• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04B
管理番号 1079151
審判番号 不服2000-7056  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-11-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-05-11 
確定日 2003-07-22 
事件の表示 平成 9年特許願第104949号「符号分割多元接続方式の送信電力制御方法」拒絶査定に対する審判事件〔平成10年11月13日出願公開、特開平10-303810、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続きの経緯および本件発明の認定

(1)手続の経緯

本件審判請求に係る特許出願は、平成9年4月22日になされたものであって、平成12年4月11日付で拒絶査定の謄本が送達され、これに対して同年5月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月7日付けで手続補正がなされたものである。

(2)平成12年6月7日付け手続補正について

上記手続補正により、本件審判請求に係る特許出願の特許請求の範囲の請求項1は、

「移動局からの受信電力に応じて基地局が送信する制御命令に基づいて、前記移動局の送信電力制御を行う符号分割多元接続方式の送信電力制御方法において、
移動局送信電力制御の一周期間の移動局からの平均受信電力を求める受信電力測定ステップと、
該受信電力測定ステップが求めた移動局からの受信電力に基づいて、移動局に対して所要の受信電力が得られるような送信電力制御命令を生成する送信電力制御命令ステップと、
前記送信電力制御命令のうち、送信電力減衰制御命令を出力する前に測定された前記移動局からの受信電力と前記制御命令を出力した後に測定された前記移動局からの受信電力とを比較する受信電力比較ステップと、
前記各受信電力の比較の結果、前記制御命令にもとづく送信電力制御前後に亘る移動局からの受信電力の相対関係において、前記送信電力制御命令の内容と相反していることが検出された回数パラメータが、予め設定された故障移動局検出しきい値パラメータ以上連続して発生した場合に、移動局の故障と判断する故障移動局判断ステップとを実行することを特徴とする符号分割多元接続方式の送信電力制御方法。」・・・・・・・・(A)

と補正された。


本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「移動局送信電力制御の一周期間の移動局からの受信電力を求める受信電力測定ステップ」について、受信電力を「平均受信電力」と限定し、「移動局の故障と判断する故障移動局判断ステップ」について、「受信電力の比較の結果、制御命令にもとづく送信電力制御前後に亘る移動局からの受信電力の相対関係において、前記送信電力制御命令の内容と相反していることが検出された回数パラメータが、予め設定された故障移動局検出し
きい値パラメータ以上連続して発生した場合に、移動局の故障と判断する」という限定を加えたものであって、本件補正は特許法第17条の2第4項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

(3)本件発明の認定
(2)のとおりであるから、本件審判請求に係る特許出願の請求項1の発明は、平成12年6月7日付け手続補正書により補正されたとおりの上記(A)のものである。

2.引用文献記載の発明の認定

一方、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平8-32514号公報(以下、引用文献1という)には以下のことが記載されている。
(ア)「本発明は、移動通信においてスペクトル拡散を用いてマルチプルアクセスを行なうCDMA(Code Division Multiple Access:符号分割多元接続)方式における移動局の送信電力制御方法およびその方法を使用した送信電力制御装置に関する」
(第2頁右段第21行から第26行)

(イ)「 図4は、本発明を適用した一実施例の制御を示すフローチャートである。基地局200では、通信を行なっている移動局100からの希望波信号受信電力Sと他の局からの干渉電力Iと熱雑音電力Nの和に対する比S/(I+N)を計算し(ステップS1)、この比(受信SIR)が所要の伝送品質を満たすための所定のSIR(希望波信号電力対熱雑音電力比)に対して大きいか、小さいかを判定し、その判定結果である送信電力制御ビットを下りフレーム(下り信号のフレーム)内の情報ビットの間に周期的に挿入する(ステップS2)。
図5は、移動局100での送信電力制御の動作原理を示す。Sは希望波受信信号電力、Iは干渉電力、SIRはSとIの比である。本発明では、移動局100の希望波受信信号電力の変化に応じて、時間的に分割してオープンループとクローズドループを併用する。
移動局100は、基地局200からの一送信電力制御周期あたりの平均希望波受信信号電力を測定する。そして、この送信電力制御周期単位と、1つ以上前の送信電力制御周期単位での希望波受信信号の平均電力を計算する。この希望波受信平均電力差ΔRSSIが、予め設定した基準値(基準電力差)ΔPth以下の場合には(ステップS3)、下りフレーム内の送信電力制御ビットに従って移動局送信電力PT を計算し、設定するというクローズドループ型の送信電力制御で移動局送信電力を設定する(ステップS4)。
これに対して、希望波受信信号平均電力差ΔRSSIが基準電力差ΔPthを超えた場合には、この移動局は建物の影から見通しに出た場合と解釈して、移動局の送信電力を急激に下げる。具体的には、移動局は、当該送信電力制御周期単位と1つ以上前の送信電力制御周期単位との希望波受信信号電力差ΔRSSIに応じて、移動局の送信電力PT を計算して設定する(ステップS5)。
(中略)
図6は、本発明による閉ループ電力制御方法の一例を示す。これは、移動局の希望波受信信号電力の変化ΔRSSIが基準値ΔPth以下である場合の送信電力制御であり、次のように行われる([ ]中の数字は、図6の番号と対応している。)。
[1]基地局は、希望受信電力を測定し、SIRを計算する。
[2]基地局は、測定したSIRと、予め定められた基準SIRとを比較して、2送信電力制御周期後の送信電力を評価する。
[3]基地局は、移動局の送信電力の増減を指示する送信電力制御ビットを作り、下りフレームに周期的に挿入する。この挿入周期は、ドップラー周波数に応じた瞬時変動に、電力制御が追従できる周期とする。
[4]移動局は、基地局からの下りフレームに含まれる、上り送信電力制御ビットをデコードする。
[5]移動局は、上り送信電力制御ビットによって指示された送信電力で送信する。
希望波受信信号電力の変化ΔRSSIの基準値ΔPthとしては、1〜2フレーム間に、全ての送信電力制御ビットを、移動局の送信電力を下げる方向に動作させたとしても、補正することのできないクローズドループでの変化以上に、ある移動局の希望波受信信号電力が増大した場合の値に設定する。一般には30-50dB程度の値になると考えられる。 このように、本発明の実施例によれば、基本的には、クローズドループによる送信電力制御を行なうので、高精度な制御を行なうことができる。また、移動局の周囲の伝搬状況によって、移動局の受信信号電力が急に大きくなった場合には、移動局の希望波受信信号電力差ΔRSSIに応じて送信電力PT を設定する、オープンループの制御に切り替えるので、この移動局の送信電力を短時間で低減することができる。従って、他の通信者に与える干渉の影響を低減することができる。」
(第5頁左欄第6行から第5頁右欄第42行)

そして、上記(ア)(イ)の記載から見て、引用文献1には、
「移動局からの受信電力に応じて基地局が送信する制御命令に基づいて、前記移動局の送信電力制御を行う符号分割多元接続方式の送信電力制御方法において、
移動局送信電力制御の一周期間の移動局からの平均受信電力を求める受信電力測定ステップと、
該受信電力測定ステップが求めた移動局からの受信電力に基づいて、移動局に対して所要の受信電力が得られるような送信電力制御命令を生成する送信電力制御命令ステップとを備えた符号分割多元接続方式の送信電力制御方法」について記載されているものと認める。

また、同じく原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭53-73001号公報(以下、引用文献2という)には以下のことが記載されている。

「本試験による試験動作を説明すると、基地局1の選択信号送信器14が、図示された移動局2の選択コードを送出する。これは移動局2の信号受信器24に検出され、自局が選択されたことを識別すると、着信表示器25に自局選択情報を送るとともにここに一旦蓄積される。続いて基地局1の選択信号送信器14により試験を表すコードが送られると、移動局2の信号受信器24ではこれを検出し、着信表示器25に試験情報を送る。着信表示器25では、蓄積された自局選択情報と試験情報の論理積(アンド)により、呼出表示を行なわずに自動的に信号発振器26を起動する。この出力は試験法統信号で移動局2より送信され、基地局1の選択信号受信器15に受信され、表示器16にこれが受信されたことが示される。」(第2頁右段第2行から第17行)

そして、上記の記載から見て、引用文献2には、

基地局から移動局に試験を表す信号を送出し、これに対して移動局が所定の信号を基地局に送ることで、基地局が移動局の故障を判断する

ことが開示されているものと認められる。

さらに、同じく原査定の拒絶の理由に引用された、特開平5-48676号公報(以下、引用文献3という)には以下のことが記載されている。

「上記目的は、CCUによる制御データの送信に対するLCUからのモニタデータの返信を監視する手段と、同一の制御データによる同一のLCUに対するCCUによる制御データの送信を少くとも2回繰り返す手段を設け、CCUによる制御データの送信に対して少くとも2回連続してモニタデータを返信しないLCUが検出されたときに異常表示を行なうようにして達成される。
LCUからのモニタデータが受信できなかった場合には、CCUから再び同じLCUに対するデータの送信動作が繰り返され、これに応答してモニタデータが受信されれば、偶発的な事情による一時的な異常としてそのまま次のLCUに対するデータ伝送に移行するが、2回続けてモニタデータが受信されなかったときには、そのLCUに故障などによる異常が発生したものと判断され、それが表示されることになる。」
(第2頁右段第21行から第37行)

そして、上記の記載から見て、引用文献3には、

中央装置から周辺処理装置をモニタしている場合に、周辺処理装置から返信されるはずのモニタデータが少なくとも2回続けて受信されない場合、この周辺処理装置を故障したものと判断する、

ことが開示されているものと認められる。


3.本件発明と引用文献記載の発明との対比

本件発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、両者は以下の点で相違するものと認める。

本件発明においては、
送信電力制御命令のうち、送信電力減衰制御命令を出力する前に測定された移動局からの受信電力と前記制御命令を出力した後に測定された移動局からの受信電力とを比較する受信電力比較ステップと、
前記各受信電力の比較の結果、前記制御命令にもとづく送信電力制御前後に亘る移動局からの受信電力の相対関係において、前記送信電力制御命令の内容と相反していることが検出された回数パラメータが、予め設定された故障移動局検出しきい値パラメータ以上連続して発生した場合に、移動局の故障と判断する故障移動局判断ステップとを実行することにより、移動局が故障しているかどうかを判断する・・・・・・・・・・・(B)
という事項を有するのに対して、
引用文献1記載の発明においては、移動局の故障に関しては考慮されていない点。

4.相違点の判断

上記相違点について検討するに、
引用文献2の記載から見て、
「基地局から移動局に試験を表す信号を送出し、これに対して移動局が所定の信号を基地局に送ることで、基地局が移動局の故障を判断する」
という技術が出願前に既に知られており、かつ引用文献1のような送信電力制御方法において該周知技術を適用したとしても、

本件発明の「基地局から送信される送信電力制御命令に対して移動局からの送信電力の変化を測定することで、移動局の故障を判断すること」という技術思想、およびこれを具現化した上記(B)という事項を想到することはたとえ当業者といえども容易になし得ることはできないものと認められる。

さらに、引用文献3に記載されるように

中央装置から周辺処理装置をモニタしている場合に、周辺処理装置から返信されるはずのモニタデータが少なくとも2回続けて受信されない場合、この周辺処理装置を故障したものと判断する、

という事項が周知であっても、上記(B)の事項を想到することはたとえ当業者といえども容易になし得ることはできないものと認められる。

4.結び

以上のとおり、本件発明は、引用文献1、2、3記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

また、他に拒絶の理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2003-07-08 
出願番号 特願平9-104949
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 聡史  
特許庁審判長 井関 守三
特許庁審判官 橋本 正弘
川崎 優
発明の名称 符号分割多元接続方式の送信電力制御方法  
代理人 机 昌彦  
代理人 河合 信明  
代理人 谷澤 靖久  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ