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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C03C
審判 全部申し立て 発明同一  C03C
審判 全部申し立て 2項進歩性  C03C
管理番号 1079548
異議申立番号 異議2001-71960  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-06-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-07-19 
確定日 2003-04-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3126188号「フォトマスク用石英ガラス基板」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3126188号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 
理由 1.本件の経緯
本件特許第3126188号は、平成3年11月15日の出願であって、平成12年11月2日(公報発行平成13年1月22日)に設定登録され、その後、平成13年7月19日に須田武から特許異議の申立を受けたものであって、その後平成13年12月12日(発送日平成14年1月8日)付で取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年3月11日に訂正請求がなされ、その後平成14年10月21日(発送日平成14年11月1日)に再度の取消理油通知がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正の内容
(1)訂正事項a:本件特許明細書中特許請求の範囲の【請求項1】を、「ガラス形成原料を加熱加水分解して得られる石英ガラス微粒子を基材に堆積・成長させた多孔質石英ガラス体を、透明ガラス化する温度以下の温度域で水蒸気分圧の低い雰囲気中に一定時間加熱保持した後、透明ガラス化温度に昇温加熱して透明ガラス化することにより得た石英ガラス体からなり、ハロゲン含有量が10ppm以下、OH含有量が100ppm以下、重金属およびアルカリ金属の含有量の総計がlppm以下であって、徐冷点が1150℃以上であることを特徴とするフォトマスク用石英ガラス基板。」
と訂正する。
(2)訂正事項b:明細書の段落【0008】を、「【課題を解決するための手段】本発明は前述の課題を解決するべくなされたものであり、ガラス形成原料を加熱加水分解して得られる石英ガラス微粒子を基材に堆積・成長させた多孔質石英ガラス体を透明ガラス化する温度以下の温度域で水蒸気分圧の低い雰囲気中に一定時間加熱保持した後、透明ガラス化温度に昇温加熱して透明ガラス化することにより得た石英ガラス体からなり、ハロゲン含有量がl0ppm以下、OH含有量が100ppm以下、重金属およびアルカリ金属の含有量の総計がlppm以下であって、徐冷点が1150℃以上であることを特徴とするフォトマスク用石英ガラス基板を提供するものである。」と訂正する。
(3)訂正事項c:明細書の段落【0017】を、「かかる石英ガラス基板の製造方法としては、予めガラス形成原料を加熱加水分解して得られる石英ガラス微粒子を基材に堆積・成長させた多孔質石英ガラス体を透明ガラス化する温度以下の温度域で水蒸気分圧の低い雰囲気中に一定時間加熱保持した後、透明ガラス化温度に昇温加熱して透明ガラス化して石英ガラス体とする方法による。」と訂正する。

2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1について、フォトマスク用石英ガラス基板を構成する石英ガラス体の製造方法を限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また明細書の段落【0017】の記載に基づく限定を加えて特定したものであるから、新規事項を追加するものでもなく、さらに実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
上記訂正事項b及びcは、特許請求の範囲の記載の訂正である上記訂正事項aに整合させて、発明の詳細な説明の記載を訂正するものにすぎないから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、かつ上記訂正事項aの場合と同様に、新規事項を追加するものでも実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。

2-3.まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.訂正された本件発明に対する取消理由について
上記2で示したように、上記訂正は認められるから、本件の請求項1ないし4に係る発明は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲請求項1ないし4に記載されたとおりのものである。
これに対して、平成14年10月21日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは何らの応答もない。
そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件特許は、この取消理由によって取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
フォトマスク用石英ガラス基板
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス形成原料を加熱加水分解して得られる石英ガラス微粒子を基材に堆積・成長させた多孔質石英ガラス体を、透明ガラス化する温度以下の温度域で水蒸気分圧の低い雰囲気中に一定時間加熱保持した後、透明ガラス化温度に昇温加熱して透明ガラス化することにより得た石英ガラス体からなり、ハロゲン含有量が10ppm以下、OH含有量が100ppm以下、重金属およびアルカリ金属の含有量の総計が1ppm以下であって、徐冷点が1150℃以上であることを特徴とするフォトマスク用石英ガラス基板。
【請求項2】
基板の外径(円形の場合はその直径、矩形の場合は短辺の長さ)をDとするとき、基板の面内中心を中心とし半径が0.4×Dの円で囲まれる領域内の屈折率の変動幅が3×10-6以下である請求項1に記載のフォトマスク用石英ガラス基板。
【請求項3】
プラズマエッチング処理前後で波長230〜300nmの範囲での吸光係数の増加が0.005cm-1以下である請求項1または2に記載のフォトマスク用石英ガラス基板。
【請求項4】
248nmのKrFエキシマレーザーを200mJ/cm2・pulse×200Hzの照射強度で、10万J/cm2の累積照射量まで照射した後の吸光係数の増加が0.005cm-1以下である請求項1、2または3に記載のフォトマスク用石英ガラス基板。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、フォトマスク用石英ガラス基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
石英ガラスは、近赤外から真空紫外域までの広範囲の波長にわたって透明な材料であること、並びに熱膨張率が極めて小さく寸法安定性に優れていること、さらに化学的な耐久性に優れていることのために、LSIのフォトリソグラフィ工程等に用いられるフォトマスク用基板材料として最適であり、広く用いられている。
【0003】
一方、近年のLSIの集積度の高密度化の進展は目ざましく、そのための加工技術の微細化への要求・期待も大きなものがある。今後、DRAMの集積度として、16M〜64Mへ移行していくにあたっては、フォトリソグラフィ技術についても、露光波長の短波長化や位相シフト法の実用化が焦眉の課題となっている。
【0004】
かかる背景のもと、位相シフト法の実用化に向けては、従来にも増してより高機能で高品位なフォトマスクが求められており、そのための製造プロセスも、従来の技術、すなわちスパッタ法による遮光膜であるクロム膜の形成やフォトレジストを用いてのウエット/ドライエッチングによるパターニングといった比較的低温度域のみのプロセスから、より高温のプロセスを採用するニーズが生じてきている。
【0005】
また、露光波長の短波長化に向けては、今後エキシマレーザーによる露光が実用化されると予測されているが、従来の石英ガラス基板の場合、エキシマレーザー照射により誘起される構造欠陥に伴う波長230〜300nm域での吸収増加が露光量の低下をもたらし、さらには、これら構造欠陥に基づく蛍光発光が迷光としてレジストを感光させ、シャープなマスクパターンの形成を阻害するといった問題を有している。
【0006】
さらに、マスクパターンの超微細化に伴い、基板材料の光学的均質性についても充分な配慮をする必要が生じている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前述の問題点を解消し、位相シフト法や露光波長の短波長化を実用化する上で有用な、フォトマスク用石英ガラス基板を提供するにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は前述の課題を解決するべくなされたものであり、ガラス形成原料を加熱加水分解して得られる石英ガラス微粒子を基材に堆積・成長させた多孔質石英ガラス体を、透明ガラス化する温度以下の温度域で水蒸気分圧の低い雰囲気中に一定時間加熱保持した後、透明ガラス化温度に昇温加熱して透明ガラス化することにより得た石英ガラス体からなり、ハロゲン含有量が10ppm以下、OH含有量が100ppm以下、重金属およびアルカリ金属の含有量の総計が1ppm以下であって、徐冷点が1150℃以上であることを特徴とするフォトマスク用石英ガラス基板を提供するものである。
【0009】
本発明のフォトマスク用石英ガラス基板においては、基板の外径(円形の場合はその直径、矩形の場合は短辺の長さ)をDとするとき、基板の面内中心を中心とし半径が0.4×Dの円で囲まれる領域内の屈折率の変動幅が3×10-6以下であることが好ましい。
【0010】
また本発明のフォトマスク用用石英ガラス基板においては、プラズマエッチング処理前後で、波長230〜300nmの範囲での吸光係数の増加が0.005cm-1以下であることが好ましい。
【0011】
また本発明のフォトマスク用石英ガラス基板においては、248nmのKrFエキシマレーザーを200mJ/cm2・pulse×200Hzの照射強度で、10万J/cm2の累積照射量まで照射した後の吸光係数の増加が0.005cm-1以下であることが好ましい。
【0012】
本発明において、フォトマスク用石英ガラス基板に含有されるハロゲン量は、10ppm以下である。これを超えるハロゲンが含有される場合には、耐熱性が低下する。また、OH含有量は、100ppm以下であり、好ましくは50ppm以下である。100ppmを超えるOH量を含有する場合には、ハロゲンと同じく耐熱性が低下する。重金属およびアルカリ金属の含有量については、その総和が1ppm以下である。1ppmを超えて含有する場合には、短波長領域での分光透過率の低下をもたらす。また、徐冷点とはガラスの粘度が1013ポイズを示す温度であるが、これは1150℃以上である。かかる温度以上の徐冷点を有すれば、フォトマスク作成上のプロセス温度として約1000℃を採用できる。
【0013】
通常フォトマスクの使用条件としては、基板面内の中央部80%程度を有効範囲とすることから、少なくともかかる範囲においては、面内の屈折率の変動幅が3×10-6以下であることが好ましい。かかる変動幅を超える場合には、マスクパターンの線幅が微細化した場合にシャープなパターンの形成が困難となるために好ましくない。
【0014】
また、プラズマエッチング処理前後で、波長230〜300nmの範囲での吸光係数の増加が0.005cm-1以下であることが好ましい。ここに、吸光係数αは、透過光量をI、入射光量をI0、反射率をR、ガラス基板の厚みをt(cm)とするとき、次式で定義される値である。
I/I0=(1-R)2・exp(-α・t)
ここに、吸光係数の増加が、0.005cm-1以下であれば、一般的なフォトマスク基板のサイズである、#6025(6インチ角、板厚0.25インチ)での透過率の減少は0.3%程度であり、また、これに伴う蛍光発光も、入射光量の10万分の1から100万分の1程度となり、実用上の問題を生じない。
【0015】
また、エキシマレーザー耐性については、248nmのKrFエキシマレーザーを200mJ/cm2・pulse×200Hzの照射強度で、10万J/cm2の累積照射量まで照射した後の吸光係数の増加が0.005cm-1以下であることが好ましい。
【0016】
通常、フォトマスクの寿命としては、累積照射量として、約10万J/cm2と見積もられている。したがって、0.005cm-1以下の吸光係数の増加であれば、約10万J/cm2照射後であっても、透過率の変化は、上述のごとく0.3%程度であり、蛍光発光についても入射光量の10万分の1から100万分の1程度であることから実用上支障をきたさない。
【0017】
かかる石英ガラス基板の製造方法としては、予めガラス形成原料を加熱加水分解して得られる石英ガラス微粒子を基材に堆積・成長させた多孔質石英ガラス体を透明ガラス化する温度以下の温度域で水蒸気分圧の低い雰囲気中に一定時間加熱保持した後、透明ガラス化温度に昇温加熱して透明ガラス化して石英ガラス体とする方法による。
【0018】
用いられるガラス形成原料としてはガス化可能な原料であれば特に制限されるものではないが、SiCl4、SiHCl3、SiH2Cl2、Si(CH3)Cl3等の塩化物、SiF4、SiHF3、SiH2F2等のフッ化物、SiBr4、SiHBr3等の臭化物、SiI4の沃化物等のハロゲン化珪素化合物が作業性やコストの面から好ましい。多孔質石英ガラス体は、これらのガラス形成原料を通常の酸水素火炎中で加水分解し、基材上に堆積させて形成される。
【0019】
このようにして得られた多孔質石英ガラス体は、ついで低水蒸気分圧雰囲気下で一定時間加熱保持された後、透明ガラス化温度まで昇温されて透明ガラス化して石英ガラスとなる。すなわち、例えば、多孔質石英ガラス体は雰囲気制御可能な電気炉内に予め装着された後、一定の昇温速度で加熱される。ついで所定の温度に到達の後、乾燥ガスを雰囲気中に導入し、多孔質石英ガラス体が接する雰囲気を置換することにより雰囲気中の水蒸気分圧を所定値以下に低減する。その水蒸気分圧としては、0.002mmHg以下であることが好ましく、これを超える場合には最終的に得られる石英ガラス中のOH量を低減させることが困難なため好ましくない。
【0020】
また加熱保持する温度域としては、800〜1250℃の範囲内が好ましく、この温度域より低い温度では実質的な効果が得られず、またこの温度域より高い温度では多孔質石英ガラス体の表面のガラス化が進行するため、多孔質石英ガラス体内部を所望の低水蒸気分圧雰囲気に置換することができず好ましくない。また、この温度域であれば、加熱処理の方法としては、一定温度に保持してもよく、またこの温度域内を所定の時間の範囲内で昇温させながら処理してもよい。
またこの温度域での保持時間は、保持温度に依存するため一概に規定することはできないが1〜30時間程度が好ましく、これより短時間の場合には実質的な効果がなく、またこれより長時間かけた場合にもその効果は変わらないために生産効率等を考慮に入れると好ましくない。
【0021】
乾燥ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン等を通常使用できるが、乾燥ガスとして使用できれば必ずしもこれらのガスに限定されるものではない。
ついでこのような加熱処理の後、多孔質石英ガラス体は透明ガラス化温度まで昇温されて透明ガラス化される。透明ガラス化温度としては、1350〜1500℃の範囲から採用することが好ましい。さらに、加熱処理と透明ガラス化処理は、それぞれ別の加熱装置で行われてもよいが、その場合には、移送時に水分が吸着することを防止する等の処置を講じることが好ましい。したがって、加熱処理と透明ガラス化を同一の設備で行うことが好ましい。
【0022】
こうして得られた石英ガラス体を軟化点以上の温度に加熱し、所望の形状に成形加工を行い石英ガラスブロックを製造する。成形加工の温度域は、1650〜1800℃の範囲から選択することが好ましい。
1650℃より低い温度では石英ガラスの粘度が高いため、実質的に自重変形が行われず、またSiO2の結晶相であるクリストバライトの成長がおこりいわゆる失透が生じるため好ましくなく、1800℃より高い温度では、SiO2の昇華が無視できなくなり好ましくない。
また、石英ガラス体の自重変形を行わせる方向は、特に規定されないが多孔質石英ガラス体の成長方向と同一であることが好ましい。
こうして得られるガラスブロックを研削、スライスした後、研磨してガラス基板とする。なお、透過率の改善のために必要に応じ、スライスした基板を水素雰囲気中で熱処理してもよい。
【0023】
以上のような工程を経て得られる石英ガラスは、石英ガラス中に含有されるOH量が100ppm以下となり、該ガラス中のOH量の変動幅はほとんどの領域において±5ppm以内であり均質性に優れる石英ガラスである。
また、本発明の石英ガラスは、ガラス形成原料として高純度な合成原料が使用可能なこと、溶融工程を経ないためルツボ等からの不純物の混入がないこと等から、鉄、ニッケル等の重金属元素やナトリウム、カリウム等のアルカリ金属元素の不純物総量が1ppm以下と極めて高純度であり、KrFレーザーやArFレーザー等の紫外線に対しても蛍光発光やソーラリゼーション等が少なく耐紫外線性にも優れている。
【0024】
以下、本発明の詳細についてさらに実施例により説明するが、当然のことながら本発明の内容はこれら実施例に限定されるものではない。
【0025】
【実施例】
[実施例1]
公知の方法により、SiCl4を酸水素火炎中で加熱加水分解させて形成した直径35cm、長さ100cmの多孔質石英ガラス体を室温で雰囲気制御可能な電気炉内に設置した。ついで露点温度-70℃の窒素ガスで電気炉内雰囲気を置換した後、露点温度-70℃の窒素ガスを流しながら500℃/hrの昇温速度で1000℃まで昇温した。引き続き昇温速度を50℃/hrとし、1250℃まで昇温して、その温度で10hr保持した。こうして得られた熱処理済みの多孔質石英ガラス体を透明ガラス化のための炉内最高温度が1450℃に制御された電気炉内上部に設置し、炉内を露点温度が-70℃のヘリウムガスで置換した後、80cm/hrの速度で下降させながら最高温度域を通過させて透明ガラス化を行った。
【0026】
こうして得られた透明石英ガラスを、カーボン製発熱体を有する電気炉内で、軟化点以上の1750℃に加熱して自重変形を行わせ、170mm×170mm×400mmのブロック形状に成形した。
こうして得られた石英ガラスブロックの長手方向の中心部より、170mm×170mm×57mmの石英ガラスブロックを切り出し、その中心部140mmφについて精密干渉計(ZygoIV)により屈折率分布を評価した結果を均質性(Δn)として表1に示す。
またOH量およびその分布幅は、170mm×170mm×400mm石英ガラスブロックの、屈折率分布を評価した部分のすぐ隣の場所より、2mm厚みのガラス板を切り出し日本分光社製簡易FTIR装置により3700cm-1の吸収により定量した。Cl含有量は得られた石英ガラスをアルカリ溶融したのち、イオンクロマトグラフィ法により定量した。また、徐冷点は、サンプルサイズ2.4mm×5mm×60mmのサンプルを切り出し、スパン52mmで、ビームベンディング法により測定した。結果を表1に示す。
表1からわかるように、本実施例によればフォトマスク用として好適な石英ガラスが得られた。
【0027】
[実施例2]
実施例1と同一の方法により作成したガラスブロックから、10mm×10mm×30mmのサンプルを切り出した。ついで、100%水素雰囲気中で14時間熱処理した後、相対する10mm×10mmの面を鏡面研磨し、KrFエキシマレーザーを200mJ/cm2・pulse、200Hzの条件で総照射量が10万J/cm2となるまで照射した後、230〜300nmの範囲の透過率を測定した。照射前の透過率と比較したところ透過率が0.5%減少していた。この値から吸光係数の増加を見積もると0.002cm-1であった。
【0028】
[実施例3]
実施例1と同一の方法により作成したガラスブロックから10mm×10mm×30mmのサンプルを切り出した。ついで、100%水素雰囲気中で14時間熱処理した後、6面すべてを鏡面研磨し、5分間のドライエッチング処理を行った。ドライエッチング処理は東京応化製ドライエッチャー(S-600)を用い、雰囲気は、酸素/四塩化炭素雰囲気0.35torr、投入電力は200Wであった。プラズマエッチング前後の230〜300nmの透過率を比較したところ、透過率が0.8%減少していた。吸収係数の増加を見積もると0.003cm-1であった。
【0029】
[比較例]
1250℃での熱処理を行わない他は、実施例1と同一の方法で石英ガラスブロックを作製した。その中心部140mmφの屈折率分布、OH量およびその分布幅、Cl含有量を表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
【発明の効果】
上述したように、本発明のフォトマスク用石英ガラス基板は、徐冷点が高く耐熱性に優れているので、高温のプロセスにも使用可能であり、かつ、プラズマエッチング処理前後での短波長側の吸光係数の増加が小さく、実質的に蛍光発光がない優れた特徴を有する。
【0032】
また、光学的均質性にも優れた特徴を有する。
また、KrFエキシマレーザーを使用できるフォトマスク用基板としても優れた特徴を有する。
 
訂正の要旨 (a)訂正事項a
明細書【特許請求の範囲】の【請求項1】に係る記載の
「ハロゲン含有量が・・石英ガラス基板。」
を、
「ガラス形成原料を加熱加水分解して得られる石英ガラス微粒子を基材に堆積・成長させた多孔質石英ガラス体を、透明ガラス化する温度以下の温度域で水蒸気分圧の低い雰囲気中に一定時間加熱保持した後、透明ガラス化温度に昇温加熱して透明ガラス化することにより得た石英ガラス体からなり、ハロゲン含有量が10ppm以下、OH含有量が100ppm以下、重金属およびアルカリ金属の含有量の総計が1ppm以下であって、徐冷点が1150℃以上であることを特徴とするフォトマスク用石英ガラス基板。」
に訂正する。
(b)訂正事項b
明細書【0008】に記載の「【課題を解決するための手段】・・ものである。」を、
「【課題を解決するための手段】
本発明は前述の課題を解決するべくなされたものであり、ガラス形成原料を加熱加水分解して得られる石英ガラス微粒子を基材に堆積・成長させた多孔質石英ガラス体を、透明ガラス化する温度以下の温度域で水蒸気分圧の低い雰囲気中に一定時間加熱保持した後、透明ガラス化温度に昇温加熱して透明ガラス化することにより得た石英ガラス体からなり、ハロゲン含有量が10ppm以下、OH含有量が100ppm以下、重金属およびアルカリ金属の含有量の総計が1ppm以下であって、徐冷点が1150℃以上であることを特徴とするフォトマスク用石英ガラス基板を提供するものである。」に訂正する。
(c)訂正事項c
明細書【0017】に記載の「かかる・・作成できる。」を、
「かかる石英ガラス基板の製造方法としては、予めガラス形成原料を加熱加水分解して得られる石英ガラス微粒子を基材に堆積・成長させた多孔質石英ガラス体を透明ガラス化する温度以下の温度域で水蒸気分圧の低い雰囲気中に一定時間加熱保持した後、透明ガラス化温度に昇温加熱して透明ガラス化して石英ガラス体とする方法による。」に訂正する。
異議決定日 2003-02-13 
出願番号 特願平3-327151
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (C03C)
P 1 651・ 113- ZA (C03C)
P 1 651・ 161- ZA (C03C)
最終処分 取消  
前審関与審査官 前田 仁志  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 岡田 和加子
山田 充
登録日 2000-11-02 
登録番号 特許第3126188号(P3126188)
権利者 旭硝子株式会社
発明の名称 フォトマスク用石英ガラス基板  
代理人 藤村 元彦  

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