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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B |
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管理番号 | 1079233 |
審判番号 | 不服2001-10229 |
総通号数 | 44 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-09-08 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-06-15 |
確定日 | 2003-07-02 |
事件の表示 | 平成11年特許願第367308号「デジタル放送のための通信装置、送信装置、受信装置、再生装置、受信記録再生装置、記録再生装置およびこれらの方法ならびに記録媒体」拒絶査定に対する審判事件[平成12年 9月 8日出願公開、特開2000-243029]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成11年12月24日(国内優先権 平成10年12月24日)の出願であって、その請求項18に係る発明は、平成13年4月6日付け、平成13年7月16日付け、及び平成13年12月27日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項18に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「【請求項18】 コンテンツデータを含んだトランスポートストリームを送信する送信装置であって、 前記トランスポートストリームには、再生時にのみ適用される条件または命令、もしくは再生時にのみ適用されない条件または命令が含まれていること を特徴とするもの。」 2.引用例 これに対して、前置審査における拒絶の理由に引用された、本願の国内優先権主張の日前である平成8年3月22日に頒布された「特開平8-77706号公報」(以下、「引用例」という)には、次の事項が記載されている。 (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、例えば、衛星を使ったディジタルテレビジョン放送で送られてきた映像を記録再生する記録再生装置に関するもので、特に、その営業利益や著作権の保護に係わる。 【0002】 【従来の技術】衛星を使って、圧縮されたディジタルビデオ信号を送信するようにしたディジタルテレビジョン放送の実現が検討されている。このような衛星を使ったディジタルテレビョン放送が実現されると、単なる放送局から多数の視聴者に向けて一方的に番組を提供するテレビジョン放送ばかりでなく、様々な対話的なサービスが可能になろう。すなわち、衛星を使ったディジタルテレビジョン放送では、多チャンネル化が図れる。このため、特定の視聴者を選択し、特定の人だけに特定のサービスをするというようなことが行なえる。例えば、特定のビデオソースを注文すると、そのビデオソースが注文された人に向けて、そのビデオソースの番組が送られてくる。このようなサービスを使って、ディジタルテレビジョン放送で送られてきたビデオソフトを購入したり、一定の期間や回数、借りたりするようなことが盛んに行われることになろう。」 (2)「【0006】 【課題を解決するための手段】この発明は、入力情報信号を暗号化する暗号化手段と、入力情報信号が記録される記録媒体と、記録媒体と対応して設けられ、記録媒体を再生させるための再生条件が記録される再生条件記憶手段と、記録媒体の再生情報信号に対する暗号の解読を行う暗号解読手段と、再生条件記憶手段の内容により、暗号解読手段を制御する制御手段とを有し、再生時に、再生情報記憶手段に記憶された再生条件に従って、暗号解読手段の暗号解読する又は暗号解読しないを制御するようにした記録再生装置である。 【0007】伝送されてきた信号は、暗号化して記録する。そして、再生条件を伝送し、この再生条件を再生条件記憶メモリに記憶しておく。再生時に、この再生条件記憶メモリに記憶されている条件に応じて、暗号を解読する、しないを制御する。これにより、所定の条件を満足して場合にのみ再生可能とするようなことが行なえる。」 (3)「【0008】 【実施の形態】a.ディジタルテレビジョン放送システムの全体構成 図1は、この発明が適用できる衛星を使ったディジタルテレビション放送システムの一例である。図1において、101は放送局、102は各家庭のディジタル信号受信機である。ディジタル信号受信機102は、放送局からの信号に施されているスクランブルを解除すると共にMPEG(Moving Picture Image Coding Experts Group) 又はMPEG2のデコードを行うデコーダと、ビデオソフトの購入やレンタルを公衆回線106を使って行なえるようにするためのモデムと、送られてきたビデオ信号の記録/再生を行うビデオ記録/再生装置を含んでいる。 【0009】ディジタル信号受信機102に設けられるビデオ記録/再生装置としては、例えば、ディジタルビデオ信号を圧縮して磁気テープに記録するディジタルVTRが用いられる。このディジタルVTRには、メモリ付のカセット(MICと称される)104が装着される。このメモリ付カセット104のメモリには、後に詳述するように、「フルアクセス」、「再生不可」、「N回再生許可」、「期限Yまで再生許可」というような、アクセス条件が記憶される。」 (4)「【0012】このようなシステムでは、例えば、以下のようにして、ビデオソフトが購入され又はレンタルされる。 【0013】ビデオメフトを購入又はレンタルしたい場合、ユーザにより、電話回線106を通じて、放送局101にビデオソフトが注文される。ビデオソフトが注文されると、放送局101でそのビデオソフトが選択され、そのビデオソフトの信号が放送局101から送信される。 【0014】ビデオソフトの注文形態としては、ビデオソフトの購入、又は視聴回数制限付き若しくは視聴期限付きレンタル等がある。送信信号は、例えば、ディジタルビデオ信号をMPEGに基づいて圧縮したものである。このビデオ信号は、実時間で送っても良いし、時間軸圧縮して伝送するようにしても良い。 【0015】放送局101からの信号は、衛星107を介して、各家庭のディジタル信号受信機102で受信される。この衛星107を介して送られてきた信号は、ディジタル信号受信機102でデコードされる。このビデオ信号は、メモリ付カセット104の磁気テープに記録することができる。」 (5)「【0022】b.家庭の受信システムの一例 図2は、各家庭のディジタル信号受信機102Aの一例を示すものである。このディジタル信号受信機102Aには、メモリ付きカセット104Aが装着される。メモリ付きカセット104Aには、磁気テープ40が巻装されていると共に、メモリ29が設けられる。このメモリ29には、後に説明するように、アクセス条件が記憶される。 【0023】このディジタル信号受信機102Aには、モデム31が設けられる。このモデム31は、アクセス制御回路28Aを公衆回線106に接続するために設けられている。アクセス制御回路28Aは、ビデオソフトの購入、視聴回数制限付或いは視聴期限付のレンタル等のビデオソフトの注文形態や、料金を納入しているかどうか等に応じて、暗号化処理及び暗号解読処理を制御するものである。また、アクセス制御回路28Aは、メモリ付きカセット104Aのメモリ29に対して、データの読み出し/書込みを行うことができる。 【0024】図2において、衛星107(図1)を介して放送局101(図1)から送られてきたディジタルテレビジョン信号は、アンテナ103で受信される。この衛星107を介して放送局101から送られてくるディジタルテレビジョン信号は、MPEGを基本として圧縮されている。また、このディジタルテレビジョン信号は、契約した特定の視聴者のみ受信が可能となるように、スクランブルされている。 【0025】アンテナ103の受信信号は、チューナ回路20に供給される。チューナ回路20で、所定のチャンネルの信号が選択される。チューナ回路20の出力がデスクランブラ21Aに供給される。デスクランブラ21Aで、ディジタルビデオ放送のスクランブルが解除される。 【0026】なお、ディジタルビデオ放送の信号には、料金を支払ったことを示す情報や、レンタル期限や、レンタル回数限度等の付加情報が含められる場合がある。この付加情報は、デスクランブラ21Aでデコードされる。更に、受信信号には時刻情報が含められる。時計27を更新するために、この時刻情報がデスクランブラ21Aから時計27に供給される。」 (6)「【0031】c.記録時の処理について ビデオソフトの注文は、ユーザインターフェース30により、公衆回線106を使って行われる。ビデオソフトを購入する場合には、料金を払っていれば、送られてきたビデオ信号は、暗号化されずに磁気テープ40に記録されると共に、メモリ29に「フルアクセス情報」が記録される。この場合、暗号化されずに記録されるので、いつでも再生が可能である。 【0032】ビデオソフトを視聴回数制限付きでレンタルする場合には、料金を支払っていれば、送られてきたビデオ信号は、暗号化回路22で暗号化されると共に、メモリ29に「N回再生許可情報」が記録される。再生時には、このメモリ29の「N回再生許可情報」により、所定回数だけ暗号解読されるようになる。 【0033】ビデオソフトを視聴期限付きでレンタルする場合には、料金を支払っていれば、送られてきたビデオ信号は、暗号化回路22で暗号化されると共に、メモリ29に「期限Yまで再生許可情報」が記録される。再生時には、このメモリ29の「期限Yまで再生許可情報」により、期限まで暗号解読されるようになる。」 (7)「【0048】d.再生時の処理 次に、再生時の処理について、図4のフローチャートを参照して、説明する。 (中略) 【0053】次に、料金を支払って、視聴期限付きでビデオソフトをレンタルする場合について説明する。料金を支払って、視聴期限付きでビデオソフトをレンタルした場合、磁気テープ40にはビデオ信号が暗号化されて記録されていると共に、メモリ29に、「期限Yまで再生許可情報」が書き込まれている(ステップS13参照)。このメモリ29からの情報が「再生不可情報」であるか否かが調べられ(ステップS22)、「再生不可情報」でなければ、「N回再生許可情報」かどうかが調べられ(ステップS23)、「N回再生許可情報」でなければ、「期限Yまで再生許可情報」であるかどうかが調べられる(ステップS24)。料金を支払って、視聴期限付きでビデオソフトをレンタルした場合、メモリ29からの情報は、「期限Yまで再生許可情報」となる。 【0054】ビデオソフトを視聴期限付きでレンタルし、料金を既に支払っていれば、ステップS24で、メモリ29からの情報は「期限Yまで再生許可情報」であると判断される。「期限Yまで再生許可情報」であることが分かると、この期限Yと現在の年、月、日とが比較され、期限Yが過ぎていないかどうかが判断される(ステップS29)。 【0055】期限が過ぎていたら、アクセス制御回路28Aは、暗号解読をオフする制御信号を暗号解読回路25に送り、再生は不可となる(ステップS28)。 【0056】期限内なら、アクセス制御回路28Aは、暗号解読をオンする制御信号を暗号解読回路25に送る。このため、磁気テープ40に記録されている暗号化されたビデオ信号は、解読されて再生される(ステップS30)。」 (8)「【0075】また、上述の例では、放送局からの情報は回線を介して送られているが、これらの情報をテレビジョン放送の付加情報として送るようにしても良い。また、情報と共に、暗号化のキーを送るようにしても良い。 【0076】また、上述の例では、公衆回線を使って、放送局と各家庭の受信システム端末とでデータ通信を行なえるようにし、ビデオソフトの注文や付加情報をデータで送るようにしているが、ユーザが電話を使って直接ビデオソフトの注文を行い、それに対する付加情報を返答てもらい、その付加情報を各受信システムに入力するようにしても良い。 【0077】また、この発明は、ビデオ信号の伝送やデータの伝送を回線を用いて行うようなシステムにおいても同様に適用することができる。」 (9)「【0078】 【発明の効果】この発明によれば、伝送されてきた信号は、契約条件により暗号化されて記録され、再生条件が伝送され、この再生条件がメモリに記憶される。再生時に、このメモリに記憶されている条件に応じて、暗号を解読する、しないが制御される。これにより、所定の契約条件を満足して場合にのみ再生可能とするようなことが行なえる。」 これらの記載事項及び図面の記載を参照すると、引用例には、 「注文された所定のビデオソフトを選択し、そのビデオソフトの信号を送信する放送局101と、該放送局101からの信号を衛星107を介して受信するディジタル信号受信機102とを備え、 前記放送局101は、ビデオソフトの信号を送信するとともに該ビデオソフトの再生条件を前記ビデオソフトの信号の付加情報として送信し、前記ディジタル信号受信機102は、受信した前記ビデオソフトの信号を磁気テープ40に記録するとともに該ビデオソフトの再生条件をメモリ29に記憶しておき、再生時に、前記メモリ29に記憶されている再生条件に応じて再生の可否を制御することを可能とするディジタルテレビジョン放送システム。」 の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されていると認められる。 3.対比 引用例記載の発明の「ビデオソフト」が、本願発明の「コンテンツデータ」に相当し、引用例記載の発明における「放送局101」は、放送信号を送信しているという点で、「送信装置」と言いうるものである。 引用例記載の発明における「再生条件」は、磁気テープに記録されたビデオソフトを再生する際に、再生の可否を制御するための条件であって、その他の用途に用いられるものではないから、本願発明における「再生時にのみ適用される条件」に相当するものである。 また、引用例記載の発明は、「再生条件」をビデオソフトの信号の付加情報として送信しているものであるから、送信信号に再生条件が「含まれている」ことは明らかなことである。 したがって、本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、両者は、 「コンテンツデータを含んだ放送信号を送信する送信装置であって、 前記放送信号には、再生時にのみ適用される条件が含まれていること を特徴とするもの。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) 本願発明では、送信される放送信号が「トランスポートストリーム」の形式であるのに対して、引用例には、これに対応する記載が無い点 4.当審の判断 上記相違点について検討する。 引用例記載の発明も、ディジタルテレビジョン放送システムを前提構成としている点で本願発明のものと同一の技術分野に属するものであり、ディジタルテレビジョン放送において、放送信号を「トランスポートストリーム」の形式とすることは、例えば特開平10-178614号公報(特に【0011】段落の記載参照)、特開平9-233428号公報(特に【0002】段落の記載参照)、特開平9-200690号公報(特に【0002】〜【0003】段落の記載参照)等に記載されているよう周知の技術手段であるものと認められることから、引用例記載の発明において、放送信号をトランスポートストリームの形式とすることに格別の困難性があるものとは認められない。 なお、本願発明において「条件」とともに択一的に記載されている「命令」を送信する点に関して、念のため検討する。 前置審査において拒絶の理由に引用された特開平9-231687号公報(特に第4図及び【0038】〜【0042】、【0056】段落の記載参照)には、電波放送系等を用いて動画像信号を送受信する画像表示システムにおいて、送信側からプログラムデータを多重化して送信し、受信側で該プログラムデータにしたがった復号再生動作を行わせる技術が記載されている。また、前置報告書において引用された特開平9-70006号公報には、VBI(垂直帰線消去期間)に制御コマンドが重畳されたテレビジョン放送信号を記録媒体に記録し、該記録媒体から信号を再生する際に、前記制御コマンドに基づいて任意の再生動作を行わせる技術が記載されている。これらの技術における「プログラムデータ」「制御コマンド」が、本願発明における「命令」に相当するものと認められることから、送信側から本来の情報信号に加えて制御命令を送信し、該制御命令の内容を変えることによって受信側の制御内容を自由に変更可能とすることは、周知の技術手段であるものと認められる。 したがって、引用例記載の発明において、「条件」の代わりに「命令」を送信するよう構成することも当業者が容易に想到しうることと認められる。 5.むすび したがって、本願発明は、引用例記載の発明に周知の技術手段を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-05-01 |
結審通知日 | 2003-05-06 |
審決日 | 2003-05-19 |
出願番号 | 特願平11-367308 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G11B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小松 正、早川 卓哉 |
特許庁審判長 |
片岡 栄一 |
特許庁審判官 |
須田 勝巳 相馬 多美子 |
発明の名称 | デジタル放送のための通信装置、送信装置、受信装置、再生装置、受信記録再生装置、記録再生装置およびこれらの方法ならびに記録媒体 |
代理人 | 古谷 栄男 |
代理人 | 眞島 宏明 |
代理人 | 松下 正 |