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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C02F
管理番号 1079735
異議申立番号 異議2002-73113  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-12-11 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-12-27 
確定日 2003-06-21 
異議申立件数
事件の表示 特許第3297419号「微生物及び/又はウィルス含有排水の殺菌方法及び装置」の請求項1ないし12に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3297419号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3297419号の請求項1ないし12に係る発明についての出願は、平成12年6月2日に特許出願され、平成14年4月12日にその特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人 伊藤廣美より特許異議の申立てがなされたものである。

2.特許異議申立てについて
(1)本件発明
特許第3297419号の請求項1ないし12に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明12」という。)は、明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】加熱殺菌すべき微生物及び/又はウィルス含有排水を当該微生物及び/又はウィルスの構成蛋白質が殺菌による変性後も沈澱しないpHとしたのち熱交換器に通し、所要殺菌温度に所要殺菌時間保持してなる微生物及び/又はウィルス含有排水の殺菌方法。
【請求項2】請求項1の殺菌方法において、前記排水を、前記微生物及び/又はウィルスの構成蛋白質が殺菌による変性後も溶解するアルカリ濃度としてなる微生物及び/又はウィルス含有排水の殺菌方法。
【請求項3】請求項2の殺菌方法において、前記微生物及び/又はウィルス含有排水を水酸化ナトリウムの添加により前記アルカリ濃度としてなる微生物及び/又はウィルス含有排水の殺菌方法。
【請求項4】請求項1から3の何れかの殺菌方法において、前記排水が前記構成蛋白質以外の蛋白質を含有する場合に、前記pH又はアルカリ濃度を、当該構成蛋白質以外の蛋白質も変成後に沈澱しないpH又はアルカリ濃度としてなる微生物及び/又はウィルス含有排水の殺菌方法。
【請求項5】請求項1から4の何れかの殺菌方法において、前記熱交換器へ通す前の微生物及び/又はウィルス含有排水を、前記殺菌温度に保持した後の殺菌済排水との熱交換により昇温してなる微生物及び/又はウィルス含有排水の殺菌方法。
【請求項6】請求項1から5の何れかの殺菌方法において、殺菌後の微生物及び/又はウィルスの生存割合が殺菌前の100万分の1(10-6)以下となる如く前記殺菌温度及び殺菌時間を調節してなる微生物及び/又はウィルス含有排水の殺菌方法。
【請求項7】微生物及び/又はウィルス含有排水を貯める原水受槽、前記原水受槽中の排水のpHを調整するpH調整装置、前記排水を所要殺菌温度に所要殺菌時間保持する熱交換装置、及び前記原水受槽中の排水を前記熱交換装置へ送る送水管を備え、前記pH調整装置により前記微生物及び/又はウィルスの構成蛋白質が殺菌による変性後も沈澱しないpHとした後の排水を前記送水管により前記原水受槽から前記熱交換装置へ送ってなる微生物及び/又はウィルス含有排水の殺菌装置。
【請求項8】請求項7の殺菌装置において、前記pH調整装置を前記原水受槽中にアルカリ剤を注入するアルカリ剤注入装置とし、当該注入装置により前記原水受槽中の排水を前記微生物及び/又はウィルスの構成蛋白質が殺菌による変性後も溶解するアルカリ濃度としてなる微生物及び/又はウィルス含有排水の殺菌装置。
【請求項9】請求項7又は8の殺菌装置において、前記送水管に、前記熱交換装置へ通す前の微生物及び/又はウィルス含有排水を前記殺菌温度に保持した後の殺菌済排水との熱交換により昇温する予熱装置を設けてなる微生物及び/又はウィルス含有排水の殺菌装置。
【請求項10】請求項7から9の何れかの殺菌装置において、前記予熱装置通過後の殺菌済排水を排出する放水管と前記送水管との間に弁を介して接続した管路洗浄ユニットを備え、洗浄時に前記弁の切替により前記送水管と熱交換装置と予熱装置と放水管と前記管路洗浄ユニットとからなる閉流路を形成してなる微生物及び/又はウィルス含有排水の殺菌装置。
【請求項11】請求項10の殺菌装置において、前記送水管と熱交換装置と予熱装置と放水管の管路をステンレス製とし、前記管路洗浄ユニットにより前記閉流路へ酸を供給してなる微生物及び/又はウィルス含有排水の殺菌装置。
【請求項12】請求項7から11の何れかの殺菌装置において、前記熱交換装置及び/又は前記予熱装置をスパイラル式熱交換器としてなる微生物及び/又はウィルス含有排水の殺菌装置。」
(2)申立ての理由の概要
特許異議申立人 伊藤廣美は、下記の甲第1号証ないし甲第5号証を提出し、本件発明1ないし12は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1ないし12の特許は、取り消されるべきものである旨、主張している。
甲第1号証:特開2000-15241号公報
甲第2号証:芝崎勲著「新・食品殺菌工学」昭和58年8月10日、株式会社光琳発行、第376〜377頁
甲第3号証:特開昭52-108056号公報
甲第4号証:特開昭62-166859号公報
甲第5号証:微生物研究法懇談会編「微生物学実験法」1984年7月20日、株式会社講談社発行、第256〜257頁
(3)甲各号証に記載された事項
甲第1号証には、特に、特許請求の範囲、【0017】〜【0047】段落及び第1〜3図の記載からみて、下記の2つの発明が記載されていると云える。
「医療施設から排出される感染性排水を、中和処理後に凝集剤を注入して撹拌・均質化して一次処理水となし、この一次処理水から有機物等の浮遊物質を凝集・沈降させたのち、上澄水を熱交換器に通し、滅菌温度以上で所定時間保持して完全滅菌処理する方法。」(以下、「甲1方法発明」という。)
「医療施設から排出される感染性排水を受入れ・貯留する調整槽、前記調整槽中の排水を中和するために排水のpHに応じて酸又はアルカリを注入する酸注入手段及びアルカリ注入手段と前記調整槽中の排水に凝集剤を注入する凝集剤注入手段からなる一次処理手段、前記調整槽における一次処理済の排水中の浮遊物質を凝集沈殿せしむる沈殿槽、前記沈殿槽からの上澄水を殺菌温度以上に加熱し所要時間保持する熱交換器、並びに前記調整槽中の排水を沈殿槽に送り沈殿槽からの上澄水を熱交換器へ送る送水管を備えた排水の処理設備。」(以下、「甲1装置発明」という。)
また、甲第2号証には、食品工場における洗浄に関し、アルカリは蛋白質を水溶性にする旨記載されており、甲第3号証には、卵白の加熱殺菌時の凝固を防止するために、卵白を希薄溶液としこの溶液のpHを9以上とすることが記載されている。さらに、甲第4号証には、高圧蒸気による大豆の酵素失活処理時における蛋白質の不溶化を防ぐために、大豆にアルカリ溶液を添加することが記載されており、甲第5号証には、微生物細胞の蛋白質含量の定量に関し、NaOH溶液により蛋白質を可溶化させる旨記載されている。
(4)対比、判断
(4)-1.本件発明1について
本件発明1と上記甲1方法発明とを対比すると、後者における「医療施設から排出される感染性排水」は、「感染性」であることからみて微生物及び/又はウィルスを含むものであり、前者における「微生物及び/又はウィルス含有排水」に相当する。よって、両者は、
「加熱殺菌すべき処理水を熱交換器に通し、所要殺菌温度に所要殺菌時間保持してなる微生物及び/又はウィルス含有排水の殺菌方法。」で一致し、次の点で相違する。
(i)加熱殺菌すべき処理水が、前者は、微生物及び/又はウィルス含有排水であるのに対し、後者は、微生物及び/又はウィルス含有排水を、中和処理後に凝集剤を注入して撹拌・均質化して一次処理水となし、この一次処理水から有機物等の浮遊物質を凝集・沈降させた上澄水である点。
(ii)前者は、加熱殺菌すべき処理水を、微生物及び/又はウィルスの構成蛋白質が殺菌による変性後も沈澱しないpHとしたのち熱交換器に通しているのに対し、後者は、かかる事項について何等特定がない点。
そこでまず、相違点iiについて検討すると、本件発明1は、熱交換器利用の殺菌処理では、熱処理により固化変性した微生物・ウィルス、及び排水中の他の有機物が配管内に沈澱・付着し、配管を閉塞するおそれがあるという問題を解決し、配管の閉塞を生じさせない熱交換器利用の微生物及び/又はウィルス含有排水の殺菌方法を提供することを目的とするものであって、上記相違点iiに係る「微生物及び/又はウィルスの構成蛋白質が殺菌による変性後も沈澱しないpHとしたのち熱交換器に通」すという構成を採用したことにより上記問題を解決したものである。これに対して、甲第1号証には、加熱殺菌すべき処理水を熱交換器に通すことにより生じる熱交換器の配管の閉塞の問題自体記載も示唆もされておらず、また、甲第2号証ないし甲第5号証には、結局、蛋白質は加熱により凝固すること及びpHをアルカリ性に調整することによって蛋白質が溶解することという一般的事項が開示されているだけであって、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された事項を検討しても、甲第2号証ないし甲第5号証に開示された一般的事項を甲第1号証に記載された加熱処理すべき処理水を熱交換器を利用して殺菌する方法に適用することに関して何等教示する記載はない。
したがって、相違点iについて検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは云えない。
(4)-2.本件発明2ないし6について
本件発明2ないし6は、いずれも本件発明1を直接的又は間接的に引用したものであるから、少なくとも上記(4)-1で述べた点において甲1方法発明と相違する。
そして、相違点についての判断は上記(4)-1で述べたとおりであるから、本件発明1と同様、本件発明2ないし6も、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは云えない。
(4)-3.本件発明7について
本件発明7は上記(1)で認定したとおりのものである。そして、本件発明7と甲1装置発明を対比すると、後者における「医療施設から排出される感染性排水」については(4)-1で述べたとおりであり、後者における「調整槽」は前者における「原水受槽」に相当し、後者における「熱交換器」は前者における「熱交換装置」に相当する。また、後者における「酸注入手段及びアルカリ注入手段」は、調整槽中の排水のpHを調整する点においては、前者における「pH調整装置」に相当する。さらに、後者の「処理設備」は、「医療施設から排出される感染性排水」のうち「沈殿槽からの上澄水」の「殺菌装置」と云えるから、両者は、
「微生物及び/又はウィルス含有排水を貯める原水受槽、前記原水受槽中の排水のpHを調整するpH調整装置、及び加熱殺菌すべき処理水を所要殺菌温度に所要殺菌時間保持する熱交換装置を備えた微生物及び/又はウィルス含有排水の殺菌装置。」で一致し、下記の点で相違する。
(iii)前者は、原水受槽中の排水を熱交換装置へ送る送水管を備えているのに対し、後者は、原水受槽中の排水に凝集剤を注入する凝集剤注入手段及び原水受槽における一次処理済の排水中の浮遊物質を凝集沈殿せしむる沈殿槽をさらに備え、前記原水受槽中の排水を沈殿槽に送り沈殿槽からの上澄水を前記熱交換装置へ送る送水管を備えている点。
(iv)加熱殺菌すべき処理水が、前者は、微生物及び/又はウィルス含有排水であるのに対し、後者は、沈殿槽からの上澄水である点。
(v)前者は、pH調整装置により前記微生物及び/又はウィルスの構成蛋白質が殺菌による変性後も沈澱しないpHとした後の排水を送水管により原水受槽から熱交換装置へ送るものであるのに対し、後者は、pH調整装置は原水受槽中の排水を中和するために排水のpHに応じて酸またはアルカリを注入するのものであって、熱交換装置に送られる上澄水のpHについては特定がない点。
そこで、相違点vについて検討すると、上記(4)-1において相違点iiについて述べたことと同様のことが云えるから、甲第2号証ないし甲第5号証に開示された一般的事項を熱交換装置を利用した微生物及び/又はウィルス含有排水の殺菌装置に適用して、上記相違点vに係る本件発明7の構成を想到することは、当業者にとって容易に為し得たこととは云えない。
したがって、相違点iii及びivについて検討するまでもなく、本件発明7は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは云えない。
(4)-4.本件発明8ないし12について
本件発明8ないし12は、いずれも本件発明7を直接的又は間接的に引用したものであるから、少なくとも上記(4)-3で述べた点において甲1装置発明と相違する。
そして、相違点についての判断は上記(4)-3で述べたとおりであるから、本件発明7と同様、本件発明8ないし12も、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは云えない。
(5)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては本件発明1ないし12についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし12についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-05-20 
出願番号 特願2000-165344(P2000-165344)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C02F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 杉江 渉  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 岡田 和加子
西村 和美
登録日 2002-04-12 
登録番号 特許第3297419号(P3297419)
権利者 鹿島建設株式会社
発明の名称 微生物及び/又はウィルス含有排水の殺菌方法及び装置  
代理人 市東 篤  
代理人 市東 禮次郎  
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