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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1079479
審判番号 不服2000-14717  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-11-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-09-14 
確定日 2003-07-11 
事件の表示 平成11年特許願第 60645号「駅案内情報の供給方法」拒絶査定に対する審判事件[平成11年11月16日出願公開、特開平11-316770]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は平成7年12月12日に出願した特願平7-323270号の一部を平成11年3月8日に新たな特許出願としたものであって、その請求項5に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成12年10月12日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項5に記載された
「複数の地図に各々対応する地図ファイルと、駅毎に各駅に係る複数の駅出口についての駅案内情報を有する駅出口情報ファイルとを予め記憶するコンピュータシステムにより、駅案内情報の供給を行なう駅案内情報の供給方法において、
操作者に対し、前記地図ファイルに基づき、複数の駅出口を含む地図を表示して、所望する駅出口の選択を促す段階と、
選択された駅出口が属する前記駅出口情報ファイルを読み出す段階と、
前記操作者に対し、読み出した駅出口情報ファイルに基づき、選択された駅出口の駅出口情報および当該駅に係る他の駅出口に対応する駅出口情報を一括して出力する段階と
を備えたことを特徴とする駅案内情報の供給方法。」にあると認める。

2.引用例に記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-93346号公報(平成7年4月7日出願公開、以下「引用例」という。)には次の事項が記載されている。
(1)「【産業上の利用分野】本発明は情報検索表示システムに係り、画面のタッチ操作に応じてコンピュータ装置等により処理した情報を画面に表示するものに関する。」(段落番号【0001】)
(2)「【従来の技術】高速自動車道路のサービスエリア等には掲示板が設けられ、道路工事の情報、催物による車両通行規制等を掲示し、利用者の便宜を図るようにしているものがあり、また、鉄道の駅等では、ホテル・旅館、あるいは観光名所の案内等を掲示し、観光客の便宜を図るようにしているものがある。通常、このような掲示板は、例えば、ペンキ等で描いたり、ポスターあるいは写真等を用いるものが多いが、掲示の内容についてさらに詳しい情報を得たい場合には案内窓口に尋ねるか、あるいは電話で問い合わせなければならず、利用者から見て、掲示だけでは充分な情報が得られないという問題がある。」(段落番号【0002】)
(3)「【作用】以上のように構成したので、本発明による情報検索表示システムにおいては、所要の通信網等より入力された情報は、所要の表示用の信号に処理されてメモリに記憶され、また、イメージスキャナで読み取った地図等の情報も前記メモリに記憶される。メモリに記憶された信号は所要の操作で読み出され、PDP等で構成された画面に表示される。そして、表示された情報の詳しい内容を知りたい場合、該当する表示に指でタッチ操作を行えば、表示画面は、タッチで指定した表示に関するより詳しい情報の画像に切り換わる。」(段落番号【0005】)
(4)「表示部9の画面には、例えば、画面の上下、および左右の各辺に赤外線等の発光部とこれに対向する受光部が設けられ、タッチされた箇所で赤外線等が遮断されたのを検知するタッチパネルが形成されており、画面へのタッチにより指定等を入力するようになっている。タッチによる入力部6よりの信号は、制御部11を介し識別部7に入力し、遮断された赤外線の位置(上下方向および左右方向)からタッチされた位置を識別する。そして、識別部7よりの信号に基づいて、制御部11を介し、メモリ部3に記憶されている表示中の画像に対応するデータにて、タッチ箇所のデータを取り出し、表示メモリ8に転送し、表示部9の表示画面をこの画像に切り換える。」(段落番号【0008】)
(5)「図2(ロ)の例は、サービスエリアの次のインターチェンジ周辺にあるホテルの案内図である。この案内図は前記イメージスキャナ5等で入力されメモリ部3に記録されているもので、例えば、「Zホテル」がどのような建物か知りたい場合、画面の「Zホテル」の表示に指等をタッチする。このタッチの位置を前記同様に識別し、制御部11を介し画像再生部4に信号出力し、相応するホテルの静止画像等の信号を光磁気ディスク等より再生し、制御部11を介し表示メモリ8に転送されている画像信号に合成し、表示画面の片隅(図の例では左下)に表示する。」(段落番号【0009】)
上記記載(5)の案内図は、図2(ロ)を参照すると地図であることは明らかであり、『「Zホテル」がどのような建物か知りたい場合、画面の「Zホテル」の表示に指等をタッチする』ということは、地図上の知りたい建物にタッチすることを意味している。また、上記記載(5)のホテルの静止画像は、上記記載(2)及び記載(3)の詳しい内容の具体例である。
以上から引用例には、
「地図と、地図上に表示されたホテル・旅館などに関する詳しい内容とを予め記憶するコンピュータ装置により、ホテル・旅館などに関する案内の詳しい情報を画面に表示する方法において、
前記地図を表示する段階と、
地図上に表示された情報の詳しい内容を知りたい部分に該当する表示にタッチすると、タッチ箇所の表示に相応する詳しい情報を光磁気ディスク等より再生する段階と、
再生した前記詳しい情報を表示する段階と
を備えたことを特徴とするホテル・旅館などの詳しい内容の表示方法。」(以下、「引用例に記載された発明」という。)が記載されているものと認められる。

3.対比
本願発明と引用例に記載された発明を対比する。
引用例に記載された発明の「コンピュータ装置」は、本願発明の「コンピュータシステム」に相当し、引用例に記載された発明の「ホテル・旅館などの案内の詳しい情報」は本願発明の「駅案内情報」と案内情報である点で一致し、引用例に記載された発明の「詳しい情報を画面に表示」することは、表示は一種の情報の供給であるから、本願発明の案内情報の供給に相当する。
引用例に記載された発明の「前記地図を表示する段階」は明らかに操作者に対するものであるから、本願発明の「操作者に対し、前記地図ファイルに基づき、複数の駅出口を含む地図を表示して、所望する駅出口の選択を促す段階」と、操作者に対し地図を表示する点で一致する。
引用例に記載された発明の「地図上に表示された情報の詳しい内容を知りたい部分に該当する表示にタッチすると、タッチ箇所の表示に相応する詳しい情報を光磁気ディスク等より再生する段階」で、タッチすることは一種の選択であるから、引用例に記載された発明の上記段階と本願発明の「選択された駅出口が属する前記駅出口情報ファイルを読み出す段階」は、選択された詳しい内容を知りたい部分の案内情報を読み出す点で一致する。
引用例に記載された発明の「再生した前記詳しい情報を表示する段階」は、操作者に対して表示することは明らかであるから、本願発明の「前記操作者に対し、読み出した駅出口情報ファイルに基づき、選択された駅出口の駅出口情報および当該駅に係る他の駅出口に対応する駅出口情報を一括して出力する段階」と、操作者に対して案内情報を出力する点で一致している。
したがって、本願発明と引用例に記載された発明は、
「地図と、地図上の案内情報とを予め記憶するコンピュータシステムにより、案内情報の供給を行う案内情報の供給方法において、
操作者に対し、地図を表示する段階と、
選択された詳しい内容を知りたい部分の案内情報を読み出す段階と、
操作者に対して案内情報を出力する段階と
を備えたことを特徴とする案内情報の供給方法」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明においては、地図は、複数の地図に各々対応する地図ファイルとして、案内情報である駅出口情報は駅出口情報ファイルとして記憶されているのに対して、引用例に記載された発明は、地図は複数ではなく、また、地図及び詳細な情報がファイルとして記憶されているか否かは明らかでない点。
(相違点2)
本願発明の案内情報は駅案内情報、具体的には駅出口情報の供給を行っており、選択された駅出口が属する前記駅出口情報ファイルを読み出し、選択された駅出口の駅出口情報および当該駅に係る他の駅出口に対応する駅出口情報を一括して出力するのに対して、引用例に記載された発明はホテル・旅館などに関する詳しい内容を供給しており、タッチ箇所の表示に相応する詳しい情報を光磁気ディスク等より再生し、詳しい内容を知りたい部分の案内情報を読み出しているが、引用例に記載された発明は、詳しい内容が駅出口情報ではなく、また、詳しい内容を一括出力していない点。
(相違点3)
本願発明は、所望する駅出口の選択を促すのに対して、引用例に記載された発明は、選択を促すことは特にしていない点。
4.当審の判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
まず、引用例に記載された発明は、地図が複数でない点について検討する。地図を管理する際に例えば、メッシュ単位・縮尺単位で複数の地図を管理することは例示するまでもなく周知技術である。引用例は、その実施例がサービスエリアの次のインターチェンジ周辺にあるホテルの案内図ではあるが、その技術内容からして一般的に地図に適用できることは当業者が容易に読みとれる事項である。してみると、引用例に記載された発明に上記周知技術を適用し、複数の地図を扱うようにすることは格別のものではない。
次に、引用例に記載された発明は、地図及び詳細な情報がファイルとして記憶されているか否かは明らかでない点について検討する。コンピュータシステムで情報を管理する場合ファイルで管理することは例示するまでもなく周知技術である。該周知技術を適用し、引用例に記載された発明の地図及び詳しい情報を記憶する際に、ファイルで管理することは当業者が容易になしえたことである。
したがって、相違点1は周知技術の寄せ集めによるものに過ぎず、格別のものではない。
(相違点2について)
まず、本願発明が駅出口情報の供給を行う点について検討する。駅には種々の案内情報があり、出口の多い駅では例えば西口、東口、あるいは一番出口、二番出口のように、出口ごとに案内情報を有すること、そしてその案内情報が有用であることは日常生活から誰もが常識として了解している事項である。
そして、地図上の案内対象を選択し、案内対象に関連付けられる案内情報を読み出して出力することは引用例に示されているのであるから、対象を駅出口とし、案内情報を駅出口に関連付けられる駅案内情報とすることは当業者が容易になし得たことである。
次に、本願発明が駅出口の駅出口情報および当該駅に係る他の駅出口に対応する駅出口情報を一括して出力する点について検討する。
コンピュータシステムで、同一種類の一連の情報の中から選択された情報を提供する場合、当該選択された情報のみでなく、その一連の情報を一括して出力することは、例えば複数の情報項目からなるウェブページの複数の項目のタイトルからどれかを選択させて、選択された項目の情報を提供する場合に、ウェブページ全体、即ち複数の項目を一括して出力することが行われていることにみられるように(ローラ・リメイ、HTML入門-WWWページの作成と公開、株式会社プレンティスホール出版、1995年6月30日、第147ページないし第157ページ参照)周知技術である。
駅の各出口の情報は、各々駅に関する同一種類の情報であるから、これを駅を単位として一連の情報として構成し、選択された出口の情報のみでなく、駅を単位として一連の各出口の情報を一括して出力させるようにし、上記周知技術と同様の構成とすることは格別のものではない。
してみると、相違点1は、従来実社会において一般的に提供されている駅出口情報を提供するにあたって周知の情報提供形態を採用したに過ぎない。したがって相違点2は格別のものではない。
(相違点3について)
コンピュータシステムにおいて、操作者に対して操作を促すことは周知技術である。引用例に記載された発明においても、タッチすることにより詳しい情報が表示されることを何らかの形で操作者に示さなければ、操作方法が直ちに了解できるものではないのだから、前記周知技術を適用して何らの形で選択を促すようにして操作者の利便性を向上する程度のことは、当業者が適宜行うべき事項である。したがって相違点3は格別のものではない。

5.むすび
以上のとおりであるので、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-04-01 
結審通知日 2003-04-22 
審決日 2003-05-07 
出願番号 特願平11-60645
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高瀬 勤  
特許庁審判長 徳永 民雄
特許庁審判官 村上 友幸
平井 誠
発明の名称 駅案内情報の供給方法  
代理人 川▲崎▼ 研二  

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