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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04D
管理番号 1080567
審判番号 不服2001-12607  
総通号数 45 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-07-19 
確定日 2003-07-16 
事件の表示 平成 9年特許願第172521号「建築物の外装構造の施工方法、縦葺き外装材、建築物の外装構造」拒絶査定に対する審判事件[平成11年 1月26日出願公開、特開平11- 22115]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年6月27日の出願であって、平成13年5月30日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月13日付で手続補正がなされたものである。

2.平成13年8月13日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)について

[補正却下の決定の結論]
平成13年8月13日付の手続補正を却下する。

[理由]
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「両側縁に第一立上り部を有し、前記両側縁の第一立上り部間には1つ以上の中央山部を有する縦葺き外装材と、外装材保持用部材よりなり、山部と谷部が交互に形成される建築物の外装構造を施工する方法であって、前記縦葺き外装材の両側縁の第一立上り部と中央山部を形成する第二立上り部にはそれぞれ1つ以上の嵌合部が形成されると共に、第二立上り部の第二嵌合部は、前記第一立上り部の第一嵌合部よりも下方となるように形成され、縦葺き外装材の全幅は、施工時の有効幅とほぼ同一か、有効幅以内に成形され、前記外装材保持用部材にはこれらの嵌合部と弾性嵌合する1つ以上の被嵌合部が形成され、下地上に固定した外装材保持用部材に対する縦葺き外装材の嵌合作業を中央山部から始め、嵌合部と被嵌合部とを弾性的に嵌合させ、カバー材を嵌合して隣接する箇所を被覆することを特徴とする建築物の外装構造の施工方法。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項に限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(1)引用例
(1-1)原査定の拒絶の理由に周知例として引用され、本願の出願日前に頒布された「特開昭60-173248号公報」(以下、「引用例1」という。)の2頁左上欄18行〜右下欄20行の記載事項及び図面の記載によると、引用例1には、
「両側に、半山形状部を有し、両側の半山形状部間には1つの中間山形状部を有する嵌合用建築用板と、受金具よりなり、山形状部と平板状部が交互に形成される嵌合外囲体を施工する方法であって、嵌合用建築用板の両側の半山形状部と中央山部を形成する中間山形状部にはそれぞれ1つ以上の係合用段部が形成され、嵌合用建築用板の全幅は、施工時の有効幅以内に成形され、受金具にはこれらの係合用段部と弾性係合する1つ以上の被係合用段部が形成され、構造材上に直接又はこの上に敷設した断熱板上に固着された受金具間に嵌合用建築用板が載置されつつ半山形状部が受金具の両側の約半分箇所に被嵌され、係合用段部と被係合用段部とが係合され、次いで隣接の嵌合用建築用板の半山形状部も同様に被嵌され、その隣接する両半山形状部にキャップ材を嵌合して被覆する嵌合外囲体の施工方法」
という発明が事実上開示されている。
(1-2)また、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された「実願昭53-74192号(実開昭54-175117号)のマイクロフィルム」(以下、「引用例2」という。)の明細書3頁5行〜7頁12行の記載事項及び図面の記載によると、引用例2には、
「両端に立上り部を有し、両端の立上り部間の中央部には1つの膨出部を有する折版屋根と、吊子及び中間ピースよりなる折版屋根を施工する方法であって、折版屋根の両端の立上り部には、その延長先端部の一方に吊子に挿入する内馳部が、他方に内馳部を套嵌する外馳部が、中央部の膨出部下面には下向きに開放した奥拡がりの溝が形成されると共に、膨出部下面の奥拡がりの溝は、立上り部の内馳部及び外馳部よりも下方になるように形成され、吊子には内馳部を挿入する馳締用円弧形状部が、中間ピースには膨出部下面の奥拡がりの溝と弾性嵌合する1つの頭部が形成され、下地上に固定した吊子及び中間ピースに対する折版屋根の嵌合作業を膨出部から始め、膨出部下面の奥拡がりの溝と中間ピースの頭部とを弾性的に嵌合させ、次いで、両端の馳締めをすることにより、風などによって浮き上がったりガタツキを生じることがなく施工性を向上した折版屋根の施工方法」
という発明が事実上開示されていると認められる。

(2)対比
そこで、本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「両側」、「半山形状部」、「中間山形状部」、「嵌合用建築用板」、「受金具」、「山形状部」、「平板状部」、「嵌合外囲体」、「係合用段部」、「被係合用段部」、「構造材上に直接又はこの上に敷設した断熱板上に固着された」及び「キャップ材」は、それぞれ本願補正発明の「両側縁」、「第一立上り部」、「第二立上り部」、「縦葺き外装材」、「外装材保持用部材」、「山部」、「谷部」、「建築物の外装構造」、「嵌合部」、「被嵌合部」、「下地上に固定した」及び「カバー材」に相当するから、両者は、
「両側縁に第一立上り部を有し、前記両側縁の第一立上り部間には1つ以上の中央山部を有する縦葺き外装材と、外装材保持用部材よりなり、山部と谷部が交互に形成される建築物の外装構造を施工する方法であって、前記縦葺き外装材の両側縁の第一立上り部と中央山部を形成する第二立上り部にはそれぞれ1つ以上の嵌合部が形成され、縦葺き外装材の全幅は、施工時の有効幅とほぼ同一か、有効幅以内に成形され、前記外装材保持用部材にはこれらの嵌合部と弾性嵌合する1つ以上の被嵌合部が形成され、下地上に固定した外装材保持用部材に対する縦葺き外装材の嵌合作業は、嵌合部と被嵌合部とを弾性的に嵌合させ、カバー材を嵌合して隣接する箇所を被覆する建築物の外装構造の施工方法。」
の点で一致し、次の2点で相違している。

〔相違点1〕建築物の外装構造の施工方法に用いる縦葺き外装材に関し、本願補正発明が、第二立上り部の第二嵌合部は、第一立上り部の第一嵌合部よりも下方となるように形成されたものであるのに対し、引用例1記載の発明が、第二立上り部の第二嵌合部と、第一立上り部の第一嵌合部との位置に差異がないものである点。
〔相違点2〕外装材保持用部材に対する縦葺き外装材の弾性的嵌合作業に関し、本願補正発明が、中央山部から始めるのに対し、引用例1記載の発明が、中央山部の嵌合作業について記載されていないものである点。

(3)判断
本願補正発明と引用例2記載の発明とを対比すると、引用例2記載の発明の「両端」、「立上がり部」、「膨出部」、「折板屋根」、「吊子、中間ピース」、「馳部」及び「膨出部下面の奥拡がりの溝」は、それぞれ本願補正発明の「両側縁」、「第一立上り部」、「中央山部」、「縦葺き外装材、建築物の外装構造」、「外装材保持用部材」、「第一嵌合部」及び「第二嵌合部」に相当する。そうすると、引用例2には、「建築物の外装構造の施工方法に用いる縦葺き外装材の第二立上り部の第二嵌合部は、第一立上り部の第一嵌合部よりも下方となるように形成され、下地上に固定した外装材保持用部材に対する縦葺き外装材の嵌合作業を中央山部から始め、嵌合部と被嵌合部とを弾性的に嵌合させて、風などによる浮き上がりを生じることがなく施工性を向上した建築物の外装構造の施工方法」が記載されており、これは、相違点1に係る本願補正発明の構成及び相違点2に係る本願補正発明の構成に相当する。
そして、縦葺き外装材を施工する分野において、引用例1記載の発明のタイプ(側縁同士を重合せず、カバー材を嵌合するタイプ)を用いたものも、引用例2記載の発明のタイプ(ハゼ係合タイプ)を用いたものもどちらも従来周知であり、施工者は、それらいずれの施工手順も熟知しているものである。
そこで、引用例1記載の発明の構成と引用例2記載の発明の構成との組合せを阻害する要因の有無について検討する。
本願の明細書の【発明が解決しようとする課題】の項によると、引用例1、2に記載されているような、「面板部に山部を複数ピッチ形成した外装材では、そうでないものと比較して面板部が風圧力等の作用によって生ずる浮き上がり等の変位量が抑制される反作用として、嵌合時における面板部の弾性変位量が減少するので、施工性は低下する」ことが問題であったと記載されている(段落番号【0003】)ことから、風圧力等の作用によって生ずる浮き上がり等の変位量を抑制するのは、外装材の面板部に山部を複数ピッチ形成することによるものであって、相違点1に係る本願補正発明の構成(建築物の外装構造の施工方法に用いる縦葺き外装材第二立上り部の第二嵌合部は、第一立上り部の第一嵌合部よりも下方となるように形成されたものである)及び相違点2に係る本願補正発明の構成(外装材保持用部材に対する縦葺き外装材の弾性的嵌合作業を中央山部から始める)(以下、「相違点に係る本願補正発明の構成」という。)は、もっぱら施工性が低下するという問題を解決するための技術手段であることを示している。
次に、本願の明細書の【発明の実施の形態】の項において、本願補正発明の一効果(施工作業性の安定化)の説明文中には、上記のような外装材のタイプの違いによって生じるものであるという明瞭な記載が無いばかりか、上記の効果をより明瞭に説明するために用いた参考例は、本願補正発明のタイプ(側縁同士を重合せず、カバー材を嵌合するもので、引用例1記載の発明も同様である。)のものではなく、図2のタイプ(外装材の側縁同士が重合するタイプのもの)であり、その他の参考例の中に、刊行物2記載の発明のタイプのものであるハゼ係合タイプのものも含まれている。そうすると、相違点に係る本願補正発明の構成と縦葺き外装構造とに密接な関係があるわけではなく、引用例1記載の発明の構成と引用例2記載の発明の構成との組合せを阻害する要因を格別に有していない。
したがって、本願補正発明の構成は、引用例1記載の発明に引用例2記載の発明を適用することにより、当業者が容易に想到しえたものというべきである。
そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1記載の発明及び引用例2記載の発明から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用例1記載の発明及び引用例2記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第4項の規定に違反するものであり、同法159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成13年8月13日付の手続補正は上記のとおり却下され、平成13年3月19日付の手続補正もすでに却下されているので、本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成12年9月7日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項2】 両側縁に第一立上り部を有し、前記両側縁の第一立上り部間には1つ以上の中央山部を有して、山部と谷部が交互に形成される縦葺き外装材であって、前記両側縁の第一立上り部と中央山部を形成する第二立上り部にはそれぞれ1つ以上の嵌合部が形成されると共に、前記第二立上り部の第二嵌合部は、前記第一立上り部の第一嵌合部よりも下方となるように形成され、縦葺き外装材の全幅は、施工時の有効幅とほぼ同一か、有効幅以内に成形されていることを特徴とする縦葺き外装材。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された「特開昭63-156152号公報」(以下、「引用例3」という。)の、2頁右下欄6〜17行、3頁左上欄7〜18行、3頁右上欄15行〜左下欄6行の記載事項及び図面、特に第10図によれば、引用例3には、
「底部の幅方向両側に山形部を有し、前記両側の山形部の間の底部の幅方向中間には1つの比較的高さの低い台形山形状の山形部を有して、山形部と底部が交互に形成され、底部の幅方向両側の山形部は、内方側に比較的高さの高い側部傾斜面と、この外方側に高さの低い側部傾斜面とがそれぞれ屈曲形成される嵌合用建築用板であって、前記嵌合用建築用板の両側の山形部にはそれぞれ1つの嵌合部が形成され、中間の山形部の両側の傾斜面にもそれぞれ1つの嵌合部が形成されると共に、中間の山形部の嵌合部は、前記両側の山形部の嵌合部よりも下方となるように形成され、一側の山形部を隣接する嵌合用建築用板の他側の山形部に被嵌して屋根又は壁の嵌合外囲体を施工することに用いる嵌合用建築用板。」
という発明が事実上開示されている。

(2)対比
本願発明と引用例3記載の発明とを対比すると、引用例3記載の発明の「底部の幅方向両側」、「比較的高さの高い側部傾斜面」、「比較的高さの低い台形山形状の山形部」、「底部」、「中間の山形部の傾斜面」、「両側の山形部の嵌合部」、「中間の山形部の嵌合部」及び「屋根又は壁の嵌合外囲体を施工することに用いる嵌合用建築用板」は、それぞれ本願発明の「両側縁」、「第一立上り部」、「中央山部」、「谷部」、「第二立上り部」、「第一嵌合部」、「第二嵌合部」及び「縦葺き外装材」に相当するから、両者は、
「両側縁に第一立上り部を有し、前記両側縁の第一立上り部間には1つ以上の中央山部を有して、山部と谷部が交互に形成される縦葺き外装材であって、前記両側縁の第一立上り部と中央山部を形成する第二立上り部にはそれぞれ1つ以上の嵌合部が形成されると共に、前記第二立上り部の第二嵌合部は、前記第一立上り部の第一嵌合部よりも下方となるように形成される縦葺き外装材」
の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
縦葺き外装材の大きさに関し、本願発明は、全幅が、施工時の有効幅とほぼ同一か、有効幅以内に成形されているのに対し、引用例3記載の発明は、縦葺き外装材の一側縁の山部を隣接する縦葺き外装材の他側縁の山部に被嵌して施工する大きさである点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
縦葺き外装材の全幅が、施工時の有効幅とほぼ同一か、有効幅以内に成形されているものは従来周知なものである(例えば、特開昭60-173248号公報(上記引用例1)、実願昭55-83313号(実開昭57-6439号)のマイクロフィルム等参照。)。
したがって、本願発明は、引用例3記載の発明に上記の周知技術を適用することにより、当業者が容易に想到しえたものというべきである。
そして、本願発明の作用効果も、引用例3及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例3記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2003-04-22 
結審通知日 2003-04-30 
審決日 2003-05-22 
出願番号 特願平9-172521
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04D)
P 1 8・ 575- Z (E04D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 陽七字 ひろみ吉岡 麻由子  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 青山 敏
小山 清二
発明の名称 建築物の外装構造の施工方法、縦葺き外装材、建築物の外装構造  
代理人 福田 武通  
代理人 福田 賢三  
代理人 福田 伸一  

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