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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  G06F
管理番号 1079657
異議申立番号 異議2000-71353  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-02-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-04-04 
確定日 2003-06-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第2956661号「流通支援設備」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2956661号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2956661号の請求項1ないし12に係る発明は、平成9年7月14日に特許出願され、平成11年7月23日にその特許の設定登録がなされ、その後、大角修三より本件の請求項1ないし6に係る発明に対して特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年3月12日に訂正請求がなされ、平成14年2月26日付けで、「訂正を認める。特許第2956661号の請求項1ないし6に係る特許を取り消す。」旨の異議の決定がなされた。
特許権者は、当該特許異議の決定を取り消すべき旨の訴をし、その訴は平成14年(行ケ)第181号として審理された。
特許権者は、上記訴の提起後の平成14年12月18日に本件特許について訂正の審判(訂正2002-39271)を請求し、当該訂正の審判は、平成15年2月6日付けで、「本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。」旨の審決がなされ、その審決は確定した。
その審決の確定により、上記訴えは、「本件発明の要旨を訂正審決による訂正前の特許請求の範囲のとおりに認定したことは、結果的に誤りであったことになり、この誤りが決定の結論に影響を及ぼすことは明らかである。」との理由により、特許異議の決定を取り消す旨の判決がなされ(平成15年4月24日判決言渡)、その判決は確定した。

2.本件特許発明
本件請求項1ないし6に係る発明は、平成14年12月18日に本件特許について訂正の審判が請求され、その後確定した訂正特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された、次のとおりのものである。
なお、本件特許についての前記訂正の審判において、訂正を認める旨の審決が前述のとおり確定したので、平成13年3月12日付けの訂正請求書は取り下げられたものとみなす。
「【請求項1】ユーザーがそれぞれ使用するユーザー用機器と、各ユーザーと商談を行う立場にあるディーラーがそれぞれ使用するディーラー用機器と、これらディーラー用機器および前記ユーザー用機器とそれぞれ通信可能なネットワークセンター用のコンピュータシステムとを利用する流通支援設備であって、
前記ネットワークセンター用のコンピュータシステムに、
前記ディーラー用機器と前記コンピュータシステムとの間の交信内容に基いて各ディーラーの各ユーザーに対する個別取引条件を特定し、ユーザー別商品データを作成するためのユーザー管理手段と、
前記ユーザー用機器から前記コンピュータシステムに接続操作が行われた場合にユーザーおよびこのユーザーに対応するディーラーを特定し、このディーラー特有の応答信号を前記ユーザー用機器に返信する受注代行手段と、
前記ユーザー用機器から前記コンピュータシステムに発信された発注情報に基いてユーザーが発注した商品を特定し、その商品を前記個別取引条件に見合う態様で前記ユーザーに提供できるようにするための処理を行う情報処理手段とを具備させてなることを特徴とする流通支援設備。
【請求項2】ユーザーがそれぞれ使用するユーザー用機器と、各ユーザーと商談を行う立場にあるディーラーがそれぞれ使用するディーラー用機器と、これらディーラー用機器および前記ユーザー用機器とそれぞれ通信可能なネットワークセンター用のコンピュータシステムとを利用する流通支援設備であって、
前記ネットワークセンター用のコンピュータシステムに、
前記ディーラー用機器と前記コンピュータシステムとの間の交信内容に基いて各ディーラーの各ユーザーに対する個別取引条件を特定し、その個別取引条件を商品関連データに付加してユーザー別商品データを作成するためのユーザー管理手段と、
前記ユーザー用機器から前記コンピュータシステムに接続操作が行われた場合にユーザーおよびこのユーザーに対応するディーラーを特定し、このディーラー特有の応答信号を前記ユーザー用機器に返信する受注代行手段と、
前記ユーザー用機器から前記コンピュータシステムに発信された発注情報に基いてユーザーが発注した商品を特定し、その商品を前記個別取引条件に見合う態様で前記ユーザーに提供できるようにするための処理を行う情報処理手段とを具備させてなり、
前記受注代行手段による応答信号が、少なくとも特定ディーラーのウエルカム画面を対応するユーザー用機器のディスプレーに表示させるための信号と、対応するユーザー別商品データ等に対する商品検索用画面を前記ディスプレーに表示させるための信号を含んでいることを特徴とする流通支援設備。
【請求項3】ユーザーがそれぞれ使用するユーザー用機器と、各ユーザーと商談を行う立場にあるディーラーがそれぞれ使用するディーラー用機器と、これらディーラー用機器および前記ユーザー用機器とそれぞれ通信可能なネットワークセンター用のコンピュータシステムとを利用する流通支援設備であって、
前記ネットワークセンター用のコンピュータシステムに、
前記ディーラー用機器と前記コンピュータシステムとの間の交信内容に基いて各ディーラーの各ユーザーに対する個別取引条件を特定し、その個別取引条件を商品関連データに付加してユーザー別商品データを作成するためのユーザー管理手段と、
前記ユーザー用機器から前記コンピュータシステムに接続操作が行われた場合にユーザーおよびこのユーザーに対応するディーラーを特定し、このディーラー特有の応答信号を前記ユーザー用機器に返信する受注代行手段と、
前記ユーザー用機器から前記コンピュータシステムに発信された発注情報に基いてユーザーが発注した商品を特定し、その商品を前記個別取引条件に見合う態様で前記ユーザーに提供できるようにするための処理を行う情報処理手段と、
前記ユーザー別商品データを利用して個別取引条件を加味したユーザー別専用カタログを編集するカタログ編集手段とを具備させてなることを特徴とする流通支援設備。
【請求項4】情報処理手段が、受注代行手段を通して受注した商品をディーラー用機器から確認し得るように開示する受注状況確認手段と、ディーラー用機器からコンピュータシステムに向けて手配指令が送信された受注商品に関しメーカー、配送会社等の商品配送組織に対して商品配送指令を出力する配送手配手段とを含んでいる請求項1、2又は3記載の流通支援設備。
【請求項5】情報処理手段が、ユーザーが購入した商品に関する経理処理をディーラーに代わって実行する会計代行手段を含んでいる請求項1、2、3、又は4記載の流通支援設備。
【請求項6】情報処理手段が、ユーザーが購入した商品に関する情報を蓄積して定番分析、売筋分析、価格分析等の情報処理を行うための購買データ管理手段を含んでいる請求項1、2、3、4又は5記載の流通支援設備。」

3.特許異議申立ての概要
特許異議申立人大角修三は、甲第1号証(特開平9-167185号公報)、及び甲第2号証(特表平8-500201号公報)を提出し、訂正前の本件請求項1ないし6に係る発明は、甲第1号証、及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、特許を取り消すべきであると主張している。

4.引用刊行物に記載された発明
本件特許に対して、特許異議申立人が提出した刊行物1(特開平9-167185号公報)、刊行物2(特表平8-500201号公報)、及び上記訴の手続において当審が知ることとなった刊行物3(特開平5-266033号公報)、刊行物4(特開平6-141100号公報)には、それぞれ以下の事項が記載されている。

(刊行物1)
(ア)「以下の要素を有するコンピュータネットワークを用いたオンラインショッピングシステム
(a)商品の情報を記憶し、ショッピングモール用ネットワークを介して商品のショッピングモールを提供する販売店システム、(b)上記ショッピングモール用ネットワークに接続され、上記ショッピングモール用ネットワークに対して上記販売店システムにより提供された上記ショッピングモールから、購入する商品を選択する商品選択部と、選択した商品の情報を上記販売店システムからショッピングモール用ネットワークを介してダウンロードするダウンロード部と、上記ショッピングモール用ネットワークとは異なる決済用ネットワークを設定し、上記決済用ネットワークを用いて選択した商品の情報と、その商品の代金決済の情報と、その商品を選択したユーザの情報とを、第1のプロトコルに基づいて伝送する伝送部とを備えたユーザシステム、(c)上記ユーザシステムから上記決済用ネットワークを介して選択した商品の情報と、その商品の代金決済の情報と、その商品を選択したユーザの情報とを受信し、決済処理を行うサービスセンタ。」(特許請求の範囲の請求項1)
(イ)「図1において、A販売店のA販売店システム2aは、ショッピングモールA3aをコンピュータネットワーク4に接続して、ユーザに対してショッピング情報を提供している。同じように、B販売店のB販売店システム2bはショッピングモールB3bを、C販売店のC販売店システム2cはショッピングモールC3cを、それぞれコンピュータネットワーク4に接続して、ユーザに対してショッピング情報を提供している。ユーザは、コンピュータを有するユーザシステム5をコンピュータネットワーク4に接続して、上記ショッピングモールA3a〜ショッピングモールC3cのショッピング情報を参照し、購入する商品の注文を行うことができる。」(公報第5頁第7欄第46行目〜第8欄第8行目)
(ウ)「各販売店システム2a〜2cは、サービスセンタ7より受信した商品データ、個人データ22を基に、ユーザ宛に注文された商品の配達23を行う。」(公報第5頁第8欄第20〜23行目)
(エ)「各販売店システム2a〜2cは、発送処理部19を備えている。この発送処理部19は、例えば、パーソナルコンピュータ又は業務用端末に備えられている。発送処理部19は、サービスセンタ7より受信した商品データ、個人データ22から発送指示を出力し、各販売店は、発送指示を基にユーザに対して商品配達23を行う。例えば、小包郵便によって商品の配達を行う。」(公報第5頁第8欄第38〜44行目)
(オ)「図4は、この発明におけるショッピングモールAの案内画面の一例を示す図である。案内画面30は、ユーザがコンピュータネットワーク4を介してA販売店システム2aのショッピングモールA3aに、PCを接続すると、始めにPCの画面に表示される案内画面である。案内画面30は、ユーザに対してショッピングモールA3aにおいて、オンラインショッピングを行う時の利用方法を説明する画面である。」(公報第6頁第10欄第18〜25行目)
(カ)「図5は、この発明におけるショッピングモールAにおける商品リスト画面の一例を示す図である。商品リスト画面31は、ショッピングモールA3aにおいて、販売中の商品リストを表示している画面である。ユーザは、商品リスト画面31を参照しながら、購入を希望する商品を「MARK」をクリックして選択する。この作業は、商品選択部8が行うものである。」(公報第6頁第10欄第26〜32行目)
(キ)「始めに、ユーザは、ユーザのコンピュータをコンピュータネットワーク4であるInternetに接続し、オンラインショッピングを選択する。そして、販売店システム2a〜2cが提供しているショッピングモールA3a〜ショッピングモールC3cの中から、ショッピングをしたいモールを選択し接続する(S1)。Internetの接続及びショッピングモールとの接続は、通常のInternetにおけるオンラインショッピングの接続方法と同様の方法とする。例えば、ユーザがショッピングモールA3aを選択すると、図4のショッピングモールAにおける案内画面30がユーザのPCに表示される。」(公報第7頁第11欄第50行目〜第12欄第11行目)
(ク)「商品データ、個人データ22をサービスセンタ7より受信した販売店システムは、発送処理部19によって発注指示を出力し、注文された商品をユーザに対して配達する(図1における商品配達23である)(S20)。この時、商品毎に商品の発送方法や発送料金が商品データに格納されていれば、その情報を参照して発送処理を迅速に行うことができる。」(公報第8頁第14欄第50行目〜第9頁第15欄第7行目)
ここで、上記「販売店」は、「ユーザ」と商談を行う立場にあることは、いうまでもない。
そうすると、刊行物1には、
ユーザがそれぞれ使用するユーザシステムと、各ユーザと商談を行う立場にある販売店がそれぞれ使用する販売店システムと、これら販売店システムおよび前記ユーザシステムとを通信可能なように接続するコンピュータネットワークとを利用するオンラインショッピングシステムであって、
前記販売店システムに、
ユーザシステムからコンピュータネットワークを介して販売店システムに接続操作が行われた場合に、販売店システムは、この販売店特有の案内画面をユーザシステムに返信する手段と、
前記ユーザシステムから前記コンピュータネットワークを介して前記販売店システムに発信された発注情報に基いてユーザが発注した商品を特定し、その商品を前記ユーザに提供できるようにするための処理を行う処理手段とを具備させてなるオンラインショッピングシステム、
が記載されているといえる。

(刊行物2)
(ケ)「本システムは前記中央サプライヤーに配置された中央計算機を備える。この中央計算機を例えばモデムを経て顧客、部門および外部販売業者の現場にあるコンピュータに連結する。これらの連結されたシステムを前記中央計算機と組合せると、顧客注文のデータ処理必要条件の取扱い、そのような注文を適当な部門または外部販売業者への経路指定、発注ずみ製品の受渡し、送状の作成と支払い、顧客アシスタントと報告書の起票のできるデータ処理網を形成する。」(公報第4頁第22行目〜第5頁第1行目)
(コ)「前記中央計算機100のデータベースに保守されている主要製品カタログ126は大量で、おのおのの顧客は準備段階中、その許可ユーザーに利用させてもよいカタログの部分を選択する。許可された顧客の従業員は前記オンラインサブシステムにログオンして、顧客データベースと実時間で対話して製品を注文、保留発注書の状態を調べて、カタログから直接注文する。
顧客従業員が入力したデータを顧客データベース106に記憶させる。」(公報第6頁第26行目〜第7頁第5行目)
(サ)「図4は取引きプログラム1000を通る処理流れを高水準で示す流れ図である。ステップ1002では、顧客がデータを検索し、顧客計算機システム104の顧客データベース106に入力する。」(公報第7頁第16〜18行目)
(シ)「主要品目カタログ126を個々の販売業者106からステップ1020で受取った情報を用いて更新する。主要品目カタログ情報が個々の顧客例えば個々の品目注文の許可を受けたものについてのデータを含んでいるので、おのおのの顧客データベースに記憶された顧客カタログは前記主品目カタログから容易に更新される。」(公報第8頁第13〜17行目)
(ス)「同様に、顧客カタログ(SEQ CUS UPDATES)1222についての最新情報をカタログデータベース136の更新ファイル項目1226に処理する。主計算機のマスタカタログデータベース126が顧客別、価格別におのおののカタログ品目と相関するので、個々の顧客カタログを容易に更新させる。そのうえ、特定の顧客についてのデータファイル例えば、顧客品目で売却先、請求先、仕向先および宛先1228を主要計算機システム100で更新し、それをその後、顧客計算機に伝送し、顧客データベースの同様のデータベースファイル1232を更新する(ステップ1230)。」(公報第11頁第12〜19行目)
(セ)「おのおのの販売者品目に対する顧客への価格をステップ1562で中央サプライヤーにより販売者原価ファイル1564からのデ一タを用い設定する。前記おのおのの品目の価格を個々の顧客に対して設定し、顧客品目カタログと品目価格1556のファイルにロードする。同様に、顧客価格と品目ファイルを販売業者品目デ一タがステップ1568で変更できる時に更新できる。」(公報第16頁第4〜8行目)
ここで、上記(ケ)、及び(コ)の記載からみて、上記刊行物2に記載されたシステムは、商品を注文するシステムであることが明らかであるから、「商品注文システム」であるといえる。
また、上記(ケ)〜(セ)の記載からみて、上記「商品注文システム」は、基本的には、「中央サプライヤー」と「各顧客」の間で取引を行うものであり、「中央サプライヤー」が「各顧客」と商談を行う立場にあることが、明らかである。
また、上記(ケ)、(シ)、(ス)及び(セ)の記載からみて、上記「商品注文システム」においては、「中央サプライヤーの中央計算機システム」が、「各顧客に対する取引条件を特定し、その個別取引条件を商品関連データに付加して顧客別商品データを作成する顧客管理手段」、及び「顧客カタログを編集するカタログ編集手段」を具備していることが、明らかである。
また、上記(コ)、及び(サ)の記載からみて、上記「商品注文システム」においては、「中央サプライヤーの中央計算機システム」が、「商品データ等に対する商品検索用画面を顧客計算機システムのディスプレーに表示させるための手段」を具備していることが、明らかである。
そうすると、刊行物2には、
顧客がそれぞれ使用する顧客計算機システムと、各顧客と商談を行う立場にある中央サプライヤーが使用する中央サプライヤーの中央計算機システムとをそれぞれ通信可能とする商品注文システムであって、
前記中央サプライヤーの中央計算機システムに、
前記各顧客に対する取引条件を特定し、その個別取引条件を商品関連データに付加して顧客別商品データを作成する顧客管理手段と、
前記顧客計算機システムから前記中央計算機システムに接続操作が行われた場合に、この中央サプライヤー特有の応答信号を前記顧客計算機システムに返信する受注手段と、
前記顧客計算機システムから前記中央サプライヤーの中央計算機システムに発信された発注情報に基いて顧客が発注した商品を特定し、その商品を前記個別取引条件に見合う態様で前記顧客に提供できるようにするための処理を行う情報処理手段と、
前記顧客別商品データを利用して個別取引条件を加味した顧客別専用カタログを編集するカタログ編集手段とを具備させてなる商品注文システム、
が記載されているといえる。

(刊行物3)
「【作用】本発明の上記構成によれば、消費者は駅前、マンション、団地などのアクセスの容易な場所に配設された多機能電話型の消費者用データ端末から商品注文を簡単に行うことができ、消費者用データ端末では消費者を特定するとともにその注文商品を通信機能付きデータ管理装置にデータ送信し、通信機能付きデータ管理装置で商品注文を各消費者毎及び販売店毎に識別してデータ管理しておき、各販売店はその端末から通信装置付きデータ管理装置にアクセスすることによって当該販売店に対する消費者別の商品注文を入力することができ、それに基づいて各消費者に商品を配達することにより、消費者は販売店に足を運ぶことなく買い物ができ、しかも消費者用データ端末は駅前などの便利な場所に消費者数に比して少数配設するだけでよくかつ通信装置付きデータ管理装置も比較的簡単な構成で安価なものを用い得るので、低コストで簡便に実現することができる。」(公報第2頁段落【0007】)
ここで、上記「通信機能付きデータ管理装置で商品注文を各消費者毎及び販売店毎に識別してデータ管理しておき」との記載からみて、上記「通信機能付きデータ管理装置」は、消費者からの注文を販売店に代わり受注する「受注代行手段」を有していることが、明らかである。
そうすると、刊行物3には、
消費者が使用する消費者用データ端末と、販売店がそれぞれ使用する販売店の端末と、これら販売店の端末および前記消費者用データ端末とそれぞれ通信可能な通信機能付きデータ管理装置を利用する販売システムであって、
前記通信機能付きデータ管理装置に、受注代行手段を具備させてなる販売システム、
が記載されているといえる。

(刊行物4)
「・・・本発明の第2の実施例の詳細を図21を参照して説明する。図21における図の符号は第1図の場合と同一であり、サービス提供会社8及び商品供給会社9がそれぞれ会社群として示され、また、分散受注センタ6が倉庫を備える分散処理センタとして示されている。
本発明の第2の実施例によるホームショッピングのシステムは、注文端末1と、受注処理機能61及び配送処理機能62を併せ持つ分散処理センタ6と、全情報を統括管理する情報処理センタ7と、全商品を統括管理する物流センタ10とにより基幹システムが構成されており、家庭からの注文を家庭まで商品として届けることのできる一貫したシステムである。
この基本システムを構築するホームショッビング会社は、様々なサービスを提供する企業群8とサービス提供の契約を結ぶ。これらの企業群8と情報処理センタ7とは、コンピュータを介して接続される。これにより、各家庭は、契約したサービス提供会社A〜C81のサービスが紹介される。
・・・・・
各家庭では、購入したい商品があれば、注文端末1へ、その商品のサービス提供会社の企業IDコードと商品のコードと数量とを入力する。この注文データは、図8により説明したような個人IDコードAが自動付加された注文電文とされて、分散処理センタ6内の受注コンピュータ61へ送信される。
・・・受注コンピュータ61は、回線を介して情報処理センタ7へこの注文データを送信する。情報処理センタ7では、この注文データ内の企業IDコードを判断して、対応するサービス提供会社ファイル71へその注文データを格納する。」(公報第8頁段落【0090】〜【0099】)
そうすると、刊行物4には、
各家庭が使用する注文端末と、商品供給会社がそれぞれ使用する商品供給会社のコンピュータと、これら商品供給会社のコンピュータおよび前記注文端末とそれぞれ通信可能な情報処理センタのコンピュータを利用するホームショッピングシステムであって、
前記情報処理センタのコンピュータに、受注代行手段を具備させてなるホームショッピングシステム、
が記載されているといえる。

5.対比・判断
(1)本件請求項1に係る発明について
本件請求項1に係る発明(以下、「前者」という。)と刊行物1に記載された発明(以下、「後者」という。)とを対比すると、後者の「ユーザ」、「ユーザシステム」、「販売店」、及び「販売店システム」は、それぞれ、前者の「ユーザー」、「ユーザー用機器」、「ディーラー」、及び「ディーラー用機器」に相当する。
ここで、後者の「オンラインショッピングシステム」は、流通の支援を行うものであるから、「流通支援設備」であるといえる。
そうすると、両者は、
ユーザーがそれぞれ使用するユーザー用機器と、各ユーザーと商談を行う立場にあるディーラーがそれぞれ使用するディーラー用機器とをそれぞれ通信可能とする流通支援設備、
である点で一致する。
しかしながら、刊行物1には、前者のように、「ディーラー用機器およびユーザー用機器とそれぞれ通信可能なネットワークセンター用のコンピュータシステムに、前記ディーラー用機器と前記コンピュータシステムとの間の交信内容に基いて各ディーラーの各ユーザーに対する個別取引条件を特定し、ユーザー別商品データを作成するためのユーザー管理手段と、前記ユーザー用機器から前記コンピュータシステムに接続操作が行われた場合にユーザーおよびこのユーザーに対応するディーラーを特定し、このディーラー特有の応答信号を前記ユーザー用機器に返信する受注代行手段と、前記ユーザー用機器から前記コンピュータシステムに発信された発注情報に基いてユーザーが発注した商品を特定し、その商品を前記個別取引条件に見合う態様で前記ユーザーに提供できるようにするための処理を行う情報処理手段とを具備させた」(構成要件A)点については何ら記載がなく、またそのような構成を示唆する記載もない。

次に、本件請求項1に係る発明(以下、「前者」という。)と刊行物2に記載された発明(以下、「後者」という。)とを対比すると、後者の「顧客」、「顧客計算機システム」、「中央サプライヤー」、及び「中央サプライヤーの中央計算機システム」は、それぞれ、前者の「ユーザー」、「ユーザー用機器」、「ディーラー」、及び「ディーラー用機器」に相当する。
ここで、後者の「商品注文システム」は、流通の支援を行うものであるから、「流通支援設備」であるといえる。
そうすると、両者は、
ユーザーがそれぞれ使用するユーザー用機器と、各ユーザーと商談を行う立場にあるディーラーが使用するディーラー用機器とをそれぞれ通信可能とする流通支援設備、
である点で一致する。
しかしながら、刊行物2には、前者のような「構成要件A」については何ら記載がなく、またそのような構成を示唆する記載もない。

更に、刊行物3および4には、「ユーザーがそれぞれ使用するユーザー用機器と、ディーラーがそれぞれ使用するディーラー用機器と、これらディーラー用機器および前記ユーザー用機器とそれぞれ通信可能とするコンピュータシステムに、受注代行手段を具備させる」点が記載されているが、上記「構成要件A」については何ら記載がなく、またそのような構成を示唆する記載もない。

そして、本件請求項1に係る発明は、上記「構成要件A」を具備することにより、「各ユーザーは、好みのディーラーと直接に取引を行っているのと同様な感覚で適宜注文を出すことができ、また、商談等により取り決めた個別取引条件が反映された態様で注文した商品を受け取ることが可能になる。しかも、実際の注文情報は、コンピュータセンターに集められ処理されるため効率的であり、その効率向上により注文操作の簡略化や価格の低下、あるいは納期の短縮等、種々の恩恵を受けることができる。
また、ディーラーにとっては、ユーザー毎に取引条件を変えることが可能になるため、商取引の自由度が高くなり、例えば、競争入札により獲得したユーザーに対してもこの流通支援設備を不具合なく使用することができる。しかも、ユーザーとネットワークセンターとの間で通信が行われる際には、その間に常にディーラーが仮想的に介在することになるため、ディーラーは各ユーザーと頻繁に事務的コンタクトをとることなしに親密な関係を維持することが可能となり、それにより節約できた時間をユーザーに対する実質的なサービス向上等に振り向けることができる。さらに、ディーラーはディーラー用機器を用いてネットワークセンターのコンピュータシステムにアクセスすることができるため、後述するような種々の情報交換を行うことができ、より付加価値の高い販売活動を効率良く展開することができる。
さらに、ネットワークセンターは、各ユーザーとダイレクトパスを構築することができるため、ディーラーに事務的負担をかけることなしに全ての購買データを正確かつ迅速に収集し処理することができる。そのため、効率のよい配送手配を行うことが可能になるだけでなく、後述するような貴重な情報を生成し蓄積することができ、その情報を必要に応じてディーラーやユーザーに提供することも容易になる。」(段落【0079】〜【0081】)(効果A)という格別の効果を奏するものと認められる。

以上のとおりであるから、本件請求項1に係る発明は、刊行物1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(2)本件請求項2に係る発明について
本件請求項2に係る発明(以下、「前者」という。)と刊行物1に記載された発明(以下、「後者」という。)とを対比すると、後者の「ユーザ」、「ユーザシステム」、「販売店」、及び「販売店システム」は、それぞれ、前者の「ユーザー」、「ユーザー用機器」、「ディーラー」、及び「ディーラー用機器」に相当する。
ここで、後者の「オンラインショッピングシステム」は、流通の支援を行うものであるから、「流通支援設備」であるといえる。
そうすると、両者は、
ユーザーがそれぞれ使用するユーザー用機器と、各ユーザーと商談を行う立場にあるディーラーがそれぞれ使用するディーラー用機器とをそれぞれ通信可能とする流通支援設備、
である点で一致する。
しかしながら、刊行物1には、前者のように、「ディーラー用機器およびユーザー用機器とそれぞれ通信可能なネットワークセンター用のコンピュータシステムに、前記ディーラー用機器と前記コンピュータシステムとの間の交信内容に基いて各ディーラーの各ユーザーに対する個別取引条件を特定し、その個別取引条件を商品関連データに付加してユーザー別商品データを作成するためのユーザー管理手段と、前記ユーザー用機器から前記コンピュータシステムに接続操作が行われた場合にユーザーおよびこのユーザーに対応するディーラーを特定し、このディーラー特有の応答信号を前記ユーザー用機器に返信する受注代行手段と、前記ユーザー用機器から前記コンピュータシステムに発信された発注情報に基いてユーザーが発注した商品を特定し、その商品を前記個別取引条件に見合う態様で前記ユーザーに提供できるようにするための処理を行う情報処理手段とを具備させてなり、前記受注代行手段による応答信号が、少なくとも特定ディーラーのウエルカム画面を対応するユーザー用機器のディスプレーに表示させるための信号と、対応するユーザー別商品データ等に対する商品検索用画面を前記ディスプレーに表示させるための信号を含んでいる」(構成要件B)点については何ら記載がなく、またそのような構成を示唆する記載もない。

次に、本件請求項2に係る発明(以下、「前者」という。)と刊行物2に記載された発明(以下、「後者」という。)とを対比すると、後者の「顧客」、「顧客計算機システム」、「中央サプライヤー」、及び「中央サプライヤーの中央計算機システム」は、それぞれ、前者の「ユーザー」、「ユーザー用機器」、「ディーラー」、及び「ディーラー用機器」に相当する。
ここで、後者の「商品注文システム」は、流通の支援を行うものであるから、「流通支援設備」であるといえる。
そうすると、両者は、
ユーザーがそれぞれ使用するユーザー用機器と、各ユーザーと商談を行う立場にあるディーラーが使用するディーラー用機器とをそれぞれ通信可能とする流通支援設備、
である点で一致する。
しかしながら、刊行物2には、前者のような「構成要件B」については何ら記載がなく、またそのような構成を示唆する記載もない。

更に、刊行物3および4には、「ユーザーがそれぞれ使用するユーザー用機器と、ディーラーがそれぞれ使用するディーラー用機器と、これらディーラー用機器および前記ユーザー用機器とそれぞれ通信可能とするコンピュータシステムに、受注代行手段を具備させる」点が記載されているが、上記「構成要件B」については何ら記載がなく、またそのような構成を示唆する記載もない。

そして、本件請求項2に係る発明は、上記「構成要件B」を具備することにより、上記「効果A」に加えて「ユーザーがディーラーのコンピュータに直接にアクセスしているのと同様な感覚で商品の物色を開始することができ、自らのためにカスタマイズされた各種表示を参照しながら所望の商品を注文するようなことも可能になる。そのため、ディーラーを常に意識しつつも、該ディーラーの店先に頻繁に出向いたり該ディーラーを度々呼び付けるようなことなしに、手軽に種々の商品を注文することが可能になる。」(段落【0082】)という格別の効果を奏するものと認められる。

以上のとおりであるから、本件請求項2に係る発明は、刊行物1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(3)本件請求項3に係る発明について
本件請求項3に係る発明(以下、「前者」という。)と刊行物1に記載された発明(以下、「後者」という。)とを対比すると、後者の「ユーザ」、「ユーザシステム」、「販売店」、及び「販売店システム」は、それぞれ、前者の「ユーザー」、「ユーザー用機器」、「ディーラー」、及び「ディーラー用機器」に相当する。
ここで、後者の「オンラインショッピングシステム」は、流通の支援を行うものであるから、「流通支援設備」であるといえる。
そうすると、両者は、
ユーザーがそれぞれ使用するユーザー用機器と、各ユーザーと商談を行う立場にあるディーラーがそれぞれ使用するディーラー用機器とをそれぞれ通信可能とする流通支援設備、
である点で一致する。
しかしながら、刊行物1には、前者のように、「ディーラー用機器およびユーザー用機器とそれぞれ通信可能なネットワークセンター用のコンピュータシステムに、前記ディーラー用機器と前記コンピュータシステムとの間の交信内容に基いて各ディーラーの各ユーザーに対する個別取引条件を特定し、その個別取引条件を商品関連データに付加してユーザー別商品データを作成するためのユーザー管理手段と、前記ユーザー用機器から前記コンピュータシステムに接続操作が行われた場合にユーザーおよびこのユーザーに対応するディーラーを特定し、このディーラー特有の応答信号を前記ユーザー用機器に返信する受注代行手段と、前記ユーザー用機器から前記コンピュータシステムに発信された発注情報に基いてユーザーが発注した商品を特定し、その商品を前記個別取引条件に見合う態様で前記ユーザーに提供できるようにするための処理を行う情報処理手段と、前記ユーザー別商品データを利用して個別取引条件を加味したユーザー別専用カタログを編集するカタログ編集手段とを具備させてなる」(構成要件C)点については何ら記載がなく、またそのような構成を示唆する記載もない。

次に、本件請求項3に係る発明(以下、「前者」という。)と刊行物2に記載された発明(以下、「後者」という。)とを対比すると、後者の「顧客」、「顧客計算機システム」、「中央サプライヤー」、及び「中央サプライヤーの中央計算機システム」は、それぞれ、前者の「ユーザー」、「ユーザー用機器」、「ディーラー」、及び「ディーラー用機器」に相当する。
ここで、後者の「商品注文システム」は、流通の支援を行うものであるから、「流通支援設備」であるといえる。
そうすると、両者は、
ユーザーがそれぞれ使用するユーザー用機器と、各ユーザーと商談を行う立場にあるディーラーが使用するディーラー用機器とをそれぞれ通信可能とする流通支援設備、
である点で一致する。
しかしながら、刊行物2には、前者のような「構成要件C」については何ら記載がなく、またそのような構成を示唆する記載もない。

更に、刊行物3および4には、「ユーザーがそれぞれ使用するユーザー用機器と、ディーラーがそれぞれ使用するディーラー用機器と、これらディーラー用機器および前記ユーザー用機器とそれぞれ通信可能とするコンピュータシステムに、受注代行手段を具備させる」点が記載されているが、上記「構成要件C」については何ら記載がなく、またそのような構成を示唆する記載もない。

そして、本件請求項3に係る発明は、上記「構成要件C」を具備することにより、上記「効果A」に加えて「価格その他の個別取引条件が加味されたユーザー別専用カタログを容易に作成することが可能になるため、ディーラーには販売促進のための強力な武器を供与することができ、また、ユーザーには大きな満足と取引の利便性を提供することができる。」(段落【0083】)という格別の効果を奏するものと認められる。

以上のとおりであるから、本件請求項3に係る発明は、刊行物1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(4)本件請求項4に係る発明について
本件請求項4に係る発明は、請求項1、2又は3記載の発明に、
「情報処理手段が、受注代行手段を通して受注した商品をディーラー用機器から確認し得るように開示する受注状況確認手段と、ディーラー用機器からコンピュータシステムに向けて手配指令が送信された受注商品に関しメーカー、配送会社等の商品配送組織に対して商品配送指令を出力する配送手配手段とを含んでいる」という構成を付加するものである、そして、本件請求項1ないし3に係る発明は、上述したように当業者が容易に発明をすることができたものとは、認められないので、本件請求項4に係る発明も、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(5)本件請求項5に係る発明について
本件請求項5に係る発明は、請求項1、2、3又は4記載の発明に、
「情報処理手段が、ユーザーが購入した商品に関する経理処理をディーラーに代わって実行する会計代行手段を含んでいる」という構成を付加するものである 「情報処理手段が、受注代行手段を通して受注した商品をディーラー用機器から確認し得るように開示する受注状況確認手段と、ディーラー用機器からコンピュータシステムに向けて手配指令が送信された受注商品に関しメーカー、配送会社等の商品配送組織に対して商品配送指令を出力する配送手配手段とを含んでいる」という構成を付加するものである、そして、本件請求項1ないし4に係る発明は、上述したように当業者が容易に発明をすることができたものとは、認められないので、本件請求項5に係る発明も、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
(6)本件請求項6に係る発明について
本件請求項6に係る発明は、請求項1、2、3、4又は5記載の発明に、
「情報処理手段が、ユーザーが購入した商品に関する情報を蓄積して定番分析、売筋分析、価格分析等の情報処理を行うための購買データ管理手段を含んでいる」という構成を付加するものである、そして、本件請求項1ないし5に係る発明は、上述したように当業者が容易に発明をすることができたものとは、認められないので、本件請求項6に係る発明も、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠方法によっては、本件請求項1ないし6に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし6に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおりに決定する。
 
異議決定日 2002-02-26 
出願番号 特願平9-188687
審決分類 P 1 652・ 121- Y (G06F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 金子 幸一  
特許庁審判長 佐藤 荘助
特許庁審判官 岡 千代子
久保田 健
登録日 1999-07-23 
登録番号 特許第2956661号(P2956661)
権利者 コクヨ株式会社
発明の名称 流通支援設備  
代理人 赤澤 一博  
代理人 久留 徹  

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