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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A61K |
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管理番号 | 1079699 |
異議申立番号 | 異議2003-70806 |
総通号数 | 44 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-08-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-03-31 |
確定日 | 2003-07-02 |
異議申立件数 | 2 |
事件の表示 | 特許第3329818号「非揮発性オルガノポリシロキサンと、ホモポリマータイプまたはアクリルアミドとのコポリマーのタイプのメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドの架橋ポリマーとを基体とする水性分散液の香粧品中での使用または局所的適用」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3329818号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.本件発明 特許第3329818号(平成6年3月15日出願、平成14年7月19日設定登録。)の請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。 2.特許異議申立ての理由の概要 特許異議申立人高橋伸江は、証拠として甲第1号証〜甲第6号証を提出し、請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、請求項1に係る特許を取り消すべき旨主張している。 また、特許異議申立人虫賀正男は、証拠として甲第1号証〜甲第4号証を提出し、請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、請求項1に係る特許を取り消すべき旨主張している。 3.特許異議申立人が提出した甲各号証記載の発明 (1)特許異議申立人高橋伸江が提出した甲各号証記載の発明 ア.甲第1号証(米国特許第4331167号明細書) (a)沸点範囲が100〜190℃であるメチルポリシロキサン、(b)カチオン性で非界面活性の化合物、及び(c)両性で界面活性のイミダゾリン化合物、を含む毛髪処理用水性組成物が記載されており(クレーム1)、(b)成分の例として、ジメチルサルフェートで75%まで4級化されたポリジメチルアミノエチルメタクリレートが開示されている(クレーム3)。 イ.甲第2号証(特開昭63-57512号公報) 第4級トリメチルアンモニウム誘導コラーゲンポリペプタイドと、カチオン性ポリマーを含有する毛髪用化粧料が記載されており(特許請求の範囲第1項)、カチオン性ポリマーの例であるカチオン性ビニル重合体として、一般式(7)(式は省略)で示される重合体が開示されている(第4頁左下欄)。また、上記ポリペプタイドとカチオン性ポリマーは、シリコーンオイルなどの毛髪用化粧料に従来から採用されている組成に、配合できるとされている(第5頁右上欄第14行〜左下欄第19行)。 ウ.甲第3号証(FRAGRANCE JOURNAL,1990年5月号,第12〜47頁) 各種の化粧品類に使用されている各種のシリコーンについて、現状と課題、開発と課題等が記載されている。 エ.甲第4号証(特開平2-288817号公報) 化粧用スティック組成物が記載されており、当該組成物は1種以上の非揮発性皮膚軟化剤を含有することが好ましいとされ、非揮発性シリコーン油が例示されている(第8頁第12行〜第19行)。 オ.甲第5号証(米国特許第5445823号明細書) 皮膚用組成物が記載されており、当該組成物への付加的な添加成分として、CTFA名polyquaternium 32及び鉱油を有するSalcare SC92、CTFA名polyquaternium 37及び鉱油を有するSalcare SC95が増粘剤として例示されている(第10欄第51〜54行)。 カ.甲第6号証(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook, Ninth Edition 2002, Volume 2, pp.1316-1317, The Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association) polyquaternium-32、polyquaternium-37について記載されている。 (2)特許異議申立人虫賀正男が提出した甲各号証記載の発明 ア.甲第1号証(特開平2-167215号公報) (A)ビス(2-アルキル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリン)クロル酢酸錯体型両性界面活性剤、(B)カチオン性ポリマー、及び(C)高分子シリコーン、を含有するヘアーリンス剤組成物が記載されており(特許請求の範囲)、カチオン性ポリマーとして、アクリルアミド/β-メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメトサルフェート共重合体が開示されている(第3頁左上欄第12〜14行)。 イ.甲第2号証(特開平2-45409号公報) 第4級アンモニウム誘導ケラチンペプチドと、カチオン性ポリマーを含有する毛髪用化粧品が記載されており(特許請求の範囲第1項)、カチオン性ポリマーの例であるカチオン性ビニル重合体として、一般式(7)(式は省略)で示される重合体が開示されている(第8頁左下欄から右下欄)。また、上記毛髪用化粧品には、上記ペプチドとカチオン性ポリマーに加えて、シリコーンオイルなどが配合できるとされている(第9頁左下欄)。 ウ.甲第3号証(特公平4-59288号公報) 静電気低減剤、カチオン性皮膜形成ポリマー、及びジステアリルジメチルアンモニウム塩、を含有する人髪コンディショナーが記載されており(特許請求の範囲第1項)、カチオン性皮膜形成ポリマーの例として、アクリルアミドとメタクリロイル-オキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドとのコポリマー反応生成物が開示されている(特許請求の範囲第3項)。 エ.甲第4号証(特開昭62-277312号公報) 毛髪もしくは皮膚の手入のための化粧品組成物が記載されており、当該組成物には、アクリルアミドとメタクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムの塩化物との共重合体が配合されることが開示されている(第19頁左下欄第13〜16行)。 4.対比・判断 (1)請求項1に係る発明について 請求項1に係る発明と特許異議申立人高橋伸江および虫賀正男が提出した甲各号証記載の発明とを対比すると、甲各号証記載の発明は、本件発明の構成に欠くことのできない事項である、毛髪あるいは皮膚処理用の水性分散液の化粧品または皮膚科学的組成物において、特定の非揮発性オルガノポリシロキサンと、ホモポリマータイプまたはアクリルアミドとのコポリマータイプのメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドの架橋ポリマーとを含有するという事項を備えておらず、当該事項により、請求項1に係る発明は、毛髪の処理に使用すると、軽くて、絹のような、光沢ある毛髪を得ることができ、この毛髪の梳毛特性、柔らかさおよびもちといった特性が顕著に改善され、また、皮膚の処理に使用すると、べとつかない軟らかい手触りを与えるという、顕著な効果を奏するものである。したがって、請求項1に係る発明は、上記甲各号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 (2)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人高橋伸江は、甲第1号証に記載の毛髪処理用水性組成物における「ジメチルサルフェートで75%まで4級化されたジメチルアミノエチルメタクリレートのホモポリマー」は、請求項1に係る発明における「ホモポリマータイプのメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドの架橋ポリマー」と本体部分が同一であるから、いずれを用いても発明における効果の点で差異はないとして、請求項1に係る発明は、同人が提出した甲第1号証ならびに甲第3号証および/または甲第4号証に基づいて、当業者が容易に発明をできたものと主張しているが、 前者は鎖状ポリマーであるのに対し、後者は架橋ポリマーであるから、両者の本体部分が同一とはいえず、また、一般的には、鎖状ポリマーと架橋ポリマーのそれぞれの性質は異なるので、両者が同等の効果を奏するものとは想到し得ないから、かかる主張は採用できない。 さらに、同人は、甲第2号証に記載の毛髪用化粧料における「一般式(7)で示されるカチオン性ポリマー」として、甲第5号証に示される「polyquaternium 37」を想起することは当業者にとって自明ないし自然なことであるとして、請求項1に係る発明は、甲第2号証、甲第3号証および/または甲第4号証ならびに甲第5号証に基づいて、当業者が容易に発明をできたものと主張しているが、甲第2号証中の一般式(7)で示されるカチオン性ポリマーには架橋ポリマーが包含されないし、そもそも、甲第5号証は本件特許に係る出願の日前に公知となった刊行物ではないので、かかる主張は採用できない。 特許異議申立人虫賀正男は、甲第1号証に記載のヘアーリンス剤組成物における「アクリルアミド/β-メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメトサルフェート共重合体」は、請求項1に係る発明における「アクリルアミドとのコポリマータイプのメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドの架橋ポリマー」と極めて類似した化学構造を有し、かつ同等の機能を発揮することができるとして、請求項1に係る発明は、同人が提出した甲第1号証に基づき、必要により、甲第2号証から甲第4号証を参酌して、当業者が容易に発明をできたものと主張しているが、前者は鎖状ポリマーであるのに対し、後者は架橋ポリマーであるから、両者が極めて類似した構造を有するものとはいえず、また、一般的には、鎖状ポリマーと架橋ポリマーのそれぞれの性質は異なるので、両者が同等の機能を発揮するものとは想到し得ないから、かかる主張は採用できない。 4.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立人高橋伸江、虫賀正男の理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことができない。 また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2003-06-13 |
出願番号 | 特願平6-520706 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(A61K)
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最終処分 | 維持 |
特許庁審判長 |
眞壽田 順啓 |
特許庁審判官 |
渕野 留香 小柳 正之 |
登録日 | 2002-07-19 |
登録番号 | 特許第3329818号(P3329818) |
権利者 | ロレアル |
発明の名称 | 非揮発性オルガノポリシロキサンと、ホモポリマータイプまたはアクリルアミドとのコポリマーのタイプのメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドの架橋ポリマーとを基体とする水性分散液の香粧品中での使用または局所的適用 |
代理人 | 田崎 豪治 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 樋口 外治 |
代理人 | 長沼 暉夫 |
代理人 | 浅村 皓 |
代理人 | 西山 雅也 |
代理人 | 浅村 肇 |
代理人 | 鶴田 準一 |
代理人 | 歌門 章二 |