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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60D
管理番号 1080652
審判番号 審判1998-18437  
総通号数 45 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-04-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-11-24 
確定日 2003-07-07 
事件の表示 平成7年特許願第13065号「改良無緩型牽引棒組立体」[平成8年4月2日出願公開(特開平8-85311号)]拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は、パリ条約による優先権主張(優先日1994(平成6)年9月19日、米国)を伴って、平成7年1月30日付で特許出願されたものであって、その出願に係る発明は、平成10年2月22日付の手続補正については補正却下の決定がされているので、平成9年10月15日付、平成13年8月29日付で、それぞれ手続補正された明細書における、特許請求の範囲の請求項1〜28に記載された事項によってそれぞれ特定される次のとおりのものと認める。(なお、下記のとおり、請求項2以下の全発明において直接又は間接的に引用されている、請求項1に係る発明を、以下では、便宜上、「本願発明」という。)
【請求項1】 実質的に半永久的な状態に一対の貨車の隣接して配置された端部を一緒に連結するために、それぞれの貨車に取り付けられるメス連結部材とこれらのメス連結部材にそれぞれ係合可能なオス連結部材とからなる改良無緩型牽引棒組立体において、
(a) 少なくとも一方のメス連結部材であって、次のものを備えたメス連結部材と、
(i) 第1貨車の車両本体部の底部に配置された中央土台部の外側端部内に嵌合可能な第1所定輪郭を有する第1端部と、
(ii) 前記中央土台部の外側端部から外方向に延びる、半径方向に対向した第2端部、
(b) 前記メス連結部材の半径方向に対向した第2端部に形成された空洞であって、
第2所定輪郭を有する背壁部の内側表面と、頂壁部の内側表面と、第3所定輪郭を有する一対の側壁部の夫々の内側表面とにより画成され、
前記半径方向に対向した第2端部の底部の少なくとも一部分と半径方向に対向した一対の側壁部の外側端部とにおいて開放された空洞と、
(c) 前記一対の内の第一の側壁部を貫いて形成された、第4所定輪郭を有する第1開口と、
(d) 前記一対の内の第二の側壁部を貫いて形成された、第5所定輪郭を有する、第1開口と半径方向に対向した第2開口と、
(e) 少なくとも一方のオス連結部材であって、第6所定輪郭を有すると共に次のものを備えたオス連結部材と、
(i) 少なくとも一部分が、前記メス連結部材の半径方向に対向した第2端部に形成された前記空洞の内部に回転可能に配置されている第1端部と、
(ii) 半径方向に対向した第2端部、
(f) 前記第1端部付近において所定部分を貫いて形成された穴部と、
(g) 少なくとも一部分が、前記オス連結部材の第1端部を貫いて形成された穴部の内部に配置された球形部材と、
(h) 前記球形部材の半径方向に対向して、ほぼ垂直に形成された外側表面から所定距離だけ外方向に延びている、ほぼ水平に配置された一対の軸部材であって、
一対の内の第一の軸部材の少なくとも一部分が、前記第一の側壁部を貫いて形成された第1開口の内部に配置され、
一対の内の第二の軸部材の少なくとも一部分が、前記第二の側壁部を貫いて形成された第2開口の内部に配置され、
夫々に、半径方向に対向してほぼ平坦な平坦表面部を有する一対の軸部材と、
(i) 前記オス連結部材の第1端部の穴部の内部に配置されると共に、前記オス連結部材の第1端部に固定された軌道輪組立体であって、
その内側表面が、少なくとも一方の前記オス連結部材の第1端部を貫いて形成された穴部の内部に位置する前記球形部材の少なくとも一部分の回りに配置された軌道輪組立体と、
(j) 第一の楔止め手段が、前記一対の軸部材に夫々形成された、ほぼ平坦な第一の平坦表面部に係合する第1表面と、前記第1開口の一部分に隣接して第一の側壁部に形成された、ほぼ平坦で垂直に形成された表面部に係合する第2表面とを備え、
第二の楔止め手段が、前記一対の軸部材に夫々形成されたほぼ平坦な第二の平坦表面部に係合する第1表面と、前記第2開口の一部分に隣接して第二の側壁部に形成された、ほぼ平坦で垂直な表面部に係合する第2表面とを備えているところの一対の楔止め手段と、
(k) 改良無緩型牽引棒組立体を形成するように、少なくとも一方のオス連結部材の第2端部を他方のオス連結部材の第2端部に固定するための、一方のオス連結部材の第2端部と他方のオス連結部材の第2端部とを係止可能とした固定手段と
から成る改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項2】 上記球形部材の外側表面と上記軌道輪組立体の内側表面との間には、固形型の潤滑ライナー部材が配置されていることを特徴とする請求項1に記載された改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項3】 上記メス連結部材の第1端部の第1所定輪郭がほぼ長方形状であることを特徴とする請求項1に記載された改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項4】 上記メス連結部材の第2端部に形成された上記空洞の背壁部の内側表面の第2所定輪郭が、垂直方向と水平方向のうちの少なくとも一方向でほぼ凹状となっていることを特徴とする請求項1に記載された改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項5】 上記メス連結部材の第2端部に形成された上記空洞の背壁部の内側表面の第2所定輪郭が、垂直方向と水平方向の両方でほぼ凹状となっていることを特徴とする請求項4に記載された改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項6】 上記メス連結部材の第2端部に形成された空洞を画成する一対の側壁部の夫々の内側表面からなる第3所定輪郭が、少なくとも水平方向でほぼ凸状となっていることを特徴とする請求項4に記載された改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項7】 上記メス連結部材の第2端部に形成された空洞を画成する一対の側壁部の夫々の内側表面からなる第3所定輪郭が、水平方向と垂直方向との両方でほぼ凸状となっていることを特徴とする請求項6に記載された改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項8】 上記オス連結部材の第1端部が、上記メス連結部材の第2端部に形成された空洞の背壁部の内側表面に対面して配置される端表面を備え、この端表面が、垂直方向と水平方向のうちの少なくとも一方向で凸状となっていることを特徴とする請求項1に記載された改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項9】 上記オス連結部材の第1端部が、上記メス連結部材の第2端部に形成された空洞の背壁部の内側表面に対面して配置される端表面を備え、この端表面が、垂直方向と水平方向の両方で凸状となっていることを特徴とする請求項8に記載された改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項10】 上記一対の内の第一の側壁部を貫いて形成された第1開口の第4所定輪郭と、上記一対の内の第二の側壁部を貫いて形成された、第1開口と半径方向に対向した第2開口の第5所定輪郭とが、少なくともほぼ丸い曲部と開放された底部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載された改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項11】 上記第1端部付近においてオス連結部材の所定部分を貫いて形成された穴部が、第1所定直径を有するほぼ円形であることを特徴とする請求項1に記載された改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項12】 上記軌道輪組立体が、上記オス連結部材の第1端部に取り外し可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載された改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項13】 上記球形部材と一対の軸部材とが、完全に一体の構成要素として形成されていることを特徴とする請求項1に記載された改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項14】 上記球形部材の少なくとも一部分がクロムメッキした外側表面を備えていることを特徴とする請求項1に記載された改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項15】 上記球形部材のクロムメッキした外側表面が磨かれていることを特徴とする請求項14に記載された改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項16】 上記一対の楔止め手段が、第一及び第二の楔止め部材をそれぞれ備え、
第一及び第二の楔止め部材の夫々が、その長さ方向に貫いて配置されたボルトおよびワッシャ手段を有し、
第一の楔止め部材が、一対の軸部材に夫々形成された第1の平坦表面部に係合するテーパの付いた第1表面と、第一の側壁部の第1開口に形成された垂直な表面部と係合するほぼ平坦で垂直な第2表面とを有し、
第二の楔止め部材が、一対の軸部材に夫々形成された第2の平坦表面部に係合するテーパの付いた第1表面と、第二の側壁部の第2開口に形成された垂直な表面部と係合するほぼ平坦で垂直な第2表面とを有することを特徴とする請求項1に記載された改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項17】 前記オス連結部材の第2端部と他方のオス連結部材の第2端部との係止可能な固定手段が、溶接であることを特徴とする請求項1に記載された改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項18】 上記オス連結部材の第2端部と他方のオス連結部材の第2端部との係止可能な固定手段が、上記一方のオス連結部材の第2端部と他方のオス連結部材の第2端部との間に配置されると共に、各第2端部に固定される棒状部材あるいは管状部材のいずれか一方を備えていることを特徴とする請求項1に記載された改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項19】 上記管状部材が、上記第1オス連結部材の第2端部と他方の第2オス連結部材の第2端部との間に配置されると共にそれらに固定される場合には、上記一方の第1オス連結部材の第2端部と他方の第2オス連結部材の第2端部の夫々が、上記管状部材の端部に挿入される結合用オス部材を備えていることを特徴とする請求項18に記載された改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項20】 (a) 次のものを備えた第2メス連結部材と、
(i) 第2貨車の車両本体部の底部に配置された中央土台部の外側端部内に嵌合可能な第7所定輪郭を有する第1端部と、
(ii) 前記第2貨車の中央土台部の外側端部から外方向に延びる、半径方向に対向した第2端部、
(b) 前記第2メス連結部材の半径方向に対向した前記第2端部に形成された第2空洞であって、
第8所定輪郭を有する背壁部の内側表面と、頂壁部の内側表面と、第9所定輪郭を有する一対の側壁部の夫々の内側表面とにより画成され、
前記半径方向に対向した第2端部の底部の少なくとも一部分と半径方向に対向した一対の側壁部の外側端部とにおいて開放された第2空洞と、
(c) 前記一対の内の第一の側壁部を貫いて形成された、第10所定輪郭を有する第1開口と、
(d) 前記一対の内の第二の側壁部を貫いて形成された、第11所定輪郭を有する、第1開口と半径方向に対向した第2開口と、
(e) 第2オス連結部材であって、第12所定輪郭を有すると共に次のものを備えた第2オス連結部材と、
(i) 少なくとも一部分が、前記第2メス連結部材の半径方向に対向した第2端部に形成された前記第2空洞の内部に回転可能に配置された第1端部と、
(ii) 半径方向に対向した第2端部、
(f) 前記第1端部付近において所定部分を貫いて形成された第2穴部と、
(g) 少なくとも一部分が、前記第2オス連結部材の第1端部を貫いて形成された第2穴部の内部に配置された第2球形部材と、
(h) 前記第2球形部材の半径方向に対向して、ほぼ垂直に形成された外側表面から所定距離だけ外方向に延びている、ほぼ水平に配置された一対の第2軸部材であって、
一対の内の第一の第2軸部材の少なくとも一部分が、前記一対の内の第一の側壁部を貫いて形成された前記第1開口の内部に配置され、
一対の内の第二の第2軸部材の少なくとも一部分が、前記一対の内の第二の側壁部を貫いて形成された前記第2開口の内部に配置され、
夫々に、ほぼ平坦な平坦表面部を有する一対の第2軸部材と、
(i) 少なくとも一部分が前記第2オス連結部材の第1端部の第2穴部の内部に配置されると共に、前記第2オス連結部材の第1端部に固定された第2軌道輪組立体であって、
その内側表面が、前記第2オス連結部材の第1端部を貫いて形成された第2穴部の内部に位置する前記第2球形部材の少なくとも一部分の回りに配置された第2軌道輪組立体と、
(j) 第一の第2楔止め手段が、前記一対の第2軸部材に半径方向に対向して夫々形成された、ほぼ平坦な第一の平坦表面部に係合する第1表面と、前記第1開口の一部分に隣接して第一の側壁部に形成された、ほぼ平坦で垂直な表面部に係合する第2表面とを備え、
第二の第2楔止め手段が、前記一対の第2軸部材に半径方向に対向して夫々形成されたほぼ平坦な第二の平坦表面部に係合する第1表面と、前記第2開口の一部分に隣接して第二の側壁部に形成された、ほぼ平坦で垂直な表面部に係合する第2表面を備えているところの一対の第2楔止め手段とから成ることを特徴とする請求項1に記載された改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項21】 上記無緩型牽引棒組立体が、上記第2球形部材の外側表面と上記第2軌道輪組立体の内側表面との間に配置された、固形型の第2潤滑ライナー部材を備えていることを特徴とする請求項20に記載された改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項22】 上記第2メス連結部材の第2端部の背壁部の内側表面の第8所定輪郭が、少なくとも一個の上記メス連結部材の第2端部に形成された上記空洞の背壁部の内側表面と実質的に同一であることを特徴とする請求項20に記載された改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項23】 上記第2メス連結部材の第2端部の一対の側壁部の夫々の内側表面の第9所定輪郭が、一方の上記メス連結部材の第2端部に形成された上記空洞の一対の側壁部の夫々の内側表面の第3所定輪郭と実質的に同一であることを特徴とする請求項22に記載された改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項24】 上記第2オス連結部材の第1端部が、上記第2メス連結部材の第2端部の背壁部の内側表面に対面して配置される表面を備え、
この表面が、垂直方向と水平方向の夫々に凸状となっていることを特徴とする請求項20に記載された改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項25】 上記第2メス連結部材の第2端部の一対の内の第一の側壁部を貫いて形成した第1開口の第10所定輪郭と、上記第2メス連結部材の第2端部の一対の内の第二の側壁部を貫いて形成した半径方向に対向した第2開口の第11所定輪郭とが、少なくともほぼ丸い曲部とほぼ開放された底部を備えていることを特徴とする請求項20に記載された改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項26】 上記第2軌道輪組立体が、上記第2オス連結部材の第1端部へ取り外し可能に取り付けられていることを特徴とする請求項20に記載された改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項27】 上記第2球形部材と一対の上記第2軸部材とが、完全に一体の構成要素として形成されることを特徴とする請求項20に記載された改良無緩型牽引棒組立体。
【請求項28】 一対の第2楔止め手段が、第一及び第二の楔止め部材をそれぞれ備え、
この第一及び第二の楔止め部材が、それらの長さ方向に貫いて配置されたボルトおよびワッシャ手段とを有し、
さらに、第一の第2楔止め部材が、一対の第2軸部材に夫々形成されたほぼ平坦な第一の平坦表面部に係合するテーパの付いた第1表面と、上記第2メス連結部材の第2端部の第一の側壁部を貫いて形成した第1開口に形成された垂直な表面部と係合する、ほぼ平坦で垂直な第2表面とを備え、
第二の第2楔止め部材が、一対の第2軸部材に夫々形成されたほぼ平坦な第二の平坦表面部に係合するテーパの付いた第1表面と、上記第2メス連結部材の第2端部の第二の側壁部を貫いて形成した第2開口に形成された垂直な表面部と係合する、ほぼ平坦で垂直な第2表面とを備えていることを特徴とする請求項20に記載された改良無緩型牽引棒組立体。

2.引用例記載事項の概要
一方、本願の優先日前に頒布された刊行物であって、当審において通知した拒絶理由で引用したものは次のとおりである。
第1引用例:米国特許第5232106号明細書
第2引用例:米国特許第5042393号明細書
第3引用例:米国特許第4580686号明細書
(1)上記第1引用例には、一対の貨車を「半永久的な状態に連結するため」の「牽引棒」(draw bar5)に関して、当該牽引棒は、各先端部12、14に形成された垂直方向の開口部8、10を備え、当該開口部は貨車の中央土台部(center sill)のピンに結合されるものであって、当該牽引棒の構成は、中間の軸部(shank portion50)の両端に、上記の開口部が穿設された連結部材(coupling piece16及び18)が溶接(welding)によって固定されてなるものである旨の記載がある。(第1〜5図、第8図、第1欄12〜16行、第3欄第15〜第33行、第4欄50〜56行、第5欄第10〜22行参照)
(2)また、上記第2引用例には、メス連結部材とオス連結部材とで構成される鉄道貨車車両の連結具であって、当該メス及びオスの連結部材に関して次の(a)〜(j)の点が明示されている。(第1〜4図、及び、特に、第4欄第48行〜第8欄第35行参照)
(a) 次のものを備えたメス連結部材(female connection member30)、
(i) 一方の貨車の車両本体部の底部に配置された中央土台部の外側端部内に嵌合可能な所定輪郭を有する第1端部(first end24)と、
(ii) 前記中央土台部の外側端部から外方向に延びる、半径方向に対向した第2端部(second end)、
(b) 前記メス連結部材の半径方向に対向した第2端部に形成された空洞(cavity26)であって、
所定輪郭を有する背壁部(back wall portion34)の内側表面と、底壁部(bottom wall portion32)の内側表面と、所定輪郭を有する一対の側壁部(side wall portions36)の夫々の内側表面とにより画成され、
前記半径方向に対向した第2端部の上部の少なくとも一部分と半径方向に対向した一対の側壁部の外側端部とにおいて開放された空洞と、
(c) 前記一対の内の第一の側壁部を貫いて形成された、所定輪郭を有する第1の開口(opening38)と、
(d) 前記一対の内の第二の側壁部を貫いて形成された、所定輪郭を有する、第1の開口と半径方向に対向した第2の開口(opening38)と、
(e) 所定輪郭を有すると共に次のものを備えたオス連結部材(male
connection member20)と、
(i) 少なくとも一部分が、前記メス連結部材の半径方向に対向した第2端部に形成された前記空洞の内部に回転可能に配置されている第2端部(second end14)と、
(ii) 第1端部(first end12)、
(f) 前記第2端部付近において所定部分を貫いて形成された穴部
(apperture16)と、
(g) 少なくとも一部分が、前記オス連結部材の第2端部を貫いて形成された穴部の内部に配置された球形部材(spherical member42)と、
(h) 前記球形部材の半径方向に対向して、ほぼ垂直に形成された外側表面から所定距離だけ外方向に延びている、ほぼ水平に配置された一対の軸部材(shaft members46)であって、
一対の内の第一の軸部材の少なくとも一部分が、前記第一の側壁部を貫いて形成された第1の開口の内部に配置され、
一対の内の第二の軸部材の少なくとも一部分が、前記第二の側壁部を貫いて形成された第2の開口の内部に配置され、
夫々に、半径方向に対向してほぼ平坦な平坦表面部を有する一対の軸部材と、
(i) 前記オス連結部材の第2端部の穴部の内部に配置されると共に、前記オス連結部材の第2端部に固定された軌道輪組立体(race assembly 44)
であって、
その内側表面が、少なくとも一方の前記オス連結部材の第2端部を貫いて形成された穴部の内部に位置する前記球形部材の少なくとも一部分の回りに配置された軌道輪組立体と、
(j) 少なくとも1つの楔止め手段(wedge-like member71)が、前記の軸部材に形成された、ほぼ平坦な第一の平坦表面部(taperd flat sur-
face79)に係合する第2表面(second surface77)と、前記側壁部の開口(38)の一部分に隣接して側壁部に形成された、ほぼ平坦で垂直に形成された表面部(flat surface75)に係合する第1表面(first substan-
tially flat surface73)とを備える。
(3)更に、上記第3引用例には、特にその第1、3図において、無緩型牽引棒によって連結される貨車の連結構造に関して、牽引棒両端のオス連結部材と貨車側のメス連結部材との連結部(pin connection30)となる、中央土台部(center sill16)の端部が、車両底面の端部よりも、相当内側(前後方向での中央寄り)となる車両床下に位置する状態が示されている。

3.発明の対比
本願発明(請求項1の発明)と上記第1引用例の記載事項とを対比する。
上記のとおり、第1引用例には、本願発明と共通する「実質的に半永久的な状態に一対の貨車の隣接して配置された端部を一緒に連結するため」の、「牽引棒」の開示があると認められ、当該技術分野における技術常識からみて、牽引棒の両端に設けられる「連結部材」はオス連結部材として機能し、車両側の底部に配置された中央土台部に設けられるメス連結部材に対して嵌合状態とすることによって、「無緩型牽引棒組立体」が形成されることは明らかである。(上記の「技術常識」とした点については、第3引用例にも開示がある。)
また、第1引用例記載の「牽引棒5」を構成する部材のうち、「軸部材」(shank portion50)は、本願発明の(k)における「少なくとも一方のオス連結部材の第2端部を他方のオス連結部材の第2端部に固定するための、一方の前記オス連結部材の第2端部と他方のオス連結部材の第2端部とを係止可能とした固定手段」に相当するものといえる。
したがって、本願発明と第1引用例記載の発明との一致点と相違点は次のとおりである。
<一致点> 実質的に半永久的な状態に一対の貨車の隣接して配置された端部を一緒に連結するために、それぞれの貨車に取り付けられるメス連結部材とこれらのメス連結部材にそれぞれ係合可能なオス連結部材とからなる改良無緩型牽引棒組立体において、
改良無緩型牽引棒組立体を形成するように、少なくとも一方のオス連結部材の第2端部を他方のオス連結部材の第2端部に固定するための、一方のオス連結部材の第2端部と他方のオス連結部材の第2端部とを係止可能とした固定手段を備える点。
<相違点> 本願発明において(a)〜(j)で規定される連結部材の構成について、第1引用例には言及がない点。

4.相違点の検討
上記のとおり、第2引用例には、オス連結部材とメス連結部材とからなる鉄道車両の連結部の構成に関する開示があり、当該オス連結部材に関して、第2引用例で「第1端部」とされる方が本願発明では「第2端部」とされ、第2引用例で「第2端部」とされる方が本願発明で「第1端部」とされていると共に、同引用例に示される「第2端部」の先端形状は、本願発明でいう「半径方向に対向」する形状を備えているとはいえないが、このような単なる呼称の相違や、他部材との接続部の形状の相違は、連結部分の機能に関して、技術的に格別の意義をもつものではない。更に、楔止め手段を、左右一対の軸部材にそれぞれ設けることも、第2引用例の「少なくとも1つの楔止め手段」という記載によって、実質上、開示されているとみるべきである。
そうすると、上記第2引用例には、オス連結部材とメス連結部材とからなる鉄道車両の連結部に関して、本願発明の(b)における「空洞」を画成している「頂壁部」に代えて、「底壁部」(bottom wall portion32)を備える(したがって、連結状態におけるメス連結部の配置は、本願発明の場合と比べて上下が逆転している)点で相違はあるものの、本願発明における上記の(a)〜(j)で規定される、メス連結部材とオス連結部材に関する基本的な構成が開示されているといえる。
ここで、第1引用例で開示される無緩型牽引棒組立体の果たしている連結機能についてみると、一対の車両間の連結部分の数が2箇所になるか1箇所になるかの相違はあるものの、オス連結部材とメス連結部材とで鉄道車両を連結する点では、第2引用例記載の連結部材の果たしている連結機能と共通していることは明らかであるし、また、無緩型牽引棒組立体に係る連結部の構成として、第2引用例記載の連結部材の構成を採用することに格別の支障はみあたらない。そして、この第2引用例記載の構成を、無緩型牽引棒組立体に係る連結部に採用するに際しては、第3引用例にも示されるように、オス連結部材とメス連結部材との連結部が、車両底面の端部よりも、相当内側(前後方向でみた中央寄り)の車両床下に位置する場合がありうることも考慮すると、連結部材の取付け等に際しての作業上の煩瑣を回避するべく、メス連結部材の空洞部が下方に向かって開放するように(即ち、第2引用例に示される状態とは上下が逆となるように)、メス連結部材を設置することは当然の設計事項というべきである。
したがって、第1引用例に開示される無緩型牽引棒組立体において、第2引用例記載の連結部材の構成を、メス連結部材の上下が逆となる状態で採用して、本願発明と同様の構成とすることは、当業者が容易に想到できる設計事項といえる。
更に、請求人が平成13年8月29日付意見書で特に強調している、上方から岩石等が「入ることがなく、入ったとしても底部から落下」すること、組立てや分解、更には楔止め部材の取り外しも容易になる等の本願発明の作用効果について検討しても、上記各引用例の記載事項から当業者が容易に予測しうる域を出るものとは認められない。

5.請求項2以下の発明について
(1)詳述の煩は避けるが、請求項2〜19で規定される構成は、いずれも、実質上、第2引用例に指摘されている構成か、または、当該指摘された構成から当業者が容易に想到できる構成であって、請求項2〜19の発明も本願発明と同様に、上記第1及び第2引用例に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)次に、請求項20では、牽引棒の前後両端における連結部の構成について、メス連結部材も含めて前後互いに対称のものとすることを規定しているが、第1引用例に開示されている牽引棒の両端の構成が前後対称となっていることや、当該技術分野における技術常識からみて、牽引棒両端における連結部材の構成を対称のものとすることは、当業者が容易に想到しうる設計事項といえる。また、請求項21〜28において更に規定される構成は、いずれも、実質上、第2引用例に指摘されている構成である。
したがって、請求項20〜28の発明も、上記第1及び第2引用例に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明をはじめとして、本願各請求項に係るいずれの発明も、上記引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記本願の各発明については、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-10-03 
結審通知日 2001-10-16 
審決日 2001-10-29 
出願番号 特願平7-13065
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B60D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 刈間 宏信  
特許庁審判長 神崎 潔
特許庁審判官 鈴木 久雄
鈴木 法明
発明の名称 改良無緩型牽引棒組立体  
代理人 黒岩 徹夫  
代理人 古川 秀利  
代理人 池谷 豊  
代理人 長谷 正久  
代理人 小林 慶男  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 曾我 道照  

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