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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01D
管理番号 1078974
審判番号 不服2001-5475  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-04-09 
確定日 2003-06-18 
事件の表示 平成11年特許願第143140号「真空ポンプ希釈剤をリサイクルしつつ半導体製造工程から出る排ガスからフッ素化化学薬品を分離回収する方法」拒絶査定に対する審判事件[平成12年11月28日出願公開、特開2000-325732]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年5月24日の出願であって、その請求項1ないし5に係る発明(以下「本願発明1」ないし「本願発明5」という)は、平成12年7月25日付手続補正により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 下記の工程を含む、下記希釈剤ガス(A)と下記フッ素系化学薬品(B)を含むガス流を、下記膜(C)に接触させて、該ガス流からフッ素系化学薬品を分離回収する方法。
(A)窒素及び/又はヘリウムからなる希釈剤ガス、
(B)NF3 、SF6 、CF4 、CHF3 、CH3 F、C2 F6 、C2 HF5 、C3 F8 、C4 F8 及びそれらの混合物からなる群から選択されるフッ素系化学薬品、
(C)ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリプロピレン、セルローズアセテート、ポリメチルペンタン、2,2-ビストリフルオロメチル-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソールを基礎とする非晶性共重合体、ポリビニルトリメチルシラン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド、エチルセルローズ及びそれらの混合物からなる群から選択される膜;
(a)希釈剤ガスとフッ素系化学薬品を含むガス流を、482.3kPaゲージ圧(70psig)超まで圧縮する工程、
(b)希釈剤ガスとフッ素系化学薬品を含む前記ガス流を、工程(c)の透過流のフラックスを増加させ、又工程(c)におけるフッ素系化学薬品の透過に比ベて、工程(c)における希釈剤ガスの透過に対する、工程(c)の膜の選択性を増大させるのに十分な37.8〜93.3℃(100〜200°F)まで加熱する工程、
(c)前記ガス流を1又は2以上のステージを含む膜システムと接触させて、希釈剤ガスの豊富な透過流とフッ素系化学薬品の豊富な不透過物を生成する工程、
(d)前記不透過物を蒸留と吸着とからなる群から選択される方法により精製して、フッ素系化学薬品のより豊富な製品流と希釈剤ガスの豊富なリサイクル流を生成する工程、
(e)前記透過流及び前記リサイクル流を、希釈剤ガスとフッ素系化学薬品を含む前記ガス流に合体される前記希釈剤ガスとして使用するために、リサイクルする工程であり、その合体流は、洗浄後に、工程(a)に供給して、482.3kPaゲージ圧(70psig)超まで圧縮する工程。
【請求項2】 希釈剤ガスとフッ素系化学薬品を含む前記ガス流を最初に洗浄して、該ガス流の微粒子、酸ガス及びその他の水溶性成分を除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】 精製工程を蒸留により行なう、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】 製品流がC2F6を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】 希釈剤ガス及びフッ素系化学薬品を含むガス流が半導体製造工程から排出されるガス流である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。

2.引用例記載の発明
(1)これに対して、平成11年12月22日付けで通知した拒絶の理由に引用した本願出願前に頒布された刊行物1(特開平10-128034号公報)には、以下の記載がある。
ア-1.「下記の(a)〜(e)の工程を含む、希釈剤ガスとフルオロケミカルとを含有しているガス流からこのガス流を膜と接触させることによりフルオロケミカルを分離及び回収するための方法。
(a)希釈剤ガスとフルオロケミカルとを含有しているガス流を圧縮して高圧にする工程
(b)希釈剤ガスとフルオロケミカルとを含有しているこのガス流を、工程(c)の透過物流の流束を増加させるのと、工程(c)のフルオロケミカルの透過に対する工程(c)の希釈剤ガスの透過についての工程(c)の膜の選択性を上昇させるのとに十分な高温に加熱する工程
(c)このガス流を、当該フルオロケミカルよりも当該希釈剤ガスを選択的により多く透過させる膜と接触させて、当該希釈剤ガスに富む透過物流とフルオロケミカルに富む残留物とにする工程
(d)この残留物を、当該フルオロケミカルよりも当該希釈剤ガスを選択的により多く透過させる別の一つ以上の膜と接触させて、当該希釈剤ガスに富む第二の透過物流とフルオロケミカルに富む第二の残留物とにする工程
(e)この第二の透過物流を工程(a)へ再循環させて、上記希釈剤ガスとフルオロケミカルとを含有している上記ガス流とともに圧縮して高圧にする工程」(特許請求の範囲【請求項1】)
ア-2.「希釈剤ガスとフルオロケミカルとを含有している前記ガス流を最初にスクラビング処理して当該ガス流の粒状物と水溶性成分を除去する、請求項1記載の方法。」(特許請求の範囲【請求項2】)
ア-3.「工程(e)の後に、フルオロケミカルに富む前記第二の残留物を吸着又は精留により更に精製して、フルオロケミカルに富む製品流と希釈剤に富む排気流とにする、請求項1又は2記載の方法。」(特許請求の範囲【請求項3】)
ア-4.「希釈剤ガスとフルオロケミカルとを含有している前記ガス流が半導体製造プロセスからの流出ガス流である、請求項1から4までのいずれか一つに記載の方法。」(特許請求の範囲【請求項5】)
ア-5.「前記膜を、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリプロピレン、酢酸セルロース、ポリメチルペンタン、2,2-ビストリフルオロメチル-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソールを基にした無定形コポリマー、ポリビニルトリメチルシラン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド又はエチルセルロース及びそれらの混合物からなる群より選ぶ、請求項1から5までのいずれか一つに記載の方法。」(特許請求の範囲【請求項6】)
ア-6.「前記フルオロケミカルに富む製品流がC2 F6 を含む、請求項3の方法。」(特許請求の範囲【請求項8】)
ア-7.「半導体製造設備からのフルオロケミカル含有排気ガスは、窒素の如き希釈剤ガスと、可能性としてNF3 、SF6 、CF4 、CHF3 、CH3 F、C2 F6 、C2 HF5 、C3 F8 、C4F8 、HF、F2 及びこれらのガスの混合物を含むフルオロケミカルとを含む流れ12でもって供給される。」(段落【0038】)
ア-8.「スクラビング処理されたガス流は、次いで再循環流18と混合されて圧縮機20へ送られ、70psia(483kPa(絶対圧))より高い圧力まで、好ましくは100〜200psia(690〜1380kPa(絶対圧))の範囲に圧縮される。次に、この高圧のガス流を、間接熱交換器22で任意の高温プロセス流体、例えば半導体製造設備用もしくは加熱器用のプロセススチームあるいは任意の所定プロセスからの供給スチームといったものと熱交換して、更に加熱する。希釈剤ガスとフルオロケミカルとを含有しているガス流は、周囲温度より高い温度まで、典型的には200°F(93℃)未満又はまだ接触していない膜の分解温度未満の任意の温度まで、好ましくは100〜150°F(38〜66℃)、最も好ましくはおよそ120°F(49℃)まで加熱される。」(段落【0039】)
ア-9.「様々な下流の随意の蒸留プロセスを想定することができるが、好ましい蒸留プロセスは、蒸留塔に還流を供給するため蒸留塔の塔頂凝縮器を運転するのに液体窒素低温流体を利用する一方で、任意の慣用的手段による加熱で塔の再沸を行うものであり」(段落【0043】)

3.本願発明と刊行物記載の発明との対比、判断
(1)本願発明1と刊行物1記載の発明との対比
記載ア-8によれば、記載ア-1における工程(a)の「高圧」とは「70psia(483kPa(絶対圧))より高い圧力まで、好ましくは100〜200psia(690〜1380kPa(絶対圧))」程度の圧力を意味するものと認められ、ここで1気圧=約101kPaとして、上記の圧力をゲージ圧に換算すると「382kPa(ゲージ圧)より高い圧力まで、好ましくは589〜1279kPa(ゲージ圧)」となるから、本願発明1の工程(a)における482.3kPa(ゲージ圧)超の圧力は、刊行物1に好ましい範囲として記載され、また記載ア-8によれば、記載ア-1における工程(b)の「高温」とは「典型的には200°F(93℃)未満又はまだ接触していない膜の分解温度未満の任意の温度まで、好ましくは100〜150°F(38〜66℃)、最も好ましくはおよそ120°F(49℃)」を意味するものと認められるから、刊行物1記載の方法における工程(a)、(b)は、それぞれ本願発明1における工程(a)、(b)に相当する。
記載ア-1における工程(c)及び(d)は、いずれも「膜システム」を含むものであるから両工程を併せて「2つのステージを含む膜システム」といえ、本願発明1における工程(c)に相当する。
記載ア-8を参酌すれば、刊行物1記載の工程(e)における、再循環される「第二の透過物流」は、スクラビング(洗浄)処理されたガス流と混合され、その後、工程(a)において前述した圧力に圧縮されるのであるから、本願発明1における工程(e)の「前記透過流を、希釈剤ガスとフッ素系化学薬品を含む前記ガス流に合体される前記希釈剤ガスとして使用するために、リサイクルする工程であり、その合体流は、洗浄後に、工程(a)に供給して、482.3kPaゲージ圧(70psig)超まで圧縮する工程」(以下「工程(e’)」という)は、刊行物1に記載されているといえる。
記載ア-3には「フルオロケミカル(フッ素系化学薬品)に富む前記第二の残留物を吸着又は精留により更に精製」することが記載されているが、ここでいう「第二の残留物」とは「2つのステージを含む膜システムと接触させて生成するフッ素系化学薬品の豊富な不透過物」を意味することは明らかであるから、本願発明1の工程(d)における「前記不透過物を蒸留と吸着とからなる群から選択される方法により精製して、フッ素系化学薬品のより豊富な製品流と希釈剤ガスの豊富な流れを生成する工程」(以下「工程(d’)」という)は刊行物1に記載されているといえる。
記載ア-7によれば、「稀釈剤ガス」として「窒素」が、またフルオロケミカル(フッ素系化学薬品)として、「NF3 、SF6 、CF4 、CHF3 、CH3 F、C2 F6 、C2 HF5 、C3 F8 、C4F8 及びこれらのガスの混合物」が例示され、記載ア-5によれば、「膜材料」として、「ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリプロピレン、酢酸セルロース、ポリメチルペンタン、2,2-ビストリフルオロメチル-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソールを基にした無定形コポリマー、ポリビニルトリメチルシラン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド、エチルセルロースポリマー」が例示されているのであるから、本願発明1における構成(A)、(B)、(C)も刊行物1に記載されている。
本願発明1と刊行物1記載の発明との対比すると、両者は「工程(a)〜(c),(e’),(d’)を含む、下記希釈剤ガス(A)と下記フッ素系化学薬品(B)を含むガス流を、下記膜(C)に接触させて、該ガス流からフッ素系化学薬品を分離回収する方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点:本願発明1では、工程(d)において、膜システムからのフッ素系化学薬品の豊富な不透過物を蒸留と吸着とからなる群から選択される方法により精製する際、副生する「希釈ガスの豊富な流れ」を「リサイクル流」とし、工程(e)において膜システムからの透過流とともに工程(a)へリサイクルしているのに対し、刊行物1記載の方法では、記載ア-3によれば前記副生する「希釈ガスの豊富な流れ」を「排気流」としている点
(2)判断
刊行物1記載の方法においても、希釈ガスの豊富な流れである「膜システムからの透過流」を工程(a)へ還流させリサイクルしている以上、「希釈ガスの豊富な流れ」という点で性状が類似する「排気流」を該透過流とともに工程(a)へ還流させ、「リサイクル流」とすることは当業者であれば容易になし得る程度のことであり、かかる構成を採用したことによる格別顕著な作用効果も認められない。
(3)本願発明2ないし5について
本願発明2は、本願発明1において、「希釈剤ガスとフッ素系化学薬品を含む前記ガス流を最初に洗浄して、該ガス流の微粒子、酸ガス及びその他の水溶性成分を除去する」ことを限定した発明であるが、係る構成は記載ア-2に見られるように刊行物1に記載されている。
本願発明3は、本願発明1における「蒸留と吸着とからなる群から選択される方法により精製」工程を「蒸留」により行うことに限定する発明を含むものであるが、記載ア-9に蒸留の具体的な実施態様が開示されている以上、精製を蒸留で行うことは刊行物1に実質的に記載されているといえる。
本願発明4は、本願発明1において「製品流がC2F6を含む」ことを限定した発明を含むものであるが、係る構成は記載ア-6に見られるように刊行物1に記載されている。
本願発明5は、本願発明1において「希釈剤ガス及びフッ素系化学薬品を含むガス流が半導体製造工程から排出されるガス流である」ことを限定した発明を含むものであるが、係る構成は記載ア-4に見られるように刊行物1に記載されている。
したがって、本願発明2〜5と刊行物1記載の発明とを対比すると、その相違点は本願発明1の相違点と同じとなるから、本願発明2〜5は、本願発明1で検討したのと同じ理由で、刊行物1記載の発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものである。

4.むすび
したがって、本願発明1ないし5は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-01-15 
結審通知日 2003-01-21 
審決日 2003-02-03 
出願番号 特願平11-143140
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 幹中野 孝一増田 亮子  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 岡田 和加子
米田 健志
発明の名称 真空ポンプ希釈剤をリサイクルしつつ半導体製造工程から出る排ガスからフッ素化化学薬品を分離回収する方法  
代理人 鶴田 準一  
代理人 西山 雅也  
代理人 樋口 外治  
代理人 石田 敬  
代理人 永坂 友康  

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