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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て成立) B65D |
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管理番号 | 1079795 |
判定請求番号 | 判定2003-60024 |
総通号数 | 44 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 1996-05-14 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2003-03-12 |
確定日 | 2003-06-23 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2866587号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号図面及びその説明書に示す「食品包装用袋体」は、特許第2866587号の請求項3に係る発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
1.請求の趣旨 本件判定請求は、イ号図面およびその説明書に記載する「食品包装用袋体」が(以下「イ号物件」という)、特許第2866587号の請求項3に係る発明(以下「本件特許発明」という)の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。 2.本件特許発明 請求項3は、請求項1または2を択一的に引用する形式で記載されているため、それぞれについて、これを独立形式に改め、便宜上分説し、符号A〜Dを付して、以下に示す。 2-1.請求項1を引用する場合 「A.合成樹脂からなるフィルム(1)にて、密封状態に対象物を収納するように形成された包装袋であって、 B.前記フィルム(1)のうちの袋内部空間(S)に面する内部空間形成用フィルム部分(I)に、前記袋内部空間(S)の内気圧の上昇に伴って引張力が作用するようにフィルム同士を部分的に熱融着させた熱融着部分(H)が形成されて、 前記内気圧による引張力により、前記熱融着部分(H)の周縁部又はその近傍において破断開口可能なように構成されているとともに、 C.前記内部空間形成用フィルム部分(I)における前記熱融着部分(H)の形成箇所を外方より覆う外装フィルム(O)が、前記内部空間形成用フィルム部分(I)との間に、袋外部と前記フィルム(1)の破断開口部(1h)とを連通する通気路(R)を形成する状態で、前記内部空間形成用フィルム部分(I)の外面に付設されている包装袋。」 2-2.請求項2を引用する場合 「A.合成樹脂からなるフィルム(1)にて、密封状態に対象物を収納するように形成された包装袋であって、 B.前記フィルム(1)のうちの袋内部空間(S)に面する内部空間形成用フィルム部分(I)に、前記袋内部空間(S)の内気圧の上昇に伴って引張力が作用するようにフィルム同士を部分的に熱融着させた熱融着部分(H)が形成されて、 前記内気圧による引張力により、前記熱融着部分(H)の周縁部又はその近傍において破断開口可能なように構成されているとともに、 C.前記内部空間形成用フィルム部分(I)における前記熱融着部分(H)の形成箇所を外方より覆う外装フィルム(O)が、前記内部空間形成用フィルム部分(I)との間に、袋外部と前記フィルム(1)の破断開口部(1h)とを連通する通気路(R)を形成する状態で、前記内部空間形成用フィルム部分(I)の外面に付設されており、 D.前記熱融着部分(H)が、前記内部空間形成用フィルム部分(I)における、前記袋内部空間(S)を挟んで相対向するフィルム同士を部分的に熱融着させて構成されている包装袋。」 3.イ号 3-1.イ号物品説明書の記載 イ号物品説明書には、次のとおり記載されている(判定請求書4ページ12行〜5ページ末行)。 「(4)イ号発明の説明 イ号発明の図面(甲第3号証)および説明書(甲第4号証)で図示し説明するように、イ号発明は、電子レンジ対応の食品包装用袋体に関するものであり、食品包装用袋体(イ号発明)には電子レンジ等で加熱調理される冷凍食品、チルド食品が密封包装される。 食品包装用袋体に密封包装された冷凍食品、チルド食品等を電子レンジで加熱すると、冷凍食品等から蒸気が生じ、その蒸気圧により内圧が上昇して袋体が膨張しても、イ号発明によれば、内圧上昇時に内層フィルム14が破断開口し、袋外部と破断開口部15と連通する通気路19が易剥離帯(弱接着帯)18に自動的に形成されるため、食品包装用袋体の破裂を防止できる。 図1、図2(B-1)からわかるように、食品包装用袋体10(イ号発明)は、二層の積層フィルムである食品包装用フィルム12を巻き、その末端12aをヒ-トシール(本件特許発明の「熱融着」に相当する)によって末端処理して、左右の側縁で開□する筒形状に成形される。そして、開□する左右の側縁(エッジ)12Le、12Reのうち、いずれか一側縁、たとえば、右側縁12Reを熱融着して袋体とし、残る左側縁12Leから冷凍食品、チルド食品を入れて左側縁12Leを熱融着することによって、冷凍食品等を密封包装した食品包装用袋体10が得られる。 図2(A)を見るとわかるように、この食品包装用袋体10の素材となる食品包装用フィルム12は、ポリエチレンの合成樹脂フィルムから内層フィルム14と外層フィルム16との対向面に接着剤を塗布して全面的に接着した二層の積層フィルムからなり、上下の積層フィルム12U、12Lを加圧、接触させたまま加熱して熱融着が末端12a、左右の側縁12Le、12Reに施されている。内層フィルム14はシ-ラントフイルムでベースフィルムである外層フィルム16に内層フィルム14を接着して、素材の積層フィルム(食品包装用フィルム)が成形されている。 接着剤の塗布において、その接着密度を大きくすれば高い接着強度の難剥離帯(強接着帯)が形成でき、その接着密度を小さくすれば低い接着強度の易剥離帯(弱接着帯)が形成できる。イ号発明では、この点に着目し、低い接着強度の易剥離帯(弱接着帯)18を上の積層フィルム12Uの内外二層のフィルム14、16間に設け、それ以外を高い接着強度の難剥離帯(強接着帯)20としている。図1からわかるように、易剥離帯(弱接着帯)18は、末端12aと平行で左右の熱融着側緑12Le、12Reの間で帯状に形成されている。 食品包装用袋体に密封包装された冷凍食品、チルド食品等を電子レンジで加熱し、冷凍食品等から蒸気が生じると、蒸気圧により内圧が上昇して袋体が膨張する。すると、上の積層フィルム12Uの内層フィルム14が易剥離帯(弱接着帯)18の近傍で破断開口し、開口部15から袋内部の蒸気が易剥離帯(弱接着帯)18に流入し、易剥離帯(弱接着帯)18に沿って内外二層のフィルム14、16を剥離して易剥離帯(弱接着帯)18を通気路19に変え、通気路19を経て外部に流出する。そのため、蒸気圧による食品包装用袋体の破裂が防止され、食品包装用袋体を破裂させることなく、袋内の加工食品が加熱できる。」 3-2.記載事項の分析 上記3-1の記載によれば、この食品包装用袋体10は、「ポリエチレンの合成樹脂フィルムから内層フィルム14と外層フィルム16との対向面に接着剤を塗布して全面的に接着した二層の積層フィルム」からなる食品包装用フィルム12を、「筒形状に成形」し、「開□する左右の側縁(エッジ)12Le、12Reのうち、いずれか一側縁、たとえば、右側縁12Reを熱融着して袋体とし、残る左側縁12Leから冷凍食品、チルド食品を入れて左側縁12Leを熱融着することによって、冷凍食品等を密封包装」するものであるから、合成樹脂からなる内層フィルム14にて、密封状態に対象物を収納するように形成された食品包装用袋体であるといえる。 そして、この食品包装用袋体10は、「電子レンジで加熱し、冷凍食品等から蒸気が生じると、蒸気圧により内圧が上昇して袋体が膨張」し、側縁の熱融着部において「内層フィルム14が易剥離帯(弱接着帯)18の近傍で破断開口」するものであるから、内層フィルム14に、袋内部空間Sの内気圧の上昇に伴って引張力が作用するように、内層フィルム同士を熱融着させた熱融着側縁12Le、12Reが形成されて、前記内気圧による引張力により、前記熱融着側縁12Le、12Reの周縁部又はその近傍において、破断開口可能なように構成されているものと認められる。 また、この食品包装用袋体10を構成する食品包装用フィルム12は、内層フィルム14と外層フィルム16を接着した二層の積層フィルムであり、「内層フィルム14が易剥離帯(弱接着帯)18の近傍で破断開口し、開口部15から袋内部の蒸気が易剥離帯(弱接着帯)18に流入し、易剥離帯(弱接着帯)18に沿って内外二層のフィルム14、16を剥離して易剥離帯(弱接着帯)18を通気路19に変え、通気路19を経て外部に流出する」ようになっているので、内層フィルム14全体を外方より覆う外層フィルム16が、前記内層フィルム14との間に、袋外部と前記内層フィルム14の破断開口部とを連通する通気路19を、前記内層フィルムの破断後に形成する状態で、前記内層フィルム14の外面に付設されているものと認められる。 3-3.イ号物件の構成 以上によれば、イ号物件の食品包装用袋体は、その構成を本件特許発明に倣って記載すると、次のとおりのものである。 「a.合成樹脂からなる内層フィルム(14)にて、密封状態に対象物を収納するように形成された食品包装用袋体であって、 b.前記フィルム(14)に、袋内部空間(S)の内気圧の上昇に伴って引張力が作用するようにフィルム同士を熱融着させた熱融着側縁(12Le、12Re)が形成されて、前記内気圧による引張力により、前記熱融着側縁(12Le、12Re)の周縁部又はその近傍において破断開口可能なように構成されているとともに、 c.前記内層フィルム(14)全体を外方より覆う外層フィルム(16)が、前記内層フィルム(14)との間に、袋外部と前記内層フィルム(14)の破断開口部とを連通する通気路(19)を形成する状態で、前記内層フィルム(14)の外面に付設されている食品包装用袋体。」 4.対比 4-1.請求項3が、請求項1を引用する場合について まず、本件特許発明が、請求項1を引用する場合について、イ号物件と対比する。 4-1-1.本件特許発明の構成要件Aについて、 イ号物件の「合成樹脂からなる内層フィルム(14)」は、本件特許発明の「合成樹脂からなるフィルム(1)」に包含され、「密封状態に対象物を収納するように形成された食品包装用袋体」は、「密封状態に対象物を収納するように形成された包装袋」に包含されるから、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Aを充足する。 4-1-2.本件特許発明の構成要件Bについて、 本件特許発明の「熱融着部分(H)」は、「袋内部空間(S)に面する内部空間形成用フィルム部分(I)」を部分的に熱融着して形成されるものである。 一方、イ号物件の「熱融着側縁(12Le、12Re)」について検討すると、熱融着側縁は、フィルム14を食品包装用袋体に形成し、また、形成された食品包装用袋体の開口部を閉鎖し、密封状態にするために設けられるものである。 言い換えると、イ号物件の食品包装用袋体では、熱融着側縁を形成することにより、初めて袋の内部が確定し、熱融着側縁の内側に袋内部空間(S)が形成されるものであり、袋内部空間(S)及び、それに面する内部空間形成用フィルム部分(I)が初めからあって、そこに熱融着側縁が形成されるのではない。 したがって、イ号物件の、「熱融着側縁」を形成するフィルム部分は、本件特許発明の「袋内部空間(S)に面する内部空間形成用フィルム部分(I)」には、包含されないので、イ号物件の「熱融着側縁」は、本件特許発明の「熱融着部分(H)」には包含されない。 よって、イ号物件の構成bは、本件特許発明の構成要件Bを充足しない。 4-1-3.本件特許発明の構成要件Cについて、 イ号物件は上述のように、本件特許発明の「熱融着部分(H)」にあたる構成を備えていないので、イ号物件の、内層フィルムの破断により形成される通気路は、本件特許発明の、袋外部と熱融着部分(H)の破断開口部(1h)とを連通する「通気路(R)」に包含されず、イ号物件の「外層フィルム(16)」も、本件特許発明の、熱融着部分(H)の形成箇所を外方より覆う「外装フィルム(O)」に包含されない。 したがって、イ号物件の構成cは、本件特許発明の構成要件Cを充足しない。 よって、イ号物件は、構成要件B、Cを充足しないので、本件特許発明の技術的範囲に属しないものである。 4-2.請求項3が請求項2を引用する場合について 請求項2は、請求項1を引用するとともに、さらに構成要件Dを、請求項1に係る発明の構成要件に付加するものである。 そこで、請求項3が請求項2を引用する場合、請求項3に係る発明は、上記2-2に示すように、構成要件A〜Dを有するものである。 そして、上述したように、イ号物件は構成要件B、Cを充足しないものであるから、構成要件Dについて判断するまでもなく、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しないものである。 4-3.被請求人の主張について、 4-3-1.被請求人の主張 被請求人は、答弁書において、「『部分的に熱融着させた熱融着部分(H)』における『部分的に』とは、上記したように、『包装袋全体に対して部分的に』と言う意味であるから、予め袋状に熱融着されている側縁箇所が、部分的に熱融着されていると言えるのみならず、包装袋の四周を密封された側縁も、いずれも『部分的に融着させた熱融着部分(H)』と言えるものである」旨述べ、イ号物件の熱融着側縁も、本件特許発明の「熱融着部分(H)」に包含されるべき旨主張するので、この点についてさらに検討する。 4-3-2.先行技術 特開平5-31944号公報(判定請求書添付の甲第5号証の5)には、次のイ〜二の事項が図面とともに記載されている。 イ、(特許請求の範囲)「【請求項1】層間剥離が容易なシーラントを基材の内面に積層してなるフレキシブル包材を用い、シーラント同士を向かい合わせた状態で熱融着したことを特徴とする包装袋」 ロ、(【0006】段落)「【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するために、本発明の包装袋は、層間剥離が容易なシーラントを基材の内面に積層してなるフレキシブル包材を用い、シーラント同士を向かい合わせた状態で熱接着して製袋したことを特徴とするものである。」 ハ、(【0008】〜【0010】段落)「【実施例】 次に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。 図1は本発明に係る包装袋の一実施例を示す断面図であり、同図に示される包装袋1は、2枚のフレキシブルな包材2を合わせ四方をヒートシールして製袋したもので、図示はしないが中には肉まんやあんまんなどの食品が収納されており、内容物を食べるに際してそのまま電子レンジで所定時間加熱するタイプのものである。 上記の包材2は、厚さ20μmの延伸ポリプロピレンフィルムからなる基材3の内面にシーラント4を積層したものであり、本実施例ではこのシーラント4として3層構造の東燃化学製EPL11(厚さ25μm)を使用している。」 ニ、(【0011】段落)「上記の構成からなる包装袋1は、電子レンジで加熱され食品から発生する蒸気圧が上昇して内圧が所定の圧力に達すると、図21に示すようにシーラント4が何れかの部分で層間剥離を起こして開封する。このように包装袋1はシーラント4の部分における層間剥離により開封されるので、突然破裂することなく緩やかに開封する。また一定の内圧に達するまで開封しないので、内部蒸気により食品が適度に蒸されることになる。」 4-3-3.先行技術との対比 そこで、特開平5-31944号公報に記載されたもの(以下「先行技術」という)を、本件特許発明と対比すると、先行技術の「包装袋」は、合成樹脂フィルムからなる「包材2」で、密封状態に食品を収納するもの(記載イ、ハ参照)であるから、先行技術は、本件特許発明の構成要件Aを充足する。 次に、先行技術の包材2は、四方をヒートシールして製袋されているが、該ヒートシール部分は、フィルム同士を部分的に熱融着させたものであるので、被請求人の主張に基づけば、該ヒートシール部分は、本件特許発明の「熱融着部分(H)」に相当する。 そこで、そのように解すると、先行技術の包装袋は、水蒸気が発生して内圧が上昇すると、引張力がヒートシール部に作用し、その近傍でシーラント4の一部が破断し、そこからシーラント4が層間剥離して、破断部分と外部とがつながり、開封するので(記載ニ参照)、先行技術は、本件特許発明の構成要件Bを充足する。 さらに、先行技術の、「シーラント4」のうち、層間剥離する部分より内側のフィルム部分は、本件特許発明の「内部空間形成用フィルム部分(I)」に相当し、「シーラント4」のうち、層間剥離する部分より外側のフィルム部分及び「基材3」は、シーラントの破断部分と袋外部とを連通する通気路(層間剥離部分)を形成する状態で、シーラント4の内側部分の外面に積層、すなわち付設されているので、本件特許発明の「外装フィルム(O)」に相当するから(記載ロ〜ニ参照)、先行技術は、本件特許発明の構成要件Cを充足する。 してみると、被請求人が主張するように、本件特許発明の「熱融着部分(H)」が、イ号物件に係る包装袋の側縁熱融着部分を包含すると仮定すると、「熱融着部分(H)」は、先行技術のヒートシール部分をも包含することになるから、本件特許発明の技術範囲は、先行技術のような公知技術にまで及ぶことになる。 したがって、このことからも、本件特許発明の技術的範囲の確定にあたっては、「熱融着部分(H)」という用語が、製袋あるいは袋を密閉するためにフィルムに施された熱融着部分を包含しないと解釈すべきものである。 そして、「熱融着部分(H)」をこのように解釈すると、イ号物件は、「熱融着部分(H)」に相当する構成を有さないので、本件特許発明の構成要件を充足しないことは明かである。 5.むすび したがって、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。 |
別掲 |
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判定日 | 2003-06-11 |
出願番号 | 特願平6-257981 |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZA
(B65D)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 溝渕 良一 |
特許庁審判長 |
吉国 信雄 |
特許庁審判官 |
山崎 豊 杉原 進 |
登録日 | 1998-12-18 |
登録番号 | 特許第2866587号(P2866587) |
発明の名称 | 包装袋 |
代理人 | 藁科 孝雄 |
代理人 | 谷口 俊彦 |
代理人 | 鈴木 崇生 |
代理人 | 梶崎 弘一 |
代理人 | 尾崎 雄三 |