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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1079330
審判番号 不服2002-8679  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-05-16 
確定日 2003-07-03 
事件の表示 平成 4年特許願第 4477号「光学的文字読取システム」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年 7月30日出願公開,特開平 5-189427]について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は,平成4年1月14日の出願であって,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。
「フォーマットコントロールに従って,帳票の記載内容を光学的に読み取って認識し,その認識データを出力する光学的文字読取手段と,
引き込みするためのデータを格納する引き込みデータファイルと,
前記引き込みデータファイルに格納するデータの格納構造および新規に作成するデータの構造が予め設定された前記フォーマットコントロールに従って,前記引き込みデータファイルからデータを引き込み,前記光学的文字読取手段から得られた認識データと前記引き込みデータファイルから引き込んだデータとを合成して,前記新規に作成するデータ構造に編集して出力するデータ処理部とを具備することを特徴とする光学的文字読取システム。」

2 引用例
2-1 引用例記載事項
これに対して,原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願日前に頒布された特開平1-155483号公報(以下「引用例」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「帳票上に設定された読取フィールド内の文字を,予め定義されたフォーマット制御情報に基づいて読取る文字読取装置において,前記読取フィールドのフォーマット制御情報とともにこの読取フィールドの読取結果を取込んで編集を行うための論理フィールドのフォーマット制御情報を定義するフィールド定義手段と,前記フィールド定義手段により定義された読取フィールドと論理フィールドとの対応関係を示すフォーマット制御情報を定義する対応定義手段と,前記フィールド定義手段および前記対応定義手段によりそれぞれ定義されたフォーマット制御情報に基づいて前記論理フィールドに前記読取結果を取込んで編集を行うフォーマット制御手段とを具備したことを特徴とする文字読取装置。」(特許請求の範囲)
(2)「本発明は上述した問題点を解決するためのもので,読取フィールドの読取結果を取込んで編集を行うための論理フィールドを定義することにより,独立した複数の読取フィールドの読取結果を結合して各種のデータ編集を簡単に行うことのできる文字読取装置の提供を目的とする。」(2頁左上欄4〜9行)
(3)「第1図は本発明の一実施例の文字読取装置の構成を示すブロック図およびフローチャートである。
同図において,1は帳票Pを光学的に走査してその読取フィールドに記入された文字イメージを1行毎に読取るスキャナ部と,このスキャナ部により読取られた文字イメージの1文字毎の文字認識を行う文字認識部とを備えて構成された文字読取認識部,2は文字読取認識部1の認識結果に知識処理を行って最終的な読取結果を得る知識処理部である。また,3はフォーマット制御情報に基づいて文字読取認識部1の読取動作,知識処理部2の知識処理の実行および論理フィールド処理を制御する制御部であり,またこの制御部3には,読取フィールドのフォーマット制御情報とともに,この読取フィールドの読取結果を取込んで編集を行うための論理フィールドのフォーマット制御情報を定義するフィールド定義部3aと,このフィールド定義部3aにより定義された読取フィールドと論理フィールドとの対応関係を示すフォーマット制御情報を定義する対応定義部3bと,これらのフィールド定義部3aおよび対応定義部3bにより定義されたフォーマット制御情報に基づいて論理フィールドに読取結果を取込んでデータ編集を行うフォーマット制御部3cとを備えて構成されている。」(2頁右上欄18行〜同頁右下欄2行)
(4)「次に,この実施例装置において代表される動作について第1図を参照しながら説明する。
帳票Pの読取りを開始する前の処理として,まず,制御部3のフィールド定義部3aにおいて,読取フィールドのフォーマット制御情報と論理フィールドのフォーマット制御情報とを定義し(ステップa,b),さらに,対応定義部3bにおいて,フィールド定義部3aにより定義された読取フィールドと論理フィールドとの対応付けを行う(ステップc)。
この後,制御部3により帳票Pの読取開始が指示され,同時にフィールド定義部3aにより定義された読取フィールドのフォーマット制御情報が文字読取認識部1に転送される(ステップd)。
これにより,文字認識部1における帳票Pの所定領域毎の読取りと文字認識が行われ(ステップe),さらにこの文字読取認識部1の認識結果は制御部3に返送されることにより(ステップf),各読取フィールドに認識データが取込まれる(ステップg)。
この後,各読取フィールドに取込まれたデータの知識処理の必要性が判断され(ステップh),知識処理の必要があると判断された場合は,この読取フィールドのデータは知識処理部2に転送されて知識処理が行われ,最終的な読取結果を得て再び制御部3にそのデータが返送される(ステップi)。
なお,知識処理の必要がないと判断された場合は,知識処理部2を介さずそのまま文字読取認識部1からのデータを最終的な読取結果として扱う。
そして,最終的な読取結果として得られたデータは,対応定義部3bにおいて対応付けられた論理フィールドに取込まれ(ステップj),この論理フィールドにおいて最終的な読取結果の所定のデータ編集を行う(ステップk)。」(2頁右下欄3行〜3頁左上欄17行)
(5)「さらに,第4図はこの論理フィールド処理の他の適用例を示す図である。同図に示すように,この帳票P上には郵便番号を記入される読取フィールドAと,市・群・区の住所名が記入される読取フィールドBと,町・村の住所名が記入される読取フィールドCと,番地が記入される読取フィールドDとが設定され,都道府県名の読取フィールドが存在しない。
この場合,都道府県名が取込まれる読取フィールドを論理フィールドRで定義しておくことにより,帳票P上にこの都道府県名の記入される読取フィールドがなくても,知識処理を行ってこれを出力することができる。」(3頁右上欄20行〜同頁左下欄12行)
(6) 第4図には,帳票Pの読取フィールドAに記入された郵便番号「198」について,「これをOCRで読取郵便番号処理(知識処理)かけた結果」,「郵便番号でここまで判断する」として,「東京都」とOCRの読取結果である「青梅市 末広町 9-2」を結合して論理フィールドRに取込むことが示されている。

2-2 引用例記載発明
(1) 上記2-1の記載事項を検討するに,引用例では,知識処理部2から都道府県名のデータを出力することができるから,知識処理部2には,出力するための都道府県名のデータが格納されていることは明らかである。
また,引用例のフォーマット制御情報は,読取フィールドのフォーマット制御情報,知識処理部2の知識処理の実行のための情報及び論理フィールドのフォーマット制御情報を含むものである。
(2) してみると,引用例には,
「フォーマット制御情報に基づいて,帳票上の文字を光学的に読み取って文字認識し,認識結果を制御部3に返送する文字読取認識部1と,
出力するための都道府県名のデータが格納されている知識処理部2と,
知識処理部2の知識処理の実行のための情報および制御部のフィールド定義部3aにおいて予め設定された論理フィールドのフォーマット制御情報を含むフォーマット制御情報に従って,知識処理部2から都道府県名のデータを出力し,文字読取認識部1から得られた認識結果と知識処理部2から出力した都道府県名のデータとを結合して,論理フィールドに取込む制御部3とを具備することを特徴とする文字読取装置。」
の発明(以下「引用例記載発明」という。)が記載されていると認められる。

3 対比
(1) そこで,本願発明と引用例記載発明とを対比すると,引用例記載発明の「認識結果」,「文字読取認識部」,「制御部」,「結合」,「論理フィールドに取込む」,「文字読取装置」が本願発明の「認識データ」,「光学的文字読取手段」,「データ処理部」,「合成」,「編集して出力する」,「光学的文字読取システム」にそれぞれ相当する。
そして,本願発明の「フォーマットコントロール」は,本願明細書及び図面の記載によれば,フォーマットコントロール供給装置からワークステーションに供給され,これに従って光学的文字読取手段やデータ処理部が作動されるものであり,他方,引用例記載発明の「フォーマット制御情報」も,フィールド定義部からフォーマット制御部に与えられ,これに基づいて文字読取認識部の読み取り動作,知識処理部の知識処理の実行及び論理フィールド処理がなされるのであるから,引用例記載発明の「フォーマット制御情報」は,本願発明の「フォーマットコントロール」に相当する。
また,引用例記載発明の「知識処理部」は,読取フィールドの認識結果と結合するためのデータを出力するために,該データを格納しているから,「データファイル」であるか否かは別として(この点は,別途相違点(1)として抽出する。),「データを格納する手段」という上位概念で対比すると,本願発明の「引き込みデータファイル」に相当する。
そして,本願発明における「引き込み」とは,本願明細書及び図面の記載からみて,データファイルから所要のデータを読み出すことであると解されるから,引用例記載発明における知識処理部から読取フィールドの認識結果と結合するためのデータを「出力」することは,本願発明の「引き込み」に相当する。
また,引用例記載発明の「知識処理部の知識処理の実行のための情報」は,これによって知識処理部に格納されたデータが出力されるのであるから,知識処理部に格納するデータに関する情報を含むことは明らかであり,「格納構造」であるか否か,また,フォーマットコントロールに「予め設定」されるか否かは別として(これらの点は,別途相違点(2),(3)として抽出する。),「データに関する情報」という上位概念で対比すると,本願発明の「データの格納構造」に相当する。
更に,引用例記載発明の「論理フィールドの制御情報」は,読取フィールドの認識結果と知識処理部から出力されるデータを結合したデータを取り込む論理フィールドのフォーマットを規定するものであり,しかも,論理フィールドに取り込まれるデータが新規に作成されるデータであることは明らかであるから,本願発明の「新規に作成するデータの構造」に該当する。
(2) そうすると,本願発明と引用例記載発明は,
「フォーマットコントロールに従って,帳票の記載内容を光学的に読み取って認識し,その認識データを出力する光学的文字読取手段と,
引き込みするためのデータを格納する手段と,
前記データを格納する手段に格納するデータに関する情報を含み新規に作成するデータの構造が予め設定された前記フォーマットコントロールに従って,前記データを格納する手段からデータを引き込み,前記光学的文字読取手段から得られた認識データと前記データを格納する手段から引き込んだデータとを合成して,前記新規に作成するデータ構造に編集して出力するデータ処理部とを具備することを特徴とする光学的文字読取システム。」
である点で一致し,下記の点で相違する。
〔相違点1〕本願発明の「データを格納する手段」は,「引き込みデータファイル」であるのに対し,引用例記載発明の「データを格納する手段」は,その詳細が明らかでない点。
〔相違点2〕本願発明の「データに関する情報」は,「データの格納構造」であるのに対し,引用例記載発明の「データに関する情報」は,その詳細が明らかでない点。
〔相違点3〕本願発明の「データに関する情報」は,フォーマットコントロールに「予め設定」されるのに対し,引用例記載発明の「データに関する情報」は,どのようにしてフォーマット制御情報に含まれるのか明らかでない点。

4 当審の判断
(1) 相違点1について
引用例には,引用例記載発明の「データを格納する手段」である知識処理部の具体的構成について明記されていないが,引用例記載発明の知識処理手段は,郵便番号処理により,郵便番号のデータから都道府県名のデータを出力する知識処理を行うことが実施例として記載されている。そして,このような郵便番号処理を行うには,郵便番号と都道府県名とを対応させたテーブルや郵便番号簿を記憶手段に記憶させ,このテーブルや郵便番号簿を検索して所要のデータを出力することが周知の事項であるから(必要があれば,特開昭56-19135号公報,特開昭61-168070号公報等参照),引用例記載発明の「データを格納する手段」である知識処理部に,郵便番号と都道府県名とを対応させたテーブルや,郵便番号簿を記憶させる記憶手段を設け,記憶させたテーブルや郵便番号簿を検索して所要のデータを出力する構成とすることは,当業者が容易に想到し得ることである。
そして,郵便番号と都道府県名とを対応させたテーブルや郵便番号簿を記憶手段に記憶させる際に,テーブルや郵便番号簿のデータをファイルとして記憶・管理することは,情報処理の技術分野において周知の事項である。
してみると,引用例記載発明の「データを格納する手段」を「データファイル」で構成することに格別の困難性はなく,しかも,このデータファイルに格納されるデータは,引き込みするためのデータであるから,結局,引用例記載発明の「データを格納する手段」を「引き込みデータファイル」とすることは,当業者が容易に行い得ることである。
(2) 相違点2について
引用例記載発明の「データに関する情報」は,これに基づいて制御部が知識処理部の知識処理の実行,実施例でいえば,「データを格納する手段」である知識処理部から都道府県名のデータを出力すること,を制御するものである。
そして,一般に,データファイルから所要のデータを出力するためには,各データがどのような構造のデータとしてデータファイルに格納されているかという情報,即ち,「データの格納構造」の情報を制御部が有している必要があることは技術常識である。
してみると,引用例記載発明の「データに関する情報」を「データの格納構造」とすることは,「データを格納する手段」を「データファイル」で構成することに伴い,技術常識として直ちに導出されることであり,上記相違点1について検討したとおり,引用例記載発明の「データを格納する手段」を「データファイル」で構成することは,当業者が容易に想到し得ることであるから,引用例記載発明の「データに関する情報」を「データの格納構造」とすることもまた容易である。
(3) 相違点3について
引用例記載発明において,知識処理部に格納されるデータは,実施例に記載される郵便番号のデータと都道府県名のデータに限られるわけでなく,帳票の種類に応じて種々のデータが可能であることは明らかであるから,制御部が知識処理部を制御する際に基づくべき「データに関する情報」も,どのような帳票を読み取り,どのような種類のデータを知識処理部から出力させるかによって異なるものとなることは,当業者が容易に理解し得ることである。
そして,引用例記載発明において,フォーマット制御情報のうち,読取フィールドのフォーマット情報と論理フィールドのフォーマット情報は,制御部のフィールド定義部で予め設定されているのであるから,制御部が基づくべき「データに関する情報」についても,知識処理部に格納されるデータに応じて予め設定するように構成することに,格別の困難性は見出せない。
即ち,引用例記載発明の「データに関する情報」をフォーマット制御情報に「予め設定」することは,当業者が必要に応じて容易に行い得ることである。
(4) 作用効果について
本願発明の作用効果についてみても,引用例記載発明,上記周知事項及び技術常識からみて,当業者が容易に予測し得る程度のものであり,格別のものとはいえない。

5 むすび
したがって,本願発明は,引用例記載発明,上記周知事項及び技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-04-30 
結審通知日 2003-05-06 
審決日 2003-05-22 
出願番号 特願平4-4477
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 貝塚 涼金子 幸一松田 直也  
特許庁審判長 小林 信雄
特許庁審判官 岡 千代子
久保田 健
発明の名称 光学的文字読取システム  
代理人 外川 英明  

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