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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41F
審判 査定不服 判示事項別分類コード:533 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41F
審判 査定不服 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41F
管理番号 1078995
審判番号 不服2001-3997  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-11-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-03-15 
確定日 2003-06-19 
事件の表示 平成 6年特許願第 97237号「スクリーン印刷方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年11月21日出願公開、特開平 7-304152]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年5月11日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「基板の上面をスクリーンマスクのマスクプレートに重合しスナップオフを零とする工程と、基板をさらに上昇させてスナップオフを負とする工程と、スナップオフを負にした状態でスキージをマスクプレート上にてスライドさせマスクプレートに形成されたパターン孔を介して基板にクリーム半田を塗布する工程と、スナップオフが負の状態からスナップオフが零の状態に移行する際、クリーム半田はマスクプレートのパターン孔内に収納された状態のまま、パターン孔内のクリーム半田とパターン孔の壁面に相対速度を発生させる速度で基板を下降させてクリーム半田の粘度を低下させた後、さらに基板を下降させて基板をマスクプレートから離版させる工程とを含むことを特徴とするスクリーン印刷方法。」

第2.記載不備(理由1)について
1.「相対速度を発生させる速度」に係る記載
本願発明における、クリーム半田の粘度を低下させる「パターン孔内のクリーム半田とパターン孔の壁面に相対速度を発生させる速度」がどのようなものかについての具体的説明として、本願明細書段落0017に次のように記載されている。
「次にこのときのクリーム半田13の変化を図2、図3を参照しながら説明する。さて図3(b)の状態から図3(c)の状態に移行する際、基板4、マスクプレート2及びクリーム半田13は慣性力を受ける。そしてクリーム半田13の剛性は、マスクプレート2のそれよりも小さい。したがって、マスクプレート2とクリーム半田13の境界(即ち壁面2bと壁面2b付近のクリーム半田13)においてすべりを生じ、クリーム半田13と壁面2bとの相対速度が増加する。ここで図2に示すように、クリーム半田13の粘度ηは速度Vに対して右下がりの特性を有している。したがって、図3(b)における速度V=V1のときの粘度η=η1(点P1)とすると、速度がV=V2(>V1)に上昇した際粘度はη=η2(<η1)に低下する(点P2)。ところがクリーム半田13のチキソ性及び粘性非回復性により、速度が再びV=V1になっても粘度はη1まで上昇せずそれより小さな値η3(点P3)となる。したがって、スナップオフがマイナス(図3(b))の状態からスナップオフが零(図3(c))の状態に至る間に、クリーム半田13、特に版抜け性に影響する壁面2b付近の粘度ηが低下し、クリーム半田13が壁面2bから離れやすくなる。しかる後、図3(d)に示すようにテーブル5をさらに下げて基板4の上面をレベルHOよりも下降させ離版を行うものである。」

2.拒絶理由(理由1)の概要
当審は、上記段落0017の記載では本願発明の「相対速度を発生させる速度」を具体的に把握し難く、かつ、明細書の記載は本願発明を当業者が容易に実施できる程度に記載しているとも認められないとして、平成15年1月7日付で概ね次のような拒絶の理由1を通知した。
すなわち、「慣性力」がどのようなものであり、クリーム半田の「剛性」がマスクプレートより小さいと何故両者の境界に「すべり」を生じ、「すべり」がどのようなものであり、「すべり」と「相対速度」がどのような関係にあり、「相対速度」がどのようなものであり、「すべり」が生ずるだけで何故「相対速度」が「増加」し、「増加」が基板の下降速度やその速度変化と関わりないものであるのか否か、等について理解し難いと共に、下降速度が具体的にどのようであれば相対速度が発生するのかについても一切記載がないため「相対速度を発生させる速度」を具体的に把握し難く、審判請求書における説明で水平・垂直・斜方向などのすべりをまとめて相対速度と表現しているのも不適当であって、むしろ「相対速度を発生させる速度」を理解し難くするものではないか、というものである。

3.拒絶の理由1に対する意見書による説明
これに対して、請求人は、平成15年3月6日付で意見書を提出し、参考図1(審判請求書中の参考図1であり、その(2)に左右方向への力F1と下方向への力F2を新たに書き加えたもの)を示しながら、次のように説明している。
「(理由1)について申し述べます。別紙添付の図1は、審判請求に係る手続補正書に添付した図1と同じものであります。図1(2)に示すスナップオフ負の状態(マスクプレートが基板に押し上げられて上凸状に変形し、マスクプレートにテンションが付与されている状態)から、基板が下降して図1(3)に示すスナップオフ零の状態(前記テンション付与が解除されてマスクプレートが水平な形状に戻った状態)に移行するとき、マスクプレートは上凸状態から水平状態に戻ろうとするため、マスクプレートには水平方向の力FIと下方向の力F2が作用します。
一方、パターン孔内に充てんされたクリーム半田は、マスクプレートのこのような変形(上凸状態から水平状態への変形)にはスムーズに追随できません。このため、パターン孔の壁面とこれに当接するクリーム半田の間にはすべり(相対速度)が発生します。したがってこのすべり(相対速度)のために、クリーム半田は特にパターン孔の壁面と接する部分においてかき乱されてストレスを受けます。
ところで、クリーム半田はチキソ性(ストレスを受けると粘度が低下する性質)を有しております。したがって壁面に接する部分のクリーム半田は、上記ストレスのためにその粘度は低下してパターン孔の壁面から離れやすくなり、版抜け性は良くなります。
(理由1)については、以上のとおりであります。」

4.当審の判断
検討するに、上記意見書による説明は、「慣性力」や「剛性」や「相対速度の増加」等に一切触れておらず、本願明細書段落0017の記載は依然として理解し難く不明瞭である。
また、上記意見書による説明によれば、基板が下降してマスクプレートが上凸状態から水平状態に戻ろうとするとき、パターン孔内のクリーム半田はマスクプレートの上凸状態から水平状態への変形に追随できないため、パターン孔の壁面とこれに当接するクリーム半田の間にはすべりが発生し、このすべりのことを相対速度というとのことであるが(審判請求書では水平・垂直・斜方向などのすべりをまとめて相対速度としていた)、パターン孔内のクリーム半田に影響を与えるマスクプレートの変形とは要するにパターン孔の変形であり、基板が下降するにしたがってマスクプレートが上凸状態から水平状態へと変形していけば、それに伴ってパターン孔も変形していくものであって、パターン孔が変形していけば、その変形に合わせてパターン孔内に収納された柔らかいクリーム半田も容易に変形していくと考えられ、その意味では変形に追随しているのであるから、上記「変形に追随できない」がどのようなことであるのか理解し難く、加えて、上記意見書による説明では上記「変形に追随できない」ことと基板の下降速度との関係についても説明がないため、依然として本願発明における「相対速度を発生させる速度」を明確に把握することができない。
したがって、本願明細書には、特に特許請求の範囲の請求項1と段落0017の記載に依然として不備が認められる。

第3.容易性(理由2)について
1.本願発明
本願発明は上記第1.に示したとおりである。

2.引用例
(1)これに対して、当審が平成15年1月7日付で通知した拒絶の理由2に引用した特開平5-286113号公報(以下、「引用例1」という)には、次の事項が記載されている(記載中、「・・・」は中略を示す)。
a.「本発明は、回路基板にクリームはんだを印刷するクリームはんだ印刷機に関するものである。」(2頁1欄28〜30行)
b.「印刷テーブル1を・・・上方移動して回路基板2の表面を印刷マスク3の裏面に密着させ、この状態で・・・スキージ5を・・・移動させて、印刷マスク3の開口6のパターン形状に対応したクリームはんだ4の層を回路基板2上に転写するものである。・・・クリームはんだの印刷終了後には、印刷テーブル1を下降させる」(2頁1欄48行〜2欄8行)
c.「印刷マスク3が回路基板2から版離れを行うとき、印刷マスク3は・・・回路基板2から上方に跳ね上がるように離れ・・・開口6から型抜きされるクリームはんだの形状がシャープにならず、印刷精度が悪くなるという問題が生じる。・・・このような問題を解消するために、回路基板2の下降速度を・・・印刷終了時から版離れを行うまでは・・・ゆっくりした速度で下降し、版離れが行われた後には・・・高速度で降下させる」(2頁2欄22〜38行)
d.「図2に示すように印刷マスク3の変位(詳しくはマスク15の変位)が静止定位置から所定量ΔHだけ上方側に変位したときに回路基板2が印刷マスク3に最適な状態で密着したものと判断し、回路基板2の上昇移動停止指令を出力する。」(3頁4欄39〜43行)
e.「この状態で回路基板2にクリームはんだの印刷が行われる。・・・印刷終了時に、・・・回路基板2は低速でゆっくりと下降を開始する。」(4頁5欄37〜41行)

これらの記載を含む明細書全体の記載によれば、記載されたクリームはんだ印刷がスクリーン印刷であることは明らかであって、その記載された発明をスクリーン印刷方法の発明としてとらえることができるから、引用例1には、「回路基板2の表面を印刷マスク3のマスク15にマスク15の静止定位置で密着し、回路基板2をさらに上昇させて最適な密着状態とし、その最適な密着状態でスキージ5をマスク15上にて移動させマスク15に形成された開口6を介して回路基板2にクリームはんだ4を印刷し、その最適な密着状態からマスク15の静止定位置を通って、さらに回路基板2を下降させて回路基板2をマスク15から版離れさせるスクリーン印刷方法。」に係る発明(以下、「引用発明1」という)が記載されているものと認められる。
また、引用発明1においては、型抜きされるクリームはんだの形状をシャープにして印刷精度を良くするために、印刷終了時から版離れを行うまでの回路基板の下降速度を版離れ以降よりも低速とすることも記載されている。

(2)同じく、当審が通知した上記拒絶の理由2に引用した特開平4-236491号公報(以下、「引用例2」という)には、次の事項が記載されている(記載中、「・・・」は中略を示す)。
a.「本発明は・・・クリーム半田を印刷パターン通りに正確、かつ、確実に回路基板に転写することのできるクリーム半田の印刷装置を提供することを目的とする。」(2頁2欄21〜24行)
b.「回路基板を保持し、・・・マスクに密着させる印刷位置と、・・・離隔させた位置とに移動可能なワーク把持装置と、・・・密着させた状態でクリーム半田を回路基板に印刷するスキージング装置と、・・・移動させる駆動装置とを備え、該駆動装置は、前記印刷を終えた回路基板をマスクから版離れさせる際の版離れ速度が制御可能で・・・印刷が終了した時点で、ワーク把持装置を離隔位置に移動させてマスクと回路基板の版離れをさせ・・・版離れ速度を、マスクからクリーム半田が完全に回路基板側に転写できる、所望の速度に設定することができる。」(2頁2欄31行〜3頁3欄3行)
c.「マスクMの全ての開口部M3にクリーム半田を刷り込んだ後は、後述するようにZ軸テーブル60を下方にゆっくりと下げ、マスクMとワークWを所要の版離れ速度で離反させる。」(11頁19欄43〜46行)
d.「版離れ時の版離れ速度(Z軸テーブル60の下降速度)は以下のようにして制御される。・・・図21に実線で示されるような版離れ速度パターンを記憶し・・・版離れが完了する時点t2までは版離れ速度を所定速度V1以下に制限する。・・・Z軸テーブル60の下降開始からt1時点までは直線的に版離れ速度を増速させ、その後、t1時点からt2時点間は上述の所定速度V1に保持される。この所定速度V1およびその所定速度V1に到達するまでの時間t1は、クリーム半田がマスクMの開口部3に残存せず、開口部M3に刷り込まれた全てのクリーム半田が完全にワークW側に転写することの出来る値に設定される。」(11頁20欄15〜32行)
e.「版離れが完了するまでの版離れ速度は、上述のパターンに限定されず、・・・図21に・・・一点鎖線・・・破線・・・点線・・・2点鎖線・・・で示すパターンであってもよい。」(11頁20欄43〜50行)

3.対比
本願発明(前者)と引用発明1(後者)とを対比するに、後者の、「回路基板2」、「印刷マスク3」、「マスク15」、「スキージ5」、「開口6」、「クリームはんだ4」は、それぞれ、前者の、「基板」、「スクリーンマスク」、「マスクプレート」、「スキージ」、「パターン孔」、「クリーム半田」に相当し、後者の、回路基板2の「表面」、マスク15の静止定位置で「密着」、マスク15上にて「移動」、クリームはんだ4を「印刷」、マスク15から「版離れ」の各「」内は、それぞれ、前者の、「上面」、「重合」、「スライド」、「塗布」、「離版」と同義である。
また、後者の「回路基板2の表面を印刷マスク3のマスク15にマスク15の静止定位置で密着し」は該静止定位置でスナップオフが零となるから前者の「基板の上面をスクリーンマスクのマスクプレートに重合しスナップオフを零とする工程」に対応し、後者の「回路基板2をさらに上昇させて最適な密着状態とし」は該静止定位置から上方に凸状態となって即ちスナップオフが負となるから前者の「基板をさらに上昇させてスナップオフを負とする工程」に対応し、後者の「その最適な密着状態でスキージ5をマスク15上にて移動させマスク15に形成された開口6を介して回路基板2にクリームはんだ4を印刷し」はスナップオフが負の状態でなされるから前者の「スナップオフを負にした状態でスキージをマスクプレート上にてスライドさせマスクプレートに形成されたパターン孔を介して基板にクリーム半田を塗布する工程」に対応し、後者の「その最適な密着状態からマスク15の静止定位置を通って、さらに回路基板2を下降させて回路基板2をマスク15から版離れさせる」はスナップオフが負の状態からスナップオフが零の状態に移行する過程を経るから前者の「スナップオフが負の状態からスナップオフが零の状態に移行」且つ「さらに基板を下降させて基板をマスクプレートから離版させる工程」に対応する。
そうすると、両者は、「基板の上面をスクリーンマスクのマスクプレートに重合しスナップオフを零とする工程と、基板をさらに上昇させてスナップオフを負とする工程と、スナップオフを負にした状態でスキージをマスクプレート上にてスライドさせマスクプレートに形成されたパターン孔を介して基板にクリーム半田を塗布する工程と、スナップオフが負の状態からスナップオフが零の状態に移行させ、さらに基板を下降させて基板をマスクプレートから離版させる工程とを含むことを特徴とするスクリーン印刷方法。」において一致し、次の点で相違する。
<相違点>スナップオフが負の状態からスナップオフが零の状態に移行する際、前者が「クリーム半田はマスクプレートのパターン孔内に収納された状態のまま、パターン孔内のクリーム半田とパターン孔の壁面に相対速度を発生させる速度で基板を下降させてクリーム半田の粘度を低下させ」るのに対して、後者は型抜きされるクリーム半田の形状をシャープにして印刷精度を良くするために印刷終了時から版離れを行うまでの基板の下降速度を版離れ以降よりも低速とするのであるが、クリーム半田がマスクプレートのパターン孔内に収納された状態で、パターン孔内のクリーム半田とパターン孔の壁面に相対速度を発生させる速度で基板を下降させてクリーム半田の粘度を低下させているか否か定かでない点。

4.当審の判断
相違点について検討するに、引用発明1においても、スナップオフが負の状態からスナップオフが零の状態に移行する過程では、基板がマスクプレートに重合しているから、クリーム半田がマスクプレートのパターン孔内に収納された状態のままであることは明らかである。
本願発明は、この過程において、パターン孔内に収納された状態のクリーム半田とパターン孔の壁面に相対速度を発生させる速度で基板を下降させ、それによりクリーム半田の粘度を低下させることで、離版時にクリーム半田がパターン孔内に残らないように版抜け性を向上できるものである。
上記版抜け性の向上は、クリーム半田により基板上に回路を印刷するスクリーン印刷において、版抜けしたクリーム半田の形状をシャープにして印刷精度を良くする上で当然に考慮される事項であり、そのためにクリーム半田がパターン孔内に残らないようにパターン孔から円滑に版抜けすべきであることは当業者であれば当然に想起できることである。
これに対し、引用発明1は、版抜けしたクリーム半田の形状をシャープにして印刷精度を良くするために印刷終了時から版離れを行うまでの基板の下降速度をそれ以降よりも低速としているものであるが、その下降速度がクリーム半田をパターン孔内に残らないようにパターン孔から円滑に版抜けさせる作用を有するものであるか否かの点は定かでない。
この点に関して、上記引用例2に、クリーム半田により回路基板上に回路を印刷するスクリーン印刷において、クリーム半田を印刷パターン通りに正確且つ確実に回路基板に転写するために、ワークW(回路基板)とマスクMとを密着させた状態でクリーム半田の印刷を行い、印刷終了時点から版離れ完了時点までのワークW(回路基板)の下降速度を種々制御して、マスクMの開口部M3に刷り込まれた全てのクリーム半田を残存させることなく完全にワークW側に転写することが記載されている。
引用例2記載のものはスナップオフを負にした状態で印刷を行ってはいないが、クリーム半田を印刷パターン通りに正確且つ確実に回路基板に転写するための回路基板の下降速度の制御に係る事項は引用発明1においても容易に採用できることであるため、引用発明1における印刷終了時から版離れを行うまでの基板の下降速度をクリーム半田がパターン孔内に残らないようにパターン孔から円滑に版抜けさせるべく制御することは当業者において容易である。
ところで、本願発明における「相対速度を発生させる速度」は上記第2.で述べたように具体的に把握し難い点はあるのであるが、作用効果の記載からみて、離版時にクリーム半田がパターン孔内に残らないように版抜け性を向上するためには、少なくともパターン孔の壁面付近のクリーム半田の粘度を低下させておくことが必要条件であって、そのような必要条件を生じさせるための基板の下降速度であるということはできる。
そこで、本願発明における「相対速度を発生させる速度」を上記のように認定して検討を進めるに、上述したように、引用発明1に引用例2記載の事項を適用して、印刷終了時から版離れを行うまでの基板の下降速度をクリーム半田がパターン孔内に残らないようにパターン孔から円滑に版抜けさせるべく制御したときにおいては、クリーム半田をパターン孔内に残存させずに版抜け性を向上するための必要条件である少なくともパターン孔の壁面付近のクリーム半田の粘度が低下した状態が当然に生じているものと認められるから、該制御された基板の下降速度と本願発明における「相対速度を発生させる速度」との間に明確な差異があるとは認められない。
そうすると、上記相違点は引用例2記載の事項から当業者が容易になし得るものであり、該相違点に係る構成を備えた本願発明の作用効果も引用例1及び2に記載された発明から予測できる程度のものにすぎない。
したがって、本願発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび
以上のとおりであり、本願は、明細書の記載に上記第2.で示した不備が認められ、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていないものであるから、拒絶を免れない。
また、本願発明は、上記第3.で述べたように、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-04-16 
結審通知日 2003-04-22 
審決日 2003-05-06 
出願番号 特願平6-97237
審決分類 P 1 8・ 533- WZ (B41F)
P 1 8・ 532- WZ (B41F)
P 1 8・ 121- WZ (B41F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中澤 俊彦南 宏輔  
特許庁審判長 小沢 和英
特許庁審判官 中村 圭伸
番場 得造
発明の名称 スクリーン印刷方法  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 坂口 智康  
代理人 内藤 浩樹  

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