26)から部分体GF(23 )への変換が示されていることから、体GF(2m )から部分体GF(2m/2)への変換が示されているといえるので(m=8の場合について引用例2も参照した。)、引用例1の発明は、本願発明の「GF(2m)上の基底で表現された元素から部分体GF(2m/2)上の基底で表現された元素に変換する変換手段と、」の要件を備えている。 また、引用例1の発明は、GF(23)上の乗算器10〜14、19、20及びGF(23)上であることが明らかな演算器15〜17、GF(23)上の逆数器18を備え、(B)(D)の記載をみると、部分体GF(23)上で乗算、演算、逆数演算などの除算に係る演算を行なうことができるといえるので、本願発明の「前記部分体GF(2m/2)上の基底で表現された元素をGF(2m/2)上で演算を行う演算手段と、」の要件を備えている。 また、(B)(D)(E)の記載をみると、引用例1の発明は、GF(26)の要素逆変換器21を備え、この要素逆変換器21は、部分体の積和表現されている除算結果をGF(2m )上のベクトル表現にする要素逆変換手段であるので、本願発明の「前記演算されたGF(2m/2)上の基底で表現された元素をGF(2m)上の基底で表現された元素に逆変換する逆変換手段と」の要件を備えている。 また、引用例1の発明は、前記第1図の除算器全体として、前記の要件により構成されていて、部分体GF(2m/2)を用いたGF(2m)上の除算回路といえるので、本願発明の「部分体GF(2m/2)を用いたGF(2m)上の回路」の要件を備えている。 したがって、本願発明と引用例1の発明とは次の要件を備えた点で一致し、そして、次の要件において相違する。 [一致点] GF(2m)上の基底で表現された元素から部分体GF(2m/2)上の基底で表現された元素に変換する変換手段と、 前記部分体GF(2m/2)上の基底で表現された元素をGF(2m/2)上で演算を行う演算手段と、 前記演算されたGF(2m/2)上の基底で表現された元素をGF(2m)上の基底で表現された元素に逆変換する逆変換手段とにより構成されていることを特徴とする部分体GF(2m/2)を用いたGF(2m)上の回路。 [相違点]部分体GF(2m/2)を用いたGF(2m)上の回路が、本願発明は演算回路であるのに対し、引用例1の発明は除算器である点。 4.相違点についての判断 引用例1の発明は、GF(2m)上の基底で表現された元素から部分体GF(2m/2)上の基底で表現された元素に変換し、部分体GF(2m/2)上 で乗算、演算、逆数演算を行うことができ、また、ガロア体除算回路及び乗除算共用回路もすでに公知(先の拒絶理由で示された特開平2-48828号公報参照)であるから、引用例1の発明の除算器を演算回路とすることは当業者が容易になし得ることである。 5.むすび したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-01-07 |
結審通知日 | 2003-01-17 |
審決日 | 2003-01-28 |
出願番号 | 特願平3-195580 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 稲葉 和生、▲吉▼田 耕一 |
特許庁審判長 |
西川 正俊 |
特許庁審判官 |
吉見 信明 村上 友幸 |
発明の名称 | 演算回路および演算方法 |
代理人 | 伊藤 高英 |
代理人 | 中尾 俊輔 |