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審決分類 審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正しない B65B
管理番号 1079239
審判番号 訂正2002-39262  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-07-07 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2002-12-05 
確定日 2003-06-30 
事件の表示 特許第3187333号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3187333号に係る発明についての出願は、平成8年12月24日に特許出願され、平成13年5月11日にその発明について特許権の設定登録がなされ、平成14年2月20日に本件特許に対する無効審判請求がなされ、平成14年8月20日付けで「本件特許を無効とする。」旨の審決がなされ、平成14年9月26日に東京高等裁判所に出訴(平成14年行ケ第493号)され、平成14年12月6日に本件の訂正審判が請求され、平成15年2月12日付けで訂正拒絶理由の通知がなされ、その指定期間内である平成15年4月11日に意見書が提出されたものである。

2.審判請求の要旨
本件審判請求の趣旨は、特許第3187333号の願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)を、審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項a
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の「一対の無端チェーンコンベアをその同一進行側を同一平面上に対向させて平行に配置し、かつ、その無端チェーンコンベア間に搬送レールを設置し、各無端チェーンコンベアに定間隔で設けたキャリアの挟持片で搬送レール上の有底力一トンを間欠搬送しながら停止時に、内容液の充填、上部開口部の折り畳み、融着密封等の各工程を行う装置であって、無端チェーンコンベアの支柱との支持部を巾方向に調節可能とする手段を有すると共に、有底力一トンが自然状態で捻れて水平面がひし形状に変形して形成される各角部のうち、鋭角部に対応するキャリアをそれぞれの無端チェーンコンベアに設け、この二個のキャリアの挟持片で有底カートンの対向する鋭角部を挟持して搬送するようにし、無端チェーンコンベアを互いに反対方向へ同一長さだけ進退させることによってそれらの挟持片を有底カートンの前後長に位置決めする手段を有しており、大きさの異なる複数種類の有底力ートンに対して装置を搬送駆動した際に有底力一トンの中心位置が搬送中の諸工程を行う機器との関係で移動しないようにしたことを特徴とする有底力一トンの直進搬送装置。」との記載を、「一対の無端チェーンコンベアをその同一進行側を同一平面上に対向させて平行に配置し、かつ、その無端チェーンコンベア間に搬送レールを設置し、各無端チェーンコンベアに定間隔で設けたキャリアの挟持片で下方に渡された搬送レール上の有底力一トンを間欠搬送しながら停止時に、内容液の充填、上部開口部の折り畳み、融着密封等の各工程を行う装置であって、無端チェーンコンベアの支柱との支持部を巾方向に調節可能とする手段を有すると共に、有底力一トンが自然状態で捻れて水平面がひし形状に変形して形成される各角部のうち、鋭角部に対応するキャリアをそれぞれの無端チェーンコンベアに設け、この二個のキャリアの挟持片で有底カートンの対向する鋭角部を挟持して搬送するようにし、無端チェーンコンベアを互いに反対方向へ同一長さだけ進退させることによってそれらの挟持片を水平面がひし形状に変形した状態にある有底カートンの前後長に位置決めする手段を有しており、大きさの異なる複数種類の有底力ートンに対して装置を搬送駆動した際に有底力一トンの中心位置が搬送中の諸工程を行う機器との関係で移動しないようにしたことを特徴とする有底力一トンの直進搬送装置。」と訂正する。

(2)訂正事項b
明細書の段落【0015】を、「【問題を解決するための手段】本発明の有底カートンの直進搬送装置は、一対の無端チェーンコンベアをその同一進行側を同一平面上に対向させて平行に配置し、かつ、その無端チェーンコンベア間に搬送レールを設置し、各無端チェーンコンベアに定間隔で設けたキャリアの挟持片で下方に渡された搬送レール上の有底力一トンを間欠搬送しながら停止時に、内容液の充填、上部開口部の折り畳み、融着密封等の各工程を行う装置であって、無端チェーンコンベアの支柱との支持部を巾方向に調節可能とする手段を有すると共に、有底力一トンが自然状態で捻れて水平面がひし形状に変形して形成される各角部のうち、鋭角部に対応するキャリアをそれぞれの無端チェーンコンベアに設け、この二個のキャリアの挟持片で有底カートンの対向する鋭角部を挟持して搬送するようにし、無端チェーンコンベアを互いに反対方向へ同一長さだけ進退させることによってそれらの挟持片を水平面がひし形状に変形した状態にある有底カートンの前後長に位置決めする手段を有しており、大きさの異なる複数種類の有底力ートンに対して装置を搬送駆動した際に有底力一トンの中心位置が搬送中の諸工程を行う機器との関係で移動しないようにしたことを特徴とするものである。」と訂正する。

(3)訂正事項c
明細書の段落【0022】並びに【0023】を削除する。

(4)訂正事項d
明細書の段落【0024】〜【0027】の段落番号を二つずつ切り上げて【0022】〜【0025】と訂正する。
なお、この訂正は、事実上の明細書の訂正ではない。

(5)訂正事項e
明細書の段落【0022】(訂正前の段落【0024】)の【図4】を【図3】と訂正する。

(6)訂正事項f
【図面の簡単な説明】の記載に関し、図3についての説明を削除するとともに、訂正前の【図4】を【図3】と訂正する。

(7)訂正事項g
図面の訂正で、【図3】を削除するとともに、訂正前の【図4】を【図3】と訂正する。

3.訂正拒絶の理由
一方、平成15年2月12日付けで通知した訂正拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

【訂正拒絶理由の概要】
「特許請求の範囲を訂正しようとする訂正事項aは、以下の理由から、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされた訂正ではない。
(1)訂正個所「下方に渡された」について
訂正前の明細書では、他の装置(例えば、マンドレルなど)から挟持片による挟持状態に至るために移行して渡される形態は、従来技術に関しては記載されているものの、本件発明に関しては直接的には記載はされていない。また、移行して渡される形態には、請求人が述べるように3つの形態があり、本訂正は、その3つのうちの一つに特定しようとする訂正である。
なお、訂正事項「下方に渡された」が訂正前の明細書には記載されていないことを、請求人自身が審判請求書において認めている。
(2)訂正個所「水平面がひし形状に変形した状態にある」 について
訂正前の明細書には、本訂正個所の根拠となる記載は全くない。
この点に関し、請求人の主張を要約すれば以下のとおりである。
主張ア:ひし形状に変形した状態が矩形状に是正されているか、又はひし形に変形した状態であるかについて、訂正前の請求項の記載は格別規定はしていない。
主張イ:訂正前の明細書に記載された実施態様は、有底カートンを「矩形に維持している」ものであるが、本件発明は訂正前の明細書に記載された実施形態に限定されているわけではない。
しかしながら、挟持片による挟持の態様として「水平面がひし形状に変形した状態にある」ことについての直接的な記載が訂正前の明細書には全くなく、訂正前の明細書には実施態様として、「水平面がひし形状に変形した状態にある」態様ではなく、「矩形に維持している」態様が記載されている。」

4.当審の判断
(1)訂正個所「下方に渡された」について
本訂正は、他の装置から挟持片による挟持状態に至るために移行して渡される形態を特定しようとする訂正である。
審判請求人は、甲第1号証(特公昭51-14950号公報)及び甲第2号証(特開昭49-87484号公報)を提出し、(a)「下方に渡される形態」としては甲第1号証に示されたものがあるとし、(b)「横方向に渡される形態」としては甲第2号証に示されたものがあるとしたうえで、本件訂正は、その形態の一つに限定するものであると審判請求書で述べている。
しかしながら、訂正前の明細書には、従来技術の前工程としてマンドレルを用いることの記載はあるものの(【0007】参照)、本件発明に関しては、実施例を含め、他の装置から挟持片による挟持状態に至るために移行して渡される形態に関しての記載が全くなく、また、甲第2号証に記載されているような「横方向に渡される形態」が、本件発明においては排除される格別の理由もないのであるから、本訂正は、明細書に記載された事項の範囲内においてなされた訂正とは認められない。

平成15年4月11日に提出した意見書において、請求人は、甲第2号証に記載されたものは有底カートンではないとして、有底カートンの場合は重力を利用して下方に渡すことの方が技術的に簡便であり、横方向(上方向)に渡す場合は技術的に極めて煩雑で、無意味であるとして、実際に下方に渡す方式のみが採用されていると主張している。
しかしながら、他の装置から挟持片による挟持状態に至るために移行して渡される形態を下方に渡される形態とするか、あるいは、横方向とする形態とするかは、請求人が主張する理由だけで決定されるものではなく、装置全体を配するスペースによっても決定されるものであり、場合によっては、下方に渡される形態が困難な場合も十分想定され、そうした場合には、横方向に渡される形態を積極的に採用せざるをえない場合も生じることは明らかである。してみると、甲第2号証に示された様な横方向に渡される形態を、有底カートンの場合に採用できないとする理由はないというべきである。
よって、請求人の主張は採用しない。

(2)訂正個所「水平面がひし形状に変形した状態にある」 について
従来技術の問題点として、訂正前の明細書には「この有底カートンは、角部処理が充分でなく、又上端が開口している関係で、自然状態では上方位置に行くほど捻れてひし形状に変形しているのであり、搬送時にはキャリアの挟持片で矩形に補正しながら挟持しているのである。」(【0007】参照)と指摘し、更に、従来のものは特定の専用機としてキャリアの間隔が固定されたものがほとんどであると指摘した上で(【0010】参照)、「そこで、本発明は迅速、容易に、且つ効率的に寸法の異なる複数種類のカートンの大きさに対応できるようにした有底カートンの直進搬送装置を提供しようとするものである。」(【0014】参照)と記載されている。この記載からも明らかなように、本件発明の有底カートンの直進搬送装置は、搬送時にはキャリアの挟持片で矩形に補正しながら挟持することを前提として提案されているものであるといえる。
そして、【0022】及び【0023】に記載された実施例では、「ひし形状の変形を矩形に是正して挟持片5A、5Bで挟持」することが明確に記載されているのである。

ところで、本訂正は、ひし形状の変形を矩形に是正する実施例が記載された段落【0022】並びに【0023】を完全に削除し、本件発明は、矩形に補正(是正)しないで(すなわち、ひし形状に変形した状態で)挟持し、搬送することに訂正しようとするものであり、明細書に記載された事項の範囲内においてなされた訂正でないことは明らかである。
請求人は、上記意見書において縷々その根拠を述べているが、訂正前の明細書においては、搬送時にはキャリアの挟持片で矩形に補正(是正)することについての記載はあるものの、水平面がひし形状に変形した状態で搬送することそのものに関しては何ら記載がなく、また、それを示唆する記載もないのであるから、請求人の主張は採用しない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正審判請求は、特許法第126条第2項の規定に適合しないので、当該訂正を認めることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-05-06 
結審通知日 2003-05-09 
審決日 2003-05-20 
出願番号 特願平8-356263
審決分類 P 1 41・ 841- Z (B65B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 一ノ瀬 覚  
特許庁審判長 吉国 信雄
特許庁審判官 鈴木 公子
山崎 豊
市野 要助
鈴木 美知子
登録日 2001-05-11 
登録番号 特許第3187333号(P3187333)
発明の名称 有底カートンの直進搬送装置  
代理人 土井 育郎  
代理人 赤尾 直人  
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