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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G03B
審判 全部申し立て 発明同一  G03B
管理番号 1079667
異議申立番号 異議2002-72187  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-09-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-09-04 
確定日 2003-06-11 
異議申立件数
事件の表示 特許第3265692号「定常光とフラッシュ光を分離測光・制御する機能を有したカメラ」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3265692号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.本件発明
本件特許第3265692号(平成5年2月23日出願、平成14年1月11日設定登録。)の請求項1に係る発明はその特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。
「【請求項1】撮影領域内の定常光を受光し、測定する定常光測光手段と、撮影前にフラッシュを予備発光させる予備発光手段と、上記予備発光手段の発光による被写体からの反射光量を測定するフラッシュ光測光手段と、上記定常光測光手段とフラッシュ光測光手段による各測光結果に基づいて、定常光の輝度を演算するとともに、撮影に使用するためのフラッシュ光の光量を予め演算する演算手段と、上記演算手段による演算結果に基づいて、撮影時の露光量に寄与する定常光成分とフラッシュ光成分との割合が変わるよう、それぞれを独立して制御する制御手段とを備えたことを特徴とする定常光とフラッシュ光を分離測光・制御する機能を有したカメラ。」

2.刊行物1、2に記載の発明及び先願発明
(1)刊行物1に記載の発明
先の取消理由通知において引用した刊行物1(特開平4-88762号公報)には、以下の記載がある。
(a)「以下、図示の実施例によって本発明を説明する。第1図は、本発明の第1実施例を示すビデオカメラあるいは電子スチルカメラ等の電子的撮像装置の主要ブロック構成図である。上記撮像装置において、被写体光は撮影レンズ1と絞り機構2とを介して撮像素子であるイメージャ3の結像面上に結像する。」(第2頁左下欄第19行〜右下欄第5行)
(b)「次に、本実施例の撮像装置におけるストロボ撮影について、第6図のストロボ露光(III)のフローチャートによって説明する。・・・そして、ステップS142において、イメージャ3のシャッタが開状態となり、外光による露光が行われる。・・・続いて、イメージャ3の次のフィールド期間において、上記外光の露光による前記AV積分値IBAVおよびSP積分値IBSPをシステムコントローラ4への読み出しが行われる(ステップS144、145)。」(第5頁右上欄第18行〜左下欄第14行)
(c)「また、同様にシステムコントローラ4によって制御されるストロボコントローラ11は、閃光発光管を有するストロボ発光装置12の発光光量および発光タイミングをコントロールする。そして、本実施例のものは、その光量のコントロールはシステムコントローラの指示に従ってその発光時間によってコントロールするものである。また、図示はしないが、光量のフィードバックコントロールを行うストロボコントローラも用いることも可能であって、別に積分型測光素子を設け、その出力を該ストロボコントローラに取り込み発光量の検出を行いながら発光制御を行うこともできる。以上のように構成された本実施例の撮像装置におけるストロボ撮影は、まず、ストロボ発光装置12によりプリ発光を行って、それによる露光量に基づいて、本露光時の本発光光量Mを演算し、ストロボ発光装置12により上記発光光量Mの発光を行って撮影する。」(第3頁左上欄第19行〜右上欄第16行)
(d)「イメージャ3の次のフィールド期間で上記プリ発光の露光によるSP積分値IPSPがシステムコントローラ4へ読み出される(ステップS149)。この場合、SPエリアゲート回路23側のみが作動する。続いて、ステップS150において、ゲインコントロールアンプ6のゲインを本露光のためのゲインGNに設定する。そして、ステップS151において、本露光撮影時の背景を含めた全体の露光に対するシャッタ時間Tを、前記シャッタ時間t1とストロボ撮影時に目標とする光量に対応するイメージャ露光光量対応値を示すIAと前記ステップS144で求められた外光による平均測光値のAV積分値IBAV、および、ゲインGP、GNとから次式によって演算する。即ち・・・(3)となる。更に、ステップS152において、本露光時の本発光の光量Mを、プリ発光量P、上記目標露光量対応値IA、ゲインGP、GN、ステップS149で求めたプリ発光による露光に基づくSP積分値IPSPおよび外光によるSP積分値IBSPのシャッタ時間による補正SP積分値I’BSPとから次式によって演算する。即ちM=・・・(4)となる。・・・ここで、上記補正SP積分値I’BSPは、ステップS145で求められた外光によるSP積分値IBSPをステップS151で求められた本発光撮影時のシャッタ時間TとステップS142、143のシャッタ時間t1と更に、ゲインGNとGPとの比で補正したものであって、次式で与えられる。・・・続いて、ステップS153において、イメージャ3のシャッタを開とし、ステップS154にてストロボ発光装置12を上記発光光量Mだけ発光せしめる。そして、上記シャッタ時間T経過後、シャッタを閉とし(ステップS155)、本ルーチンを終了する。
以上述べたように、本実施例は、外光による平均測光とスポット測光を実施し、更に、プリ発光によるスポット測光を実施することによって、主に外光の平均測光量に基づいてシャッタ時間を定め、更に、本発光の発光量をプリ発光による露光の光量対応値、即ち、SP積分値と上記シャッタ時間による補正積分値とによって求め、画枠全体に対するより適切なシャッタ時間と、スポット領域に位置する被写体に対する適切なストロボ発光量を設定することによって、逆光時の日中シンクロによる適正なストロボ撮影を実施することを可能とするものである。」(第5頁右下欄第10行〜第6頁左下欄第10行)
(e)「そして、ステップS146においてイメージャ3をシャッタ開としストロボのプリ発光を実行する(ステップS147)。この発光光量をPとする。そして、ステップS148において、シャッタ閉とする。なお、このシャッタ開閉の期間、即ち、シャッタ時間はステップS142、143のシャッタ開閉と同様、t1とする。また、上記処理中、ステップS142〜143、ステップS146〜148のシャッタ開閉時間は演算式の簡素化のため、それぞれ同一のシャッタ開閉時間を有するものとする。しかし、これらの時間は必ずしも一定である必要はなく、それぞれ変化を与えてもよい。(第5頁左下欄第18行〜右下欄第10行)
(f)「そして、ストロボ撮影が指示されると、・・・そして、ステップS123において上記シャッタを閉としステップS124において、上記外光による露光に対して積分回路8、A/D変換回路9によって得られた値を、積分値IBとしてシステムコントローラ4に読み出される。・・・そして、ステップS127において上記シャッタを閉とし、ステップS128において、上記プリ発光による露光に対応して、積分回路8、A/D変換回路9によって得られた値を、積分値IPとして、システムコントローラ4にて読み出される。・・・そして、上記積分値IB,IPと、ストロボ撮影時に目標とする光量に対応するイメージャ露光光量対応値を示すIAと、上記プリ発光光量PおよびゲインGP,GNから本発光光量Mを次式により演算する(ステップS130)。・・・」(第4頁右上欄第2行〜左下欄第14行)
(2)刊行物2に記載の発明
同じく引用した刊行物2(特開平1-289925号公報)には、以下の記載がある。
(g)「そこで、本発明では、フレームBのようにフレーミングしたい場合には、まずフレームAのように部分測光領域aに主被写体が入るようにし、この状態でストロボに対して発光指令を与え第2図のストロボ発光管150を一定光量SPでプリ発光させる。そして、そのときの測光領域aの部分を受光する受光素子101に発生する光電流を積分して、この積分レベルVPとフィルム感度によって決定される適正な積分レベルVQとを比較して、ストロボの適正発光量
SQ=(VQ/VP)SP
を求める。実際の本撮影に際して、ストロボ発光管150からSQの光を発光させれば、主被写体300が画面のどこに存在しても適正な露出が得られる。」(第2頁右下欄第5行〜第19行)
(h)「スイッチ152はストロボの電源のチャージを許可するためのスイッチである。・・・いま、スイッチ152がストロボ電源の充電許可状態にあり、ストロボ制御回路151が発光完了状態になっていたとすると、ストロボ制御回路151の端子Cを通してCPU110の端子CHGに発光準備完了信号が送られる。CPU110は、端子CHGに信号が入力されている状態で記憶スイッチ109がオンとされると、端子ISTの出力によりスイッチング素子106を解放しコンデンサ105に積分を開始させると同時に、所定の値DPをDTIMEからタイマ回路160に与えておいて、端子Xからストロボに対するシンクロ信号をストロボ制御回路151の端子Xに印加する。ストロボ制御回路151は、端子Xにシンクロ信号が入力されることにより、端子TRGに高圧を発生させてストロボ発光管150に発光を開始させる。」(第3頁左上欄第18行〜右上欄第17行)
(i)「ストロボの発光は被写体300で反射して一部が撮影レンズ190に入射し、ミラー191で反射し、スクリーン192で拡散されて、さらに一部の光が破線のように受光素子101に達する。受光素子101で受光された光は光電流に変換され電流圧縮回路102で対数圧縮される。圧縮された出力は指数伸長回路103で伸長されて光電流(輝度)に対してリニアな値となり、この出力は電流積分回路104で積分されて、積分出力が出力端子Oから出力される。」(第3頁右上欄第17行〜左下欄第6行)
(j)「タイマ回路160は、セットされたDPの値に相当する時間の後、出力端子Oから出力を発生する。この出力がストロボ制御回路151の端子Tに印加されると、ストロボ制御回路151は発光管150の発光を停止させる。少なくともこの発光期間中(もしくは発光期間中を含んでシンクロ同調に必要なシャッター速度時間までの間)積分回路104を働かせて、得られる積分出力を、図示のようにS1側に設定されたスイッチ107を介してA/Dコンバータ108の入力端子AINに入力する。ストロボ制御回路151によるストロボの発光終了直後にA/Dコンバータ108によってA/D変換された値VPをCPU110が端子DINから読み込む。」(第3頁左下欄第7行〜第19行)
(k)「第3図において、ストロボの電源スイッチ152がオンとなっていないときには、AEロックのための記憶スイッチ109が押されても、受光素子101は、通常通り、定常光の光電変換を行ない、スイッチ107はS1側に設定されたままで、CPU110は第2図の測光領域aのBV値を測定し適正なシャッスピ-ドおよび絞り値の少なくとも一方を記憶し、レリーズに際して上述の記憶された値を用いて露出を行なう。」(第7頁左下欄第8行〜第16行)
(m)「通常の動作は以上のようにして行なわれる。先に述べたように自然光の定常光が無視できない場合には、次のようにする。
プリ発光させたときに、シンクロ秒時に対応する時間中の自然光の積分値hとストロボプリ発光による積分値j-hを各別にA/Dコンバータ108でA/D変換し、適正露光値kに対応する本発光量k-hがCPU110で求められるとCPU110は、CPU210に対して自然光と本発光との割合h:k-hを転送し、表示装置220にその比を表示させる。ディジタルスイッチ230が図示のようにOの位置にあればそのままの値、すなわち
DGQ={(k-h)/(j-h)}DGP
に従ってストロボの発光が行なわれるが、スイッチ230を例えば+1.0の位置にしたとすると、本発光においてCPU210は、k-hの+1.0EV値分、つまり2(k-h)に相当する本発光を行なうべくCPU110から転送される
DGQ={(k-h)/(j-h)}DGP
の代りに
DGQ={2(k-h)/(j-h)}DGP
をDOUTから送出して本発光を行なわせる。このようにして、ストロボ側の操作部材230の設定により自然光に対して任意の発光量が設定できる。」(第7頁左上欄第4行〜右上欄第8行)
(n)「カメラのストロボシステムに関する。」(第1頁右下欄4行目)
(3)先願発明(特願平3-286779号(特開平5-127215号))
先願明細書又は図面(以下、先願明細書等という)には、以下の記載がある。
(p)「本発明は・・・いわゆるダイレクト測光用素子を設けることなく、ストロボとのパララックスや照射角度を補正すると共に、瞬時のストロボ発光量を制御する場合にはできなかった論理的な判断やメイン測光系による発光なしの測光値との比較等のこまかい制御が可能とでき、これにより良好なストロボ撮影を行うことのできるカメラを提案しようとするものである。」(段落【0011】)
(q)「この反射鏡8の入射面に入射した光は一点鎖線で示すように、この反射面により反射されて測光センサ9に入射する。かくして測光センサ9はレンズ系3を通じて供給される光を測光することができる。そしてこの測光センサ9は光を測光して得た測光データを後述する制御部20に供給する。」(段落【0022】〜【0024】)
(r)「この制御部20は、後述する測光センサ9よりの発光部1aを発光させていない状態での測光データをメモリ21に記憶し、図示を省略したレリーズ釦を押圧し、シャッタ12が切れる前にストロボ本体部22に制御信号を供給して発光部1aを予備発光(以下プリ発光と称することとする)させるようにする。」(段落【0035】)
(s)「ステップ110では、測光値(測光データ)を記憶する。即ち、ストロボ1の発光部1aが発光していない状態で測光センサ9よりの測光データをメモリ21に記憶せしめる。そしてステップ120に移行する。」(段落【0054】)
(t)「ステップ130では、ストロボ本体部22に制御信号を供給してストロボ1の発光部1aをプリ発光せしめる。そしてステップ150に移行する。」(段落【0056】)
(u)「ステップ150では、測光を行う。即ち、プリ発光したときに測光センサ9よりの測光データを取り込む。そしてステップ160に移行する。」(段落【0058】)
(v)「ステップ160では、メモリ21より読みだした、ストロボ1の発光部1aが発光していないときの測光センサ9が測光した測光データと、ステップ150において測光した測光データ、即ち、プリ発光時に測光センサ9が測光した測光データとを比較し、その比較結果によりストロボ1の発光部1aの発光量、絞り値及びシャッタ値を決定する。そしてステップ170に移行する。」(段落【0059】)
(w)「このストロボ本体部22は後述する制御部20よりの制御信号により発光部1aを発光せしめる。(段落【0034】)
(x)「さて、本例においては、更に、測光センサ9が例えばいわゆる分割測光により、図4に示す如き状態でのストロボ1の発光部1aの発光による被写体Mからの反射光量を分割して観測できる場合、即ち、いわゆる日中シンクロ撮影の如く高度なストロボ調光を行う場合には、より正確にストロボ調光を行うことができるようにする。図5に斜線部分を周囲p2とし、スポットをp1として分割についての説明図を示す。図4に示すように、主要被写体Mがカメラの近くに存在し、周囲が遠い構図はカメラの撮影時によく見られるパターンであるが、いわゆる逆光等の場合には、ストロボ発光により光を補う。しかしながら、遠くの景色はストロボ1の発光部1aの発光光は殆ど届かず、このような場合は遠くの景色にはストロボ1の発光部1aの発光光が届かないものとして、絞りやシャッタ値により適正光量となるようにする。本例においては、このような分割測光においても適切な制御を行うことができる。先ずプリ発光を行い、このとき、測光センサ9により、上述のスポットp1及び周囲p2の2つの測光データを得る。ここでプリ発光時のスポットp1の測光データをSP1、プリ発光時の周囲p2の測光データをSP2、またレリーズ直前のスポットp1の測光データをSO1、レリ-ズ直前の周囲p2の測光データをSO2とする。ここでスポットp1及び周囲p2の夫々のストロボ到達光量の差をΔS1、ΔS2とすると、ΔS1=SP1-SO1、ΔS2=SP2-SO2となる。またこれら光量の差は距離の2乗に反比例した値である。さて、本例得られるべき測光値SをX倍の測光時間とY倍のプリ発光に対する発光量により得られるとすると、SO1X+ΔSIY=S、SO2X+ΔS2Y=Sと、2つの連立方程式を得ることができる。この2つの連立方程式を解くことにより、X及びYを求めることができる。即ち、これらX及びYが設定すべきシャッタ値、ストロボ発光量を与えることとなる。絞り値については、絞り値による変化はストロボの発光光、外光とも等価なので、絞り3aにより1/2の光量となるときには、シャッタ値及びストロボ発光量を2倍にすれば良い。このように、分割測光により撮影する場合においても、より正確にシャッタ値(外光による光量増加分)とストロボ発光量を制御することが可能となる。」(段落【0064】〜【0077】)

3.対比・判断
(1)刊行物1に対して
上記した(a)、(b)の記載及び第1図、第4図からみて、被写体光は撮影レンズ1、絞り機構2を介してイメージャ3の結像面上に結像され、イメージャ3によって外光(定常光)が測光されているから、イメージャ3は「定常光測光手段」ということができ、本件請求項1に係る発明の「撮影領域内の定常光を受光し、測定する定常光測光手段」が開示されている。
上記した(c)の記載からみて、ストロボ発光装置12はストロボコントローラ11の制御のもとでプリ発光を行なっているから、ストロボコントローラ11、ストロボ発光装置12は「予備発光手段」ということができ、本件請求項1に係る発明の「撮影前にフラッシュを予備発光させる予備発光手段」が開示されている。
上記した(c)、(d)の記載からみて、プリ発光の露光量がシステムコントローラ4に読み出されているから、システムコントロ-ラ4は「フラッシュ光測光手段」ということができ、本件請求項1に係る発明の「上記予備発光手段の発光による被写体からの反射光量を測定するフラッシュ光測光手段」が開示されている。
上記した(b)、(e)、(d)の記載からみて、第4図〜第6図の第3実施例では、ステップS149で求めたプリ発光の露光によるSP積分値IPSPと、ステップS144、145で求めた外光の露光によるSP積分値いBSPとから、本発光の発光量Mを式(4)で求めており、上記した(f)の記載からみて、測光結果である積分値IB,IPをシステムコントローラ4に読み出してから本発光光量Mを演算しているから、システムコントローラ4は「演算手段」ということができ、本件請求項1に係る発明の「上記定常光測光手段とフラッシュ光測光手段による各測光結果に基づいて、定常光の輝度を演算するとともに、撮影に使用するためのフラッシュ光の光量を予め演算する演算手段」が開示されている。
そして、画枠全体に対する適切なシャッタ時間と、スポット領域に位置する被写体に対する適切なストロボ発光量とが独立して制御されており、この制御はシステムコントローラ4によってなされていると考えられるから、システムコントローラ4は「制御手段」であり、本件請求項1に係る発明の「上記演算手段による演算結果に基づいて、撮影時の露光量に寄与する定常光成分とフラッシュ光成分との割合が変わるよう、それぞれを独立して制御する制御手段」が開示されている。
上記した(a)の記載からみて、ビデオカメラや電子スチルカメラ等の電子的撮像装置について述べているから、本件請求項1に係る発明の「定常光とフラッシュ光を分離測光・制御する機能を有したカメラ」が開示されている。
してみれば、刊行物1には、本件請求項1に係る発明が開示されていると言える。
(2)刊行物2に対して
上記した(g)の記載からみて、ストロボ発光管150を一定光量SPでプリ発光させて受光素子101に生じる光電流を積分し、その積分レベルVPとフィルム感度による適正な積分レベルVQとから適正発光量SQを演算している。
上記した(h)、(i)、(j)の記載からみて、積分レベルVPを求める方法については、ストロボ制御回路151の制御のもとで発光管150がプリ発光しているから、発光管150、ストロボ制御回路151は「予備発光手段」ということができ、本件請求項1に係る発明の「撮影前にフラッシュを予備発光させる予備発光手段」が開示されている。
上記した(i)の記載からみて、第1図からもわかるように、ストロボの発光は被写体300で反射し、その一部が受光素子101で光電変換され、電流圧縮回路102で対数圧縮され、指数伸長回路103で伸長され、電流積分回路104で積分されて出力端子Oから出力されているから、受光素子101、電流圧縮回路102、指数伸長回路103、電流積分回路104は「フラッシュ光測光手段」ということができ、本件請求項1に係る発明の「上記予備発光手段の発光による被写体からの反射光量を測定するフラッシュ光測光手段」が開示されている。
上記した(k)の記載からみて、受光素子101は、定常光を受光して光電変換し、光電変換された定常光の出力は、(フラッシュ時の測光と同様に、)電流圧縮回路102で対数圧縮され、指数伸長回路103で伸長され、電流積分回路104で積分されて出力端子Oから出力されていると考えられるから、受光素子101、電流圧縮回路102、指数伸長回路103、電流積分回路104は「定常光測光手段」でもあり、本件請求項1に係る発明の「撮影領域内の定常光を受光し、測定する定常光測光手段」が開示されている。
上記した(m)の記載からみて、自然光の積分値hとストロボプリ発光による積分値j-hを演算するとともに、適正露光値kに対応する本発光量k-hを演算しており、これらの演算はCPU110でなされているから、CPU110は「演算手段」ということができ、本件請求項1に係る発明の「上記定常光測光手段とフラッシュ光測光手段による各測光結果に基づいて、定常光の輝度を演算するとともに、撮影に使用するためのフラッシュ光の光量を予め演算する演算手段」が開示されている。
また、自然光と本発光との割合h:k-hは、CPU110からCPU210に転送され、ストロボ側の操作部材(ディジタルスイッチ)230の設定により自然光に対して任意の発光量がCPU210の制御のもとで設定されている。つまり、ディジタルスイッチ230の設定によって、定常光成分とフレッシュ光成分との割合が独立に変更できるから、ディジタルスイッチ230、CPU210は「制御手段」であり、本件請求項1に係る発明の「上記演算手段による演算結果に基づいて、撮影時の露光量に寄与する定常光成分とフラッシュ光成分との割合が変わるよう、それぞれを独立して制御する制御手段」が開示されている。
上記した(m)、(n)の記載からみて、定常光とフラッシュ光を分離して測定・制御しているから、本件請求項1に係る発明の「定常光とフラッシュ光を分離測光・制御する機能を有したカメラ」が開示されている。
してみれば、刊行物2には、本件請求項1に係る発明が開示されていると言える。
(3)先願発明に対して
上記した(p)、(q)の記載からみて、測光センサ9はレンズ系3を通じて供給される光(定常光)を測光してその測光データを制御部20に供給しているから、「定常光測光手段」ということができ、本件請求項1に係る発明の「撮影領域内の定常光を受光し、測定する定常光測光手段」が開示されている。
上記した(r)〜(t)の記載からみて、制御部20はシャッタ12が切れる前にストロボ本体部22に制御信号を供給して発光部1aを予備発光(プリ発光)させているから、発光部1a、制御部20、ストロボ本体部22は「予備発光手段」ということができ、本件請求項1に係る発明の「撮影前にフラッシュを予備発光させる予備発光手段」が開示されている。
上記した(u)の記載からみて、測光センサ9は定常光の測光だけでなく、プリ発光においても測光しているから「フラッシュ光測光手段」でもあり、本件請求項1に係る発明の「上記予備発光手段の発光による被写体からの反射光量を測定するフラッシュ光測光手段」が開示されている。
上記した(v)の記載からみて、発光していないときの測光データ(定常光の測光データ)と、プリ発光時の測光データとが比較され、その比較結果からストロボ1の発光部1aの発光量、絞り値及びシャッタ値が決定されている。ここで、上記した(q)、(u)の記載からみて、定常光の測光デ-タ、プリ発光時の測光データは制御部20に送られ、制御部20からの制御信号で発光部1aを発光させているから、制御部20が2つ測光データを比較し演算しているものと考えられ、制御部20は「演算手段」であり、本件請求項1に係る発明の「上記定常光測光手段とフラッシュ光測光手段による各測光結果に基づいて、定常光の輝度を演算するとともに、撮影に使用するためのフラッシュ光の光量を予め演算する演算手段」が開示されている。
上記した(x)の記載からみて、分割測光によりスポットp1及び周囲p2の2つの測光データを得て、プリ発光時のスポットp1の測光データSP1、プリ発光時の周囲p2の測光データSP2、レリーズ直前のスポットp1の測光データSO1、レリーズ直前の周囲p2の測光データSO2から演算して、シャッタ値X、ストロボ発光量Yを求めて、分割測光で撮影する場合においても、シャッタ値(外光による光量増加分)、ストロボ発光量を制御し、演算で求められたシャッタ値X、ストロボ発光量Yはそれぞれの測光データによって独立に制御されている。つまり、測光センサ9で被写体の状態(逆光か否かなど)を判定し、その結果に対応して定常光成分とフラッシュ光成分との割合を変えており、上記した(r)、(u)の記載からみて、発光部1aの発光は制御部20の制御のもとでなされているから、制御部20は「制御手段」ということができ、本件請求項1に係る発明の「上記演算手段による演算結果に基づいて、撮影時の露光量に寄与する定常光成分とフラッシュ光成分との割合が変わるよう、それぞれを独立して制御する制御手段」が開示されている。
上記した(p)の記載からみて、カメラについて述べられており、このカメラは、段落【0064】〜【0077】に記載のように、定常光成分とフラッシュ光成分とを分離測光して制御する機能を有しているから、本件請求項1に係る発明の「定常光とフラッシュ光を分離測光・制御する機能を有したカメラ」が開示されている。
してみれば、先願明細書等には、本件請求項1に係る発明が開示されていると言える。

4.特許権者の主張
特許権者は、特許異議意見書第2〜3頁において、「『割合が変わるよう、それぞれを独立して制御する』とは、単に背景と主被写体がそれぞれ予め定められた標準的な適正露出量となるように制御され、結果的に定常光成分とフラッシュ光成分の割合が変わるというのではなく、定常光成分の増もしくは減、フラッシュ光成分の増もしくは減をそれぞれ行なうことによって、定常光成分によって得られる照明効果とフラッシュ光成分によって得られる照明効果とを組み合わせて撮影者の意図に沿った露光を得ることができるよう制御することである。」と主張し、併せて実施例に基づく説明をしているが、特許明細書には、そのような記載は無く、また、『割合が変わるよう、それぞれを独立して制御する』を、特許権者が主張するように解釈すべき特段の理由も見いだせない。
それゆえ、特許権者の主張は採用できない。

5.むすび
したがって、本件請求項1に係る発明は、刊行物1、刊行物2又は先願明細書等に記載された発明であると認められるから、本件請求項1に係る特許は特許法第29条第1項第3号又は同法第29条の2の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当する。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-04-22 
出願番号 特願平5-59732
審決分類 P 1 651・ 161- Z (G03B)
P 1 651・ 113- Z (G03B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 柏崎 康司越河 勉  
特許庁審判長 鹿股 俊雄
特許庁審判官 谷山 稔男
柏崎 正男
登録日 2002-01-11 
登録番号 特許第3265692号(P3265692)
権利者 ミノルタ株式会社
発明の名称 定常光とフラッシュ光を分離測光・制御する機能を有したカメラ  

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