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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G03B |
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管理番号 | 1079744 |
異議申立番号 | 異議2002-71498 |
総通号数 | 44 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-03-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-06-14 |
確定日 | 2003-06-18 |
異議申立件数 | 2 |
事件の表示 | 特許第3240222号「感光材料搬送方法及び装置」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3240222号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3240222号の請求項1〜4に係る発明についての出願は、平成5年9月13日に出願され、平成13年10月12日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、中森繁雄、コニカ株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成14年11月5日に特許異議意見書が提出された後、再度取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成15年2月10日に特許異議意見書が提出されたものである。 2.特許異議の申立ての概要 (1)異議申立人中森繁雄は、下記の甲第1号証を提出し、請求項1〜3に係る発明の特許は、甲第1号証より、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから取り消すべき旨、 甲第1号証:実願平3-32062号(実開平4-126242号)のマイクロフィルム (特許異議申立書に記載された甲第1号証は、実態的に実願平3-32062号(実開平4-126242号)のマイクロフィルムであるため、このように認定した。) (2)異議申立人コニカ株式会社は、下記の甲第1、2号証を提出し、請求項1〜4に係る発明の特許は、甲第1、2号証より、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから取り消すべき旨、それぞれ、主張している。 甲第1号証:特開昭64-81937号公報 甲第2号証:特開平5-43102号公報 3.請求項1乃至4に係る発明 本件特許3240222号の請求項1〜4に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明2」、「本件発明3」、「本件発明4」という。)は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。 本件発明1 「【請求項1】 マガジンに収納された長尺の感光材料を引き出し、指定されたサイズに応じて切断して、露光位置へ搬送し露光するための感光材料搬送方法であって、前記マガジンから引き出された感光材料の後端近傍を検出した時点で、指定されたサイズと前記感光材料の使用可能な残りの長さとに基づいて、露光を継続するか否かを選択し、露光の継続が選択された場合は前記露光を1回行った後にマガジンを交換し、露光の中止が選択された場合は未露光状態でマガジンを交換することを特徴とする感光材料搬送方法。」 本件発明2 「【請求項2】 前記露光の中止が選択された場合に、前記引き出された感光材料を切断した後にマガジンを交換することを特徴とする請求項1記載の感光材料搬送方法。」 本件発明3 「【請求項3】 前記露光の中止が選択された場合に、前記引き出された感光材料ごとマガジンを交換することを特徴とする請求項1記載の感光材料搬送方法。」 本件発明4 「【請求項4】 マガジンに収納された長尺の感光材料を引き出し、指定されたサイズに応じて切断して、露光位置へ搬送し露光するための感光材料搬送装置であって、マガジンから引き出された直後の位置で予め感光材料に設けられた後端マークを検出する後端マーク検出センサと、前記後端マーク検出センサから所定長さだけ下流側に配設され前記感光材料を切断するカッタと、前記カッタから所定長さだけ下流側に配設され引き出された感光材料の有無を検出する感光材料先端検出センサと、前記感光材料先端検出センサで前記感光材料の先端が検出されてからの搬送長を計測する搬送長計測手段と、下記(イ)、(ロ)、(ハ)の何れかの指示を告知手段により指示する制御手段と、を有する感光材料搬送装置。 (イ) 前記後端マーク検出センサで感光材料に設けられた後端マークを検出した時点で、前記感光材料先端検出センサによって感光材料を検出していない場合には、引き出された感光材料ごと、或いは残りの感光材料を全て引き出して露光位置へ搬送した後、前記マガジンの交換を指示する。 (ロ) 前記後端マーク検出センサで感光材料に設けられた後端マークを検出した時点で、前記感光材料先端検出センサによって感光材料を検出しており、かつ前記後端検出センサから前記感光材料の先端までの長さが指定されたサイズに対応する長さより長い場合には、前記指定された長さで感光材料を切断して1回露光した後、前記マガジンの交換を指示する。 (ハ) 前記後端マーク検出センサで感光材料に設けられた後端マークを検出した時点で、前記先端検出センサによって感光材料を検出しており、かつ前記後端検出センサから前記感光材料の先端までの長さが指定されたサイズに対応する長さより短い場合には、感光材料後端を検出した時点で感光材料を切断し、露光位置へ搬送した後、前記マガジンの交換を指示する。」 4.引用刊行物 (1)本件発明1〜4に対して、当審が平成14年12月2日付けで通知した取消理由で引用した刊行物1[異議申立人コニカ株式会社が提出した甲第1号証〔特開昭64-81937号公報〕]には、次のような記載がある。 (1a)「ロール状感光材料は、例えばサイズを操作パネル上でB2判にセットした場合、材料幅570mmのロール状感光材料はその先端から850mmの位置で切断され、570mm×850mmの感光材料が撮影台上に載置されることになる。このようにして所望サイズをセットして行くと、ロール状感光材料(以下ロール感材Rと称する)の残量も少なくなり、遂には該ロール感材Rの後端を検知することになる。従来、ロール感材Rの後端を検知した後は、該ロール感材Rの最終切断先端から前記後端までの材料長を知り得なかったため、 (a)ロール感材Rの搬送を停止して収納マガジン側から該ロール感材Rの残量を抜き取る(ロール感材Rの最終残量が短く、マガジン側より引き出し可能な場合)。 (b)ロール感材Rが複数の搬送ローラに挟持されていてマガジン側から引き出せないときは、強制的に自動現像装置側へ搬送させ、各処理槽を経由させた後機外に排出させる。 (c)ロール感材Rが複数の搬送ローラに挟持されていてマガジン側から引き出せないときは、強制的に撮影台まで搬送させ、本体側板を取り外して該撮影台上からロール感材Rを取り除く。 等の方法によって一律にロール感材Rの残量を装置本体から取り除いていた。」(第2頁左上欄第3行〜右上欄第8行) (1b)「又、上記のような一律除去方法とは別にロール感材Rの後端よりやや内側にニアエンドマークを施す方法がある。これはニアエンドマークを検知手段によって検知し、ロール感材R後端までの残り長さを算出し、算出した残量を表示したり、この残量が指定必要寸法に不足していれば警告又は表示等によりオペレーターに知らせる方法である。」(第2頁右上欄第9〜16行) (1c)「上記ロール感材Rは、収納マガジン7から搬送ローラ対10aによって引き出され、この搬送ローラ対10aに連動回転するエンコーダ8によってその材料長が計測され、メイン制御部よりの指令で搬送を停止した後、カッタ11により切断されてシート状とされたる。この後、撮影台12上に搬送されて所定位置に静止する。この状態において、原稿部(不図示)からの光像は、ミラー1、カラーフィルタ2、レンズ4、絞り5、シャッタ6から成る光学系を通過して撮影台12上に静止するシート状感光材料S上に結像し潜像を形成する。」(第3頁右上欄第5〜15行) (1d)「次に感光材料搬送過程を第1図および第2図に基づいて手順に従って説明する。 (1)検査に使用する原稿(原版)を原稿台上の所定位置にセットし、該原稿のサイズにあった感光材料サイズ選択ボタンを押す。そうすることにより原稿サイズに合ったサイズが設定され操作パネル上の数値表示部に設定長が表示される。 (2)操作パネル14の感光材料セットボタン14cをONにすると、給紙用モータM1が回転を開始し、搬送ローラ対10aが駆動回転して挟持するロール感材Rを収納マガジン7から引き出し、搬送ローラ用モータM3に接続する搬送ローラ対10bにより搬送され、更にベルト搬送用モータM4により回動される搬送ベルト15および上ローラによって搬送され、所定の設定長さに至ると一旦停止して、カッタ用モータM2よって駆動されるカッタ11によりロール感材Rは所定サイズにカットされる。ロール感材Rの材料長の測定制御はエンコーダ8及びメイン制御部16によって行われる。エンコーダ8は、給紙モータM1に連動回転し、従って搬送ローラ対10aに同期回転することになり、該エンコーダ8のパルスカウントは前記搬送ローラ対10aの円周長を、そしてそれはロール感材Rの材料長を表すことになる。 (3)カットされたシート状感光材料Sは再びモータM4により回動する搬送ベルト15により搬送され、停止長カウント開始スイッチ17及び停止長エンコーダ18等により停止位置を検知した後、搬送ベルト15の送行が停止され、静止状態となる。 第3図は ロール感材Rの後端検知時における感光材料搬送装置内各手段の作動のタイムチャートである。 上記感光材料搬送過程中、操作パネル14において設定した設定長さに到達する以前にロール感材Rの後端に達する。ロール感材Rの後端が後端検知センサ9のアクチュエータ部を通過するとアクチュエータが解放され、該センサ9がONになる。ただちに給紙用モータM1と搬送ローラ用モータM3が停止する。ロール感材Rの後端検知状態であることが操作パネル上に表示され、点滅警告灯やブザー等で警告する。シート状感光材料Sが撮影台所定位置に静止した後、エンコーダ8によってパルスカウントされた切断先端からカッタ11までの材料長とカッタ11から後端検知センサ9までの材料長(一定)とがプラスされた材料実長が操作パネル14の表示部14bに表示される。」(第3頁右下欄第9行〜第4頁右上欄第14行) (1e)「ロール感材Rは、その後端Eが後端検知センサ9によって検知されると、給紙モータM1と搬送ローラ用モータM3とが停止するので、上記後端Eが後端検知センサ9を通過した直後に搬送が停止される。この状態において、該ロール感光材料Rの後端E付近は第4a図か又は第4b図に示したいずれかに含まれる。 第4a図は、殆ど操作パネル14上で設定した設定材料長に近い長さまでロール感光材料Rが搬送された段階で後端Eが検知され停止した場合である。この場合は、切断先端Fからカッタ刃位置Cまでの長さは設定材料長l3(決定注:表記された「設定材料長l3」は誤記と認める。以下、同じ。)に不足するもののカッタ刃位置Cから後端Eまで長さdを加えると材料実長l1+dが設定材料長l3を越えるのでそのまま露光操作を続行できる。この場合、材料実長は予め設定した設定材料長を越えるので、表示部には該設定材料長が数値表示され、原稿の変更等を行わずに操作継続可能であることを示す。 第4b図は、ロール感材Rの搬送途中で後端Eを検知して停止した場合である。この場合は切断先端Fからカッタ刃位置Cまでの長さl1にカッタ刃位置Cから後端Eまでの長さdを加えた長さl1+dが設定材料長l3に不足する。この場合オペレータが後端検知の警告に基づき感材が撮影位置に静止した後、操作パネル14上の数値表示部の設定長さ量(この場合、最終処理長)をチェックする。この場合、残っているロール感材Rの材料実長l1+dが表示部14bに数値表示される。オペレータは表示された上記材料実長l1+dの数値に基づき原稿を小サイズの原稿に差し替える等の操作を行う。 【発明の効果】 本発明により、ロール感材Rの後端を検知して検知時に残っている材料実長を表示できるようにしたので、該材料実長に対応させて原稿を差し替える等の操作が可能となり、ロール感材のロスを未然に防止することが可能な自動写真焼付装置のロール状感光材料後端検出装置が提供できることとなった。」(第4頁左下欄第2行〜右下欄下から第2行) これらの記載事項及び図面の記載からみて、刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認める(以下、「引用発明1」という。)。 「収納マガジンに収納されたロール状感光材料を引き出し、設定材料長に応じて切断して、撮影台へ搬送し露光するための感光材料搬送方法であって、 前記収納マガジンから引き出されたロール状感光材料の後端Eを検知した時点で、設定材料長l3と切断先端Fからカッタ刃位置Cまでの長さl1にカッタ刃位置Cから後端Eまでの長さdを加えた長さl1+d(以後、該下線部分を「残り長さL」という。)とに基づいて、 残り長さLが設定材料長より長い場合、露光操作をそのまま続行し、 残り長さLが設定材料長より短い場合、小サイズの原稿に差し替えることを特徴とする感光材料搬送方法。」 (2)同刊行物2〔異議申立人中森繁雄が提出した甲第1号証(実願平3-32062号(実開平4-126242号)のマイクロフィルム)〕には、次のような記載がある。 (2a)「【0001】【産業上の利用分野】本考案は写真焼付装置における長巻印画紙の後端部において所定長さのものは確実に使用し、所定長さ以下のものは確実に使用しないようにして該印画紙の収率を高くし、しかも障害なく焼付できるようにする技術に関する。 【0002】【従来の技術】従来の135タイプネガより長巻のカラー印画紙にプリントをする写真焼付装置においては、該長巻印画紙の後端端末部は最終巻径に近い巻径をセンサーで検出したり、計尺カッター位置からかなり離れた位置にセンサーを置いて印画紙後端部をセンサーで検出して、印画紙の送り出しを終了させ、新しい長巻印画紙スクロールを装填し直して再起動させている。 【0003】【考案が解決しようとする課題】このような印画紙スクロールの端末部の検出手段では、正常にまだ充分に使用可能の何枚分かの高価な印画紙が必然的に空しく廃棄されてしまうことになる。」(第3頁第2〜17行) (2b)「【0008】巻芯12に巻かれた印画紙13のスクロール13aはマガジン11に収納され該印画紙13はその先端部を引出口14から各搬送ローラ対22,23に挟持されて繰出され、所要サイズの長さが送られて、カッター21によって各設定サイズの計尺長に切断される。」(第4頁第13〜第17行) (2c)「【0011】また、印画紙引出口14の部分又はその近傍に印画紙後端部を検知するセンサー15が設けられていて、該センサー15とカッター21との距離は前記印画紙計尺長の最小長さa(最小サイズの長さ)より僅か長めのXにとってある。」(第5頁段落番号0011) (2d)「【0015】また、印画紙スクロール13aの後端部が巻芯12からほどかれて引出口14近傍に設けた後端エッジ検出手段としてのセンサー15のところを通過し該センサー15に検出されるとカッター21が作動しないようにしたまま搬送されるようにしてある。 【0016】そのとき最後尾の印画紙サイズは最小サイズの長さaよりは長くそれ以外の任意のサイズよりほぼ短くなっている。したがって、その最後尾の印画紙サイズは搬送路の途中で送り不足となって該搬送路に停滞閉塞をしてしまうことはなくなる。この途中での閉塞を起すと以後装填し直した印画紙の通過を不能にしジャム現象を起させてしまうようになる。 【0017】また、最小サイズaより最後尾の印画紙は小サイズにはならないのだから最小サイズに合わせたプリント焼付を行うときは常に正常なプリントが得られている。但し、最後尾の印画紙の長さは計尺長さaに+αがつなげられた長さになっているので、それは回収後余分の部分を適当に切り落してやればよい。 【0018】次に最小サイズaより大きいサイズの場合について述べる。この場合には最後尾の印画紙の長さa+αであるがαの大きさは0<α<aの関係にあり、所要サイズより短くなることがある。したがってこれに対応する露光は与えず、そのまま現像部へ送り、現像は行うが、像は得られないので顧客にわたることはない。この場合対応するネガは露光位置にストップさせたまま次の新しい印画紙スクロールを装填したときの先頭部の計尺印画紙に焼付露光させて対処するようにしてある。」(第5頁段落番号0015〜第6頁段落番号0018) (3)同刊行物3〔異議申立人コニカ株式会社が提出した甲第2号証(特開平5-43102号公報)〕には、次のような記載がある。 (3a)「【0012】感光材料1はマガジン2から引き出され、図1の右方から左方に搬送されるものとする。感光材料1の搬送経路に沿って、エンドマーク3の有無を検出するためのセンサ4、搬送ローラ5、カッタ6(決定注:表記された「カッタ6」は「カッター6」の誤記と認められる。以下、同じ。)、搬送ローラ7、8、更に感光材料1の一定サイズ分Wが有るか否かを検出するためのセンサ9が設けられている。なお、エンドマーク3は感光材料1に形成された開口であり、センサ4、5として光学的センサが適用されているが、これらに限定されるものではない。通常の待機状態にあっては、感光材料1の先端はセンサ4から距離Uだけ離れたホームポジションHに位置決めされている。そして、画像形成を行う際は、ユーザーによって感光材料1のサイズが指定されるか、或いは自動読み取りによりサイズが指定されるので、待機位置Uを起点としてマガジン2から必要長さ分の感光材料1を引き出すことになる。 【0013】次に、図2を参照しながら、感光材料1の引き出し動作を説明する。ステップS1に示すように、画像形成の要求(スタート)があると、感光材料1のサイズ算出が行われ、ステップS2に示すように必要分について感光材料1の引き出しが行われる。この時点でセンサ4によりエンドマーク3が検出されない場合は、ステップS4に示すように必要サイズの引き出し完了になり、カッタ6により感光材料1のカットが行われる。そして、マガジン側の感光材料1はマガジン2に巻戻されるのであるが、巻戻しの距離はカッター6とホームポジションHまでの間であり、図中に示した距離Aが巻戻し距離である。これに対し、カッター6により切り離された感光材料1は、図1の左方に搬送され、この感光材料1について次のステップS5に示すように通常の画像形成が行われる。また、ステップS4において何らかのトラブルにより必要サイズの感光材料1が引き出されなかった場合は、ステップS4に戻って同一動作が繰り返される。」(第3頁段落番号0012〜0013) (3b)「【0014】一方、ステップS3において、センサ4によりエンドマーク3が検出された場合は、下記のような2つの動作が行われる。その第1は、感光材料1を一定長さW分引き出すまでにエンドマーク3が検出された場合の動作であり、これを例示すると図1(b)のように供給開始からエンド検出までの長さXが一定長さWに満たない状態である。その第2は一定長さW分以上引き出した段階でエンドマーク3が検出された場合の動作であり、この状態は図1(c)に例示されている。そして、第1及び第2の動作の判別は、図2に示すステップS11において行われる。第1の動作の場合はステップS12、S13に示す動作が行われ、第2の動作の場合はステップS14の動作が行われるのであるが、その内容を図1の(a)〜(c)を参照して詳細に説明する。 【0015】ここで図中の英文字符号について説明すると、Wは感光材料1を引き出す際のホームポジションHからの一定長さ、Uは感光材料1のホームポジション(停止位置の先端)とセンサ4との距離、Vはエンドマーク3以降の残りの長さ、Aは戻し長さ、Xは供給開始からエンド検出までの長さを示すものであり、X以外は一定量である。そして第1の場合、即ち(b)の状態ではX<Wになり、この場合はステップS12に示すように感光材料1の残量を全て引き出し、マガジン2から感光材料1が出ないようにする。従って、感光材料1の有無は一目で判るようになり、これを誤装填するようなことはない。感光材料1を全て引き出してから、ステップS13に示すようにエンド表示を行う。 【0016】第2の場合、即ち(c)の状態ではX>Wになり、この場合は長さA分を巻戻してからカッタ6により感光材料1を切断する。この結果、エンドマーク3はセンサ4の位置からマガジン2側に戻るが、マガジン2内に入り込むことはなく、マガジン2外からエンドマーク3を目視し得るようになる。従って、感光材料1の残量の有無が容易に判別できることになり、誤装填を防止できる。この動作は図2に示すステップ14の動作に相当し、次にステップS13に示すようにエンド表示を行う。なお、ステップS14の場合であっても、画像形成に必要なサイズが採れる場合は、カットした感光材料1について通常の画像形成が行われるる。」(第3頁段落0014〜第4頁0016) (3c)「【0017】次に、図3参照して上記制御を行うための回路構成の一例を説明する。制御回路11には、センサ4、5の検出信号や、入力回路12から入力信号が供給される。入力信号は、画像形成に必要なサイズ等を指定する信号であり、ユーザーにより手動で入力されることもあれば、自動読み取りにより入力されることもある。記憶回路13には、図1について説明したW、U、V、A等のデータが格納され、データXは入力信号として供給される。記憶回路13に格納されたデータは、画像形成を行う際に制御回路11により必要に応じて読みだされる。駆動回路14は、ローラ5、7、8の正回転、即ち感光材料1を引き出す回転と、回転停止、更にA分を巻戻す回転等を行うものであり、回転制御信号は制御回路11から供給される。また、特に図示していないが、カッタ6を駆動するための駆動回路等も設けられる。表示手段15(決定注:表記された「表示回路15」は誤記と認める。)はエンド表示を行うものであり、表示信号は制御回路11から供給される。」(第4頁段落0017) (3d)「【0021】・・・感材マガジン2から引き出されて所定長さに切断された感光材料1は、露光部16へ搬送されるようになっている。・・・感光材料1への露光は、光源28と第1移動ミラー22Aを移動させながら第2移動ミラー22Bを所定のスピードで追従移動し、光源28からの光を原稿に沿って照射し、その反射光をミラー22A,22B,23、結像レンズユニット19を用いて露光部16に位置する感光材料1へ結像し走査露光する。」(第4頁段落0021〜0022) これらの記載事項(3a)〜(3d)及び図面の記載からみて、刊行物3には、以下の発明が記載されているものと認める(以下、「引用発明3」という。)。 「マガジン2に収納された感光材料1を引き出し、必要サイズに応じて切断して、露光部16へ搬送し露光するための感光材料搬送装置であって、マガジン2から引き出された直後の位置で予め感光材料1に設けられたエンドマーク3を検出するセンサ4と、前記センサ4から所定長さだけ下流側に配設され前記感光材料1を切断するカッター6と、前記カッター6から所定長さだけ下流側に配設され、感光材料1の一定サイズ分が有るか否かを検出するセンサ9と、下記(イ)、(ロ)、(ハ)の何れかの表示を表示手段15により表示する制御回路11と、を有する感光材料搬送装置。 (イ)前記センサ4で感光材料1に設けられたエンドマーク3を検出した時点で、前記センサ9によって感光材料1を検出していない場合には、残りの感光材料1を全て引き出してから、エンド表示を行う。 (ロ)前記センサ4で感光材料1に設けられたエンドマーク3を検出した時点で、前記センサ9によって感光材料1を検出した場合には、感光材料を切断し、エンド表示を行うが、画像形成に必要なサイズが採れる場合には露光を行う。 (ハ)前記センサ4で感光材料1に設けられたエンドマーク3を検出した時点で、前記センサ9によって感光材料1を検出した場合には、感光材料を切断し、エンド表示を行うが、画像形成に必要なサイズが採れない場合には画像形成を行わない。」 5.対比・判断 (1)本件発明1について (a)本件発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1における「収納マガジン」、「ロール状感光材料」、「設定材料長」、「撮影台」、「検知」、「残り長さL」、「露光操作」、「続行」は、それぞれ本件発明1の「マガジン」、「長尺の感光材料」、「指定されたサイズ」、「露光位置」、「検出」、「感光材料の使用可能な残り長さ」、「露光」、「継続」に相当する。 また、刊行物1の記載事項(1e)(特に、「この場合は、切断先端Fからカッタ刃位置Cまでの長さは設定材料長l3に不足するもののカッタ刃位置Cから後端Eまで長さdを加えると材料実長l1+dが設定材料長l3を越えるのでそのまま露光操作を続行できる。・・・この場合は切断先端Fからカッタ刃位置Cまでの長さl1にカッタ刃位置Cから後端Eまでの長さdを加えた長さl1+dが設定材料長l3に不足する。・・・オペレータは表示された上記材料実長l1+dの数値に基づき原稿を小サイズの原稿に差し替える等の操作を行う。」の部分参照。)からみて、引用発明1は、設定材料長と残り長さLとに基づいて、露光操作を続行するか否かを選択しているものであるとともに、残り長さLを考慮すると2回以上の露光操作は不可能であることから、当然に1回しか露光を行わないものと認められる。 したがって、両者は、「マガジンに収納された長尺の感光材料を引き出し、指定されたサイズに応じて切断して、露光位置へ搬送し露光するための感光材料搬送方法であって、 前記マガジンから引き出された感光材料の所定位置を検出した時点で、指定されたサイズと前記感光材料の使用可能な残り長さとに基づいて、露光を継続するか否かを選択し、露光の継続が選択された場合は前記露光を1回行う」点で一致しており、以下の点で相違している。 (a-1)相違点1 露光を継続するか否かを判断する時点として、本件発明1では、感光材料の後端近傍を検出した時点とするのに対して、引用発明1においては、後端を検出している点。 (a-2)相違点2 露光の継続が選択され、前記露光を1回行った後、本件発明1では、マガジンを交換するのに対して、引用発明1においては、マガジンの交換については言及していない点。 (a-3)相違点3 本件発明1が、露光の継続が選択されない場合は、露光の中止が選択され、未露光状態でマガジンを交換するのに対し、引用発明1では、露光の継続が選択されない場合は、小サイズの原稿に差し替える点。 (b)上記相違点について、以下に検討する。 (b-1)相違点1について 刊行物1の記載事項(1b)(「ロール感材R(本件発明1の「長尺の感光材料」に相当する)の後端よりやや内側にニアエンドマークを施す方法がある。これはニアエンドマークを検知手段によって検知(本件発明1の「検出」に相当する。)し、ロール感材R後端までの残り長さを算出し、算出した残量を表示したり、この残量が指定必要寸法に不足していれば警告又は表示等によりオペレーターに知らせる方法である。」)からみて、感光材料の後端近傍を検出することが記載されていると認められ、周知の技術事項である。 このような周知の技術事項を引用発明1に適用することが技術的に困難であるとも認められず、また、当該適用によって格別の効果を奏するものでもない。 (b-2)相違点2について 刊行物1の記載事項(1a)(特に、「従来、ロール感材R(本件発明1の「長尺の感光材料」に相当する。)の後端を検知した後は、該ロール感材Rの最終切断先端から前記後端までの材料長を知り得なかったため、(a)ロール感材Rの搬送を停止して収納マガジン(本件発明1の「マガジン」に相当する。)側から該ロール感材Rの残量を抜き取る(ロール感材Rの最終残量が短く、マガジン側より引き出し可能な場合)。」の部分参照。)及び刊行物2の記載事項(2a)(特に、「印画紙(本件発明1の「感光材料」に相当する。)後端部をセンサーで検出して、印画紙の送り出しを終了させ、新しい長巻印画紙スクロール(本件発明1の「長尺の感光材料」に相当する。)を装填し直して再起動させている。・・・このような印画紙スクロールの端末部の検出手段では、正常にまだ充分に使用可能の何枚分かの高価な印画紙が必然的に空しく廃棄されてしまうことになる。」の部分参照。)にあるように、感光材料の使用可能な残り長さが所定値以下となった場合に当該感光材料を交換することは当然のことであり、当該感光材料がマガジンに収納されているものであれば、マガジンも交換することは当業者にとって自明である。 よって、引用発明1において、露光の継続が選択され、前記露光を1回行った後、マガジンを交換することは、当業者であれば必要に応じて適宜なしえる事項である。 (b-3)相違点3について 刊行物2の記載事項(2d)(特に、「印画紙スクロール13a(本件発明1の「長尺の感光材料」に相当する。)の後端部が巻芯12からほどかれて引出口14近傍に設けた後端エッジ検出手段としてのセンサー15のところを通過し該センサー15に検出されるとカッター21が作動しないようにしたまま搬送されるようにしてある。」及び「最小サイズaより大きいサイズ(本件発明1の「指定されたサイズ」に相当する。)の場合について述べる。この場合には最後尾の印画紙の長さ(本件発明1の「感光材料の使用可能な残り長さ」に相当する。)a+αであるがαの大きさは0<α<aの関係にあり、所要サイズより短くなることがある。したがってこれに対応する露光は与えず、そのまま現像部へ送り、現像は行うが、像は得られないので顧客にわたることはない。」の部分参照。)からみて、長尺の感光材料の後端部が検出された時点で、感光材料の使用可能な残り長さが指定されたサイズより短い場合には、露光を与えないことが記載されていると認められる。 そして、引用発明1においても、刊行物2記載のものと同様に、指定されたサイズと感光材料の使用可能な残り長さに基づいてその後の処置を定めていることから、引用発明1において露光の継続が選択されない場合は、刊行物2のように感光材料に露光を与えない、すなわち未露光状態とすることは当業者であれば容易に想到できることである。 また、上記5(1)(b-2)で述べたように、感光材料の使用可能な残り長さが所定値以下となった場合にマガジンを交換することは当然のことであるから、刊行物1記載の発明において、露光の継続が選択されず、感光材料を未露光状態とした場合に、マガジンを交換することは、当業者であれば必要に応じて適宜なしえる事項である。 (c)また、本件発明1の効果も刊行物1及び2から予測される程度のものにすぎない。 (d)したがって、本件発明1は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。 (e)なお、特許権者は、平成15年2月10日に提出された特許異議意見書において、本件発明1は「露光され、現像処理された感材に半端サイズの未露光部分が残ることはない」(第3頁第18〜19行)及び「全て自動で行われるのでオペレータの負担は大幅に軽減される。」(第3頁第27行、)旨主張するが、引用発明1においても、小サイズの原稿に差し替えることはロール感材のロスを防止するためであり、小サイズの原稿に差し替えることなく本件発明1のようにすることは、上述のとおり当業者にとって容易である。 (2)本件発明2について (a)本件発明2は、本件発明1の構成を、「前記露光の中止が選択された場合に、前記引き出された感光材料を切断した後にマガジンを交換すること」とさらに限定したものである。 (b)他方、刊行物3の記載事項(3b)(特に、「ステップS3において、センサ4によりエンドマーク3(本件発明2の「後端近傍」に相当する。)が検出された場合は、下記のような2つの動作が行われる。・・・第2の場合、即ち(c)の状態ではX>Wになり、この場合は長さA分を巻戻してからカッタ6により感光材料1を切断する。・・・なお、ステップS14の場合であっても、画像形成に必要なサイズ(本件発明2の「指定されたサイズ」に相当する。)が採れる場合は、カットした感光材料1について通常の画像形成が行われるる。」の部分参照。)からみて、感光材料の後端近傍を検出した後、感光材料を切断するが、指定されたサイズが採れない場合には画像形成を行わないものと認められる。 そして、引用発明1においても、刊行物3記載のものと同様に、指定されたサイズと感光材料の使用可能な残り長さに基づいてその後の処置を定めていることから、引用発明1において露光の継続が選択されない場合は、刊行物3のように感光材料を切断することは当業者であれば容易に想到できることである。 (c)また、本件発明2の効果も刊行物1〜3から予測される程度のものにすぎない。 (d)したがって、本件発明2は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。 (3)本件発明3について (a)本件発明3は、本件発明1の構成を、「前記露光の中止が選択された場合に、前記引き出された感光材料ごとマガジンを交換すること」とさらに限定したものである。 (b)刊行物1の記載事項(1a)(特に、「従来、ロール感材R(本件発明3の「長尺の感光材料」に相当する。)の後端を検知した後は、該ロール感材Rの最終切断先端から前記後端までの材料長を知り得なかったため、(a)ロール感材Rの搬送を停止して収納マガジン(本件発明3の「マガジン」に相当する。)側から該ロール感材Rの残量を抜き取る(ロール感材Rの最終残量が短く、マガジン側より引き出し可能な場合)。」の部分参照。)及び刊行物2の記載事項(2a)(特に、「印画紙(本件発明3の「感光材料」に相当する。)後端部をセンサーで検出して、印画紙の送り出しを終了させ、新しい長巻印画紙スクロール(本件発明3の「長尺の感光材料」に相当する。)を装填し直して再起動させている。・・・このような印画紙スクロールの端末部の検出手段では、正常にまだ充分に使用可能の何枚分かの高価な印画紙が必然的に空しく廃棄されてしまうことになる。」の部分参照。)にあるように、感光材料の使用可能な残り長さが所定値以下となった場合に当該感光材料を交換することは当然のことであり、当該感光材料がマガジンに収納されているものであれば、マガジンごと交換することは当業者にとって自明である。 また、本件発明1と引用発明1の相違点(5(1)(b-1))でも記載したように、感光材料の後端近傍を検出することは周知の技術事項であり、この周知技術を採用した場合には、当然、感光材料の後端がマガジン内に残されることになり、感光材料ごとマガジンを交換することが可能となる。 よって、感光材料ごとマガジンを交換するという周知の技術事項を引用発明1に適用することは技術的に困難ということはできず、また、当該適用によって格別の効果を奏するものでもない。 (c)また、本件発明3の効果も刊行物1及び2から予測される程度のものにすぎない。 (d)したがって、本件発明3は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。 (4)本件発明4について (a)本件発明4と引用発明3とを対比すると、刊行物3における「マガジン2」、「感光材料1」、「必要サイズ」、「露光部16」、「エンドマーク3」、「センサ4」、「カッター6」、「表示」、「表示手段15」、「制御回路11」、「必要なサイズが採れる場合」、「必要なサイズが採れない場合」は、それぞれ本件発明4の「マガジン」、「長尺の感光材料」、「指定されたサイズ」、「露光位置」、「後端マーク」、「後端マーク検出センサ」、「カッタ」、「指示」、「告知手段」、「制御手段」、「指定されたサイズに対応する長さより長い場合」、「指定されたサイズに対応する長さより短い場合」に相当する。 また、引用発明3における「センサ9」は感光材料1の一定サイズ分が有るか否かを検出するものであるが、本件発明4における「感光材料先端検出センサ」においても、発明の詳細な説明において「感光材料先端検出センサ182(184)により感光材料14の先端が検出されている場合は(先端が先端検出センサ182(184)を通過している場合は)、次の露光のために指定されている指定長さSによって、露光可能か否かが選択されることになる。」(本願明細書の段落0045)と記載されており、感光材料先端検出センサが配設される場所での感光材料の有無を検出するものであることから、引用発明3における「センサ9」は本件発明4における「感光材料先端検出センサ」に相当する。 さらに、引用発明3は、センサ4で感光材料1に設けられたエンドマーク3を検出した時点で、センサ9によって感光材料1を検出した場合には、感光材料を切断し、エンド表示を行うが、画像形成に必要なサイズが採れる場合には露光を行うものであるところ、感光材料1の残量を考慮すると2回以上の画像形成は不可能であることから、当然に1回の露光しか行うことができないものである。 したがって、両者は、 「マガジンに収納された長尺の感光材料を引き出し、指定されたサイズに応じて切断して、露光位置へ搬送し露光するための感光材料搬送装置であって、マガジンから引き出された直後の位置で予め感光材料に設けられた後端マークを検出する後端マーク検出センサと、前記後端マーク検出センサから所定長さだけ下流側に配設され前記感光材料を切断するカッタと、前記カッタから所定長さだけ下流側に配設され引き出された感光材料の有無を検出する感光材料先端検出センサと、下記(イ)、(ロ)、(ハ)の何れかの指示を告知手段により指示する制御回路11と、を有する感光材料搬送装置。 (イ)前記後端マーク検出センサで感光材料に設けられた後端マークを検出した時点で、前記感光材料先端検出センサによって感光材料を検出していない場合には、引き出された感光材料ごと、或いは残りの感光材料を全て引き出してから、指示を行う。 (ロ)前記後端マーク検出センサで感光材料に設けられた後端マークを検出した時点で、前記感光材料先端検出センサによって感光材料を検出しており、かつ感光材料が指定されたサイズに対応する長さより長い場合には感光材料を切断して1回露光した後、指示を行う。 (ハ)前記後端マーク検出センサで感光材料に設けられた後端マークを検出した時点で、前記感光材料先端検出センサによって感光材料を検出しており、かつ感光材料が指定されたサイズに対応する長さより短い場合には感光材料を切断し、指示を行う。」 点で一致しており、以下の点で奏する。 (a-1)相違点1 本件発明4が、感光材料先端検出センサで感光材料の先端が検出されてからの搬送長を計測する搬送長計測手段を有しているのに対し、引用発明3においては有していない点。 (a-2)相違点2 後端マーク検出センサで感光材料に設けられた後端マークを検出した時点で、感光材料先端検出センサによって感光材料を検出していない場合には、残りの感光材料を全て引き出した後、本件発明4では、露光位置へ搬送するのに対して、引用発明3では、そのようにしていない点。また、後端マーク検出センサで感光材料に設けられた後端マークを検出した時点で、感光材料先端検出センサによって感光材料を検出しており、かつ感光材料が指定されたサイズに対応する長さより短い場合には、感光材料を切断した後、本件発明4では、露光位置へ搬送するのに対して、引用発明3では、そのようにしていない点。 (a-3)相違点3 後端マーク検出センサで感光材料に設けられた後端マークを検出した時点で、感光材料先端検出センサによって感光材料を検出しており、かつ感光材料が指定されたサイズに対応する長さより長い場合に感光材料を切断する場合、本件発明4では、指定された長さで感光材料を切断するのに対し、引用発明3では、そのようにしていない点。 (a-4)相違点4 後端マーク検出センサで感光材料に設けられた後端マークを検出した時点で、感光材料先端検出センサによって感光材料を検出しており、かつ感光材料が指定されたサイズに対応する長さより短い場合に感光材料を切断する場合、本件発明4では、感光材料後端を検出した時点で切断するのに対し、引用発明3では、一旦、巻き戻してから切断する点。 (a-5)相違点5 本件発明4では、マガジンの交換を指示するのに対し、引用発明3においてはエンドを指示する点。 (b)上記相違点について以下に検討する。 (b-1)相違点1について 刊行物3の記載事項(3a)(特に、「ステップS1に示すように、画像形成の要求(スタート)があると、感光材料1のサイズ算出が行われ、ステップS2に示すように必要分について感光材料1の引き出しが行われる。この時点でセンサ4によりエンドマーク3が検出されない場合は、ステップS4に示すように必要サイズの引き出し完了になり、カッタ6により感光材料1のカットが行われる。」の部分参照。)によれば、引用発明3においても、引き出された感光材料の長さを計測している。 また、刊行物1の記載事項(1c)(特に、「上記ロール感材R(本件発明4の「長尺の感光材料」に相当する。)は、収納マガジン7(本件発明4の「マガジン」に相当する。)から搬送ローラ対10aによって引き出され、この搬送ローラ対10aに連動回転するエンコーダ8によってその材料長(本件発明4の「搬送長」に相当する。)が計測され、メイン制御部よりの指令で搬送を停止した後、カッタ11により切断されてシート状とされたる。」の部分参照。)からみて、感光材料の搬送長を計測する手段が記載されていると認められ、周知の技術事項である。 そして、感光材料の搬送長を計測する起点をどこにするか、すなわち本件発明4のように、感光材料先端検出センサによる感光材料の先端検出を起点とするか、あるいは刊行物1のように、感光材料の搬送開始を起点とするかは、当業者が必要に応じて適宜選択し得る事項にすぎない。 このような周知の技術事項を引用発明3に適用することが技術的に困難であるとも認められず、また、当該適用によって格別の効果を奏するものでもない。 (b-2)相違点2について 刊行物1の記載事項(1a)(特に、「(c)ロール感材R(本件発明4の「長尺の感光材料」に相当する。)が複数の搬送ローラに挟持されていてマガジン側から引き出せないときは、強制的に撮影台(本件発明4の「露光位置」に相当する。)まで搬送させ、本体側板を取り外して該撮影台上からロール感材Rを取り除く。」の部分参照。)からみて、感光材料を取り出すために、露光位置へ搬送させることは周知の技術事項である。よって、全て引き出された感光材料又は切断された感光材料を露光位置へ搬送するよう構成することは、当業者であれば必要に応じてなし得ることにすぎない。 (b-3)相違点3について 指定されたサイズに対応する長さより長い感光材料に露光する場合において、当該感光材料を指定されたサイズに対応する長さに切断することは当然のことにすぎない。そして、後端マーク検出センサで感光材料に設けられた後端マークを検出した時点で、前記感光材料先端検出センサによって感光材料を検出しており、かつ感光材料が指定されたサイズに対応する長さより長い場合において、同様に対処することが技術的に困難であるとも認められず、また、当該適用によって格別の効果を奏するものでもないことから、当該相違点は当業者であれば容易に想い到る程度のことである。 (b-4)相違点4について 感光材料が指定されたサイズに対応する長さより短い場合に感光材料を切断する場合において、感光材料後端を検出した時点で切断することに格別の意義はなく、当業者が必要に応じて適宜選択し得る事項にすぎない。 (b-5)相違点5について エンド表示は、感光材料の残量が露光の継続に必要な量に満たないことを示すものであり、当業者であれば、当該エンド表示によってマガジンを交換しなければならないと認識するものである。よって、エンド表示は、実質的にマガジンの交換を指示するものであり、両者の間に実質的な差異はない。 (c)また、本件発明4の効果も刊行物3及び1から予測される程度のものにすぎない。 (d)したがって、本件発明4は、刊行物3及び1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。 (e)なお、特許権者は、平成15年2月10日に提出された特許異議意見書において、刊行物3に記載された発明は「エンドマークは少なくともマガジンの装填操作を行う際にユーザーが目視可能な態様であることが必須条件」(第4頁第24行〜25行)である旨主張する。しかしながら、刊行物3に記載された発明が、エンドマークが目視可能な態様であることによって、刊行物1に記載された発明と組み合わせることが技術的に困難となるものでもない。したがって、特許権者の当該主張を採用しない。 6.むすび 以上のとおりであるから、本件発明1及び3は刊行物1及び2に記載された発明に基づき容易に発明をすることができたものであり、本件発明2は刊行物1〜3に記載された発明に基づき容易に発明をすることができたものであり、本件発明4は刊行物1及び3に記載された発明に基づき容易に発明をすることができたものであり、本件発明1〜4の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2003-04-25 |
出願番号 | 特願平5-227098 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Z
(G03B)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 信田 昌男 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
谷山 稔男 柏崎 正男 |
登録日 | 2001-10-12 |
登録番号 | 特許第3240222号(P3240222) |
権利者 | 富士写真フイルム株式会社 |
発明の名称 | 感光材料搬送方法及び装置 |
代理人 | 加藤 和詳 |
代理人 | 西元 勝一 |
代理人 | 福田 浩志 |
代理人 | 中島 淳 |