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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16F |
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管理番号 | 1079292 |
審判番号 | 不服2000-5340 |
総通号数 | 44 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-04-13 |
確定日 | 2003-07-03 |
事件の表示 | 平成10年特許願第225061号「排気管用支持装置」拒絶査定に対する審判事件[平成12年2月22日出願公開、特開2000-55126]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【一】 手続の経緯 本願は、平成10年8月7日の出願であって、平成12年3月3日付で拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月13日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月12日付で明細書及び図面について手続補正がなされたものである。 【二】 平成12年5月12日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成12年5月12日付の手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容、目的の適否 平成12年5月12日付手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成11年6月7日付手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載、 「弾性を有する材料により一体形成され、車体側の支持材が挿入される貫通孔を有する第1保持部と、排気管側の支持材が挿入される貫通孔を有する第2保持部と、第1保持部と第2保持部とを間隔を隔ててその両側で連結する一対の側壁部とを有してなる排気管用支持装置であって、 硬度60度以上の弾性を有する材料により形成され、周波数500Hz以下の全ての領域において絶対ばね定数が100N/mm以下であることを特徴とする排気管用支持装置。」を、 「弾性を有する材料により一体形成され、車体側の支持材が挿入される貫通孔を有する第1保持部と、排気管側の支持材が挿入される貫通孔を有する第2保持部と、第1保持部と第2保持部とを間隔を隔ててその両側で連結する一対の側壁部とを有してなる排気管用支持装置であって、 硬度が80度以上の弾性を有する材料により形成され、周波数500Hz以下の全ての領域において絶対ばね定数が100N/mm以下であることを特徴とする排気管用支持装置。」とする補正を含むものである。 上記補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「硬度」について「60度以上」を「80度以上」と限定するものであり、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 2.独立特許要件について そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2-1.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-296848号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、 ア)「この発明は、自動車等の排気管に発生する振動を抑制するように吊下支持するマフラーハンガーと呼ばれるような吊下支持装置に関する。」(2頁1欄22〜24行) イ)「図1に示す第1実施例では、全体形状がほぼ楕円板状のものであり、……この吊下支持装置の上方部には、第1保持部1が設けられ、その中央部には厚さ方向に貫通する第1貫通孔1Aが形成されている。第1貫通孔1Aは、……車体側の支持部(図示せず)が挿入される部分となる。第1保持部1と10mm間隔を隔ててその下方には第1保持部1と同一形状の第2保持部2が上下対称に設けられている。第2保持部2の中央部には第1貫通孔1と平行に厚さ方向に貫通する第2貫通孔2Aが形成されている。この第2貫通孔2Aは、……排気管側の支持部(図示せず)が挿入される。第1保持部1と第2保持部2の左右両側には、それぞれ両端が第1保持部1及び第2保持部2の側部に接続されたアーチ状の一対の側部3,4が形成されている。一対の側部3,4の中央部内側には、中心すなわち内方に向って延出し、第1保持部1と第2保持部2との間まで至らない中央膨出部5,6が形成されている。……図1において二点鎖線を施したが、これらは各部の境界を示すものであり、現実にはこれらは弾性材料で一体成形され、二点鎖線のような線は見えない。」(2頁2欄30行〜3頁3欄5行) ウ)「図4に示すようにこれら孔5′,6′の上下部分がバネ部Sとなり、中央膨出部5,6の個所のみがマスとして機能することにもなる。図4における孔5′,6′は図3における孔5′,6′よりも開口面積を大きくしたものである。図3及び図4に示す形状のものは、孔5′,6′の貫通のいかんや開口面積の大きさのいかんによって、周波数帯によってマスとして機能する部分及びバネ部Sとして機能する部分が変化し、両図のダイナミックダンパー機能が相乗的に作用することとなる。」(3頁3欄30〜38行) エ)「図7に示すグラフは図4に示す実施例を符号Xで示し、従来品(図11に示すもの)を符号Yで示し、これらの周波数に対する絶対バネ定数をグラフで示したものである。この発明の実施例では、500Hz付近の動的バネ定数は従来品に比べて低バネ化が図れ、静的バネ定数ではほぼ同程度であった。」(3頁4欄1〜6行)等の記載が認められる。 そして、図1及び図4の対比から、図4の実施例のものは、以下の構成を備えるものと認められる。 i)吊下支持装置の上方部には、第1保持部1が設けられ、その中央部には厚さ方向に貫通する第1貫通孔1Aが形成され、第1貫通孔1Aは、車体側の支持部が挿入される部分となる。 ii)第1保持部1と間隔を隔ててその下方には第2保持部2が設けられている。 iii)第2保持部2の中央部には第1貫通孔1Aと平行に厚さ方向に貫通する第2貫通孔2Aが形成され、この第2貫通孔2Aは、排気管側の支持部が挿入される。 iv)第1保持部1と第2保持部2の左右両側には、それぞれ両端が第1保持部1及び第2保持部2の側部に接続されたアーチ状の一対の側部3,4が形成されている。 v)全体が弾性材料で一体成形されている。 また、図7を参照すると、符号Xで示される図4の実施例のものは、絶対バネ定数が、周波数500Hz以下の概ね全ての領域において100N/mm以下であって、周波数500Hz以下において示されるピーク値も概略100N/mm程度と認められる。 したがって、上記引用刊行物には、次の発明、 「弾性を有する材料により一体形成され、車体側の支持部が挿入される第1貫通孔1Aを有する第1保持部1と、排気管側の支持部が挿入される第2貫通孔2Aを有する第2保持部2と、第1保持部と第2保持部とを間隔を隔ててその両側で連結する一対の側部3,4とを有してなる排気管用吊下支持装置であって、 周波数500Hz以下の概ね全ての領域において絶対ばね定数が100N/mm以下である排気管用吊下支持装置」 が記載されているものと認められる。 2-2.対比・判断 (1)そこで、本願補正発明と上記引用刊行物に記載された発明とを対比すると、両者は、 「弾性を有する材料により一体形成され、車体側の支持材が挿入される貫通孔を有する第1保持部と、排気管側の支持材が挿入される貫通孔を有する第2保持部と、第1保持部と第2保持部とを間隔を隔ててその両側で連結する一対の側壁部とを有してなる排気管用支持装置であって、 周波数500Hz以下の少なくとも大部分の領域において絶対ばね定数が100N/mm以下である排気管用支持装置」 で一致し、以下の相違点A、Bで相違する。 [相違点A] 本願補正発明は、「周波数500Hz以下の全ての領域において絶対ばね定数が100N/mm以下である」のに対して、引用刊行物に記載された発明においては、絶対ばね定数が周波数500Hz以下の概ね全ての領域において100N/mm以下であるものの、絶対ばね定数が、周波数500Hz以下の領域においてピーク値を示す領域でも100N/mm以下であるかどうか明瞭でない点 [相違点B] 本願補正発明は、材料の硬度が「80度以上」であるのに対して、引用刊行物に記載された発明では、材料の硬度が明瞭でない点 (2)上記各相違点について検討する。 (2-1)[相違点A]について 上記引用刊行物に記載された発明においても、絶対ばね定数は、周波数500Hz以下の領域においてピーク値を示す領域でも概略100N/mm程度と認められることに加えて、排気管用支持装置の作用効果に、絶対ばね定数の100N/mmが臨界的意義をもつものとは認められないから、本願補正発明の「周波数500Hz以下の全ての領域において絶対ばね定数が100N/mm以下」としたことが、当業者にとって困難とはいえない。 (2-2)[相違点B]について 振動する装置あるいは部品を弾性材料によって支持するとき、前記弾性材料の硬度を考慮することは本願出願前に極めて通常のことであるから、引用刊行物に記載された排気管用支持装置の弾性材料の決定に際して、適正な硬度の材料を選択できるよう実験を行うことは当業者にとって困難なこととではない。 そして、弾性材料の硬度80度を境界として、排気管用支持装置の質的効果の変化又は量的効果の大きな変化が生じるものとは認められないし、本願明細書においても、弾性材料の硬度が80度以上であることの臨界的意義は説明されていない。 したがって、排気管用支持装置を形成する弾性材料の硬度を「80度以上」とすることは、当業者が実験等により容易に決定し得る設計的事項とするのが相当である。 (3)本願補正発明の構成は、上記説示のとおり引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものであり、また本願補正発明の作用効果も引用刊行物に記載された事項から予測し得る程度のものである。 したがって、本願補正発明は、上記引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に適合しないものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 【三】 本願発明について 1.平成12年5月12日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成11年6月7日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。 「弾性を有する材料により一体形成され、車体側の支持材が挿入される貫通孔を有する第1保持部と、排気管側の支持材が挿入される貫通孔を有する第2保持部と、第1保持部と第2保持部とを間隔を隔ててその両側で連結する一対の側壁部とを有してなる排気管用支持装置であって、 硬度60度以上の弾性を有する材料により形成され、周波数500Hz以下の全ての領域において絶対ばね定数が100N/mm以下であることを特徴とする排気管用支持装置。」 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用刊行物(特開平9-296848号公報)には、前記「【二】 平成12年5月12日付の手続補正についての補正却下の決定」の「2-1.引用例」に記載したとおりの事項が記載されているものと認める。 3.対比・判断 本願発明は、前記「【二】 平成12年5月12日付の手続補正についての補正却下の決定」の「2-2.対比・判断」で検討した本願補正発明の弾性材料の硬度に関する特定事項(「80度以上」)を、「60度以上」としたものである。 そこで、弾性材料の硬度を「60度以上」とした点について検討するに、前に説示のとおり、引用刊行物に記載された排気管用支持装置の弾性材料の決定に際して、適正な硬度の材料を選択できるよう実験を行うことは当業者にとって困難なこととではないことに加えて、弾性材料の硬度60度を境界として、排気管用支持装置の質的効果の変化又は量的効果の大きな変化が生じるものとは認められないし、本願明細書においても、弾性材料の硬度が60度以上であることの臨界的意義は説明されていないことから、弾性材料の硬度を「60度以上」とすることは、当業者が実験等により容易に決定し得る設計的事項とするのが相当である。 そして、本願発明は、本願補正発明と対比して上記弾性材料の硬度に関する特定事項以外に差はないものであるから、引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たとするのが相当である。 また、本願発明の作用効果も引用刊行物に記載された事項から予測し得る程度のものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-04-30 |
結審通知日 | 2003-05-06 |
審決日 | 2003-05-19 |
出願番号 | 特願平10-225061 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(F16F)
P 1 8・ 121- Z (F16F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小谷 一郎 |
特許庁審判長 |
船越 巧子 |
特許庁審判官 |
秋月 均 前田 幸雄 |
発明の名称 | 排気管用支持装置 |
代理人 | 蔦田 正人 |
代理人 | 蔦田 正人 |
代理人 | 蔦田 璋子 |
代理人 | 蔦田 璋子 |