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審決分類 審判 補正却下不服 判示事項別分類コード:13  G02B
審判 補正却下不服 判示事項別分類コード:12  G02B
審判 補正却下不服 判示事項別分類コード:11  G02B
管理番号 1079240
審判番号 補正2003-50007  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-07-21 
種別 補正却下不服の審決 
審判請求日 2003-02-18 
確定日 2003-06-30 
事件の表示 平成 5年特許願第344668号「バックフォーカスの長い広角レンズ」において、平成14年12月12日付けでした手続補正に対してされた補正の却下の決定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は平成5年12月21日に出願され、拒絶理由通知に対してなされた平成14年12月12日付け手続補正について、原審において平成15年1月15日付けで補正の却下の決定をしたものである。

【2】原決定の理由
上記補正の却下の決定(以下、「原決定」という。)の理由は、以下のとおりである。
『平成14年12月12日付けの手続補正により、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載を変更しているが、そのうち、請求項1の記載において、第2レンズ群の具体的なレンズ構成として、第2レンズ群が最も物体側のレンズ成分として物体側に凹面を向けた正のパワーを持つメニスカスレンズと、最も像側のレンズ成分として像側に凹面を向けた単レンズもしくは接合レンズからなるメニスカスレンズとを含み、と記載を変更しているが、出願当初の明細書の記載では、その【0022】において、第2レンズ群は、物体側から順に、物体側に凹面を向けた弱い正のパワーを持つメニスカスレンズと、少なくとも1枚の正レンズと、単レンズもしくは接合レンズからなる像側に凹面を向けたメニスカスレンズで構成する点が記載されており、最も物体側のレンズ成分として物体側に凹面を向けた正のパワーを持つメニスカスレンズと、・・・とを含み、特定することにより、出願当初の明細書に記載された、第2レンズ群の前記レンズ構成以外のものを含むように拡張した点は、出願当初の明細書には記載されてなく、また、自明な事項であるとも認められず、上記手続補正によって本願発明の構成に関する技術的事項は出願当初の明細書の記載の範囲内でないものとなる。
したがって、この補正は、明細書の要旨を変更するものと認められ、特許法第53条第1項の規定により、上記結論の通り決定する。』

【3】補正の内容
平成14年12月12日付けでした手続補正は、請求項1からなる特許請求の範囲を請求項1〜請求項4からなる特許請求の範囲に補正するものである。それに伴い請求項1の記載を以下のとおりに補正する内容を含む。
「【請求項1】物体側から順に、負のパワーを持つ第1レンズ群と正のパワーを持つ第2レンズ群と正のパワーを持つ第3レンズ群とを備え、前記第1レンズ群が物体側から順に、正レンズの第1レンズと物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズの第2レンズと、像側に凹面を有し物体側の面よりも像側の面の方がパワーが強い負レンズの第3レンズからなり、前記第2レンズ群が最も物体側のレンズ成分として物体側に凹面を向けた正のパワーを持つメニスカスレンズと、最も像側のレンズ成分として像側に凹面を向けた単レンズもしくは接合レンズからなるメニスカスレンズとを含み、前記第3レンズ群が物体側から順に、物体側 に凹面を向けた接合メニスカスレンズと少なくとも1枚の正レンズからなり、以下の条件(1),(2),(3),(4),(5)を満足することを特徴とする 広角レンズ。
(1) 1.3<|f1 /f|<2.2 、f1 <0
(2) 1.8<f2 /f<4.5
(3) 0.3<f23/f2 <1.0
(4) |f/f12|<0.3
(5) 0.9<|f1N/f|<1.7
ただし、fはレンズ全系の焦点距離、fi は第iレンズ群の焦点距離、f12は第1レンズ群と第2レンズ群の合成焦点距離、f23は第2レンズ群と第3レン ズ群の合成焦点距離、f1Nは第1レンズ群の第2レンズと第3レンズの合成焦点 距離である。」

【4】当初明細書の記載
そこで、上記【3】の下線部の記載について検討するために、願書に最初に添付された明細書及び図面(以下、「当初明細書等」という。)の第2レンズ群についての記載を検討する。
当初明細書等の、段落【0008】〜【0014】において、本願発明の目的を達成するために必要な条件を導く考え方を説明している。そして、段落【0015】において「【0015】 以上の理由により、本発明の広角レンズは、前述のように、物体側から順に、負のパワーを持つ第1レンズ群と、正のパワーを持つ第2レンズ群と、正のパワーを持つ第3レンズ群より構成し、第1レンズ群は、物体側から順に、正レンズの第1レンズと物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズの第2レンズと、物体側に凹面を有し物体側の面よりも像側の面がパワーが強い負レンズの第3レンズにて構成し、第2レンズ群は最も像側のレンズ成分として像側に凹面を向けたメニスカスレンズを含むようにし、第3レンズ群は物体側から順に物体側に凹面を向けた接合メニスカスレンズと少なくとも1枚の正レンズにて構成した。又高い光学性能を達成するためには上記の構成をとったうえに適切なパワー配置をすることが必要であり、そのためには前記の条件(1)乃至条件(5)を満足することが必要である。」と規定している。
さらに、段落【0022】において、「【0022】本発明のレンズ系においてさらに良好に球面収差を補正するためには第2レンズ群を物体側から順に、物体側に凹面を向けた弱い正のパワーを持つメニスカスレンズと、少なくとも1枚の正レンズと、単レンズもしくは接合レンズからなる像側に凹面を向けたメニスカスレンズで構成することが望ましい。」と記載している。
してみると、当初明細書等における第2レンズ群の構成についての条件として、段落【0022】には、球面収差をよりよく補正するために段落【0015】の条件に加えて、第2レンズ群を「物体側から順に、物体側に凹面を向けた弱い正のパワーを持つメニスカスレンズと、少なくとも1枚の正レンズと、単レンズもしくは接合レンズからなる像側に凹面を向けたメニスカスレンズ」で構成することを条件(以下、「条件1」という。)とすることが記載されているものと認められる。また、段落【0022】の条件1を満たす実施例として、実施例2〜実施例9のレンズ構成データが示されそれらのレンズ構成が図2〜図4に示されており、これら条件1についての全ての実施例2〜実施例9において、「物体側に凹面を向けた弱い正のパワーを持つメニスカスレンズ」、「1枚の正レンズ」、及び「単レンズもしくは接合レンズからなる像側に凹面を向けたメニスカスレンズ」を備えている。
なお、実施例1及び図1は、第2レンズ群が「物体側に凹面を向けた弱い正のパワーを持つメニスカスレンズ」を備えておらず、当初明細書等の段落【0015】に対応する実施例である。

【5】判断
上記手続補正により補正された後の特許請求の範囲請求項1に記載された第2レンズ群の構成についての条件である「最も物体側のレンズ成分として物体側に凹面を向けた正のパワーを持つメニスカスレンズと、最も像側のレンズ成分として像側に凹面を向けた単レンズもしくは接合レンズからなるメニスカスレンズとを含み」(以下、「条件2」という。)と、当初明細書等に記載された第2レンズ群についての条件1とを比較する。
補正後の条件2は、メニスカスレンズの正のパワーについて「弱い」という技術事項が存在しない点、及び「少なくとも1枚の正レンズ」を必須の技術事項としていない点で補正前の条件1と相違する。従って、条件2は、条件1よりも広い技術事項を含むこととなる。すなわち、条件1によれば、第2レンズ群を(1)物体側に凹面を向けた弱い正のパワーを持つメニスカスレンズ、(2)少なくとも1枚の正レンズ、及び(3)単レンズもしくは接合レンズからなる像側に凹面を向けたメニスカスレンズで構成することにより球面収差をよりよく補正できるのに対して、条件2によれば、第2レンズ群を(1)物体側に凹面を向けた正のパワーを持つメニスカスレンズ、(3)最も像側のレンズ成分として像側に凹面を向けた単レンズもしくは接合レンズからなるメニスカスレンズにより構成することで球面収差をよりよく補正できることとなる。
発明の構成に関する技術事項を補正して、明細書の要旨の変更とならない場合は、補正後の発明の構成(技術事項についての条件)が当初明細書等に記載されている場合と補正後の発明の構成が当初明細書等の記載からみて自明である場合である。
そこで、上記手続補正についてみるに、補正後の発明の構成に関する技術事項である条件2は、前述のとおり補正前の条件1とは異なり、段落【0022】はじめ当初明細書等には記載されていない事項である。
次に、条件1及びその他出願当初明細書等の記載から条件2が自明であるか否かを検討するに、第2レンズ群を(1)物体側に凹面を向けた正のパワーを持つメニスカスレンズ、(3)最も像側のレンズ成分として像側に凹面を向けた単レンズもしくは接合レンズからなるメニスカスレンズにより構成することにより、条件1と同様に球面収差をよりよく補正できるとする根拠、又は条件2が条件1から自明であるとする根拠は当初明細書等の記載からは見いだせない。なぜなら、当初明細書等の段落【0022】には、条件1のうち「(2)少なくとも1枚の正レンズ」を省略しても条件1と同等の効果が生じることを示唆する記載はなく、対応する実施例はすべて、第2レンズ群に「(2)少なくとも1枚の正レンズ」を備えており、かつ、収差の補正を目的としたレンズ系において、それを構成する個々のレンズが全系の収差に及ぼす影響は、通常、レンズ系を構成する他のレンズの光学諸元によって複雑に変化するため、当初明細書等の記載のみから、第2レンズ群の「(2)少なくとも1枚の正レンズ」が収差の補正上重要でないとも、条件2を条件1から導けるともいえないからである。
よって、上記手続補正は、明細書の要旨を変更するものといわざるを得ない。

なお、請求人は、『前記補正の第2レンズ群の構成が[0022]に記載の第2レンズ群と同一でないとしても、[0022]を含めた本願の明細書の記載内容から自明の内容の補正であることは明らかである。即ち、本願発明の広角レンズは、[0021]に記載するように、球面収差の発生を抑える目的で第2レンズ群を、物体側から少なくとも1枚のレンズと、単レンズもしくは接合レンズからなる像側に凹面を向けたメニスカスレンズにて構成するようにしたものである。そして、この記載より明らかなように、上記目的のためには、物体側に少なくとも1枚のレンズを有することと、像側に凹面を向けたメニスカスレンズ成分を含んでいることが望ましいことが明らかである。そして、更に第2レンズ群にて発生する球面収差を極力抑えるという同様の目的であって、それを一層効果的にするためには、[0022]の記載から、最も物体側のレンズを物体側に凹面を向けた正のパワーを持つメニスカスレンズつまりこのレンズを軸上光線に対しアプラナティックに近い構成にすることが望ましいことは、当業者にとっては自明である。』と主張している。
しかし、当初明細書等において、段落【0021】に記載された技術事項は実施例1、図1に対応するものであって、当該技術事項のうちの「少なくとも1枚の正レンズ」を(1)物体側に凹面を向けた正のパワーを持つメニスカスレンズとすることは当初明細書等のどこにも示唆されておらず、段落【0021】の技術事項を具体化した当初明細書等の実施例1及び図1の第2レンズ群は、条件2の(1)物体側に凹面を向けた正のパワーを持つメニスカスレンズを備えていないのである。そして、前記「少なくとも1枚の正レンズ」を「(1)物体側に凹面を向けた正のパワーを持つメニスカスレンズ」としなくとも当初明細書等の図7に示される如く良好に収差が補正されているのであるから、「少なくとも1枚の正レンズ」を「(1)物体側に凹面を向けた正のパワーを持つメニスカスレンズ」とする必然性は当初明細書等からは生じない。それゆえ、請求人の上記主張には根拠がない。

【6】むすび
以上のとおりであるから、上記日付でした手続補正は特許法第53条第1項の規定により却下すべきものとした原決定は妥当である。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-04-22 
結審通知日 2003-05-02 
審決日 2003-05-13 
出願番号 特願平5-344668
審決分類 P 1 7・ 11- Z (G02B)
P 1 7・ 12- Z (G02B)
P 1 7・ 13- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森内 正明  
特許庁審判長 森 正幸
特許庁審判官 谷山 稔男
辻 徹二
発明の名称 バックフォーカスの長い広角レンズ  
代理人 向 寛二  

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