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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B29C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B29C
管理番号 1079773
異議申立番号 異議2000-73214  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-08-21 
確定日 2003-06-30 
異議申立件数
事件の表示 特許第3010666号「熱可塑性樹脂シートのキャスト方法」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3010666号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3010666号の請求項1〜5に係る発明についての出願は、平成2年1月26日に出願され、平成11年12月10日にその設定登録がなされ、その後、その請求項1〜5に係る発明の特許について、異議申立人東セロ株式会社より特許異議の申立てがされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年1月25日に特許異議意見書と訂正請求書(平成13年4月24日取り下げ)が提出され、その後再度の取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年4月24日に特許異議意見書と訂正請求書が提出され、その訂正請求に対して訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年9月2日に特許異議意見書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
特許権者が求める訂正の内容は、次のとおりのものである。

訂正事項1:
明細書の特許請求の範囲を、
「【請求項1】ポリエステル類、ポリアミド類、ポリエーテル類、あるいはポリフェニレンスルフイド樹脂からなる熱可塑性樹脂溶融シートに静電荷を印加させながら該シートを冷却ドラム上にキャストする方法において、該冷却ドラムの直径を2.0m以上、キャスト速度を90メートル/分以上としてキャストすることを特徴とする熱可塑性樹脂シートのキャスト方法。
【請求項2】さらに厚さ0.1〜2.0μmの水膜を冷却ドラムと該シート間に形成させながら冷却ドラム上にキャストすることを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の熱可塑性樹脂シートのキャスト方法。
【請求項3】熱可塑性樹脂溶融シートを冷却ドラム上にキャストする際、さらに、エアーチャンバーを用いることを特徴とする特許請求の範囲第1項〜第2項のいずれかに記載の熱可塑性樹脂シートのキャスト方法。
【請求項4】シート状に吐出する口金内部の最終流通路と口金吐出後冷却ドラム着地前のシートとのなす角度が140〜180°であることを特徴とする特許請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の熱可塑性樹脂シートのキャスト方法。」と訂正する。

訂正事項2:
明細書第4頁第13行目〜同頁第15行目(特許公報第3欄第36〜38行目)の「熱可塑性樹脂溶融シートを………であること」を、
「ポリエステル類、ポリアミド類、ポリエーテル類、あるいはポリフェニレンスルフイド樹脂からなる熱可塑性樹脂溶融シートに静電荷を印加させながら該シートを冷却ドラム上にキャストする方法において、該冷却ドラムの直径を2.0m以上、キャスト速度を90メートル/分以上としてキャストすること」と訂正する。

(2)訂正の適否
イ.上記訂正事項1について
該訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「【請求項1】熱可塑性樹脂溶融シートを冷却ドラム上にキャストする方法において、該冷却ドラムの直径が2.0m以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂シートのキャスト方法。」を「【請求項1】ポリエステル類、ポリアミド類、ポリエーテル類、あるいはポリフェニレンスルフイド樹脂からなる熱可塑性樹脂溶融シートに静電荷を印加させながら該シートを冷却ドラム上にキャストする方法において、該冷却ドラムの直径を2.0m以上、キャスト速度を90メートル/分以上としてキャストすることを特徴とする熱可塑性樹脂シートのキャスト方法。」と訂正することを含むものであるが、この訂正事項について、平成14年6月26日付けの訂正拒絶理由通知において、「本発明は、上記従来のキャスト方法の問題点を解決し、80m/min以上の高速キャストが可能で(特許公報第2頁左欄第29〜30行)の記載は認められるが、静電荷の印加を併用させながらのキャスト速度に関しては、実施例4、実施例6及び実施例7のキャスト速度150m/min、180m/min及び170m/minが記載されているにすぎず、「静電荷を印加させながらキャスト速度90m/分以上でキャストする」ということは、願書に添付した明細書に記載されてなく、該事項は願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものと認めることはできない。」との通知を行った。
これに対して、特許権者は、平成14年9月2日付け特許異議意見書の4.(2)において、「本発明は、80m/min以上の高速キャスト、具体的には、各実施例にて採用されているような、80、90、105、150、160、170、180m/minというようなレベルの高速キャストに関するものであり、また、80、90、105、150、160、170、180m/minというようなレベルの高速のキャスト速度範囲の全般・全範囲において、静電荷を印加させながらキャストするという方法を併用することを推奨しているものであるから、たまたま、静電荷を印加させながちキャストしている具体的実施例として、150、170、180m/minの例しか記載されていなくとも、90m/min以上の高い速度を採用する場合においても、静電荷を印加を併用させながらキャストを併用することは、明確に記載されており、該訂正事項は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものである。」旨の主張をしている。
そこで、この主張について検討する。
確かに、訂正前の請求項1に係る発明は、「本発明は、・・・80m/min以上の高速キャストが可能で、」(特許公報第2頁左欄30行)の記載のとおり、80m/min以上の高速キャストを可能とするものであり、また、「本発明の静電荷を印加させながらキャストする方法は、・・・本発明の手法と併用することにより、高速化、平面性、厚みむら改良など、より一層優れたものが得られる。」(特許公報第2頁右欄49行〜第3頁左欄5行)の記載のとおり、静電荷の印加を該発明の手法と併用することにより、より一層の高速化が得られるものであるが、静電荷の印加を併用することにより具体的にどの程度の高速キャストが可能であり、そして、このときのキャスト速度はどの程度かについては、願書に添付した明細書には何ら説明がない。
ところで、キャスト速度の具体例として、第1表の実施例1〜7に各キャスト速度が記載されており、実施例2には、キャスト速度90m/minが、また、静電荷の印加を併用させながらのキャスト速度に関しては、実施例4、6及び7にキャスト速度150m/min、180m/min及び170m/minが記載されている。
しかしながら、実施例2には、キャスト方法の説明として、第1表に示した冷却ドラム(ドラム直径2.4m)を使用し、口金内部の最終流通路と吐出後のシートのなす角を130°とすることは記載されているが、特に静電荷の印加を併用してキャストすることは記載されておらず、この実施例2は静電荷の印加を併用してキャストするものとは認められない。
してみると、訂正拒絶理由に記載の理由は妥当なものであり、該理由により訂正は認められない。
したがって、上記特許権者の主張は採用できない。

ロ.上記訂正事項2について
上記訂正事項2は、上記訂正事項1の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と整合性を図るため発明の詳細な説明の記載を訂正するものであるが、上記訂正事項1について述べたと同様の理由により、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものでない。

(3)まとめ
以上のように、上記訂正事項1及び2は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされておらず、本件訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

3.本件発明
上記2.で述べたように、上記訂正が認められないから、本件請求項1〜5に係る発明(以下、「本件発明1〜5」という。)は、特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された次のとおりのものである。

【請求項1】熱可塑性樹脂溶融シートを冷却ドラム上にキャストする方法において、該冷却ドラムの直径が2.0m以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂シートのキャスト方法。
【請求項2】熱可塑性樹脂溶融シートに静電荷を印加させながら冷却ドラム上にキャストすることを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の熱可塑性樹脂シートのキャスト方法。
【請求項3】さらに厚さ0.1〜2.0μmの水膜を冷却ドラムと該シート間に形成させながら冷却ドラム上にキャストすることを特徴とする特許請求の範囲第1項または第2項に記載の熱可塑性樹脂シートのキャスト方法。
【請求項4】熱可塑性樹脂溶融シートを冷却ドラム上にキャストする際、エアーチャンバーを用いることを特徴とする特許請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の熱可塑性樹脂シートのキャスト方法。
【請求項5】シート状に吐出する口金内部の最終流通路と口金吐出後冷却ドラム着地前のシートとのなす角度が140〜180°であることを特徴とする特許請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の熱可塑性樹脂シートのキャスト方法。

4.特許異議申立理由の概要
特許異議申立人東セロ株式会社は、証拠方法として甲第1号証の1(「BRUCKNER OPP systems+technology」(なお、甲第1号証の1原文では、「U」はウムラウト表記となっている。以下、「U」と記載する。)、「K89」見本市に出展したフィルム成形機のパンフレット)、甲第1号証の2(BrUckner Maschinenbau GmbH社から伊藤忠産機株式会社に宛てた書簡、BRUCKNER Maschinenbau GmbH社の材料調達書の写し及び甲第1号証の1に係るパンフレットの印刷を受注したWerr.印刷工場の請求書の写し)、甲第1号証の3(「工業材料」Vol.38 No.1、平成2年1月1日発行、p.101)、甲第2号証(特開昭59-106935号公報)、甲第3号証(特開昭56-98138号公報)及び甲第4号証(特公昭62-38133号公報)を提出し、本件発明1は、甲第1号証の1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、また、本件発明1〜5は、甲第1号証の1及び甲第2〜4号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件発明1〜5に係る特許を取り消すべき旨主張している。

5.各甲号証記載の事項
甲第1号証の1
ア.甲第1号証の1には、BOPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルム成形機についての詳細が表記され、第10〜11頁には、2軸延伸フィルムの成形ラインの全体図が示されており、第16頁には、ラインサイズが4mの成形機の冷却ロールの直径(Chill roll diameter)が1200-2000mm,ラインサイズが6mの直径が2000-2200mm,ラインサイズが8mの成形機の冷却ロールの直径が2400-2800mmであることが示されている。(1頁の説明、2〜13頁の図、16頁の表参照)

甲第2号証
イ.「1.溶融したポリエステル樹脂を押出ダイから回転冷却面上にフィルム状に押出し、フィルムと回転冷却面との接点近傍に電極を配置し、フィルム面上に静電荷を析出させて、接地された回転冷却面との間に作用する静電気的引力により回転冷却面に密着、急冷させて製膜する工程」(特許請求の範囲第1項抜粋)
ウ.「本発明は厚み均一性が優れ、低結晶性のポリエステル樹脂フィルムを高能率で製造する方法に関するものである。」(第1頁右下欄下3〜末行)
エ.「ここにいうポリエステルとは、2塩基酸と2価アルコールから得られるフィルム形成能を有するポリエステル又はその共重合体をいう。勿論第3成分としてイソフタル酸、アジピン酸、トリエチレングリコールなどの2塩基酸あるいは2価アルコール等を共重合させたポリエステルでもよく、又、安定剤、着色剤等の添加剤を配合したものでもよい。」(第4頁左下欄17行〜右下欄4行)
オ.「実施例1
・・・ポリエチレンテレフタレートを280℃で押出製膜した。この時ダイリップを通過する樹脂の溶融粘度は3450poiseであった。・・・この時静電ピニング条件は・・・この時カールは発生せず、気泡の捲き込みは見られなかった。」(第5頁左下欄〜右下欄、実施例1)

甲第3号証
カ.「(1) 移動し得る冷却体表面に液体を塗布した該冷却体表面に該液体の液膜を形成させ、次いで該液膜の上に熱可塑性重合体の熔融体を押出して冷却固化せしめる未延伸状態の熱可塑性重合体シートを製造する方法において、前記冷却体表面に塗布する液体はあらかじめ静電荷を帯びて霧化または滴化されたものであり・・・熱可塑性重合体シートの製造方法。
(2) 冷却体表面に塗布する液体が水・・・である特許請求の範囲第1項記載の熱可塑性重合体シートの製造方法。
(3) 熱可塑性重合体の熔融体に静電荷が析出された状態で冷却体表面に形成された液膜と密着することを特徴とする特許請求の範囲第1項又は第2項の熱可塑性重合体シートの製造方法。
(4) 熱可塑性重合体がポリエチレンテレフタレート・・・を主成分とするポリエステルであることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の熱可塑性重合体シートの製造方法。」(特許請求の範囲第1〜4項)
キ.「本発明は、熱可塑性重合体から未延伸シートを製造する方法に関する。更に詳しくは、ポリエステルのような熱可塑性重合体を回転ロールの如き移動し得る冷却体の表面に熔融状態で押出して冷却固化せしめるシートの製造方法において、この熔融状態にある重合体を冷却表面に完全に密着させ、・・・表面品質の改良された重合体シートを製造する方法に係る。」(第1頁右下欄下7行〜第2頁左上欄4行)
ク.「液体の供給量は0.3g/m2〜2.0g/m2が好ましい。特に好ましくは0.3g/m2〜1.0g/m2である。」(第4頁左下欄6〜8行)
ケ.「本発明が適用できる熱可塑性重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン・・・ポリエステル・・・が挙げられる。このポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート・・・等が好ましく用いられる。」(第4頁右下欄6行〜第5頁左上欄1行)
コ.「本発明によれば、次のような新規な効果が得られる。
(イ)熱可塑性重合体シートと移動冷却体との間に液体の層を設けることにより・・・空気の存在による熱可塑性重合体シートの表面欠陥やシート幅の変動を解消できる。
(ロ)静電荷を用いず、液体を介在せしめるだけで・・・未延伸シートを高速で製造することが可能となる。
(ハ)微粒液体の供給方法として静電気的な霧化法を用いて次いでこの液滴を押しつぶすことによって薄い液膜を得るので・・・比較的薄い未延伸シートを高速で製造する場合に好適である。」(第5頁右上欄17行〜右下欄1行)

甲第4号証
サ.「1 少なくとも2つの相互に作用する1次及び2次の真空帯域を収容する真空シューから成り;
該1次帯域は熱可塑性ウェッブと急冷ロールとの間の接触線において該ウェッブの表面に接近して存在し;
・・・
該2次帯域はそれに連結された真空源を有し;
それによって、1次帯域は該真空源によって誘起される乱流から隔離壁によって隔離されているために、2次帯域に比して相対的に静止状態にある、
ことを特徴とする押出された熱可塑性ウェッブを急冷ロールへ均一且つ連続的に押しつけるための装置。」(特許請求の範囲第1項及び図1〜4)

甲第1号証の2
シ.甲第1号証の2は、BrUckner Maschinenbau GmbH社のJ.Kreilinger氏が、日本における輸入代理店である伊藤忠産機株式会社の笠野勇(Kasano Isamu)氏宛にファクシミリレターとして送信してきた書簡の訳文であり、このファクシミリレターには、BrUckner Maschinenbau GmbH社の材料調達書の写しと、このパンフレットの印刷を受注したWerr.印刷工場の請求書の写しが添付されている。

甲第1号証の3
ス.甲第1号証の3には、「K’89報告 その傾向と特徴を探る」というテーマで、3年ごとのK’89Messe(メッセ)が1989年11月にオープンされたこと、世界で最も規模が大きい見本市であり、西独で1989年11月2日から9日まで開催されたこと、正式にはプラスチック・ゴム国際見本市と呼称され、日本でも馴染みの深い催しになっていること等が記載されている。

6.特許異議申立についての当審の判断
(1)甲第1号証の1の頒布時期について
平成12年11月20日付け及び平成13年2月14日付けで、上記甲第1号証の1、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証を本件特許に係る出願日前に頒布された刊行物として、取消理由が通知されている。
しかしながら、甲第1号証の1については、その頒布時期に関して、必ずしも明確とはいえず、本件特許に係る出願日前に頒布された刊行物であるか否かについて、あらためて検討する。
甲第1号証の1のパンフレット自体には、発行時期についての記載あるいはこれを推認するに十分な記載もない。
この点について、異議申立人は、甲第1号証の2及び甲第1号証の3により、甲第1号証の1パンフレットが本件特許出願前に開催された「K’89」見本市において頒布されたパンフレットであるとして、その公知性を主張している。しかし、甲第1号証の3から「K’89」見本市が西独で1989年11月2日から9日まで開催された見本市であることは判断されるが、甲第1号証の1のパンフレットが該見本市において頒布された刊行物であるとする事実は、甲第1号証の2からは確認できず、推認することもできない。
すなわち、甲第1号証の2には、「このパンフレットは当社がヂュッセルドルフK89見本市で初めて配布したものです。」(訳文)との記載はあるが、「このパンフレット」というパンフレットが甲第1号証の1(「BRUCKNER OPP systems+technology」)のパンフレットと同一の物であるとする明確な根拠や証拠はない。
してみると、甲第1号証の1は、本件特許出願日前に頒布された刊行物であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項の規定について判断するための証拠としては採用することができない。

(2)特許法第29条第1項第3号の規定について
上記6.(1)で述べたように、甲第1号証の1は、本件特許出願日前に頒布された刊行物であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号の規定について判断するための証拠としては採用することができないから、本件発明1は、甲第1号証の1に記載された発明であるとすることはできない。

(3)特許法第29条第2項の規定について
上記6.(1)で述べたように、甲第1号証の1は、本件特許出願日前に頒布された刊行物であるとはいえず、特許法第29条第2項の規定について判断するための証拠としては採用することができない。
一方、甲第2〜4号証には、上記イ〜サの記載は認められるが、本件発明1の要件である「冷却ドラムの直径が2.0m以上である」ことについて記載も示唆もない。
そして、本件発明1は、本件特許明細書記載の作用・効果を奏するものと認められる。
したがって、本件発明1は、甲第1号証の1、甲第2号証、甲第3号証及び4号証記載の発明に基づいて当業者が容易になし得た発明であるとすることはできない。
また、本件発明2〜5は、本件発明1を引用し、それをさらに技術的に限定したものであるから、甲第1号証の1、甲第2号証、甲第3号証及び4号証記載の発明に基づいて当業者が容易になし得た発明であるとすることはできない。

7.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申し立ての理由及び証拠によっては本件発明1〜5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-06-12 
出願番号 特願平2-16640
審決分類 P 1 651・ 121- YB (B29C)
P 1 651・ 113- YB (B29C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中村 浩  
特許庁審判長 石井 淑久
特許庁審判官 須藤 康洋
鴨野 研一
登録日 1999-12-10 
登録番号 特許第3010666号(P3010666)
権利者 東レ株式会社
発明の名称 熱可塑性樹脂シートのキャスト方法  
代理人 庄子 幸男  

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